JP2018177867A - 金属接合用ポリアミド樹脂組成物、金属樹脂複合体および金属樹脂複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような金属樹脂複合体を製造するには、例えば、特許文献1にあるように、金属部材上に熱可塑性樹脂をインモールド成形することにより、金属と一体成形することが行われる。しかし、単に、金属部材に対して熱可塑性ポリアミド樹脂をインモールド成形した複合体は、熱可塑性ポリアミド樹脂と金属部材との接合性が悪いという欠点がある。
[要件1]示差走査熱量計(DSC)を用いて観測される融点(Tm)が230℃以上。
[要件2]DSCを用いて観測される融解エンタルピーΔHf(J/g)と、DSCにおいて観測される結晶化温度(Tc)より15℃高い温度(Tc+15℃)での等温結晶化における半結晶化時間(τ1/2)が下記式(1)の関係を満たす。
<1>ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物であって、前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物が、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである、金属接合用ポリアミド樹脂組成物;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。
<2>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである<1>に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<3>前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミド樹脂を含む、<1>または<2>に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<4>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物のISO527に従った曲げ弾性率が9GPa以上である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<5>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦350Pa・sである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<6>前記強化充填材がガラス繊維を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<7>前記ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
<8>表面に凹凸を有する金属部材と、前記金属部材と前記凹凸を有する面側で接している樹脂部材を含み、前記樹脂部材が、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物からなり、前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物は、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである金属樹脂複合体;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。
<9>前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミド樹脂を含む、<8>に記載の金属樹脂複合体。
<10>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである、<8>または<9>に記載の金属樹脂複合体。
<11>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物のISO527に従った曲げ弾性率が9GPa以上である、<8>〜<10>のいずれか1つに記載の金属樹脂複合体。
<12>前記強化充填材がガラス繊維を含む、<8>〜<11>のいずれか1つに記載の金属樹脂複合体。
<13>前記ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、<8>〜<12>のいずれか1つに記載の金属樹脂複合体。
<14>表面に凹凸を有する金属部材の、前記凹凸を有する面側に、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物を射出成形することを含み、前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物が、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである金属樹脂複合体の製造方法;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。
<15>前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである<14>に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
<16>前記金属樹脂複合体が、<8>〜<13>のいずれか1つに記載の金属樹脂複合体である、<14>または<15>に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
このような構成とすることにより、金属部材と接合した場合に、強固な接合強度を有し、剛性に優れた金属樹脂複合体を提供できる。特に、強固な接合強度を常に安定して達成する金属樹脂複合体を製造することも可能になる。
すなわち、ポリアミド樹脂として、Tm≦290℃、かつ、Tm−Tcc≧28℃であり、ΔHm≦55J/gであるポリアミド樹脂を用い、タルクを配合することによって、ポリアミド樹脂の結晶化速度を調整し、金属部材の凹部に十分に樹脂が入り込んだ状態で、本発明の樹脂組成物が固化できるように調整し、アンカー効果を効果的に達成できる。一方、ポリアミド樹脂が、Tm>295℃の場合、成形時の滞留により樹脂が劣化し、金属と樹脂の接合面に劣化物が混入し、接合を阻害する。さらに、溶融粘度を所定の値以下とすることにより、金属部材の凹部に樹脂がより十分に入り込み、より高い金属部材とポリアミド樹脂組成物の密着性を達成できる。
本発明の樹脂組成物は、Tm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gであるポリアミド樹脂(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)を含む。但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。
本発明で用いる特定ポリアミド樹脂は、Tm−Tcc≧30であることが好ましく、Tm−Tcc≧32であることがより好ましく、Tm−Tcc≧33であることがさらに好ましく、Tm−Tcc≧35であってもよく、Tm−Tcc≧38以上であってもよく、Tm−Tcc≧40であってもよい。Tm−Tccの上限値は特に定めるものではないが、例えば、55≧Tm−Tcc、50≧Tm−Tcc、または、45≧Tm−Tccであってもよい。
本発明で用いる特定ポリアミド樹脂は、ΔHm≦52J/gが好ましい。また、1J/g≦ΔHmが好ましく、10J/g≦ΔHmがより好ましく、20J/g≦ΔHmがさらに好ましく、28J/g≦ΔHmが一層好ましい。このような範囲とすることにより、結晶性をより高くすることができる。
本発明におけるΔHmは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。実施例で記載の機器が廃番等により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する機器を利用することができる。以下、他の測定方法についても同様である。
本発明におけるTmは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明で用いる特定ポリアミド樹脂のTccは、下限値が、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、175℃以上であることがさらに好ましい。前記Tccの上限値は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。このような範囲とすることにより、より良好な金属表面の転写性が得られる傾向にある。
本発明におけるTccは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明における相対粘度は後述する実施例の記載に従って測定される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
脂肪族ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド610、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド11等が例示され、ポリアミド610およびポリアミド12がより好ましい。
一方、半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の30〜70モル%が芳香環を含む構成単位であることをいい、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の40〜60モル%が芳香環を含む構成単位であることが好ましい。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる樹脂成形品の機械的強度をより向上させることができる。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6T/66、ポリアミド6I/66、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示され、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
本発明におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂をいう。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンが好ましく、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことがより好ましい。本発明で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の30モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来することが好ましく、ジアミン由来の構成単位の30〜100モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、70〜0モル%がパラキシリレンジアミンに由来することがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、特定ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。特に、結晶化促進剤として、他のポリアミド樹脂を含むことが好ましい実施形態の一例として挙げられる。
結晶化促進剤として用いられるポリアミド樹脂としては、Tm−Tcc<28℃を満たすポリアミド樹脂が例示される。Tm−Tcc<28℃を満たすポリアミド樹脂は、Tm−Tcc<25℃であることが好ましく、10℃<Tm−Tcc<25℃であることがより好ましい。
このようなポリアミド樹脂の例としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミドPXD10などが例示される。
Tm−Tcc<28℃を満たすポリアミド樹脂を含む場合、含有量は、特定ポリアミド樹脂の1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
Tm−Tcc<28℃を満たすポリアミド樹脂は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。
他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
また、耐衝撃改良剤などを配合してもよい。本発明の樹脂組成物が耐衝撃改良剤を含む場合、樹脂組成物の1〜20質量%であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5質量%以下、さらには、1質量%以下、特には、0.4質量%以下とすることもできる。
本発明の樹脂組成物は、強化充填材を含む。なお、ここでいう強化充填材には、タルクは含まない。
強化充填材としては、常用のプラスチック用強化充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填材を用いることができる。
中でも、金属樹脂複合体の接合性、機械的強度、剛性および耐熱性の点から、繊維状の充填材が好ましく、ガラス繊維を用いることがより好ましい。
断面形状は、断面が長円形、楕円形、まゆ型形状のものが好ましく、特に長円形断面が好ましい。また、長径/短径比が2.5〜8、更には3〜6の範囲にあるものが好ましい。さらに、成形品中のガラス繊維断面の長径をD2、短径をD1、数平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。
このような扁平状のガラス繊維を使用すると、反りが抑制され、特に箱型の金属樹脂複合体を製造する場合に効果的である。
本発明の樹脂組成物は、強化充填材を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物はタルクを含む。本発明では、タルクを配合することにより、結晶化速度を調整でき、樹脂組成物が、金属部材の凹凸に十分に入り込んだ状態で固化する結果、上記金属部材と樹脂部材のアンカー効果を効果的に達成することができる。
本発明の樹脂組成物における、タルクの含有量は、樹脂組成物に対し、0.1〜10質量%である。前記タルクの含有量は、下限値が、樹脂組成物に対し、0.15質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。前記タルクの含有量は、上限値が、樹脂組成物に対し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。タルクは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、離型剤をさらに含有していてもよい。離型剤は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの離型剤の中では、特に、カルボン酸アミド系化合物が好ましい。
離型剤の詳細は、特開2016−196563号公報の段落0037〜0042の記載および特開2016−078318号公報の段落0048〜0058の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
尚、本発明の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、樹脂成分および強化充填材や他の添加剤の含有量等が調整される。
本発明の樹脂組成物のISO527に従った曲げ弾性率が、5GPa以上であることが好ましく、9GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上とすることもでき、11GPa以上とすることもできる。前記弾性率の上限は、特に定めるものではないが、例えば、20GPa以下、さらには15GPa以下であっても十分に実用レベルである。曲げ弾性率は実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明の樹脂組成物の製造は、樹脂組成物の調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、あるいは、各成分の一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
本発明の金属樹脂複合体は、表面に凹凸を有する金属部材と、前記金属部材と前記凹凸を有する面側で接している樹脂部材を含み、前記樹脂部材が、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物からなり、前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物は、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである。ここでの、金属接合用ポリアミド樹脂組成物は上述の金属接合用ポリアミド樹脂組成物と同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、本発明では、樹脂部材が金属部材の凹凸を有する面側すべてで接している必要はなく、凹凸を有する面側の一部で接していてもよいことは言うまでもない。
また、金属部材は、そのすべてが金属で構成されているものの他、金属以外の部位で構成された部材の凹凸側の表面を金属、例えばニッケル、クロム、亜鉛、金等によりメッキされた部材であってもよい。
金属部材の厚さとしては、特に制限はないが、0.05〜100mmの範囲であることが好ましく、0.1〜50mmであることがより好ましく、0.12〜10mmであることがさらに好ましい。特に、アルミニウム板および鉄板の場合の厚みは、それぞれ、0.1〜20mmであることが好ましく、0.2〜10mmであることがより好ましい。上記厚さは、金属部材が平板状の場合は、その厚さをいい、また、平板状以外の場合は、金属部材のうち、樹脂部材と凹凸を有する面側で接している金属部位のうち、最も薄い厚さが上記範囲であることが好ましい。
金属部材の表面に微細な凹凸を形成する凹凸化処理(粗面化処理ともいう)としては、特に限定されず、各種の公知の方法が採用可能であるが、例えば、化成処理や化学エッチング、レーザーエッチング、ブラストエッチング等による加工が挙げられる。かかる処理を施すことにより、金属部材の表面には微細な凹凸が形成され、この微細な凹凸構造の凹部に上記した樹脂組成物が侵入し、その凹部壁の奥まで侵入して、そのまま固化し凹部から抜けなくなって固定されることにより、強固な接合強度を発現させることができると考えられる。
金属部材がアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、酸性水溶液および/または塩基性水溶液によるエッチング、あるいは、表面に酸化皮膜を形成した後、酸化皮膜を除去し、次いでアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物等により処理する方法等が好ましく挙げられる。また、アルミニウムに対して施す一般的な表面処理法であるアルマイト処理によれば、酸を用いてアルミニウムを陽極で電気分解させることにより、凹凸構造を形成することが可能である。
レーザースキャニングの条件には、出力、スキャン速度、スキャン周波数、スキャン回数、ハッチング幅(処理ピッチ)、パターニング形状等があり、これらの組み合わせで、所望する凹部と凸部から微細な凹凸表面を形成することができる。
また、樹脂粒や金属粒などの砥粒を混入した水を金属部材の表面に向けて加工エアーとともに数十m/秒〜約300m/秒程度の速度で高圧噴射せしめ、エッチング処理するウェットブラストエッチング法等でも可能である。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、シラノール基等を有する化合物が挙げられ、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ウレイドアミノプロピルエトキシシランなどが好ましく挙げられる。特に、アルミニウム基体、鉄基体とシランカップリング剤は、Al−O−SiやFe−O−Siの結合を形成して強固に結合し、また、樹脂組成物とシランカップリング剤の有機官能基が反応して強固に結合し、より強固な結合が達成できる。
本発明では、金属部材に上記金属接合用ポリアミド樹脂組成物を適用することによって形成できる。使用する成形機としては、金属部材と樹脂組成物との金属樹脂複合体が形成できれば特に限定されず、例えば、射出成形機、押出成形機、加熱プレス成形機、圧縮成形機、トランスファーモールド成形機、注型成形機、反応射出成形機等の種々の成形機を使用できるが、これらの中でも射出成形機が特に好ましい。
より具体的には、本発明の金属樹脂複合体の製造方法は、表面に凹凸を有する金属部材の、前記凹凸を有する面側に、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物を射出成形することを含み、前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物が、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである。ここでの、金属接合用ポリアミド樹脂組成物は上述の金属接合用ポリアミド樹脂組成物と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、金属樹脂複合体は、上述の金属樹脂複合体と同義であり、好ましい範囲も同様である。
インサートされる金属部材の大きさは、目的の金属樹脂複合体の大きさ、構造等によって、適宜決めればよい。インサートされる金属部材は、得られる金属樹脂複合体の全体にわたる必要はなく、金属樹脂複合体の一部分であってもよい。
加熱温度は高いほどよいが、通常100〜350℃、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは130〜200℃である。
加熱温度は100℃以上とすることにより、金型温度との差異を大きくでき、加熱の効果がより効果的に発揮され、350℃以下とすることにより、昇温時間を短縮できるため、成形サイクルが向上する傾向にあり、また、樹脂の滞留が発生しにくくなり、成形上、好ましい。
厚さが1.5mmのアルミニウム板(JIS A1050)に、脱脂後、数種類の混酸(塩酸および硫酸その他成分)からなる水溶液(関東化学株式会社製、アルミエッチング液)により化学エッチングし、洗浄工程を経て凹凸表面を有するアルミニウム板を得た。得られたアルミニウム板の表面をレーザー顕微鏡(KEYENCE VK−X100)の対物レンズ20倍で観察し、表面粗さを計測したところ、十点平均粗さRzは27.96μmであった。
ポリアミド樹脂A:三菱ガス化学(株)製、MXD6 6000
ポリアミド樹脂B:以下の合成例に従って製造した。
<<合成例>>
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、セバシン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してセバシン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミ680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で撹拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、相対粘度(96質量%硫酸溶液中、濃度1g/100mL、23℃で測定)が2.20であった。
<<合成例>>
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、アジピン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で撹拌し、反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、相対粘度(96質量%硫酸溶液中、濃度1g/100mL、23℃で測定)が2.10であった。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、セバシン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してセバシン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には300℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、300℃の温度で撹拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、相対粘度(96質量%硫酸溶液中、濃度1g/100mL、23℃で測定)が2.20であった。
強化充填材B:ガラス繊維、ECS03T−289H、日本電気硝子(株)製、繊維長3.0mm、繊維径10μm
タルク:林化成(株)製、ミクロンホワイト♯5000S
離型剤:日東化成工業(株)製、CS−8CP
ポリアミド樹脂1.0gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液100mLに23℃で撹拌溶解した。ポリアミド樹脂を完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
示差走査熱量の測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。示差走査熱量計を用い、ポリアミド樹脂を、示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて、30〜300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度10℃/分にて降温した際に観測される発熱ピークのピーク温度を測定して、降温時結晶化温度(Tcc、単位:℃)、融点(Tm、単位:℃)および融解エンタルピー(ΔHm、単位:J/g)を求めた。
示差走査熱量計としては、SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020 AUTO」を用いた。
結果を下記表1に示す。
後述する表2に示す組成となるように(表2の各成分の比率は質量比である)、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維をサイドフィードして樹脂ペレットを作製した。押出機の温度設定は、比較例1は300℃、その他は280℃にて実施した。
得られた樹脂ペレットを、120℃で4時間乾燥させた後、ファナック社製射出成形機(100T)を用いて、比較例1はシリンダー温度300℃、その他は280℃、金型温度130℃の条件で、ISO試験片(4mm厚)を射出成形した。ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
溶融粘度の測定は得られた樹脂ペレットを、120℃で4時間乾燥させた後、JIS K7199に準じて行った。キャピラリは1Φ×20mmを使用し、剪断速度1000(1/秒)、融点+40℃、保持時間6分の条件で行った。
ISO19095に準拠し、上記で得られたアルミニウム板を長さ45mm×幅12mm×厚み1.5mmの大きさに切断し、金型キャビティ内に装着した。
装着したアルミニウム板の凹凸表面側へ、上記で得られた樹脂ペレット(樹脂組成物)を120℃で4時間乾燥したものを用い、アルミニウム板と樹脂組成物の接合面積が長さ5mm×幅10mmとなるようにインサート成形(長さ45mm×幅10mm×厚3mm)し、図1に示すようなアルミニウム板(金属部材)1と樹脂組成物(樹脂部材)2が結合した金属樹脂複合体を成形した。
成形には、射出成形機としてファナック社製「ファナックα−100」を用い、比較例1はシリンダー温度300℃、その他は280℃、金型温度130℃、射出速度30mm/秒、充填時間0.58秒、保圧80MPa、保圧時間6秒、冷却時間20秒の条件で行った。
得られた金属樹脂複合体を用い、ISO19095に準拠し、接合性の評価を行った。
測定は、引張試験機(インストロン社製「5544型」)を使用し、接合して一体化されたアルミニウム板1と樹脂組成物部分2とを、ISO19095に準拠した引張用治具を用いて、その長軸方向の両端をクランプで挟み、引張速度5mm/分、チャック間距離80mmの条件で引張って、接合強度(単位:N)を測定した。A:1100N以上であった(引張により母材破壊した)。
B:接合したが1100N未満であった(引張により部分的に母材破壊した)。
C:接合しなかった。
これに対し、ポリアミド樹脂がTm−Tcc≧28℃を満たさない場合(比較例1、比較例2)、接合しなかった。タルクを配合しない場合(比較例3)、成形ができなかった。
2:樹脂組成物
Claims (16)
- ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物が、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、
前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである、金属接合用ポリアミド樹脂組成物;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。 - 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである請求項1に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミド樹脂を含む、請求項1または2に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物のISO527に従った曲げ弾性率が9GPa以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦350Pa・sである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記強化充填材がガラス繊維を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属接合用ポリアミド樹脂組成物。 - 表面に凹凸を有する金属部材と、前記金属部材と前記凹凸を有する面側で接している樹脂部材を含み、
前記樹脂部材が、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物からなり、
前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物は、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、
前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである金属樹脂複合体;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。 - 前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミド樹脂を含む、請求項8に記載の金属樹脂複合体。
- 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである請求項8または9に記載の金属樹脂複合体。
- 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物のISO527に従った曲げ弾性率が9GPa以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
- 前記強化充填材がガラス繊維を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
- 前記ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。 - 表面に凹凸を有する金属部材の、前記凹凸を有する面側に、ポリアミド樹脂30〜90質量部と、強化充填材70〜10質量部と、タルクを含む金属接合用ポリアミド樹脂組成物を射出成形することを含み、
前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物が、前記タルクを0.1〜10質量%の割合で含み、
前記ポリアミド樹脂がTm≦290℃、Tm−Tcc≧28℃、かつ、0J/g<ΔHm≦55J/gである金属樹脂複合体の製造方法;但し、Tm、TccおよびΔHmは、それぞれ、ポリアミド樹脂の融点、降温時結晶化温度および融解エンタルピーである。 - 前記金属接合用ポリアミド樹脂組成物の、保持時間6分、融点+40℃および剪断速度1000(1/sec)における溶融粘度がηa≦400Pa・sである請求項14に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
- 前記金属樹脂複合体が、請求項8〜13のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体である、請求項14または15に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
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