JP2017047449A - 金属接合品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークから、大きな接合強度を示す金属接合品を得る。【解決手段】アルミニウム合金板12(第1金属ワーク)と鋼板14(第2金属ワーク)とを接合するナゲット16の、アルミニウム合金板12と鋼板14との界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位を周縁部30とする。この周縁部30には、Fe−Al金属間化合物からなる針状析出物32が存在する。該針状析出物32は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下である。【選択図】図2
Description
本発明は、アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとが接合されることで構成される金属接合品及びその製造方法に関する。
近時、自動車車体を構成する部材の軽量化が試みられている。この観点から、鋼材とアルミニウム含有材を接合した金属接合品によって部材を構成することが種々検討されている。しかしながら、鉄系合金である鋼材とアルミニウム含有材を、例えば、スポット溶接で接合したとしても、十分な接合強度を得ることは困難である。そこで、特許文献1において、冷延鋼板と6000系アルミニウム合金板との積層ワークを2個の溶接電極で挟持し、所定の条件下で2回の通電を行うことでスポット溶接を行うことが提案されている。
該特許文献1記載のスポット溶接方法では、1回目の通電(前通電)を行った後、2回目の通電でスポット溶接を行う。前通電時の電流値は6〜12kAの範囲内に設定され、スポット溶接時の電流値は14〜26kAの範囲内に設定される。なお、2個の溶接電極で付与する加圧力や通電時間は、前通電時とスポット溶接時で略同等にしている。
該特許文献1によれば、以上のような2段階通電を行うことにより、チリが発生することが抑制されて冷延鋼板と6000系アルミニウム合金板との接合強度が大きくなる、とのことである。
接合強度を一層向上させるべく、鋼材とアルミニウム含有材の界面に生成するナゲットを大きく成長させることが想起される。このためには、スポット溶接時の通電時間を長くすればよいと考えられる。しかしながら、そのようにしても十分な接合強度が得られないことが多々ある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、アルミニウム含有材と鉄系合金との間の接合強度が大きな金属接合品及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとがナゲットを介して接合された金属接合品であって、
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなる針状析出物を含み、
前記針状析出物は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下であることを特徴とする。
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなる針状析出物を含み、
前記針状析出物は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下であることを特徴とする。
なお、「アルミニウム含有材」は、主成分がアルミニウム合金であるもの、又は純アルミニウムからなるものを意味する。また、「アルミニウム合金」及び「鉄系合金」は、それぞれ、「アルミニウムを50重量%以上含む合金」、「鉄を50重量%以上含む合金」として定義される。
ナゲットにおける上記の部位を周縁部と定義すると、該周縁部に存在する針状析出物は、従来技術に係る金属接合品のナゲットの周縁部に存在する針状析出物に比して小寸法である。このため、ナゲットと第1金属ワーク(アルミニウム含有材)との界面を起点とする破壊が起こり難くなる。また、ナゲットと第2金属ワークは、例えば、金属間化合物層を介して強固に接合している。
以上のような理由から、金属接合品に優れた接合強度が発現する。すなわち、金属接合品は、優れた剪断強度や引っ張り強度を示す。
ここで、ナゲットの外方の第1金属ワークと第2金属ワークの界面にはFe−Al金属間化合物層が生成していることが好ましい。この場合、第1金属ワークと第2金属ワークは、ナゲットを介してのみならず、Fe−Al金属間化合物層を介して接合する。従って、接合強度が一層向上する。
さらに、第1金属ワークの結晶粒界にAg粒子が析出していることが好ましい。これにより、第1金属ワーク自体の強度等が向上するからである。
また、本発明は、アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとを、ナゲットを介して接合した金属接合品を得る金属接合品の製造方法であって、
前記第1金属ワークと前記第2金属ワークを当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
前記第1の電流値の0.55〜0.8倍に設定した第2の電流値で前記当接箇所に通電を行う工程と、
を有し、
前記2回の通電により、前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする。
前記第1金属ワークと前記第2金属ワークを当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
前記第1の電流値の0.55〜0.8倍に設定した第2の電流値で前記当接箇所に通電を行う工程と、
を有し、
前記2回の通電により、前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする。
1回目の通電によって形成されたナゲットは、2回目の通電によって熱処理が施される状況となる。このような過程を経ることにより、ナゲットの周縁部における針状析出物が小寸法となる。従って、接合強度に優れる金属接合品が得られる。
第1の電流値は、例えば、9.5kAに設定すればよい。一方、第2の電流値は、設定が容易であることから、5.5〜7.5kAの範囲内とすればよい。
上記の2段階通電を行うことに代替し、銀(Ag)粒子を塗布した後にスポット溶接を行うことによっても、ナゲットの周縁部に析出する針状析出物を小寸法とすることが可能である。すなわち、本発明は、アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとを、ナゲットを介して接合した金属接合品を得る金属接合品の製造方法であって、
前記第1金属ワーク又は前記第2金属ワークの少なくともいずれかに銀粒子を塗布する工程と、
銀粒子が塗布された部位を残余の金属ワークに当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
を有し、
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする。
前記第1金属ワーク又は前記第2金属ワークの少なくともいずれかに銀粒子を塗布する工程と、
銀粒子が塗布された部位を残余の金属ワークに当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
を有し、
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする。
この場合においても、接合強度に優れる金属接合品を得ることができる。
なお、銀粒子としては、平均粒径が5μm以下のものが好ましい。また、銀粒子を塗布するには、該銀粒子を分散媒に分散させた銀ペーストを塗布すればよい。この場合、銀ペーストの単位面積当たりの塗布量は、0.05〜0.17mg/mm2(0.002〜0.006g/36mm2)とすることが好ましい。その後、通電を行えばよい。
本発明によれば、ナゲットの周縁部に析出する針状析出物を小寸法のものとすることができる。このため、アルミニウム含有材からなる第1金属ワークとナゲットとの界面を起点とする破壊が生じ難くなる。従って、前記第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとの接合強度が大きくなる。
以下、本発明に係る金属接合品及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る金属接合品10の要部概略縦断面図である。この金属接合品10は、第1金属ワークであるアルミニウム合金板12と、第2金属ワークである鋼板14とがスポット溶接によって接合されたものであり、アルミニウム合金板12と鋼板14との通電箇所にはナゲット16が形成されている。すなわち、鋼板14とアルミニウム合金板12は、前記ナゲット16を介して互いに接合している。
第1実施形態において、アルミニウム合金板12は、日本工業規格(JIS)に規定される6000系に相当するA6K21T42からなる。一方、鋼板14は、日本鉄鋼連盟規格(JFS)に規定される「自動車用冷間圧延鋼板及び鋼帯」の1種であるJSC590Rからなる。
なお、鋼板14が鉄系合金であることは勿論である。また、この組み合わせでは、アルミニウム合金板12の方が低融点であり、且つ抵抗発熱が小さい。
また、ナゲット16は、主にアルミニウム合金板12が溶融し、通電停止後の自然冷却によって固化したものである。上記したようにアルミニウム合金板12の方が低融点であり且つ抵抗発熱が小さいため、鋼板14よりも優先的に溶融するからである。
このため、ナゲット16は、アルミニウム合金板12側に偏在するように生成している。すなわち、ナゲット16は、長手方向略中央が最深部となるような円弧形状をなす。ナゲット16の長手方向寸法Lは、後述する第1溶接電極20及び第2溶接電極22(図4参照)の直径に略対応する。長手方向寸法Lは、例えば、1.5〜2cm程度である。
アルミニウム合金板12が溶融すると、鋼板14が高温の溶融池に接触することになる。このため、鋼板14の構成元素が溶融池に取り込まれる。溶融池が冷却固化してナゲット16となるとき、アルミニウム合金板12の構成元素と、溶融池に取り込まれた鋼板14の構成元素とを含む針状析出物が析出する。針状析出物は、典型的にはFe−Al−Si系金属間化合物からなる。
針状析出物は、ナゲット16の全体にわたって分散している。ここで、ナゲット16近傍の断面を拡大して図2に示す。また、以下では、ナゲット16の、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mmの範囲の部位を「周縁部」と指称し、その参照符号を30とする。
図2、及び周縁部30の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である図3に示すように、針状析出物32は、周縁部30にも存在する。周縁部30に含まれる針状析出物32の寸法は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下である。この寸法は、アルミニウム合金板12と鋼板14に対して一般的なスポット溶接を行ったときに析出する針状析出物に比して小さい。すなわち、この金属接合品10におけるナゲット16の周縁部30では、小寸法の針状析出物32が生成している。
周縁部30以外の部位に存在する針状析出物32の寸法は、周縁部30に含まれる針状析出物32の寸法と同等であってもよいし、相違していてもよい。なお、図2においては、周縁部30以外の部位の針状析出物を省略している。
ナゲット16と鋼板14との界面には、特にナゲット16の最深部に対応する箇所にFe−Al金属間化合物層34が生成している。このFe−Al金属間化合物層34が生成した部位は、それ以外の部位に比して接合強度が大きい。すなわち、Fe−Al金属間化合物層34が介在することにより、アルミニウム合金板12と鋼板14が一層強固に接合される。
次に、第1実施形態に係る金属接合品10の製造方法につき説明する。
はじめに、アルミニウム合金板12に対して鋼板14を積層する。換言すれば、アルミニウム合金板12と鋼板14を互いに当接させる。このようにして形成された積層部位を、図4に示すように、第1溶接電極20及び第2溶接電極22で挟持する。
ここで、第1溶接電極20及び第2溶接電極22は、ロボットのアームに設けられた溶接ガン(いずれも図示せず)を構成する。すなわち、ロボットは、アームを適宜動作させ、第1溶接電極20及び第2溶接電極22を、両溶接電極の間に積層部位が介装される位置とする。その後、溶接ガンが閉じることにより、第1溶接電極20がアルミニウム合金板12に当接するとともに、第2溶接電極22が鋼板14に当接する。
この状態で、第2溶接電極22から第1溶接電極20(又はその逆方向)に向かう電流を流す。すなわち、積層部位に対し、所定の第1の電流値で1回目の通電がなされる。アルミニウム合金板12と鋼板14とでは、鋼板14の方が高融点であり且つ抵抗発熱が大きい。このため、鋼板14において優先的にジュール熱が発生する。また、アルミニウム合金板12がこのジュール熱を受けることにより、鋼板14に先んじて溶融する。
アルミニウム合金板12が溶融することに伴い、溶融池が形成される。すなわち、鋼板14の一部が高温の溶融池に接触する。このため、鋼板14の構成元素、特にFeが溶融池に取り込まれる。
所定の時間が経過した後、通電を停止する。これに伴って鋼板14の発熱が終了するため、該鋼板14の温度が低下する。従って、溶融池も固化し、固相のナゲット16となる。ナゲット16の長手方向寸法Lは、第1溶接電極20及び第2溶接電極22の直径に略対応する。
このように、1回目の通電は、アルミニウム合金板12が一旦溶融してナゲット16が形成される条件で行う。このためには、例えば、第1溶接電極20及び第2溶接電極22から積層部位に付与する荷重を350kgf、溶接電流(第1の電流値)を9.5kA、通電時間を99サイクルとすればよい。
1回目の通電を停止し、好ましくは1秒程度待機した後に2回目の通電を行う。この際の第2の電流値を、第1の電流値の0.55〜0.8倍に設定する。すなわち、第1の電流値を9.5kAとしたときには、第2の電流値を5.225〜7.6kAに設定すればよい。なお、第2の電流値は、5.5〜7.5kAに設定することが容易である。付与荷重や通電時間等、溶接電流以外の条件は、1回目の通電と同様であってもよい。
この場合も上記と同様に、鋼板14にジュール熱が発生する。このジュール熱によって、ナゲット16が加熱される。すなわち、ナゲット16の温度が上昇する。
ここで、第2の電流値は第1の電流値よりも小さい。従って、2回目の通電時におけるナゲット16の温度は、1回目の通電時における溶融池の温度よりも低温となる。通電条件を上記の通りとした場合、1回目の通電時における溶融池の温度は約650℃であり、2回目の通電時におけるナゲット16の温度は約510℃である。
従来技術に係るスポット溶接では、鋼板14のFe成分が溶融池に取り込まれた後、Feが溶融池内で溶融する。そして、溶融池の冷却固化時に該溶融池内のAlと結合し、粗大な針状析出物32として析出する。これに対し、第1実施形態では、1回目の通電時に比して小さい電流で2回目の通電を行うようにしているので、上記したように針状析出物32を微細なものとすることができる。
周縁部30に存在する針状析出物32が微細なものであると、ナゲット16とアルミニウム合金板12との界面が破壊の起点となり難くなる。従って、金属接合品10は、引っ張り剪断強度(TSS)や、十字剥離強度(CTS)等に優れる。なお、TSSは、JIS Z 3136に準拠し、アルミニウム合金板12を左方(又は右方)に引っ張るとともに、鋼板14を、アルミニウム合金板12とは相反する方向、すなわち、右方(又は左方)に引っ張ることで求められる。また、CTSは、JIS Z 3137に準拠し、アルミニウム合金板12を下方に引っ張るとともに、鋼板14を、アルミニウム合金板12とは相反する上方に引っ張ることで求められる。
このように、第1実施形態によれば、2回の通電を行うことでナゲット16の周縁部30に微細な針状析出物32を析出させるようにしている。その結果、ナゲット16とアルミニウム合金板12との界面を起点とする破壊が発生し難くなり、接合強度に優れた金属接合品10が得られる。
また、ナゲット16の界面に生成したFe−Al金属間化合物層34を介してナゲット16と鋼板14が強固に接合する。すなわち、ナゲット16と鋼板14の界面も破壊の起点となり難い。
実際、TSS試験やCTS試験を行うと、ナゲット16がアルミニウム合金板12との界面から剥離したり、アルミニウム合金板12が鋼板14との界面から剥離したりする前に、アルミニウム合金板12内に亀裂が生じて破壊に至る。このことから、アルミニウム合金板12と鋼板14との間に十分な接合強度が得られていると評価することができる。
次に、第2実施形態につき説明する。なお、図1〜図4に示される構成要素と同一の構成要素には、基本的には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5に、第2実施形態に係る金属接合品40の要部概略縦断面図を示す。この金属接合品40は、第1金属ワークであるアルミニウム合金板42と、第2金属ワークである鋼板14とがスポット溶接によって接合されたものであり、アルミニウム合金板42と鋼板14との通電箇所にはナゲット16が形成されている。なお、この場合も、アルミニウム合金板42はA6K21T42からなり、鋼板14はJSC590Rからなる。
ナゲット16は、第1実施形態と同様に、アルミニウム合金板42側に偏在するように生成し、長手方向略中央が最深部となる円弧形状をなす。ナゲット16の長手方向寸法Lは、例えば、1.5〜2cm程度である。このナゲット16内には、典型的にはFe−Al−Si系金属間化合物からなる針状析出物32が析出・分散している。特に、ナゲット16の周縁部30に含まれる針状析出物32は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下である。周縁部30以外の部位に存在する針状析出物32の寸法は、周縁部30に含まれる針状析出物32の寸法と同等であってもよいし、相違していてもよい。
第2実施形態に係る金属接合品40では、ナゲット16と鋼板14との界面のみならず、ナゲット16の外方の、アルミニウム合金板42と鋼板14との界面にもFe−Al金属間化合物層34が生成している。
図6は、アルミニウム合金板42のナゲット16近傍のSEM写真である。下方の黒色がアルミニウム合金板42であり、上方の白色がナゲット16である。そして、図6中には、結晶粒界を示すための破線を便宜的に付している。この図6に示すように、アルミニウム合金板42内にはAg(銀)微粒子44が略均等に拡散し、結晶粒界に点在する。
以上のように、第2実施形態に係る金属接合品40では、第1実施形態に係る金属接合品10に比してFe−Al金属間化合物層34の生成領域が広い。このため、アルミニウム合金板42と鋼板14がさらに一層強固に接合される。加えて、アルミニウム合金板42中にAg微粒子44が拡散しているので、該アルミニウム合金板42の強度や硬度等が向上する。
すなわち、第2実施形態によれば、接合強度に一層優れるとともに、破壊強度が向上した金属接合品40が得られる。
次に、第2実施形態に係る金属接合品40の製造方法につき説明する。
第2実施形態では、はじめに、アルミニウム合金板42又は鋼板14に対してAg微粒子を塗布する。このためには、Ag微粒子が分散媒に分散されることで調製されたAgペーストを塗布すればよい。
ここで、Agペーストに含まれるAg微粒子は、平均粒径が5μm以下のものであることが好ましい。平均粒径が過度に大きいものであると、アルミニウム合金板42内に拡散することが容易ではないからである。この観点から、Ag微粒子としては、平均粒径が1〜5μmであるマイクロ粒子や、平均粒径が1〜100nmであるナノ粒子が好適である。
Agペーストは、上記したようなAg微粒子が分散媒に分散されることで調製されている。分散媒の好適な例としては、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)、テルピネオール等の極性溶媒が挙げられる。さらには、これらの極性溶媒に、分散剤としての不飽和脂肪酸エステルが添加されたものであってもよい。
このAgペーストを、スクリーン印刷、パッド印刷、ブレード塗工、ハケ塗り等の公知の塗布手法によって、アルミニウム合金板42の接合面、又は鋼板14の接合面(当接箇所)の少なくとも一方に塗布する。
なお、Agペーストの塗布量が過度に少ない場合には、Ag微粒子を塗布することによる効果が発現し難い。また、金属接合品40の接合強度は、Agペーストの塗布量が一定値を超えると大きく向上しなくなる。従って、接合面の単位面積当たりのAgペーストの塗布量を、0.05〜0.17mg/mm2とすることが好ましい。
次に、アルミニウム合金板42と鋼板14の接合面同士を積層する。その結果、接合面同士の間にAgペーストが介在する。このようにして形成された積層部位を、図4と同様に、第1溶接電極20及び第2溶接電極22で挟持する。
この状態で、第2溶接電極22から第1溶接電極20(又はその逆方向)に向かう電流を流す。すなわち、積層部位に対して通電がなされる。通電条件は、例えば、第1実施形態の1回目の通電条件と同様に、第1溶接電極20及び第2溶接電極22から積層部位に付与する荷重を350kgf、溶接電流(第1の電流値)を9.5kA、通電時間を99サイクルに設定すればよい。
アルミニウム合金板42と鋼板14とでは、鋼板14の方が高融点であり且つ抵抗発熱が大きい。このため、鋼板14において優先的にジュール熱が発生する。このジュール熱を受け、Agペースト中の分散媒が揮発するとともにAg微粒子44がアルミニウム合金板42中に拡散する。また、アルミニウム合金板42が鋼板14に先んじて溶融する。
アルミニウム合金板42が溶融することに伴い、Agが取り込まれた溶融池が形成される。すなわち、鋼板14の一部が高温の溶融池に接触する。このため、鋼板14の構成元素、特にFeが溶融池にさらに取り込まれる。
Agが存在する溶融池は、Agが存在しない溶融池に比して低温となる。通電条件を上記の通りとした場合、Agが存在しない溶融池の温度は約650℃であり、Agが存在する溶融池の温度は約510℃である。
所定の時間が経過した後、通電を停止する。これに伴って鋼板14の発熱が終了するため、該鋼板14の温度が低下する。従って、溶融池も固化し、固相のナゲット16となる。ナゲット16の長手方向寸法Lは、第1溶接電極20及び第2溶接電極22の直径に略対応する。
上記したように、第2実施形態では、通電時に形成された溶融池の温度が低い。しかも、Agが存在する溶融池の冷却速度は、Agが存在しない溶融池に比して大きい。以上のことが相俟って、針状析出物32が微細なもの、すなわち、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下のものとして析出する。
周縁部30に存在する針状析出物32が微細なものであると、ナゲット16とアルミニウム合金板42との界面が破壊の起点となり難くなる。従って、金属接合品40は、引っ張り剪断強度(TSS)や、十字剥離強度(CTS)等に優れる。
さらに、第2実施形態では、低融点であるアルミニウム合金板42側にAgが優先的に拡散する(図6参照)。このため、アルミニウム合金板42の強度や硬度等が向上する。なお、エネルギ分散型X線分光分析(EDX)によって求めたAgの深さ方向プロファイルによれば、ナゲット16と鋼板14の界面や、アルミニウム合金板42と鋼板14の界面では、Agは検出限界以下である。このことから、Agペースト中のAg微粒子が接合に直接関与することはないと評価し得る。
また、ナゲット16と鋼板14の界面から、アルミニウム合金板42と鋼板14の界面にわたって存在するFe−Al金属間化合物層34についてEPMA等の機器分析を行うと、酸素が検出限界以下である。従って、Agは、酸素を同伴しながらアルミニウム合金板42内を拡散すると推察される。
すなわち、ナゲット16と鋼板14の界面や、アルミニウム合金板42と鋼板14の界面には、靭性に優れる金属層が存在するとともに、該金属層に酸素が含まれていない。このため、前記界面では脆性破壊が生じ難い。
以上のような理由から、第2実施形態では、アルミニウム合金板42と鋼板14の間に一層優れた接合強度が発現する。
本発明は、上記した第1及び第2実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、第1金属ワークの素材はA6K21T42に限定されるものではなく、AC4CHやADC12等であってもよいし、純アルミニウムであってもよい。同様に、第2金属ワークの素材はJSC590Rに限定されるものではなく、クロムモリブデン鋼(例えば、SCM420等)をはじめとするその他の鋼材や鋳鉄であってもよい。いずれにしても、一般的な構造材として用いられる鋼材とアルミニウム合金との組み合わせでは、アルミニウム合金の方が低融点であり、且つ抵抗発熱が小さい。
また、第1金属ワーク及び第2金属ワークの形状も、上記の平板形状のものに限定されるものではない。
さらに、図7に示すように、アルミニウム合金板42(又はアルミニウム合金板12)に対し、2枚の鋼板14、14を順次積層した積層体から金属接合品50を得るようにしてもよい。この場合、積層体に対してスポット溶接を行うと、ナゲット16及びFe−Al金属間化合物層34の他、2枚の鋼板14、14同士に跨るようにナゲット52が形成される。
勿論、この場合においても、アルミニウム合金板42又は鋼板14の少なくともいずれかの接合面にAgペーストを塗布した後に互いを当接させるようにしてもよい。
10、40、50…金属接合品 12、42…アルミニウム合金板
14…鋼板 16、52…ナゲット
20…第1溶接電極 22…第2溶接電極
30…周縁部 32…針状析出物
34…Fe−Al金属間化合物層 44…銀微粒子
14…鋼板 16、52…ナゲット
20…第1溶接電極 22…第2溶接電極
30…周縁部 32…針状析出物
34…Fe−Al金属間化合物層 44…銀微粒子
Claims (7)
- アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとがナゲットを介して接合された金属接合品であって、
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなる針状析出物を含み、
前記針状析出物は、長尺方向が50μm以下であり、且つ短尺方向が2μm以下であることを特徴とする金属接合品。 - 請求項1記載の金属接合品において、前記ナゲットの外方の前記第1金属ワークと前記第2金属ワークの界面にFe−Al金属間化合物層が生成していることを特徴とする金属接合品。
- 請求項2記載の金属接合品において、前記第1金属ワークの結晶粒界に銀粒子が析出していることを特徴とする金属接合品。
- アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとを、ナゲットを介して接合した金属接合品を得る金属接合品の製造方法であって、
前記第1金属ワークと前記第2金属ワークを当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
前記第1の電流値の0.55〜0.8倍に設定した第2の電流値で前記当接箇所に通電を行う工程と、
を有し、
前記2回の通電により、前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする金属接合品の製造方法。 - 請求項4記載の製造方法において、前記第1の電流値を9.5kAに設定するとともに、前記第2の電流値を5.5〜7.5kAに設定することを特徴とする金属接合品の製造方法。
- アルミニウム含有材からなる第1金属ワークと、鉄系合金からなる第2金属ワークとを、ナゲットを介して接合した金属接合品を得る金属接合品の製造方法であって、
前記第1金属ワーク又は前記第2金属ワークの少なくともいずれかに銀粒子を塗布する工程と、
銀粒子が塗布された部位を残余の金属ワークに当接させた後、当接箇所に対して第1の電流値で通電することでスポット溶接を行い、前記当接箇所にナゲットを生成する工程と、
を有し、
前記ナゲットの、前記第1金属ワークと前記第2金属ワークとの界面における外縁から内方に向かって1mm以内の範囲の部位に、Fe−Al金属間化合物からなり、長尺方向が50μm以下で且つ短尺方向が2μm以下の針状析出物を析出させることを特徴とする金属接合品の製造方法。 - 請求項6記載の製造方法において、平均粒径が5μm以下の銀粒子を含んだ銀ペーストを前記当接箇所に0.05〜0.17mg/mm2塗布した後に通電を行うことを特徴とする金属接合品の製造方法。
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| KR20190126099A (ko) * | 2017-03-31 | 2019-11-08 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 저항 스폿 용접 조인트의 제조 방법 |
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2015
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