JP2016013996A - 抗肥満薬 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、生物活性物質の探索源として有望視されている海洋生物として藍藻が挙げられる。藍藻は光合成を行う原核生物であり、淡水湖沼、汽水域、海洋、土壌など様々な環境下で生育している。生育環境によって特異な化学構造や生理活性を示す物質を生産することが知られており、例えば、発癌プロモーター活性を有するLyngbyatoxin A(非特許文献1)、骨吸収活性を阻害するBiselyngbyaside(非特許文献2)、また強力なプロテインキナーゼの阻害活性を示すBisebromoamide(非特許文献3)などが挙げられ、生物活性物質やそのリード化合物の探索源として藍藻が期待されている。
また、日本人の死因の第1位はがん、第2位は脳卒中(脳梗塞や脳出血)、第3位は心臓病(心筋梗塞や狭心症)であり、2位と3位はどちらも動脈硬化や高血圧、脂質異常症などが大きな危険因子であるが、これらには食事や肥満が大きく関わっている。さらに、日本人の間で急激に増えている糖尿病、高尿酸血症や痛風、脂肪肝、膵炎なども、肥満との関わりが深い病気といわれている。
肥満の状態では、生体内の脂肪細胞に存在する脂肪滴、すなわちトリグリセリド量が増加し、細胞が肥大している。さらに、最近になって、成人となってからでも脂肪細胞の数が増加することが報告されている。したがって、脂肪細胞への分化を阻害すること、および脂肪細胞内の脂肪滴に作用することの両面から肥満の進行を阻害する試みが期待されている。
また、公知の抗菌作用を有する天然有機化合物であるオーレオシンにはトリグリセリドの生合成阻害活性があり、血液中のトリグリセリド濃度を低下させることが報告されている(特許文献4)。
しかしながら、これまで得られた天然物からの抽出成分や天然有機化合物は、必ずしも抗肥満薬として満足のいくものではなく、とりわけ、脂肪細胞内の脂肪滴に作用することによる抗肥満薬といった観点からは満足のいくものはなく、より優れた効果を発揮する天然有機化合物についての検討が不可欠であった。
肥満の判定法としては、通常、国際的に広く使用されているBMI(Body Mass Index)を尺度としたものが用いられている。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で除した数値(BMI=体重(kg)/身長(m)2)である。BMI<18.5は低体重、18.5≦BMI<25は普通体重、25≦BMI<30は肥満(1度)、30≦BMI<35は肥満(2度)、35≦BMI<40は肥満(3度)、40≦BMIは肥満(4度)と判定される。もっとも、標準体重(理想体重)は性別、年齢、職業または生活習慣の差異などによって個人ごとに相違するものであることから、肥満の判定をこの方法で一律に行い、本発明の抗肥満薬を厳格に適用することを意図するものではない。
本発明の医薬組成物には、期待される治療効果(予防効果も含む)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬組成物中の有効成分量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。
沖縄県石垣島米原で採取した藍藻(Leptolyngbya sp.)600g(湿重量)を用いた。採取後は冷凍保存し、小石を取り除いてから含水メタノール中にてブレンダーで粉砕した。抽出液を吸引濾過し、ロ液をエバポレーターを用いて濃縮した。粗抽出物を酢酸エチル(400ml×3)と水(400ml)とで分配した。得られた酢酸エチル層を減圧濃縮し、濃縮物を80%メタノール水溶液(250ml)とヘキサン(250ml×3)で脱脂した。得られた80%メタノール水溶液層を減圧濃縮し、濃縮物をODSカラムクロマトグラフィー[Cosmosil 75C18−OPN(φ 20×85mm)、メタノール/水(20/80→40/60→60/40→80/20→メタノール)]により5画分(Fr.1〜5)に分離した。
(図1参照)
得られた各溶出画分の内、60%メタノール溶出画分(Fr.3)15.2mgを逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil ODS HG−5(φ 10×250mm)、アセトニトリル/水(10/90)→(グラジェント30min)→(100/0)、検出UV215nm、流速 4.6mL/min]により9画分(Fr.3−1〜9)に分離した。得られた画分(Fr.3−5)において脂肪細胞への分化阻害活性が認められたため、この画分の精製を行った。得られたFr.3−5を逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil ODS HG−5(φ 10×250mm)、アセトニトリル/水(30/70)→(グラジェント30min)→(55/45)→(グラジェント5min)→(100/0)、検出UV215nm、流速 4.6mL/min]により9画分(Fr.3−5−1〜3−5−9)に分離した。得られた画分(Fr.3−5−5,7)において阻害活性が認められた。Fr.3−5−7(1.0mg、不定形白色粉末)は本発明に係る化学式(1)で示される化合物であった。
(図2参照)
さらに、1H−NMR、13C−NMRおよびHMBCを測定し、得られたスペクトルを解析することにより、不定形白色粉末であって、C21H32O5の分子式を有する化合物の構造を以下のとおり決定した。
1H−NMR(C6D6,500MHz)
d 5.36(d,1H,J=8.5,H−14),5.16(t,1H,J=7.0,H−8),4.38(q,1H,J=6.5,8.5,H−15),3.29(dd,1H,J=5.5,7.5,H−12),3.23(s,3H,2−OMe),3.03(s,3H,12−OMe),2.86(d,2H,J=7.0,H−7),2.13(s,3H,3−Me),2.10(m,1H,H−10a),2.03(m,1H,H−10b),2.01(s,3H,5−Me),1.79(m,1H,H−11a),1.58(m,1H,H−11b),1.48(s,3H,13−Me),1.48(s,3H,9−Me),1.13(d,3H,J=6.5,15−Me)
13C−NMR(C6D6,125MHz)
d 179.9(C−4),161.7(C−2),156.7(C−6),138.2(C−5),135.0(C−13),134.0(C14),119.9(C9),118.0(C−8),100.1(C−3),86.4(C−12),64.0(C−15),52.8(12−OMe),51.8(2−OMe),35.9(C−10),32.3(C−7),32.1(C−11),23.8(15−Me),15.9(9−Me),10.5(13−Me),10.0(5−Me),7.1(3−Me)
実施例1に記載の方法に従って、得られた本発明の化学式(1)で示される化合物の生物活性として、脂肪細胞への分化阻害、細胞生存率による細胞毒性、脂肪細胞からのトリグリセリドの減少および乳酸の増加を調べた。
実施例には、脂肪細胞への効率的な分化が実証されているマウス繊維芽細胞3T3−L1細胞を下記(A)〜(D)のとおり調整して用いた。
(A)3T3−L1細胞の増殖、保存
3T3−L1細胞は100mmディッシュ上で、5%ウシ血清を添加したDMEM増殖用培地で5%炭酸ガス−空気、飽和水蒸気下、37℃で培養した。なお、3T3−L1細胞は、最初に大量培養しておき、常法に従って、分注して凍結保存した。
(B)継代
PBS(−)5mlで細胞を洗浄し、0.25%トリプトシン1mM EDTA含有生理食塩水を1mlを加えて37℃で3分間静置した。増殖用培地5mlで細胞を懸濁して15mlの遠沈管に移して、1500rpm、3分間の遠心によって細胞を沈殿させた。1/4から1/5に希釈して、ディッシュにまいた。
(C)実施例用細胞の準備
上述と同様の方法でディッシュから剥離、遠心沈殿させた細胞は、適当な量の増殖用培地に懸濁し、細胞数を計測した。それをもとに、5×104個/wellとなるように96穴プレートに播種して48時間培養した。
(D)分化誘導培地の調製
上記増殖用培地100mlに1mMデキサメタゾン溶液1ml、3−イソブチル―1−メチルキサンチン11.1mg、5mg/mlインスリン溶液0.1ml、および抗生物質溶液(ペニシリンGカリウム塩317mg、ストレプトマイシン500mgを滅菌生理食塩水25mlに溶解して調整)0.45mlを添加し、溶解することで調整した。
3T3−L1細胞の脂肪細胞への分化誘導には、培地を増殖用培地から分化誘導培地に置き換えることで行った。この時、特定の濃度に調整した化学式(1)で示される化合物を分化誘導培地に添加し、ブランクとコントロールには分化誘導培地のみを添加した。プレートは5%炭酸ガス−空気、飽和水蒸気下、37℃で培養した。48時間後に、インスリンを加えた新鮮な増殖培地に置き換えた。その後、2日おきに培地を新鮮な増殖培地に置き換えた。
上記の方法で分化誘導開始より7〜10日間の培養後、細胞を顕微鏡で観察し、コントロールの細胞が十分に分化した時点で評価した。
脂肪細胞への分化誘導率は、細胞内に蓄積されたトリグリセリドの量を定量する事によって算出した。細胞をPBS(−)で洗浄して風乾させ、そこにラボアッセイトリグリセライドキットワコーを100μL/wellずつ添加した。室温で30〜60分間静置し、630nmの吸光度を測定してトリグリセリドを定量した。
結果を図3に示す。本発明に係る化学式(1)で示される化合物は濃度420nMで3T3−L1細胞の脂肪細胞への分化を50%阻害した。一方、Fr.3−5−5から分離された化合物(Fr.3−5−5−2,3−5−5−3)は、脂肪細胞への分化阻害活性を示さなかった。
細胞毒性としては細胞生存率を指標として用いて評価した。上記(C)の方法で剥離、遠心分離して細胞数計測を行った細胞は、1×104個/wellとなるように96wellプレートに播種した。16時間培養後、特定濃度に調整した化学式(1)で示される化合物を含む増殖培地に置き換え、さらに48時間培養を続けた。Cell Counting Kit−8を5μL/wellずつ添加して1時間培養後、波長450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。
本発明に係る化学式(1)で示される化合物は3T3−L1細胞に対しては50μMの濃度でも顕著な毒性を示さなかった。また、Hela細胞を用いた実験においても、同様に50μMの濃度で顕著な毒性を示さなかった。
脂肪細胞内の脂肪滴の縮小を確認するために、脂肪細胞内グリセリドの減少を検討した。上記の方法で完全に分化させた3T3−L1脂肪細胞を、増殖培地で特定濃度に希釈した化学式(1)で示される化合物の存在下で培養を行い、培地は3日おきに試料を含む新鮮なものに置き換えた。7〜9日後に、上述のラボアッセイトリグリセライドキットワコーを用いて細胞内トリグリセリド量を定量した。結果を図4に示す。本発明に係る化学式(1)で示される化合物が脂肪細胞内のトリグリセリドレベルを減少させることから、本発明に係る化学式(1)で示される化合物は脂肪細胞内の脂肪滴の縮小に有効であることが判明した。
3T3−L1を分化させた脂肪細胞あるいはHela細胞を、60mmディッシュに1×105個播種し、16時間培養し、その後、任意濃度の化学式(1)で示される化合物の存在下で、さらに72時間培養を続けた。その培養液を回収し、15000rpmで15分間遠心し、細胞残滓を除いた。これをHPLC(Develosil ODS HG−5 4.6X250mm)にて分析したところ、化学式(1)で示される化合物の濃度に依存して乳酸ピークが増加することが観察された。結果を図5に示す。チャートは、下から、それぞれ、0、0.05μM、0.1μMの化学式(1)で示される化合物で処理した3T3−L1を分化させた脂肪細胞、および0.1μMで同様に処理したHela細胞での結果を示す。11分過ぎのピークが乳酸を示しており、細胞種にかかわらず、化学式(1)で示される化合物の濃度に依存して乳酸ピークの増加を示している。
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