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JP2013530990A - 創傷治療に係るラクトフェリンの配列、組成物、及び方法 - Google Patents

創傷治療に係るラクトフェリンの配列、組成物、及び方法 Download PDF

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JP2013530990A
JP2013530990A JP2013516908A JP2013516908A JP2013530990A JP 2013530990 A JP2013530990 A JP 2013530990A JP 2013516908 A JP2013516908 A JP 2013516908A JP 2013516908 A JP2013516908 A JP 2013516908A JP 2013530990 A JP2013530990 A JP 2013530990A
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ベンジャミン デイビッド アッシュビー
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ブライエン ホールデン ビジョン インスティテュート
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Abstract

本発明は、ラクトフェリン又はその断片を含む医薬組成物に関し、更には創傷、特に角膜創傷の治療における医薬組成物の使用にも関する。ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物も、本発明によって提供されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラクトフェリン又はその断片を含む医薬組成物に関し、更には創傷、特に角膜創傷の治療における医薬組成物の使用にも関する。
角膜は、虹彩、及び前眼房を覆っている、眼の正面の透明な部分である。角膜の重要な機能の1つは、水晶体及び網膜に光を屈折させることによって、正常な視覚を維持することにある。ヒトの角膜は5つの層から構成され、それらの層のうちの最前部の層が、角膜の表面を形成する角膜上皮である。
上皮層はその大部分が細胞様であり、ケラチノサイトと呼ばれる細胞から構成されている。この層は、構造の深く脆弱な部分を例えば微生物の侵入等から防御する物理的バリヤーとしての機能を果たす。上皮の下部にあるのが、コラーゲンを主成分とする支質である。ここには、支質の創傷癒合に関与し得る、角膜実質細胞と呼ばれる他の細胞も含まれている。
水晶体及び網膜に光を屈折させて正常な視覚を維持する角膜の能力は、角膜上皮の連続的な再生を経る能力にいくぶん依存している。上皮の再生によって、この組織が角膜内部を有害な環境薬剤の侵入から保護するバリヤーとして機能を果たすことが可能になるので、上皮の再生は必要不可欠である。この再生プロセスによって、角膜の滑らかな光学表面も維持される。この再生速度は、角膜上皮の増殖、分化、及び細胞死滅のプロセス間の一体的なバランスによって綿密に維持される。
角膜上皮の損傷は、コンタクトレンズの装用中の異物(例:砂及び粗粒)、微生物の侵襲若しくは化学物質の侵襲、又は手術によって引き起こされ得る。角膜上皮の創傷のほとんどはすぐに癒合するが、化学的損傷等の場合は、角膜上皮の癒合が遅延して深層の支質が感染及び潰瘍に罹患しやすい状態のままになる可能性がある。また、眼が正常な水分補給を維持できない場合、曇りを来たし視力の低下につながる。
アルカリ損傷は特に懸念が大きく、急性炎症の原因にもなる。この急性炎症は、角膜に好中球が素早く侵入し、その後に炎症細胞の遊走及び漸増を伴う慢性炎症が長引き、ひいては角膜表面を損傷させるという特徴がある。重篤な場合、これは角膜の潰瘍化、穿孔、瘢痕形成、及び永久的な視力喪失にもつながる。角膜を速やかに癒合させることは、角膜上皮の健全性の維持、及び視力維持にとって重要である。
上皮の自然な創傷癒合は、相互に作用し信号を送る分子の網状組織を通して協働する種々の細胞構成要素の複雑な相互作用に依存すると考えられる。これらの分子のいくつかは成長因子として知られ、角膜創傷の癒合において重要な役目を果たす。上皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子、及び血小板由来の成長因子(PDGF)は、角膜創傷の癒合を促進することで知られる一部の成長因子である。また、角膜のアルカリ火傷後にすぐ、再生する上皮によってインターロイキン(IL)−1(及びIL−6)が強力に誘導されることも発見された。このことは、これらのインターロイキンが角膜上皮の再生に関与し得ることを示唆している。
ラクトフェリンは80kDaの糖蛋白質で、その三次元構造はX線結晶解析で定義されてきた。この蛋白質は、2つの球状領域に折り畳み込まれた単一のポリペプチド鎖で構成される。これらの領域は、Nローブ及びCローブと呼ばれ、蛋白質のアミノ(Nローブ)末端半分及びカルボキシ(Cローブ)末端半分に対応している。各ローブは1つの鉄結合部位を含んでいる。ラクトフェリンは、炎症緩和、免疫反応の調整、及び抗菌活性等、いくつかの機能を有する。ラクトフェリンは、多くの種属に見出される蛋白質であり、それゆえに、いくつかの種間の配列のバリエーションを反映する。
牛ラクトフェリンのNローブ及びCローブが、ヒト線維芽細胞を介してコラーゲンゲル類の収縮を促進する能力は、高山ら(The bovine lactoferrin region responsible for promoting the collagen gel contractile activity of human fibroblasts,Biochem Biophys Res Commun 2002;299:813−817)によって調査されている。
米国特許第7,524,814号明細書は、全ラクトフェリン又はN末端ラクトフェリン変異体を含有し、かつ少なくともそのN末端グリシン残基が創傷癒合の処置用に使えるよう切断されるか若しくは置換される組成物に関する。
実際的な投与により角膜上皮の創傷修復を促進し得る(即ち、質量の単位で充分に効力がある)非刺激性組成物に対するニーズは、存続している。
本明細書においてどの先行技術を参照することも、この先行技術がオーストラリア又は他の任意の管轄区域における共通の一般知識の一部をなす、又はこの先行技術が当業者により確かめられ、理解され、関連性があると見なされることを当然予想し得るという認識又は任意の形の提案ではなく、かつそのように解釈すべきでもない。
本発明は角膜創傷の治療方法に関し、この方法は、ラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物を、必要とする被検者に投与する工程を含む。
本発明はまた、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物にも関する。一実施形態においてラクトフェリンは牛ラクトフェリンである。
一実施形態においてペプチド又は疑似ペプチドは、ラクトフェリンのCローブから構成されるか又は本質的に構成される。本明細書において「から本質的になる」は、ペプチド又は疑似ペプチドに関して、下記の方法で検定された牛ラクトフェリンのCローブと同じ活性を実質的に有し、かつそのCローブの配列に対して少なくとも60%の同一性を有する任意の長さのアミノ酸配列を意味する。下に例示するように、Nローブ及び全ラクトフェリンは、Cローブに対して異なる活性を有す。したがって、ラクトフェリンのCローブ「から本質的になる」ペプチド又は疑似ペプチドは、全ラクトフェリンを包含しない。好都合にも、アミノ酸配列が牛ラクトフェリンのCローブと実質的に同じ活性を有するかどうかの判定は、細胞増殖及び/又は下記の遊走アッセイによってルーチン的に検定できる。
一実施形態において、Cローブは全ラクトフェリンの蛋白質分解から得られる。好ましくは、プロテアーゼはトリプシンである。一実施形態においてラクトフェリンは牛ラクトフェリンであり、任意選択的に牛乳から得られる。
別の実施形態において、被検者は人間のヒト患者である。一実施形態において、被検者は角膜上皮の創傷又は損傷を有するか、その疑いがある。この創傷又は損傷は、別の1つ若しくは複数の損傷と別個のものであるか又はそれに加えたものであり得る。更なる実施態様において、角膜創傷は角膜上皮の創傷である。更に別の実施態様において、角膜上皮の創傷はアルカリ誘導の創傷である。
本発明はまた、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含む医薬組成物に関する。一実施形態において医薬組成物は、眼への投与に好適な形態である。好ましくは、医薬組成物は水溶液である。医薬組成物は局所的に投与される。
本発明はまた、角膜創傷の治療方法に関し、この方法は、ラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを投与する工程を含む。
本発明はまた、角膜創傷治療用のラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを使用することにも関する。
本発明はまた、角膜創傷治療用のラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを、薬剤製造の目的に使用することにも関する。
一実施形態において本発明は、角膜創傷の治療方法に使用された場合に、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなるペプチド又は疑似ペプチドを提供する。
一実施形態において本発明は、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなるペプチド又は疑似ペプチドから本質的になる角膜創傷治療用の医薬組成物を、活性成分として提供する。別の実施形態において本発明は、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる角膜創傷治療用の医薬組成物を、主要成分として提供する。
本発明はまた、角膜創傷の治療方法に関し、この方法は、ラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを投与する工程を含む。
本発明はまた、角膜創傷治療用のラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを使用することにも関する。本発明はまた、角膜創傷の治療に適したこのペプチド又は疑似ペプチドを、薬剤製造の目的に使用することも含む。
本発明はまた、
− 角膜創傷を有する被検者を同定する工程と、
− ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物を投与する工程と、
− ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを投与する工程と、
を含む角膜創傷の治療方法にも関する。
本発明はまた、角膜創傷の閉鎖を加速する方法にも関し、この方法は、
− ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物、又は
− ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチド
を、必要とする被検者に投与する工程を含む。
他の実施形態においては、前述の発明に係る方法で使用するためのキットが提供されている。このキットは、
− 本発明に係るペプチド、疑似ペプチド又は医薬組成物を保持する容器と、
− 使用上の指示書きを含むラベル又は添付文書と、
を含む。指示書きには、発明に係る方法又は使用におけるキットの使用法が記載されていることが好ましい。
他の実施形態においては、前述の発明に係る方法で使用する際のキットが提供されている。このキットは、
− 本発明に係るペプチド、疑似ペプチド又は医薬組成物を保持する容器と、
− 使用上の指示書きを含むラベル又は添付文書と、
を含む。指示書きには、発明に係る方法又は使用におけるキットの使用法が記載されていることが好ましい。
特定の実施形態においてキットは、角膜創傷の治療に供する、1種以上の更なる活性原末又は活性成分を含み得る。
配列番号1の図である(Swiss−Protデータベースにて受託番号P24627−1、配列バージョン2の下で一般公開されている)。 (ヘマトキシリン及びエオシンで染色された)角膜の基本解剖図であり、角膜の外部表面を形成する最前部の層である上皮を示している。 12.8μMの牛ラクトフェリン(天然型(BLF)、除鉄型(α−BLF)、鉄飽和型(h−BLF)、TFMSで脱グリコシル化されたBLF(BLF TFMS)、双性イオン洗剤2%のCHAPSに暴露されたBLF(BLF CHAPS)、カオトロープとして用いた6Mの塩酸グアニジン(Gdn−HCl)に暴露されたBLF(BLF Gdn−HCl)、還元アルキル化されたBLF、及びLFcin Bペプチド)と共に24時間インキュベーションした後のアルカリ誘導HCLE創傷の閉鎖を、BSA対照群と比較して相対的に示した図である。データは平均+SD(n=8)を示している。天然型BLFと比較して統計的に有意な差異は認められない(p>0.1)。天然型BLFと比較して統計的に有意な減少が認められる(p<0.001)。 非還元条件下で7.5%のSDS−PAGEにかけ、クーマシーR−250で染色して、BLFの化学的な脱グリコシル化が確認されたことを示した図である。A)天然型BLFを示した図である;(B)TMSFを加えて30分間インキュベートしたBLFを示した図である。 セリンプロテアーゼアフィニティカラムからの画分を示した図である:A)カラムに注入されたBLFの図である;(B)蛋白質標準液の図である;(C)非結合画分の図である;(D)溶出画分の図である。還元条件下で12%のSDS−PAGEにかけ、クーマシーR−250で染色して可視化している。 1μMのPMSFで処置された0.1μMのp−BLF、BLF、Nローブ、Cローブ、np−BLF、及びBLFが、セリンプロテアーゼ基質30μMのZ−Phe−Arg−AMCを加水分解する速度を示した図である。データは平均+SDを示している(p−BLFについてはn=3であり、BLF、Nローブ、Cローブ、np−BLF、及びBLFについてはn=6である)。p−BLFと比較して統計的に有意な差異が認められる(p<0.005)。天然型BLFと比較して統計的に有意な差異が認められる(p<0.005)。 天然型BLFを蛋白質非分解性(np−BLF)画分、及び蛋白質分解(p−BLF)画分に分離し、それぞれの画分12.6μM及び252μMの存在下でのアルカリ誘導のHCLE創傷の閉鎖を、1mMのPMSFによるセリンプロテアーゼ阻害有りの場合又は無しの場合について示した図である。データは平均+SD(n=8)を示している。PMSFで処置された場合と比較して統計的に有意な差異が認められる(p<0.001)。PMSFで処置された場合と比較して統計的に有意な差異が認められる(p<0.005)。^1/20の濃度の場合と比較して統計的に有意な差異が認められる(p<0.001)。 BLFのNローブ及びCローブをトリプシンで消化した画分、並びに精製した画分を示した図である:(A)蛋白質標準液の図である;(B)4時間トリプシンで消化されたBLFの図である;(C)陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィにて「B」から精製されたCローブの図である;(D)BLFの図である;(E)0.5時間トリプシンで消化したBLFの図である;(8F、8G、8H)BLF、部分的に消化されたCローブ、及びNローブのそれぞれについて、「E」のサイズ排除クロマトグラフィから分離したピークを示した図である。還元条件下で12%のSDS−PAGEにかけ、クーマシーR−250で染色して可視化している。 1.28、6.4、12.8、64、及び128μM濃度にて天然型BLF、BLFのNローブ、BLFのCローブ、及びBSAで処置されたアルカリ誘導のHCLE創傷の閉鎖を示した図である。データは平均+SD(n=8)を示している。等モルの天然型BLF(p<0.05)及びBLFのNローブ(p<0.001)と比較して統計的に有意な増加が認められる。等モルの天然型BLFと比較して統計的に有意な減少が認められる(p<0.005)。^等モルのBSAと比較しても統計的に有意な減少が認められる(p<0.05)。 64μMのBLF、Nローブ、Cローブ、又はPBS(ビヒクル)で処置された、モルモットの眼におけるデブリードマン創傷の閉鎖を、平均創傷直径±標準偏差として示した図である。最初の24時間は3時間ごとに25μLずつ投与し、その後は、創傷閉鎖まで1日につき3回投与する。Cローブの創傷はNローブで処置された創傷よりも小さい(p<0.04)。Cローブの創傷はPBSで処置された創傷よりも小さい(p<0.005)。Cローブの創傷はBLFで処置された創傷よりも小さい(p=0.02)。 64μMのBLF、Nローブ、Cローブ、又はPBS(ビヒクル)で処置された、モルモットの眼におけるアルカリ創傷の閉鎖を、平均創傷直径±標準偏差として示した図である。最初の8時間は1時間ごとに25μLずつ投与し、その後は、創傷閉鎖まで1日につき3回投与する。Cローブの創傷はビヒクルで処置された創傷よりも有意に小さい(p=0.013)。 1.28、6.4、12.8、64、及び128μMの濃度にて牛血清アルブミン(BSA)、牛ラクトフェリン(BLF)、Nローブ、又はCローブのいずれかが補充された培地(M)における、ヒト角膜輪部上皮細胞の増殖を示した図である。0、8、16及び24時間のインキュベーションの後に、CyQuantで測定された。全ての群についてn=8。等モルのBSAよりも増殖が少ない(p<0.001)。等モルのBSAよりも増殖が多い(p<0.05)。 増殖中のヒト角膜輪部上皮細胞の遊走による創傷の閉鎖が、1.28、6.4、12.8、64、及び128μMの濃度にて牛血清アルブミン(BSA)、牛ラクトフェリン(BLF)、Nローブ、又はCローブのいずれかが補充された培地(M)中の1mMヒドロキシ尿素で阻害されることを示した図である。全ての群についてn=8である。遊走バリヤーが除去された後、0、8、16及び24時間の時点で測定を実施した。遊走の度合いは等モルのBSAに比べて大きい(p<0.05)。遊走の度合いは等モルのBSAを下回る(p<0.001)。
以下、本発明の特定の実施形態について詳しく言及する。本発明を実施形態と関連させて記述するが、本発明をそれらの実施形態だけに限定すべきものでないことを理解されたい。本発明は寧ろ、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲内に含み得る全ての代替、変形態様、及び等価物を網羅するものとして意図されている。
当業者であれば、本明細書に記載されている方法及び材料と類似しているか等しい多くの方法及び材料が、本発明の慣行にて使用できることを認識するであろう。いかなる場合も、本発明は記載されている方法及び材料に限定されない。
「ラクトフェリンのCローブ」という用語は、ラクトフェリンのC末端ローブを指す。上記したように、この蛋白質は2つの球状領域に折り畳み込まれた単一のポリペプチド鎖で構成される。これらの領域は、Nローブ及びCローブと呼ばれ、蛋白質のアミノ(Nローブ)末端半分及びカルボキシ(Cローブ)末端半分に対応している。各ローブには1つの鉄結合部位が含まれている。ラクトフェリン蛋白質は約690アミノ酸の長さを有し、そのCローブは約アミノ酸364(少なくとも牛ラクトフェリンの場合)からC末端(例えばアミノ酸690)までのアミノ酸配列に対応していることが明らかにされてきた。CローブのN末端は、アミノ酸364に位置し得るか、又はその位置の2つ若しくは3つのアミノ酸の範囲内(例えば、アミノ酸361〜アミノ酸366)に位置し得る。一実施形態において、Cローブのアミノ酸配列は、図1に図示されている(配列番号1と定義された)。本発明は、公示されている全てのラクトフェリン配列及びそれに含まれるCローブ配列にまで及ぶ。
好適な実施形態において、Cローブは牛ラクトフェリンから誘導され、配列番号1に準じた配列を有する。本明細書に明示されているように、本発明はまた変異体も包含する。その変異体は、例えば種の変異体又は多型性の変異体であり、後述するアミノ酸配列を包含する。ここで、括弧内()の1種以上のアミノ酸は、それに先行するアミノ酸と置き換えられる。
YTRVVWCAVGPEEQKKCQQWSQQSGQNVTCATASTTDDCIVLVLKGEADALNLDGGYI(V)YTAGKCGLVPVLAENRKS(T)SKH(Y)SSLDCVLRPTEGYLAVAVVK(R)KANEGLTWNSLKDKKSCHTAVDRTAGWNIPMGLIVNQTGSCAFDEFFSQSCAPGA(R)DPKSRLCALCAGDDQGLDKCVPNSKEKYYGYTGAFRCLAEDVGDVAFVKNDTVWENTNGESTADWAKNLNREDFRLLCLDGTRKPVTEAQSCHLAVAPNHAVVSRSDRAAHVKQVLLH(R)QQALFGKNGKNCPDKFCLFKSETKNLLFNDNTECLAKLGGRPTYEEYLGTEYVTAIANLKKCSTSPLLEACAFLTR
「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」という用語は、通常はアミド結合で互いに結合される、アミノ酸のポリマーを指す。機能的に活性なアミノ酸のポリマーは、一般に「蛋白質」と呼ばれる。
ラクトフェリンのイソ型はいくつか存在しており、この理由から、ラクトフェリンという蛋白質を構成するアミノ酸の正確な数は変動し、それに応じて、蛋白質中におけるCローブの正確な位置も変動する。本発明は、全ての機能的に活性な断片、及び後述する方法で検定された活性と同じ活性を呈するCローブの変異体を網羅することを意図している。この変異体はまた、C−ローブのアポ型及びホロ型、翻訳後修飾型、グリコシル化された誘導体、又は脱グリコシル化された誘導体も包含する。Cローブは、全ラクトフェリンのCローブとNローブとの間に発生する中間ローブ領域、又はその一部を任意選択的に含み得る。中間ローブ領域は、ラクトフェリンの任意のイソ型又は種変異体の配列を有し得る。
ラクトフェリンのCローブのポリペプチド配列の断片又は変異体に関して、「機能的に活性」という用語は、角膜創傷を癒合させる能力のある断片又は変異体(類似体、誘導体、若しくは突然変異株等)で、例えば、下掲の方法で検定された処置対象の創傷に塗布されるものを意味する。そのような変異体には、天然由来の変異体、及び非天然由来の変異体が包含される。修飾によって断片又は変異体の機能活性が低下しない限り、1種以上のアミノ酸の付加、削除、置換及び誘導体化が企図される。機能的に活性な断片は、アミノ酸配列を短縮すれば容易に定量できる。この短縮を行うには、例えば、エキソペプチダーゼを使用するか、又はアミノ酸配列を短い長さに合成してから、下記の実施例で例示されている方法等で任意の創傷癒合活性を試験する。
断片は非天然のバリエーションが見出される場合、疑似ペプチドと呼んでもよく、この疑似ペプチドも本発明の範囲内に含まれる。例えば、合成アミノ酸及びその類似体は、1種以上の天然型アミノ酸と置換でき、これにより、下記の方法で検定される創傷癒合活性が得られる。
「疑似ペプチド」は合成の化学化合物であり、その構造及び/又は機能的特性は本発明のペプチドと実質的に同じである。後者に関しては、本明細書中で更に記述する。典型的には、疑似ペプチドは、本発明のペプチドと同じ又は類似する構造(例えば、ラクトフェリンのCローブと同じ又は類似する配列)を有する。疑似ペプチドは一般に、天然に合成されない少なくとも1つの残基を含む。疑似ペプチド化合物の非天然成分は、
a) 天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連鎖以外の残基連鎖群、
b) 天然由来のアミノ酸残基に代わる非天然の残基、又は
c) 第2の構造擬態物を誘導するか又は安定させる残基(例えば、βターン、γターン、βシート、α螺旋構造、及びこれらに類するもの)
のうちの1つ以上に準じ得る。
疑似ペプチドは、科学文献及び特許文献(例えば、Organic Syntheses Collective Volumes,Gilman et al.(eds)John Wiley & Sons,Inc.,NY;al−Obeidi;Mol Biotechnol 1998;9:205−223;Hruby Curr Opin Chem Biol 1997;1:114−119;Ostergaard Mol Divers 1997;3:17−27;Ostresh Methods Enzymol 1996;267:220−234)に記述されている様々な手順、及び方法論を使用して合成し得る。
好ましくは、機能的に活性な断片は、30、40、50、60、70、80、90アミノ酸、又はそれを超えるアミノ酸長を有する。機能的に活性な断片又は変異体は、断片又は変異体が対応している配列番号1の該当部分に対して好ましくは少なくとも約60%の同一性を有し、より好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、又は85%の同一性を有し、更により好ましくは90%の同一性を有し、更により好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。機能的に活性な断片又は変異体は、ラクトフェリンのCローブからのアミノ酸の近接配列に対応し得るか、又はその近接配列に対して同一性を有し得る。一方、機能的に活性な断片は、ラクトフェリンのCローブの三次元構造において空間的にクラスター形成するアミノ酸の配列に対応し得るか、又はその配列に対して同一性を有し得ることも企図される。
この種の機能的に活性な断片及び変異体には、例えば、保存的アミノ酸置換を有するものも包含される。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大限のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズム(後述の非限定例)を含めた、アラインメント測定用の適切なパラメーターを特定し得る。アミノ酸配列をアラインしたとき、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bへの、Bとの、若しくはBに対するアミノ酸配列の同一性パーセンテージ(或いは、所与のアミノ酸配列Bへの、Bとの、若しくはBに対する特定のアミノ酸配列の同一性パーセントを有するか又は含む所与のアミノ酸配列Aとも言い表し得る)は、アミノ酸配列の同一性パーセント=(X/Y)×100として計算し得る。ここで、Xは、配列アライメントプログラムによるA及びBのアライメント、又はアルゴリズムによるA及びBのアライメントを介して同一の一致としてスコアされるアミノ酸残基の数である。Yは、B内のアミノ酸残基の合計数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと不等価の場合は、Bに対するAのアミノ酸配列の同一性パーセントが、Aに対するBのアミノ酸配列の同一性パーセントと不等価になる。
同一性パーセントの計算では、完全一致が計数対象になる。2つの配列間の同一性パーセントの定量は、数学アルゴリズムを使用して達成し得る。2つの配列の比較に用いられる数学アルゴリズムの非限定例としては、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc Natl Acad Sci 1990 USA;87:2264)に記載されかつKarlin及びAltschul(Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:5873−5877)において改変されたアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、AltschulらのBLASTN及びBLASTXプログラム(J MoI Biol 1990;215:403)に組み込まれている。Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res 25:3389に記載されているように、比較目的でギャップ付きの配列を得る際は、Gapped BLAST (BLAST 2.0)を利用できる。或いは、PSI−Blastを使用して分子間の遠縁の類縁関係を検出する反復サーチ(iterated search)を実行できる。上記のAltschulら(1997)を参照のこと。好適な一実施形態においては、BLAST、Gapped BLAST、及びPSI−Blastプログラムを利用する際にそれぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)の初期設定パラメーターを使用できる。アラインメントはまた、インスペクションにより手動でも実行できる。配列の比較に用いられる数学アルゴリズムの非限定例としては、それ以外にもClustalWアルゴリズム(Higgins et al.Nucleic Acids Res 1994;22:4673−4680)が挙げられる。ClustalWでは配列を比較し、アミノ酸配列又はDNA配列の全体をアラインすることによって配列の保存についてのデータを得ることができる。ClustalWアルゴリズムを使用できる市販のDNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージは、例えば、Vector NTIプログラムスイートのALIGNXモジュール(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)等いくつかある。ClustalWでアミノ酸配列がアラインされた後は、アミノ酸の同一性パーセントを評価できる。ClustalWアラインメントの分析に役立つソフトウェアプログラムの非限定例としては、GENEDOC(商標)又はJalView(http://www.jalview.org/)が挙げられる。複数の蛋白質間のアミノ酸(又はDNA)類似性及び同一性は、GENEDOC(商標)で評価できる。配列の比較に用いられる数学アルゴリズムの非限定例としては、ほかにもMyers及びMiller(CABIOS 1988;4:11−17)のアルゴリズムが挙げられる。この種のアルゴリズムは、GCG Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン10(Accelrys,Inc.,9685 Scranton Rd.,San Diego,CA,USAから入手可能)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。好適な一実施形態においては、同一性パーセントを評価する際、アミノ酸配列を比較するためのALIGNプログラムを利用し、PAM120重量残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する。
「保存的アミノ酸置換」という用語は、或るアミノ酸を同じクラスの別アミノ酸で置換することを言う。クラスの種類としては下掲のものが挙げられる。
無極性:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met Phe、Trp
非荷電極性:Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln
酸性:Asp、Glu
塩基性:Lys、Arg、His
上記以外にも、次のような保存的アミノ酸置換を行うことができる。
芳香族:Phe、Tyr、His
プロトン供与体:Asn、Gln、Lys、Arg、His、Trp
プロトン受容体:Glu、Asp、Thr、Ser、Tyr、Asn、Gln
「処置」又は「治療」という用語は、被検者の処置を要する症状(例えば、角膜創傷)が改善されるように、ペプチド又は疑似ペプチド(ラクトフェリンのCローブ等)を含む治療上有効量の組成物を、被検者に投与することを言う。治療によって症状を改善し得るが、症状の完全治癒は可能でないことが認められるであろう。医薬組成物は、ラクトフェリンのCローブ、又は1種以上の機能的に活性な断片若しくはその変異体を含有し得る。
「被検者」という用語は、ラクトフェリンのCローブを含む組成物が投与される任意の動物を指す。好適な実施形態において、被検者は創傷を患うヒト患者である。創傷は好ましくは角膜創傷であり、一実施形態においては角膜上皮の創傷である。本発明はヒトにおける適用が見出されるが、本発明は家畜病治療の用途にも役立つ。本明細書に記載されているように、本発明は牛、羊、馬、及び家禽等の家畜、猫及び犬等のペット、並びに動物園の動物の創傷の治療に有用である。
「治療上有効量」又は「有効量」という用語は、1つ以上の疾患又は症状の徴候の改善又は治療に帰着するペプチド又は疑似ペプチドの分量を指す。
「創傷」という用語は、疾患若しくは障害の結果としての、又は事故、事件若しくは外科的処置(例えば、レーシック又はPRK)の結果としての、潰瘍若しくは病変等の損傷を指す。例えば、創傷は角膜を異物(例えば砂)又はコンタクトレンズに接触させることによって引き起こされる擦傷であり得る。創傷は、アルカリ損傷、即ち、アルカリ誘導の創傷、又は他の任意の化学的火傷の結果である角膜創傷であり得る(特に、他の創傷若しくは損傷を伴うか伴わないかを問わない、角膜上皮の創傷を含む)。潰瘍は感染、炎症、又は自己免疫を原因とし得る。病変は非癒合角膜病変であり得る。創傷はドライアイ症状の結果であり得る。
「医薬組成物」という用語は、ペプチド又は疑似ペプチド(例えば、ラクトフェリンのCローブ)を含む組成物で、薬学的に許容可能な担体中に分散されているものを指す。医薬組成物は、ラクトフェリンのCローブ、又は1種以上の機能的に活性な断片若しくはその変異体を含有し得る。本組成物は1種以上の付加的な賦形剤、例えば、希釈剤、乳化剤、緩衝剤、安定化剤、結合剤、充填剤、及びこれらに類するものを更に含有し得る。本組成物はまた、任意選択的に有効量の他の薬学的活性成分も含有し得る。例えば、キノロン族のメンバー、又はアミノグリコシドとβラクタムとの組み合わせ等の抗生物質も包含し得る。クロラムフェニコール、テトラサイクリン及びマクロライドを含むが、これらに限定されない他の抗生物質も使用し得る。更に、本組成物は1種以上の抗炎症剤を含有し得る。その抗炎症剤は、ステロイド性、又は非ステロイド性の抗炎症剤であり得る。
本発明に係る医薬組成物はまた、ラクトフェリンのCローブのみを含有し得る(即ち、ラクトフェリンのCローブから本質的になるものであってもよい)。或いは、本発明は、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になるペプチド若しくは疑似ペプチドを、他の任意のペプチド、疑似ペプチド及び/又は他の活性成分よりも高濃度に含む医薬組成物を包含する。
本明細書において文脈上別途要求されない限り、「含む(comprise)」という用語及びその用語の変形態様、例えば「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含んだ(comprised)」等は、更なる添加剤、成分、整数、若しくは工程を除外することを意図したものではない。
本発明は角膜創傷を処置するものであり、有効量のペプチド又は疑似ペプチド(例えば、ラクトフェリンのCローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体)を含む医薬組成物を被検者に投与する工程を含む。本発明は特に角膜創傷の治療に関する。本発明によって企図される角膜創傷の種類は、特に角膜上皮の創傷である。創傷は、例えば、眼をアルカリ剤に暴露したこと等によって生じた化学的損傷(即ち、アルカリ誘導の創傷)又は外科的アルコールデブリードマンの結果であり得る。アルカリ誘導の創傷は、例えば、アルカリ液体、肥料、石膏、及びセメント粉末、家庭用クリーニング製品(特にアンモニアを含むもの)、ドレイン洗浄剤、オーブン洗浄剤、及びこれらに類するものに対して偶発的に眼を暴露することによって生じ得る。本発明はまた、角膜への病原体の侵入を最小限に抑える助けにもなる。
アルカリ暴露は、上皮細胞死滅、支質コラーゲンの変性を引き起こすほか、角膜及び内側の眼を、異物及び病理学的薬剤が侵入する危険に曝す。アルカリ誘導の創傷は、炎症反応を強め創傷癒合を阻害する。また、それによって、視覚を脅す二次的合併症(例えば微生物感染症)を起こし得る危険期間を長引かせるという特徴がある。重傷の場合はまた、上皮の潰瘍化の再発、慢性的な支質潰瘍、深在性の支質新血管形成、結膜肥大、又は角膜穿孔にさえ帰着する可能性もある。
本発明のペプチド又は疑似ペプチドによって又は本発明の方法若しくは使用によって処置し得る他の角膜創傷は、デブリードマン、擦傷、掻傷、又は他の任意の摩耗性損傷から生じる創傷である。これらの創傷は一般に、非炎症性創傷と見なされる。
ラクトフェリンのCローブはNローブ又は天然型(即ち、全)ラクトフェリンのいずれよりも強力に創傷閉鎖の速度を速める能力があることが、出願者らによって発見された。
従来は、角膜の別の部分の癒合(即ち、角膜支質創傷の癒合)の促進が、天然型ラクトフェリンが線維芽細胞の増殖を刺激する(結果として細胞外基質が合成される)ことによるものであると考えられていた。対照的に、本発明は線維芽細胞を含まない角膜上皮の創傷の治療に関するものである。出願人らはいかなる理論又は作用の様式にも拘束されるものではなく、ラクトフェリンのCローブが、眼表面全体にわたる上皮細胞の遊走促進と、種々のサイトカイン及び成長因子(例えば、IL−6及びPDGF)の発現の上方制御によって、上皮の創傷の閉鎖の速度を速めることを提唱している。
その基本解剖図を図2に示す。角膜の外部表面を形成する最前部の層が、上皮である。この層はその大部分が細胞様である(ケラチノサイトから構成されている)。上皮の下部にあるのが、支質である。支質は角膜実質細胞を含み、コラーゲンを主成分としている。角膜実質細胞は、極めて緻密な分岐で接合されたコラーゲン層の間に緩く連結された網状組織を形成しており、支質の約10%を占める。角膜上皮細胞(ケラチノサイト)の遊走は、フィブロネクチンの暫定的基質(角膜上皮の創傷部位における支質の暴露した表面に出現する、粘着性の細胞外糖蛋白質)の全体にわたって発生する。フィブロネクチンの発現が損傷後に増大することと、特定の成長因子が細胞遊走に対するフィブロネクチンの影響を増大し得ることが、明らかにされてきた。上皮の創傷癒合の場合、これらの成長因子が天然型ラクトフェリンを介して上向き調節する仕組みは、創傷癒合及びPDGF−信号経路に関与する種々の受容体とこれらの成長因子との相互作用に起因し得ることが提唱されている。
上述したように、CローブがNローブ及び天然型ラクトフェリンと比較して効力を増すことは、いかなる理論又は作用の様式にも拘束されるものではなく、立体因子、基質親和性の増大、又はNローブからの阻害作用に起因するものであり得る。例えば、不要な40kDaのNローブからCローブを解放すると、特定の標的結合部位におけるペプチドの立体障害が軽減され、それにより、創傷癒合が促進され得る。別の態様では、偏在する陰イオン基質(例えば、硫酸化アミノグリカン)にラクトフェリンのN末端付近の陽イオン性アルギニンが牽引される力が、標的への結合に利用可能なラクトフェリンを減らし、創傷癒合を促進するであろう。最後に、創傷閉鎖に対してやや拮抗的な活性(例えば、蛋白質分解活性)は、Nローブペプチドに存在し得る。
本発明はまた角膜創傷の閉鎖を加速する方法にも関し、この方法は、ラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物、又はラクトフェリンのCローブ又は機能的に活性な断片若しくはその変異体を含んでなる治療上有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む医薬組成物を、必要とする被検者に投与する工程を含む。本発明のペプチド又は疑似ペプチドで処置された創傷の方が、未処置の創傷及び/又は全ラクトフェリンで処置された創傷と比較して、閉鎖の加速度が大きい。角膜創傷の閉鎖を加速させることは、角膜に対する更なる損傷を阻止するうえで、及び/又は感染若しくは潰瘍化の危険を最小限に抑えるうえで有益である。加えて、創傷閉鎖を加速させることは、視覚的機能の高速な解像力に帰着する。
当業者に公知の何らかの好適な方法でラクトフェリンのCローブを得ることができることは、当業者によって理解されるであろう。それらの方法としては、組み換え技術、遺伝子工学を用いたデノボ合成及び/又は化学的な合成技術、天然原料(例えば哺乳類の牛乳)からの単離、精製及び蛋白質分解、並びに商業的供給源からの購入が挙げられるが、これらに限定されない。このような方法で、Cローブを精製、単離、組み換え、又は合成し得る。
好適な実施形態において、Cローブは、天然供給の組み換え型ラクトフェリン、又は市販のラクトフェリンをNローブ及びCローブに蛋白質分解することによって得られる。好ましくは、プロテアーゼはトリプシンである。この場合、Nローブ及びCローブは、当業者に公知の技術(例えば、クロマトグラフィ等)を任意の数だけ使用して相互に分離し得る。
陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィは、好適な方法である。
ペプチド又は疑似ペプチド(例えば、本発明の医薬組成物中に存在するCローブ等)の濃度は、例えば10〜70μMの間であり得る。
本発明に係る医薬組成物は、眼への投与又は塗布に適した眼用組成物であり得る。本発明に係る眼用組成物の例としては、懸濁液、軟膏、持続的放出製剤(コンタクトレンズ又は他の生体適合物質に装填された場合を含む)、点眼剤としての用途に好適なゲル類又は溶液がある。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、局所投与又は持続的放出送達の用途に合わせて処方される。好ましくは、本発明に係る組成物は眼への投与に好適な形態である。被験者が影響を受けた眼に溶液を1〜2滴点眼してこの種の組成物を容易に投与できる度合いと、処方の容易さを基準とした場合、一般に好適なのは水溶液であるが、組成物は懸濁液、粘性若しくは半粘性のゲル類、又は他の種類の固体若しくは半固体組成物、或いは持続的放出に適したものであってもよい。医薬組成物は、人工涙処方物又はコンタクトレンズ溶液等の眼潤滑剤であってもよい。
本発明に係る組成物に任意に使用できる担体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、炭素数1〜7のアルカノール類)との混合物、0.5〜5%の非毒性水溶性ポリマーを含む植物油若しくは鉱物油、ゲル化生成物(例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントゴム、カラヤゴム、キサン、カラゲーニン、寒天及びアカシア、並びにそれらの誘導体)、澱粉誘導体(例えば、スターチアセテート並びにヒドロキシプロピルスターチ)、及び他の合成産物、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは架橋したポリアクリル酸(例えば、中性カーボポール(Carbopol))、若しくはこれらのポリマーの混合物、天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、若しくはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアラート)、若しくはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、若しくはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート)等、様々なものが挙げられる。
水性懸濁液を水の添加により調製する用途に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1種以上の保存剤との混合物中で活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁剤としては、既に上述したものが例示される。
本発明に係る組成物は、少なくとも1種のゲル化剤を含有し得る。医薬組成物での使用に好適なゲル化剤は当業者に周知であり、例えば、キサンタンガム及びその誘導体、カルボマー及びその誘導体、アクリレート系共重合体及びクロスポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、澱粉及び寒天並びにそれらの誘導体が包含される。本発明に係るゲル化剤の選択は、透明なゲルを得るうえで重要である。本組成物に添加されるゲル化剤の分量は、当業者であれば最小限の実験で容易に定量することが可能であり、かつ当業者に公知の因子(例えば、ゲル化剤の特性、及び医薬組成物の所望の特性)に依存する。
本発明に係る医薬組成物に含有し得る付加的な成分としては、張性増強剤、保存剤、可溶化剤、安定化剤、非毒性賦形剤、粘滑剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、助溶剤、及び粘度上昇剤が挙げられる。pH調整、好ましくは生理的pHの調整には、緩衝剤が特に役立ち得る。本溶液のpHは、4〜8の範囲内、好ましくは6〜7.5の範囲内に維持されるべきである。眼表面に適合するpHであればいずれも好適であることは、当業者によって理解されるであろう。好適な緩衝剤、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、エデト酸二ナトリウム(EDTA)及び種々の混合リン酸塩緩衝剤(NaHPO、NaHPO及びKHPOの組み合わせを含む)、並びにそれらの混合物を添加し得る。一般的に、緩衝剤は約0.05〜0.5Mの範囲の濃度で使用される。
張性を調整する必要がある場合、典型的には張性増強剤が用いられる。この種の薬剤は、例えば、イオン性及び/又は非イオン性の型であり得る。イオン性の張性増強剤の例としては、アルカリ金属若しくはハロゲン化土類金属(例えば、CaCl、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr若しくはNaCl等)、NaSO、又はホウ酸が挙げられる。非イオン性張性増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、又はデキストロースである。本発明の水性溶液は、正常な涙液の浸透圧に近似するように、典型的には張性増強剤を用いて調整される。
特定の実施形態において、本発明に係る組成物は付加的に保存剤を含む。保存剤は一般的に、塩化ベンザルコニウム(N−ベンジル−N−(C−C18アルキル)−N.N−ジメチルアンモニウムクロリド)、塩化ベンゾキソニウム、又はそれに類するもの等の4級アンモニウム化合物から選択し得る。4級アンモニウム塩以外の保存剤の例としては、チオサリチル酸のアルキル水銀塩(例えば、チオマーサル、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀若しくはホウ酸フェニル水銀等)、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、パラベン(例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等)、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエタノール等)、グアニジン誘導体(例えば、クロロヘキシジン若しくはポリヘキサメチレンビグアニド等)、過ホウ酸ナトリウム、Germal(商標登録)π、又はソルビン酸がある。好ましい保存剤は、4級アンモニウム化合物、特に塩化ベンザルコニウム、又はその誘導体、例えば、塩化ポリドロニウム(Polyquad)(米国特許第4,407,791号明細書を参照のこと)、アルキル水銀塩、及びパラベンである。必要に応じて、使用中における細菌及び真菌に起因する二次的汚染から確実に保護するための充分な量の保存剤が、眼用組成物に添加される。
他の実施形態において、本発明に係る組成物は保存剤を含まない。この種の処方物は、コンタクトレンズを装用する被験者に特に有用である。
本発明に係る組成物は、特に活性成分又は不活性成分が懸濁液又は乳濁液を形成する傾向がある場合、可溶化剤の存在を付加的に必要とし得る。上述した当該の組成物に好適な可溶化剤は、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエステル、シクロデキストリン(例えば、α−、β−若しくはγ−シクロデキストリン、例えばアルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化若しくはアルキルオキシカルボニルアルキル化誘導体、或いはモノ−又はジグリコシル−α−、β−若しくはγ−シクロデキストリン、モノ−又はジマルトシル−α−、β−若しくはγ−シクロデキストリン、或いはパノシル−シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はそれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に好適な可溶化剤の具体的な例としては、ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物(例えば、市販品であるCremophor EL(商標登録)又はCremophor RH40(商標登録))が挙げられる。ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物は、眼が極めて充分な耐容性を示す、特に適した可溶化剤であることが証明されてきた。別の好ましい可溶化剤は、チロキサポール及びシクロデキストリンから選択される。用いられる濃度は、特に活性成分の濃度に依存する。添加される量は一般的に、活性成分を可溶化するうえで充分な量である。
本組成物は、例えば、乳化剤、湿潤剤、又は充填剤(例えば、200、300、400及び600と命名されたポリエチレングリコール類、又は1000、1500、4000、6000及び10000と命名されたカーボワックス)等の非毒性賦形剤を更に含有し得る。添加される賦形剤の分量及び種類は、特定の要件に準じる。本組成物が眼に適したものとなるように本組成物中に配合し得る賦形剤、並びに他の添加剤の種類及び分量は、当業者によって理解されるであろう。担体の粘性を増す目的に、本発明の組成物に他の化合物を添加してもよい。粘性増強剤の例としては、多糖(例えば、ヒアルロン酸及びその塩類、コンドロイチン硫酸及びその塩類、デキストラン類、セルロース系の種々のポリマー類)、ビニルポリマー類、及びアクリル酸ポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る例示的な眼用溶液は、本発明のペプチド又は疑似ペプチド、塩化ナトリウム、二ナトリウムマレイン酸塩、塩化ベンザルコニウム、水酸化ナトリウム、塩化水素、滅菌精製水、及び約7.45の生理的pH、又は眼に快適な範囲内のpHを有する溶液を包含する。最大限の快適さを得るには、眼用溶液のpHが涙液と同じであるか、又は溶液のpHが眼に快適な範囲(即ち、pH6.6〜7.8の間)に収まっていなければならない。或いは、本溶液は本発明のペプチド又は疑似ペプチド、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ベンザルコニウム、水酸化ナトリウム、塩酸、滅菌精製水、及び上記pHを有する溶液を包含し得る。
例示的な眼用溶液は、次に示すとおりである。
本発明のペプチド又は疑似ペプチド:0.3%〜0.5%(w/v)
塩化ナトリウム:0.9%(w/v)
リン酸二水素ナトリウム二水和物:0.08%(w/v)
塩化ベンザルコニウム:0.005%(w/v)
滅菌精製水:充分量
ここで、溶液のpHは生体適合性の何らかの酸、及び/又はアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、及び塩化水素)を用いれば、生理的pH、又は眼球に快適な範囲内のpHに調整される。
本発明に係る医薬組成物は、創傷の治療に有効な他の活性成分(例えば、成長因子、洗浄剤、及び抗生物質)を含有し得る。医薬組成物はまた、皮膚置換療法、酵素的デブリードマン、外科的デブリードマン、創傷被覆、及び圧迫等の治療と組み合わせて投与し得る。これらの活性成分及び治療は一般に、創傷の癒合を促進するうえで有効な総計量(combined amount)で提供される。これは、本発明に係る組成物及び活性成分/治療薬を同時に、又は投与によって所望の作用の相乗効果が得られるよう時間的に充分に近付けて、投与する工程を含む。或いは、本発明に係る組成物は、他の治療薬に先行してもよく又はその後であってもよい。本発明に係る組成物の投与は、レーシック手術等の選択的手術の最中であってもよく、又はその後であってもよい。
本組成物は、当業者が好適であると考える任意の方法で投与できる。医薬組成物は局所的に投与し得る。
本発明に係る組成物は、創傷が完全に癒合するまで又は所望のレベルの創傷癒合が達成されるまで、任意の期間にわたって1回又は複数回投与できる。当業者であれば、投与分量、用法、及び治療期間が、例えば、創傷の種類、創傷の部位、及び被検者の健康等の因子に依存することを認めるであろう。化学的損傷の場合、必要とされる治療は、損傷を受けた眼表面の範囲、化学薬品による眼内浸透の程度、並びに関与する薬剤の濃度及び性質等の因子によって決まるであろう。一実施形態において本組成物は、30分おき又は1時間ごとに、例えば1日に最大8回投与される。
キット又は「製品」は容器を具備するほか、その容器に付属若しくは付随するラベル又は添付文書も具備し得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスター包装等が挙げられる。容器を形成できる材料は、ガラス又はプラスチック等、様々なものがある。容器は症状の処置に有効なペプチド、疑似ペプチド又は医薬組成物を保持し、滅菌の点検口を備えていてもよい(例えば、容器は静脈内溶液バッグであってもよく、又は皮下注射針を貫通できるストッパー付きバイアルであってもよい)。ラベル又は添付文書には、特定の症状の処置にペプチド、疑似ペプチド、又は医薬組成物のどれを用いるかが指示されている。一実施形態においては、ラベル又は添付文書に使用上の指示が記載されていて、治療組成物を角膜創傷の処置に使用できることが指示されている。
キットは(a)ペプチド、疑似ペプチド又は医薬組成物と、(b)第2の活性原末又は活性成分を収容する第2の容器とを具備し得る。本発明のこの実施形態においてキットは、ペプチド、疑似ペプチド又は医薬組成物、及び他の活性原末が角膜創傷の処置に使用できる旨を指示した添付文書を更に具備してもよい。代わりに又は付加的に、キットは、薬学的に許容可能な注入用の静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液等の緩衝液を含む、第2の(又は第3の)容器を更に具備し得る。商業的な観点及びユーザーの観点から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードル、及びシリンジを含む)を更に含んでもよい。
以下、添付の実施例及び図面を参照しながら、本発明について更に詳しく説明する。ただし、以下の説明は単なる例示であって、上述したような本発明の一般性をいかなる方法によっても制限するものと見なすべきでないことを理解されたい。
発明者らはアルカリ誘導の創傷モデルを使用して、ヒト角膜上皮創傷の癒合を促すラクトフェリンの構造を同定した。
要約すれば、トリプシンによる蛋白質の限定分解にてBLFローブを分離し、陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィを使用して精製した。牛ラクトフェリン(BLF)のイソ型を、ベンズアミジンアフィニティカラム使用時のセリンプロテアーゼ活性、及びそれらの触媒活性に従って分離した。BLFローブのイソ型についても、合成セリンプロテアーゼ基質Z−Phe−Arg−7−アミド−4−メチル−クマリンを加水分解して定量した。これらの残基による創傷癒合の促進、及びBLF(除鉄型、鉄結合型、脱グリコシル化されたBLF、双性イオン洗剤に暴露されたBLF、カオトロープで変性されたBLF、還元アルキル化されたBLF、及びラクトフェリンBペプチド(LFcin B))の創傷癒合の促進を、0.1M水酸化ナトリウムに浸漬した濾紙ディスクで損傷させたヒト角膜輪部上皮細胞のコンフルエントな単層と共にインキュベートして評価した。
リムルス変形細胞ライセートアッセイ(QCL−1000;Lonza,Walkersville,MD)を使用して、メーカーの指示に従い、BLFエンドトキシン内容物を分析した。
除鉄型(アポ)牛ラクトフェリン(a−BLF)を、Masson et al(Metal−combining properties of human lactoferrin (red milk protein).1.The involvement of bicarbonate in the reaction.Eur J Biochem 1968;6:579−584)による記述に修正を加えた方法にて調製した。BLFの1%溶液の鉄(寄贈元:Dr Andrew Brown,Murray Goulburn Co−operative,Cobram,VIC,Australia)を、遠心限外濾過装置(10kDa cut−off Amicon Ultra;Millipore,Bedford,MA)で4℃にて0.1Mのクエン酸に接触させて除去した。
その後、結果として得られた透明溶液を、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)にバッファー置換し、限外濾過で濃縮した。
Bates et al(The reaction of ferric salts with transferrin.J Biol Chem 1973;248:3228−3232)と同様な方法で、鉄錯体である鉄ニトリロ三酢酸(Fe−NTA)を添加して、鉄飽和型(ホロ)牛ラクトフェリン(h−BLF)を調整した。pH7.4の20mMトリス塩酸緩衝液に溶かしたBLFの1%溶液に、5mM重炭酸塩を添加し、その後ですぐ、2:1のモル過剰になるように鉄ニトリロ三酢酸(Fe−NTA)と混合して、1時間インキュベートした。その後、h−BLFをPBSにバッファー置換し、上記と同様の方法で濃縮した。
分光測光法を用い280nm:465nmの吸光度の比でa−BLFの鉄飽和を確認した(Structural studies on bovine lactoferrin.Biol Chem 1970;245:4269−4275)。
Sojar及びBahlによるプロセス(A chemical method for the deglycosylation of proteins.Arch Biochem Biophys 1987;259:52−57)に準じて、BLFからグリカン鎖を化学的に除去した。10%BLF溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TFMS;Sigma)を加えて氷上で30分間インキュベートし、その後−20℃にて60%のピリジンで中和し、PBSにバッファー置換した。ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にて、7.5%トリス塩酸ポリアクリルアミドゲル中のBLFバンドの見かけの分子量の減少により、進行がモニターされた。
還元アルキル化されたBLFの調製物は、次の方法で調製された。6Mのグアニジン塩酸(Gdn−HCl;Sigma)含有又は不含のpH8.5の0.6Mトリス塩酸及び2%の3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート(CHAPS;Sigma)に溶かしたBLFの1%溶液に、β−メルカプトエタノール(Sigma)を添加し、ジスルフィド結合含量に対し50倍モル過剰にして4時間インキュベートして還元した。新たに調製されたヨードアセトアミド(Sigma)を、還元剤をやや下回る濃度(例えば、6mM)まで添加することによって、アルキル化を行った。15分間のインキュベーションの最中は溶液を光線から保護し、その後で4℃にてPBSにバッファー置換した。
セリンプロテアーゼの活性及び単離
蛋白質分解活性を有するBLFの画分は、メーカーのプロトコールに従って使用されるベンズアミジンセリンプロテアーゼアフィニティカラム(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)で精製された。概略説明すると、0.5MのNaClを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)が入ったカラムにBLFを装填し、結合画分をpH2.0で収集緩衝液中に溶出させてpHを生理的なレベルに戻した。BLFの蛋白質分解活性を不可逆的に阻害するために、1mMフッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF;Fluka Analytical,Buchs,SG,Switzerland)を10:1のモル過剰になるように添加し、その後にバッファー置換で除去した。BLFの蛋白質分解活性の定量は、Massucci et al(Proteolytic activity of bovine lactoferrin.Biometals 2004;17:249−255)を改変して行った。セリンプロテアーゼ活性の測定は、基質としてN−α−ベンジルオキシカルボニル−フェニルアラニン−アルギニン−7−アミド−4−メチル−クマリン(Z−Phe−Arg−AMC;Sigma−Aldrich,St Louis,MO)を用い、100mMのNaClを含むpH7.0の20mMリン酸塩緩衝液中3〜300μMの濃度で25℃にて行った。0.1μMのBLFによるペプチドの開裂及びAMC基の遊離を、放出波長465nm及び励起波長360nmで分光蛍光分析によってモニターし、初期反応速度を算出した。動力学的パラメーターK及びkcatは、ラインウィーバー・バークプロット(Lineweaver−Burk plot)の線形回帰によって外挿された。BLFセリンプロテアーゼアフィニティカラム画分、BLFローブ、及びセリンプロテアーゼ阻害BLFの反応速度は、30μMのZ−Phe−Arg−AMCを使用して比較された。
BLFローブの精製
BLFをNローブ断片及びCローブ断片に分離させた。これは、Legrand(Characterization and localization of an iron−binding 18−kDa glycopeptide isolated from the N−terminal half of human lactotransferrin.Biochim Biophys Acta 1984;787:90−96)からの改変である。25mMのCaCl含有の0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.2)中のBLFを、基質1mg当たり25TAMEユニットの固定化トリプシン(Pierce,Rockford,IL)で消化し、37℃で穏やかに撹拌した(1TAMEユニットでは、10mMのカルシウムの存在下、25oC、pH8.2において1分間に1μモルのp−トルエンスルホニル−Lアルギニンメチルエステル(TAME)が加水分解される)。0.5時間及び4時間のインキュベーション時間を取り、Nローブ及びCローブの収率をそれぞれ最大限に増大させた。メーカーの指示に従い、試料からトリプシンゲルを遠心分離させて反応を終了した。
50mMのHEPES(pH8.0)で平衡化したMono S 5/50 GLカラム(GE Healthcare)を使用して、ローブを陽イオン交換クロマトグラフィで精製した。同じ緩衝液中のNaCl濃度が1Mに上昇するように、直線濃度勾配をかけて溶出させた。10%酢酸(上記で言及したLegrand)及び150mMのNaClが入っているサイズ排除カラムBio−Gel P−60 26/1000(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)に、分離されたピークが0.4mL/minで適用された。SDS−PAGEを用いLaemmli系(Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4.Nature 1970;227:680−685)に準じて、BLF及び断片を12%トリス塩酸ゲル上に置き、クーマシーブルーR−250(Bio−Rad Laboratories)で染色して可視化した。1−Dゲル分析ソフトウェア(Quantity One,Bio−Rad)を使用して、蛋白質標準液(Precision Plus,Bio−Rad)について、還元された熱変性済み試料の見かけの分子量を計算した。
受動溶離で抽出されたポリアクリルアミドゲルバンドの最初の5アミノ酸のN末端配列決定によって、BLF断片の同定を準備し、画分が収集されたことを確認した。
細胞培養物
固定化されたヒト角膜輪部上皮(HCLE)細胞(寄贈元:Dr Ilene Gipson,Schepens Eye Research Institute,Boston,MA)を前述した方法で培養した(Mucin gene expression in immortalized human corneal−limbal and conjunctival epithelial cell lines.Invest Ophthalmol Vis Sci 2003;44:2496−2506)。概略説明すると、組織培養用に処置したプレートに細胞を2×10/cmで播種し、25ug/mLの牛下垂体抽出物、0.2ng/mLの組み換え型上皮成長因子、及び0.4mMのCaClが補充されたケラチノサイト無血清培地(K−SFM;Invitrogen−Gibco,Grand Island,NY)内で5%CO雰囲気中、37℃で維持した。それらの細胞を50%コンフルエントにてK−SFMと低カルシウムのダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)/ハムF12(Invitrogen)の1:1混合物に入れ替えてコンフルエントに達成させた。
HCLEアルカリ火傷創傷の癒合モデル
アルカリ誘導の火傷癒合にBLF誘導体が及ぼす作用を定量するために、0.1Mの水酸化ナトリウムに浸漬された濾紙ディスクを使用して、HCLE細胞のコンフルエントな単層を損傷させた。培地(1:1のK−SFM:低Ca2+DMEM/F12)を3回入れ替えて直ちに細胞をリンスし、pHを元に戻して、細胞破片を除去した。創傷領域を37℃、5%COにて治療溶液で24時間インキュベーションする前及びその後に、50倍の拡大率で撮影した。画像分析ソフトウェア(ImageJ 1.40g;National Institutes of Health,Bethesda,MD)を用いて創傷の領域を定量化した。結果は、創傷閉鎖の相対量(即ち、対照群における創傷領域の倍数として示した、複数の創傷領域の減少量)、又は創傷閉鎖のパーセンテージ(即ち、初期の創傷領域との比較で示した、創傷領域の減少率)のいずれかとして表された。
アルカリ火傷創傷の癒合モデル用の治療溶液は、濃縮BLF(アポ型、ホロ型、グリコシル化されたBLF、CHAPSに暴露されたBLF、塩酸グアニジン(Gdn−HCl)に暴露されたBLF、還元アルキル化されたBLF、及びLFcin B(American Peptide,Vista,CA))を希釈して、(上述したように)12.8μMの組織培養培地に入れて調整された。ベンズアミジンカラムの画分は、PMSFでの前処置有り又は無しの12.6μM及び254μMの天然型BLF内に存在する濃度に再組成された。BLFのNローブ及びCローブを最終濃度1.28、6.4、12.8、64及び128μMに調整した。等モルの天然型BLF及び牛血清アルブミン(BSA;Bovogen Biologicals,Essendon,VIC,Australia)の陽性対照及び陰性対照をそれぞれ各実験に含めた。使用されたLFcin Bはデノボ合成されたもので、BLFのアミノ酸20〜31に対応している。
統計分析
創傷癒合実験の場合、データは治療ごとに或る濃度における平均±試料サイズ8のSDとして集計される。BLF(アポ型、ホロ型、グリコシル化されたBLF、CHAPSに暴露されたBLF、塩酸グアニジン(Gdn−HCl)に暴露されたBLF、還元アルキル化されたBLF、LFcin B、Nローブ及びCローブ)の結果を評価し、一方向の分散分析(ANOVA)を使用して或る濃度範囲内での治療間の差異を定量した後、ボンフェローニ補正(Bonferroni correction)を使用して事後多重比較を行った。
ベンズアミジンカラム画分を使用した創傷癒合治験の結果分析は、上記の方法で分析し、濃度間における更なる比較を行った。反応速度実験では、一方向ANOVAを使用して残基間の差異を計算した後、ゲーム−ハウエル補正(Games−Howell correction)を使用して群の試料サイズ及び分散による事後多重比較を行った。
統計的有意性は、p<0.05であると見なされた。市販の統計分析ソフトウェア(SPSS;SPSS Inc.,Chicago,IL)を使用して分析を実施した。
結果
LALアッセイでの定量に従い、これらの実験に用いられた全てのBLFにおけるエンドトキシン含有量は、4EU/mg未満であることが見出された。
アルカリ損傷後の創傷の閉鎖のHCLE単層への促進の度合いは、鉄飽和型BLFを用いても変化がなかった。分光器分析で、鉄飽和がa−BLFの10%未満、h−BLFの90%超であることがわかった。a−BLF、天然型BLF、及びh−BLFは、BSA対照群と比較して創傷閉鎖を有意に増加することが見出された(p<0.001、図3)。a−BLF、天然型BLF、及びh−BLFによる創傷閉鎖は12.8μMの濃度でBSA対照群と比較して3倍であることが見出された。
BLFからグリカンを除去しても、創傷癒合の促進の度合いに変化がなかった。30分後に化学的な脱グリコシル化が完了し、SDS−PAGEでは見かけの分子量の更なる減少は観測されなかった(図4)。変性条件の下でペプチド−N−グリコシダーゼFを用い酵素処理で脱グリコシル化されたBLFに関しては、等価な見かけの分子量変化が観測された(データは非公開)。脱グリコシル化されたBLFのアルカリ誘導の角膜創傷の閉鎖は、BSAと比較して有意に増大した(p<0.001、図3)。この作用は、天然型BLFとの有意な差異がなかった(p>0.1、図3)。
カオトロープとして6Mの塩酸グアニジン(Gdn−HCl)を使用して調製されたBLFによる創傷の閉鎖は、天然型BLF(p<0.001;図3)と比較して有意に少なかった。一方、双性イオン洗剤(2%のCHAPS)で前処置されたBLFは、引き続き創傷癒合を増大させた。創傷癒合に対するBLFの作用促進は、還元アルキル化後に失われた。
LFcin Bペプチドの単離では、HCLE細胞におけるアルカリ誘導創傷の閉鎖が促進されなかった。LFcin Bに関しては、BLF(p<0.001、図3)と比較して創傷癒合数が下回ったことが観測され、陰性対照として用いたBSA(p>0.1、図3)との比較では有意な増加は見られなかった。
非結合画分とセリンプロテアーゼアフィニティカラムからの溶出画分との総蛋白含有量の比較によって、約5%の天然型BLFがベンズアミジン基質に結合されたことが、明らかにされた。SDS−PAGEでは溶出画分中に汚染バンドは見られず、全ての画分の見かけの分子量はBLFと同じであった(図5)。
25℃でpH7.0のセリンプロテアーゼ基質Z−Phe−Arg−AMCに関して、ベンズアミジンから溶出されたBLFの蛋白質分解活性は、Kが34±4μMで、kcatが0.3±0.08min−1であることが見出された。このBLF画分は蛋白質分解性のもの(p−BLF)であり、天然型BLF、又は非結合型、非蛋白質分解性(np−BLF)、BLF(p<0.005、図6)に比べて蛋白質分解活性がかなり大きい。天然型BLF及びNローブ(p<0.05、図6)を介したセリンプロテアーゼ基質の加水分解は、Cローブ、np−BLF及びPMSF阻害BLFと比較して有意に促進されることが明らかにされた。
p−BLF画分及びnp−BLF画分がBLFによる創傷癒合の促進に対して相対的にどの程度寄与しているか定量するために、それらの画分を最初に0.6μM及び12.0μMの濃度でそれぞれ試験した結果、12.6μMの天然型BLFに存在することが推定された。0.6μMのp−BLF又は12.0μMのnp−BLFでインキュベートされた損傷は、類似の度合いで創傷が閉鎖された(p>0.5、図7)。このp−BLF濃度は、天然型BLFが創傷の閉鎖に必要とする濃度よりも低かった(図9)。これらの濃度では、ベンズアミジンカラム画分のセリンプロテアーゼ阻害によって、p−BLFによる創傷癒合の促進の度合いがかなり有意に低減した(p<0.001、図7)。
全ての画分の濃度を20倍に増やすと、天然型BLF及びp−BLFの癒合反応は、それらの各低濃度調製物と比較して顕著に低減した(p<0.001、図7)。これらの濃度の天然型BLF及びp−BLFセリンプロテアーゼ阻害によって、創傷癒合の作用(p<0.005、図7)がnp−BLFのレベルに戻った(p>0.5、図7)。
BLFは、制限トリプシン消化の後、イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィでNローブ及びCローブに分離、精製された。BLFのNローブ及びCローブに対応する見かけの分子重量をSDS−PAGEで可視化したバンドの光学密度を計測したところ、分離された画分のそれぞれに存在する蛋白質の90%超を占めていた(図8)。
Cローブは、6.4μM〜128μM濃度で無処置のBLF及びNローブの等モルレベル(それぞれp<0.05及びp<0.001、図9)よりも強力に創傷癒合を促進する。6.4μMにおいてCローブはBSAの4倍の強度で創傷閉鎖を促進した。対照的に、天然型BLFはBSAの3倍の強度で創傷閉鎖を促進した(図9)。Nローブによる癒合促進の度合いは、12.8μM〜128μMの濃度で無処置のBLFを下回った(p<0.005、図9)のに対し、6.4μMでBSAをかなり有意に上回ったことが観測された(p=0.014、図9)。Nローブ濃度がこのレベルを上回ると、創傷閉鎖の度合いが漸次に低下する。128μMでは、Nローブの創傷閉鎖の促進の度合いはBSAを下回った(p<0.05、図9)。
下記のモルモット実験は、単離したCローブがインビボでの角膜創傷の癒合を、ビヒクル、Nローブ、又は全BLFよりも高速に促進することを示す。
モルモットのデブリードマン創傷:方法
まず対象の領域を3mm直径のトレフィンで画定し、次に、上皮を基底膜まで徐々に脱落させて、角膜の中央に全厚さの上皮のデブリードマン損傷を生じさせた。これらの眼をビヒクル(pH7.4のPBS)、又は64μMのBLFを有するビヒクル(64μMのBLF Nローブを有するビヒクル、又は64μMのBLF Cローブを有するビヒクル)のいずれか25uLで処置した。各治療群には、年齢、重量、又は健康に有意な差異のないモルモット9匹を含めた。デブリードマンの直後に投与し、その後の最初の24時間は3時間おき、以降は完全に癒合するまで1日に3回投与した。対照用ナトリウムフルオレセインの存在下にて、染色が観測されなくなるまで、6時間おきに眼を撮像することによって、創傷閉鎖をモニターした。創傷領域をImageJ 1.44o(National Institutes of Health,USA)を用いて計算した後、各時点での平均創傷直径に変換した。
モルモットのアルカリ創傷:方法
1M水酸化ナトリウムに含浸した濾紙ディスクを角膜中央部に20秒間当てて約3mm直径のアルカリ火傷を生じさせ、続いて広範囲に食塩水を灌注した。これにより、上皮が基底膜まで脱落した。これらの眼をビヒクル(pH7.4のPBS)、又は64μMのBLFを有するビヒクル(64μMのBLF Nローブを有するビヒクル、又は64μMのBLF Cローブを有するビヒクル)のいずれか25uLで処置した。各治療群には、年齢、重量、又は健康に有意な差異のないモルモット9匹を含めた。灌注の直後に投与し、その後の最初の8時間は1時間おき、以降は完全に癒合するまで1日に3回投与した。対照用ナトリウムフルオレセインの存在下にて、染色が観測されなくなるまで、12時間おきに眼を撮像することによって、創傷閉鎖をモニターした。創傷領域をImageJ 1.44o(National Institutes of Health,USA)を用いて計算した後、各時点での平均創傷直径に変換した。
モルモットのモデル:統計分析
一方向の分散分析にて結果を分析し、各時間点の範囲内での治療間の差異を定量した後、ボンフェローニ補正(Bonferroni correction)で事後多重比較を行った。フィッシャーの正確確率検定(Fisher’s exact test)で特定の時点における完全に閉鎖された創傷数をビヒクル対照群と比較して更に分析し、多重比較のための修正を行った。
これらのインビトロ実験によって、単離されたCローブが創傷癒合関連の細胞活性に対して及ぼす影響が示された。
細胞増殖アッセイ:方法
不滅化されたヒト角膜輪部上皮(HCLE)細胞を、96穴の組織培養用プレートに40%コンフルエンスで播種し、37℃、5%CO雰囲気中で一晩付着させた。翌日、培地を牛血清アルブミン(BSA)又はBLF(BLFのNローブ若しくはBLFのCローブ)のいずれかで置換又は補充し、1.28μM、6.4μM、12.8μM、64μM、及び128μMの濃度にて各8個の複製を24時間インキュベートした。メーカーの指示に従い、CyQuant細胞増殖アッセイキット(Invitrogen,USA)で細胞増殖の測定を行った。概略説明すると、ウェルから培地を取り出し、一晩−80℃で保存して溶解した。翌日、プレートを解凍し、細胞溶解緩衝液に溶かした200μLのCyQuantGR染料を各ウェルに添加した。その後、励起波長480nmかつ放出波長520nmでのDNAレベルを反映した、試料蛍光を測定した。
結果を治療ごとに或る濃度での平均として表し、ANOVAを用いボンフェローニ補正(Bonferroni correction)で等モルのBSAと比較した。
細胞遊走アッセイ:方法
不滅化されたヒト角膜輪部上皮(HCLE)細胞を、フィブロネクチンでコーティングされた96穴のOris Cell Migration Assay(Platypus Technologies,USA)組織培養用プレートに100%コンフルエンスで播種し、37℃、5%CO雰囲気中で一晩付着させた。朝になってから、細胞がウェルの中央2mm直径領域に遊走できるようにプラグを取り外した。培地を増殖阻害用の1mMヒドロキシ尿素と、牛血清アルブミン(BSA)又はBLF(BLFのNローブ若しくはBLFのCローブ)とで置換又は補充し、1.28μM、6.4μM、12.8μM、64μM、及び128μMの濃度にて各8個の複製を16時間インキュベートした。細胞の遊走を蛍光共焦鏡検法(fluorescent confocal microscopy)でモニターし、CellTracker Green CMFDA(Molecular Probes,USA)を使用して細胞質を染色した。ImageJ 1.44o(National Institutes of Health,USA)を使用して画像を分析し、残りの創傷領域を計算した。結果を平均領域±標準偏差として表し、ANOVAを用いボンフェローニ補正(Bonferroni correction)で等モルのBSAと比較した。
結果
図10は、モルモットのデブリードマンモデルにおける創傷閉鎖の時間経過を示す。ここで、単離されたCローブはビヒクル、Nローブ又は全BLFに比べて迅速に癒合を促した(表1)。Cローブで処置された創傷は12時間で、ビヒクル単独で処置された創傷の寸法を有意に下回り(p<0.005)、閉鎖されるまで依然として他の創傷の寸法を下回った。
図11は、モルモットのアルカリ火傷モデルにおける創傷閉鎖の時間経過を示す。ここで、単離されたCローブ及び全BLFはビヒクル又はNローブに比べて迅速に癒合を促した(表1)。Cローブで処置された創傷は24時間で、ビヒクルで処置された創傷よりも有意に縮小した(p=0.013)。
Figure 2013530990
図12からわかるように、インビトロではCローブに関し6.4μM及び12.8μMの濃度においてヒト角膜輪部上皮細胞の増殖率が24時間で増加した(p<0.001)。一方、BLFは1.28μMで何ら影響がなく、それを除く全BLF、及び単離されたNローブは全ての濃度において増殖率が低下した(p<0.05)。他の全てのCローブの濃度は、等モルのBSAと比較して増殖に有意な影響を及ぼさなかった。
図13からわかるように、インビトロではCローブに関し6.4μM超の濃度においてヒト角膜輪部上皮細胞の遊走率が16時間で増加した。一方、全BLF及びNローブは濃度依存的な細胞遊走の減速を示す。これは128μMの濃度にて有意になる(p<0.001)。
このようにインビトロシステムは増殖、遊走、及び創傷癒合に関して、Cローブがヒト角膜輪部上皮細胞に対して独特の影響を及ぼすことを示している。モルモットのモデルにおいてCローブはデブリードマンモデルにおける全BLF及び単離されたNローブに優る性能を示す一方、アルカリ火傷モデルにおける全BLFと同程度に有効である。
本明細書に開示され定義されている本発明は、ここに述べた、又は本文若しくは図面から明白な2つ以上の個々の特徴を持つ全ての代替の組み合わせにまで及ぶ。これらの各組み合わせはいずれも、本発明の種々の代替の態様を構成するものである。

Claims (14)

  1. ラクトフェリンの前記Cローブ、又は機能的に活性な断片若しくはその変異体から本質的になる、有効量のポリペプチド又は疑似ペプチドを含む、医薬組成物。
  2. ラクトフェリンが牛ラクトフェリンである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. ポリペプチド又は疑似ペプチドが配列番号1に示すアミノ酸配列から本質的になる、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. ポリペプチド又は疑似ペプチドがラクトフェリンのCローブからなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 前記機能的に活性な断片が、30アミノ酸よりも長いアミノ酸配列を有するポリペプチド又は疑似ペプチドであり、かつ前記アミノ酸が配列番号1の近接配列に対して65%超の同一性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. 前記Cローブが全ラクトフェリンの蛋白質分解から得られる、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  7. 眼への投与に好適な形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 水溶液である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 前記組成物が点眼剤の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物を、必要とする被検者に投与する工程を含む、角膜創傷を処置する方法。
  11. 前記被検者がヒト患者である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記角膜創傷が角膜上皮の創傷である、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記角膜上皮の創傷がアルカリ誘導の創傷である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記被検者が角膜創傷を有するものとして同定されている、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
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