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JP2010185665A - X線透過窓材及びその窓材を備えたx線透過窓 - Google Patents

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武史 橘
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Abstract

【課題】ダイヤモンド窓材の厚さが厚くてもX線が透過する際に回折が生じ難いX線透過窓材、同窓材を備えたX線透過窓を提供する。
【解決手段】X線透過窓材1は、ダイヤモンド粒子の平均サイズZaが0.1μm以上、10μm以下の多結晶ダイヤモンドで形成され、かつ窓材の厚さが8Za1/3以上であり、さらに窓材の両面の平均粗さRaが100nm以下とされたものである。前記多結晶ダイヤモンドとしては熱伝導率が400W/mK以上のものが好ましく、また窓材の厚さは100μm以上が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、多結晶ダイヤモンドで形成されたX線透過窓材及びその窓材を備えたX線透過窓に関する。
放射光X線施設やX線測定器のX線取出し用開口部や観察用開口部にはX線透過窓が設けられる。このX線透過窓は、X線を透過する薄板状のX線透過窓材を備える。従来のX線透過窓材は、特開昭63−263488号公報(特許文献1)に記載されているように、主にベリリウムによって形成されていた。ベリリウムは軽元素であり、またX線透過性に優れるためである。
最近ではX線の高輝度化に伴い、例えば特開平9−68599号公報(特許文献2)に記載されているように、熱伝導性に優れる多結晶ダイヤモンドで形成された窓材が試用され始めている。多結晶ダイヤモンドは、X線透過率がベリリウムに及ばないが、機械強度に優れるため、窓材の厚さを薄くすることができ、トータルの透過度はベリリウム製の窓材に較べて遜色がない。さらに熱伝導性がよいため、X線の一部を吸収しても熱を貯めることがなく、透過X線に影響するような窓の変形を回避することができる。
上記特許文献2に記載のX線透過窓は、多結晶ダイヤモンドで形成したX線透過窓材(以下、単に「ダイヤモンド窓材」という場合がある。)を、溝を設けたリング状の支持枠にエポキシ系接着剤により固定し、これをフランジに取り付けた構造を有している。前記溝のある支持枠を用いることにより、ダイヤモンド窓材を薄く形成しても、支持枠に取り付ける際の応力を緩和することができ、ダイヤモンド窓材の損傷を防止することができるという。
特開昭63−263488号公報 特開平9−68599号公報
上記特許文献1に記載のX線透過窓では、厚さの薄いダイヤモンド窓材を用いることができるが、それ自体の耐久性が低く、また支持枠との接合も合成樹脂接着材によるため熱伝導性に劣り、総じて信頼性に欠けるところがある。これに対して、ダイヤモンド窓材の厚さを厚くすることにより窓材自体の耐久性を向上させることができ、またこれを支持枠にろう付けすることにより熱伝導性を向上させることができ、X線透過窓としての信頼性が向上する。
X線透過窓材として機械的な強度を確保するためには、X線透過部の口径が小さい場合はともかく、通常の口径(2〜10mmφ程度)では最低でも100μm 程度の厚さが欲しいところである。また熱伝導の観点からも窓材の厚さは厚いほうが望ましい。このような厚いダイヤモンド窓材は、通常、成膜効率の高いマイクロ波プラズマ法、熱フィラメントCVD法により、原料ガスとしてメタン及び水素ガスを用いて製作することができる。
しかしながら、実際に上記方法で成膜したダイヤモンド窓材を設けたX線透過窓を用いてX線を透過させると、X線が透過する際に回折像が発生するため、放射光X線施設やX線測定器において、分析しようとする対象から発生するX線回折像を見えないようにしたり、解析し難くするという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、ダイヤモンド窓材の厚さが厚くてもX線が透過する際に回折が生じ難いX線透過窓材、同窓材を備えたX線透過窓を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、上記成膜法により通常の条件でダイヤモンド窓材を成膜すると、多結晶ダイヤモンドを構成する多数のダイヤモンド粒子(単結晶ダイヤモンド)の大きさが20μm 以上になり、ダイヤモンド窓材中に存在する、X線回折条件を満たすダイヤモンド粒子の割合が高くなるため、窓材を透過する際にX線回折が生じることを見出した。本発明はかかる知見を基に完成されたものである。
すなわち、本発明のX線透過窓材は、ダイヤモンド粒子の平均サイズZaが0.1μm 以上、10μm 以下の多結晶ダイヤモンドで形成され、かつ窓材の厚さが8Za1/3 以上であり、さらに窓材の両面の平均粗さRaが100nm以下とされたものである。前記ダイヤモンド粒子の平均サイズ(「平均粒子サイズ」という場合がある。)とは、試料を電子顕微鏡で観察して、断面あるいは表面の観察画像において、線として現れるダイヤモンドの粒子と粒子とを隔てる界面(粒界)を、あるいは回折方位像において面として現れる粒子を、各々画像情報として認識して粒子数を決定し、観察範囲の面積を粒子数で除した値の平方根として算出した値を意味する。
このX線透過窓材によれば、ダイヤモンド粒子の平均サイズZaが10μm 以下の多結晶ダイヤモンドで形成されるため、窓材を透過するX線が窓材を形成する多結晶ダイヤモンドによって回折し難くなり、観察対象からのX線回折像の質の低下を防止することができる。また、ダイヤモンド粒子の平均サイズを0.1μm 以上とするので、非晶質化を防止することができ、多結晶ダイヤモンドとしての強度や熱伝導性の低下を防止することができる。また、窓材の機械的強度は、窓材を構成するダイヤモンドの平均粒子サイズと窓材のサイズ(口径)に依存するが、窓材の厚さtを8Za1/3 以上とするので、X線透過窓材として十分な機械的強度を確保することができる。また、窓材の両面の平均粗さRaを100nm以下とするので、窓材の表面の凹凸を抑えることができ、窓材表面でのX線の反射、散乱、回折を抑制することができる。その結果、観察対象から窓を透過して観察されるX線の質の低下を招来することなく、高輝度X線ビームの長時間使用にも対応することができるようになる。
前記多結晶ダイヤモンドとしては熱伝導率が400W/mK以上のものが好ましい。ダイヤモンド粒子のサイズが小さ過ぎると非晶質としての性質が強くなり、熱伝導性に優れ、硬くて強いという多結晶ダイヤモンドとしての本来の特性が低下するようになる。ダイヤモンド粒子サイズと熱伝導率とは比例しており、熱伝導率が400W/mK以上の多結晶ダイヤモンドで窓材を形成することにより、多結晶ダイヤモンドの特性の低下を防止することができ、より信頼性の高い窓材を提供することができる。また、窓材の厚さは100μm 以上とすることが好ましい。100μm 以上あればX線透過窓材として十分な強度、耐久性を備えることができ、また熱伝導性についてもより向上させることができる。
また、本発明のX線透過窓は、開口部を有するフランジと、前記フランジの開口部に接合されるリング状の支持枠と、前記支持枠に固定されたX線透過窓材を備え、前記X線透過窓材として上記本発明に係るX線透過窓材が用いられたものである。
このX線透過窓において、X線透過窓材と支持枠とを自己伝搬発熱反応による発熱によりろう付けすることができる。自己伝搬発熱反応による発熱は実質的に瞬時に生じるため、ダイヤモンド窓材や支持枠をほぼ雰囲気温度に保ったままろう付けすることができる。このため、熱膨張差に起因する応力や損傷が生じ難く、X線透過窓の耐久性が向上する。前記自己伝搬発熱反応による発熱は800K以下、あるいは800K以上で発熱持続時間を10秒以下とすることが好ましい。また、前記支持枠は熱伝導性の良好な銅材で形成することが好ましい。前記自己伝搬発熱反応はAl層とNi層とが交互に積層されたAlNi多層膜を用いて容易に行うことができる。
本発明に係るX線透過窓材及びこの窓材を備えたX線透過窓によれば、窓材を厚く形成しても、多結晶ダイヤモンドの本来の優れた強度、熱伝導性を生かしながら、窓材を透過するX線の回折のみならず、窓材表面でのX線の反射、散乱、回折を抑制することができる。その結果、観察対象からの透過X線の質を低下させることなく、耐久性に優れたX線透過窓材、X線透過窓を提供することができる。
実施形態に係るX線透過窓の概略断面図である。 実施例における窓材の表面粗度と回折スポット密度との関係を示すグラフである。 実施例における窓材のダイヤモンド粒子の平均サイズ(平均粒子サイズ)と回折スポット密度との関係を示すグラフである。
図1は本発明の実施形態に係るX線透過窓を示しており、このX線透過窓は、開口部を有するフランジ3と、前記フランジ3の開口部に接合されるリング状をなした、金属製の支持枠2と、前記支持枠2にろう付けされたダイヤモンド窓材1を備えている。前記フランジ3には、装置本体に取り付けるための取付け穴4が設けられている。
前記ダイヤモンド窓材1は、ダイヤモンド粒子の平均サイズZaが0.1μm 以上、10μm 以下、好ましくは3μm 以下の多結晶ダイヤモンドで形成され、かつ前記窓材1の厚さが100μm 以上とされている。さらに前記窓材1の両面の平均粗さRaが100nm以下とされている。ダイヤモンド窓材の厚さは、通常の開口では100μm 程度あれば十分であるが、口径が数mmと小さいものでは、少なくとも8Za1/3 以上を満足する限り、より薄くしてもよい。窓材の厚さの上限は特に限定されないが、生産性を考慮すると、500μm 程度あれば十分である。
前記ダイヤモンド窓材1は、従来のダイヤモンド窓材と同様、マイクロ波プラズマ法、熱フィラメントCVD法により、メタン及び水素ガスを原料ガスとして成膜されるが、厚さが100μm 以上と厚い場合、特に制御することなく通常条件で成膜すると、膜厚の増大にしたがって、ダイヤモンド粒子が大きく成長し、粒子サイズが20μm 以上になってしまう。これを回避するためには、成膜表面温度を1000K以下に保ってダイヤモンド粒子の成長を抑制しながら、原料ガス中の炭素濃度を3〜5%の範囲として、ダイヤモンドの成長種を成長表面に供給することによって、平均粒子サイズを10μm 以下、好ましくは3μm 以下の範囲に抑えながら、所望の厚さに多結晶ダイヤモンドを堆積する。
上記のように、ダイヤモンド粒子のサイズを小さくすることにより、窓材を透過するX線が回折する現象を回避することができるが、ダイヤモンドの平均粒子サイズを小さくし過ぎると、非晶質成分が支配するようになり、結晶性炭素としてのダイヤモンド自体の品質が低下する。このようになると、本来の多結晶ダイヤモンドとしての特性、すなわち機械強度や熱伝導性が低下するようになる。ダイヤモンド粒子のサイズと、測定再現性の良好な熱伝導率とは比例しており、多結晶ダイヤモンドの熱伝導率を400W/mK以上とすることにより、熱伝導率、機械的強度の良好な多結晶ダイヤモンドが得られる。
ところで、厚さが100μm 程度以上の多結晶ダイヤモンド膜を成膜する場合、通常では生産性の観点から成膜速度はある程度速く設定される。ダイヤモンドを堆積する基板の温度を上げるほど成膜速度は速くなるので、通常、基板温度は1050〜1250K程度に調整して成膜される。従って、実施形態における上記成膜条件は通常の成膜速度と比較するとかなり遅いものになっている。
また、実施形態のダイヤモンド窓材は、その両表面の平均粗さRaが100nm以下とされる。これは、ダイヤモンド粒子を微細化して回折現象を抑制しても、平均粗さが100nm超では窓材の表面にできた凹凸によりX線が反射、散乱、回折を起こし、試料から観察されるX線回折像の質を低下させるようになるからである。
前記フランジ3は、通常、ステンレス鋼などの鉄鋼材で製作され、前記支持枠2は銅や鉄鋼材などの強度、熱伝導性の良好な金属材で形成される。前記支持枠2は前記フランジ3の開口部に固着されており、前記支持枠2の開口部の周縁に前記ダイヤモンド窓材3の周縁部がろう付けされている。X線透過窓の製造工程としては、まず支持枠2にダイヤモンド窓材1をろう付けし、その後、ダイヤモンド窓材1を備えた支持枠2をフランジ3に組み込み、両者を接合し、固定する。この接合は、機械的に気密に固定する方法を採ることができるが、通常、ろう付けにより行われる。この際、ろう付け温度が高くならないように、またろう付け時間が長くならないように慎重に行うことが望まれる。このため、ろう材としては粉末状のものを用いたり、固定方法を工夫したり、温度制御を綿密に行うなどの方策が採られる。
前記ダイヤモンド窓材1と支持枠2とのろう付けは、この実施形態では自己伝搬発熱反応による発熱を利用したろう付けを行っている。これによると、ろう材の溶融、凝固が実質的に瞬時に行われるため、ダイヤモンド窓材1と金属製の支持枠2とは熱膨張率が異なるにも拘わらず、その影響をほとんど受けずに両者を固着することができる。このため、高価なダイヤモンド窓材の損傷を防止することができる。なお、銅の線膨張係数は16ppm程度、多結晶ダイヤモンドのそれは1.1ppm程度である。
前記ダイヤモンド窓材1と支持枠2とを通常の方法でろう付けすることもできるが、機械的な剛性が高く、熱膨張率の小さなダイヤモンド窓材1と、熱膨張率の大きな金属製の支持枠2とを、通常のように高温に加熱し、ろう付け(はんだ接合)すると、ろう付け後に室温に冷却する際に大きな残留応力が発生して、ダイヤモンド窓材や金属支持枠が変形したり、ろう付け部が剥離したり、著しい場合にはダイヤモンド窓材に割損が生じるおそれがある。このため、常法でろう付けする場合は、加熱温度、加熱冷却速度を厳格に制御するなど、慎重を要する。なお、常法では、支持枠とダイヤモンド窓材の間にろう材を配して、全体を高温炉に入れ、ろう材の融点以上に温度を上げ、ろう材を一旦溶融させた後、全体を冷却してろう材を凝固させる。
前記自己伝搬発熱反応による発熱を利用したろう付けは、ダイヤモンド窓材1と支持枠2との熱膨張差を考慮する必要がないので、ろう付け作業性に優れる。このろう付けは、ダイヤモンド窓材1の外周縁部と支持枠2に内周縁部に予めろう材を塗布しておき、ろう材の間に、例えばAl層とNi層とを交互に積層したAlNi多層膜を挟み、接合部を密着、加圧した状態で、AlNi多層膜の一端に着火することにより実施される。これにより、AlNi多層膜の一端から他端に沿って瞬間的に自己伝搬発熱反応が生じ、これによって放散される熱エネルギーによりろう材が溶融し、ダイヤモンド窓材1と支持枠2とがろう付けされる。
前記AlNi多層膜の各層の厚さと総数、予め塗布するろう材の厚さを調整し、バランスを取ることにより、ダイヤモンド窓材1や支持枠2をほぼ雰囲気温度に保ったままで接合することができる。通常、Al層、Ni層の厚さはそれぞれ20〜200nm程度とされ、Al層とNi層のそれぞれの合計厚さの比(Al層の厚さ合計:Ni層の厚さ合計)は1:1〜4:1程度に設定される。また、AlNi多層膜の各層の厚さ、積層数により、インジウム合金や銀合金などのろう材を溶融させるのに必要な発熱量が決まるが、ろう材を完全に溶融させる必要は必ずしもなく、また接合する材料(熱伝導率や熱容量)や接合構造によっても必要な熱量は増減する。通常、積層総数は200〜1000、ろう材の厚さは材料によらず5〜300μm 程度とされる。AlNi多層膜の着火は、多層膜の表面や端部をライターで着火したり、電池などの電源を近づけてスパークさせたり、静電気などにより電気ショックを与えることにより行うことができる。
ろう付けの際、ろう材を介して支持枠2やダイヤモンド窓材1に熱エネルギーが伝搬してくるので、温度は幾分上昇するが、発生する熱量に対してこれらの部材の熱容量は大きく、またAlとNiの自己伝搬発熱反応は6m/sec 以上の高速で起きるために実質的に瞬時に終わることから、接合部の温度は、通常、最高でも800Kを越えることはない。最高温度800Kを超える場合でも、その持続時間はせいぜい1秒以下、最も長くても10秒以下である。支持枠2を銅で形成した場合、前記AlNi多層膜を用いて自己伝搬発熱反応によるろう付けを行うと、支持枠2とダイヤモンド窓材1との接合部には、Al、Ni及び銅を含むことになる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定的に解釈されるものではない。
種々のダイヤモンド窓材を以下の要領で製作した。まず、ダイヤモンド粉末で傷付け処理を行った多結晶シリコン基板(厚さ3mm×平面サイズ18mmφ)にマイクロ波プラズマCVD法または熱フィラメントCVD法を用いて、メタンおよび水素ガスを原料ガスとして多結晶ダイヤモンドを成膜した。成膜条件は、メタン濃度3〜5%、圧力50〜120Torr、基板温度900〜1000Kとした。厚さ280μm の多結晶ダイヤモンドを成膜した後、先ず凹凸の著しい成長面を10〜20μm 程度研削及び研磨した。さらに多結晶シリコン基板を弗酸と硝酸の混合液に浸漬して溶解除去し、基板側のダイヤモンドを10μm 程度研削及び研磨して、厚さ230〜240μm のダイヤモンド窓材を製作した。これらの窓材の熱伝導率を周期加熱サーモリフレクタンス法で測定したところ、測定点によるばらつきを含めて、650〜1100W/mKであった。
次に、ダイヤモンド窓材と銅製の支持枠とをろう付けにより接合した。窓材及び支持枠のそれぞれの接合面にニッケル薄膜をスバッタ蒸着して濡れ性を高めた上で、インジウム−錫合金のろう材を超音波ゴテを用いて塗布し、塗布したろう材層の表面を機械的に研磨して平坦性を高めた。このようにして形成したろう材層の厚さは 5〜300μm であった。
そして、窓材及び支持枠のそれぞれのろう材層の間にAlNi多層膜(厚さがそれぞれ0.1μm のAl層、Ni層を交互に400層積層した多層膜)を挟み込んだ組立体を固定枠に挟み、前記組立体を圧縮するようにして固定枠をネジ止めした。この状態でAlNi多層膜の一端に着火し、AlNi多層膜に自己伝搬発熱反応を起こしてろう材を瞬時に溶融、凝固し、窓材と支持枠とを接合した。接合の際、ろう材の端部に貼り付けて固定した熱電対によって、温度変化を記録したところ、測定温度は最高でも600Kを越えることはなかった。尚、AlNi多層膜の自己伝搬発熱反応は体積収縮を伴う相変化のため、反応後に形成されるAlNiの混成層は完全な連続膜にはならないが、非連続になっている部分にはろう材が回り込んでいるために、接合部の機械的強度、信頼性、接合界面の熱伝導性に問題がなかった。
このようにして支持枠に固定したダイヤモンド窓材と、比較プロセスにより銅製支持枠にろう付けしたダイヤモンド窓材との際立った差異は、ダイヤモンド窓材の応力分布とそれに起因する機械的強度に顕著に反映された。すなわち、支持枠に接合した後のダイヤモンド窓材の状態を触針式高さ変位計で測定すると、走査範囲5mmで比較プロセスで接合したダイヤモンド窓材では最大で120μm の高低差(湾曲)が計測されたが、実施例のものでは最大高低差は10μm 未満であった。さらにダイヤモンド窓材を、大気雰囲気と真空装置内部との隔壁として使用するべく、気密試験を実施すると、比較プロセスのものでは経験的に数%〜数十%の割合でクラックが生じていたが、実施例のものではクラック発生の割合がその1/10程度以下に減少した。なお、比較プロセスにより銅製支持枠にろう付けしたダイヤモンド窓材は、実施例と同様の成膜法で同様の厚さに成膜したものであるが、成膜の際の基板温度を1050〜1100K程度の通常レベルとして成膜したものである。また、窓材と銅製支持板とのろう付けは、接合部表面に金錫合金粉末を30〜100μm厚で塗布し、真空中で650℃に60分間保持後、冷却することによって行ったものである。
さらに、実施例で試作した種々のダイヤモンド窓材を用いて、ダイヤモンド窓材の表面粗度(触針式高さ変位計および原子間力顕微鏡で計測した数値)とX線ビームを透過させた時に観察される回折スポットの面密度との関係を調べた。その結果を図1に示す。図1より表面粗度が100nm以下としたダイヤモンド窓材(発明材)ではX線の回折が認めらなかったが、100nm超では回折が生じ、粗度が高いほど回折の程度も高いことが確認された。
また、試作した種々のダイヤモンド窓材を用いて、ダイヤモンド粒子の平均粒子サイズとX線ビームを透過させた時に観察される回折スポットの面密度との関係を調べた。平均粒子サイズは、既述のとおり、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡で得られた観察像を画像解析して統計的に算出した値である。その結果を図2に示す。図2より平均粒子サイズが10μm 以下ではX線の回折は殆ど生じていないことが確認された。
1 X線透過窓材(ダイヤモンド窓材)
2 支持枠
3 フランジ

Claims (7)

  1. X線透過窓に設けられるX線透過窓材であって、
    ダイヤモンド粒子の平均サイズZaが0.1μm 以上、10μm 以下の多結晶ダイヤモンドで形成され、かつ窓材の厚さが8Za1/3 以上であり、さらに窓材の両面の平均粗さRaが100nm以下である、X線透過窓材。
  2. 前記多結晶ダイヤモンドは熱伝導率が400W/mK以上である、請求項1に記載したX線透過窓材。
  3. 窓材の厚さが100μm 以上である、請求項1又は2に記載したX線透過窓材。
  4. 開口部を有するフランジと、前記フランジの開口部に接合されるリング状の支持枠と、前記支持枠に固定されたX線透過窓材を備えたX線透過窓であって、
    前記X線透過窓材として請求項1から3に記載したいずれかのX線透過窓材が用いられた、X線透過窓。
  5. 前記X線透過窓材と前記支持枠とが自己伝搬発熱反応による発熱によりろう付けされた、請求項4に記載したX線透過窓。
  6. 前記自己伝搬発熱反応による発熱が800K以下、あるいは800K以上で発熱持続時間が10秒以下である、請求項5に記載したX線透過窓。
  7. 前記支持枠は銅材で形成され、前記自己伝搬発熱反応はAl層とNi層とが交互に積層されたAlNi多層膜によるものである、請求項5又は6に記載したX線透過窓。
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