しかしながら、PC鋼材によって制震柱間に与えられる摩擦力はPC鋼材に与えられる緊張力によって一義的に決まり、摩擦力が制震柱の曲げ変形の程度によって変動することはないため、PC鋼材の緊張力を調整するとしても、制震柱間に滑りを生じさせない状態と、滑りが生じた後にエネルギを吸収する状態は2段階に設定されるに過ぎない。
すなわち制震柱に滑りが生じた後は、摩擦部材は一定の摩擦力を発揮するだけであり、制震柱の変形が進行するに伴い、摩擦部材が発揮する摩擦力を調整(制御)するには至らない。この場合、摩擦部材の荷重−変形関係は図4−(b)に示すような形になり、弾塑性型の復元力特性を示す。
本発明は上記背景より、フレーム部材の相対変位の程度に応じ、対向する摩擦材間に作用する摩擦力を調整することが可能な摩擦型エネルギ吸収装置を提案するものである。
請求項1に記載の発明の摩擦型エネルギ吸収装置は、水平力の作用時に相対変位を生じ得る、並列するフレーム部材と、この並列するフレーム部材の少なくともいずれか一方から対向するフレーム部材側へ張り出す張出部材と、前記フレーム部材間に架設され、前記相対変位時に引張力を負担する引張部材と、前記張出部材とそれに対向する張出部材、もしくはフレーム部材の各対向する面に一体化し、相対変位時に互いに接触し得る摩擦材とを備えることを構成要件とする。
フレーム部材は例えば梁部材や柱部材であり、フレーム部材自体が柱・梁の架構(フレーム)を構成する場合と、図3に示すように架構の構面内に組み込まれる場合がある。張出部材は一方のフレーム部材から他方のフレーム部材側へ張り出す場合と、両フレーム部材から対向するフレーム部材側へ張り出す場合がある。前者の場合の張出部材は対向する側のフレーム部材から分離し、後者の場合の張出部材は対向する側のフレーム部材から張り出した張出部材から分離する。
張出部材はフレーム部材間の距離を確保しながら、対向する摩擦材を互いに接触可能な状態にしておくためと、並列するフレーム部材間の相対変位量分の移動(滑り)を対向する摩擦材間に起こさせるために、少なくともいずれか一方のフレーム部材から張り出す。張出部材はフレーム部材の一部としてフレーム部材に連続する場合と、フレーム部材とは別体で製作され、フレーム部材に接合されて一体化する場合がある。張出部材は対向する摩擦材が摺動するときに摩擦力を発揮させるために、フレーム部材と一体となって摩擦力の反力を負担する。
引張部材は原則としてフレーム部材間の相対変位の有無に拘らず、張出部材と接触しない位置のフレーム部材間に架設され、両端がフレーム部材に定着される。復元部材は両端がフレーム部材に定着されることで、弾性範囲内でフレーム部材の相対変位に追従して伸長し、相対変位の終息と共に伸長前の状態に復帰しようとする。引張部材は両フレーム部材間の相対変位時にも原則として弾性範囲内に留まる。
引張部材が両フレーム部材間の相対変位時に弾性範囲内に留まることで、引張部材にはフレーム部材間に相対変位が生じたときに引張力が生じ、引張部材の軸方向、すなわち並列するフレーム部材間に、両者が対向する向きに伸長量に応じた復元力による引張力を作用させる。この引張力は引張部材の軸方向力の内、両フレーム部材が対向する方向の成分(図1における鉛直成分)になる。並列するフレーム部材間に引張力を作用させることで、両フレーム部材を互いに接近する向きに引き寄せ、張出部材を対向するフレーム部材、または張出部材に接触させようとする。
互いに対向する張出部材と張出部材、もしくはフレーム部材の対向する各面には摩擦材が固定等の手段により一体化しているため、フレーム部材の相対変位時に引張部材が張出部材を対向するフレーム部材、または張出部材に接触させようとすることで、対向する摩擦材が互いに接触し、摩擦力を発揮しながら摺動する。摩擦材には引張部材の前記復元力が圧縮力として作用する。摩擦材間に圧力(摩擦力)が発生することで、摩擦力によるエネルギ吸収効果が発揮される。
引張部材にはフレーム部材間に相対変位が生じていない時点で予め張力(緊張力)が与えられていることもある。引張部材に予め緊張力が与えられる場合には、緊張力がない場合より対向する摩擦材が互いに接触したときに両者間に働く摩擦力が増大するため、摩擦によるエネルギ吸収効果が向上する利点がある。
対向する摩擦材はフレーム部材の変形前の状態で、互いに接触している場合とクリアランスを持って隔てている場合がある。接触している場合には圧力を及ぼし合うことなく接触している場合と圧力を及ぼし合っている場合がある。クリアランスを有する場合には、並列するフレーム部材が相対変位を生じ、引張部材によって互いに引き寄せられた時点から、あるいは両フレーム部材の引き寄せ量が一定量を超えたときから互いに接触する程度のクリアランスが摩擦材間に確保される。
クリアランスの大きさを設定することで、柱・梁の架構(フレーム)内にフレーム部材を組み込んだ場合に、相対変位を生じたフレームからフレーム部材に鉛直荷重を作用させず、摩擦材間に摩擦力を作用させないこと、すなわち鉛直荷重による摩擦力への影響を与えない(摩擦力を変動させない)ことも可能である。逆にフレームからの鉛直荷重をフレーム部材に作用させ、摩擦力を増大させるための圧力として利用することも可能である。
引張部材の軸方向力の内、両フレーム部材が対向する方向に直交する方向の成分(図1における水平成分)は、フレーム部材間の相対変位の終息と共にフレーム部材を原位置に復帰させる力として作用する。フレーム部材が原位置に復帰しようとする範囲で、相対変位時に摺動してずれを生じている2枚の摩擦材も元の位置に復帰しようとするため、その分、2枚の摩擦材間には相対変形が残留しにくくなる。
通常の滑り支承では摩擦部材間に働く摩擦力が一定であるから、相対変位の終息時に摩擦部材間に残留変形が生ずる可能性が高い。これに対し、本発明では相対変位量が大きくなる程、摩擦力も増大し、変位量が小さくなれば摩擦力も小さくなることと、相対変位後には、引張部材が2枚の摩擦材を原位置に復帰させようとすることで、2枚の摩擦材間には残留変形が生じにくくなっている。
両フレーム部材間の相対変位時に引張部材が原則的に弾性変形内に留まることから、両フレーム部材の相対変位の増大に伴い、引張部材が発揮する復元力が増大し、並列するフレーム部材の引き寄せ量が大きくなるため、対向する摩擦材間に生ずる摩擦力が大きくなる。すなわち両フレーム部材間の相対変位量の程度に応じて摩擦力が変化し、相対変位量が大きくなる程、摩擦力が大きくなるため、摩擦材間の摩擦力(荷重)−滑り(変位)関係は図4−(a)に示すように滑り量の増加に伴い、摩擦力が増大するループを描く復元力特性を示す。
従来の摩擦ダンパ(滑り支承)の復元力特性を示した図4−(b)との対比から、本発明では滑り量の増大に伴って摩擦力が増大する分、履歴ループの面積から求まるエネルギ吸収量が増大することが分かる。
摩擦力の増大の程度(滑り量の増加分に対する摩擦力の増加分)は引張部材の材料としての引張強度、剛性、長さ等の特性に依存するが、これらの特性は引張部材に用いられる材料によっても自由に設定される。引張部材にはPC鋼材、棒鋼等の鋼材の他、繊維強化プラスチックが使用され、フレーム部材間に相対変位が生じていない時点で予め張力(緊張力)が与えられていることもある。両摩擦材間の初期摩擦力は引張部材の初期の復元力(緊張力)、摩擦材の材料、面積等によっても自由に調整される。
引張部材の伸び変形は原則的に弾性変形に留まるが、ある伸び変形を超えたときに引張部材を降伏させ、摩擦材に与える復元力による圧縮力を一定に保つこともある。その場合には復元力による摩擦力の増大効果が低減されるものの、引張部材が降伏することで、塑性変形能力によるエネルギ吸収能力を発揮するため、摩擦材間の摩擦力によるエネルギ吸収量が引張部材によって補われる利点がある。
引張部材はフレーム部材間における相対変位の発生の前後に関係なく、張出部材と接触しない、あるいは張出部材から接触による摩擦力を受けない位置に架設されればよいため、張出部材との付着が切れていれば、張出部材の少なくとも一部の内部を貫通することもある。引張部材が張出部材の内部を貫通していても、張出部材との付着が切れていることで、引張部材に生ずる引張力が張出部材によって損失することがないため、引張部材に生ずる引張力がフレーム部材を引き寄せる効果が低下し、摩擦材間に発生する摩擦力が低下することはない。
摩擦材は互いに対向する張出部材同士、または張出部材とフレーム部材同士の対向する面に固定等により一体化することから、張出部材同士、または張出部材とフレーム部材同士の対向する面間において摺動時に摩擦力を発生すれば、必ずしも別体の摩擦材を張出部材等に付加する必要はない。
すなわち張出部材、または張出部材とフレーム部材に使用される材料によっては請求項2に記載のように摩擦材が対向する張出部材同士の対向する面側、もしくは張出部材とフレーム部材同士の対向する面側の一部として張出部材等に一体化することもある。この場合、対向する張出部材同士の対向する面側の一部、または張出部材とフレーム部材同士の対向する面側の一部が摩擦材を兼ねることになる。
張出部材等が摩擦材を兼ねる場合、張出部材、または張出部材とフレーム部材が鋼材やコンクリート等のように、一度のフレームの振動間での摩擦材同士(張出部材同士、または張出部材とフレーム部材)の摺動中に容易に磨耗しない材料の使用が適する。
フレーム部材が相対変位を生じたとき、引張部材の端部には相対変位量に対応した変形角が生ずるため、この変形角によって引張部材の端部に強制的な曲げ変形を与えることが想定される。このような場合には例えば請求項3に記載のように引張部材の端部はフレーム部材に任意の軸の回りに回転自在な状態で定着される。
この場合、引張部材の端部がフレーム部材に任意の軸回りに回転自在な状態で定着されることで、フレーム部材間の相対変位時に引張部材の、フレーム部材間に定着されている端部に強制的な曲げ変化を与えることがないため、引張部材の損傷が回避される。
また引張部材がフレーム部材中の定着端部からフレーム部材間の相対変位に追従することができるから、回転自在でない場合との対比では引張部材が有効に伸び変形を生じる区間が長くなる。このことから、定着区間に伸び変形が生じない場合との対比では、定着区間を含む引張部材の全長が一定で、一定の伸び変形を生ずるとすれば、伸び変形時の伸び歪みが小さくなり、それだけ伸び変形後の復元力が小さくなるため、復元力を調整することが可能である。
並列するフレーム部材と、フレーム部材間に架設される引張部材と、フレーム部材の相対変位時に互いに接触し得る摩擦材とを備え、フレーム部材間に相対変位が生じたときに引張部材が伸長量に応じた復元力による圧縮力を摩擦材に与えるため、両フレーム部材間の相対変位量が大きくなる程、摩擦力を大きくすることができる。この結果、滑り量の増大に伴って摩擦力が増大する分、摩擦材によるエネルギ吸収量を増大させることが可能である。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1−(a)は水平力の作用時に相対変位を生じ得る、並列するフレーム部材2、2と、並列するフレーム部材2、2の少なくともいずれか一方から対向するフレーム部材2側へ張り出す張出部材3と、フレーム部材2、2間に架設され、引張力を負担したときに復元力を発揮する引張部材4と、張出部材3とそれに対向する張出部材3、もしくはフレーム部材2の各対向する面に一体化し、相対変位時に互いに接触し得る摩擦材5、5とを備える摩擦型エネルギ吸収装置(以下、エネルギ吸収装置)1の構成例を示す。(b)は(a)の側面を、(c)は(a)のx−x線の断面を示す。
図1はフレーム部材2、2のそれぞれから張出部材3、3が張り出し、その対向する面に摩擦材5、5が固定された場合を示すが、図5に示すようにいずれか一方のフレーム部材2のみから張出部材3が張り出し、対向する張出部材3とフレーム部材2の各対向する面に摩擦材5、5が固定されることもある。図面では下側の摩擦材5に、張出部材3の摩擦材5側の端面と同一の面積を与え、上側の摩擦材5の面積をそれより小さくしているが、対向する摩擦材5、5の面積は同一でもよい。上側の摩擦材5の面積は、その摩擦材5が相対変位時に常に下側の摩擦材5の範囲(面積)内に納まる大きさになっている。
フレーム部材2は例えば梁部材、もしくは柱部材であり、梁部材には基礎も含まれるが、基本的にはエネルギ吸収装置1自体が図3に示すように柱・梁からなる架構の構成面に組み込まれる。図3では並列するフレーム部材2、2が上下に位置しているが、フレーム部材2が柱部材である場合、図3に示すエネルギ吸収装置1は横向きに配置される。張出部材3は対向する摩擦材5、5が摺動して摩擦力を発揮するときにフレーム部材2と一体となって摩擦力の反力を負担するから、耐震壁(耐力壁)や間柱、あるいはブレースを組み込んだ耐震要素として機能する。
フレーム部材2と張出部材3は共に鉄筋コンクリート造であるか、鉄骨造であるかの構造種別を問わず、鉄筋コンクリート造の場合にはフレーム部材2と張出部材3が一体で形成されるか、プレキャストコンクリートから別体で製作された後に一体化されるかも問わない。
引張部材4はそれが発揮する復元力によって対向する摩擦材5、5間に摩擦力を作用させるため、並列するフレーム部材2、2間に架設され、両端においてフレーム部材2、2に定着される。引張部材4には主にPC鋼材、棒鋼等の鋼材が使用され、フレーム部材2、2間への架設状態で予め緊張力が与えられる場合がある。引張部材4からの復元力はフレーム部材2、2間の相対変位量の増大に伴い、増大し、摩擦材5、5間の摩擦力を増加させるから、必ずしも予め緊張力が与えられる必要はないが、相対変位の発生前の時点から摩擦材5、5間に摩擦力を与えておく場合に緊張力が与えられる。
摩擦材5は摺動によって摩擦力発生の機能を発揮するから、摩擦材5には容易に磨耗しない材料の使用が適するが、役目を果たした後には交換されることが可能であるから、材料は特に限定されず、鋼材等の金属、コンクリート、プラスチック、ゴム等が使用される。摩擦材5は対向する張出部材3同士、または張出部材3とフレーム部材2同士の先端に固定された形になるから、張出部材3、またはフレーム部材2の一部になることもある。
図1では対向する摩擦材5、5間に空隙が確保されているが、エネルギ吸収装置1の使用状態では図2−(a)に示すように引張部材4に予め緊張力が与えられることで、基本的に空隙はなくなり、両摩擦材5、5は互いに接触した状態に置かれる。互いに接触する摩擦材5、5の面積は必要とされる摩擦力に応じて自由に設定される。
図1は各フレーム部材2から対向するフレーム部材2側へ張出部材3が張り出し、その張出部材3の幅方向両側(フレーム部材2の長さ方向両側)に引張部材4、4を配置した場合の例を示す。引張部材4は張出部材3との付着が切れた状態にあれば、張出部材3の内部を貫通することもある。
図2−(a)の状態から(b)に示すようにフレーム部材2、2間に相対変位が生じたときには、摩擦材5、5が互いに摺動しながら相対移動することにより摩擦力を発生する。(a)の状態から(b)の状態に移行したとき、引張部材4は伸長するため、引張部材4には伸長量に応じた分の軸方向力が作用している。引張部材4に予め緊張力が与えられている場合には緊張力分の軸方向力も加算されている。
図2において引張部材4に付加された軸方向力の鉛直成分は対向するフレーム部材2、2のそれぞれに接合されている摩擦材5、5間に作用する軸方向力を付加させる力として作用する。付加された軸方向力は同時に、両摩擦材5、5間の接触圧力を増大させる力としても作用するため、フレーム部材2、2間の相対変位の発生と同時に摩擦力を増大させ、摩擦力によるエネルギ吸収量を高める働きをする(図4−(a)の点Aから点Bまでの区間)。
図2における上側のフレーム部材2が左側へ相対変位し、静止した後は引張部材4が相対変位しているフレーム部材2を原位置に復帰させようとするため、フレーム部材2が右側へ相対変位しようとする。フレーム部材2が(a)の原位置を通過するまでは摩擦材5、5が発生する摩擦力が減少し、通過後、変位量が増大するにつれて再度、摩擦力が増大する(図4−(a)の点Cから点Dまでの区間)。
図3−(a)、(b)はエネルギ吸収装置1を柱・梁のフレーム内に組み込んだ形で使用状態に置いた場合の例を示す。相対変位を生じたフレーム(梁部材6)からフレーム部材2に鉛直荷重を作用させない場合には、エネルギ吸収装置1は図3−(a)に示すようにフレームの相対変位時にエネルギ吸収装置1に水平力のみが伝達されるよう、上階側の梁部材6から切り離され、クリアランスを確保した状態でフレーム内に固定される。エネルギ吸収装置1に水平力のみを伝達させる理由はフレームの相対変位に伴い、梁部材6が曲げ変形したときに摩擦材5に想定しない圧縮力が作用しないようにするためである。
相対変位を生じたフレーム(梁部材6)からフレーム部材2に鉛直荷重を作用させてもよい場合、または積極的に鉛直荷重を作用させる場合には、エネルギ吸収装置1は図3−(b)に示すように上階側の梁部材6との間にクリアランスがない状態で、またはフレームの相対変位時に梁部材6がエネルギ吸収装置1のフレーム部材2に接触する程度のクリアランスを確保した状態でフレーム内に固定される。
図3に示す設置例の場合、エネルギ吸収装置1は例えば下階側の梁部材6上に設置され、下側のフレーム部材2において固定され、フレームの相対変位時に梁部材6からエネルギ吸収装置1に水平力が伝達されるよう、上側のフレーム部材2は梁部材6の下面等に並列して突設されたブラケット7、7に挟まれる。ブラケット7からフレーム部材2への水平力の伝達上は、上側のフレーム部材2と両ブラケット7、7は単純に接触した状態にあればよいが、フレーム部材2とブラケット7は互いに接合されることもある。
図5は一方のフレーム部材2からのみ張出部材3が張り出した場合の例を示す。(a)は下側のフレーム部材2から張出部材3が張り出した場合、(b)は上側のフレーム部材2から張出部材3が張り出した場合である。
図6は幅がフレーム部材2側から摩擦材5側へかけて次第に小さくなるような形状に張出部材3を形成した場合であり、張出部材3の体積(容積)を節減した場合の例を示す。(a)は図1−(a)における上側フレーム部材2から張り出す張出部材3の幅を摩擦材5側へかけて小さくした場合、(b)は図5−(b)における上側のフレーム部材2から張り出す張出部材3の幅を摩擦材5側へかけて小さくした場合である。
図7は引張部材4による摩擦材5,5間の摩擦力を細かく調整することができるように、張出部材3の周囲に、図6以前の例より多くの引張部材4を配置した場合の例を示す。具体的には張出部材3の周囲に合計4本の引張部材4を配置した場合であり、(a)は張出部材3の幅方向両側と厚さ方向両側に引張部材4を配置した場合、(b)は張出部材3の幅方向片側に付き、各2本の引張部材4を配置した場合である。(a)の場合、張出部材3の厚さ方向両側にも引張部材4が配置される分、張出部材3の厚さはフレーム部材2の幅より小さくなる。
図8は下側の張出部材3の上面に一体化する摩擦材5の表面にごみ等が付着、あるいは堆積しないよう、上側の張出部材3の下面に一体化する摩擦材5の面積を下側の摩擦材5の面積より大きくした場合の例を示す。この場合、上側の摩擦材5が下側の摩擦材5より大きいことで、下側の摩擦材5の上方が常に上側の摩擦材5で覆われるため、下側の摩擦材5と上側の摩擦材5との間にごみ等が進入することが防止される。図8と同じ効果は図5−(b)の例でも得られる。
図9−(a)〜(c)は引張部材4端部のフレーム部材2への定着例を示す。(a)は定着部材8としてナットを使用した場合、(b)は定着部材8として例えば楔とコーン等を組み合わせた定着金物を使用した場合である。(a)、(b)は引張部材4の端部がフレーム部材2に完全に固定状態で定着されるため、引張部材4がフレーム部材2に対して傾斜したときには、フレーム部材2、2の表面から露出している部分間の区間が相対変位に追従する。
図9−(a)、(b)の場合には引張部材4のフレーム部材2への埋設区間と露出区間の境界に引張部材4の傾斜時に曲げ応力が集中する可能性がある。これに対し、(c)ではフレーム部材2内部に、任意の軸回りに回転自在な状態に定着部材8を配置することで、引張部材4の定着端部に曲げ応力が作用しないようにしている。
図9−(c)では引張部材4が突出するフレーム部材2の表面側に円錐台形状の開口を形成する一方、背面側に球面を持つ受け部材9を埋設し、この受け部材9の背面にそれと同一の曲率の球面を持つ定着部材8としてのナットを配置し、このナットにより引張部材4を受け部材9に定着している。ここでは定着部材8としてのナットが受け部材9に対して自由に、すなわち抵抗なく回転できるよう、受け部材9と定着部材8との間にPTFE(四フッ化エチレン)等の低摩擦材10を介在させている。
図9−(c)では定着部材8としてのナットと受け部材9の背面が球面を有することで、ナットが受け部材9の背面に接触したまま、引張部材4の傾斜に追従することができるため、引張部材4の端部に曲げ応力が集中することがない。また引張部材4は受け部材9から露出する区間から伸長することができることで、(a)、(b)の場合より伸長区間が長くなり、それだけ(伸び歪みが小さい分)伸長時の復元力が小さくなるため、摩擦材5、5間に作用する摩擦力を調整することができる利点がある。