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JP2009173667A - 病原菌のtir遺伝子によってコードされる、病原菌の宿主の膜受容体、hp90 - Google Patents

病原菌のtir遺伝子によってコードされる、病原菌の宿主の膜受容体、hp90 Download PDF

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JP2009173667A JP2009071999A JP2009071999A JP2009173667A JP 2009173667 A JP2009173667 A JP 2009173667A JP 2009071999 A JP2009071999 A JP 2009071999A JP 2009071999 A JP2009071999 A JP 2009071999A JP 2009173667 A JP2009173667 A JP 2009173667A
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Brendan Kenny
ケニー,ブレンダン
Rebekah Devinney
デビニー,レベッカ
Marcus Stein
ステイン,マーカス
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Abstract

【課題】腸管病原性大腸菌(EPEC)及び腸管出血性大腸菌(EHEC)等の感染によって起こる疾病用の医薬組成物の提供。
【解決手段】(i)特定のアミノ酸配列又は実質的に同一のアミノ酸配列を含む転座インチミン受容体ポリペプチド、(ii)宿主細胞中でアクチンを核化させる及びシグナル伝達経路を活性化する(i)のポリペプチド、(iii)Tir特異的抗体に特異的に結合する(i)のポリペプチド、(iv)宿主内で腸出血性大腸菌(E.coli)に対する免疫応答を誘導する(i)のポリペプチド、(v)(a)特定の核酸配列を含むポリヌクレオチド;(b)TがUである(a)に記載のポリヌクレオチド;(c)(a)又は(b)に相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチド;又は(d)特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(vi)(v)のポリヌクレオチドを含むベクター、の一つの使用。
【選択図】なし

Description

本出願は、1997年11月12日出願の米国特許出願第60/065,130号を基礎とする優先権を主張するものであり、その開示内容は引用により本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本発明は、一般的に病原体生物の毒性(virulence)に関するものであり、特に、腸管病原性大腸菌(E.coli)および腸管出血性大腸菌(E.coli)のような腸管接着・微絨毛消失性病原体に関連する毒性因子に関するものである。
(発明の背景)
腸管病原性大腸菌(E.coli)(EPEC)は乳児の下痢症を引き起こし、胃腸炎を引き起こすことが示された最初の大腸菌(E.coli)であった。EPECは、依然として発展途上国における高い罹病率および死亡率の一因である乳児の下痢症の重要な原因である。EPECは、感染した上皮細胞の表面に小さい微小コロニーを形成し、次に上皮刷子縁微絨毛に密に接触して局所的に変質させ、蓄積して腸管接着・微絨毛消失性(attaching and effacing pathogens:A/E)病変を形成する。このA/E病変(即ちペデスタル(pedestal)病変)は、細胞骨格の成分であるアクチン、α-アクチン、ミオシン軽鎖、エズリン(ezrin)、およびタリン(talin)等を含む、接着性細菌の直下の上皮細胞における高度に組織化された細胞骨格構造の構成(assembly)と関連を有する。
EPECは、宿主細胞に接着して、接着微生物下部の宿主のアクチンの局所的蓄積を引き起こす、集合的に腸管接着・微絨毛消失性病原体として知られる病原性生物群のメンバーである。この群の病原体としては、腸管出血性大腸菌(E.coli)(EHEC、出血性大腸炎および溶血尿毒症症候群の原因物質)、およびシトロバクター・ロデンティム(Citrobacter rodentium)やハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)等の他の数種のヒトおよび動物の病原体が挙げられる。
三段階モデルにより、腸管病原性大腸菌(E.coli)の病因が説明される。即ち、IV型線毛を介した初期の局所的な上皮細胞への接着の後、宿主の上皮細胞のシグナル伝達経路が活性化され、宿主の上皮細胞への密な接着が起こる。後の2つの段階は、全体として腸管接着・微絨毛消失として知られる。宿主の上皮細胞でのシグナル伝達は宿主細胞のチロシンキナーゼ活性の活性化を伴い、これは90キロダルトン(kDa)の宿主の膜タンパク質、Hp90のチロシンリン酸化、ならびに細胞内イノシトールリン酸(IP3)およびカルシウムの流動をもたらす。このシグナル伝達の後、細菌は上皮細胞の表面に密に接着して、宿主の上皮細胞の微絨毛に損傷を与え、該細菌の下部に細胞骨格タンパク質を蓄積させる。
近年になって、ペデスタル病変形成に関与する幾つかの細菌の成分が同定された。EPECは、束状構造形成性線毛および陽性の毒性因子調節物質Perをコードする毒性プラスミドを有する。ペデスタル病変形成に必要な産物をコードする全ての遺伝子は、大腸菌(E.coli)の染色体の35キロベースpar(kb)の病原性島(pathogenicity island)の中に見出される。腸上皮細胞消失部位(LEE)領域の座位のなかには、III型分泌装置タンパク質、分泌エフェクター分子およびそれらのシャペロン、ならびにインチミン等の、その産物が異なる機能を有する幾つかの遺伝子がある。
III型分泌系は、多くの病原性グラム陰性生物において益々多く見出されてきており、EPECのIII型分泌系の役割は、A/E病変の形成に必要なタンパク質を分泌することである。EPEC分泌系によって分泌されるタンパク質のうちの少なくとも2種、EspAおよびEspBは、上皮細胞においてEPEC誘導シグナルを活性化するために必要である。これらのシグナルには、カルシウムおよびイノシトール流動、ならびにHp90のチロシンリン酸化等がある。espAまたはespBにおける突然変異、またはIII型分泌系(sepおよびcfm)における突然変異によって、EPEC付着因子インチミンの上皮細胞表面への結合のシグナル伝達、即ち誘導ができなくなる。
インチミンは、細菌染色体のLEE座位eaeAの産物であり、密な接着に必要な94kDaのEPEC外膜タンパク質である。eaeAが欠損した変異体は未熟型A/E病変を形成し、上皮シグナル伝達が活性化されたとしても、ホスホチロシンタンパク質および接着した細菌の下側の細胞骨格成分を組織化しなくなる。インチミンは、他の細菌因子(EspAおよびEspB)が上皮シグナル伝達を刺激した後の下側の宿主細胞骨格の再組織化に関与する。
また、宿主細胞へのインチミンの結合は、ホスホリパーゼCγのチロシンリン酸化等の、哺乳動物細胞内の第2波のシグナル伝達を刺激する。培養細胞中では、哺乳動物細胞がEspAおよびEspBを分泌しうる無傷のIII型分泌系を有するEPEC菌株に前もって感染されている場合にのみ、インチミンがチロシンリン酸化形態のHp90に結合する。しかし、Hp90の実体については、それがEPEC感染の後チロシンリン酸化されることおよびインチミンの受容体として作用すること以外殆ど知られていない。ホスホチロシンタンパク質(おそらくHp90)は、EPECの直下のペデスタル病変の先端に集中しているが、ホスホチロシン残基は、不透過処理された(unpermeabilized)細胞における表面には露出されていない。生化学的には、Hp90は、内在性の(integral)宿主膜タンパク質としての挙動を示し、かつ高度に保存されていると考えられる。また、Hp90はインチミンに結合した後、接着細菌下部の重合アクチンの組織化において重要な役割を果たすと考えられる。
(発明の概要)
本発明は、腸管接着・微絨毛消失性細菌におけるペデスタル病変形成に関連するタンパク質(Hp90)が、インチミン受容体としてのその役割によって、実際に腸管接着・微絨毛消失性細菌によって産生されているという発見に基づくものである。本発明は、病原性大腸菌(E.coli)によって分泌されるTir(転座インチミン受容体、translocated intimin receptorの略称)と称するポリペプチドを提供する。病原性大腸菌(E.coli)によって生じた疾病の診断は、Tirに結合する抗体を使用して該タンパク質を検出する技術、およびTirポリペプチドをコードする核酸を検出するために核酸プローブを使用する技術等の標準的な技術によって行うことができる。また本発明は、Tirポリペプチドをコードする単離された核酸配列、Tirペプチド、組換えTirを作出するための組換え方法、Tirに結合する抗体、およびTir産生大腸菌(E.coli)を検出するためのキットを提供する。また本発明は、Tirで宿主を免疫化してTirに対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。さらに本発明は、細菌性病原体のその受容体への結合を阻害する物質をスクリーニングするための方法を提供する。
本発明の別の形態においては、融合タンパク質が提供される。この実施態様においては、Tirをコードするポリヌクレオチドが、目的のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドに機能可能なように結合されている。好ましい実施態様においては、目的の第2のポリヌクレオチドが免疫応答を付与するポリペプチドをコードするが、Tirポリペプチドは、目的とするあらゆる第2のポリペプチドに結合され得る。
別の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、宿主の細胞内に送達される。
細菌付着因子(adhesin)および進入因子(invasin)の哺乳動物の受容体は殆ど同定されていない。ここでTirと指称するHp90が細菌タンパク質であるという発見は予期されないものであった。これまでのあらゆる生化学的データは、それが哺乳動物の内在性膜タンパク質であることを示していた。いくつかの病原性グラム陰性細菌は、III型分泌系を用いてその宿主細胞において様々な効果を引き起こす。EPECは、細菌の受容体をその宿主細胞に挿入するためにIII型系を用いる最初の病原体である。他の病原体も、特にその哺乳動物の受容体が同定されなかったものでは、このストラテジーを用いるものがあり得る。Tirは、宿主細胞においてチロシンリン酸化される最初の細菌タンパク質でもある。他の毒性因子も、III型系によって宿主細胞内に挿入され、宿主細胞内部で改変されることがあり得る。
図1は腸管病原性大腸菌(E.coli)(EPEC)に対して産生された抗体である、78キロダルトン(kDa)の分泌タンパク質が、Hp90を認識することを示す。図1Aは、EPEC増殖上清において見出された、分泌された78kDaのタンパク質を示す。図1Bは、ウェスタン分析を示す。EPECを感染させたHeLa細胞または感染させていないHeLa細胞からの膜および不溶性画分を、2回ずつ負荷してSDS-6% PAGEで分析した。ニトロセルロースにブロットした後、サンプルを抗PY (PY)または抗EPEC 78kDa抗体をプローブとして検出した。分子量マーカーは、kDa単位である。Ep85は、85kDaのチロシンリン酸化EPECタンパク質である。(-)は非感染細胞を表し、(+)は、EPECが感染したHeLa細胞を表す。 図2Aは免疫沈降の結果を示す。非感染またはインチミン変異体が感染したJ774細胞からの膜画分を単離し、2つのアリコートに分割し、次に抗PYまたは抗EPEC 78kDa抗体で免疫沈降させた。得られた免疫沈降物および清澄な上清を、SDS-6% PAGEによって分析した。ニトロセルロースにブロットした後、サンプルを抗PYをプローブとして検出した。(-)は非感染細胞を表し、(+)は、CVD206感染J774細胞を表す。図2Bは、抗PYまたは抗EPEC 78kDa抗体をプローブとして検出した、インチミン変異体を感染させたJ774細胞の膜画分の二次元ゲル電気泳動を示す。インチミン変異体を感染させたJ774細胞の膜画分を上述のように調製した後、等電点電気泳動により分離し、次にSDS-8%-PAGEによって分析し、その後PYまたは抗EPEC 78kDa抗体でイムノブロッティングするためにニトロセルロースに移した。 図3は、分泌されたEPEC78と膜関連Hp90(Tir)との間の移動度の差が、リン酸化によることを示す。HeLa細胞に、インチミン変異体CVD206を感染させてHp90リン酸化を誘導した。ホスファターゼ処理のために用いた膜画分を、ホスファターゼ阻害剤の不存在下で単離し、2単位のアルカリホスファターゼと共に37℃で4時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ処理した(+)または未処理の(-)サンプルおよび分泌されたタンパク質を含むEPEC上清をそれぞれ2回ずつ負荷し、SDS-6% PAGEで分離した。ニトロセルロースにブロットした後、抗PYまたは抗EPEC 78kDa抗体をプローブとしてサンプルを検出した。分子量マーカーはkDa単位である。 図4は、感染哺乳動物細胞において、抗PYまたは抗EPEC 78kDa抗体が同一の構造を標識することを示す。HeLa細胞の免疫蛍光標識は、EPEC感染の3時間後に行った。固定された透過化細胞は、抗PYおよび抗EPEC 78kDa抗体(図4A〜図4D)、またはFITCファロイジンおよび抗EPEC 78kDa抗体(図4E〜図4H)の何れかで同時標識した。パネルDおよびHは、それぞれパネルBおよびC、ならびにFおよびGを重ね合わせたものである。パネルE〜Hでは、最も発達したアクチンペデスタル病変を有する感染細胞を示すために視野を選択した。矢印は、非接着細菌を表す。 図4−1の続き。 図5は、Tirの宿主細胞への導入が、III型分泌装置およびEPEC分泌タンパク質EspAおよびEspBに依存することを示す。HeLa細胞に、EPECまたはeaeA(インチミン)、espA、espB、tirまたはcfm-14における変異を含む菌株を感染させ、それらのTriton X-100可溶性(膜)画分および不溶性(細菌および細胞骨格)画分を単離した。サンプルをSDS-6% PAGEで分離し、ニトロセルロースに移した後、抗EPEC78kDa抗体をプローブとして検出した。Tir関連タンパク質(90、78kDa)を矢印で示す。分子量マーカーは、kDa単位である。 図6は、tirのヌクレオチド配列および推定タンパク質(A)、および遺伝子地図(B)を示す。図6Aでは、2つの推定上の膜架橋(spanning)ドメインに下線を付し、6個のチロシン残基を四角で囲んだ。図6Bは、腸上皮細胞消失部位(LEE)におけるtirの位置および遺伝子欠失ストラテジーを示す。 図6−1の続き。 図6−2の続き。 図7は、TirのT7およびHSVエピトープの標識化(tagging)を示す。図7Aは、Tir変異体が、接着細菌下部にホスホチロシンタンパク質またはアクチンの著しい蓄積を生じなかったことを示す。HeLa細胞に、EPEC、Δtir、またはクローン化T7-TirもしくはTir-HSV融合タンパク質を発現するΔtirを3時間感染させた。感染細胞を固定し、抗PY、抗T7または抗HSV抗体の何れかを用い、次に適当なヤギ抗マウスFITCコンジュゲート抗体を用いて標識した。重合アクチンは、ファロイジン-テキサスレッドで染色した。感染細胞の蛍光顕微鏡観察によって、T7およびHSVエピトープの両方の局在を示す典型的なペデスタル病変形成と、特徴的な馬蹄形パターンのアクチンとが確認された。図7Bは、EPEC 78 kDa、T7、およびPYに対する抗体を用いて、T7-TirがHeLa細胞膜抽出物において検出可能であったことを示す。T7-Tirがチロシンリン酸化されたことを示すため、CVD206またはT7-Tir菌株を感染させたHeLa細胞の膜画分をT7特異的抗体を用いて免疫沈降させた。予想通り、T7抗体は90 kDa Tirタンパク質を免疫沈降させなかったが、PY、T7またはEPEC 78の何れかに対する抗体によって認識された僅かに大きいT7-Tir融合タンパク質を沈降させた。HeLa細胞に、CVD206 (1)またはT7-Tir融合タンパク質を発現するΔtir (2)を感染させた。次にTriton可溶性の(膜)画分を単離し、抗T7抗体で免疫沈降させた。膜およびT7免疫沈降物を3回ずつ負荷し、SDS-6% PAGEで分離した。ニトロセルロースにブロットした後、サンプルを抗PY、抗T7または抗EPEC 78kDa抗体をプローブとして検出した。実線矢印はTirの移動位置を表し、影を付けた矢印はT7-Tirの移動位置を表す。T7タグを付加することによって、CVD206の場合に観察された分子量と比較したときの、Tirリン酸化タンパク質の見かけの分子量が増加した。T7-Tirとは異なり、Tir自体はT7抗体と交差反応しなかった。 図8は、インチミンがEPECからのTirと結合することを示す。図8Aは、His-T7Intタンパク質が一本の78 kDaのバンドに特異的に結合し、その後抗EPEC 78 kDa抗体をプローブとして同じブロットを分析することによってTirとして同定されたことを示す。この結合は、濃度に依存する形で生じた。ゲルオーバーレイ系を用いると、様々なインチミン融合タンパク質がTirのみに結合し、より大きい分子量のβ1インテグリン(または他のあらゆる上皮膜分子)には結合しない。EPECまたはtir増殖上清を単離して、2倍連続希釈物を作製し、それぞれに等量のHeLa膜抽出物を添加した。サンプルを12% SDS-PAGEで分離し、2回ずつニトロセルロースに移した後、130μgのHis-T7Int融合タンパク質を重ね合わせて、T7特異的抗体をプローブとして検出した(左側パネル)。この後、同じブロットを抗EPEC 78 kDa抗体と反応させた(右側パネル)。希釈度をゲルの上側に、分子量マーカーの位置を横側に示す。図8Bは、クーマシー染色および抗EPEC 78 kDa抗体またはEspB抗体をプローブとして上清希釈液を分析する慣用のELISAによって他のEPECに分泌されるタンパク質が概ね等しいレベルで存在すること、およびtir上清中にTirが存在しないことが確認されたことを示す。精製His-T7Int融合タンパク質の連続希釈物をコーティングしたELISA用プレートに加え、抗T7抗体を用いて結合した融合タンパク質を検出した。1 mlのEPECまたはtir上清に由来する分泌されたタンパク質のクーマシー染色プロフィールを結合アッセイにおいて用いた(左側パネル)。中央のパネルはHis-T7Int融合物のTirへの用量依存的な結合を示す。100μl EPECまたはtir上清(3回ずつ)をELISA用ウェルに加えて、His-T7Intペプチドの連続希釈物とインキュベートした。His-T7Intタンパク質の結合は、実施例VIIに記載するようにT7特異的抗体を用いて分光光度分析(A490)により検出した。中央のパネルに示すように、His-T7Intは、増殖上清中のTirを含むウェルにのみ結合した。この結合は用量依存的で、飽和に近い結合は75 ng/ウェル(25 nM)で生じた。右側パネルは、Tirを含むEPEC上清への一定量のHis-T7Int (75 ng/ウェル)の結合が、MBP-Intの量を高めることによって競合的に阻害されるが、MBPの量を高めても阻害が起こらないことを示す。試験結果は、±標準偏差として示す。固定したEPEC上清へのHis-T7Int (75 ng/ウェル)の結合は、マルトース結合タンパク質(MBP)-インチミン融合ペプチドの濃度を高めることによって用量依存的に阻害されたが、MBP単体では阻害されなかった。結合の50%阻害は、両融合タンパク質のモル量が概ね等しい場合(25 nM)に生じた。これらの試験結果も同様に、インチミンが非リン酸化Tirに特異的に結合し得ることを強く支持するものである。 図9は、Tirポリペプチド形態のEPEC(配列番号2)と、EHEC(配列番号4)との配列類似性を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明は、腸管病原性(EPEC)および腸管出血性(EHEC)大腸菌(E.coli)のような腸管接着・微絨毛消失性病原体によって分泌される、Tirと称するポリペプチドを提供する。本発明は、腸管病原性(EPEC)および腸管出血性(EHEC)大腸菌(E.coli)のような病原性大腸菌(E.coli)によって分泌される、Tir(転座インチミン受容体の略称)と称するポリペプチドを提供する。これらの細菌性病原体はそれら自身の受容体を哺乳動物細胞の表面に挿入し、その表面に細菌性病原体が接着して、例えばアクチン核形成のような別の宿主のシグナル伝達事象を誘発する。Tirを産生する病原体によって生ずる疾病の診断は、Tirに結合する抗体を使用して該タンパク質を検出することに基づく技術、およびTirポリペプチドをコードする核酸を検出するための核酸プローブの使用に基づく技術等の標準的な技術によって行うことができる。また本発明は、Tirポリペプチドをコードする単離された核酸配列、Tirペプチド、組換えTirを生産するための組換え方法、Tirに結合する抗体、およびTir産生生物を検出するためのキットを提供する。また本発明は、Tirで宿主を免疫化してTirに対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。さらに本発明は、Tirを産生する病原体のTirへの結合を阻害する化合物をスクリーニングするための方法を提供する。
本発明の好ましい実施態様の詳細を、添付の図面に示すとともに以下に記述する。本明細書に記載する本発明の詳細に基づき、さらに多数の改良や変更が当業者に明らかとなろう。
(Tirポリペプチド)
本発明は、インチミンを結合する、実質的に精製された転座インチミン受容体(Tir)を提供する。本明細書において、用語「Tir」(転座インチミン受容体の略称)は、インチミンを結合する分泌されたポリペプチドをいう。
本明細書においてTirと指称するHp90が細菌のタンパク質であるという発見は予期しないものであった。これまでのあらゆる生化学的データは、Hp90が哺乳動物の内在膜タンパク質であることを示すものであった。その検出のための唯一の手段は、抗PY抗体であった。以前には、非感染細胞ではそれは非リン酸化状態にあり、従って検出不可能であるとみなされていた。しかし、Tirは調査した全てのEPEC感染哺乳動物細胞型において見出され、保存的タンパク質として挙動するものであった。
今回いくつかの証拠によって、Tirが細菌起源であることを示す。第1に、EPEC分泌Tirタンパク質に対するポリクローナル抗体は、Tirの膜を認識し、それを免疫的に枯渇させる(immunodeplete)。第2に、PYおよびTir抗体の両方を用いた等電点電気泳動および蛍光顕微鏡検査によってその実体が示される。第3に、EPEC tir遺伝子を同定し欠失させること、およびエピトープ標識した(tagged)Tir融合タンパク質を生成することにより、細菌のTirタンパク質がチロシンリン酸化され、Hp90として挙動することが示される。最後に、インチミンは、EPECから分泌されたTirタンパク質と直接かつ特異的に相互作用する。
宿主細胞へのTirの送達には、EpsA、EspBおよびIII型分泌装置が必要である。EspAおよびEspBを欠く菌株では、HeLaにおいてチロシンリン酸化Tirが検出され得ない。Tirを送達するだけで、EPEC感染細胞において見られる他のシグナル(例えばカルシウムおよびイノシトールリン酸流動、ミオシン軽鎖リン酸化、アクチン再構成)を活性化するのに十分であるか否か、あるいはEspAおよびEspBが別の機構を介してこれらのシグナルを媒介するのか否かということは、依然として未解決である。これらの様々なプロセスは現在のところ分離することができない。上皮細胞との接触時に、EspBは上皮膜と会合した耐プロテアーゼ形態を取り、これによって宿主細胞膜へのTirの送達を容易にし得る。
Tirは、特定された機能を少なくとも3種有する。機能の1つは、細菌表面上のインチミンに結合する、哺乳動物細胞表面上のEPECインチミン受容体としての機能である。この結合では、少なくとも本明細書に説明するin vitro条件下では、細菌分泌非リン酸化形態のTirに特異的な様式で結合したインチミン融合タンパク質His-T7Intとしてチロシンリン酸化される必要はない。EspA、EspBまたはTirを欠く菌株は、おそらくTirを宿主細胞表面に送達することができないため、密な接着のために必要なインチミン媒介結合を誘導することができない。いくつかの証拠から、Tirが原形質膜に位置し、上皮内在性膜タンパク質の機能を果たすことが分かる。インチミン融合タンパク質は、Tirを宿主細胞に送達するEPEC菌株を前もって感染させた固定上皮細胞にのみ結合し、このことはTirが表面に露出されることを示唆している。Tirは上皮細胞膜抽出物と共存し、これらの抽出物から高濃度の塩で抽出することはできない。細胞表面における接着細菌下のその共存(図4)およびインチミンに結合するその能力を考えると、Tirが別の膜にある可能性は低い。Tirは、非透過化細胞における限られた表面タンパク分解に感受性を有する。蛍光顕微鏡検査のデータにより、抗EPEC 78キロダルトン(kDa)抗体が、インチミン変異体感染細胞の非透過化膜にのみ結合し、tir感染または非感染細胞には結合しないことが示されており、このことも原形質膜表面の露出された位置にあることを裏付けている。さらに、ホスホチロシン抗体は透過化細胞におけるTirのみを認識し、このことは細胞質表面におけるチロシンリン酸化残基についての上皮膜貫通の向きを示している。
Tirの第2の機能は、インチミンの結合後にアクチンを核化させることである。インチミンまたはTirを欠く菌株は、結合した細菌の近傍にアクチンがかなり蓄積していても、接着細菌の下にアクチンを局在化させることができない。Tirが哺乳動物細胞内においてペデスタル病変の先端に位置していること、およびTir-インチミン結合が生じない場合、アクチンが細菌の下に組織化されないことを考えると、Tirが、アクチンと宿主の膜への直接あるいは間接の結合に関与し、それによりペデスタル病変を形成している可能性が高い。
Tirの(おそらくアクチン組織化と関連を有する)第3の機能は、Tir-インチミン相互作用が起きた後に別のシグナルの宿主細胞への伝達に関する。インチミンを介する上皮細胞への結合によって、ホスホリパーゼCγおよび他の宿主タンパク質のチロシンリン酸化が誘発される。これらのシグナルは、Tirリン酸化および他の初期シグナル事象およびインチミン結合の後に起こる。アクチン膜結合タンパク質は殆ど同定されておらず、Tirは、それが細菌を起源とすることを考えると、そのような機能を果たす物質の新しい候補である。しかし、病原性リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)およびシゲラ(Shigella)属を起源とする他の2種の細菌の分子、ActAおよびIcsAは、細胞質内からでも、様々な細胞骨格架橋物質によってアクチンを核形成させ得る。しかし、EPEC誘導細胞骨格の構造はより小絨毛を思わせるものであり、従ってEPECは、そのような構造の構成を研究するためのユニークなモデルを提供する。
本発明でもたらされた予期しない結果は、インチミンがβ1インテグリンに結合しないことの発見である。インチミンの280個のC末端残基は、β1インテグリンに結合しない。MBP-Int(その構造は実施例VIIに記載されている)の上皮細胞への結合は、その細胞がEPECを前もって感染されていた場合には検出されるが、非感染細胞またはIII型分泌即ちシグナル伝達変異体が感染し、β1インテグリンを発現する細胞への結合は検出されない。しかし、MBP-Intを用いて上皮膜から90kDaの形態のTirを沈降させると、β1インテグリンは、沈降のために用いた上皮膜抽出物中に存在しているにも関わらず同時沈降しない。さらに、ゲルオーバーレイ系(実施例VIIに記載)を用いると、様々なインチミン融合タンパク質は、Tirのみに結合するが、より大きい分子量のβ1インテグリンや、他のあらゆる上皮膜分子とは結合しない(図8A)。これらの結果から、β1インテグリンではなくTirが、培養された哺乳動物細胞上の主たるインチミン受容体であることが分かる。
本発明により提供されるTirポリペプチドは、任意の生物体により産生され得る。具体的には、本発明により提供されるTirポリペプチドは細菌により産生され得る。いくつかの病原性グラム陰性細菌はIII型分泌系を用いてそれらの宿主細胞において様々な効果を生じさせる。EPECは、細菌の受容体をその宿主細胞に挿入するためにIII型系を用いる唯一の最初の病原体である。他の病原体、特に哺乳動物の受容体が同定されていない病原体が、このストラテジーを用いると予想される。またTirは、宿主細胞においてチロシンリン酸化される最初の細菌タンパク質である。他の毒性因子は、III型系によって、宿主細胞中に挿入され、おそらく後に宿主細胞内で改変されると予想される。EPECは、A/E病変を生じさせる関連する病原体の群のメンバーである。これらの病原体において見出される様々なインチミン、EspA、EspB、およびIII型分泌系の類似性を考えると、腸管接着・微絨毛消失性病原体は、密な接着を媒介するために同様なストラテジーに従っていることが予想される。実際に、報告された、EPEC、RDECおよびシトロバクター(Citrobacter)菌株からのorfUの上流配列は、EPEC TirのC末端配列に相同的な部分的オープンリーディングフレームを有する。
本発明によって提供されるTirポリペプチドは、グラム陰性細菌によって産生され得る。グラム陰性細菌は広い範囲の生物体の群であり、トレポネーマ属(Treponema)およびボレリア属(Borrelia)のようなスピロヘータ、例えばシュードモナス科(Pseudomonaceae)、レジオネラ科(Legionellaceae)、腸内細菌科(Enteribacteriaceae)、ビブリオ科(Vibrionaceae)、パスツレラ科(Pasteurellaceae)等のグラム陰性桿菌、例えばナイセリア科(Neisseriaceae)、嫌気性バクテロイデス(anaerobic Bacteroides)等のグラム陰性球菌、および例えばリケッチア属(Rickettsia)、クラミジア属(Chlamydia)、およびマイコプラズマ属(Mycoplasma)等の他のグラム陰性細菌が含まれる。
グラム陰性桿菌(rods)は、臨床医学において重要である。グラム陰性桿菌としては、(1)そのファミリーが多くの重要な病原性の属を含む腸内細菌科、(2) ビブリオ(Vibrio)、カンピロバクター(Campyrobacter)、およびヘリコバクター(Helicobacter)属、(3) 日和見生物(例えばシュードモナス(Pseudomonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属等)、および(4) ヘモフィルス(Haemophilus)属およびボルデテラ(Bordetella)属が挙げられる。グラム陰性桿菌は、腹部臓器、腹膜、および泌尿器系の感染、および気道、やけどまたは外傷を負った皮膚、および宿主の抵抗力の低下した部位の2次感染において見出される主要な生物体である。現在、グラム陰性桿菌は、生命を脅かす菌血症の最も大きな原因である。病原性グラム陰性桿菌の例としては、大腸菌(E.coli)(下痢、尿路感染、新生児の髄膜炎)、赤痢菌(Shigella)属(赤痢)、腸チフス菌(Salmonella typhi)(腸チフス熱)、鼠チフス菌(Salmonella typhimurium)(胃腸炎)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)(全腸炎)、ペスト菌(Yersinia pestis)(黒死病)、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)(コレラ)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jajuni)(全腸炎)、ヘリコバクター・ジェジュニ(Helicobacter jajuni)(胃炎、消化性潰瘍)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(火傷、気道、創傷感染を含む日和見感染症、および皮膚、目、および耳の1次感染症)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(小児の髄膜炎、喉頭蓋炎、中耳炎、副鼻腔炎、および気管支炎)、ならびに百日咳菌(Bordetella pertussis)(百日咳)が挙げられる。ビブリオ(Vibrio)は運動性のグラム陰性桿菌(ビブリオ科)である。ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)はヒトにおいてコレラを発病させ、他の種のビブリオは動物を発病させる。大腸菌(E.coli)はヒトおよび温血動物の腸にコロニーを形成し、共生フロラの一部となるが、ヒトおよび動物の腸疾患を引き起こす大腸菌(E.coli)の型がある。大腸菌(E.coli)としては、腸管凝集付着性大腸菌(E.coli)(EaggEC)、腸管出血性大腸菌(E.coli)(EHEC)、腸管組織侵入性大腸菌(E.coli)(EIEC)、腸管病原性大腸菌(E.coli)(EPEC)、および毒素原生大腸菌(E.coli)(ETEC)が挙げられる。尿路病原性大腸菌(E.coli)(UPEC)は、泌尿器感染症を引き起こす。また、新生児髄膜炎大腸菌(E.coli)(NMEC)も存在する。ヒトの感染症のいくつかのものと類似の感染症を動物において引き起こすこと以外に、仔ウシ敗血症、ウシ乳腺炎、ブタ水腫、および家禽の気嚢病等を含む特異的な動物の疾病が存在する。
EHECにおける相同なtir遺伝子(配列番号3)がクローン化された。しかし、EHECはその受容体のチロシンリン酸化を引き起こさず、このことはこれら2種の病原体の差異を示している。従って、本発明は、細胞生物学による病因論の研究のための有用な科学的方法を提供する。
EHEC TirでなくEPEC Tirがチロシンリン酸化されるという事実から、非常に類似した毒性因子を含むこれら2種の病原体を区別するための方法が得られる。すなわち、抗ホスホチロシンおよび抗Tir抗体をプローブとして使用して細菌を検索することができる。本明細書において、「抗ホスホチロシン」抗体は、リン酸化チロシンを有するエピトープに結合する抗体である。抗ホスホチロシン抗体は、リン酸化チロシンを有するタンパク質には結合するが、リン酸化されていないチロシンには結合しない。抗ホスホチロシンおよびtir抗体の細菌への結合の検出は、免疫蛍光検査法またはウェスタンブロット法の何れかによるものとし得る。EPECは、抗ホスホチロシン結合および抗Tir結合の両方について陽性である。EHECは、抗Tir結合について陽性であり、抗ホスホチロシン結合について陰性である。
グラム陰性好気性球菌群としては、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(ブランハメラ属)(Moraxella(Branhamella))およびアシネトバクター属(Acinetobacter)等が挙げられる。ナイセリア属(Neisseria)としては、2つの重要なヒトの病原体である、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)(尿道炎、子宮頚管炎、卵管炎、直腸炎、咽頭炎、結膜炎、咽頭炎、骨盤内炎症性疾患、関節炎、播種性疾患)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎、敗血症、肺炎、関節炎、尿道炎)等が挙げられる。以前には無害であると考えられてきた他のグラム陰性好気性球菌群として、モラクセラカ(ブランハメラ)カタラーリス(Moraxella(Branhamella)catarrhalis)(慢性肺疾患の患者における気管支炎および気管支肺炎、副鼻腔炎、中耳炎)があり、これは最近になってヒトの感染症の一般的な原因であることが分かった。
本発明によって提供されるTirポリペプチドは、グラム陰性細菌によりIII型分泌系によって分泌され得る。グラム陰性細菌は、毒性因子をそれが宿主の成分と相互作用し得る細菌表面に移動させるために重要なプロセスである、菌の2層の膜を通して分子の送出を行うための特別な装置を用いる。グラム陰性細菌の分泌は、4つの主要な経路に分けられている。第1に、I型分泌は、大腸菌(E.coli)溶血素が典型である毒素の小ファミリーによって用いられる。第2に、II型分泌系は、多くのグラム陰性細菌が、いくつかの毒性因子を含む多くの分子を送出するために用いる主要な送出経路であり、哺乳動物の薬剤耐性機構と相同性を有している。第3に、IV型分泌系は、分泌機構の一部としてそれ自身を切断する分泌産物内にコードされ、この系の典型はナイセリア属(Neisseria)IgAプロテアーゼである。第4に、最も近年になって発見された分泌経路であるIII型経路がある。
III型分泌系は、エルシニア属(Yersinia)の病原性にとって重要な、エルシニア属(Yersinia)分泌病原性タンパク質YOPのための分泌系として最初に文献に記載された。次に相同な分泌系が、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・ソラナセアラム(P.solanacearurn)、およびキサンタルモナス・カーンペストリス(Xantharmonas carnpestris)等を含む幾つかの植物病原体において同定された。これらの植物病原体は、この分泌経路を、植物における疾病の発病に必要な毒性因子(ハーピン(harpin)等)を分泌するために用いる。この分泌経路は類似しているが、ハーピンおよびYOP(即ち分泌された毒性因子)は、相同なポリペプチドではない。最近、病原性に必要ないくつかの他のIII型分泌系が、他の病原体において同定された。これらの系として、サルモネラ菌(Salmonella)および赤痢菌(Shigella)が、細胞内に入り疾病を引き起こすために用いる侵入系等が挙げられる。他のIII型分泌系は、疾病に重要なものがサルモネラ菌(Salmonella)において同定されたが、この経路の分泌産物および病原性機構の分泌産物はまだ分かっていない。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、強力な毒性因子である細胞外酵素Sの分泌に必要なIII型分泌系を有する。
ある実施態様においては、Tirポリペプチドが、EPECまたはEHECのような腸管接着・微絨毛消失性(A/E)病原体によって分泌され得る。EPECからのTirは、上皮細胞シグナル伝達、密な接触、および腸管接着・微絨毛消失性病変の形成、すなわち疾病と関連を有するプロセスを活性化するために必要である。上皮細胞の例としては、腸の細胞、HeLa細胞系の細胞、およびJ774細胞系の細胞が挙げられる。
ある実施態様においては、Tirは、SDS-PAGEによって決定された約78 kDaの分子量を有するが、上皮細胞(Hp90)から得られたときには、SDS-PAGEによって決定された約90kDaの分子量を有する。EPECから分泌されたTirタンパク質は、56.8 kDaのタンパク質をコードすると推定されるが、分泌タンパク質に対しては、約78 kDaの分子量が観測された。これは、アミノ酸組成即ち構造上の特徴に起因する異常な移動およびいくつかの追加の細菌による改変を反映したものであり得る。Tirは、C末端側の半分に6つのチロシン残基、キナーゼ基質可能部位を有する2つの膜貫通ドメインを有すると予測される。
本発明に包含されるTirポリペプチドは、病原性大腸菌(E.coli)に由来するTirのアミノ酸配列の1つ、即ち、例えば配列番号2および配列番号4のアミノ酸配列を有し得る。
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、人工の組換え体とともに、あらゆる天然のそのアレル変異体を包含する。Tirポリペプチドは、天然ペプチドと、組換え体、即ちインチミンまたはインチミン様受容体に結合するという同様の機能を有する点で天然Tirペプチドと十分同一な、非天然のタンパク質およびペプチドとの両方を包含する。そのようなポリペプチドの例としては、腸管病原性および腸管出血性大腸菌(E.coli)に由来するTirポリペプチド等が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質およびポリペプチドには、誘導体、類似体、およびペプチド模擬体、および融合タンパク質が含まれる。あるいは、Tirペプチドは、当業者に公知の合成法を用いて化学的に合成することができる。好ましくは、自動ペプチド合成機を、ポリエチレングリコール-ポリスチレン(PEGPS)グラフト樹脂上のNαFmocアミノ酸と共に用いる。例えば、カルボキシアミド末端基を形成するために、ペプチドアミドリンカー(PAL)のような適当なリンカーを用いることができる。
Tirの完全長ポリペプチド配列に加えて、Tirの断片も有用である。また、本発明は、Tir特異的な活性即ちエピトープを少なくとも1つ保持しているTirポリペプチドの断片を包含する。例を挙げると、例えば少なくとも8〜10個のアミノ酸を有するTirポリペプチド断片を、Tir特異的抗体の産生における免疫原として用いることができる。この断片は、例えばTirにおいて保存されているアミノ酸配列を有し得る。異なるTirの断片は、Tirを産生する病原体の免疫応答を誘発する際に役立つ。例えば、異なるTirの断片に対する異なる抗体は、Tirとインチミンのような他の分子との間の異なる相互作用を遮断するために役立つ。ある分子の異なる特徴に対する一組の抗体は、その分子の1つの特徴に対する1種類の抗体より有用であることは、免疫学の専門家には周知である。上述のTir断片は、それらをペプチド免疫原としての用途に加えて、サンプル中でのTir特異的抗体の存在を検出するための、例えばELISAのようなイムノアッセイにおいて用いることができる。さらに、Tirの断片は、完全長Tirポリペプチドとインチミンとの結合を妨害するためにも有用である。Tirポリペプチドとインチミンとの結合を妨害するTirポリペプチドおよび他の物質をスクリーニングする方法は後述する。
さらに、Tirポリペプチド、または宿主細胞への送達が可能な生物学的特性を保持しているその断片は、融合タンパク質用の送達機構として有用であり得る。上述のように、TirはEPECによって宿主細胞の膜に挿入される。Tirが最終的に宿主細胞内に存在することになることを考えると、これによって、宿主細胞内に送達されるTirに融合する外来融合タンパク質のための送達系としてTirを利用することが考えられる。この系は、外来タンパク質に対する免疫応答を変化させるために用いることができる。例えば、細胞媒介/T細胞応答は、Tirと融合し、かつ細胞の表面上に提示される抗原によって引き出され、従って抗原は、分泌されるタンパク質としてではなく、それ自身または宿主細胞によって提示される。あるいは、Tirは、外来配列と融合したときアジュバントとして機能し得、従ってB細胞応答を引き出し、ペプチド単体による場合より免疫応答を向上させることができる。
本明細書において使用する用語「実質的に精製された」とは、天然にはそれが結合している他のタンパク質、脂質、糖質、核酸、および他の生物学的材料を実質的に含まないポリペプチド(例えばTirポリペプチドまたはその断片)のような分子を表すために用いられる。例えば、実質的に精製された分子、例えばポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも60%の目的分子であり得る。当業者であれば、標準的なタンパク質精製方法を用いてTirポリペプチドを精製することができ、かつ、そのポリペプチドの純度は、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動法(例えばSDS-PAGE)、カラムクロマトグラフィー(例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC))、およびアミノ末端アミノ酸配列分析等のような標準的な方法を用いて決定することができる。
また、Tirポリペプチドの配列と実質的に同一な配列を有するポリペプチドも本発明に包含される。実質的に同一のアミノ酸配列は、保存的なアミノ酸置換、例えばあるアミノ酸の同一のクラスの別のアミノ酸による置換(例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンのような疎水性アミノ酸の1つの、その中の別のアミノ酸による置換や、あるいは例えばアルギニンのリジンによる置換、グルタミン酸のアスパラギン酸による置換、またはグルタミンのアスパラギンによる置換のような極性アミノ酸の1つの別の極性アミノ酸による置換)のみによって、または該ポリペプチドがTir特異的活性即ちTir特異的エピトープを少なくとも1つ保持しているという条件の下での、1以上の非保存的な置換、欠失、もしくは挿入によって、基準の配列と異なっている配列である。例えば、Tirポリペプチドから1以上のアミノ酸を欠失させて、その生物学的活性を有意に変えることなく該ポリペプチドの構造を変えることができる。例えば、Tirの生物学的活性には必要のないアミノ末端またはカルボキシ末端のアミノ酸を取り除くことができる。そのような修飾によって、より小型の活性Tirポリペプチドを作り出すことができる。
本発明に包含されるその他のTirポリペプチドとしては、例えば配列番号2および配列番号4のような、Tirポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。アミノ酸配列相同性の決定において比較する長さは、例えば少なくとも15アミノ酸、例えば少なくとも20、25、または35アミノ酸以上であり得る。相同性は、標準的な配列分析ソフトウェア(例えばGenetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705のSequence Analysis Software Package; Ausubelら, 前出も参照されたい)を用いて測定することができる。
本発明のTirポリペプチドは、いくつかの標準的な方法の何れかを用いて得られる。例えば、Tirポリペプチドは、標準的な組換え発現系において製造され(下記参照)、化学的な合成され(この方法は、小型のTirペプチド断片に限られる)、または天然に発現される細菌から精製(例えばAusubelら, 前出を参照)され得る。
Tirポリペプチドの1以上のドメインに対応するポリペプチド、末端切断型もしくは欠失したTirポリペプチドや、完全長Tirタンパク質、ポリペプチド、もしくは誘導体(断片を含む)、または末端切断型Tirが関連の無いタンパク質に融合された融合タンパク質も、本発明の範囲に包含され、この項および前の項に開示されたtirヌクレオチドおよびTirアミノ酸配列を基に設計することができる。また、融合タンパク質は、Tir配列と非Tirタンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように遺伝子操作して、Tirポリペプチドを非Tir部分から切り離せるようにすることもできる。そのような融合タンパク質即ちポリペプチドとしては、限定するものではないが、in vivoでTirタンパク質を安定化させ得るIgFc融合体、またはマーカー機能を付与する酵素、蛍光タンパク質、第2の目的のタンパク質、または発光タンパク質との融合体が挙げられる。目的のポリペプチドは、それに対して免疫応答を誘発または選択的免疫を誘発することが望ましいような抗原であり得る。
Tirポリヌクレオチド;
また、本発明は、上述のTirポリペプチド及びその断片をコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号2及び配列番号4のアミノ酸配列を有するTirポリペプチドをコードし得る。これらのポリヌクレオチドは、天然のヌクレオチド配列、または遺伝暗号の縮退のために、Tirをコードする天然の核酸配列とは異なるが同じアミノ酸をコードする配列を含み得る。本発明の核酸は、DNA若しくはRNAヌクレオチド、またはそれらの組み合わせ若しくは修飾したものを含み得る。
「単離されたポリヌクレオチド」は、それが由来する生物体の天然のゲノムに存在するとき、そのポリヌクレオチドが通常は隣り合っている5'及び3'フランキング配列と、隣り合っていないポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNA分子を意味する。従ってこの用語は、例えば、プラスミドやウイルスベクターのようなベクターに導入された核酸や、異種の細胞のゲノムに(または同族の細胞のゲノムであるが、天然にある部位とは異なる部位に)導入された核酸や、例えばPCR増幅または制限酵素消化によって製造されたDNA断片、若しくはin vitro転写によって作り出されたRNA分子のような、個々の分子として存在する核酸を表す。この用語は、例えば融合タンパク質の製造において用いることができる別のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部を形成する組換え核酸も表す。
本明細書において使用する用語「増幅」は、特定のポリヌクレオチドのコピー数を増加させることをいう。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)は、ポリメラーゼと、一方は増幅される配列の一端における2本のポリヌクレオチド鎖の一方に相補的で、他方は他方の一端の2本のポリヌクレオチド鎖の他方に相補的な2種のオリゴヌクレオチドプライマーとを用いてポリヌクレオチド配列を増幅する方法である。新たに合成されたDNA鎖が、その後同じプライマー配列のさらなる鋳型としての役目を果たすことができるので、連続した複数回のプライマーアニーリング、鎖の伸長、及び解離によって、迅速かつ高度に特異的に所望の配列が増幅される。DNAサンプルにおいて決まった配列の存在を検出するためにもPCRを用いることができる。特定の実施形態においては、本発明はtirポリヌクレオチドを増幅及び検出する方法を提供する。
本発明の核酸分子は、Tir遺伝子産物(例えばTir RNA及びTirポリペプチド; 以下参照)の製造のための標準的な方法において鋳型として用いることができる。さらに、Tirポリペプチド(及びその断片)をコードする核酸分子及び近縁な核酸分子、例えば、(1) Tirポリペプチドをコードする核酸またはその断片(例えば少なくとも12、15、20または25個のヌクレオチドを含む断片)に相補的な、またはハイブリダイズする配列を含む核酸、及び(2) Tirポリペプチドをコードする核酸またはその断片(例えば少なくとも12、15、20または25個のヌクレオチドを含む断片)に相補的な配列にハイブリダイズする配列を含む核酸を、それらのハイブリダイゼーション特性に着目した方法において用いることができる。例えば、後に詳述するように、そのような核酸分子を、以下の方法、即ちTir核酸を合成するためのPCR法、サンプルにおけるTir核酸の存在を検出するための方法、新たなTirファミリーメンバーをコードする核酸を同定するためのスクリーニング方法、及び治療の方法において用いることができる。
また、本発明は、図9に示すTirポリペプチドに加えてTirポリペプチドファミリーのメンバーをコードする核酸分子を同定するための方法を包含する。これらの方法では、サンプル、例えばTirポリペプチドをコードする核酸を含む、cDNAライブラリーのような核酸ライブラリーを、Tir特異的プローブ、例えばTir特異的核酸プローブを用いてスクリーニングする。Tir特異的核酸プローブは、Tirポリペプチドをコードする核酸、またはその配列に相補的な配列に特異的にハイブリダイズする核酸分子(例えばDNA若しくはRNAヌクレオチド、またはそれらを組み合わせたもの若しくは修飾したもの)である。本発明の方法においては、用語「Tir特異的プローブ」は、Tirポリペプチドをコードする核酸またはその相補的配列に結合するプローブであって、その結合の程度が他の配列をコードする核酸またはその相補的な配列より検出可能な程度により大きいプローブである。従って、用語「Tir特異的プローブ」は、Tirポリペプチドをコードする核酸(またはその配列に相補的な配列)に結合し得るプローブを含む。
本発明により、Tir特異的核酸プローブの製造が容易になる。そのようなプローブを得るための方法は、そのアミノ酸配列アラインメントを図9に示した、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の配列類似性に基づいて設計することができる。プローブは、少なくとも12個、例えば15、25、35、50、100または150個のヌクレオチドを含むことができ、いくつかの標準的な方法の何れかにより作製することができる(例えばAusubelら, 前出参照)。例えば、好ましくは、プローブを、PCR増幅法を用いて製造する。これらの方法では、Tir特異的アミノ酸を含み得るTir保存配列に対応するプライマーが設計され、得られるPCR産物は核酸ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いられる。
EHECに由来するTirをコードするヌクレオチド配列(配列番号3)は、配列番号1の配列の分析に基づくこの方法に概ね従って特定した。コードされたタンパク質と、EPECのTirポリペプチドとの配列類似性を図9に示す。
当分野で知られているように、PCRプライマーは、通常少なくとも15個のヌクレオチド、例えば15〜30個のヌクレオチドを含むように設計される。7個のアミノ酸を含むTirペプチドをコードする、21個のヌクレオチドを含むTir特異的プライマーの設計について以下に述べる。好ましくは、そのようなプローブのヌクレオチドの大半または全てが、Tir特異的アミノ酸を含むTir保存的アミノ酸をコードする。例えば、少なくとも40%のTir保存的アミノ酸を含むペプチドをコードする配列を含むプライマーを用いることができる。21個のヌクレオチドを含むそのようなプライマーは、少なくとも3つのTir保存的アミノ酸をコードする配列を有し得る。従って、このプライマーは、少なくとも1個で、例えば最大7個のTir特異的アミノ酸をコードする配列を有し得る。プライマー配列を設計するための鋳型としてTir特異的アミノ酸配列が選択されれば、例えば標準的な化学的方法を用いてプライマーを合成することができる。上述したように遺伝暗号の縮退があるので、プライマーは適当な縮退配列を包含するように設計すべきであり、これは当業者が容易に決定することができる。
本明細書において使用する用語「tir」は、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドは、TirをコードするDNA、cDNA、及びRNA配列を含む。Tirの全体または一部をコードするあらゆるポリヌクレオチドも、これに包含される。そのようなポリヌクレオチドとしては、天然、合成、及び意図的に操作したポリヌクレオチド等がある。例えば、tirポリヌクレオチドを、部位特異的突然変異法に供することができる。tirポリヌクレオチド配列は、アンチセンス配列も含み得る。全ての縮退ヌクレオチド配列が、そのヌクレオチド配列によってコードされるTirペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化していない限り、本発明に包含される。
本発明は、本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子を包含する。本明細書において、用語「核酸」は、一本鎖及び二本鎖のDNA及びcDNAとともにRNAを包含する。Tirをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1及び配列番号3と共に、その配列に相補的な核酸配列が挙げられる。相補的な配列としては、アンチセンスヌクレオチドが挙げられる。配列がRNAであるとき、配列番号1及び配列番号3のデオキシヌクレオチドA、 G、C、及びTは、それぞれリボヌクレオチドA、 G、C、及びUに置換えられる。上述の核酸配列の断片であって、生理学的条件の下で配列番号2及び配列番号4のタンパク質をコードするDNAに選択的にハイブリダイズするのに十分な長さである、少なくとも15塩基の長さを有する断片も本発明に包含される。
核酸ハイブリダイゼーション反応では、特定のレベルのストリンジェンシーを達成するために用いられる条件は、ハイブリダイズされる核酸の性質によって異なる。例えば、核酸のハイブリダイズする領域の長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列の組成(例えばGC v. AT含量)、及び核酸の型(例えばRNA v. DNA)を、ハイブリダイゼーション条件の選択の際に考慮し得る。さらに考慮すべきことは、核酸の一方を、例えばフィルタ上に固定するか否かということである。
漸次高くなるストリンジェンシー条件の例としては、以下のようなもの、即ち、概ね室温で2 x SSC/0.1% SDS (ハイブリダイゼーション条件); 概ね室温で0.2 x SSC/0.1% SDS (低いストリンジェンシー条件); 約42℃で0.2 x SSC/0.1% SDS (中程度のストリンジェンシー条件); 及び約68℃で0.1 x SSC (高いストリンジェンシー条件)等がある。洗浄は、これらの条件の1つのみ、例えば高いストリンジェンシー条件を用いて行うことができ、あるいは、各条件を、上に列挙した順番に、例えばそれぞれ10〜15分間ずつ用いて、上記のステップの何れかまたは全てを反復することができる。しかし、上述のように、最適な条件は関連する特定のハイブリダイゼーション反応によって異なり、実験的に決定することができる。
本発明のDNA配列は、いくつかの方法によって得ることができる。例えば、当分野で公知のハイブリダイゼーション技術を用いて該DNAを単離することができる。これらの技術としては、限定されるものではないが、(1) 相同なヌクレオチド配列を検出するためのプローブによるライブラリーのハイブリダイゼーション、(2) 目的のDNA配列にアニールし得るプライマーを用いる、DNAに対するポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、及び(3) 共通の構造上の特徴を有するクローン化されたDNA断片を検出するための、発現ライブラリーの抗体を用いたスクリーニング等が挙げられる。
核酸ハイブリダイゼーションに基づくスクリーニング法により、適当なプローブが利用できれば、任意の生物体の任意の遺伝子配列を単離することが可能となる。目的のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成するか、あるいは天然の配列の断片化によって作製することができる。化学的合成には、アミノ酸配列の短いオリゴペプチド配列が知られていることが必要である。タンパク質をコードするDNA配列は、遺伝暗号から類推することができるが、遺伝暗号の縮退を考慮しなければならない。配列が縮退しているときには、混合付加反応を行うことができる。これは変性した二本鎖DNAの不均質混合物を使用する。そのようなスクリーニングのためには、好ましくは、一本鎖DNAまたは変性した二本鎖DNAの何れかに対してハイブリダイゼーションを行う。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組み合わせて用いると、稀少な発現産物でもクローン化可能である。
本発明は、Tirポリペプチドをコードする核酸配列、それを含むベクター及び宿主細胞、ならびに発現方法を提供する。Tirのペプチドを単離した後、該ペプチドをコードする核酸を当分野で公知の方法によって単離することができる。これらの単離された核酸をベクター中に連結し、発現のための適当な宿主細胞に導入することができる。細胞内での核酸の連結及び発現の方法は当分野で公知である(Sambrookら, Molecular Cloning: A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照。この文献は引用により本明細書の一部とする)。実施例Vでは、そのような方法を用いることによって、プライマーMS102 + (配列番号8)及びMS103 - (配列番号9)を作製した。
本発明は、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本明細書で使用する「ベクター」は、プラスミド、DNA及びRNAウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、酵母中で用いるためのベクター、ならびに当業者に公知の他のベクター等を包含する。いくつかの型のベクターが市販されており、本発明の実施のために用いることができる。本発明の実施において有用なベクターの例としては、低コピーベクターpMW118、ポジティブ選択自殺ベクターpCVD442、及び市販のpBluescript II SK(+) (Stragene, La Jolla, CA)等が挙げられる。例えば、実施例VではpCVD442及びpBluescriptを用いた。
ベクターがプラスミドのとき、通常このベクターは、プロモーター、シグナル配列、表現型選択遺伝子、複製起点、及び当業者に公知の他の必要な要素等の様々な要素を含む。原核生物のベクターにおいて最も一般的に用いられるプロモーターとしては、lacZプロモーター系、アルカリホスファターゼphoAプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター(温度感受性プロモーター)、tacプロモーター(lacリプレッサーによって調節されるハイブリッドtrp-lacプロモーター)、トリプトファンプロモーター、及びバクテリオファージT7プロモーターが挙げられる。例えば、低コピーベクターpMW118は、lacZプロモーターの制御下にある。
シグナル配列は、典型的には、ペプチドをコードする核酸の5'側に隣接する位置に見出され、融合タンパク質のアミノ末端において転写される。
典型的な表現型選択遺伝子は、宿主細胞に抗生物質耐性を賦与するタンパク質をコードする遺伝子である。例えば、アンピシリン耐性遺伝子(amp)及びテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)がこの目的のために容易に用いられる。異なる例としては、カナマイシンに対する耐性の遺伝子(kan)をコードするaphA-3カセットを、カナマイシンプレート上でのベクターの選択のため、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの領域にクローン化し得る。
Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターの構築物は、当業者に公知の標準的な組換えDNA手順を用いて調製する。ベクターを形成するべく結合される、Tirポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを切断し、特定の順番と方向で互いに連結させて、所望のベクターを作製する。
本発明は、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含有する宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドを用いて、発現されるTirの高レベルの産生のための形質転換またはトランスフェクト細胞を作製することができる。形質転換された細胞からのTirの単離は、当業者に公知の標準的な方法によって行うことができる。タンパク質の単離は、例えばイムノアフィニティ精製を用いて行うことができる。
TirをコードするDNA配列は、DNAを適当な宿主細胞に導入することによってin vitroで発現させることができる。本明細書で使用する「宿主細胞」は、その中でベクターが増殖し、そのDNAを発現することができる細胞である。この用語は、あらゆる対象宿主細胞の子孫も含む。複製の際に突然変異が起こり得るため、全ての子孫が親細胞と同一ではないことがあると理解されるが、用語「宿主細胞」を用いる場合は、そのような子孫は含まれる。外来DNAを持続的に宿主内に維持することを意味する、安定的な導入の方法は当分野で公知である。
本発明はまたtirポリヌクレオチドを生産する方法をも提供する。この方法においては、tirポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクターに挿入することができる。「組換え発現ベクター」という用語は、Tir遺伝子配列の挿入または組み込みによって操作されたプラスミド、ウイルスまたは当技術分野で公知の他のビヒクルを意味する。そのような発現ベクターは、宿主における挿入遺伝子配列の効率的な転写を容易にするプロモーター配列を含む。発現ベクターは典型的には複製起点、プロモーター、および形質転換細胞の表現型的選択を可能とする特定の遺伝子を含む。
Tirをコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物において発現させることができる。宿主としては、微生物、酵母、昆虫および哺乳動物を挙げることができる。原核生物中で真核生物配列またはウイルス配列を有するDNA配列を発現させる方法は当技術分野で周知である。宿主中で発現および複製が可能な、生物学的に機能的なウイルスまたはプラスミドDNAベクターが当技術分野で公知である。本発明のDNA配列を組み込むためにそのようなベクターが用いられる。
細菌系においては、発現されるTir遺伝子産物の意図された用途によって、多数の発現ベクターが有利に選択できる。例えば、Tirポリペプチドの医薬組成物の製造またはTirポリペプチドに対する抗体の作製のためにこのようなタンパク質を大量に生産しなければならない場合は、容易に精製できる融合タンパク質産物の高レベル発現を引き出すベクターが望ましいであろう。このようなベクターには以下のものが含まれるが、それらだけに限定されない。すなわち、大腸菌発現ベクターpUR278 (Rutherら、1983, EMBO J. 2:1791) (ここでは、Tir遺伝子産物コード配列は、融合タンパク質が産生されるように lac zコード領域と読み枠を合わせてベクターに連結することができる);pIN ベクター(Inouye およびInouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109); 等である。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST) を有する融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性で、グルタチオン-アガロースビーズに吸着させ、次いで遊離グルタチオンの存在下で溶出させることにより、溶解した細胞から容易に精製できる。これらpGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物をGST部分から離せるように、トロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ開裂部位を含むように設計されている。
別の融合タンパク質系は、ヒト細胞系中に発現された非変性融合タンパク質の容易な精製を可能とする(Janknechtら,1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-8976)。この系においては、目的の遺伝子は該遺伝子の読み枠が6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグ(tag)に翻訳的に融合するようにワクシニア組換えプラスミド中にサブクローン化される。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞由来の抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに通し、イミダゾール含有バッファーを用いてヒスチジンタグを付けたタンパク質を選択的に溶出する。
組換えDNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の通常の技法によって実施することができる。宿主が大腸菌(E. coli)などの原核生物である場合、DNAを取り込むことが可能なコンピテント細胞は、対数増殖期後に回収し、次に当技術分野で周知の手順を用いてCaCl2法によって処理した細胞から調製することができる。または、MgCl2もしくはRbClを用いることができる。所望であれば、形質転換は宿主のプロトプラストを形成した後に実施することも可能である。別の例としては、三親接合(triparental conjugation)を用いてベクターを大腸菌中に遺伝的に導入することができる。形質転換細胞は抗生物質〔一般にはテトラサイクリン(tet)またはアンピシリン(amp)〕上での増殖によって選択される。形質転換細胞は、ベクター上のtetまたはamp耐性遺伝子の存在により、それに対して耐性を獲得しているのである。
宿主が真核生物である場合は、リン酸カルシウム共沈降法;マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどの通常の機械的方法;リポソームに封入したプラスミドの挿入等のDNAトランスフェクション法、またはウイルスベクターを用いることができる。真核細胞はまた、本発明のTirをコードするDNA配列および選択表現型をコードする第2の外来DNA分子(単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子)を用いて同時形質転換することが可能である。別の方法は、サルウイルス40 (SV40)またはウシパピローマウイルス等の真核ウイルスベクターを用いて真核細胞を一過性に感染させ(つまり形質転換し)、タンパク質を発現させるものである。例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編(1982)を参照されたい。
本発明により提供される微生物的に発現されるポリペプチドまたはその断片の単離および精製は、分取クロマトグラフィーおよびモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いた免疫学的分離を含む通常の手段によって実施することができる。
宿主細胞として役立ちうる原核生物には、大腸菌JM101株、大腸菌K12株294 (ATCC 31,446)、大腸菌W3110株 (ATCC 27,325)、大腸菌X1776株 (ATCC 31,537)、大腸菌XL-1 Blue (Stratagene)および大腸菌Bが含まれるが、HB101、NM522、NM538、NM539等の大腸菌の他の多数の菌株、および原核生物の他の多くの種および属もまた用いることができる。上記の大腸菌株に加えて、枯草菌(Bacillus subtilis) 等のバシラス属細菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)または霊菌(Serratia marcescens)等の他の腸内細菌科細菌、および種々のシュードモナス属(Pseudomonas)種もまた宿主として用いることができる。1つの具体的な実施形態においては、原核宿主細胞は腸病原性大腸菌である。
さらに、細菌の弱毒化株または非病原性株は、融合ポリペプチドの腸粘膜への送達に有用でありうる。例えば、融合タンパク質またはTir融合ポリペプチドをコードするベクターを含む生弱毒化(例えば、EspAまたはEspB欠失)株を用いて融合ポリペプチドを宿主に送達することができる。このようにして弱毒化細菌は融合タンパク質を宿主に提供することができる。そして、該宿主においては、特異的免疫応答を付与するために、該融合タンパク質が宿主細胞によって提示される。
宿主細胞として役立ちうる真核生物には、PS23-6A、W301-18A、LL20、D234-3、INVSC1、INVSC2、YJJ337等の酵母株が含まれる。gal1およびpEFT-1等のプロモーターおよびエンハンサー配列が有用である。Vra-4 もまた適切なエンハンサー配列を提供する。機能性複製起源として有用な配列は、ars1および2μ環状プラスミドを含む。
本明細書に用いる「espA」、「espB」および「eaeA」という用語は、大腸菌によって分泌される病原性タンパク質をコードする、tir以外の遺伝子を指す。本明細書に用いる「EspA」、「EspB」および「インチミン」という用語は、espA、espBおよびeaeA遺伝子によってそれぞれコードされるタンパク質を指す。インチミンは細菌染色体LEE 遺伝子座eaeAの産物であり、密接な接着に必要とされる94kDaのEPEC外膜タンパク質である。EspA、EspBおよびインチミンは、EHECによって、およびEPECによって分泌される。
抗体および免疫学的方法;
本発明のTirポリペプチドを用いてTirポリペプチドのエピトープに免疫反応性の(すなわちそれと結合する)抗体を作製することができる。異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から本質的になる抗体、および別々の複数のモノクローナル抗体調製物が提供される。モノクローナル抗体は、上記タンパク質の断片を含む抗原から当技術分野で周知の方法によって作製される(Kohlerら,Nature 256: 495 (1975); Current Protocols in Molecular Biology, Ausbel et al. 編(1989))。
本発明に用いる「抗体」という用語は、完全な分子、ならびにFab、Fab'、F(ab')2、Fv等のそのフラグメント、およびエピトープに結合可能な1本鎖抗体を含む。これらの抗体フラグメントは、その抗原または受容体と選択的に結合する若干の能力を保持している。
これらのフラグメントを作製する方法は当技術分野で公知である(例えば、参照によりここに組み入れるHarlowおよびLane, Antibodies; A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(最新版)を参照されたい)。実施例Iでは、78 kDa EPECタンパク質に対するポリクローナルマウスおよびラット抗体がそのような方法によって作製された。
エピトープとは、抗体のパラトープが結合する、抗原上にある任意の抗原決定基である。通常、エピトープはアミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な分子の表面グループからなり、そして通常は特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。
必要であれば、例えば、上記ペプチドまたはそれに対して抗体を産生させたペプチドを結合したマトリックスに結合させ、そこから溶出することによってポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体をさらに精製することができる。当業者はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の精製および/または濃縮のための免疫学の分野で一般的な種々の技法を知っているであろう(例えば、参照によりここに組み入れるColiganら,ユニット9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 最新版参照)。
本発明はまた、tir特異的ヌクレオチドプローブまたは抗Tir抗体を設計するのに使用するペプチドエピトープを提供する。このようなプローブまたは抗体は、グラム陰性細菌由来のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含むがそれらだけに限定されない他の病原体の毒性に関与しているかもしれないタンパク質または遺伝子を同定するのに用いることができる。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、等を含む本発明の抗体は、高い免疫特異性をもって本発明のTirタンパク質、ペプチドまたはヌクレオチド配列、またはそれらの断片と結合する能力を有する。本発明の抗体は、例えばTirのアフィニティー精製に用いることができる。本発明の抗体は、細胞、組織サンプル、サンプル調製物または流体中における上記タンパク質またはペプチドの定性的または定量的検出のための公知の免疫学的方法に用いることができる。本発明の抗体は、上記ヌクレオチド配列またはその一部の定性的または定量的検出のための公知の免疫学的方法に用いることができる。
本発明は、被験体からのサンプルをTirポリペプチドに対する抗体と接触させ、そして該抗体のTirポリペプチドとの結合を検出することを含む、サンプル中のTirポリペプチドを検出する方法を提供する。結合はサンプル中におけるTirポリペプチドの存在を示す。本明細書に用いる「サンプル」という用語は、哺乳動物もしくはヒト被験者または他の動物に由来する物質を包含する。このようなサンプルは、皮膚サンプル、組織サンプル、培養細胞、培養細胞培地、および生物学的液体を含むが、それらだけに限定されない。例えば、TirポリペプチドをHeLa細胞(例えば、ヒト)培養物中に検出することが可能である。実施例IIにおいては、上記方法の使用によってHp90がJ774マクロファージ様細胞中に検出された。
本明細書に用いる「組織」という用語は、ヒトまたは他の動物に由来する結合した細胞のかたまり(例えば、CNS組織、神経組織、または眼組織)をいい、該細胞と会合している結合物質および液体物質を包含する。本明細書に用いる「生物学的液体」という用語は、ヒトまたは他の動物に由来する液体物質をいう。このような生物学的液体としては、血液、血漿、血清、血清誘導体、胆汁、粘液、唾液、汗、羊水、および腰部または脳室脳骨髄液等の脳骨髄液(CSF)が挙げられるが、それらだけに限定されない。
本明細書に用いる「サンプル」という用語は、単離されたポリペプチドを含有する溶液、ポリペプチドがそこに分泌された培地、およびTirポリペプチドを産生する宿主細胞を含有する培地をも含む。例えば、サンプルはSDS-PAGEによって分離され、ウエスタンイムノブロット分析のためにニトロセルロース膜に転写されるべきタンパク質サンプルであってよい。反応を得るために必要なサンプルの量は、当業者が標準的ラボラトリー技法によって決定することが可能である。サンプルの最適量は連続希釈によって決定することができる。
1つの実施形態においては、サンプル中のTirポリペプチドの存在は腸病原性大腸菌による感染を示す。別の実施形態においては、サンプル中のTirポリペプチドの存在は腸出血性大腸菌による感染を示す。
本発明のタンパク質、タンパク質断片および合成ペプチドは、予後診断、治療、診断または薬物設計用途を含む多数の用途をもつことが推定される。本発明のタンパク質、タンパク質断片および合成ペプチドは、本発明のタンパク質に対して特異的に免疫反応性のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を調製するための基礎を提供するであろう。1つの実施形態において、本発明は宿主に請求項1に記載のポリペプチドを投与し、該宿主中にTirポリペプチドに対する防御免疫応答を誘導することによる、Tir産生大腸菌によって引き起こされる疾患にかかりやすい宿主を免疫感作する方法を提供する。Tir産生生物による宿主の感染は、これによって予防される。さらに具体的な実施形態においては、Tir産生生物は1つの大腸菌株である。さらに具体的な実施形態においては、この大腸菌株は腸病原性または腸出血性大腸菌である。
別の実施形態においては、本発明はTirポリペプチドを用いて宿主を免疫感作し、該宿主中にTirポリペプチドに対する免疫応答を誘導することによる、Tir産生生物によって引き起こされる疾患を改善する方法を提供する。さらに具体的な実施形態においては、Tir産生生物は1つの大腸菌株である。さらに具体的な実施形態においては、この大腸菌株は腸病原性または腸出血性大腸菌である。
1つの実施形態においては、免疫感作される宿主はヒトである。ヒトは、医学分野の当業者に周知の標準的プロトコールの任意のものによって免疫感作することができる。腸病原性大腸菌(EPEC)は、幼児の下痢の主要な原因であり、また胃腸炎を引き起こすことが示された最初の大腸菌であった。発展途上国においてはEPECは今も幼児の下痢の重大な原因であり、高い罹病率および死亡率に寄与している。完全なEPEC毒性にとってはインチミンが必要であることがヒトボランティアを用いて実証された(Donnenbergら,J. Clin. Inv. 92: 1412-7(1993))。いくつかの動物モデルは、毒性におけるインチミンの役割を文献に示した。EPECによって分泌されたタンパク質と宿主細胞表面との間に起こる密接な相互作用は、宿主病原体相互作用の複雑さをはっきりさせ、そして治療剤における可能性のある用途に加えて、細胞機能および細菌性疾患を活用し研究するための価値ある道具を提供する。
別の実施形態においては、免疫感作される宿主はウシである。畜牛は、獣医学分野の当業者に周知の標準的プロトコールの任意のものによって免疫感作することができる。次に、Tir、EspA、EspB、インチミン、またはそれらの組合せを用いて畜牛にワクチン接種する。ワクチン接種したウシへのEHECの接着は、ウシ免疫応答によってブロックされる。したがって、ワクチン接種したウシはEHECキャリアーにならない。
EHECは、世界中における出血性大腸炎および溶血性尿毒症症候群の食物によって引き起こされる大発生および散発的発生の多くと結び付けられてきた。最もありふれた、疫病学的に関連する食物は挽き肉である。EHECは畜牛には何ら疾患症状を引き起こさないが、肉牛および乳牛は腸管にEHECを担持している。屠殺作業の間に死体の汚染が起こる。ワクチン接種した畜牛の使用は、腸出血性大腸菌によって汚染された肉牛の発生を減らすのに有用である。
本発明は、tirポリヌクレオチドを含むことが疑われるサンプルをtirポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸プローブと接触させ、該プローブのtirポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出することを含んでなる、サンプル中のtirポリヌクレオチドの検出方法を提供する。ハイブリダイゼーションの検出は、サンプル中のtirポリヌクレオチドの存在を示す。
遺伝子組換え法;
本発明は、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに選択マーカーをコードする核酸を挿入することを含んでなる、tirポリヌクレオチドを生産するための組換え方法を提供する。得られるポリヌクレオチドは、上記選択マーカーを含む組換えTirポリペプチドをコードする。本明細書に用いる「選択マーカー」は、検出可能な、または検出可能なアミノ酸配列をコードする、tir配列以外の任意の遺伝子配列であってよい。例えば、選択マーカーは単純ヘルペスウイルス(HSV)タグであってよく、このタグに対する抗体は市販されている。実施例VIにおいては、上記の方法によって、T7エピトープまたはHSVエピトープをコードする配列をtirの5'または3'末端にそれぞれ連結して2つの遺伝子融合体が構築された。
本発明は、融合タンパク質を生産する方法を提供する。Tirは分泌タンパク質なので、他のペプチドおよびタンパク質をクローン化し、発現するための融合パートナーとして有用である。例えば、目的のタンパク質に融合させたTirが組換えによって宿主細胞(例えば大腸菌)中に産生され、そしてこの融合タンパク質は形質転換された宿主が増殖している培養培地中に分泌される。該融合タンパク質は抗Tir抗体によって単離し、次に目的のタンパク質またはペプチドからTirを開裂することができる。ELISAまたは他のイムノアフィニティー法を用いてTir融合タンパク質を同定することができる。本発明は、目的のポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能しうる形で連結されたTirをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、該融合ポリペプチドの発現および分泌を可能とする条件下で増殖させ、そして該融合ポリペプチドを単離することを含んでなる、Tir融合タンパク質の産生方法を提供する。「機能しうる形で連結された、または会合した」という表現は、プロモーター配列とこのプロモーター核酸配列によって調節される構造遺伝子(融合タンパク質の場合には複数の遺伝子)の間の機能的な連結を意味する。機能しうる形で連結されたプロモーターは、構造遺伝子によってコードされるポリペプチド(例えば、融合タンパク質)の発現を制御する。
それを用いて本発明の組換え法を実践すべき好ましい生物は、細菌を含むがそれらだけに限定されない。別の実施形態においては、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに突然変異を生じさせるために用いる生物は大腸菌である。形質転換可能な大腸菌としては、腸病原性大腸菌および腸出血性大腸菌がある。
本発明は、Tirポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞をTirポリペプチドの発現および分泌を可能とする条件下で増殖させ、そして該ポリペプチドを単離することによる、Tirポリペプチドを生産するための組換え法を提供する。ポリペプチドおよびペプチドを組換え的に生産する方法は本発明の範囲内にある。本明細書に用いる「発現および分泌を可能とする条件」という表現は、核酸が転写され、翻訳され、そしてそのように産生されたポリペプチドが単離される適切な条件をいう。産生されたポリペプチドは培地中に分泌されたタンパク質であることができる。培地は、微生物の増殖が起こりうる、または微生物が存在しうる流体、物質または生物を含む。そのような環境は、例えば、動物の組織または体液、水および他の液体、食物、食物製品または食物抽出物、およびある種の無生物でありうる。例えば、微生物はルリア-ベルタニ(Luria-Bertani)(LB) 培地中で増殖することができる。環境は微生物の生存を可能としさえすれば、その増殖を促進する必要はない。
Tirとインチミンとの結合を妨げる作用物質;
別の実施形態においては、本明細書はTirとインチミンとの結合を妨げる作用物質に関する。そのような結合剤は、競合阻害、非競合阻害、または不競合阻害によって結合を妨げることができる。Tirとインチミンとの正常な結合を妨げることは、有用な薬学的効果をもたらすことができる。
別の実施形態においては、本発明はTirに結合する組成物を同定するための方法を提供する。この方法は、組成物を構成する成分およびTirを、該成分を相互作用させるのに十分な条件下でインキュベートし、そして該成分とTirとの結合を測定することを含む。Tirと結合する組成物は、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチド、化合物および生物学的作用物質を含む。
インキュベーションは、被験組成物とTirの接触を可能とする条件を含む。接触は、溶液中および固相中における接触を含む。被験リガンド/組成物は、場合により、複数の組成物をスクリーニングするためのコンビナトリアルライブラリーであってよい。本発明の方法によって同定された組成物を、溶液中で、または固相に結合させた後に、特定のDNA配列の検出に通常使用される任意の方法によってさらに評価、検出、クローン化、配列決定、等をすることができる。このような方法には、PCR、オリゴマー制限(Saikiら,Bio/Technology 3: 1008-1012 (1985))、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブ分析(Connerら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 278 (1983))、オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)(Landegrenら,Science 241: 1077 (1988))、等が含まれる。DNA分析のための分子技法がLandegrenら, Science 242: 229-237 (1988)に総論されている。
ある組成物が受容体タンパク質と機能的に複合体を形成できるかどうかを確認するため、例えば、外因性遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル変化をモニターすることによって該外因性遺伝子の誘導がモニターされる。ある組成物が外因性遺伝子の転写を誘導することができると判明した場合、この組成物は最初の被験サンプル組成物をコードする核酸によってコードされる受容体タンパク質と結合することができると結論される。
外因性遺伝子の発現は、例えば、機能アッセイまたはタンパク質産物のためのアッセイによってモニターすることができる。したがって外因性遺伝子は、該外因性遺伝子の発現の検出を可能とするために、アッセイ可能な/測定可能な発現産物を提供する遺伝子である。このような外因性遺伝子は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、アルカリ性ホスファターゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、グアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、および抗生物質耐性遺伝子(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)等のリポーター遺伝子を含むが、これらだけに限定されない。
外因性遺伝子の発現は、組成物-受容体結合の指標となる。したがって、その結合する、またはブロックする組成物を同定し、単離することができる。本発明の組成物は、抽出、沈降、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、等の一般に使用されている公知のタンパク質精製技法によって培養培地または細胞から抽出し、精製することができる。組成物は、カラムマトリックスに結合させた改変受容体タンパク質細胞外ドメインを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、またはヘパリンクロマトグラフィーによって単離することができる。
本発明のスクリーニング方法には、Tirと結合する化合物を同定するためのコンビナトリアルケミストリー法も含まれる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、物理的(例えば、立体的)ではないにしても機能的にアンタゴニストまたはアゴニストとして所望されるように作用する変異体、結合剤またはブロック剤、等を同定するためにも有用である。
本発明はTirポリペプチドとインチミンとの結合を妨げる化合物を同定する方法を提供する。Tirポリペプチドとインチミンとの結合は、生化学技術分野の当業者に周知の標準的条件下で測定される。Tirポリペプチドのインチミンに対する結合親和性を測定する。次に、Tirポリペプチドとインチミンとの結合を妨げる疑いのある候補化合物をTirポリペプチドとインチミンの混合物または溶液に添加する。次に、Tirポリペプチドとインチミンとの結合を標準的条件下で測定する。上記化合物の存在下におけるTirポリペプチドのインチミンに対する結合親和性を測定する。このアッセイは、上記化合物の存在下におけるTirポリペプチドのインチミンに対する結合と、上記化合物の不存在下におけるTirポリペプチドの結合を比較する。Tirポリペプチドとインチミンとの結合を妨げる化合物は、Tirポリペプチドとインチミンとの結合が病因に関与している場合は、EPECおよびEHECを含む病原体の治療に有用である。さらに、本発明のポリペプチドまたはヌクレオチド配列を用いて、それらと相互作用(例えば結合)し、それらの生物学的活性に影響を与える化合物または組成物を同定することができる。そのような影響は、Tir活性または分泌の抑制または刺激を含む。
本発明は、細胞送達にTir-インチミン系を用いる方法を提供する。本明細書に用いる「細胞送達ビヒクル」とは、細胞によって吸収されることができる、第2の目的の化合物を含むことが可能な化合物である。1つの実施形態においては、細胞がインチミン突然変異体に感染し、それによってTirが感染細胞に運ばれる。より具体的な実施形態においては、細胞は生体内に存在する。別の具体的実施形態においては、細胞は生体外にある。別の実施形態においては、結合して姿を消す(attaching and effacing)病原体はインチミン突然変異体ある。インチミン(eaeA)突然変異体は、KennyおよびFinlay, Infection & Immunity 65 (7) 2528-2536 (1997)に記述されている。別の実施形態においては、Tirは上に記述した遺伝子組換え法によって細胞中に発現される。
インチミン含有細胞送達ビヒクルを用いることによって、目的の分子をTir含有細胞に対してターゲッティングすることができる。本明細書に用いる「Tir含有細胞」とは、Tirを含む細胞のことである。例えば、上皮細胞はHp90を含みうる。本明細書に用いる「インチミン含有細胞送達ビヒクル」とは、送達ビヒクルの表面上にインチミンまたはTirと結合することができるインチミン断片を含む細胞送達ビヒクルを包含する。1つの実施形態においては、インチミン含有細胞送達ビヒクルはビーズである。
別の実施形態においては、インチミン含有細胞送達ビヒクルはリポソームである。器官または細胞標的特異性を与えるため、Maloneら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6077 (1989) およびGregoriadis, Immunology Today 11(3):89 (1990)に記述されているように、当技術分野で周知の方法を用いてインチミン等をリポソームに直接的に、または標的特異的リガンド等を手段として間接的に結合させることによってリポソームを改変することができる。
種々の生物学的に活性な物質を封入(カプセル化)によってリポソーム内に組み込むことが可能である。これらの物質は、薬物ならびに他の種類の医薬品、例えば、DNA、RNA、種々の種類のタンパク質、インスリン等のタンパク質ホルモン、増殖因子、サイトカイン、モノカイン、リンホカイン、およびワクチン接種の免疫原として役立つタンパク質および炭水化物、等を含む。
化粧品用途に効果的な生物学的に活性な物質もまた封入によってリポソームに組み込むことができる。これらの物質は、保湿剤、ビタミン、酵素および香料を含む。さらに、除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、等はリポソームに封入することができる、農業上の用途を有する生物学的に活性な物質の例である。
本発明のリポソームに封入した生物学的に活性な物質のヒトにおけるin vivo使用に適切な投与量範囲は、体表面積m2あたり0.001-6,000 mgという範囲を含む。この範囲外の量を投与することはできるが、この範囲は実際上全ての生物学的に活性な物質の使用幅を包含する。しかし、特定の治療剤については、好ましい濃度は以前に記述されているように容易に突き止めることができる。
インチミン含有細胞送達ビヒクルは所望の任意の経路で投与することがきる。例えば、腫瘍内、関節内、筋肉内、クモ膜下または髄腔内、腹腔内、皮下、静脈内、リンパ管内、経口および粘膜下、等である。
本発明は、細胞骨格をTirポリペプチドと接触させ、Tirポリペプチドの細胞骨格との結合を検出することによる、細胞の細胞骨格の検出方法を提供する。本明細書に用いる「細胞骨格」という用語は、真核細胞細胞質の構造を提供する分子フィラメント(アクチン、微小管、等)の網状構造体をいう。細胞骨格成分であるアクチン、α-アクチニン、ミオシンL鎖、エズリンおよびテーリンを含む接着性細菌のすぐ下では、A/E 病巣(またはペデスタル(pedestal))が上皮細胞の高度に組織化された細胞骨格構造の集合体を伴っている。Tirは細胞骨格と結合する。細胞骨格と結合したTirポリペプチドの検出は、いくつかの方法によって達成することができる。1つの実施形態においては、抗Tir抗体をその後Tirに結合させることによってTir結合を検出する。この実施形態の例は実施例1に提供される。別の実施形態においては、インチミンをその後Tirに結合させることによってTirと細胞骨格との結合を検出する。この実施形態の例は実施例VII に提供される。さらに別の実施形態においては、細胞骨格に結合するTirポリペプチドは融合タンパク質である。
キット;
本発明は、本発明の1以上の抗体を含むキットならびにヌクレオチドに基づくキットを含む。1つの実施形態においては、このキットはTirポリペプチドの検出に有用であり、そしてTirポリペプチドに結合する抗体を含む容器を厳重に収納するようにコンパートメント化されたキャリアー手段である。本明細書に用いる「容器手段」という用語はバイアル、試験管、等を含み、各容器手段は検出方法に用いられるべき別々の要素の1つを構成する。
1つの実施形態においては、Tirポリペプチドに結合する抗体は検出可能に標識される。より具体的な実施形態においては、標識は放射性同位体、生物発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、および酵素からなる群より選択される。
別の実施形態においては、本発明のキットはtirポリヌクレオチドの検出に有用であり、そしてtirポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸プローブを含む容器を厳重に収納するようにコンパートメント化されたキャリアー手段である。1つの実施形態においては、tirポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸プローブは検出可能に標識される。より具体的な実施形態においては、標識は放射性同位体、生物発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、および酵素からなる群より選択される。
別の実施形態においては、本発明のキットはtirポリヌクレオチドの検出に有用であり、そしてtirポリヌクレオチドの2本鎖の一方にハイブリダイズする第1の核酸プローブを含む第1容器およびtirポリヌクレオチドの2本の鎖のもう一方にハイブリダイズする第2の核酸プローブを含む第2容器を含む容器を厳重に収納するようにコンパートメント化されたキャリアー手段である。このキットは、例えばPCR法によってtirポリヌクレオチド配列を増幅するために用いることができる。特定の実施形態においては、第1のプライマーは増幅されるべきtir配列の片方の末端で2本鎖の一方に相補的であり、第2のプライマーはtirポリヌクレオチドの他方の末端で2本鎖のもう一方に相補的である。新たに合成されたDNA鎖は次に同一のプライマー配列の付加的鋳型として役立つので、プライマーアニーリング、鎖伸長、および解離を連続的に実施すると所望の配列の迅速で高度に特異的な増幅がなされる。
以下の実施例は本発明を説明するものであって、制限するものではない。これらの実施例は用いることができる方法の典型を示すが、当業者に公知の他の方法も用いることができる。
(実施例I)
EPECによって分泌される78 kDaタンパク質に対する抗体は、Hp90と交差反応する。
本実施例の目的は、EPECによって分泌される78 kDaタンパク質(78 kDa EPEC分泌タンパク質)に対する抗体がHp90と交差反応することを示すことである。Hp90の精製を試みていた際に、EPECに対して産生させたポリクローナルウサギ抗血清が、哺乳動物細胞膜由来の富化Hp90と正確に一緒に同時移動(co-migrated)するあるタンパク質を認識することが見いだされた。この交差反応性バンドは、III型分泌を欠き、またHp90チロシンリン酸化も引き起こさない突然変異体にHeLa細胞を感染させた場合には存在しなかった。EPECを特異的に標識するがHeLaタンパク質を標識しない放射能標識条件を用いた感染後に、抗ホスホチロシン(PY)抗体はHp90と同時移動した放射能標識化タンパク質を免疫沈降させた。対照的に、HeLa細胞タンパク質を標識した場合には、放射能標識化Hp90は全く沈降しなかった。これらの予備的所見は、Hp90は細菌起源であるかもしれないという仮説を示唆した。
Hp90が細菌起源であるならば、EPECはこのタンパク質を分泌できるはずである。EPECは、密接な結合に必要な宿主細胞シグナルおよび他の現象の活性化に関与するいくつかのタンパク質を分泌する。EPECは、90 kDa(Hp90の分子量である)の可視的なタンパク質は分泌しないように思われる。特別な培養条件下でEPECがEspA (25 kDa)、EspB (37 kDa)、EspC (110 kDa)および他の2つのタンパク質39 kDaおよび40 kDaに加えて2つの付加的タンパク質72 kDaおよび78 kDaを分泌するように、EPECタンパク質の分泌を最適化した。この培養条件はKennyおよびFinlay、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7991-5 (1995)に記述されている。上記の72 kDaおよび78 kDaのバンドは同一のアミノ末端配列(PIGNLGNNVNGNHLIPPAPPLPSQTDGAAR; 配列番号:7)を有していた。この配列は公知のいずれのEPECタンパク質とも関連していなかった。アミノ末端配列は以下のように決定した。すなわち、タンパク質をPVDFペーパーに転写し、ポンソー(Ponceau)レッドを用いて可視化し、分析のため削り取った。
さらに、EPECによって分泌される他のタンパク質に対して産生させた抗体はこれらのタンパク質を認識しなかった。Per陽性レギュロンのコピーの多数および特別な増殖条件を用いた場合、分泌された72 kDaおよび78 kDaタンパク質のレベルが高くなった。高レベルのEPECタンパク質分泌は、44 mM NaHCO3を含むM9最小培地を用いて、LBで増殖させたEPEC/CVD450を1:50に希釈し、7時間増殖させることによって得られた。PerレギュロンをコードするプラスミドpCVD450は、テトラサイクリン(最終濃度25μg/ml)を用いて維持した。感染に先立って、細菌をLBブロス中で37℃で振とうせずに1晩増殖させた。トリクロロ酢酸(10% vol/vol) を添加することによって上清を濃縮した。78 kDa EPECタンパク質に対するポリクローナルマウスおよびラット抗体を作製し、これらの抗体がHp90を認識できるかどうかを確認した。
78 kDa EPECタンパク質に対するポリクローナルマウスおよびラット抗体は以下のように作製した。すなわち、高レベルのEPECタンパク質分泌を上記のように誘導し、40% (wt/vol)硫酸アンモニウムを1晩かけて添加することによって上清を濃縮した。遠心後、得られたペレットをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、最終濃度0.1 mM)の混合溶液に再懸濁し、PBSを外液として透析した。濃縮したタンパク質をローディングバッファーに再懸濁し、そしてSDS-12% PAGEによって分解した。ニトロセルロースに転写後、ポンソーレッドによってタンパク質を可視化し、削り取り、超音波処理によって断片化し、マウスおよびラットの免疫感作に用いた。イムノブロット分析によってEPEC/CVD450分泌タンパク質に対する力価を評価した。抗血清はイムノブロット分析では1:2,000〜1:5,000で、また免疫蛍光顕微鏡検査では1:100〜1:200で使用した。EPECに感染したHeLa細胞を、細胞質タンパク質を放出させるためにサポニンを、また膜タンパク質を可溶化するためにTriton X-100を用いてKennyおよびFinlay, Infection & Immunity 65 (1997)の方法にしたがって分画化し、そして抗PY(Hp90を検出するため)および抗EPEC 78 kDaタンパク質抗体の両方用いてこれらの画分を釣り上げた。HeLa (CCL 2, ATCC)細胞は、10%仔牛血清を含むダルベッコ改変イーグル培地で培養した。
抗体は両方とも、感染細胞由来の哺乳動物細胞膜画分内でHp90としてふるまっていたタンパク質と反応したが、非感染細胞のそれとは反応しなかった(図1B)。両方の抗体は、不溶性(細菌および細胞骨格)画分中の90 kDaタンパク質(これは細菌と結合したHp90を表す)とも反応した。さらに抗PY抗体は上記不溶性画分中のEp85、すなわち85 kDaのチロシンリン酸化EPECタンパク質を認識した。抗EPEC 78 kDa抗体は、不溶性細菌含有画分中の細菌形態の78 kDaタンパク質とも反応したが、抗PY抗体は反応しなかった。
したがって、78 kDa EPEC分泌タンパク質に対する抗体はHp90と交差反応し、Hp90がEPEC分泌タンパク質であることを証明する。
(実施例II)
Hp90は78 kDa EPEC分泌タンパク質のチロシンリン酸化形態である。
本実施例における免疫沈降実験の目的は、Hp90が78 kDa EPEC分泌タンパク質のチロシンリン酸化形態であることを示すことであった。
J774マクロファージ様細胞(TIB 67, ATCC)中に高レベルのHp90が検出されるので、インチミン突然変異体CVD206を用いてJ774細胞を感染させてHp90の膜レベルを最大とし、分画化し、抗PY抗体または抗EPEC 78 kDa抗体を用いてTriton X-100可溶性膜画分を免疫沈降させた。J774 A.1細胞を10%仔牛血清を含むダルベッコ改変イーグル培地で培養した。KennyおよびFinlay, Infection & Immunity 65 (1997)が記述するように免疫沈降を実施した。次に、免疫沈降物および免疫沈降後の上清をSDS-PAGEで分解し、ニトロセルロースに転写し、抗PY抗体を用いて釣り上げた(図2A)。この方法を用いて、Hp90は両方の抗体によって感染細胞の膜画分から取り除かれ(図2Aの上清)、そして同時移動する90 kDaタンパク質は免疫沈降物中で両方の抗体によって認識された。
二次元ゲル電気泳動を実施することによって、両方の抗体が同じタンパク質を認識しているというさらなる証拠が得られた。二次元ゲル電気泳動は以下のように実施した。すなわち、J774細胞由来のTriton X-100可溶性膜画分をRosenshineら,EMBO J. 15: 2613-2624 (1996)に記述されているように調製した。膜を90℃で5 分間加熱し、次に50,000xgで30分間4 ℃で超遠心することによってさらに精製した。100 μlの可溶化膜タンパク質をCHCl3/アセトン/H2Oを用いて沈降させ、12.5μl の2Dゲルサンプルバッファーに再懸濁し、そして2%アンフォリン(ampholine)(0.4% pH 3〜10, 1.6% pH 5〜7)を含む4% (w/v)ポリアクリルアミドミニ等電点電気泳動ゲル(BioRad)を用いて、第一段階等電点電気泳動ゲル上で700 Vで3.5時間分解した。第二段階の電気泳動は、8% SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いて実施した。タンパク質をニトロセルロースに転写して、適切な抗血清を用いてイムノブロッティングを行った。CVD206感染J774細胞からHp90を含む膜を単離し、タンパク質を等電点電気泳動によって分離し、次にSDS-PAGEにかけた。2組のサンプルをニトロセルロースに転写し、抗PY抗体または抗EPEC 78 kDa抗体を用いて釣り上げた(図2B)。
抗EPEC 78 kDa抗体および抗PY抗体を用いた釣り上げは、Hp90が実際に類似の分子量を有するが等電点が異なる数個の関連するタンパク質から成ることを明らかにした。ブロットをはぎ取って他の抗体を用いて再度釣り上げると、それらは同一のスポットパターンを示し、Hp90および78 kDa EPEC分泌タンパク質が同一のタンパク質であることを示した。これらの結果およびチロシンリン酸化Hp90はインチミン受容体であるという事実に基づいて、このタンパク質を転移した(translocated)インチミン(intimin) 受容体(receptor)の1文字ずつを取ってTirと名付けた。
宿主細胞の膜中のTirは、細菌から分泌された該タンパク質とは相当異なる予測分子量を有する(SDS-PAGEの結果、90 kDa対78 kDa)。この差は宿主細胞内における78 kDaタンパク質のチロシンリン酸化によるものであった。この78 kDaタンパク質は細菌によって分泌された78 kDaの形ではPY抗体によって認識されない(図3)。これを示すため、インチミン突然変異体CVD206に感染したHeLa細胞から調製した膜抽出物を、全てのリン酸基を取り除くはずであるアルカリホスファターゼで処理した。処理したサンプルを用いてイムノブロッティングを実施し、抗EPEC 78 kDa抗体および抗PY抗体を用いて釣り上げた。細胞分画化およびアルカリホスファターゼ処理はKennyおよびFinlay, Infection & Immunity 65 (1997)に記述されているように実施した。すなわち、培養したHeLa細胞をEPECに感染させ、洗浄し、そして0.2%サポニンで処理してホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤の存在下で可溶性細胞質画分を放出させた。1% Trison X-100を用いて、接着性細菌、宿主核および細胞骨格を含む残りの不溶性画分由来の膜タンパク質を可溶化した。アルカリホスファターゼ処理のために、膜画分をホスファターゼ阻害剤の不在下で単離し、2 Uのアルカリホスファターゼ(NEB)と共に37℃で4 時間インキュベートした。
図3に示すように、抗PY抗体は未処理膜中のリン酸化(90 kDa)形態のTirのみを認識した。対照的に、EPEC 78抗体は未処理膜中の90 kDa Tirを認識し、またホスファターゼで処理した膜画分中の、分泌されたEPEC 78 kDaタンパク質と同一分子量のバンドをも認識する。より低分子量のバンドもまた検出された。これは過剰な消化による分解生成物であるかもしれない。EPEC 78 kDa分泌タンパク質のアルカリホスファターゼ処理はその移動に影響を及ぼさなかった。
これらの結果は、Hp90および78 kDa EPEC分泌タンパク質が同一タンパク質であることを示している。Tirのこれら2つの形態間における分子量の相違は、アルカリホスファターゼ感受性修飾、すなわち、恐らくはチロシンそしてあるいはセリンまたはトレオニンのリン酸化によるものである。
(実施例III)
抗EPEC 78 kDa抗体は哺乳動物細胞中でHp90と共局在する。
本実施例の目的は、抗EPEC 78 kDa抗体が哺乳動物細胞中でHp90と共局在することを示すことである。PYおよびEPEC 78 kDaタンパク質の両方に対する抗体は同一のタンパク質を認識したので、これらの抗体が感染HeLa細胞を同様に標識するかどうかを免疫蛍光顕微鏡検査を用いて調べた。
チロシンリン酸化タンパク質、恐らくHp90(すなわち、チロシンリン酸化Tir)は、接着性細菌の下のアクチンが豊富なペデスタルの先端における独特な馬蹄形構造として眼に明らかである。感染HeLa細胞が浸透性にされている場合、PY抗体はこのタンパク質のみを認識し、PY残留物が細胞表面に暴露されていないことを示す。感染HeLa細胞をPY(図4B)およびEPEC 78 kDaタンパク質(図4C)に対する抗体を用いて同時標識すると、標識パターンは完全に重なり合った(図4D)。抗EPEC 78 kDa抗体は細菌直下のHeLa細胞領域のみを染色し、遊離の細菌を標識しなかった(図4Cの矢印参照)。感染HeLa細胞を抗EPEC 78 kDa抗体およびFITC-ファロイジンの両方を用いて標識しアクチンを染色した場合(図4E〜H)、抗EPEC 78 kDa抗体による染色は、全アクチンペデスタルを染色するのではなく、細菌直下のアクチンペデスタルの先端に局在した(図4H)。この染色パターンは、抗PY抗体およびFITC-ファロイジンの両方を用いた同時標識によって観察されたパターンと同一である。
これらの結果もまた、Tirが宿主細胞中でリン酸化されることを示す。
(実施例IV)
III型分泌装置ならびにその分泌タンパク質EspAおよびEspBは、宿主細胞へのTirの送達を容易にする。
本実施例の目的は、HeLa細胞へのTir送達におけるIII型分泌装置およびその分泌タンパク質の役割を検討することであった。III型分泌装置をコードする遺伝子(sepおよびcfm)またはその分泌タンパク質EspAまたはEspBをコードする遺伝子(espAまたはespB)に突然変異を有する株は、宿主細胞中にチロシンリン酸化Tirを産生しない。しかし、それでもなお非チロシンリン酸化形態のTirが宿主細胞に送達されるかもしれない。EPECまたは突然変異体に感染したHeLa細胞由来の膜抽出物を単離し、抗PY抗体および抗EPEC 78 kDa抗体を用いて釣り上げた(図5)。
抗PY抗体を用いた場合、EPECおよびCVD206に感染した膜中でチロシンリン酸化90 kDa形態のTirのみが検出された。抗EPEC 78 kDa抗体は、EPECおよびCVD206に感染した膜抽出物中で同一の90 kDaバンドを認識したが、espA, espBまたはcfm-14に突然変異を有する株は膜(図4)または細胞質画分中に検出可能レベルのTirを含まなかった。EPECまたはCVD206に感染した細胞においては78 kDa形態のTirは検出されず、これは90 kDaへの迅速な修飾を示唆していた。細菌形態の78kDa Tirタンパク質が、これら全ての株の接着性細菌を含む不溶性画分に存在した。EPECに感染したHeLa細胞不溶性画分のみが、インチミンとの相互作用のゆえにこの画分に局在する90 kDa形態のTirを含んでいた。
したがって、両方ともIII型分泌系によって分泌されるEspAおよびEspBは、宿主膜画分へのTirの効率的な送達に必要である。
(実施例V)
Tirをコードする遺伝子の遺伝的特性づけおよび突然変異
本実施例の目的は、Tirをコードする細菌遺伝子の遺伝的特性づけを行うことであった。78 kDa EPEC タンパク質のアミノ末端配列を用いて、そして腸細胞エフェイスメント遺伝子座(Locus of Enterocyte Effacement, LEE) のコドン優先使用(preferences)を利用して、合成オリゴヌクレオチドを設計し、相同DNA配列を同定した。LEE領域とオーバーラップするDNA断片を調べた。なぜなら、この領域はクローン化して非病原性大腸菌(E.coli)中で発現させるとTirチロシンリン酸化を誘導することができるからである。
上記の合成オリゴヌクレオチドは、LEE領域内に存在する、インチミン遺伝子eaeAの上流に位置する1個のDNA断片とハイブリダイズした。次に、これをクローン化し、配列決定した(図6A)。tir遺伝子のクローン化およびDNA配列分析は以下のように実施した。すなわち、TirのN末端タンパク質配列データに基づいて、縮重オリゴヌクレオチドを設計し、このオリゴヌクレオチドをストリンジェント条件下でのサザンハイブリダイゼーションに使用し、LEE領域由来の3800 bp EcoRI断片を同定し、次にこれをベクターBluescript SK(+) pSK-tir中にクローン化した。エキソヌクレアーゼIII (Erase-a Base; Promega)を用いて得られたベクターを消化し、1セットのネスティド欠失(nested deletion)を得た。これを用いて、Applied BiosystemsのTaq DyeDeoxyTM Terminator Cycle Sequencing Kitを使ったtirのDNA配列決定を行った。DNA配列決定反応のプライミングには、M13フォワードプライマーおよびT3プライマーを用いた。EPEC株E2348/69、CVD206、cfm 14-2-1(1) およびUMD872 (espA)、UMD864 (espB)は、Donnenbergら, Infection & Immunity 60: 3953-61 (1990); Donnenbergら, Trends Microbiol. 5: 109-114 (1993); Foubisterら,Infection & Immunity 62: 3038-40 (1994); Foubisterら,J. Exp. Med. 179: 993-8 (1994); Jerseら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 7839-43 (1990); KennyおよびFinlay, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7991-5 (1995);およびRosenshineら,EMBO J. 11: 3551-60 (1992)に記述されている。
tir遺伝子(配列番号:1; Genbank受託番号 AF013122)はeaeAの上流に位置し、eaeAとtirの間には以前に記述されているオープンリーディングフレームorfUが存在する(図6B)。orfUの相同体およびTirのC末端を含む部分的オープンリーディングフレームがEPECおよび他の結合して姿を消す(attaching and effacing)病原体EHEC, RDECおよびCitrobacter rodentium (以前はC. freundii と称した; バイオタイプ4280)(Genbank受託番号 M58154, U32312, U60002, L11691)に存在する。精製タンパク質のアミノ末端配列は、分泌されたEPECタンパク質にはアミノ末端のメチオニンが存在しなかったことを除いて、予測されたタンパク質配列と正確に一致した。III型分泌系によって分泌されるタンパク質は、アミノ末端メチオニン残基を保持している。Tirはこのメチオニンを欠くので、Tirの宿主細胞への効率的な輸送はEspA, EspBおよびIII型分泌経路に依存するが(図5)、Tirはその分泌のためにはIII型分泌系を直接用いないのかもしれない。
BLAST相同性検索を用いた所、tir遺伝子も、またその産物Tirも、公知のいかなる遺伝子またはタンパク質とも重大な相同性を示さなかった。
Tirタンパク質は56.8 kDaタンパク質をコードすると予測されるが、分泌されたタンパク質について約78 kDaの分子量が観察された。これは何らかの付加的細菌性修飾、またはアミノ酸組成もしくは構造的特徴による異常な移動を反映しているのかもしれない。Tirは、このタンパク質のC末端側半分にリン酸化の基質として役立ちうる6個のチロシン残基をもつ、2つの予測された、膜にまたがる配列を含む(図6A)。TirはC末端側半分にキナーゼ基質となり得る6個のチロシン残基を含む2つの膜貫通ドメイン(TM予測、ISREC, Switzerland)を有することが予測される。EspAおよびEspBについて予測されるように、Tirは軽度に酸性であるように思われ(予測されるpIは5.16)、二次元ゲル電気泳動分析によって証明された。
このタンパク質のペデスタル形成における役割を示すため、tir遺伝子の染色体欠失体を構築した(図6B)。この染色体欠失突然変異体は以下のように構築した。すなわち、プライマーMS102 + (5'-AAAGTCGACAAGAACCTGAGAACCAG-3';配列番号:8)およびMS103 - (5'-TTTGTCGACTTATGTTTGTGAAGGTAGTGG-3';配列番号:9)を用いて、pSK-tirの逆PCR増幅を実施して、tir遺伝子の塩基対149から795までの795 bpの5'欠失を創成した。また、オリゴヌクレオチドMS103 はPCR産物にSalI制限部位およびタンパク質の翻訳を終止させる停止コドンを導入した。こうして得られた3000 bpのSalI/SacI tir欠失断片を陽性選択自殺ベクターpCVD442 (SalI/SacI) 中にクローン化し、対立遺伝子交換によつる欠失突然変異体の構築に用いた。
得られた突然変異株は、EPEC 78 kDaタンパク質を発現することも、TirをHeLa細胞に輸送することもしなかった(図5)。さらに、この突然変異体は、インチミン突然変異体に見られたように若干のアクチンが接着性細菌の付近にクラスターを形成したが、接着性細菌の下にホスホチロシンタンパク質またはアクチンの有意な蓄積を引き起こさなかった(図7A)。上記の欠失突然変異は他のEPEC分泌タンパク質の分泌に影響を及ぼすことも、インチミンの発現を妨げることもなかった。浸透性にしていない(unpermeabilized) HeLa細胞を抗EPEC 78 kDa抗体で染色すると、インチミン突然変異体(これはTirを細菌の下に隔離しない)に感染したHeLa細胞表面の標識化が起こったが、非感染細胞または上記tir突然変異体に感染した細胞を用いた場合は染色は全く観察されなかった。これは、Tirエピトープが感染HeLa細胞の表面に暴露されていることを示す。
これらの結果は、Tirが新規なタンパク質で、かつtirが新規なポリヌクレオチドであることを示している。
(実施例VI)
Tirのエピトープタグ付け(tagging)
本実施例の目的は、上皮膜に存在する90 kDaのチロシンリン酸化タンパク質がEPEC Tirタンパク質であることを確認することであった。T7またはHSVエピトープをコードする配列をtirの5'または3'末端にそれぞれ連結して2つの遺伝子融合体を構築した。
T7-tirおよびtir-HSV 融合体の構築は以下のように実施した。すなわち、tir遺伝子をPCRによって増幅し、pET28aおよびpET27bという1組のベクター(Novagen)中のT7またはHSV配列を用いたインフレーム融合を可能とするユニークな制限部位を導入した。次に、タグを付したtir遺伝子(Hisタグを欠く)を発現させるためにpACYC184に基づくベクター中にクローン化した。得られたプラスミドをEPEC tir対立遺伝子欠失株中に形質転換し、HeLa細胞を感染させるのに使用した。感染細胞の蛍光顕微鏡検査は、T7およびHSV両方のエピトープおよびアクチンが特徴的な馬蹄形パターン中に共局在する典型的なペデスタル形成を明らかにした(図7A)。tirをコードするが下流のorfU遺伝子をコードしないtir-HSV 構築物とのこの表現型的相補性は、tir欠失突然変異の表現型がorfU遺伝子産物に対する極性作用によるものではないことを示している。
T7でタグしたTirを発現するEPECに感染した細胞の膜画分はまた、インチミン突然変異体CVD206に感染した細胞のそれと比較した。EPEC 78 kDa、T7およびPYに対する抗体を用いると、T7-TirはHeLa細胞膜抽出物中において検出可能であった(図7B)。T7タグの付加は、CVD206を用いた場合に観察された見かけ分子量と比較して、Tirリン酸化タンパク質の見かけ分子量を増大させた。T7-Tirと対照的に、Tirそれ自体はT7抗体と交差反応しなかった(図7B)。
T7特異的抗体を用いて、CVD206またはT7-Tir株に感染したHeLa細胞の膜画分を免疫沈降させた。予想されたように、T7抗体はPY、T7またはEPEC 78に対する抗体によって認識される少し大きいT7-Tir融合タンパク質を沈降させたが、90kDa Tirタンパク質を免疫沈降させなかった(図7B)。このことはT7-Tirがチロシンリン酸化されていること、および細菌起源であることを証明している。
(実施例VII)
インチミンはゲルオーバーレイ実験によってEPEC由来のTirと結合する。
本実施例の目的は、インチミンはEPECから分泌されたTirに直接結合できるかどうかを確認することであった。
ゲルオーバーレイ(overlay, 上掛け)実験は、Tirを発現する条件下で増殖させたEPECの上清を用いて実施した。ゲルオーバーレイは以下のように実施した。すなわち、サンプルを12% SDS-PAGEで分解し、ニトロセルロースに転写し、次にHyb75 (20 mM HEPES [pH 7.7]; 75 mM KCl; 0.1 mM EDTA; 2.5 mM MgCl2; 1 mM DTT; 0.05% NP40)に溶解した5%脱脂乳を用いて2時間室温でブロックした。His-T7インチミンを1% BSA/TBS (Tris緩衝化生理食塩水)中で一晩インキュベートし、洗浄し、ECL検出系(Amersham)を用いて結合した融合体をT7抗体(1% BSA/TBSで1:5000に希釈)で検出し、次にヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(1%BSA/TBSおよび0.1% Tween-20で1:10,000に希釈)で検出した。
インチミンの280個のC末端残基を含む精製したHis-T7インチミン(Int)融合タンパク質を用いて、これらの上清を釣り上げた。この融合タンパク質は以下のように作製した。すなわち、文献(Frankelら、1994)に記述されているようにMBP-Int遺伝子融合体を構築し、MBPおよびMBP-インチミン融合体を精製した。His-T7 Intフレーム内融合体を作製するためにインチミンの同一部分をpET28a中にクローン化し、アガロースニッケルカラムを供給者(Novagen)が記述するように用いて精製した。
このようにEPEC増殖培養上清を連続希釈し、一定量の非感染HeLa膜抽出物を添加し、SDS-PAGEによって分解し、そしてニトロセルロースに転写し、次にHis-T7Intペプチドを添加して、抗T7抗体を用いて結合した融合タンパク質を検出した。図7Aは、His-T7 Intタンパク質が78 kDaの単一バンドに特異的に結合し、次に同一ブロットを抗EPEC78 kDa抗体で釣り上げることによってTirとして同定されたことを示す。この結合は濃度依存性に起こった。上清中に存在するTirのレベルは、使用した最高濃度でも、クーマシーブルーによる検出限界を下回っていた。
インチミンの280個のC末端残基はβ1インテグリンとは結合しない。MBP-Intの上皮細胞との結合は、細胞をあらかじめEPECに感染させた場合には検出されたが、非感染細胞、またはIII型分泌もしくはシグナル伝達突然変異体に感染した細胞、β1インテグリンをなお発現する細胞とは結合しなかった。上皮膜由来の90 kDa形態のTirを沈降させるためにMBP-Int を用いた場合、β1インテグリンは沈降に使用される上皮膜抽出物中に存在するにもかかわらず、同時沈降しない。さらに、ゲルオーバーレイ系を用いると、種々のインチミン融合タンパク質はTirに結合するのみで、より分子量の大きいβ1インテグリンとは(または他の上皮膜分子のいずれとも)結合しない(図8A)。上皮膜から抽出されたTirをβ1インテグリンに対するポリクローナル抗体で釣り上げたところ、交差反応性は検出されなかった。β1インテグリンは上皮細胞上で接着性EPECの下に共局在していない(Tirは共局在しているが)。そしてEPECは公知のβ1インテグリンを含まない、分極化した上皮細胞の頂部表面に強力に接着する。これらの不一致の理由はまだ解明されていないが、これらの結果は、Tirが培養された哺乳動物細胞上の主要なインチミン受容体であることを強く示唆している。
これらのデータは、インチミンはHeLa細胞膜分子のいずれとも結合しないこと;これらの条件下でインチミンは非リン酸化Tirに結合することができること;および、他のEPEC分泌タンパク質はこの結合を容易にするのに必要でないこと;を示している。
(実施例VIII)
インチミンはELISAによってEPEC由来のTirに結合する。
本実施例の目的は、インチミンとEPEC分泌Tirとの相互作用の特異性を調べるためのELISAを開発することであった。
ELISAは以前にKennyら, Infection & Immunity 65 (1997)に記述されているように実施した。結合/競合ELISAのために、Tir分泌を誘導する条件下で増殖させたEPECまたはtir上清100 μlをImmulon 96ウエル(Dynatech Laboratories, Inc.)プレートに加えた。200 μlの0.1% Tween-20/PBSでブロックした後、ウエルを下記のa)またはb)と共にインキュベートした。すなわち、a)100 μlのHis-T7 Int (PBS 1 ml中0.75μg)またはPBSを用いた2倍連続希釈物、またはb)170μg/ml MBP-Intまたは0.75μg/ml His-T7 Intを含むPBSを用いた4倍連続希釈物に加えて85μg/ml MBPを含む 100μl のHis-T7 Int (PBS 1 ml中0.75μg)である。T7抗体を用いてHis-T7 Int融合体の結合を検出し、以前にKennyら, Infection & Immunity 65 (1997)に記述されているように吸光波長A490で分光測光的に可視化した。
EPECまたは同質遺伝子tir突然変異体由来の増殖上清を用いてELISAウエルを被覆した。tir上清におけるおおよそ等しいレベルの他のEPEC分泌タンパク質の存在およびTirの不在を、クーマシー染色および抗EPEC 78 kDaまたはEspB抗体を用いた通常の上清希釈物を釣り上げるELISA(ELISA probing supernatant dilutions)によって確認した(図8B)。精製His-T7 Int融合タンパク質の連続希釈物を被覆ELISAプレートに加え、抗T7抗体を用いて結合した融合タンパク質を検出した。図8B(真ん中のパネル)に示すように、His-T7 Intは増殖上清中にTirを含むウエルとのみ結合した。この結合は用量依存性であり、近飽和結合が75 ng/ウエル(25 nM)で起こった。His-T7 Int (75 ng/ウエル)の固定化EPEC上清との結合は、マルトース結合タンパク質(MBP)-インチミン融合タンパク質の濃度を上げることによって用量依存性に抑制されたが、MBP単独では抑制されなかった(図8B、右側のパネル)。両方の融合タンパク質のおおよそ等しいモル量(25 nM)で結合の50% 抑制が起こった。
これらの結果は、インチミンは特異的な様式で非リン酸化Tirと結合できることを再度強調している。
(実施例IX)
EHECから単離されたTir
本実施例の目的は、腸出血性大腸菌(E.coli)(EHEC)におけるTirの構造を調べることであった。tir遺伝子をクローン化し、その配列を腸病原性大腸菌(E.coli)(EPEC)のそれと比較した。Tirポリペプチドの間のアミノ酸配列相同性を図9に示す。
tir遺伝子のクローニングおよび配列分析を以下のように実施した。すなわち、EHEC tirをコードするDNA断片を、腸病原性大腸菌(E.coli)の公表された配列に由来するプライマーを用いたPCRによってEHEC染色体DNAから得た。Vent DNAポリメラーゼをPCRに用いて、EHEC株から染色体DNAを増幅した。PCR反応は、94℃で1分間変性、55℃で1分間アニーリング、72℃で2分間伸長を30サイクル実施した。得られた産物を市販のプラスミドpBluescriptに連結し、両方の鎖を配列決定した。DNA配列決定は以下のように実施した。すなわち、tir遺伝子をコードするDNA断片を、上記プライマーおよびDNA鋳型としてEHEC染色体DNAを用いたPCRによって増幅した。得られた平滑末端断片をSalIで消化し、市販のプラスミドpBluescript-II SK(+)のSalI-SmaI部位にクローン化した。EHEC tirのDNA配列は市販のTaq DyeDeoxy kitを用いて決定した。クローン化した領域内にオープンリーディングフレームが見いだされた。そしてこれらのDNA配列は両方ともEPECtirに類似していた。
これらの結果は、EHECがtir遺伝子をコードすること、および予測されるTirポリペプチドはEPECとEHECにおいて高度に保存されていること、を示している。
(実施例X)
EPEC毒性のウサギモデル
本実施例の目的は、EspAおよびEspBが毒性にとって決定的であることを示すことであった。ヒトボランティアを用いて、完全なEPEC毒性にはインチミンが必要であることが示された(Donnenbergら,J. Clin. Inv. 92: 1412-7(1993))。そしていくつかの動物モデルが毒性におけるインチミンの役割を実証づけた。EspAおよびEspBが毒性にとって決定的であることを示すため、天然のウサギEPEC感染モデルが用いられた。
RDEC-1およびそのespAおよびespB突然変異株を口胃経路で若いウサギに接種した。感染1週間後に殆どのRDEC-1は盲腸および結腸に見いだされた。しかし、どちらの突然変異株の数も、親株と比較すると、これらの組織では大幅に減少していた。RDEC-1は球形嚢(sacculus rotundas)(濾胞と会合した上皮)に特異的に接着し、また盲腸には細菌のコロニー形成も観察され、盲腸の球形嚢はこの病原体にとって重要なコロニー形成部位であることを示している。EspAおよびEspB株の球形嚢への接着レベルは親株のレベルの1/70および1/8000であった。これらの結果は、RDEC-1の接着能および組織向性は上記2つのEsp分泌タンパク質に依存するすることを示す。さらに、EspBは細菌のコロニー形成および病原性においてEspAよりも決定的な役割を果たすように思われる。これは宿主細胞のシグナル伝達経路の引き金を引くことに関与する、腸病原性大腸菌(E.coli)分泌タンパク質EspAおよびEspBがコロニー形成および毒性にも必要とされることを初めて実証したものである。
動物感染は以下のように実施した。すなわち、細菌の一晩培養物を遠心により回収し、1 mlのリン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁した。ニュージーランドホワイトラビット(体重1.0〜1.6 kg)を一晩絶食させ、次に5 mlの2.5%無菌重炭酸ソーダおよび1 mlのRDEC-1またはespAもしくはespB株(2.5x1010)を口胃チューブを用いて胃に接種した。翌日、同量の細菌を各ウサギに接種した。
臨床評価を以下のように実施した。すなわち、各ウサギの体重を毎日測定し、また直腸スワブにより、および便ペレットから糞に排泄された細菌を回収した。直腸スワブはナリジクス酸を含むMacConkeyプレートの表面の半分に塗布した。5個の便ペレットまたは同量の液体便を各ウサギから回収し、3 mlのリン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁し、各便懸濁液の0.1 mlをナリジクス酸を含むMacConkeyプレートに播いた。ナリジクス酸耐性コロニーの増殖を以下のようにスコアした: 0、増殖無し; 1 、粗いコロニー; 2 、密なコロニー; 3 、コロニーのコンフルエントな増殖。
サンプリングおよび組織の調製を以下のように実施した。すなわち、ケタマインの静脈注射およびフェノバルビタールナトリウムの過剰投与によって屠殺した直後に組織を摘出した。
腸組織における細菌のコロニー形成の量を以下のように評価した。すなわち、盲腸を除く腸セグメント(10 cm)をその近位末端および遠位末端で二重に結紮し、2つの結紮部分の間を切開し、次に10 mlの氷冷リン酸緩衝化生理食塩水でさっと流した。盲腸由来の1 gの粘着性内容物を9 mlのリン酸緩衝化生理食塩水に加えた。得られたリン酸緩衝化生理食塩水懸濁物を希釈し、ナリジクス酸を含むMacConkeyプレートに播いた。
腸組織への細菌の接着量を以下のように評価した。すなわち、直径9 mmのコルクパンチを用いて組織サンプルを切り抜き、リン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄し、2 mlの氷冷リン酸緩衝化生理食塩水に添加し、ホモジナイザーでホモジナイズした。次に、連続希釈したサンプルをMacConkeyプレートに播いた。各組織の1平方センチメートルあたりに接着する細菌の数を次のように計算した: CFU/cm2= 細菌数/プレート x 希釈率 x 2 ml/〜0.452
これらのデータは、これらの分子およびそれらが達成する機能が病原性にとって決定的であることを示している。EPEC分泌タンパク質と宿主細胞表面との間で起こる密接な相互作用は、宿主病原体相互作用の複雑さをくっきり示す。そして、治療剤における潜在的な用途に加えて、細胞機能および細菌性疾患を開拓し研究するための価値ある道具を提供する。
(実施例XI)
EHECに対するウシワクチンの開発
本実施例の目的は、腸出血性大腸菌(E.coli)に対するウシワクチンを提供することである。
EHECは、世界中における食物が伝搬した出血性大腸炎および溶血性尿毒症症候群の大発生および散発的発生の症例の多くと結び付けられてきた。米国西海岸における1993年の大発生は、500人以上の患者および数人の幼児の死を伴った。EHECは、米国における食物が伝搬する疾患の中で3番目に頻度の高い原因である。最もありふれた、疫病学的に関連する食物は挽き肉である。EHECは畜牛には何ら疾患症状を引き起こさないが、肉牛および乳牛は腸管にEHECを担持している。屠殺作業の間に死体の汚染が起こる。
Tir、EspA、EspB、インチミン、またはそれらの組合せを用いて畜牛にワクチン接種する。ワクチン接種したウシへのEHECの接着は、ウシ免疫応答によってブロックされる。したがって、ワクチン接種したウシはEHECキャリアーにならない。
ワクチン接種した畜牛の使用は、腸出血性大腸菌(E.coli)によって汚染された肉牛の発生を減らすのに有用である。市場への汚染食品の放出が減少することは、EHEC食物関連疾患の発生およびそれに関連する経済的負担の低下、ひいてはそれらの排除にもつながる。
(実施例XII)
Tirポリペプチドのインチミンへの結合のインヒビターをスクリーニングするアッセイの開発
本実施例の目的は、Tirポリペプチドのインチミンへの結合を妨げる化合物をスクリーニングするアッセイを提供することである。
Tirポリペプチドのインチミンへの結合は、標準条件下で測定する。この結合のスキャッチャード(Scatchard)プロットを作製し、Tirポリペプチドのインチミンに対する結合親和力を測定する。
次に、Tirポリペプチドのインチミンへの結合を妨げることが疑われる候補化合物をTirポリペプチドとインチミンの混合物または溶液に添加する。次に、標準条件下でTirポリペプチドのインチミンへの結合を測定する。結合のスキャッチャードプロットを作製し、Tirポリペプチドのインチミンへの結合における変化を測定する。
このアッセイは、上記化合物の存在下におけるTirポリペプチドのインチミンへの結合を、該化合物の不在下におけるTirポリペプチドとの結合と比較するものである。Tirポリペプチドのインチミンへの結合を阻害する化合物は、Tirポリペプチドのインチミンへの結合が病原性に関与している場合、EPECおよびEHEC等の病原体を含む病原体の処理に有用である。
(実施例XIII)
EPECとEHECを区別する方法
本実施例の目的は、非常に類似した毒性因子を含む病原体を区別する方法を示すことである。結合して姿を消す病原体(EPECまたはEHEC)の単離された株を用いて組織培養細胞を感染させる。抗ホスホチロシンおよび抗Tir抗体を用いて上記組織培養細胞を釣り上げる。抗ホスホチロシンおよび抗Tir抗体の感染した組織培養細胞中の細菌との結合は、免疫蛍光またはウエスタンブロット分析によって検出される。
感染組織培養細胞中のEPECは、抗ホスホチロシンおよび抗Tir抗体結合の両方に対して陽性反応を示す。感染組織培養細胞中のEHECは、抗Tir抗体結合に対して陽性反応を示し、抗ホスホチロシン結合については陰性応答を示す。
(実施例XIV)
標的設定した細胞送達
本実施例の目的は、Tir-インチミン系を標的設定した細胞送達に用いることである。組織培養下のHeLa細胞をeaeA EPEC(インチミン突然変異体)株に感染させる。インチミンを含む送達ビヒクルを構築し、上記培養物に導入する。送達ビヒクルはβガラクトシダーゼを内包するリポソームである。適切なインキュベーション後、細胞を洗浄し、X-galを用いて染色する。青色はリポソームによってβガラクトシダーゼが細胞に運ばれたことを示す。βガラクトシダーゼを内包する、非インチミン含有リポソームを用いて処理した対照細胞は、検出可能により低い強度で染まる。
本実施例の結果はTirが細胞に運ばれること、およびTirを標的とするビヒクルはこれらの細胞に生化学薬品を運ぶことができることを示している。
現時点における好ましい実施形態を参照することによって本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の改変をなしうることが理解されねばならない。したがって、本発明は以下の請求の範囲によってのみ限定される。

Claims (7)

  1. Tirを産生する生物による宿主の感染によって起こる疾病を改善する医薬組成物の製造のための、以下のいずれかの使用。
    (i) 配列番号4に記載のアミノ酸配列;配列番号4において1つのアミノ酸が保存的アミノ酸で置換された、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列;又は1つのアミノ酸が配列番号4から欠失しているか又は配列番号4に挿入されている、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列、を含む転座インチミン受容体(Tir)ポリペプチド
    (ii) 宿主細胞中でアクチンを核化させる能力;及び宿主細胞のシグナル伝達経路を活性化する能力よりなる群から選択される活性をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iii) Tir特異的抗体に特異的に結合する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iv) 宿主内で腸出血性大腸菌(E. coli)に対する免疫応答を誘導する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (v) (a) 配列番号3に示す核酸配列を含むポリヌクレオチド;(b) TがUである(a)に記載のポリヌクレオチド;(c) (a)又は(b)に相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチド;又は(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
    (vi) (v)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター
  2. Tirを産生する生物に対する免疫応答を誘導する医薬組成物の製造のための、以下のいずれかの使用。
    (i) 配列番号4に記載のアミノ酸配列;配列番号4において1つのアミノ酸が保存的アミノ酸で置換された、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列;又は1つのアミノ酸が配列番号4から欠失しているか又は配列番号4に挿入されている、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列、を含む転座インチミン受容体(Tir)ポリペプチド
    (ii) 宿主細胞中でアクチンを核化させる能力;及び宿主細胞のシグナル伝達経路を活性化する能力よりなる群から選択される活性をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iii) Tir特異的抗体に特異的に結合する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iv) 宿主内で腸出血性大腸菌(E. coli)に対する免疫応答を誘導する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (v) (a) 配列番号3に示す核酸配列を含むポリヌクレオチド;(b) TがUである(a)に記載のポリヌクレオチド;(c) (a)又は(b)に相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチド;又は(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
    (vi) (v)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター
  3. 前記宿主がヒトまたはウシである請求項1または2に記載の使用。
  4. 前記Tirを産生する生物が大腸菌(E. coli)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
  5. 前記Tirを産生する大腸菌(E. coli)が腸内病原性大腸菌(E. coli)である請求項4に記載の使用。
  6. 前記Tirを産生する大腸菌(E. coli)が腸管出血性大腸菌(E. coli)である請求項4に記載の使用。
  7. 以下のいずれかを含む、Tir産生大腸菌に対し免疫応答を誘導する医薬組成物。
    (i) 配列番号4に記載のアミノ酸配列;配列番号4において1つのアミノ酸が保存的アミノ酸で置換された、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列;又は1つのアミノ酸が配列番号4から欠失しているか又は配列番号4に挿入されている、配列番号4に記載の配列と実質的に同一のアミノ酸配列、を含む転座インチミン受容体(Tir)ポリペプチド
    (ii) 宿主細胞中でアクチンを核化させる能力;及び宿主細胞のシグナル伝達経路を活性化する能力よりなる群から選択される活性をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iii) Tir特異的抗体に特異的に結合する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (iv) 宿主内で腸出血性大腸菌(E. coli)に対する免疫応答を誘導する能力をさらに有する(i)のポリペプチド
    (v) (a) 配列番号3に示す核酸配列を含むポリヌクレオチド;(b) TがUである(a)に記載のポリヌクレオチド;(c) (a)又は(b)に相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチド;又は(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
    (vi) (v)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター
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