以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の制御装置は、対象物から受ける力を検出するセンサが設けられた動作部の動きを制御する制御装置において、
前記センサにより検出された検出値に基づいて、前記対象物と動作部の間の滑りを検出する滑り検出手段(例えば、図6のセンサ21)と、
前記検出手段により一定量の滑りが検出されるように、前記動作部の動きを制御手段(例えば、図6のメイン制御部101とアクチュエータ102)と
を備える。
前記滑り検出手段は、
前記センサは、複数のエレメントで構成される圧力センサであり(例えば、図5)、
前記センサにより検出された圧力値を用いて、圧力中心位置を演算する圧力中心演算手段と(例えば、図7の圧力中心演算部122)、
前記圧力中心演算手段により演算された前記圧力中心位置の時間変化を用いて、前記圧力中心位置の移動値を演算する圧力中心移動演算手段(例えば、図7の圧力中心移動演算部123)と、
前記圧力中心移動演算手段により演算された前記圧力中心位置の移動値に基づいて、滑りを検出する検出手段(例えば、図7の滑り覚検出部124)と
を備える。
前記センサは、その表面に粘弾性材料で構成される粘弾性体を有する(例えば、図3)。
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用したロボットハンドマニピュレータの外観の構成例を表している。
ロボットハンドマニピュレータは、図1の左側に示すように、ロボットハンド1とロボットハンド1を支持する支持部2で構成されている。
ロボットハンド1は、実際に動作する部分としての肩関節部11−1、上腕部11−2、肘関節部11−3、前腕部11−4、手首部11−5、および手部11−6などからなる(なお、これらを個々に区別する必要がない場合、関節部11と称する)。
ロボットハンド1の上腕部11−2および前腕部11−4には、それぞれセンサ21−1および21−2が設けられている。また、図1の右側に拡大して示すように、ロボットハンド1の手部11−6を構成する掌には、センサ21−3および21−4が設けられており、手部11−6を構成する親指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−5、第1関節と第2関節の間には、センサ21−6がそれぞれ設けられており、人指し指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−7、第1関節と第2関節の間には、センサ21−8、そして第2関節と第3関節の間には、センサ21−9がそれぞれ設けられている。
さらに、中指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−10、第1関節と第2関節の間には、センサ21−11、そして第2関節と第3関節の間には、センサ21−12がそれぞれ設けられており、薬指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−13、第1関節と第2関節の間には、センサ21−14、そして第2関節と第3関節の間には、センサ21−15がそれぞれ設けられており、小指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−16、第1関節と第2関節の間には、センサ21−17、そして第2関節と第3関節の間には、センサ21−18がそれぞれ設けられている。
ロボットハンド1に設けられたセンサ21−1乃至21−18(なお、特に区別する必要がない場合、以下、単にセンサ21と称する。他の場合においても同様である)は、そのセンサ面に垂直な法線力(例えば、圧力)のみを検出する静電容量型圧力センサで構成され、その表面に、人間の皮膚のような柔らかさを有する粘弾性体を有している。この粘弾性体は、外部から受ける力とその形によって様々な形状に変化し、それによって内部のセンサ21に対して圧力が拡散される。
センサ21は、粘弾性体に物体が接触した際に、その拡散された圧力値(以下、分布圧力値とも称する)を検出し、検出した分布圧力値に基づいて、ロボットハンド1による物体の安定把持、器用な操りなどの複雑な制御を行うために必要な把持情報である、把持物体と指先間の滑りを検出する。
本実施の形態の把持、操りにおける「滑り」とは、次のように定義される。
一般的には、指と対象物の間の相対運動を「滑り」と呼ぶ。この相対運動には大きく分けて、「並進運動」と「回転運動」の2つがあり、前者の「並進運動」は、把持接触点における把持力(法線力)と直交する方向(せん断方向、接線方向)への運動であり、後者の「回転運動」は、接触を保ちながら回転移動する「転がり運動」と、把持接触点の「法線軸まわりの回転運動」である。これらを、それぞれ、並進滑り、回転滑りと呼んで区別するが、これらは、同時に組み合わさって発生することが多い。
また一方で、把持の安定性やロバスト性などを考慮すると、指先は柔軟な構造とすることが望ましい。この柔軟な指先で対象物を把持している際に対象物へのせん断力を加えていくと、接触領域の外周部から徐々に相対運動が生じて、固着領域と滑り領域が混在する「初期局所滑り」が発生する。さらに、せん断力を加えていくと、ある点を境にして、動摩擦係数に支配される運動状態(狭義の「滑り」)に至る。この滑り出しに相当する「初期局所滑り」時には、振動が発生するため、その観測が可能である。さらに、初期局所滑りに至る前の段階において、指先と対象物の接触領域は略不変であるものの、柔軟素材が変形して「ずれ」が発生する状態も存在する。
把持、操りにおいて、指と対象物の間の完全な相対運動のみを基に制御していたのでは制御の遅れによりうまく実現できないことが多い。したがって、「滑り」を予知し、未然に防ぐことも重要であると考え、上記の「初期局所滑り」および「ずれ」も含めたものまでを広義の「滑り」と呼ぶことにする。
なお、図1のセンサ21においては、このように定義される「滑り」のうち、「初期局所滑り」および「ずれ」を含めた「並進運動」と「回転運動」を検出することができる。
ロボットハンドマニピュレータは、この滑りに基づき、ロボットハンド1の所定の関節部11に内蔵されるアクチュエータ(図示せぬ)を制御して、積極的にすべりを発生させ、例えば図1に示されるペンなど長い棒状の持ち替え動作を自然に行わせることができる。
図2は、センサ21の外観の構成例を示す斜視図である。
センサ21は、大きく分けて、物体が触れる部分であって、変形する材料で構成されている入力部31、入力部31を支える固定部32、および電源を入力し、センサ21の検出結果などを、例えば、ロボットハンドマニピュレータのメイン制御部101(後述する図6)などに出力する外部接続部33により構成されている。
図2の例において、入力部31は、入力面31aが四角形である四角柱型で形成されている。なお、以下、特に言及しない場合、この入力面31aと平行な面を、xyz座標系のxy平面とし、入力面31aに垂直な方向をz軸方向として説明する。
図3は、図2のセンサ21の内部構造を示している。図3の上側には、センサ21を真上から見た上面図が、図3の下側には、センサ21の側面断面図がそれぞれ示されている。
入力部31は、大きく分けて、変形部41および圧力検出部42からなり、変形部41を上層、圧力検出部42を下層とする多層構造となっている。なお、図3上側において入力部31および変形部41は、内部構成がわかるように、段階的に透過された状態で示されている。
変形部41は、例えば、シリコンゲル材料のような粘弾性特性を有する粘弾性材料(粘弾性体)で構成されており、外部からの荷重により容易に変形が可能である。
粘弾性材料には、耐熱、耐寒、しゅう動、耐摩擦性の高いシリコンゲルが適しているが、他の材料を用いることもできる。
また、固定部32との境界は拘束面になっており、接着や一体成形により固着されている。そのため、ゴム材料同等の非圧縮性から、例えば、側面や上面の一部が膨らむ、いわゆるバルジング現象を起こすこととなり、その形は、荷重値や入力面形状により様々な特徴をあらわすことが、出願人による実験の結果、認められている。
図4は、変形部41に用いられる粘弾性材料の圧縮および引張特性の例を示している。
縦軸は、粘弾性材料に働く荷重(外力)に抵抗して生じる応力[MPa]を表しており、横軸は、材料に荷重が働くことで現れる変形の、元の状態に対する度合いであるひずみ(歪)を表している。
ひずみが0.0である位置(すなわち、ひずみが生じていない位置)が粘弾性材料に外力が働いてない状態であり、ひずみが0.0である位置から圧縮の荷重が加わると、ひずみは、-0.8辺りまでしか変化せず、生じる応力は、ひずみが-0.5辺りまで、マイナス方向(図中下方向)に少しずつ増加し、ひずみが-0.6を超えた辺りから-0.8辺りまでは、急激に増加する。
一方、ひずみが0.0の位置から引張の荷重が加わると、ひずみは、2.0辺りまで変化し、生じる応力は、ひずみが2.0辺りまで、プラス方向(図中上方向)に、圧縮の場合の応力の増加に比してなだらかに増加する。
図3に戻り圧力検出部42は、例えば、静電容量変化を利用して、圧力を検出する静電容量型圧力センサなどで構成されている。
変形部41の変形によって応力分散が生じ、内部の圧力検出部42に対して圧力が拡散されるので、粘弾性体の変形による補間特性に基づき、圧力検出部42は、静電容量型圧力センサの空間分解能以上のセンシング性能を得ることができる。
図5は、図3の圧力検出部42の詳細を示している。
圧力検出部42は、例えば、フレキシブル基板51上にマトリクス状に配置された複数の圧力検出素子(以下、センサエレメントとも称する)52により構成される。すなわち、圧力検出部42で構成されるセンサは、静電容量型圧力センサであり、分布型圧力センサとも呼ばれる。なお、図5の例においては、説明の便宜上、1つのセンサエレメントに符号を付し、他のセンサエレメントの符号は省略されている。
図5の例の場合、圧力検出部42は、縦21列×横8行の168個のセンサエレメント52により構成されており、センサエレメント52の各列および各行からは、それぞれ、引き出し線が信号処理部53に入力されている。これらの各センサエレメント52により検出された分布圧力値は、この引き出し線を介して、信号処理部53に入力され、信号処理部53により所定の信号処理が行われる。そして、センサ21の外部には、この信号処理の結果が出力される。
圧力検出部42および信号処理部53が配置されたフレキシブル基板51の上に、粘弾性材料からなる変形部41が配置されて、センサ21が構成されている。
次に、図1のロボットハンドマニピュレータの電気的な構成を説明する。図6は、図1のロボットハンドマニピュレータの電気的な構成例を示している。
図6の例において、ロボットハンドマニピュレータは、メイン制御部101、アクチュエータ102−1,102−2,・・・およびセンサ21−1,21−2,・・・より構成されている。
図1に示したように所定の関節部11に対応する所定の位置に配置されているセンサ21は、電気的に図5に示したように圧力検出部42および信号処理部53を含んで構成されている。
センサ21の圧力検出部42は、複数のセンサエレメント52(図5)により静電容量変化を検出原理として検出された分布圧力値を、信号処理部53に出力する。なお、分布圧力値の検出原理は、静電容量変化以外であってもよい。例えば、抵抗値変化とすることもできるし、分布圧力値がとれるのであれば、感圧ゴムを並べただけのセンサであってもよい。
信号処理部53は、圧力検出部42からの分布圧力値を用いて、所定の信号処理(後述)を行うことで、把持物体と指先間の滑りを検出し、検出した滑りの情報を、メイン制御部101にリアルタイムに出力する。
メイン制御部101は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を内蔵しており、CPUにおいて、メモリに記憶された制御プログラムが実行されることにより、各種の処理を行う。
すなわち、メイン制御部101は、各センサ21により検出された把持物体と指先間の滑りの情報を受け、各センサ21からの把持物体と指先間の滑りの情報に基づき、センサ21自体の柔らかさおよび表面の摩擦によるグリップ性などを利用して、アクチュエータ102のうちの必要なものを制御して、所定の関節部11を駆動させて、ロボットハンド1に、物体を把持させて、移動や運搬などを行わせる。
メイン制御部101はまた、物体を把持されて、移動や運搬などを行わせる際、各センサ21からの把持物体と指先間の滑りの情報に基づき、アクチュエータ102のうちの必要なものを制御して、所定の関節部11を駆動させて、積極的に、関節部11と把持物体との間に滑りを発生させ、ロボットハンド1に、より高速にまたはより自然に物体の移動や運搬などを行わせることができる。
なお以下において、このように積極的に、関節部11と把持物体との間に滑りを発生させ、ロボットハンド1を制御する処理を、すべり制御処理と称する。
各アクチュエータ102は、それぞれ、ロボットハンド1の所定の関節部11(すなわち、肩関節部11−1、肘関節部11−3、手首部11−5、手部11−6)に内蔵されており、メイン制御部101からの駆動信号に従って所定の関節部11を駆動させる。これにより、所定の関節部11は、所定の自由度を持って回転することができるようになっている。
図7は、センサ21の信号処理部53の電気的な構成例を示している。圧力検出部42からの分布圧力値の情報は、信号処理部53の接触検出部121および圧力中心演算部122にそれぞれ入力される。
信号処理部53の接触検出部121は、圧力検出部42からの分布圧力値を用いて、各センサエレメント52における接触検出を行い、センサ21(変形部41)への物体の接触検出が行われたセンサエレメント52の情報を、圧力中心演算部122に出力する。
例えば、圧力検出部42が、水平方向(x)にm個(x=0,1,2,…,m-1)、垂直方向(y)にn個(y=0,1,2,…,n-1)のm×n個(図5の例の場合は、縦を水平方向とみて、m=21,n=8)のセンサエレメント52で構成されているとすると、接触検出部121は、それぞれのセンサエレメント52の出力(すなわち、圧力値)P(x,y)がある閾値th(x,y)を超えた場合、すなわち、次の式(1)を満たした場合、そのセンサエレメント52が、入力部31(変形部41)への物体の接触を検出したとする。なおth(x,y)は、全てのセンサエレメント52に対して同じ閾値であってもよい。
また、接触検出部121は、それぞれのセンサエレメント52の出力P(x,y)の総和がある閾値thを超えた場合、すなわち、次の式(2)を満たしたとき、それらのセンサエレメント52が接触を検出したとしてもよい。
圧力中心演算部122は、圧力検出部42からの分布圧力値を用いて、圧力中心位置を演算し、圧力中心移動演算部123に供給する。
具体的には、圧力検出部42のセンサエレメント52により検出される圧力値をP(x,y)として、各センサエレメント52の単位面積をS(x,y)とすると、圧力中心位置COPx,COPyは、次の式(3)で求められる。
すなわち、式(3)の右辺の分母は法線方向にかかる力の総和であり、右辺の分子は、トルクの総和であるので、式(3)によれば、トルクがかかっている位置の代表点としての圧力中心位置が求められる。
なお、図5の例の場合のように、各センサエレメント52の単位面積S(x,y)が全て同じ場合、圧力中心位置COPx,COPyは、簡易的に、次の式(4)で求められる。
なお、ここで、式(3)および式(4)では、全てのセンサエレメント52の圧力値P(x,y)を用いたが、式(1)または式(2)を満たす、すなわち、接触を検出したセンサエレメント52の圧力値P(x,y)のみを用いて、圧力中心位置COPx,COPyを求めることもできる。この場合、接触が検出されないときには圧力中止位置が求められないので、演算を止めておくことができる。
また、図5の例の場合、センサエレメント52を水平方向および垂直方向にそれぞれ配置した例を説明しているが、センサエレメント52は、水平方向だけや垂直方向だけに配置した場合にも同様な処理を行うことができる。センサエレメント52を水平方向だけに配置した場合は、n=0の場合であり、圧力中心位置COPxの結果のみが用いられる。また、センサエレメント52を垂直方向だけに配置した場合は、m=0の場合であり、圧力中心位置COPyの結果のみが用いられる。
以上のようにして求められる圧力中心位置COPx,COPyは、圧力値に応じて0≦COPx≦m-1, 0≦COPy≦n-1の値しかとらない。したがって、圧力中心位置COPx,COPyを圧力中心移動演算部123に渡すことにより、接触位置検出の検出結果が、圧力中心移動演算部123において利用可能になる。
圧力中心移動演算部123は、圧力中心演算部122からの圧力中心位置を時系列に蓄積する。圧力中心移動演算部123は、例えば、その蓄積された圧力中心位置の移動平均値の差分、または、圧力中心位置の差分を求め、求められた差分を、圧力中心移動演算値として、滑り覚検出部124に出力する。
例えば、圧力中心位置の時系列情報を、それぞれ、COPx(t)およびCOPy(t)とする。圧力中心移動演算部123は、微小な変動分を吸収するため、COPx(t)およびCOPy(t)に対して、ローパスフィルタ、または移動平均を行う。ここで、演算がより簡単な移動平均を用いた場合について説明する。なお、変動(ノイズ)が少ない場合には、ローパスフィルタや移動平均処理を行わなくてもよい。
移動平均をとる数をMとすると、移動平均COPx
MA(t)およびCOPy
MA(t)は、時系列で蓄積されたCOPx(t)およびCOPy(t)を用いて、次の式(5)で表される。
圧力中心移動演算部123は、求められた移動平均COPx
MA(t)およびCOPy
MA(t)も時系列で蓄積する。圧力中心移動演算部123は、蓄積された移動平均値を用いて、圧力中心移動演算値を次の式(6)のようにして求める。
すなわち、式(6)においては、例えば、時刻tの移動平均値と、時刻t-1、時刻t-2、および時刻t-3などとの移動平均値との差分が求められる。すなわち、複数回の時間の変化が求められる。この移動平均値の差分である圧力中心移動演算値Dx(t,i)およびDy(t,i)は、滑り覚検出部124に出力される。
滑り覚検出部124は、例えば、圧力中心移動演算部123からの演算結果(すなわち、圧力中心移動演算値)を用いて、圧力中心移動検出演算を行い、圧力中心移動検出演算の演算結果により、滑りを検出したり、圧力中心移動演算部123からの演算結果を用いて、滑りを検出する。なお、圧力中心移動検出演算の演算結果を用いる場合には、滑り覚検出部124は、圧力中心移動演算値に、圧力中心移動演算値の大きさに応じた係数を乗算することで、圧力中心移動検出演算を行い、圧力中心移動検出演算の演算結果により、滑りを検出する。
すなわち、滑り覚検出部124は、圧力中心移動検出演算の演算結果、または、圧力中心移動演算部123からの演算結果が、所定の閾値(以下、判定用閾値と称する)を超えたか否かを判定し、判定用閾値を超えたと判定した場合、滑りを検出する。
例えば、滑り覚検出部124は、圧力中心移動演算部123からの圧力中心移動演算値Dx(t,i)およびDy(t,i)を用いて、式(7)を演算し、移動検出係数Kx(i)およびKy(i)を求める。
ここで、thresholdは一定値であり、Cs,Clは、0<Cs<Clの定数である。例えば、Cs=1、およびCl=2を用いる。したがって、threshold・iは、iが大きくなると大きくなる値である。すなわち、移動検出係数Kx(i)およびKy(i)は、圧力中心移動演算値Dx(t,i)およびDy(t,i)の大きさに応じて求められる係数、さらに具体的には、圧力中心移動演算値Dx(t,i)およびDy(t,i)の大きさと、時間に応じて大きくなる値との比較結果に応じて求められる係数である。なお、thresholdは可変の値であってもよい。
そして、滑り覚検出部124は、式(6)および式(7)により求められた値を用いて圧力中心移動検出演算を行う。この圧力中心移動検出演算の演算式は、式(8)で表される。
さらに、滑り覚検出部124は、式(8)により求めた値を用いて滑り覚検出演算を行う。この滑り覚検出演算の演算式は、式(9)で表される。
式(9)により求められる滑り覚検出値SdxおよびSdyは、滑り量が増大するとその量が増加し、方向成分がほぼ保存される性質を有する量である。そして、滑り覚検出部124は、この滑り覚検出値SdxおよびSdyが、判定用閾値を超えたと判定したときに、滑りを検出する。
なお、図20を参照して後述するが、式(9)におけるNの値を大きく、式(7)におけるthresholdを小さくすることで、非常にゆっくりと滑る場合の滑りも検出することができるようになり、Nの値を小さく、thresholdを大きくすることで、高速に滑った場合の滑りのみを検出することができる。したがって、滑り覚検出部124においては、複数のNに対して、また複数のthresholdに対して演算を行うことで、複数の種類の滑り覚検出値SdxおよびSdyを取得することができ、それを、検出目的に応じて使い分けることができる。
以上のようにして、滑り覚検出部124により検出された滑りと滑りの方向は、滑りの情報として、メイン制御部101にリアルタイムに出力される。
図8は、すべり制御処理を実行する場合のメイン制御部101とアクチュエータ102の電気的な構成例を示している。なお図8の例では、メイン制御部101は、1つのアクチュエータ102−Mを内蔵する1つの関節部11−M(図示せぬ)と把持対象物との間に所定の滑りが発生するように、その関節部11−Mに設けられた1つのセンサ21−Nからの検出結果に基づいて、そのアクチュエータ102−Mを制御するものとする。
メイン制御部101のすべり制御部501は、実行させるすべり制御処理により関節部11−Mに発生させたいすべり量(すなわち滑り覚検出値SdxおよびSdy)(以下、適宜、目標滑り覚検出値と称する)を決定し、減算器502に供給する。
減算器502には、センサ21−Nから検出されたすべり量(すなわちフォードバックされる滑り覚検出値SdxおよびSdy)(以下、適宜、検出滑り覚検出値と称する)が供給される。
減算器502は、すべり制御部501から供給された目標滑り覚検出値と、センサ21から供給された検出滑り覚検出値とを減算し、その結果得られた両者の差分値を、すべり操作部503に供給する。
すべり操作部503は、減算器502から供給された差分値が減少するように関節部11−Mを起動させるための制御信号(すなわち、目標滑り覚検出値が検出されるように関節部11−Mを起動させるための制御信号)を、アクチュエータ102−Mに供給する。
アクチュエータ102−Mの調節部511は、メイン制御部101のすべり操作部503から供給された制御信号に応じた関節部11−Mの位置や関節部11−Mが発生する力(または受ける力)(以下、目標状態と称する)を示す信号を減算器512に供給する。
減算器512には、状態検出部514から、調節部511が出力する目標状態を示す信号に対応する、関節部11−Mのいま現在の位置や発生している力(以下、適宜、検出状態と称する)を表す信号が供給される。
減算器512は、調節部511から供給された関節部11−Mの目標状態を示す信号と、状態検出部514から供給された関節部11−Mの検出状態を示す信号の差分を算出し、その結果得られた差分値を、駆動部513に供給する。
駆動部513は、減算器512から供給された差分値が減少するように関節部11−Mを駆動させる。
状態検出部514は、アクチュエータ102−Mが内蔵されている関節部11−Mの位置や発生している圧力等のその関節部11−Mの状態を検出し、その状態を表す信号を減算器512にフィードバックする。
次に、センサ21とメイン制御部101の動作を説明する。
はじめにセンサ21の動作を、図9を参照して説明する。
図9は、荷重前の入力部31の形状の例(上側)と荷重後の入力部31の形状の例(下側)を示している。なお、図9の例において、図中右方向がxyz座標系のx軸の正方向を表し、図中上方向がz軸の正方向を表している。
指Aなどの入力部31の押下により入力部31にz軸の負方向(図中下方向)に荷重Fzがかけられると、入力部31と固定部32とは接着や一体成形により固着され、その境界は拘束面となっているとともに、変形部41はゴム材料同等の非圧縮性であることから、変形部41は徐々に変形し、応力分散により圧力分布が発生する。そして荷重後においては、点線に示されるもとの形状よりも側面や上面の一部が膨らむ、いわゆるバルジング現象が発生して、その状態における圧力分布が発生する。
すなわち圧力検出部42を構成するセンサエレメント52(図5)のうち、荷重Fzによる圧力中心位置Cに位置するセンサエレメント52が計測する圧力値は、図10の圧力値と時間のグラフ(図10の図中下のグラフ)に示されるように、段々と上がり、所定の値に達すると、その所定の値が維持される静定状態となる。
静定状態の圧力検出部42における圧力値の分布は、図10の圧力値とx軸方向の位置のグラフ(図10の図中上のグラフ)に示されるように、圧力中心位置Cの圧力値を最大とし、圧力値の分布範囲の両端における圧力値を最小とした略左右対称の山なりの形状となる。
なお、圧力検出部42の上に粘弾性がない場合には、指Aとほぼ点接触状態となり圧力中心位置Cに位置するセンサエレメント52の圧力値しか検出されないため、図10の圧力値とx軸方向の位置のグラフのような圧力分布は発生しない。
このように荷重に応じて変形部41が変化し、その変形に応じた圧力値が圧力検出部42により検出される。なお圧力検出部42の上に粘弾性体からなる変形部41があることで、接触物(指A)の接触面積以上の圧力分布が発生するので、広範囲の圧力分布となり、圧力中心演算結果のノイズが低減される。
図11は、ずらし前の形状の例(上側)とずらし後の入力部31の形状の例(下側)を示している。なお、図11のずらし前の入力部31の状態は、図9における荷重後の入力部31の状態と同じ状態を表している。
図11においては、ずらし前に示されるように、指Aなどの入力部31の押下により入力部31にz軸の負方向(図中下方向)に荷重Fzがかけられた後、ずらし後に示されるように、その指Aが入力部31を押下したまま、せん断力Fsで、x軸の正方向(図中右方向)にずらすずらし動作が行われる。
この場合、入力部31は、x軸の正方向へのずらし動作により、固定部32との拘束面を固着させたまま、せん断変形し、その結果、ずらし前の荷重Fzによる圧力中心位置Cに位置するセンサエレメント52に対する圧力分布位置関係に変化が生じる。
図11の例の場合、ずらし前の圧力中心位置Cから、ずらし後の圧力中心位置がdずれてしまっている。また、せん断力が摩擦力を超えていない場合でも粘弾性体の柔軟構造により変形が発生し、圧力分布に変化が生じる。
すなわち、図12のずらし前とずらし後の圧力分布に示されるように、ずらし前の圧力分布(上側)は、圧力中心位置Cの圧力値を最大とし、圧力値の分布範囲の両端における圧力値を最小とした略左右対称の山なりの形状となっているが、ずらし後の圧力分布(下側)は、圧力値の分布範囲がずらし前よりも狭くなっており、さらに、ずらし前の圧力中心位置Cから、少し、x軸の正方向へずれた位置の圧力値を最大として、x軸の正方向よりもx軸の負方向になだらかな山なりの形状となる。すなわち、ずらしにより、圧力中心位置は変化する。
この圧力分布の変形量は、せん断力Fsの大きさに依存して大きくなるため、例え入力部31(変形部41)の粘弾性体と接触物(指A)との接触領域が略不変としても、圧力中心の変化を捉えることができ、広義の「滑り」を捉えることができる。したがって、ロボットハンド1によって把持を行っている際には、入力部31の粘弾性体と接触物との間の完全な相対運動を基に把持力制御を行うよりも、「ずれ」の状態で滑りを検出し、把持力制御を行った方が有効であるといえる。
ここで、センサ21への荷重抜重の実験の結果に基づいて、センサ21の動作をさらに詳細に説明する。
図13には、センサ21への荷重抜重の実験概要と圧力検出部42の詳細が示されている。この実験概要においては、図中右方向がxyz座標系のx軸の正方向を表し、図中上方向がz軸の正方向を表している。なお、センサ21の圧力検出部42の詳細においては、図中左方向がxyz座標系のx軸の正方向を表し、図中上方向がy軸の正方向を表している。
この実験においては、まず、略1500ms乃至4000ms間に、図13の実線矢印に示されるように、センサ21の粘弾性体からなる変形部41に対して、先端に球Rを有するTipが、力Fz、所定の速度または加速度で押し込まれ、z軸の負方向(図中下方向)に荷重がかけられることで、変形部41の粘弾性体に、応力、ひずみ、ひずみE(エネルギ)が発生し、それにより、接触面積以上に圧力分布が拡散される。また、荷重をかけたまま一定時間(略4000ms乃至14500ms)経過した後で、略14500ms乃至17000ms間に、点線矢印に示されるように、抜重が行われる。そして、以上の変形部41に対する荷重から抜重の間の、圧力検出部42を構成するセンサエレメント52(図13の例の場合、ID(identification)1008乃至ID1175が付された21×8個の各センサエレメント52)からの出力データが計測される。
図14には、図13の実験で計測された出力データが時間経過に沿って示されている。上から順に、所定のセンサエレメント52の圧力値と時間のグラフ、接触素子数、接触面積、および接触素子の圧力値の総和と時間のグラフ、力および押し込み深さと時間のグラフが示されている。なお、この例においては、説明の便宜上、図13においてハッチングが付されているIDのセンサエレメント52の圧力値のみしか示されていない。
最上段において、グラフ131は、図13のTipの真下に配置されるID1084のセンサエレメント52から出力される圧力値を時間経過に沿って示している。以下、同様に、グラフ132は、ID1084のx軸の正方向側の隣に配置されるID1092のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ133は、ID1092のx軸の正方向側の隣に配置されるID1100のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ134は、ID1100のx軸の正方向側の隣に配置されるID1108のセンサエレメント52から出力される圧力値を示している。
中段において、グラフ135は、接触閾値を超えたセンサエレメント52からの圧力値の総和を時間経過に沿って示している。グラフ136(破線)は、接触閾値を超えたセンサエレメント52の数(すなわち、接触素子数)を時間経過に沿って示しており、グラフ137は、グラフ136で示される接触素子数に基づいて求められる接触面積を時間経過に沿って示している。
最下段において、グラフ138は、入力部31の上において6軸力センサで計測されるz軸方向(法線方向)の力Fz1を時間経過に沿って示しており、グラフ139は、Tipが変形部41に押し込まれる深さ(z軸方向の位置)を時間経過に沿って示している。なお、6軸力センサによる力Fz1は、後述する演算により求められる力Fzと比較のために計測されている。
すなわち、グラフ131乃至グラフ134により、Tipの真下に配置されるID1084のセンサエレメント52からの圧力値が最も大きい値であることがわかり、ID1084のセンサエレメント52から3つ離れたID1108のセンサエレメント52からの圧力値は、ずっと0であり、圧力値を検出していないことがわかる。また、荷重をかけたままであっても、グラフ131乃至グラフ134における略4000ms乃至14500msに示されるように、各センサエレメント52出力される圧力値は、少しずつ下がっている。これは、粘弾性体の応力緩和によるものである。
また、これらのグラフ131乃至グラフ134が示す圧力値に基づいて、接触領域、接触面積、加重された力Fz、圧力中心位置COPx,COPyを算出することができる。具体的には、接触領域とは、グラフ136で示される接触素子数を表しており、接触領域は、センサエレメント52毎に上述した式(1)が用いられ、接触閾値(例えば、th(x,y))を超えたものが接触素子(すなわち、接触を検出したセンサエレメント)であるとして求められる。グラフ137で示される接触面積は、グラフ136で示される接触素子数に、素子面積を掛け合わせて求めることができる。また、力Fzは、次の式(10)を用いて求めることができる。すなわち、式(10)で求められる力Fzは、誤差などがあるが、グラフ138で示される力Fz1と略同じ値となる。
圧力中心位置COPx,COPyは、上述した式(3)(または式(4))で求めることができる。なお、図13の例の場合、圧力中心位置COPx,COPyは、Tipの真下に配置されるID1084のセンサエレメント52の位置となる。
図15には、センサ21への荷重後せん断力Fsをかける実験概要と圧力検出部42の詳細が示されている。実験概要においては、図中右方向がxyz座標系のx軸の正方向を表し、図中上方向がz軸の正方向を表している。なお、圧力検出部42の詳細においては、図中左方向がxyz座標系のx軸の正方向を表し、図中上方向がy軸の正方向を表している。
この実験においては、まず、図13の例と同様に、センサ21の粘弾性体からなる変形部41に対して、Tipが、力Fz、所定の速度または加速度で押し込まれ、z軸の負方向(図中下方向)に荷重がかけられることで、変形部41の粘弾性体に、応力、ひずみ、ひずみE(エネルギ)が発生し、それにより、接触面積以上に圧力分布が拡散される。その後、荷重をかけたまま、略1000ms乃至11000ms間に、図15の実線矢印に示されるように、押し込み深さ−1.0mm、所定の速度または加速度で、x軸の正方向(図中右側)にTipを移動させる(ずらす)せん断力がかけられ、そのままの状態で、所定の時間Tipを停止させている。そして、以上の間の、圧力検出部42を構成するセンサエレメント52(図15の例の場合も、ID1008乃至ID1175が付された21×8の各センサエレメント52)からの出力データが計測される。
図16には、図15の実験で計測された出力データが時間経過に沿って示されている。すなわち、上から順に、所定のセンサエレメント52の圧力値と時間のグラフ、接触素子数、接触面積、および接触素子の圧力値の総和と時間のグラフ、Tipのx軸方向の位置、圧力中心位置、および圧力中心移動速度と時間のグラフ、並びに、力および回転力と時間のグラフが示されている。なお、この例においても、説明の便宜上、図15においてハッチングが付されているIDのセンサエレメント52の圧力値のみしか示されていない。
最上段において、グラフ141は、図15のID1076のx軸の負方向側の隣に配置されるID1068のセンサエレメント52から出力される圧力値を時間経過に沿って示している。以下、同様に、グラフ142は、ID1084のx軸の負方向側の隣に配置されるID1076のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ143は、Tipの真下に配置されるID1084のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ144は、ID1084のx軸の正方向側の隣に配置されるID1092のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ145は、ID1092のx軸の正方向側の隣に配置されるID1100のセンサエレメント52から出力される圧力値を示している。
また、グラフ146は、ID1100のx軸の正方向側の隣に配置されるID1108のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ147は、ID1108のx軸の正方向側の隣に配置されるID1116のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ148は、ID1116のx軸の正方向側の隣に配置されるID1124のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ149は、ID1124のx軸の正方向側の隣に配置されるID1132のセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ150は、ID1132のx軸の正方向側の隣に配置されるID1140のセンサエレメント52から出力される圧力値を示している。
上から2段目において、グラフ151(破線)は、接触閾値を超えたセンサエレメント52からの圧力値の総和を時間経過に沿って示している。グラフ152(グレイの線)は、接触閾値を超えたセンサエレメント52の数(すなわち、接触素子数)を時間経過に沿って示しており、グラフ153は、グラフ152で示される接触素子数に基づいて求められる接触面積を時間経過に沿って示している。
上から3段目において、グラフ154は、x軸方向のTipの位置を時間経過に沿って示している。グラフ155は、上述した式(3)(または式(4))で求められる圧力中心位置COPx,COPyのうちのCOPxを時間経過に沿って示しており、グラフ156は、圧力中心位置COPxの差分を時間で除算した圧力中心位置の移動速度を時間経過に沿って示している。
最下段において、グラフ157は、入力部31の上において6軸力センサで計測されるx軸方向の力Fx1を時間経過に沿って示しており、グラフ158は、y軸方向の力Fy1を時間経過に沿って示しており、グラフ159は、z軸方向(法線方向)の力Fz1を時間経過に沿って示している。また、グラフ160は、入力部31の上において6軸力センサで計測されるx軸を中心とした回転方向の力Mx1を時間経過に沿って示しており、グラフ161は、y軸を中心とした回転方向の力My1を時間経過に沿って示しており、グラフ162は、z軸を中心とした回転方向の力Mz1を時間経過に沿って示している。なお、6軸力センサによる力や回転力は、後述する演算により求められる力Fzと比較のために計測されている。
すなわち、グラフ141乃至グラフ150により、最大の圧力値は、時間の経過に応じて、それぞれ、Tipの真下に配置されるID1084、ID1092、ID1100、ID1108、ID1116、ID1124、ID1132、ID1140の各センサエレメント52からの圧力値となる。
また、図13の例の場合と同様に、これらのグラフ141乃至グラフ150が示す圧力値に基づいて、接触領域、接触面積,力Fz,圧力中心位置COPx,COPyを算出することができる。具体的には、接触領域とは、グラフ152で示される接触素子数を表し、センサエレメント52毎に上述した式(1)が用いられ、接触閾値を超えたものが接触素子(すなわち、接触を検出したセンサエレメント)であるとして求めることができる。グラフ153で示される接触面積は、グラフ152で示される接触素子数に、素子面積を掛け合わせて求めることができる。また、力Fzは、上述した式(10)を用いて求められる。すなわち、式(10)で求められる力Fzは、誤差などがあるが、グラフ159で示される力Fz1と略同じ値となる。
また、グラフ155で示される圧力中心位置COPxと、圧力中心位置COPyは、上述した式(3)(または式(4))で求めることができる。グラフ155で示される圧力中心位置COPxは、グラフ154で示されるTipの位置を少し先行はしているものの、グラフ154で示されるTipの位置とほぼ同様に移動している。
図17は、図15と同様の実験で計測された出力データの他の例を示している。図17の例においては、上から順に、センサ21が、Tipで、約6000ms前後に荷重開始され、約9000ms乃至12000msの辺りで移動(ずらし)が開始された場合における、所定のセンサエレメント52の圧力値と時間のグラフ、接触素子数、接触面積、および接触素子の圧力値の総和と時間のグラフ、Tipのx軸方向の位置、圧力中心位置、および圧力中心移動速度と時間のグラフ、並びに、力および回転力と時間のグラフが示されている。なお、図17のグラフは、図16のグラフの他の例であり、その詳細な説明は基本的に同様であるため、繰り返しになるので適宜省略する。
最上段において、グラフ171は、グラフ173に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の負方向側の2つ隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を時間経過に沿って示している。以下、同様に、グラフ172は、グラフ173に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の負方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ173は、Tipの真下に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ174は、グラフ173に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ175は、グラフ174に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示している。
また、グラフ176は、グラフ175に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ177は、グラフ176に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ178は、グラフ177に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ179は、グラフ178に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示し、グラフ180は、グラフ179に示される圧力値を出力するセンサエレメント52のx軸の正方向側の隣に配置されるセンサエレメント52から出力される圧力値を示している。
上から2段目において、グラフ181は、接触閾値を超えたセンサエレメントからの圧力値の総和を時間経過に沿って示している。グラフ183は、接触閾値を超えたセンサエレメント数(接触素子数)に基づいて求められる接触面積を時間経過に沿って示している。
上から3段目において、グラフ184は、x軸方向のTipの位置を時間経過に沿って示している。グラフ185は、上述した式(3)(または式(4))で求められる圧力中心位置COPx,COPyのうちのCOPxを時間経過に沿って示しており、グラフ186は、圧力中心位置COPxの差分を時間で除算した圧力中心位置の移動速度を時間経過に沿って示している。
最下段において、グラフ187は、入力部31の上において6軸力センサで計測されるx軸方向の力Fx1を時間経過に沿って示しており、グラフ188は、y軸方向の力Fy1を時間経過に沿って示しており、グラフ189は、z軸方向(法線方向)の力Fz1を時間経過に沿って示している。また、グラフ190は、入力部31の上において6軸力センサで計測されるx軸を中心とした回転方向の力Mx1を時間経過に沿って示しており、グラフ191は、y軸を中心とした回転方向の力My1を時間経過に沿って示しており、グラフ192は、z軸を中心とした回転方向の力Mz1を時間経過に沿って示している。
ここで、図17の上から2段目におけるグラフ181およびグラフ183のTipの移動開始(すなわち、約8000ms乃至16000ms)近辺を、図18に拡大して示す。グラフ183に示されるように、いままで(すなわち、略11000msの直前まで)安定していた接触面積が、急に減ったり、増えたりしている。すなわち、Tipの動き出し直前に、接触面積に、急に増えたりあるいは減少したりする大きな変化が見られる。
また、図17の上から3段目におけるグラフ184乃至グラフ186のTipの移動開始(すなわち、約10000ms乃至11000ms)近辺を、図19に拡大して示す。図19の例においては、グラフ184は、太線で示され、グラフ185は、破線で示され、グラフ186は、一点鎖線で示されている。グラフ184で示されるTipの位置は、円Aで示す辺りから移動を開始しているが、グラフ185に示される圧力中心位置COPxは、円Aで示すTipが移動を開始するよりも略100ms前の円Bで示す辺りから変化を始めている。すなわち、Tipの動き出し直前に、圧力中心位置COPxにも大きな変化が見られる。
以上のTipの動き出し直前における接触面積や圧力中心位置COPxの大きな変化は、粘弾性体の変形によるものと思われ、これらは、センサ単体では得ることができない。したがって、図3に示されるように、センサ21を粘弾性体からなる変形部41と静電容量型圧力センサからなる圧力検出部42の組み合わせで構成することにより、Tipの動き出し直前における接触面積や圧力中心位置の大きな変化の情報を取得することが可能になる。
図20は、図15と同様の実験方法により求められる滑り覚検出データを示している。図20の例においては、Tipを押し込み深さ-1.0mmとなるようにx軸の負方向に荷重をかけたまま、さらに、1.0mmの速度でx軸の正方向に移動させた場合のTipの位置、圧力中心位置COPx、および移動平均COPxMAと、それらから求められる3種類の滑り覚検出値が示されている。
すなわち、上段、中段、下段において、グラフ194は、Tipのx軸方向の位置を示しており、グラフ195は、x軸方向の圧力中心位置COPxを示しており、グラフ196は、移動平均COPxMAを示している。そして、上段において、グラフ197は、式(9)(または式(12)や式(14))においてNを大きくし、式(7)においてthresholdを小さくした低速(Low Speed)の滑り覚検出値を示している。中段において、グラフ198は、Nとthresholdを、上段と下段の中間的な値とした中速(Medium Speed)の滑り覚検出値を示している。また、下段において、グラフ199は、Nを小さく、thresholdを大きくした高速(High Speed)の滑り覚検出値を示している。
グラフ197に示されるように、低速の滑り覚検出値は、静止中は、略0を示し、滑り出してから滑り終わるまで、0.5乃至1.5程度の値を示し、停止後は、±0.25の値を示している。グラフ198に示されるように、中速の滑り覚検出値は、静止中は、略0を示し、滑り出してから滑り終わるまで、0.1乃至0.4程度の値を示し、停止後は、±0.15の値を示している。グラフ199に示されるように、高速の滑り覚検出値は、静止中は、略0を示し、滑り出してから滑り終わるまで、0.02乃至0.06程度の値を示し、停止後は、±0.03の値を示している。
すなわち、高速の滑り覚検出値は、低速の滑り覚検出値に比して微小の値であり、低速の滑りの方が、滑っている間と滑っていない間を容易に検出することができる。
以上の特徴、すなわち、粘弾性体の特性や、圧力値から取得される圧力中心位置などを使用することにより、物体との接触面で発生する滑りを検出することが可能となる。
なお、上記説明においては、x軸について説明を行ったが、y軸の場合も同様に滑りを検出することができる。
次に、すべり制御処理を実行する場合のメイン制御部101とアクチュエータ102のの動作を説明する。
ここではロボットハンドマニピュレータが、図21に示すように、図1の関節部11に相当する縦長の四角柱のハンド部611とハンド部612からなるロボットハンドと、図1の支持部2に相当する支持部601から構成されているものとする。図中右方向がxyz座標系のz軸の正方向を表し、図中下方向がx軸の正方向を表している。
ハンド部611とハンド部612は、支持部601に、図中水平方向に移動可能に取り付けられている。ハンド部611,612の対象物651を把持する側には(すなわち内側には)、所定の大きさのセンサ21がそれぞれ11個縦方向に一列に設けられている。なおセンサ21が11個設けられている部分全体を、センサ613とセンサ614と称する。
ロボットハンドマニピュレータは、ハンド部611とハンド部612の間に把持されている球状(約φ50mm)の対象物651(静止している対象物651)を一定の速度ですべらせながら図中下方向に移動させる(すなわち落下させる)すべり制御処理を実行する。
図21の対象物651とセンサ613との接触部分を拡大した図22に示す、センサ613の変形部41(粘弾性体)を弾性体と仮定すると、センサ613は、センサ613の法線方向に、その弾性体のばね係数kと、対象物651(図中、実線でその一部が示されている対象物651)による変形部41の押し込み深さzから式(11)により得られる力Fzを発生する。なお図中右方向がxyz座標系のz軸の正方向を表し、図中下方向がx軸の正方向を表している。
また、センサ613のせん断方向に、対象物651が移動しようとする力(すなわち落下しようとする力)Fsが発生する。
すなわちセンサ613は、例えば図11および図12を参照して上述したように、法線方向の力Fzとせん断方法の力Fsにより生じる圧力分布により、対象物651の滑り覚検出値(この例の場合、滑りはx軸方向のみに発生するので滑り覚検出値Sdx)を計測することができるので、ロボットハンドマニピュレータは、センサ613により計測される滑り覚検出値Sdxおよびセンサ614により計測される滑り覚検出値Sdxを参照しながら、例えば滑り覚検出値Sdxが一定の量となるように、センサ613またはセンサ614の法線方向の力Fzを調整する処理を行う。
具体的には、簡単のために、図21においてハンド部612が固定され、ハンド部611のみを可動させるものとすると、所定の滑り覚検出値Sdxが得られる圧力分布が得られるように押し込み深さzを調整すべく、ハンド部611の図中左右方向の位置が調整される。
図23および図24には、このすべり制御処理を実行した場合の各種測定データが示されている。
図23の最上段には、ハンド部611の位置と対象物651の位置の関係が示され、中段には、ハンド部611の位置と法線方向の力Fzとの関係を示し、最下段には、対象物651の位置と接触素子数との関係が示されている。
図24の上段には、対象物651の位置と圧力中心位置との関係が示され、下段には、対象物651の位置と滑り覚検出値との関係が示されている。
図23および図24の曲線701は、対象物651の位置を時間経過に沿って表している。静止状態の対象物651は、xyz座標系において、x軸上の少しマイナス側に位置する。
図23の曲線702は、ハンド部611の位置を時間経過に沿って表している。ハンド部611は、ステッピングモータにより支持部601に沿って水平方向に移動されるものとし、ハンド部611の位置は、そのステップ数で表されている。ステップ数が大きな値になることは、図21において右方向に移動したことを意味し、ステップ数が小さな値にあることは、図21において左方に移動したことを意味する。なおこの例の場合、ステップ数が1だけ変化した場合、2μmだけ水平方向に移動する。
図23の曲線703は、法線方向の力Fzを時間経過に沿って表している。なお法線方向の力Fzは、式(10)により求められる。
図23の曲線704は、接触素子数(すなわち接触閾値を超えたセンサエレメント52数)を時間経過に沿って表している。
図24の曲線705は、式(3)(または式(4))で求められる圧力中心位置を時間経過に沿って表している。
図24の曲線706は、滑り覚検出値(この例のx軸方向にのみ滑りが発生するので滑り覚検出値Sdx)を時間経過に沿って表している。この滑り覚検出値は、式(9)により求められる。
図23および図24によれば、時間計測から約2秒経過後にすべり制御処理が開始される。なおこの例の場合目標滑り覚検出値Sdxは1である。すべり制御処理開始から時間計測後約12秒経過後までの間、ハンド部611は、図21中、左側方向(すなわち対象物651を放す方向)に少しずつ移動している。そのハンド部611の移動により、押し込み深さz(図22)が小さくなり、法線方向の力Fzが小さくなるので(式(11))、せん断方向の力Fsが、法線方向の力Fzと静止摩擦係数との乗算値である最大摩擦力を上回ったとき、対象物651の移動(落下)が開始され、対象物651がゆっくり移動する。
その後、対象物651の移動速度が増し、時間計測後約17秒経過後において、目標の滑り覚検出値Sdxが得られている。
このように目標の滑り覚検出値Sdxが得られるようになると、その目標滑り覚検出値Sdxが維持できるように、ハンド部611の位置が調整される。
例えばセンサ613と移動中の対象物651の接触部分との摩擦力が動摩擦力のみと仮定した場合、動摩擦力fcは、式(12)により求められるので、このときの動摩擦力fcが維持できるように、埋め込み深さzが、ハンド部611の位置を変更することによって調整される。
図23の例では、ハンド部611が少しずつ図21において右方向に移動するようにして調整されている。
以上のように、すべり制御処理を行うようにすることにより、対象物651を滑り覚検出値Sdx=1ですべらせながら操作することができる。
なおこの例では、所定の滑り覚検出値(滑り覚検出値Sdx=1)が得られるようにすべり制御処理が実行されたが、滑り覚検出値から所定の滑り速度(滑り覚検出値を所定の時間で除算する結果得られた値)や加速度(例えば滑り覚検出値を時間で微分して得られる値)をさらに算出し、所定の滑り速度や加速度が得られるようにすべり制御処理を実行することもできる。また当然、例えば目標とする滑り覚検出値を0とすれば、滑りが発生しないようにロボットハンドを制御することもできる。
なおここでは図21に示したような簡単なロボットハンドを例として説明したが、図1に示したような多指多関節型ロボットハンドにも当然適用することができる。
以上により、本発明を適用したセンサによれば、ロボットハンドによる物体の安定把持、器用な操りなどで必要な滑りの情報を取得し、その情報を利用して、把持の制御やロボットハンドの指先で把持対象物を滑らせながら扱うような操り制御を行うことができる。
なお、上記説明においては、圧力検出部42が静電容量変化を検出原理として分布圧力値を検出すると説明したが、静電容量変化に限らず、圧力検出部42は、例えば、抵抗値変化を検出原理として分布圧力値を検出するように構成することもできるし、また、分布圧力値がとれるのであれば、感圧ゴムを並べただけのセンサで構成することもできる。
また、上記説明においては、センサ21がロボットハンドマニピュレータの腕や手などに設けられる場合を説明したが、本発明は、各種ロボットの関節機構部、ゲームのコントローラやジョイスティック、様々な入力装置、衝撃吸収装置、生態計測装置、ヘルスケア商品、スポーツ分野などの分野や製品などにも適用することができる。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図25は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するパーソナルコンピュータ301の構成の例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)311は、ROM(Read Only Memory)312、または記憶部318に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)313には、CPU311が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU311、ROM312、およびRAM313は、バス314により相互に接続されている。
CPU311にはまた、バス314を介して入出力インタフェース315が接続されている。入出力インタフェース315には、上述したセンサ21、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部316、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部317が接続されている。CPU311は、入力部316から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU311は、処理の結果を出力部317に出力する。
入出力インタフェース315に接続されている記憶部318は、例えばハードディスクからなり、CPU311が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部319は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
また、通信部319を介してプログラムを取得し、記憶部318に記憶してもよい。
入出力インタフェース315に接続されているドライブ320は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア321が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部318に転送され、記憶される。
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図25に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア321、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM312や、記憶部318を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデムなどのインタフェースである通信部319を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
なお、本明細書において、プログラム記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
1 ロボットハンド, 11 関節部, 21 センサ, 31 入力部, 32 固定部, 33 外部接続部, 41 変形部, 42 圧力検出部, 52 センサエレメント, 53 信号処理部, 101 メイン制御部, 102 アクチュエータ, 121 接触検出部, 122 圧力中心演算部, 123 圧力中心移動演算部, 124 滑り覚検出部, 501 すべり制御部, 502 減算器, 503 すべり操作部, 511 調節部, 512 減算器, 513 駆動部, 514 状態検出部