本発明の第1の発明は、凸部を有する集電体の凸部上に形成された集電体の長手方向に斜立方向が交互に異なる柱状体部をn(n≧2)段に積層して構成された柱状体からなる負極と、正極集電体の両面にリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる正極活物質を含む正極合剤層を有する正極と、正極と負極との間に対向して設けられるセパレータと、を少なくとも備え、負極の柱状体の最上段に設けられた柱状体部の先端が、捲回時の終端方向に向けて斜立した構成を有する。
この構成により、複数の斜立方向の異なる柱状体部からなる柱状体で接合部への応力集中を分散し低減することができる。また、充電時には、柱状体の膨張による負極の集電体に働く水平方向の応力により、電極群を巻き締めるように形状変化し、放電時には、元の電極群形状に戻るだけであるため、電極群を電池ケースの内径寸法と同程度で設計することができる。この結果、負極活物質による電池容量の向上とともに、電極面積の拡大によりさらに電池容量を向上できる。そして、サイクル特性やハイレート特性を大幅に改善した信頼性の高い非水電解質二次電池を実現できる。
本発明の第2の発明は、第1の発明において、柱状体が、捲回時の終端方向に向けて斜立した構成を有する。これにより、充電時の集電体の露出を抑制し、信頼性に優れた非水電解質二次電池を実現できる。
本発明の第3の発明は、第2の発明において、柱状体の最上段に設けられた柱状体部の先端が、捲回時の始端方向に向けて斜立した構成を有する。これにより、先端の柱状体部の斜立方向が制限されないので、設計自由度に優れた非水電解質二次電池を実現できる。
本発明の第4の発明は、第1の発明において、柱状体部を構成する元素の含有比率を、柱状体部の斜立する幅方向において変化させた構成を有する。これにより、負極活物質がリチウムイオンを吸蔵し、膨張した際に柱状体部の斜立する角度を変化させ、隣接する柱状体との接触を抑制することができるため、信頼性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
本発明の第5の発明は、第4の発明において、柱状体部の奇数段と偶数段の元素の含有比率の変化方向が異なる構成を有する。これにより、リチウムイオンの吸蔵による柱状体の膨張方向が偏るのを抑え、柱状体間の空隙を維持できる。
本発明の第6の発明は、第4の発明または第5の発明において、少なくとも充電状態において、柱状体部の斜立方向の中心線と集電体の平面が成す鋭角側の角度が、放電状態の角度より大きくなる構成を有する。これにより、リチウムイオンの吸蔵による柱状体の膨張に対して、柱状体間の空隙を維持し、電極板の変形を抑制できる。
本発明の第7の発明は、第1の発明において、柱状体部として、少なくともリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する理論容量密度が833mAh/cm3を超える活物質を用いた。これにより、高容量の活物質を用いた非水電解質二次電池用負極が得られる。
本発明の第8の発明は、第7の発明において、活物質として、少なくともケイ素を含むSiOxで表される材料を用いた。これにより、電極反応効率が高く、高容量で比較的安価な非水電解質二次電池が得られる。
本発明の第9の発明は、第8の発明において、ケイ素を含む材料のxの値を、柱状体部の斜立方向の中心線と集電体の平面が成す角度に対して、鋭角を形成する側から鈍角を形成する側へ向かって連続的に増加させる構成を有する。
これにより、充放電時における膨張にともなう急激な応力変動による機械的ストレスから柱状体を保護しながら柱状体の斜立角度を可逆的に変化させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における非水電解質二次電池の断面図である。図2(a)は、本発明の実施の形態1における非水電解質二次電池の電極群の捲回する状態を模式的に示す平面図で、図2(b)は図2(a)の負極の構成を詳細に説明する部分拡大断面図である。
図1に示すように、円筒型の非水電解質二次電池(以下、「電池」と記す)は、例えばアルミニウム製の正極リード8を備えた正極1と、その正極1と対向する、例えば銅製の負極リード9を一端に備えた負極2とをセパレータ3を介して、図2(a)に示すように捲回された電極群4を有する。そして、電極群4の上下に絶縁板10a、10bを装着して電池ケース5に挿入し、正極リード8の他方の端部を封口板6に、負極リード9の他方の端部を電池ケース5の底部に溶接する。さらに、リチウムイオンを伝導する非水電解質(図示せず)を電池ケース5内に注入し、電池ケース5の開放端部をガスケット7を介して封口板6にかしめた構成を有する。また、正極1は正極集電体1aと正極活物質を含む正極合剤層1bから構成されている。
さらに、以下で詳細に説明するが、負極2は図2(b)に示すように、凹部12と凸部13を有する負極集電体11(以下、「集電体」と記す)と、少なくとも凸部上に斜立して離散的に設けられたn(n≧2)段に柱状体部を積層して、例えばつづら折り形状の柱状体15とで構成されている。このとき、柱状体15を構成する柱状体部のうち、柱状体の最上段に設けられた柱状体部の先端が、電極群を形成する捲回時の終端方向(巻き終わり方向)に向けて斜立するように柱状体部を設けている。また、柱状体部は、集電体11の凸部13上に形成された元素の含有比率が集電体の長手方向に順次変化させて形成されている。そして、n(n≧2)段に積層して構成された柱状体部は、その奇数段目と偶数段目の元素の含有比率の変化方向が異なるように形成されている。
ここで、正極合剤層1bは、LiCoO2やLiNiO2、LiMn2O4、またはこれらの混合あるいは複合化合物などの含リチウム複合酸化物を正極活物質として含む。正極活物質としては上記以外に、LiMPO4(M=V、Fe、Ni、Mn)の一般式で表されるオリビン型リン酸リチウム、Li2MPO4F(M=V、Fe、Ni、Mn)の一般式で表されるフルオロリン酸リチウムなども利用可能である。さらにこれら含リチウム化合物の一部を異種元素で置換してもよい。金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。
正極合剤層1bは、さらに導電剤と結着剤とを含む。導電剤としては、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料を用いることができる。
また結着剤としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
正極1に用いる正極集電体1aとしては、アルミニウム(Al)、炭素、導電性樹脂などが使用可能である。また、このいずれかの材料に、カーボンなどで表面処理してもよい。
非水電解質には有機溶媒に溶質を溶解した電解質溶液や、これらを含み高分子で非流動化されたいわゆるポリマー電解質層が適用可能である。少なくとも電解質溶液を用いる場合には正極1と負極2との間にポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、アミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミドなどからなる不織布や微多孔膜などのセパレータ3を用い、これに電解質溶液を含浸させるのが好ましい。またセパレータ3の内部あるいは表面には、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニアなどの耐熱性フィラーを含んでもよい。セパレータ3とは別に、これらの耐熱性フィラーと、正極1および負極2に用いるのと同様の結着剤とから構成される耐熱層を設けてもよい。
非水電解質材料としては、各活物質の酸化還元電位などを基に選択される。非水電解質に用いるのが好ましい溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiNCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiF、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウムなどのホウ酸塩類、(CF3SO2)2NLi、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、(C2F5SO2)2NLi、テトラフェニルホウ酸リチウムなど、一般にリチウム電池で使用されている塩類を適用できる。
さらに上記塩を溶解させる有機溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシメタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、トリメトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、スルホラン、3−メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、エチルエーテル、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、フルオロベンゼンなどの1種またはそれ以上の混合物など、一般にリチウム電池で使用されているような溶媒を適用できる。
さらに、ビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、酢酸ビニル、エチレンサルファイト、プロパンサルトン、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジベンゾフラン、2,4−ジフルオロアニソール、o−ターフェニル、m−ターフェニルなどの添加剤を含んでいてもよい。
なお、非水電解質は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどの高分子材料の1種またはそれ以上の混合物などに上記溶質を混合して、固体電解質として用いてもよい。また、上記有機溶媒と混合してゲル状で用いてもよい。さらに、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、Li3PO4−Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などの無機材料を固体電解質として用いてもよい。ゲル状の非水電解質を用いる場合、ゲル状の非水電解質をセパレータの代わりに正極1と負極2との間に配置してもよい。または、ゲル状の非水電解質は、セパレータ3に隣接するように配置してもよい。
そして、負極2の集電体11は、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンなどの金属箔、炭素や導電性樹脂の薄膜などが用いられる。さらに、カーボン、ニッケル、チタンなどで表面処理を施してもよい。
また、負極2の柱状体15を構成する柱状体部としては、ケイ素(Si)やスズ(Sn)などのようにリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する理論容量密度が833mAh/cm3を超える活物質を用いることができる。このような活物質であれば、単体、合金、化合物、固溶体および含ケイ素材料や含スズ材料を含む複合活物質のいずれであっても、本発明の効果を発揮させることは可能である。すなわち、含ケイ素材料として、Si、SiOx(0<x≦2.0)、またはこれらのいずれかにAl、In、Cd、Bi、Sb、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。含スズ材料としてはNi2Sn4、Mg2Sn、SnOx(0<x≦2.0)、SnO2、SnSiO3、LiSnOなどを適用できる。
これらの材料は単独で負極活物質を構成してもよく、また複数種の材料により負極活物質を構成してもよい。上記複数種の材料により負極活物質を構成する例として、Siと酸素と窒素とを含む化合物やSiと酸素とを含み、Siと酸素との構成比率が異なる複数の化合物の複合物などが挙げられる。
以下、本発明の実施の形態1における非水電解質二次電池の負極(以下、「負極」と記す場合がある)および負極を用いた二次電池の動作について、図3と図4を用いて詳細に説明する。なお、以下では、例えば少なくともケイ素を含むSiOx(0≦x≦2.0)で表される負極活物質(以下、「活物質」と記す)を例に説明する。
図3(a)は、本発明の実施の形態1における負極の構造を示す部分断面模式図で、図3(b)は、同実施の形態の活物質の幅方向のxの値の変化を説明する模式図である。また、図4(a)は本発明の実施の形態1における負極を用いた二次電池の充電前の状態を示す部分断面模式図であり、図4(b)は同実施の形態における負極を用いた二次電池の充電後の状態を示す部分断面模式図である。
図3(a)に示すように、例えば銅箔などの導電性金属材料よりなる集電体11の少なくとも上面には凹部12と凸部13が設けられている。そして、凸部13の上部には、負極2を構成する、SiOxで表される活物質が、例えばスパッタリング法または真空蒸着法などを用いた斜方蒸着法により斜立してn段(n≧2)の柱状体部からなる柱状体15の形状で形成されている。この時、柱状体15は、例えば複数の柱状体部でつづら折りの形状で形成されている。
以下で、n=3からなる柱状体部151、152、153が積層して構成された柱状体15を例に、具体的に説明するが、n≧2であれば、これに限られないことはいうまでもない。
まず、柱状体15の柱状体部151は、少なくとも集電体11の凸部13の上で柱状体部151の斜立方向の中心線(A)と集電体11の平面(AA−AA)とが交差角度(以下、「斜立角度」と記す)θ1を成すように形成されている。そして、柱状体15の柱状体部152は、柱状体部151の上に、その斜立方向の中心線(B)と集電体11の平面(AA−AA)とが斜立角度θ2を成すように形成されている。さらに、柱状体15の柱状体部153は、柱状体部152の上に、その斜立方向の中心線(C)と集電体11の平面(AA−AA)とが斜立角度θ3を成すように形成されている。なお、斜立角度θ1、θ2、θ3は、隣接する柱状体15が、接触しなければ、同じ角度でも異なる角度であってもよい。
また、柱状体15を構成する柱状体部151、152、153は、図3(b)で模式的に示すように、例えば奇数段目の柱状体部151、153と偶数段目の柱状体部152の幅方向の元素の含有比率、例えばxの値の変化する方向が異なるように設けられる。すなわち、柱状体部151、152、153の鋭角を成す斜立角度側から、鈍角を成す側に向かって、xの値を順次大きくするものである。なお、図3(b)では、xの値が直線的に変化するように示しているが、これに限られない。ここで、幅方向とは、例えば負極2の捲回方向である。
そして、集電体11の凸部13の上に斜立して3段でつづら折り形状に形成された柱状体15は、非水電解質二次電池の充電時、リチウムイオンの吸蔵により、その体積が膨張する。この時、体積の膨張とともに、以下に図6を用いて詳細にその動作を説明するように、柱状体15の柱状体部151、152、153の斜立角度θ1、θ2、θ3が大きくなることにより、結果的に柱状体15は、例えば立ち上がるように変形する。逆に、放電時、リチウムイオンの放出により、図4(a)に示すように、その体積が収縮するとともに、斜立角度θ1、θ2、θ3が小さくなり、初期のつづら折りの柱状体15に近くなる。
また、図4(a)に示すように、充電開始状態において、3段の柱状体部を有する柱状体15は、集電体11の凸部13の上に斜立しているため、柱状体15を正極17からの投影で見た場合、正極17に対して集電体11の凹部12を柱状体15で部分的に遮蔽した状態となる。したがって、充電時に正極17から放出されたリチウムイオンは、負極の柱状体15によって集電体11の凹部12への直接の到達が遮られ、そのほとんどが柱状体15に吸蔵されるため、リチウム金属の析出が抑制される。そして、リチウムイオンの吸蔵にともなって、3段の柱状体部の斜立角度が大きくなる。なお、柱状体は、充電完了時において、斜立角度が90°以下で、つづら折り形状であってもよいが、望ましくは斜立角度90°に設計することが好ましい。
さらに、図4(b)に示すように、完全充電された電池を放電する場合、充電により膨張した3段の柱状体部からなる柱状体15は、集電体11に対して立ち上がった状態となる。そのため、隣接する柱状体15間の電解液18は、柱状体15間を容易に移動することができる。そして、柱状体15間にある電解液18は、柱状体15間の空隙を介して容易に対流できるので、リチウムイオンの移動などが妨げられない。その結果、ハイレート放電や低温時の放電特性を大幅に改善できる。
このとき、完全に充電された柱状体15は、リチウムイオンの吸蔵により、膨張し、電極厚み方向の応力を受ける。従来は、1段の斜立した柱状体の場合、その応力がモーメントとして集電体11の凸部13と柱状体との接合部に集中し、接合部が剥離しやすかった。また、膨張により電極群に膨れを生じるが、電池ケース5で電極群の径が規定されているため、この応力を緩和するために電極群が変形するという問題があった。
そこで、図5を用いて、本発明の実施の形態1における負極を用いることにより、電極群の形状変化に対する効果について説明する。
図5の矢印で示すように、柱状体の膨張によりセパレータや正極に働く膨張応力は、柱状体に対して、その反力と水平分力の力に分解されて加わることになる。
すなわち、電極群4のセパレータ3と接触した負極の柱状体15は、セパレータ3に膨張応力を加え、その反力が柱状体15自身に加わる。しかし、その反力は、つづら折り状に設けられた柱状体部間の屈曲点で緩和するばね効果や、モーメントを小さくした構成(柱状体部の長さが短い)により接合部への応力集中が低減される。この結果、剥離や変形の起こりにくい信頼性やサイクル特性などに優れた非水電解質二次電池が得られる。
一方、柱状体は膨張応力の水平分力により、電極群の負極は捲回始端方向に移動する。これにより、電極群は負極の膨張により、巻き締まり、電極群の外径は負極の膨張と巻き締まりにより相殺されて変化しにくい。その結果、電極群の変形を抑制することができる。さらに、電極群は電池ケースの内径とほぼ等しく、リチウムイオンの吸蔵・放出による寸法変化も少なくできる。そのため、二次電池の落下や衝撃による電池ケースと電極群との相対的な移動を防止して信頼性の高い非水電解質二次電池を実現できる。
以下に、上記柱状体15が、リチウムイオンの吸蔵・放出により、斜立角度が可逆的に変化するメカニズムについて、図6を用いて説明する。なお、本発明は柱状体がn段で構成されるものであるが、説明を容易にするために1つの柱状体部からなる柱状体を例に説明する。しかし、n段構成でも同様のメカニズムで機能することはいうまでもない。
図6(a)は本発明の実施の形態1における負極の柱状体の充電前の状態を示す部分断面模式図であり、図6(b)は同実施の形態における負極の柱状体の充電後の状態を示す部分断面模式図である。
図6に示す柱状体15は、図3(b)に示すように、柱状体15の中心線(A−A)と集電体11の平面(AA−AA)とが鋭角を形成する下部側15aから柱状体15の鈍角を形成する上部側15bへ向けて、xの値が連続的に大きくなるように、SiOxからなる活物質の元素の含有比率を変化させている。そして、一般にSiOxからなる活物質は、xの値が0〜2に増加するにしたがって、リチウムイオンの吸蔵による膨張量が小さくなる。
つまり、図6(a)に示すように、充電時にリチウムイオンを吸蔵することによる膨張により発生する膨張応力は、柱状体15の下部側15aの膨張応力F1から上部側15bの膨張応力F2へと連続的に小さくなる。その結果、柱状体15の中心線(A−A)と集電体11の平面(AA−AA)とが成す斜立角度θが、θ10からθ11へと変化し、図6(a)の矢印で示す方向に、柱状体15が起き上がることになる。逆に、放電時にはリチウムイオンを放出することによる収縮により膨張応力は小さくなる。その結果、柱状体15の斜立角度θが、θ11からθ10へと変化し、図6(b)の矢印で示す方向に、柱状体15が変形することになる。
以上により、柱状体15は、リチウムイオンの吸蔵・放出により、その斜立角度が可逆的に変化することになる。
以下、本発明の実施の形態1における非水電解質二次電池用負極の柱状体の製造方法について、図7と図8を用いて説明する。
図7は、本発明の実施の形態1における非水電解質二次電池用負極のn=3段の柱状体部からなる柱状体の形成方法を説明する部分断面模式図であり、図8はその製造装置を説明する模式図である。
ここで、図8に示す柱状体を形成する製造装置40は、真空容器46中に、巻出し・巻取りロール41、成膜ロール44a、44b、巻取り・巻出しロール45、蒸着ソース43a、43b、マスク42と酸素ノズル48a、48bを備え、真空ポンプ47で減圧される構成を有している。なお、本製造装置40は、集電体の片面にn段の柱状体部を形成して柱状体を作製する一例を示したものであるが、実際には、集電体の両面に柱状体を作製する装置構成が一般的である。
まず、図7(a)と図8に示すように、厚さ30μmの帯状電解銅箔を用いて、その表面にメッキ法で凹部12と凸部13を形成し、凸部13が、例えば高さ5μm、幅10μm、間隔20μmで形成された集電体11を準備する。そして、図8に示す巻出し・巻取りロール41と巻取り・巻出しロール45間に集電体11が準備される。
つぎに、図7(b)と図8に示すように、蒸着ユニット(蒸着ソース、るつぼ、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いて、集電体11の法線方向に対して角度ω1(例えば55°)の位置に設けられた蒸着ソース43aから、例えばSi(スクラップシリコン:純度99.999%)などの活物質を蒸発させ、集電体11の凸部13上に、図面中の矢印方向から入射させる。同時に、酸素(O2)が酸素ノズル48aから集電体11に向けて供給される。このとき、例えば真空容器46の内部は、圧力3.5Paの酸素雰囲気とした。そして、酸素ノズル48aは、図8に示すように蒸着ソース43aとは異なる位置に設置されている。また、成膜ロール44aに送り出された集電体11は、マスク42で成膜範囲が制限された領域で、Siと酸素の結合したSiOxの活物質が凸部13上に角度θ1で、所定の高さ(厚さ)、例えば7μmに1段目の柱状体部151が形成される。このとき、蒸着ソース43aおよび酸素ノズル48aと集電体11の凸部との位置関係により、成膜されるSiOxのxの値が集電体11の移動方向に対して順次変化した状態で柱状体15が形成される。例えば、図7(b)においては、図面中の左側のxの値は小さく、図面中の右側のxの値は大きくなる。
つぎに、図7(c)と図8に示すように、凸部上に1段目の柱状体部151が形成された集電体11を成膜ロール44bに順次送り出す。そして、成膜ロール44bと対向して設けられた蒸着ユニット(蒸着ソース、るつぼ、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いて、集電体11の法線方向に対して角度ω2(例えば55°)の位置に設けられた蒸着ソース43bから、例えばSi(スクラップシリコン:純度99.999%)などの活物質を蒸発させ、集電体11の1段目の柱状体部151に、図面中の矢印方向から入射させる。同時に、酸素(O2)が酸素ノズル48bから集電体11の1段目の柱状体部151に向けて供給される。このとき、酸素ノズル48bは、図8に示すように蒸着ソース43bとは異なる位置に設置されている。そして、成膜ロール44bに送り出された集電体11は、マスク42で成膜範囲が制限された領域で、Siと酸素の結合したSiOxの活物質が1段目の柱状体部151上に角度θ2で、所定の高さ(厚さ)、例えば7μmに2段目の柱状体部152が形成される。このとき、1段目の柱状体部151と同様に、蒸着ソース43bおよび酸素ノズル48bと集電体11の1段目の柱状体部151との位置関係により、成膜されるSiOxのxの値が集電体11の移動方向に対して順次変化した状態で形成される。そして、例えば図7(c)の2段目の柱状体部152においては、図面中の右側のxの値は小さく、図面中の左側のxの値は大きくなる。これにより、1段目の柱状体部151と2段目の柱状体部152とは、xの値の変化方向が集電体の移動方向に対して、反対に形成されるとともに、斜立する角度と斜立方向が異なって作製される。
つぎに、図7(d)と図8に示すように、巻出し・巻取りロール41と巻取り・巻出しロール45を逆に駆動して、2段目の柱状体部152が形成された集電体11を成膜ロール44aに戻し、図7(b)の工程と同様にして、2段目の柱状体部152の上に、3段目の柱状体部153を所定の高さ(厚み)、例えば7μmで形成する。このとき、図7(d)に示す3段目の柱状体部153は、図面中の左側のxの値は小さく、図面中の右側のxの値は大きくなる。これにより、2段目の柱状体部152と3段目の柱状体部153とは、xの値の変化方向が集電体の移動方向に対して、反対に形成されるとともに、斜立する角度と斜立方向が異なって作製される。上記の場合、1段目の柱状体部151と3段目の柱状体部153とは同じ方向に形成されることになる。これにより、3段の柱状体部からなる柱状体15を有する負極が作製される。
なお、上記ではn=3段の柱状体部からなる柱状体を例に説明したが、これに限られない。例えば、上記図7(b)と図7(c)の工程を繰り返すことにより、任意のn段(n≧2)の柱状体部からなる柱状体を形成できる。
また、上記製造装置40では、巻出し・巻取りロール41と巻取り・巻出しロール45を反転して、柱状体を作製する例で説明したが、これに限られず各種装置構成が可能である。例えば、図8に示した成膜ロールをシリーズに複数個配置して、集電体を一方方向に移動しながらn段の柱状体を作製してもよい。
また、上記では集電体の片面に柱状体を形成する例で説明したが、実際には、集電体の両面の凸部上に柱状体が形成されるものである。この場合、製造装置の構成を変えることにより、集電体の一方の面に柱状体を形成した後、他方の面に柱状体を形成してもよく、さらに両面同時に柱状体を形成してもよい。これにより、生産性よく負極を作製できる。
(実施の形態2)
図9(a)は本発明の実施の形態2における負極の構造を示す部分拡大断面図で、図9(b)は本発明の実施の形態2の各柱状体部を構成する活物質の幅方向のxの値の変化を説明する模式図である。なお、本実施の形態においても、図1と同様の円筒型の電池を用いるので、詳細な説明は省略する。また、正極合剤層、正極集電体、負極集電体や柱状体部などの構成材料も、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
本実施の形態は、n=7段の柱状体部からなる柱状体全体を、集電体の凸部上に、かつ負極の捲回時の終端方向に斜立して形成した点で、実施の形態1とは異なる。
すなわち、図9(a)に示すように、例えば銅箔などの導電性金属材料よりなる集電体11の少なくとも上面には凹部12と凸部13が設けられている。そして、凸部13の上部には、柱状体250を構成する、SiOxで表される活物質が、例えばスパッタリング法または真空蒸着法などを用いた斜方蒸着法により、折り畳まれた状態で、n(n≧2)段の柱状体部からなる柱状体250の形状で形成されている。図9(a)では、例えば柱状体部251〜柱状体部257のn=7段に折り畳まれて形成された状態を示している。このとき、柱状体250を構成する奇数段目と偶数段目の柱状体部は、図面中のBB線で示すように異なる方向で斜立して形成される。同時に、奇数段目と偶数段目の柱状体部の高さを変えることにより、柱状体250全体が斜立させて形成される。例えば、図9(a)においては、捲回時の終端方向に斜立させるために、奇数段目の柱状体部251、253、255、257の高さを、偶数段目の柱状体部252、254、256よりも長くする。これにより、柱状体250全体および先端の柱状体部257は、図面中のBB線で示すように捲回時の終端方向に斜立した状態で形成される。
また、柱状体250を構成する柱状体部251〜柱状体部257は、図9(b)で模式的に示すように、例えば奇数段目の柱状体部251、253、255、257と偶数段目の柱状体部252、254、256の幅方向の元素の含有比率、例えばxの値の変化する方向が異なるように設けられる。すなわち、柱状体部251〜柱状体部257の鋭角を成す斜立角度側から、鈍角を成す側に向かって、xの値を順次大きくするものである。なお、図9(b)では、xの値が直線的に変化するように示しているが、これに限られない。
上記構成の負極を用いた非水電解質二次電池の電極群について、図10を用いて説明する。なお、基本的には図2で示した実施の形態1と同様であるので簡単に説明する。
図10(a)は、本発明の実施の形態2における非水電解質二次電池の電極群の捲回する状態を模式的に示す平面図で、図10(b)は図10(a)の負極の構成を詳細に説明する部分拡大断面図である。また、図11(a)は本発明の実施の形態2における負極を用いた二次電池の充電前の状態を示す部分断面模式図であり、図11(b)は同実施の形態における負極を用いた二次電池の充電後の状態を示す部分断面模式図である。
図10(a)に示すように、正極リード8を備えた正極1と、その正極1と対向する負極リード9を一端に備えた負極2とをセパレータ3を介して、捲回して電極群4を構成している。そして、負極2は図10(b)に示すように、凹部12と凸部13を有する集電体11と、少なくとも凸部上に斜立して離散的に設けられたn=7段に柱状体部を折り畳んで積層した形状の柱状体250とで構成されている。このとき、柱状体250を構成する各柱状体部のうち、柱状体250の最上段に設けられた柱状体部257の先端が、電極群を形成する捲回時の終端方向(巻き終わり方向)に向けて斜立するように柱状体部257を設けている。
そして、集電体11の凸部13の上に斜立してn=7段の折り畳まれた形状で形成された柱状体250は、非水電解質二次電池の充電時、リチウムイオンの吸蔵により、その体積が膨張する。この時、体積の膨張とともに、以下に図11を用いて詳細にその動作を説明するように、柱状体250の柱状体部251〜柱状体部257の各斜立角度が大きくなる。その結果、柱状体250は、例えば立ち上がるように変形する。逆に、放電時、リチウムイオンの放出により、図11(a)に示すように、その体積が収縮するとともに、各斜立角度が小さくなり、初期の折り畳まれた形状の柱状体250に近くなる。
また、図11(a)に示すように、充電開始状態において、n=7段の柱状体部を有する柱状体250は、集電体11の凸部13の上に斜立しているため、柱状体250を正極17からの投影で見た場合、正極17に対して集電体11の凹部12を柱状体250で部分的に遮蔽した状態となる。したがって、充電時に正極17から放出されたリチウムイオンは、負極の柱状体250によって集電体11の凹部12への直接の到達が遮られ、そのほとんどが柱状体250に吸蔵されるため、リチウム金属の析出が抑制される。そして、実施の形態1で図6を用いて説明したように、リチウムイオンの吸蔵にともなって、7段の各柱状体部の斜立角度が大きくなる。
さらに、図11(b)に示すように、完全充電された電池を放電する場合、充電により膨張した7段の柱状体部からなる柱状体250は、集電体11に対して鉛直方向に立ち上がった状態となる。そのため、隣接する柱状体250間の電解液18は、柱状体250間を容易に移動することができる。そして、柱状体250間にある電解液18は、柱状体250間の空隙を介して容易に対流できるので、リチウムイオンの移動などが妨げられない。その結果、ハイレート放電や低温時の放電特性を大幅に改善できる。
さらに、完全に充電された柱状体250は、実施の形態1において図5を用いて説明したように、リチウムイオンの吸蔵により膨張し、電極厚み方向の応力を受ける。このとき、柱状体250には、応力がその反力と水平分力の力に分解されて加わることになる。
このとき、柱状体250自身に加わる反力は、折り畳まれた形状に設けられた各柱状体部間で緩和されるとともに、各柱状体間の高さを小さくすることによりモーメントを小さくして接合部への応力集中を低減できる。この結果、剥離や変形の起こりにくい信頼性やサイクル特性などに優れた非水電解質二次電池が得られる。
一方、柱状体250に加わる水平分力は、電極群の負極を捲回始端方向に移動させ、電極群を巻き締めることになる。これにより、充電時のリチウムイオンの吸蔵による負極の膨張を相殺して、電極群の外径を変化しにくくする。その結果、電極群の変形が抑制できる。また、リチウムイオンの吸蔵・放出による寸法変化も小さくできるので、電極群の外形を電池ケースの内径とほぼ等しくできる。そのため、二次電池の落下や衝撃による電池ケースと電極群との相対的な移動を防止して信頼性の高い非水電解質二次電池を実現できる。
なお、本発明の実施の形態2における非水電解質二次電池用負極の柱状体250の製造方法は、基本的に、図7と図8を用いて説明と実施の形態1の負極と同様であるため説明は省略する。つまり、本実施の形態の負極は実施の形態1の負極とは、柱状体を構成する柱状体部の段数と、柱状体の斜立する方向の柱状体部の高さを、反対方向の柱状体部より高く形成する点で異なるもので、製造方法は同様である。
なお、上記実施の形態では、n=7段の柱状体部からなる柱状体を例に説明したが、これに限られない。例えば、n=7段以上で、n=10段〜n=100段であってもよく、要求される容量、サイクル特性や信頼性に応じて任意に設計できる。
以下に、本発明の実施の形態2における負極の別の例について、図12を用いて説明する。図12は、本発明の実施の形態2における負極の別の例の構造を示す部分拡大断面図である。
図12に示すように、本実施の形態の負極は柱状体350の最上段の柱状体部358の斜立方向を、CC線で示す電極群の捲回時の始端方向に斜立させた点で、上記負極の構造とは異なる。なお、正極合剤層、正極集電体、負極集電体、柱状体部などの構成材料や製造方法などは、上記実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
すなわち、図12に示すように、集電体11は、凹部12と凸部13が設けられ、その凸部13の上部には、SiOxで表される活物質が、折り畳まれた状態で、n=8段の柱状体部351〜柱状体部358からなる柱状体350の形状で形成されている。このとき、柱状体350を構成する奇数段目の柱状体部351、353、355、357と偶数段目の柱状体部352、354、356、358は、図面中のCC線で示すように異なる方向で斜立して形成される。
これにより、柱状体350全体を捲回時の終端方向に斜立させることで、柱状体350の最上段の柱状体部358の斜立方向が制限されず任意とできる。そのため、設計自由度の高い負極を実現できる。
なお、上記実施の形態では、n=8段の柱状体部からなる柱状体を例に説明したが、これに限られない。例えば、n=8段以上で、n=10段〜n=100段であってもよく、要求される容量、サイクル特性や信頼性に応じて任意に設計できる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて、用いる材料などを変更して実施することが可能である。
(実施例1)
(1)負極の作製
負極の柱状体は、図8に示す製造装置を用いて作製した。
まず、集電体として、メッキ法を用いて、その表面に凸部を間隔20μmで形成した厚さ30μmの帯状電解銅箔を用いた。
そして、負極の活物質材料としてSiを用い、蒸着ユニット(蒸着ソース、るつぼ、電子ビーム発生装置をユニット化したもの)を用いて、純度99.7%の酸素ガスを酸素導入ノズルから真空容器内に導入して、SiOxからなる幅方向にxの値を変化させて1段目の柱状体部を作製した。この時、真空容器の内部は、圧力3.5Paの酸素雰囲気とした。また、蒸着時には、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させ、蒸着ソースに照射した。なお、蒸着ソースには半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン:純度99.999%)を用いた。
また、柱状体部は、集電体が移動する所定の傾斜角度を調整して、角度ω1、ω2の平均角度が60°になるようにし、約8nm/sの成膜速度で形成した。これにより、1段目の柱状体部(例えば、高さ7μm)を形成した。同様に、実施の形態1で説明した形成方法で、2段目と3段目の柱状体部(例えば、高さ7μm)を形成し、3段からなる柱状体を形成した。さらに、同様に、集電体の他方の面に柱状体を形成した。
なお、負極中の柱状体の集電体の平面に対する角度を走査型電子顕微鏡(日立製S−4700)を用い、断面観察により評価したところ各段の柱状体部の斜立角度θは約41°であった。このとき、形成した柱状体の厚み(高さ)は、法線方向に対して、21μmで形成されていた。
また、EPMAを用い負極の柱状体を構成する各段の柱状体部の断面方向の線分布測定で酸素分布を調べたところ、1段目の柱状体部および2段目の柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、1段目の柱状体部と2段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記により、少なくとも各柱状体部の斜立する幅方向で、酸素元素の含有比率の異なる柱状体を備えた負極を得た。
その後、負極表面に真空蒸着法によって12μmのLi金属を蒸着した。さらに、負極の内周側に、正極と対向しないCu箔に30mmの露出部を設け、Ni製の負極リードを溶接した。
(2)正極の作製
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を有する正極を、以下の方法で作製した。
まず、正極活物質であるLiCoO2粉末を93重量部と、導電剤であるアセチレンブラックを4重量部とを混合した。得られた粉末に結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業(株)製の品番♯1320)を、PVDFの重量が3重量部となるように混合した。得られた混合物に適量のNMPを加えて、正極合剤用ペーストを調製した。得られた正極合剤用ペーストをアルミニウム(Al)箔からなる正極集電体(厚み15μm)上にドクターブレード法を用いて塗布して、正極合剤層の密度が3.5g/cc、厚み140μmとなるように圧延し、85℃で充分に乾燥させた。これを、幅57mm、長さ800mmに裁断して正極を得た。正極の内周側で負極と対向しないAl箔に30mmの露出部を設け、Al製の正極リードを溶接した。
(3)電池の作製
上記のようにして作製した負極と正極を、厚みが20μmのポリプロピレン製セパレータを介して、捲回して電極群を構成した。そして、得られた電極群を片側のみ開口した円筒型電池用の電池ケース(材質:鉄/Niメッキ、直径18mm、高さ65mm)に挿入し、電池ケースと電極群との間に絶縁板を配置して負極リードと電池ケースを溶接した後、正極リードと封口板とを溶接して電池を作製した。
得られた電池を真空中で60℃に加熱して乾燥した後、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=2:3:3(体積比)で含む非水溶媒に1.2mol/dm3のLiPF6を溶解させた電解液を5.8g注入して、封口板を電池ケースでかしめることにより封止し、非水電解質二次電池を作製した。これを、サンプル1とする。
(実施例2)
柱状体を、n=5段で各柱状体部の高さを約4μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル2とした。
(実施例3)
柱状体を、n=10段で各柱状体部の高さを約2μmで、1段目の柱状体部の斜立方向を逆にして形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル3とした。
(実施例4)
柱状体は、角度ω1、ω2の平均角度が50°になるようにした以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約31°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、1段目および3段目の柱状体部と2段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル4とした。
(実施例5)
真空容器の内部の圧力を1.7Paの酸素雰囲気で、各段の柱状体部の厚みを8μmに形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は24μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、1段目および3段目の柱状体部と2段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.3であった。
その後、負極表面に真空蒸着法によって14μmのLi金属を蒸着した。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル5とした。
(実施例6)
柱状体を、n=7段で奇数段目の各柱状体部の高さを約3.5μm、偶数段目の各柱状体部の高さを約2.5μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°、柱状体全体の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は21.5μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル6とした。
(実施例7)
柱状体を、n=8段で奇数段目の各柱状体部の高さを約3μm、偶数段目の各柱状体部の高さを約2μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。そして、柱状体の最上段の柱状体部は、捲回時の始端方向に斜立して形成した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°、柱状体全体の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル7とした。
(実施例8)
柱状体を、n=35段で奇数段目の各柱状体部の高さを約0.7μm、偶数段目の各柱状体部の高さを約0.5μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°、柱状体全体の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は21.1μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル8とした。
(実施例9)
柱状体を、n=40段で奇数段目の各柱状体部の高さを約0.6μm、偶数段目の各柱状体部の高さを約0.4μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、負極を作製した。そして、柱状体の最上段の柱状体部は、捲回時の始端方向に斜立して形成した。
なお、各段の柱状体部の斜立角度は約41°、柱状体全体の斜立角度は約41°であり、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmであった。
また、EPMAより、各柱状体部の幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。そして、酸素濃度(xの値)の増加方向は、奇数段目の柱状体部と偶数段目の柱状体部では、反対方向であった。この時のxの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル9とした。
(比較例1)
高さ(厚み)20μmで1段に、先端が捲回終端方向に斜立して柱状体を構成した以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
なお、負極中の柱状体の集電体の平面に対する角度を走査型電子顕微鏡(日立製S−4700)を用い、断面観察により評価したところ柱状体の斜立角度は約41°であった。このとき、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmで形成されていた。
また、EPMAを用い負極の柱状体を構成する断面方向の線分布測定で酸素分布を調べたところ、幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。xの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC1とする。
(比較例2)
高さ(厚み)20μmで1段に、先端が捲回始端方向に斜立して柱状体を構成した以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
なお、負極中の柱状体の集電体の平面に対する角度を走査型電子顕微鏡(日立製S−4700)を用い、断面観察により評価したところ柱状体の斜立角度は約41°であった。このとき、形成した柱状体の厚み(高さ)は20μmで形成されていた。
また、EPMAを用い負極の柱状体を構成する断面方向の線分布測定で酸素分布を調べたところ、幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。xの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC2とする。
(比較例3)
柱状体を、n=3段で各柱状体部の高さを約7μmで構成した以外は、比較例2と同様の方法で負極を作製した。
なお、負極中の柱状体の集電体の平面に対する角度を走査型電子顕微鏡(日立製S−4700)を用い、断面観察により評価したところ柱状体の斜立角度は約41°であった。このとき、形成した柱状体の厚み(高さ)は21μmで形成されていた。
また、EPMAを用い負極の柱状体を構成する断面方向の線分布測定で酸素分布を調べたところ、幅方向において、斜立角度θ側から(180−θ)方向において酸素濃度(xの値)が連続的に増加していた。xの範囲は、0.1〜2で、平均0.6であった。
上記負極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC3とする。
以上のように作製した各非水電解質二次電池に対し、以下に示す評価を行った。
(電池容量の測定)
各非水電解質二次電池を、25℃環境温度において以下の条件で充放電した。
まず、設計容量(2800mAh)に対し、時間率0.7Cの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電し、4.2Vの定電圧で時間率0.05Cの電流値に減衰させる定電圧充電を行った。その後、30分間休止した。
その後、時間率0.2Cの電流値で、電池電圧が2.5Vに低下するまで定電流で放電した。そして、この時の放電容量を電池容量とした。
(容量維持率)
各非水電解質二次電池を、25℃環境温度において、以下の条件で充放電を繰り返した。
まず、設計容量(2800mAh)に対し、時間率0.5Cの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電し、4.2Vの定電圧で充電電流が時間率0.05Cの電流値に低下するまで充電した。そして、充電後30分間休止した。
その後、時間率1.0Cの電流値で電池電圧が2.5Vに低下するまで定電流で放電した。そして、放電後30分間休止した。
上記充放電サイクルを1サイクルとしてそれを300回繰り返した。そして、1サイクル目の放電容量に対する、例えば100サイクル目や300サイクル目などの各サイクル目の放電容量の割合を、百分率で表した値を容量維持率(%)とした。つまり、容量維持率が100に近いほど充放電サイクル特性が優れていることを示す。
(電極群の群径の測定)
まず、充放電サイクルを行った電池を満充電状態で、CT(コンピュータ・トモグラフィー)スキャンにより電極群の変形の状況を確認した。
そして、CTスキャン画像の処理により、電極群の群径を測定した。この時、はじめに電極群の群径として17.50mmを有する二次電池を選別して、負極リードの位置を基準とし測定し、100サイクル目に対する300サイクル目の群形の変化を百分率で示した。
以下に、サンプル1〜サンプル9とサンプルC1〜サンプルC3の諸元と評価結果を(表1)および(表2)に示す。
また、図13に、充放電サイクル特性の一例としてサンプル1とサンプルC1の評価結果を示す。
(表1)、(表2)と図13に示すように、サンプル1とサンプルC1とを比較すると、サイクル初期の100サイクル目程度では、容量維持率の差がなかった。しかし、300サイクル目では、サンプル1は81%程度の容量維持率を示したのに対して、サンプルC1は容量維持率が48%程度まで、サンプルC2は40%程度まで低下している。
また、サンプルC2以外の電池には顕著な電極群の変形は見られなかった。しかし、評価後の電池を分解して負極を観察すると、柱状体が1段の柱状体部で構成されたサンプルC1では柱状体の剥離が多く見られた。これは、充放電による膨張・収縮の応力が集電体と柱状体との接合部に集中したためと考えられる。なお、図13に示すサンプルC1の容量が150サイクル程度で急激に低下する要因として、この時点から剥離などが急激に進行しはじめるためと推測される。
また、図示しないが、サンプルC2においては電極群の変形により、300サイクルまで到達することができなかった。そして、変形は100サイクル時点で観測され、電池を分解すると柱状体の剥離が多く見られた。
一方、これらに対してサンプル1では、柱状体の剥離はほとんど見られなかった。これは、接合部での応力が柱状体部間の各屈曲点により分散されているためと推測される。
また、柱状体が3段の柱状体部で構成されたサンプルC3においては、多段化により、サンプルC2よりも優れたサイクル特性を示すものの、300サイクルでは電極群の変形が見られ、変形部分では主に柱状体の剥離が発生していた。
また、柱状体部の段数を増やしたサンプル2とサンプル3およびサンプル6〜サンプル9では、段数の増加とともにサイクル特性が良化する傾向を示していた。この時、電極群の変形は見られず、著しい変化はなかった。
また、柱状体の斜立角度を小さくしたサンプル4では、サンプル1と比較して優れたサイクル特性を示した。これは、充放電による膨張・収縮の応力が、より水平分力に配分され、捲回方向の効果が顕著に現れたものと考えられる。
また、酸素分圧を小さくして柱状体を形成したサンプル5では、柱状体のxの値は小さく、つまり膨張しやすくなるため、より大きな応力が発生する。その結果、サンプル1と比較してサイクル特性はやや低下する。しかし、最上部の柱状体部の捲回方向を終端方向とすることにより、柱状体の膨張・収縮の小さいサンプルC3よりも優れたサイクル特性を得ることができた。
また、柱状体の斜立方向を捲回終端とし、最上部の柱状体部の斜立方向のみを捲回終端方向と捲回始端方向に変えたサンプル6とサンプル7およびサンプル8とサンプル9を比較すると、若干サンプル7とサンプル9の容量維持率が小さくなっていた。これは、電極群が膨張するときに、柱状体が受ける反力が、最上部の柱状体部の斜立方向により、若干異なることによるものと思われる。
また、サンプル7、サンプル9とサンプルC2、サンプルC3を比較すると、サンプル7、サンプル9の容量維持率は大きく、群径の変化率は小さかった。これは、最上部の柱状体部の斜立方向が捲回始端方向と同じでも、柱状体全体の斜立方向が捲回始端方向に傾斜していないため、柱状体の膨張・収縮により応力を吸収できず、さらに捲き締まり効果が得られないため群径の変化が大きくなったものと考えられる。