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JP2008173018A - 細胞培養方法及び細胞培養用基板 - Google Patents

細胞培養方法及び細胞培養用基板 Download PDF

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JP2008173018A
JP2008173018A JP2007006932A JP2007006932A JP2008173018A JP 2008173018 A JP2008173018 A JP 2008173018A JP 2007006932 A JP2007006932 A JP 2007006932A JP 2007006932 A JP2007006932 A JP 2007006932A JP 2008173018 A JP2008173018 A JP 2008173018A
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Abstract

【課題】複数の培養容器に細胞を播種する場合に細胞数のばらつきが少なく、また、培養容器内で均一に細胞を播種する手段を提供すること。
【解決手段】細胞接着性の区画が一定の間隔で配列し、該細胞接着性の区画を除く領域が外部刺激によって親疎水性を変化させ、細胞の接着性が変化する細胞接着性可変表面を有する細胞培養用基板を用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、細胞を培養するための細胞培養用基板に関する。より詳しくは、細胞数の厳密な調整を行うことなく、複数の培養容器で細胞数のばらつきが少なく、また容易に均一な細胞数及び細胞密度での培養を行うことができる細胞培養用基板、及びそれを用いた細胞培養方法に関する。
これまで、細胞を培養してその細胞の増殖や、分化状態、また、細胞が生産する物質を同定する研究が広く行われている。また、近年、患者由来の細胞や、多分化能を持つ幹細胞を生体外で培養し、その細胞を積極的に医療に活用する研究などが行われている。このような研究や医療の現場での細胞利用においては、細胞を操作する者の手技によらず、複数の実験あるいは複数のサンプルにおいて、再現性よく増殖や分化を制御させることが必要である。しかし、細胞の動態は培養液の組成だけでなく、細胞の数や密度によっても大きく影響を受けるため、細胞を培養容器に播種する際には、用いる細胞の種類に応じた細胞数や細胞密度を最適な条件で播種する必要がある。そのためには、播種する前の細胞数の厳密な調整や、播種する際に細胞を培養基板上に均一に分布させる必要がある。
しかしながら、細胞数を調整するためには細胞懸濁液の一部の細胞数を数えて希釈を行うため、誤差が生じる。また、細胞を播種する際には通常ピペットを用いて細胞懸濁液を吸引し、培養容器に播種していくが、多くの細胞は懸濁液の中で自然沈降するため、多くの細胞を複数の培養容器に播種する処理を行う際には、培養容器ごとに細胞数のばらつきが生じる原因となる。さらには、細胞を接着培養する場合には、培養容器表面に細胞を均一に接着させることは困難で、培養液の揺れなどによって、細胞の密度が特に容器変縁部や中心部に高くなるなどの偏りが生じてしまう。細胞密度にむらがあると、細胞密度の高い部分でより細胞分化が促進されるなど、培養容器内で細胞の増殖や分化に偏りが生じる要因となり、培養の再現性や、信頼性が損なわれてしまうという課題がある。
均一に細胞を播種する方法としては、多孔性の細胞培養用基材に対して細胞を均一に培養基材中に浸透させる工程を有する細胞播種方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。これは三次元培養に用いるもので、通常の二次元培養に用いることが出来る技術ではない。また、培養容器の内側面に形状を持たせることで細胞懸濁液を均一に分散する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、培養容器の内側面に多くの細胞が接着する問題については改善が図れるが、培養液の揺れによる細胞の中心部への偏りや、複数の容器に細胞を播種していく過程でのばらつきについてはなんら解決を図るものではない。
一方、細胞非接着性表面に複数の細胞接着性領域を設けた培養容器が開示されている(例えば、特許文献3)。また、電子線照射法によりアレイ状に温度応答性高分子を培養皿表面に固定化する方法(例えば、非特許文献1)、温度応答性高分子からなる細胞接着領域の周囲を細胞非接着性の領域が囲む細胞アレイ用基板が開示されている(例えば、特許文献4)。これらは細胞を独立した区画に分けた状態で培養を行うために用いる培養基板であり、本発明が課題としている培養容器全面に細胞を培養することは出来ない。
ところで、細胞の接着及び非接着を制御する技術としては、温度応答性高分子を被覆した培養基板を用いることにより、温度によって細胞の接着性を制御する技術が開示されている(例えば、非特許文献1、特許文献4、特許文献5)。また、光刺激によって細胞の接着/非接着を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献6)。これらの技術は、細胞培養中の任意のタイミングで細胞の接着性を変化させることが出来るため、有用である。
特開2005−34020号公報 特開平11−290062号公報 特開2000−41659号公報 特開2003−33177号公報 特開2003−310244号公報 特開2005−210936号公報 Yamato M., et al., J. Biomedical Material Research, 55, 137 (2001)
そこで、本発明の目的は、細胞を播種する際に、培養容器毎に播種される細胞数のばらつきが少なく、また、各培養容器内に細胞を均一に播種することを簡便に実現することにある。
上記目的は下記により達成することができる。
(1)(i)細胞接着性である複数の領域および細胞非接着性である領域を有する基板上に細胞を播種する工程、(ii)上記基板に外部刺激を付与し、上記細胞非接着性領域に細胞接着性を付与する工程、および(iii)上記細胞接着性が付与された領域に上記播種した細胞を培養する工程、を含むことを特徴とする細胞培養方法。
(2)上記工程(i)に続き、上記培養基板を振とうする工程を含むことを特徴とする(1)に記載の細胞培養方法。
(3)上記工程(i)に続き、接着していない細胞を基板上から除去する工程を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の細胞培養方法。
(4)上記工程(i)に続き、培養液を回収し、回収された培養液中の細胞を除去してから再び細胞培養用基板に戻す工程を含むことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の細胞培養方法。
(5)一定の間隔で配列した複数の区画からなる細胞接着性領域と、外部刺激によって細胞接着性が変化可能である細胞接着性可変領域と、からなる細胞培養用基板。
(6)上記細胞接着性可変領域が、刺激応答性高分子で被覆されていることを特徴とする(5)に記載の細胞培養用基板。
(7)上記細胞接着性領域の一区画に少なくとも一種の細胞接着性物質が被覆されていることを特徴とする(5)または(6)に記載の細胞培養用基板。
(8)上記細胞接着性領域の一区画の面積が1μm2以上10000μm2以下であることを特徴とする(5)から(7)のいずれかに記載の細胞培養用基板。
(9)上記細胞接着性領域の区画が基板1cm2あたり1個以上105個以下で配列することを特徴とする(5)から(8)のいずれかに記載の細胞培養用基板。
(10)(5)から(9)のいずれかに記載の細胞培養用基板を用いた細胞培養方法であって、細胞接着性可変表面を細胞非接着性に保つ工程、前記基板上に細胞を播種して細胞接着性領域に細胞を初期接着させる工程、前記初期接着をしていない細胞を除去する工程、細胞接着性可変表面を細胞接着性に変化させる工程、を含むことを特徴とする細胞培養方法。
(11)上記細胞接着性の区画の数以上の細胞を播種することを特徴とする(10)に記載の細胞培養方法。
(12)細胞を播種した後に上記培養基板を振とうする工程を含むことを特徴とする(10)または(11)に記載の細胞培養方法。
(13)細胞を播種してから一定時間後に培養液を回収し、回収した培養液中の細胞を除去してから再び細胞培養用基板に戻すことを特徴とする(10)から(12)のいずれかに記載の細胞培養方法。
本発明者らは、鋭意検討の結果、一定の間隔で配列した複数の区画からなる細胞接着性領域と、該細胞接着性の区画を除く領域が外部刺激によって親疎水性を変化させ、細胞の接着性が変化する細胞接着性可変表面を有する細胞培養用基板を用いることで、解決した。本願細胞培養用基板を用いて細胞培養を行えば、細胞播種時には細胞接着性可変表面を細胞非接着性に保ち、希望の播種密度に必要な細胞数以上の細胞を保持した細胞懸濁液を播種し、細胞接着領域に細胞の初期接着が完了した後、接着していない細胞を除去し、細胞接着性可変表面を細胞接着性へと変化させて培養を継続することにより、細胞は培養基板の全面に浸潤して増殖または遊走することが可能となり、細胞懸濁液の厳密な調整が必要なく、初期条件を均一化した培養が可能となる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の細胞培養方法は、(i)細胞接着性である複数の領域および細胞非接着性である領域を有する基板上に細胞を播種する工程、(ii)基板に外部刺激を付与し、前記細胞非接着性領域に細胞接着性を付与する工程、(iii)細胞接着性が付与された領域に前記播種した細胞を培養する工程、を含む。(i)の工程で細胞を播種することにより、基板上の細胞接着性領域に細胞が接着する。細胞接着性領域を所望の位置で設定することにより、基板上の所望の位置に細胞を接着させることができる。(ii)の工程で非接着性領域に細胞接着性を付与することにより、(i)の工程で接着出来なかった細胞が接着可能となり、(iii)に示すように基板上の細胞接着性領域及び非接着性領域に細胞を培養することが可能となる。上記工程を経ることにより、所望の位置での細胞培養が可能となる。さらには、細胞数の調整も可能となる。
本発明の細胞培養用基板は、基材の上に、所定の一定の間隔で配列した複数の区画からなる細胞接着性領域と、各細胞接着領域以外の領域に外部刺激によってその性状を親疎水性に変化させることで細胞の接着・非接着を切り替えることが出来る細胞接着性可変表面を有する領域とを少なくとも有して構成される。細胞接着領域を一定の間隔で配列することにより、基板上に細胞を一定の間隔で初期接着することができる。その結果、培養基板の全面において細胞を浸潤して増殖するときに、均一に増殖することができることから有利である。
本発明にかかる細胞培養のための基材は、特に限定されるものではないが、細胞接着性が良好であるもの、細胞接着を促進させるための官能基が導入できるもの、接着物質が良好に担持できるものを挙げることができる。また、外部刺激によって親疎水性を変化させる表面を形成する高分子を安定して固定および担持できるものであれば材質や形状はいずれも可能である。具体的には、ガラス基板、シリコン基板、金属及びセラミックス性の基板、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、それ以外の形態付与が可能である高分子化合物からなるプラスチックプレート、プラスチックシート、ポリマーフィルム、などを好適に用いることができる。また、細胞接着領域の接着性を改善させるため、または、接着物質及び外部刺激によって親疎水性を変化させる物質を固定化するために、基板の一部あるいは全面を、化学物質により処理したり放射線を照射する処理をしたりしてもよい。また、基材は外周に壁状構造物を設けた所謂シャーレ状でもよいし、シート状でもよい。シャーレ状であれば培養液を直接入れることができ、一方シート状であれば必要に応じてシートを培養容器に設置して培養を行うことが出来る。
基材は必要に応じて種々の処理を行うことが出来る。具体的には、洗浄を行い、所望でない物質を取り去る、紫外線をはじめとする放射線の照射やコロナ放電を行う等の化学的物理的処理を行うことができる。また、ポリマー材料やシランカップリング剤などを必要に応じて基材の一部または全面に塗布してもよい。
細胞接着性領域は、細胞が良好に接着し、培養できるものであればいずれも可能である。例えば、予め細胞接着性を示す基板を選択し、一定の間隔で基板表面が露出するように細胞接着性可変表面を形成してもよいし、細胞接着領域に細胞接着性が良好な官能基を基板表面に導入しても良い。また、細胞を接着させるために、細胞接着領域の表面に少なくとも一種の細胞接着性物質を固定させてもよい。細胞接着性物質としては、特に限定されるものではないが、ポリリジン、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、その他の細胞接着性のタンパク質、およびポリペプチドなどが好適に用いられる。細胞接着性物質の基板への固定化は、共有結合を介してでも、静電引力を介してでも、生物学的親和性を用いてもよい。共有結合を介して固定化する場合は、強固な力で接着物質を固定化でき、細胞や培養液などによりその結合力は影響を受けにくいため、安定して基板上に固定化することができる。
細胞接着性可変領域表面は、外部刺激によって親疎水性が変化する官能基を有する高分枝鎖の末端が直接または幹高分子を介して基板表面に化学的に結合することによって調製できる。本発明において用いられる高分子はホモポリマーでも共重合体でもよい。ここで、外部刺激とは、熱または光を挙げることができる。
本発明で用いられる上記のような刺激応答性高分子としては、下限臨界溶解温度以下では親水性を示し、細胞非接着性となり、下限臨界溶解温度以上で疎水性を示し、細胞接着性となるような、温度応答性高分子、光応答性高分子等を挙げることができる。温度応答性高分子の例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N−エチルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度72℃)、N−n−プロピルアクリルアミド(同21℃)、N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、N−シクロプロピルメタクリルアミド(同60℃)、N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度56℃)、N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)等のN,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、さらに1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン(同56℃)、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン(同約6℃)、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等の環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル(単独重合体の下限臨界溶解温度35℃)等のビニルエーテル誘導体、また細胞の種類によって臨界溶解温度を調節する必要がある場合や、被覆物質と支持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞付着性表面の親水、疎水性のバランスを調整する等の目的で、上記以外のモノマー類との共重合、重合体同士のグラフト重合または共重合、あるいは重合体、共重合体の混合物を用いてもよい。また、重合体本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。また、光応答性高分子としては、アゾベンゼン基を有する吸収性高分子のように光異性化反応を起こす高分子、トリフェニルメタンロイコハイドロオキシドのビニル誘導体とアクリルアミド系単量体との共重合体のように光イオン解離する官能基を有する温度応答性高分子、またはスピロベンゾピランを含むN−イソプロピルアクリルアミドゲルのように疎水性相互作用が光変化する温度応答性高分子を用いることができる。
細胞接着性領域の大きさは特に限定されるものではないが、1μm2〜10000μm2、より好ましくは4μm2〜900μm2の大きさで、細胞が各区画に1つだけ接着できる大きさが好ましい。細胞接着領域の形状は特に限定されるものではないが、円状が好ましい。また、細胞接着性領域の密度は、用いる細胞や細胞培養の目的に応じて適宜選択できるが、その細胞接着性領域の区画が基板1cm2あたり1個〜106個、より好ましくは10個〜105個が好ましい。
図1は本発明の細胞培養用基板を模式的に示した一例である。基材1の表面に、細胞接着性領域2が形成されており、細胞接着性領域2を囲むように、細胞接着性可変表面3が形成されている。
本発明において用いることができる細胞としては、接着状態で培養を行う細胞であれば目的に応じて如何なる細胞を用いることが出来る。例えば、神経細胞、肝細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、幹細胞、中胚葉系幹細胞、胚性幹細胞、グリア細胞、胎性幹細胞、造血幹細胞、肥満細胞、脂肪細胞、神経幹細胞、などの細胞全体(例えば、ヒト、あるいはマウス、ラットなどの動物から単離した初代培養細胞、およびそれらの形質転換細胞または非形質転換細胞);細胞塊などを適宜選択して使用できる。
本発明の細胞培養用基板に細胞接着性の区画および細胞接着性可変領域を形成するためには、それらの領域を形成することが出来れば特に制約されるものではない。それらの領域を被覆する材料を、塗布して物理吸着させてもよいし、電子線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理などを用いて固定化させてもよい。その場合には、マスクを用いることで特定の部位にのみ目的の物質を固定化してパターニングを行うことが出来る。あるいは、全面に細胞接着性可変領域を被覆する材料を被覆させた後に、レーザーアブレーションにより一部のみを削っていくことで、削られた部分を細胞接着性領域とすることも出来る。さらに、支持体と被覆材料が適当な反応性官能基を有する場合は、予め基板に適当な反応性官能基をパターニングし、そこに、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応などの一般に用いられる有機反応を利用して目的の材料を固定化することが出来る。
また、細胞接着性の区画または細胞接着性可変領域を形成するためには、それらの表面を被覆する材料を、適当な溶剤に溶解または分散させて塗工液を調製し、該塗工液をシートに塗工して成膜する方法が挙げられる。塗工方法としては、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、シムサイザー法等が挙げられる。さらにスプレーコート法、グラビアコート法、カーテンコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法を挙げることができる。
また、液滴吐出手段を用いて上述のような材料を配置させることもできる。液滴吐出手段とは、1滴あたりの体積が100nl以下の液滴、より好ましくは1nl以下の液滴が吐出可能なもので、マイクロピペット、マイクロディスペンサーや、インクジェット法を用いた吐出装置が挙げられる。吐出装置が安価に作製でき、微小な液滴が吐出できる点から、インクジェット法を用いた吐出装置を好適に用いることができる。さらにインクジェット法の中でも、サーマルインクジェット法とピエゾインクジェット法を好適に用いることができ、サーマルインクジェット法による吐出装置は、吐出口の微細加工が容易で、生物活性物質を高密度に配置することができる。また、ピエゾインクジェット法による吐出装置は、圧電素子の変位により吐出エネルギーを発生させるので、生物活性物質に熱的なストレスを付加することがなく、生物活性物質を安定して吐出できる。
作製した細胞培養用基板は容器に入れ長期に保存することができる。容器には、乾燥剤や脱酸素剤などと一緒に封入すればより好ましく安定に保管できる。また、簡便にフィルムなどでラミネートすることもできる。
次に細胞を培養する方法について述べる。本発明の細胞培養用基板を用いることで、簡便に均一な細胞の播種が可能となる。細胞培養用基板は、細胞を培養する前に必要に応じて細胞培養用基板に放射線や紫外線などを照射したり、アルコール溶液で洗浄したりすることにより殺菌処理してもよい。これにより所望でない微生物などにより培養に悪影響が及ばないようにすることができる。
細胞を播種する際に用いる細胞懸濁液は、播種する細胞に適した培養液に所望の血清成分などを添加したものを用いる。初期細胞密度は、細胞培養用基板上に存在する細胞接着領域の数によって初期播種細胞数が決定されるので、目的に応じた接着領域密度を持った細胞培養用基板を選択する。細胞懸濁液中の細胞数は、使用する細胞培養用基板上の細胞接着領域の区画の合計数以上の細胞数を含む細胞懸濁液を用いる。このとき、細胞懸濁液中の細胞数は、細胞接着領域の合計数の2倍、より好ましくは4倍以上の細胞数を含むことが好ましいが、上記の細胞数が含まれていれば厳密な細胞数の調整は必要ない。
細胞を播種する前は、細胞接着性表面2の周囲にある細胞接着性可変表面4は親水性状態にして細胞非接着性に保つ(図2A)。次に、上記の細胞懸濁液を細胞培養用基板に播種して、細胞5の培養を開始する(図2B)。播種を行った後も、細胞接着性可変表面を親水性に保ち、非接着状態を維持して適当な時間静置する。これにより細胞接着領域にのみ細胞が接着する。このとき、定期的に細胞培養用基板を振とうさせることが好ましい。これにより、より多くの細胞接着領域と細胞とを接触させ、目的とする均一な細胞の播種を促進させることが出来る。初期接着にかかる時間は使用する細胞によって異なるので、細胞に応じて調節することが出来る。細胞接着領域への細胞の初期接着が完了したあとに、細胞培養容基板上の培養液を回収し、接着していない細胞を除去する(図2C)。好ましくは、培養液を回収した後に細胞培養用基板をリン酸緩衝液や細胞培養液で一回から数回洗浄する。接着していない細胞を完全に除去することができ、均一な播種の信頼性が向上する。次に、細胞を含まない培養液を加える。この培養液は、接着していない細胞を回収したときに用いた培養液から細胞を除去したものを使うことができる。これにより、培養液の有効利用が出来る。次に、細胞接着性可変表面を外部刺激によって疎水性に変化させ、細胞接着性を変化させて接着が可能な状態にする(図2D)。その状態で細胞をさらに必要な時間培養を行うことにより、細胞が細胞接着性可変表面にも浸潤し、均一な密度を持った培養が行われる(図2E)。
上記の方法によって、細胞数の厳密な調整をすることなく、複数の細胞培養容器であっても均一な細胞の播種が可能となる。
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。なお、特に表示していない限りは「%」は質量基準である。
<細胞培養基板の作製>
基材として、ポリスチレンの基板を用い、細胞接着性可変表面を被覆する材料として、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを用いて表1に示した細胞接着領域密度と、細胞接着領域表面を持った細胞培養用基板を作製した。まず、30%のN−イソプロピルアクリルアミドモノマーのイソプロピルアルコール溶液を0.01ml/cm2の割合でポリスチレン基板上に塗布した。次に、基板に0.25MGyの強度の電子線を照射し、支持体表面にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを被覆させ、精製水で表面を洗浄した。次に、ArFエキシマレーザー(波長193nmのパルスレーザー)を用いてポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの一部を円状に直径が10μmになるように削り、ポリスチレン層を露出させ、細胞接着領域を形成した。さらに、実施例2〜6では、イソプロパノール5%を含む水溶液に、表1に示した細胞接着物質溶液を0.5%の濃度で溶かした描画液を準備し、該描画液が使用可能なように改造したキヤノン製インクジェットプリンターPIXUS950iを用いて細胞接着領域に描画し、露出させたポリスチレン層に細胞接着物質溶液を吸着させた。
Figure 2008173018
<細胞培養>
予め、上記で作製した細胞培養用基板を27℃環境下に静置して、細胞接着性可変表面を細胞非接着性に保った。次に、表2に示す細胞と、基板面積あたりの播種細胞密度になるように細胞を播種し、5%CO2雰囲気下/27℃で4時間静置して細胞接着領域にのみ細胞を接着させた。このとき、1時間おきに基板を軽く振とうした。次に、培養液を静かに回収し、PBSで1度リンスしてから、回収した培養液を2μmのフィルターを通して接着していない細胞を除去した後、再び培養基板に戻した。続いて培養基板を5%CO2雰囲気下、37℃環境下に静置し、細胞接着性可変表面を細胞接着性に変化させ、さらに48時間培養を行った。比較例として、実施例で使用した細胞培養用基板と同じ面積を持つポリスチレンディッシュ、すなわち、細胞接着性可変領域を含まない基板上に、表2に示す条件で細胞を播種し、5%CO2雰囲気下/37℃で48時間培養を行った。実施例6及び比較例6については、播種後48時間後に、分化培地(5%馬血清(HS)を含むMinimum Essential Medium(MEM)培地)に交換し、さらに48時間培養を継続した。なお、再現性を確認するために、各条件とも5サンプルずつ培養を行った。(表中の略号は以下の通りである。FCS:ウシ胎仔血清、DMEM:Dulbeco’s Modified Eagle's minimum essential medium、RMPI:Rosewell Park Memorial Institute)
Figure 2008173018
<評価>
培養開始から5時間後の細胞を、位相差型倒立顕微鏡を用いて目視で細胞数の偏りを基板全面について検査した。実施例1〜6では、細胞が培養用基板全面に均一に分散し、ほぼ接着領域の密度と同じ密度で配置していたが、同条件の5サンプルは全てほぼ同じ結果であった。一方、比較例1〜6では、どのディッシュにおいても基板表面における細胞の密度に偏りがあり、特にディッシュの中心部に細胞が多いものと、周辺部に細胞が多いものがあった。また、同条件の5サンプル間では細胞の密度の偏りは一定ではなく、ディッシュによって偏り方や密度が異なっていた。
また、培養用基板の任意の5領域で単位面積(9mm2)あたりの細胞数を計測し、5領域の平均細胞数に対する各領域の細胞数の比を求めたところ、実施例では5領域全てが0.8〜1.2の範囲に入ったが、比較例では少なくとも1領域で0.8未満又は1.2より大きな値となり、ばらつきが大きかった。
次に、<細胞培養>で示した作業の後に、細胞を10%ホルマリンで15分間、メタノールで15分間処理し、固定した後、細胞を蛍光色素TOTO−3(Molecular Probes製)を1000倍に希釈して30分間反応させ、DNAを蛍光染色した。次に、インフラレッドイメージングシステムOdyssey(Aloka製)で波長700nmを検出し、培養基板全体の蛍光画像を取り込んだ。実施例6及び比較例6では、細胞を、一次抗体として、マウス抗ミオシン重鎖抗体を1時間反応させ、PBSで3回洗浄後、二次抗体として、抗マウスIgG IRDye 800(Rockland Immunochemicls製)を1時間反応させた。Odysseyを用いて波長800nmを検出して、筋分化の指標であるミオシン重鎖の発現を評価した。取り込んだ画像を用いて、基板を25区画に分けて、各区画のDNA量と、実施例6及び比較例6ではミオシン重鎖の発現量を評価した。その結果、実施例1〜6は細胞の密度は区画によらずほぼ一定であったが、比較例1〜6は区画によって細胞密度のばらつきが大きかった。また、実施例6と比較例6について単位面積あたりのミオシン重鎖の発現量を比較したところ、実施例6の方が比較例6よりもばらつきが少なかった。
本発明の細胞培養用基板の一例を説明するための図である。 本発明の細胞培養基板を用いた細胞培養方法の一例を説明するための図である。
符号の説明
1 基材
2 細胞接着領域
3 細胞接着性可変表面
4 細胞性可変表面(非接着状態)
5 細胞
6 細胞性可変表面(接着状態)

Claims (13)

  1. (i)細胞接着性である複数の領域および細胞非接着性である領域を有する基板上に細胞を播種する工程、
    (ii)前記基板に外部刺激を付与し、前記細胞非接着性領域に細胞接着性を付与する工程、および
    (iii)前記細胞接着性が付与された領域に前記播種した細胞を培養する工程、
    を含むことを特徴とする細胞培養方法。
  2. 前記工程(i)に続き、前記培養基板を振とうする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の細胞培養方法。
  3. 前記工程(i)に続き、接着していない細胞を基板上から除去する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞培養方法。
  4. 前記工程(i)に続き、培養液を回収し、該回収された培養液中の細胞を除去してから再び細胞培養用基板に戻す工程を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の細胞培養方法。
  5. 一定の間隔で配列した複数の区画からなる細胞接着性領域と、外部刺激によって細胞接着性が変化可能である細胞接着性可変領域と、からなる細胞培養用基板。
  6. 前記細胞接着性可変領域が、刺激応答性高分子で被覆されていることを特徴とする請求項5に記載の細胞培養用基板。
  7. 前記細胞接着性領域の一区画に少なくとも一種の細胞接着性物質が被覆されていることを特徴とする請求項5または6に記載の細胞培養用基板。
  8. 前記細胞接着性領域の一区画の面積が1μm2以上10000μm2以下であることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の細胞培養用基板。
  9. 前記細胞接着性領域の区画が基板1cm2あたり1個以上105個以下で配列することを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の細胞培養用基板。
  10. 請求項5から9のいずれかに記載の細胞培養用基板を用いた細胞培養方法であって、細胞接着性可変表面を細胞非接着性に保つ工程、前記基板上に細胞を播種して細胞接着性領域に細胞を初期接着させる工程、前記初期接着をしていない細胞を除去する工程、細胞接着性可変表面を細胞接着性に変化させる工程、を含むことを特徴とする細胞培養方法。
  11. 前記細胞接着性の区画の数以上の細胞を播種することを特徴とする請求項10に記載の細胞培養方法。
  12. 細胞を播種した後に前記培養基板を振とうする工程を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の細胞培養方法。
  13. 細胞を播種してから一定時間後に培養液を回収し、回収した培養液中の細胞を除去してから再び細胞培養用基板に戻すことを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の細胞培養方法。
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