本発明の燃料電池は、電解質層と、該電解質層を挟んで互いに対向するアノード電極およびカソード電極と、集電体と、セパレータとを少なくとも備える。また本発明の燃料電池に設けられる集電体は、一方の表面を形成する高抵抗層と、該高抵抗層よりも低い抵抗値を有しかつ他方の表面を形成する低抵抗層と、を少なくとも含む2以上の層からなる積層構造を有し、集電体と該アノード電極および/または該カソード電極とが直接または導電部材を介して接している。なお本発明の以下の記載においては、特記しない限り「アノード電極および/またはカソード電極」を単に「電極」とも称する。
集電体の高抵抗層に電流を流した場合には、抵抗損失によって集電体自体を発熱させ、燃料電池を加熱することができる。一方、集電体の低抵抗層は燃料電池から発生した電流を電極から集電する取り出し電極としての機能に優れる。高抵抗層と低抵抗層とを少なくとも含む集電体を備える本発明の燃料電池においては、たとえば回路のスイッチの切替えによって、高抵抗層および低抵抗層のいずれか、または両方に電流を流すような設定を簡便に行なうことができる。よって、たとえば外気温度の低下時や燃料電池の始動時等には、高抵抗層に電流を流すことによって速やかに燃料電池の特に電極および電解質層の近傍の温度を上昇させ、通常の運転時には、低抵抗層に電流が流れるようにして該抵抗層を電極からの集電に用いることにより、優れた始動性と発電効率とを得ることが可能となる。
また、本発明においては、取り出し電極として機能する集電体を発熱体としても用いるため、燃料電池の構造の簡略化が可能であり、より小型の燃料電池を得ることが可能になる。
すなわち、たとえば電熱線に代表されるヒーターは、一般に電圧を印加して電流を流し、抵抗損失で発熱させるため、このようなヒーターを電極に直接接触させると、電極に電圧が印加されてしまう。またヒーターを設けるために燃料電池が大型化する場合もある。一方、化学反応や、半導体素子の熱など、外部の熱を利用する場合も、熱を導くための伝導体によりセル内部構造が複雑になり、セルが大きくなってしまう。これに対して、本発明の燃料電池の構成によれば、集電体自体を発熱させることにより、簡便かつ小型な構成でMEAを効率良く加熱することが可能である。
本発明において、集電体と電極とは、直接または導電部材を介して接するように形成される。すなわち、電極および電解質層と集電体との距離が比較的近いという特徴を有する。また、集電体は燃料電池の取り出し電極として機能するものであって導電性の材質からなる。導電性が高い材質は一般に熱抵抗も低いため、本発明においては、集電体が低い熱抵抗で電極と繋がっていることとなり、たとえばヒーター等で加熱する場合と比べて、電極および電解質層への伝熱効率が著しく優れる。
なお本発明の燃料電池の起動時において、集電体に通電するための電流を燃料電池から確保できない場合には、二次電池あるいはキャパシタ等の外部電源から電流を集電体に流し、電極および電解質層を瞬時に昇温させることで、燃料電池を早期に起動させて、燃料電池から出力電力を取り出すことができる。
図1および図2は、本発明の燃料電池において複数のセルを接続する構成の例を示す断面図である。燃料電池100,200は、電解質層101と、該電解質層を挟んで互いに対向するアノード電極102aおよびカソード電極102bと、集電体103,104,105と、セパレータ106とを備える。集電体103,104,105は、アノード電極102aおよびカソード電極102bに接するように形成されている。燃料電池100にはまた、アノード燃料流路107a、カソード燃料流路107b、さらに、ヒーター109a,109bが設けられている。集電体103,104,105は2以上の層からなる積層構造を有するが、図1および図2においては簡略化して図示している。なお本発明において同一の参照符号が付されている部位は同様の機能を有するため、各図面について説明を繰り返さない。
図1においては、燃料電池が絶縁性のセパレータ106を備え、セルが直列接続で、層厚方向にスタックされた構造を表している。図2においては、セルが平面方向に縦横にスタックされた構造を表している。図1,2においては、一方の表面を形成する高抵抗層と、該高抵抗層よりも低い抵抗値を有しかつ他方の表面を形成する低抵抗層と、を少なくとも含む2以上の層からなる積層構造をもつ集電体がアノード側およびカソード側の両方に設けられる場合について示している。しかし本発明においては、アノード側、カソード側の少なくとも一方に上記特徴をもつ集電体が設けられていれば良い。
本発明の燃料電池は、図1に示すように、集電体103,104,105の外側に、拡散層108a,108bをさらに備えても良い。なお本発明において、拡散層は、本発明における導電部材として集電体と電極との間に形成されても良い。
本発明の燃料電池は、燃料電池の単位セルが層厚方向に複数スタックされた図1のような構造を有しても良いし、単位セルが平面方向の縦横それぞれに複数スタックされた図2のような構造を有しても良く、公知のスタック構造の態様を採用できる。
本発明の燃料電池がスタック構造を有する場合、高抵抗層と低抵抗層とを少なくとも含む2以上の層からなる集電体を、単位セルの全てに設けても良く、スタック構造の両端をなす単位セルにのみ設けても良い。また、スタック構造における単位セルに対して1つおき、2つおき等の周期で該集電体を設けても良い。図2に示すような平面状のスタック構造においては、スタック構造の周縁部を形成する単位セル、特にスタック構造の四隅を形成する単位セルに該集電体を設けることが好ましい。
単位セルの全てに該集電体を設ける場合、電極および電解質層の加熱をより均一かつ高効率で行なうことができる。
また、単位セルの一部のみに、たとえば上記のような態様で該集電体を設ける場合、電極および電解質層の加熱を比較的均一かつ高効率で行なうことができるとともに、発熱のための電力消費を低く抑え、燃料電池の発電効率をより良好にすることができる。
なお、本発明の燃料電池は、本発明の効果を損なわない範囲でヒーターをさらに備えても良い。この場合、本発明において形成される集電体との組み合わせにより、電極および電解質層の加熱をより迅速に行なうことができる。この場合、ヒーターは、セパレータで囲まれたセルの内部、すなわち燃料電池の単位セル内に設けられることが加熱効率の点で好ましく、具体的には、集電体と絶縁した状態で、電極とセパレータとの間、または電極の内部、または電極とセパレータとの両者に隣接するように設けることが好ましい。
本発明において、集電体とアノード電極および/またはカソード電極とが直接接している場合、集電体から電極への熱伝導が特に良好であり、効率的に電極および電解質層を昇温させることが可能である点で好ましい。図1においては、アノード電極102a,カソード電極102bのそれぞれに、集電体103,104,105が直接接する場合について示している。
一方本発明においては、集電体とアノード電極および/またはカソード電極との間に導電部材が介在しても良い。導電部材としては、たとえばカーボン等からなる拡散層等が例示できる。拡散層は、アノード極においては集電体とアノード電極との間での燃料の供給、および二酸化炭素の排出の機能を果たす。また、カソード極では集電体とカソード電極との間での酸素に代表される酸化剤の供給、および生成水の排出の機能を果たす。
本発明の燃料電池は、たとえば図1および図2に示すように、アノード側の集電体、アノード電極、電解質層、カソード電極、カソード側の集電体、の順に積層された積層構造を有することが好ましい。この場合、集電体と電極とが接しているため、集電体から電極への熱伝導が良く、外部に発散される熱が少ないため、少ない消費電力で電極、電解質層を昇温させることが出来る。これにより、燃料電池の始動性を高め、イオン伝導度の向上、触媒活性の向上によって発電効率を向上させることができる。また、電極近傍の温度が上がることにより、燃料、空気、副生成物および種々イオンの拡散係数が上がるため、各物質の拡散抵抗の減少によりエネルギー密度が向上し、さらに発電効率を向上させることができる。
また、本発明の燃料電池が、アノード電極、アノード側の集電体、電解質層、カソード側の集電体、カソード電極、の順に積層された積層構造を有することも好ましい。この場合、集電体が電極と電解質層との間に位置するため、効率的に電極および電解質層を昇温することが可能である。また、集電体が電極と電解質層とに挟まれることにより、集電体と電極および電解質層との接着力がより良好になり、密着性の一層の向上および接触抵抗の一層の低減が可能である。
本発明においては、集電体のうち低抵抗層がアノード電極および/またはカソード電極と直接または導電部材を介して接していることによって、該低抵抗層で集電することが好ましい。この場合、外部の機器に燃料電池から電力を供給する際の、抵抗による発熱の損失を低減し、効率的に電力を取り出すことができる。また、集電体に電流が流れた時には、抵抗による電圧降下が生じ、電極表面に電位分布や出力電流密度のムラが生じるため、局所的に電極内の触媒に負荷がかかって触媒が劣化するという問題があるが、低抵抗層の部分で集電する場合には抵抗による電圧降下を防止できるため、触媒の劣化を良好に防止できる。
本発明においては、集電体のうち低抵抗層以外の層が、アノード電極またはカソード電極と絶縁されるように設けられても良いが、集電体のうち低抵抗層以外の層が、低抵抗層のみを介してアノード電極またはカソード電極と電気的に接続されることが好ましい。この場合、低抵抗層以外の層に電流を流した時に生じる熱を、低抵抗層を介して出来るだけ近距離で電極に供給することが出来る。また、低抵抗層よりも高抵抗の層の部分に電流を流した時に生じる電圧降下による電位分布を電極に印加してしまう事を防ぎ、電極内の触媒の劣化を良好に防ぐことが出来る。
本発明においては、集電体のうち低抵抗層以外の層がたとえば絶縁層で覆われることにより、電極が形成されている領域において集電体の各層が絶縁層のみを介して積層されるとともに、電極が形成されていない領域の少なくとも一部において、低抵抗層以外の層が低抵抗層のみを介してアノード電極またはカソード電極と電気的に接続されることも好ましい。この場合、電極内の触媒の劣化を良好に防ぐことができる。
またこの場合、集電体を構成する各々の層に電流の取り出し部(すなわち取り出し端子)を設けることが好ましく、これにより、低抵抗層のみならず低抵抗層以外の層も取り出し電極として用いることができる。なおこの場合、電極と集電体との接続部分の中点を挟んで低抵抗層以外の層と低抵抗層との接続部と対向するように該取り出し部を設けることが好ましく、特に、電極と集電体との接続部分以外の領域に該取り出し部を設けることが好ましい。これにより、電極と集電体の低抵抗層以外の層とが直接接触しない構成を確実に形成できる。
また、集電体が電解質層と電極との間に形成され、電極が形成されている領域において集電体のうち低抵抗層以外の層が絶縁層で覆われていることも好ましい。この場合も電極内の触媒の劣化を特に良好に防ぐことができる。
低抵抗層以外の層が低抵抗層のみを介して電極と電気的に接続される場合、集電体の低抵抗層以外の層に電流を流すことによる燃料電池の加熱は、低抵抗層以外の層に電流が流れるように回路の切り替えを行なった後、燃料電池の出力端子を短絡させることにより簡単に行なうことができる。燃料電池の出力端子が短絡しても、低抵抗層以外の層の存在により、各燃料電池セルのアノード極とカソード極との電位差が0付近になることがなく、過剰な過電圧が触媒にかからず、触媒が劣化しないという利点がある。なお、低抵抗層以外の層の抵抗値は、短絡時に流れる出力電流が、電極の過電圧で触媒が劣化せず、かつ電極および電解質の加熱のために十分な出力電流が流れるような値となるように選定することが好ましい。
本発明においては、集電体の抵抗値が平面方向において一様(すなわち均一)であることが好ましい。この場合電流の流れが均一となって、集電体における発熱が均一となる。これにより、電極および電解質層の加熱を均一に行なって、電極における触媒能および電解質層におけるイオン伝導度の局所的な向上を防止し、電極の出力電流のムラや電位分布を防止できるため、局所的な温度の上昇による電解質層や触媒の劣化を良好に防止できる。
以下、本発明の燃料電池の構造のより詳細な例について、直接メタノール型燃料電池を例に図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、アノードの燃料に3mol/Lの所定濃度のメタノール水溶液を用い、カソードには空気中の酸素を用いる、いわゆるダイレクトメタノール(直接メタノール方式)燃料電池の場合を例に説明する。
<電解質層>
電解質層は、従来公知の適宜の高分子膜、無機膜またはコンポジット膜にて形成されることができる。高分子膜としては、たとえば、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製)、ダウ膜(ダウ・ケミカル社)、アシプレックス(旭化成社製)、フレミオン(旭硝子社製)等のパーフルオロスルホン酸系電解質層、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質層、等が挙げられる。無機膜としては、たとえば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。また、コンポジット膜としては、たとえばゴアセレクト膜(ゴア社製)や細孔フィリング電解質層等が挙げられる。
電解質層のプロトン導伝率は、10-5S/cm以上であることが好ましく、10-3S/cm以上であることがより好ましい。プロトン導伝率が10-3S/cm以上である電解質層は、パーフルオロスルホン酸ポリマーや炭化水素系ポリマー等の高分子電解質層によって形成できる。
<アノード電極,カソード電極>
本発明において、アノード電極とは、外部から供給された物質が化学反応を起こし、プロトンと電子とを生成する部位を意味し、カソード電極とは、外部から供給された物質がプロトンと電子とを取り込み、化学反応を起こし、水を生成する部位を意味する。アノード電極およびカソード電極は、典型的には、アノード触媒層およびカソード触媒層によって構成される。
アノード電極は、典型的には、アノード触媒粒子を担持した炭素粒子と固体高分子電解質とを含むアノード触媒層から構成されることができる。また、カソード電極は、典型的には、カソード触媒粒子を担持した炭素粒子と固体高分子電解質とを含むカソード触媒層から構成されることができる。アノード電極において、アノード触媒粒子はメタノールから二酸化炭素とプロトンと電子とを生成する機能を有し、固体高分子電解質は、上記で生成したプロトンを電解質層へ伝導する機能を有す。炭素粒子は、上記で生成した電子をアノード集電体へ導電する機能を有する。カソード電極において、カソード触媒粒子は、酸素とプロトンと電子とから水を生成する機能を有し、固体高分子電解質は、電解質層からカソード触媒粒子近傍にプロトンを伝導する機能を有し、炭素粒子は、カソード触媒粒子近傍にカソード導電層から電子を導電する機能を有する。
炭素粒子としては、アセチレンブラック(たとえば、XC72(Vulcan社製))、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が例示される。
アノード触媒粒子およびカソード触媒粒子を形成する触媒としては、たとえばPt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Ir等の貴金属や、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Znなどの卑金属が例示される。これらを、単独もしくは2種類以上の組み合わせで用いることができる。なお、アノード触媒層およびカソード触媒層に含まれる触媒の種類は必ずしも同種類に限定されず、異なる種類の触媒を用いることができる。
高分子電解質には、触媒を担持した炭素粒子の粒子間を電気的(すなわち電子的)に接続し、かつ、該炭素粒子と電解質層との間を物理的に接続する機能とともに、水素イオン伝導性、水移動性、酸素透過性に優れるという機能が求められる。よって、高分子電解質としては、具体的には、スルホン基、リン酸基等の強酸基や、カルボキシル基等の弱酸基を有する有機高分子が好ましい。該有機高分子として、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン(ナフィオン(デュポン社製))、カルボキシル基含有パーフルオロカーボン(たとえば、フレミオン(旭化成社製))、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、等が例示される。
アノード電極およびカソード電極の厚みは、プロトン伝導の抵抗および電子導電の抵抗を小さくし、内部までメタノールまたは酸素の供給を行なうことができる点で、それぞれ、0.1mm以下であることが好ましく、十分な触媒担持量を得ることにより出力電圧を向上させることができる点で、0.1μm以上であることが好ましい。
<集電体>
本発明において形成される集電体は、取り出し電極としての機能と発熱体としての機能とを有し、典型的には金属から構成される。本発明において、集電体は、一方の表面を形成する高抵抗層と、該高抵抗層よりも低い抵抗値を有しかつ他方の表面を形成する低抵抗層と、を少なくとも含む2以上の層からなる。低抵抗層は集電体を形成する層の中で最もシート抵抗の低い導電層である。集電体を構成する各層の抵抗値は、金属の材質や形状で制御することが出来る。集電体は、抵抗値を容易に増減できる点で、平板に孔加工、特に貫通孔を設ける加工がされたものやメッシュ状のものであることが好ましい。集電体の開孔率、厚み、目開き等を制御して抵抗値を調整することが好ましい。これにより、簡単かつ安価に抵抗値を設定することができる。
本発明において、集電体は、アノード電極および/またはカソード電極に直接または導電部材を介して接するように形成する。集電体は、アノード側、カソード側のいずれに設けられる場合も、たとえば、Ti、Ta、Au、Ag、Pt、Nb、Ni、Si、WおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。これらの元素を含むことにより、取り出し電極として機能させる集電体の比抵抗が小さくなるため、取り出し電極の抵抗ロスを軽減し、発電効率を向上させることが可能となるためである。また、集電体としてはステンレス合金を用いても良く、耐硫酸性のステンレスであるSUS316LやNSSC270等がより好ましい。
抵抗値が異なる2以上の層からなる集電体の設計は、各層の材質および形状を変えることにより行なうことができる。なお、集電体の特に表面を形成する高抵抗層および/または低抵抗層としては、導電性耐腐食処理が施されている金属メッシュや、打ち抜き加工金属板を用いることが好ましい。
また、集電体の腐食が問題となる場合には、集電体表面に、酸性水溶液雰囲気下または酸素雰囲気下で金属イオンが溶出せず、不導体層を形成しない耐腐食性を有するAu、Pt、Pd、Ru等の貴金属や、炭素、炭素および樹脂からなる導電性樹脂をコーティングしてもよい。これにより、後述するアノード電極中およびカソード電極中の電解質および電解質層に溶出した金属イオンが集電体内に混入する恐れがなくなる。さらには、集電体表面に不導体層が形成されないため、MEAの長期信頼性を得ることが可能となる。
また、集電体の厚みは、用いられる金属材料の比抵抗の値によっても異なるが、配線としての電圧低下を抑制するため、板形状であれば100μm以上の厚みであることが好ましい。また、集電体がメッシュ形状である場合には、線径が100μm以上であることが好ましい。
また、集電体として金属メッシュまたは打ち抜き加工金属板を用いる場合、集電体には、燃料、空気をアノード触媒層、カソード触媒層にそれぞれ供給するための開孔部を層厚方向に設けることができる。これにより、取り出し電極として機能する集電体の層厚方向における、液体燃料および気体燃料の供給の阻害を軽減しつつ、効率よく集電を行なうことが可能となる。
上記の開孔部は、集電体の層厚方向の貫通孔として形成されれば良く、開孔部の形状は特に制限はされないが、開孔率は10%〜95%の範囲内であることが好ましい。ここで、集電体の開孔率とは、電極の面積をSA、集電体に形成された開孔の面積の総和をSBとしたとき、SB/SA×100(単位:%)で計算される値で定義される。アノード触媒層へメタノールを、カソード触媒層へ酸素を良好に供給することができる点で、該開孔率は40%以上であることが好ましい。開孔率が過度に大きくなると、集電体の抵抗が増加したり、機械的強度が失われたりするおそれがあるため、開孔率は90%以下であることが好ましい。
電極上の高抵抗層の抵抗値は、1cm2の正方形の向かい合う2辺の各々に端子をつけ、平面方向に電流を流した時の抵抗、すなわち面積1cm2あたりのシート抵抗で、10mΩ〜300mΩの範囲内であることが好ましい。高抵抗層の該シート抵抗値が10mΩ以上である場合、発熱体としての機能が良好であり、300mΩ以下である場合、たとえば低抵抗層とともに高抵抗層を取り出し電極としても用いる場合、発電効率を良好に維持できる。高抵抗層の該シート抵抗値は、さらに100mΩ以上、特に150mΩ以上であることがより好ましく、また、さらに200mΩ以下であることがより好ましい。
電極上の低抵抗層の抵抗値は、上記の面積1cm2あたりのシート抵抗で、1mΩ〜30mΩの範囲内であることが好ましい。低抵抗層の抵抗値が1mΩ以上である場合、材料の入手や低抵抗層の作製が容易であり、30mΩ以下である場合、取り出し電極としての機能が良好である。低抵抗層の該シート抵抗値は、さらに5mΩ以上、特に10mΩ以上であることがより好ましく、また、さらに25mΩ以下、特に20mΩ以下であることがより好ましい。
本発明において、高抵抗層と低抵抗層との間にたとえば中抵抗層が設けられる場合、該中抵抗層の抵抗値は高抵抗層の抵抗値と低抵抗層の抵抗値との中間になるように設計されれば良いが、中抵抗層の抵抗値は、上記の面積1cm2あたりのシート抵抗で、たとえば50mΩ〜100mΩの範囲内とされることが好ましい。
より典型的には、集電体が高抵抗層と低抵抗層との2層からなる場合、低抵抗層の抵抗値が、上記のシート抵抗で15mΩ程度、高抵抗層の抵抗値が、上記のシート抵抗で150mΩ程度の範囲内である組合せが好ましい。たとえば、電極の面積が5cm2である燃料電池のセルで、低抵抗層の該シート抵抗が15mΩ、高抵抗層の該シート抵抗が150mΩ程度である組合せが好ましい。
本発明においては、集電体が電極表面をすべて覆うように形成されることが好ましい。この場合、電極および電解質層をより均一に加熱することができ、電極に出力電流のムラや電位分布が生じるおそれが少なく、燃料電池全体の発電特性をさらに向上させることが出来る。
<セパレータ>
本発明においてセパレータは、燃料電池の単位セルを複数スタックしたときのアノード側とカソード側との短絡を防止し、燃料流路を形成する機能を有する。セパレータの材質としては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等、耐酸性、耐メタノール性に優れた高分子材料が好ましい。
セパレータが絶縁性の材質からなる場合、たとえば図3に示すような構造を有する燃料電池において電流の取り出しを平面方向に行なうことができ、高抵抗層に電流を流すことにより、小型、薄型の構造で簡単にMEAを均一に加熱することができるという利点を有する。また、セパレータが絶縁性であることによって、燃料電池の外部への熱抵抗が高くなり、集電体で発生させた熱を電極および電解質層の加熱に利用することができるため、燃料電池の始動性および発電効率がより良好になるという利点を有する。
絶縁性の材料としては、たとえば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、また、これらの高分子樹脂で外装をコートし、内部にポリウレタンの発泡体、ガラスウール、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体等をつめたもの等が例示できる。
一方、セパレータが断熱性を有する材質からなる場合、集電体で発生させた熱の燃料電池外部への伝導を抑制し、本発明による電極および電解質層の加熱効率がより良好となって燃料電池の始動性および発電効率がより良好になるという利点を有する。断熱性に優れる材質としては、たとえば上記の高分子樹脂で外装をコートし、内部にポリウレタンの発泡体、ガラスウール、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体等をつめたもの等が例示できる。
<アノード拡散層,カソード拡散層>
本発明においては、拡散層として、アノード拡散層およびカソード拡散層を設けても良い。拡散層は、電極と集電体との間に導電部材として設けられても良く、集電体を挟んで電極と対向するように設けられても良い。アノード拡散層は、集電体とアノード電極との間での燃料の供給、および二酸化炭素の排出の機能を果たす。また、カソード拡散層は、集電体とカソード電極との間での酸素に代表される酸化剤の供給、および生成水の排出の機能を果たす。
拡散層は、たとえばカーボン等の電子伝導性の多孔質体として形成されることができる。また撥水性の多孔質体が集電体を挟んで電極と対向するように設けられた場合、撥水性の多孔質体が低濃度メタノール水溶液をはじくとともに、該多孔質体が二酸化炭素や空気などの気体を多く含むと該多孔質体の断熱性が上がり、メタノール水溶液に熱を奪われなくなる為、燃料電池の温度をさらに効率的に制御することができる。
<ヒーター>
本発明においてヒーターが設けられる場合、該ヒーターは、電極および電解質層を加熱して燃料電池の始動性および発電効率を向上させる機能を有する。ヒーターは、セパレータの内側に設置されることが好ましく、特にセパレータと一体化して設置されることが好ましい。ヒーターとしては、たとえばニクロム線などからなる電気抵抗ヒーター等を用いることができる。また、PTC特性をもつサーミスタヒーターは、温度制御のシステムを簡略化できるためヒーターとして好ましく用いられる。NTCサーミスタヒーターをヒーターとして用い、温度モニターしながら加熱を行なっても良い。
ヒーターには、耐腐食処理がされていることが好ましい。また、反応物が直接燃料電池に触れないように設計された、化学反応によるヒーターであっても良いし、別途用意された燃焼器により発生した熱、たとえば炭化水素の水蒸気改質による水素−酸素を燃料とした燃料電池で改質反応に使われる熱、等を伝えるヒーターであっても良い。ヒートパイプ等により他で発生する熱源から、機器の動作熱やパワートランジスタ等のデバイスの発熱等の熱を伝導してきても良い。
(実施の形態1)
図3は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図である。図3では燃料電池セルが単セルである場合を示している。なお本発明において、図3以降に関し、以下で特に説明しない部分については図1と同様の構成とされている。
本発明においては、集電体を構成する2以上の層は、アノード電極またはカソード電極が形成されている領域において互いに絶縁層のみを介して積層され、アノード電極またはカソード電極が形成されていない領域の少なくとも一部において電気的に接続されていることが好ましい。この場合、電極が形成されている領域においては、低抵抗層と該低抵抗層以外の層とが絶縁されているため、集電体における低抵抗層以外の層に電流を流した時に生じる電圧降下による電位分布を電極に印加してしまう事を防ぎ、電極内の触媒の劣化を良好に防ぐことが出来る。また、集電体を構成する各層は絶縁層のみを介して比較的近距離で積層されるため、低抵抗層以外の層に電流を流すことによって生じさせた熱は、低抵抗層を通じて比較的少ない損失で電極および電解質層に伝えられ、電極および電解質層が効率良く加熱される。また、電極が形成されていない領域には、集電体における低抵抗層と該低抵抗層以外の層との電気的な接合部位が存在するため、集電体の低抵抗層以外の部分に電流を流すことによって生じさせた熱を、該接合部位を介して電極および電解質層に効率良く伝え、電極および電解質層を効率良く加熱することができる。
図3に示す燃料電池においては、集電体が高抵抗層303aおよび低抵抗層303bの2層からなり、高抵抗層303aと低抵抗層303bとの間に絶縁層311が形成されている。高抵抗層303aと低抵抗層303bとは、アノード電極302a、カソード電極302bが形成されている領域では絶縁層311を介することによって電気的に絶縁されている。一方、アノード電極302a、カソード電極302bが形成されていない領域のうち、セパレータの外部に集電体が引出されている側、すなわちセル外への電流取り出し部側、の反対側では、高抵抗層303aと低抵抗層302bとが絶縁層311を介さず直接接するように高抵抗層303aの形状が設計され、これにより高抵抗層303aと低抵抗層303bとが電気的に接続されている。
なお、電流取り出し部側の中間部では、高抵抗層303a、絶縁層311、低抵抗層303bが絶縁接着層312によって接合され、取り出し部側と反対側の端部では、高抵抗層303a、絶縁層311、低抵抗層303bが絶縁封止部313により封止されている。
本発明において、たとえば図3に示すように絶縁層が設けられる場合、該絶縁層は多孔質体からなることが好ましい。この場合、燃料電池における反応の副生成物である二酸化炭素や水の排出効率、および燃料や酸素の拡散供給がより良好になり、発電出力が向上する。
多孔質体としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PP(ポリプロピレン)等の撥水性の多孔質体が好ましい。撥水性の多孔質体を用いる場合、カソード側においては、生成水が押し出され、酸素の供給口が確保されるため、酸素の供給不足による出力電力の低下が抑えられるという利点が得られ、アノード側においては、副生成物である二酸化炭素や水が速やかに多孔質体を通って外部に排出される為、気泡が触媒層に付着した場合に生じる燃料供給の阻害を防ぐことが出来、メタノール水溶液等の燃料の供給不足による出力電力の低下が抑えられるという利点が得られる。
多孔質体としては、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)等の、表面が親水性である無機多孔質物質の他、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)等の親水性を示す粒子と有機高分子とからなるコンポジット層、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、アミド基等の親水性を示す官能基を有した有機高分子、等からなる多孔質体を用いることができる。
図3においては、アノード側とカソード側との両方において、集電体の低抵抗層303bがそれぞれ電極と接するように形成されている。また、集電体における低抵抗層303b以外の部分、すなわち高抵抗層303aが、絶縁層311を介して電極と接するように形成されている。高抵抗層303aは、低抵抗層303bから高抵抗層303aを介して電流を燃料電池のセル外に取り出すための取り出し部を有している。これにより、電流の取り出し時において、電極から集電された電流は、低抵抗層303bを通ってそのまま電流を出力する場合には低抵抗層303bを平面方向に流れ、取り出し部に達した電流はそのままセル外へ取り出される。一方、高抵抗層303aを通って電流を出力する場合には、低抵抗層303bの取り出し部と反対側の領域に電流が流れ、高抵抗層303aと低抵抗層303bとの界面を経て高抵抗層303aへと伝わり、さらに高抵抗層303aを平面方向に流れて取り出し部に達する。ここで、高抵抗層303aは電極と接していないため、高抵抗層をより均一に発熱させることができる。
高抵抗層303a、低抵抗層303bのいずれについても、平面方向に電流を効率良く流すためには、平面方向において均一な抵抗値を有するように形成されることが好ましい。
なおこの場合、電極および電解質層の加熱をより均一に行なうことができる点で、集電体を構成する各層の抵抗値は、少なくとも電極が形成されている領域において、平面方向、すなわち各層の界面と平行な方向において均一な値であることが好ましい。
集電体を構成する各層の抵抗値を平面方向において均一にする方法としては、たとえば、集電体に貫通孔を設け、導体部(すなわち貫通孔以外の部分)の厚みのばらつきを、理想値から±10%程度の幅に抑え、貫通孔の径およびピッチを小さくする方法が例示できる。
また集電体の抵抗値が平面方向において均一であるか否かの評価は、たとえば、直流2端子法や直流4端子法等によって抵抗値を測定し、1cm2あたりのシート抵抗のばらつきが理想値から±10%以下の幅であるときに均一(すなわち一様)と判定する方法等によって評価できる。
本発明の集電体が、たとえば図3に示すような構成で、高抵抗層303aと低抵抗層303bとの2層からなる場合、低抵抗層303bの比抵抗は、1×10-4Ω・cm程度、高抵抗層303aの比抵抗は、3×10-3〜4×10-3Ω・cm程度であることが好ましい。また、たとえば、電極の面積が5cm2である燃料電池のセルの場合、低抵抗層303bの抵抗値は前述の1cm2あたりのシート抵抗で10mΩ以下であることが好ましく、高抵抗層303aの抵抗値は、前述の1cm2あたりのシート抵抗で200〜400mΩ程度であることが好ましい。
なお、本発明において、集電体を構成する各層は、たとえば、半田、Agペースト、融着、導電シート、導電性接着剤等により他の層と接合されることができる。
絶縁層311を構成する材料としては、高分子樹脂が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂等が例示できる。その他、セラミック等も好ましい。チタンやSUS等、表面に酸化被膜の不動態を形成する金属においては、酸素雰囲気下の400〜800℃の高温で加熱処理を行ない、高抵抗の酸化被膜を絶縁層として形成しても良い。
絶縁接着層312を構成する材料としては、たとえば、紫外線硬化型または熱硬化型であり、耐硫酸性、耐メタノール性に優れた樹脂が好ましい。具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂等が好ましい。
また、絶縁層および絶縁接着層に用いられる樹脂としては、メタルマスク等に用いられる感光性レジストフィルムや感光性製版樹脂も好ましく用いられる。
絶縁封止部313には、絶縁層311に用いられるのと同様の高分子樹脂を好ましく用いることができる。また、絶縁接着層312は、電極の形成されている領域の外側に設けられ、典型的には、高抵抗層303aと低抵抗層303bとを接着するものである。絶縁接着層312は、電極の形成領域に被らないように配置されることが好ましい。
図3に示すような構成においても、集電体、電極および電解質層は一体化されて密着していることが好ましい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図である。図4に示す構成は、アノード側および/カソード側に形成されることができるが、図4においては一方のみを図示している。図4において、集電体は高抵抗層403aおよび低抵抗層403bの2層から構成される。絶縁層411aは、高抵抗層403aをコーティングするように形成され、該絶縁層411aによって高抵抗層403aと電極402とが絶縁されている。集電体は、電極402内に埋め込まれるように配置されている。
実施の形態1では、高抵抗層の形状を、低抵抗層との電気的な接合を有するように設計する例について説明したが、本実施の形態では、接合部材414によって高抵抗層403aと低抵抗層403bとが電気的に接続されている。
図4では、低抵抗層403bから、接合部材414と高抵抗層403aとを介し、取り出し部から電流を取り出すことができる構成とされている。この場合、スイッチの切り替えによって電流を高抵抗層に流すことによる電極および電解質層の加熱を、より効率的に行なうことができる。
電極402が形成されていない領域において、取り出し部側には絶縁接着層412が設けられ、取り出し部と反対側の端部には、封止のための絶縁封止部413と、接合部材414とが設けられている。これにより、電流の取り出し時において、電極から集電された電流は、低抵抗層403bを通ってそのまま電流を出力する場合には低抵抗層403bを平面方向に流れて、取り出し部に達した電流はそのままセル外へ取り出される。また、一方、高抵抗層403aを通って電流を出力する場合には、低抵抗層403bの取り出し部と反対側の領域に電流が流れ、高抵抗層403aと低抵抗層403bとの界面を経て高抵抗層403aへと伝わり、さらに高抵抗層403aを平面方向に流れて取り出し部に達する。ここで、高抵抗層403aは電極と接していないため、高抵抗層をより均一に発熱させることができる。
高抵抗層403a、低抵抗層403bのいずれについても、平面方向に電流を効率良く流すためには、平面方向において均一な抵抗値を有するように形成されることが好ましい。
(実施の形態3)
図5は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図である。図5に示す構成は、アノード側および/カソード側に形成されることができるが、図5においては一方のみを図示している。本発明においては、たとえば図5に示すように、集電体の貫通孔の部分に電極502が形成され、高抵抗層503aは絶縁層511により被覆されており、電極502と絶縁されていることが好ましい。低抵抗層503bは電解質層101と接するように形成されることができる。このような構成によれば、電極および電解質層の加熱をより均一かつ効率良く行なうことができる。
図5において、絶縁接着層512、絶縁封止部513、接合部材514は、図4における絶縁接着層412、絶縁封止部413、接合部材414とそれぞれ同様の形状および機能を有する。図5においては、集電体の高抵抗層503aおよび低抵抗層503bが、層厚方向に貫通する貫通孔を有するように形成される。低抵抗層503bはこれにより電極502と接触する。
実施の形態1〜3では、高抵抗層と低抵抗層とからなる集電体を用い、高抵抗層と低抵抗層とが電極の形成されていない領域において電気的な接合を設ける場合について説明した。ここで、たとえば図3に示されるように高抵抗層の形状を調整することによって上記の電気的な接合を設ける場合の集電体の作製方法の例について以下に説明する。なお、以下では、集電体に貫通孔を設けることによって抵抗値を調整する態様についても併せて説明する。
図6は、貫通孔を有する集電体の作製方法の一例について説明する図である。たとえば0.01Ω・cm程度のP型シリコン基板に、直径100μm程度、ピッチ200μm程度で、六方最密充填で貫通孔をあけ、基板15とする(図6(A))。このとき、基板としてたとえばN型シリコンを用いる場合には、たとえば光アシスト電解エッチング法により貫通孔をより密にあけることができる。以上の方法で高抵抗層を形成する。
次に、基板15上の一部の領域に、たとえばスパッタにより、たとえば金(Au)等の金属層25,35を積層する(図6(B))。次に、基板表面を酸化処理して、特に上面の金属層25,35以外の部分を絶縁化する。酸化処理においては、たとえば乾燥酸素中にて900℃で3時間加熱し、厚みが約100nm程度の酸化層45を形成することができる(図6(C))。
金属箔55としては、たとえばチタン箔100μmに基板15の貫通孔と同様の形状の貫通孔を孔加工により形成したものや、または、基板15の貫通孔の少なくとも一部分が該チタン箔の貫通孔に含まれるような形状の貫通孔を孔加工により形成したもの等を使用できる。なお該チタン箔には、たとえばAu(金)等のメッキをさらに施すことが好ましい。具体的には、上記のような形状とすることで基板15と金属箔55とを積層したときに両者ともを貫通可能な孔をたとえばパンチング、ラス加工等により施したチタン箔に、Auを厚み0.2μm程度でメッキして用いることができる。以上の方法で低抵抗層を形成する。
次に、高抵抗層の基板15と低抵抗層の金属箔55とを半田により接合する。半田部にはPVDF、感光性ポリアクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂等によりコーティングを行なうことができる。以上により、2つの電流取り出し部65,75が形成され、貫通孔を有する集電体が作製される(図6(D)。なお、電流取り出し部65,75に各々スイッチを設けることによって、高抵抗層と低抵抗層とからなる集電体として使用することが可能である。
(実施の形態4)
図7は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図である。本発明においては、集電体が高抵抗層と低抵抗層とを少なくとも含んでいれば良いが、高抵抗層と低抵抗層との間に、たとえば高抵抗層と低抵抗層との中間の抵抗値を有する層が存在する3層以上からなる集電体も使用できる。図7には、高抵抗層703a、低抵抗層703b、および、高抵抗層703aと低抵抗層703bとの中間の抵抗値を有する中抵抗層703c、の3層からなる集電体を用いる例について示している。図7においては、高抵抗層703a、低抵抗層703b、中抵抗層703cの各層を絶縁するための絶縁層711a,711bが設けられている。
高抵抗層703a、低抵抗層703b、中抵抗層703cは、アノード電極、カソード電極が形成されている領域では絶縁層711a,711bを介することによって電気的に絶縁されている。一方、アノード電極、カソード電極が形成されていない領域のうち、電流取り出し部側の反対側では、高抵抗層703a、低抵抗層703b、中抵抗層703cが絶縁層を介さず直接接することによって電気的に接続されている。絶縁接着層712および絶縁封止部713は、図3に示す絶縁接着層312および絶縁封止部313と同様に形成されることができる。これにより、スイッチの切り替えによって電流を高抵抗層または中抵抗層に流すことによる電極および電解質層の加熱を、より効率的に行なうことができる。
図7においては、アノード側とカソード側との両方において、集電体の低抵抗層703bがそれぞれ電極と接するように形成されている。また、集電体における低抵抗層703b以外の部分、すなわち高抵抗層703aおよび中抵抗層703cが、絶縁層711を介して電極と接するように形成されている。これにより、電流の取り出し時において、低抵抗層703bの取り出し部から電流を取り出す場合、電極から集電された電流は、低抵抗層703bを平面方向、すなわち層厚方向と垂直の方向に流れて取り出し部に達する。取り出し部に達した電流はそのままセル外へ取り出される。また一方、中抵抗層703cの取り出し部から電流を取り出す場合、低抵抗層703bの取り出し部と反対側に流れた電流は、中抵抗層703cおよび低抵抗層703bと高抵抗層703aとの界面を経て中抵抗層703cへと伝わり、中抵抗層703cを平面方向に流れて取り出し部に達する。高抵抗層703aの取り出し部から電流を取り出す場合も同様に、低抵抗層703bの取り出し部と反対側に流れた電流は、高抵抗層703aと低抵抗層703bとの界面を経て高抵抗層703aへと伝わり、高抵抗層703aを平面方向に流れて取り出し部に達する。
以上のように、集電体が抵抗値の異なる3以上の層からなる場合においても、各層の取り出し部のいずれから電流を取り出すかを選択することにより、集電体の発熱量を制御できる。ここで、高抵抗層703aおよび中抵抗層703cは電極と接していないため、高抵抗層および中抵抗層のより均一な発熱が可能である。
(実施の形態5)
図8は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図であり、図9は、図8のIX−IX断面を示す断面図である。図8および図9に示す構成は、アノード側および/カソード側に形成されることができるが、図8および図9においては一方のみを図示している。本実施の形態では、電極、集電体、電解質層、の順の積層構造を有する場合について説明する。図8および図9に示す構成においては、集電体の高抵抗層803aが絶縁層811で覆われている。これにより、高抵抗層の電極および電解質層との接触をより確実に防止でき、電極および電解質層の加熱をより均一に行なうことができる。
絶縁層811は、電極802を介して電解質層101と接合される部位と、接着層816によって電解質層101と接合される部位とを有する。絶縁層811、高抵抗層803a、低抵抗層803bは電極802に挟み込まれるように形成され、さらに絶縁封止部813、接合部材814が形成されている。
図8および図9に示すような形状の電極802は、触媒を担持した炭素粒子と電解質高分子とからなる触媒ペーストを電解質層101上に塗布、乾燥した後、集電体を積層させ、さらにその上から該触媒ペーストを塗布、乾燥させる事により作製することができる。触媒ペーストは下記の手順により作製できる。アノード電極を形成するための触媒ペースト(以下、アノード触媒ペーストとも記載する)は、Pt担持量32.5wt%、Ru担持量16.9wt%のPt−Ru粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(たとえば、TEC66E50、田中貴金属社製)と、たとえば20wt%のナフィオン(登録商標)のアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イソプロパノールと、アルミナボールとを、所定の割合でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の容器に入れ、攪拌脱泡機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより作製できる。また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(たとえば、TEC10E50E、田中貴金属社製)を用いて、アノード触媒ペーストと同様に、カソード電極を形成するための触媒ペースト(以下、カソード触媒ペーストとも記載する)を作製できる。集電体と電解質層101とを接合した後、上記のアノード触媒ペーストと上記のカソード触媒ペーストとを各々塗布し、乾燥させることで、電極802を作製できる。
図8および図9に示される構成においては、接着層816で絶縁層811と電解質層101とを接合することにより集電体と電解質層とを一体化している。これにより、ボルトやナットといった締結部材で集電体、電極、電解質層を押さえつける必要がないため、セルの一層の小型化、薄型化、軽量化が可能となる。なお本発明の「一体化」とは、たとえばエンドプレートおよびボルト、ナットなどで締結されることなく、充分に密着している状態を意味する。
また、集電体と電解質層とが接着層を用いて一体化されることによって両者が剥がれるおそれが少なく、電極および電解質層と集電体との安定したコンタクトを確保できるため、燃料電池の信頼性を一層向上させることができる。
接着層816の材料としては、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の他、感光性樹脂であるポリアクリル酸エステル、ポリアクリル樹脂等を用いることができる。
(実施の形態6)
本発明において、集電体のうち低抵抗層以外の層が絶縁層で覆われる場合、絶縁層が電解質材料からなることも好ましい。電解質層は絶縁性の電解質からなる。よって、上記の場合、集電体における低抵抗層以外の層が電子絶縁性の電解質で覆われることとなり、低抵抗層以外の層を電流が局所的に流れた場合にも、電解質層や触媒の劣化の問題を回避することが出来る。また、絶縁層がプロトン導電性である為、イオンの拡散抵抗を低減することができる。さらに、電解質層と集電体とを強固に接着させることができるため、集電体の剥離によるオーミック抵抗の増大を引き起こす可能性が低くなる。
図10は、本発明の燃料電池における集電体の構成の例について説明する平面図であり、図11は、図10のXI−XI断面を示す断面図である。図10および図11に示す構成は、アノード側および/カソード側に形成されることができるが、図10および図11においては一方のみを図示している。図10および図11に示す構成において、集電体は、電解質層101と電極1002との間に形成されている。絶縁層1011は電解質材料からなる。集電体の高抵抗層1003aは絶縁層1011で覆われ、絶縁層1011の上に低抵抗層1003bが形成されている。また絶縁層1011は接着層1016を介して電解質層101と接合されている。すなわち、高抵抗層1003aが電解質に埋め込まれるように一体化されて、さらに、絶縁封止部1013、接合部材1014が形成されている。なお接着層1016の材料としては、接着層816と同様の材料を用いることができる。
図10および図11に示される構成において、絶縁層1011は、電解質層101と同様の材料から構成されることができる。絶縁層1011と電解質層101とは、たとえば電解質層101と同様の構成の、好ましくは比較的低分子量の電解質高分子、より好ましくは電解質層101よりも低分子量の電解質高分子で接着されていることが好ましい。具体的には、電解質層101よりも低分子量の電解質高分子を電解質層101および/または絶縁層1011に塗布し、該電解質層101と該絶縁層1011とを貼り合わせた後、ホットプレスにより接着することができる。この場合、集電体と電解質層101との剥離が防止され、電極と集電体との安定なコンタクトを確保できるため、燃料電池の信頼性が向上する。また、アノード電極で生成したプロトンのカソードへの移動がより効率良く行なわれため、燃料電池の発電効率が一層向上する。
図10および図11に示されるような形状の電極1002は、たとえば触媒を担持した炭素粒子と電解質高分子とからなる触媒ペーストを電解質層101上に塗布、乾燥した後、集電体を積層させ、さらにその上から該触媒ペーストを塗布、乾燥させる事により作製することができる。触媒ペーストは下記の手順により作製できる。アノード電極を形成するための触媒ペースト(以下、アノード触媒ペーストとも記載する)は、Pt担持量32.5wt%、Ru担持量16.9wt%のPt−Ru粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(たとえば、TEC66E50、田中貴金属社製)と、20wt%のナフィオン(登録商標)のアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イソプロパノールと、アルミナボールとを、所定の割合でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の容器に入れ、攪拌機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより作製できる。また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(たとえば、TEC10E50E、田中貴金属社製)を用いて、アノード触媒ペーストと同様に、カソード電極を形成するための触媒ペースト(以下、カソード触媒ペーストとも記載する)を作製できる。集電体と電解質層101とを接合した後、上記のアノード触媒ペーストと上記のカソード触媒ペーストとを各々塗布し、乾燥させることで、電極1002を作製できる。
<燃料電池の製造方法>
本発明の燃料電池は、上述したような構造を備えるものであれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の燃料電池はたとえば以下のようにして作製することができる。なお、燃料電池の製造方法において以下で説明していない部分については、燃料電池の製造において通常用いられる公知の方法を適宜用いることができる。なお、以下では、集電体が高抵抗層と低抵抗層との2層からなり、該高抵抗層を絶縁層で覆う場合についてまず説明する。
本発明の燃料電池は、典型的には、(1)高抵抗層と低抵抗層とからなる集電体を形成する工程(集電体形成工程)と、(2)高抵抗層と低抵抗層とからなる集電体のうち、高抵抗層を絶縁層で被覆する工程(絶縁被覆工程)と、(3)高抵抗層と低抵抗層とを接合する工程(接合工程)と、(4)拡散層を形成する工程(拡散層形成工程)と、(5)電極を形成する工程(電極形成工程)と、(6)拡散層と集電体と電解質層と電極とを一体形成する工程(一体化工程)からなる、製造方法により製造できる。電極と電解質層とが一体形成されたCCM(Catalyst Coated Membrane)を購入し、使用する場合は(5)の電極形成工程を省略することができる。
ここで「一体化」とは、MEAの各部材が外部から圧力を加えなくとも分離しない状態のことをいい、具体的には化学結合やアンカー効果、粘着力等により接合された状態のことを指す。一体化させるための方法としては、たとえば、ホットプレス法により電解質層を電極および集電体に融着する方法が挙げられる。典型的には、電極中の固体高分子電解質や導電性多孔質物質を構成する高分子材料がホットプレス時の熱で変形することにより、3次元的なアンカー効果で接合を確保している。このような方法によれば、ボルトやナット等により締め付けを行って外部圧をかけることなく、集電体と電極との電気的、熱伝導的な接触を良好に保つことができる。
(1)集電体形成工程
集電体は、たとえばシリコンプロセスで作製することができる。各層の抵抗値は、シリコン上へのメタルや、シリコンへの異種イオンのドープ量によって制御することが可能である。MEMS(micro electro mechanical systems)技術を用いることは、高精度な微細加工が可能となり、プロセス的に量産にも向く点で好ましい。
たとえば、ドリル、UV−YAGレーザー、ウェットエッチング等により穴をあけたシリコン基板を作製し、ダイシングにより、所定の大きさに調製することで集電体を作製することができる。また、N型シリコンの場合は、光アシスト電解エッチング法によれば穴をより密にあけることができる。また、異なる抵抗値を有する集電体として、部分的に金属をスパッタにより積層し、形成することが出来る。具体的には、シリコン基板表面を酸化処理し、金属以外の部分を絶縁化する。次に、上記で酸化処理された基板の表面に金属を積層する。または、金属箔、金属板接着剤を介して接着させる。酸化処理の替わりにポリイミド等の絶縁シートを塗布、または接着し、形成しても良い。金属表面には必要に応じて、金メッキを行なう。2つの電極取り出し口に各々スイッチを形成する。
集電体形成工程においては、たとえば、集電体とするための金属板または金属箔に、パンチング法、エッチング法、レーザー法、ドリルを用いた孔加工等を行なう方法等によって、平面に複数の開孔を形成することができる。
パンチング法においては、所定の開孔パターンを形成するための金型を作製し、これを集電体に押し当て打ち抜くことにより、開孔を形成することができる。このような製造方法では、特別な装置を用いずとも、複数の開孔を一度に形成することができ、安価な加工が可能となる。また、熱がかからない機械加工であるため、選択される集電体の材料、材質にとらわれない開孔の形成が可能となる。
エッチング法としては、プリント配線技術等に用いられるフォトエッチング工程の方法を用いることができる。集電体の一方の表面に、感光性のレジストを塗布またはラミネートして感光層を形成し、露光後に残すべき集電体のレジストパターンを作製した後、現像、エッチングすることで、開孔を形成することができる。このような製造方法では、複数の開孔を一度に形成することができるとともに、微細な開孔パターンを加工することが可能となる。
レーザー法においては、エキシマ、炭酸ガス、キセノン等のレーザーを用い、開孔を形成することができる。このとき、集光レーザーを用い、単開孔ごとに集電体をX−Yステージ上で移動させ、所定の開孔パターンを形成することができる。
上記いずれの方法においても、金属板または金属箔の厚み、開孔径、開孔率によって集電体の抵抗値を制御することが出来る。
また、集電体として、金属線を平織りに編んだメッシュを用いることも出来る。この場合、メッシュの線径や目開きを制御することで、抵抗値を制御することができる。
なお、集電体が耐酸性、耐薬品性を必要とする場合には、上記の方法で開孔を形成した後、Au,Pt等の耐酸性、耐薬品性に優れた金属を集電体表面にメッキする事が好ましい。
(2)絶縁被覆工程
絶縁層で被覆された高抵抗層は、たとえば、電極の表面全面を覆うように形成されたポリイミドのシートで集電体をはさみ、外周をポリイミド系接着剤で封止する方法により作製できる。また、ネガ型感光性のポリイミド樹脂を、高抵抗層における電流取り出し部以外の部分に塗布し、UV照射によって該ポリイミド樹脂を硬化させることにより高抵抗層を絶縁層で被覆することができる。また、熱硬化性ポリイミド樹脂を用い、キュア温度で熱硬化させて形成しても良い。絶縁層となるポリイミドシートは多孔質体であることが好ましい。ただしこの場合、上述の触媒ペーストが該多孔質体の細孔の内部に入り込み、集電体の高抵抗層と電極とが電気的に接触してしまうことがない程度に細孔径が小さい多孔質体を用いる。集電体の高抵抗層と電極との電気的な接触を良好に防止できる点で、該細孔径は、たとえば直径1μm以下であることが好ましい。
絶縁層として使用できる他の多孔質体のシートとしては、ポリプロピレンやポリエチレンの不織布、発泡PTFE等が挙げられる。絶縁層として撥水性の多孔質体を用いる場合は、二酸化炭素を排出できるよう、多孔質体をセルの筐体外部まで引き伸ばしておくことが好ましい。また、NMP(N−メチルピロリドン)溶剤に溶解させたPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を集電体に塗布する方法等により絶縁層を作製しても良い。この場合、上記の開孔形成工程で形成した開孔を塞がないようにすることが好ましい。
(3)接合工程
集電体の高抵抗層と低抵抗層とを接合する方法としては、電極が形成された領域の外側で、高抵抗層と低抵抗層とを半田等の接合部材で接合する方法等を用いることができる。この場合、接合部材としては低温半田を用いることが好ましい。半田付けは、上記(2)の工程より前に行なっても良い。また、カシメや、ボルト、ナットにより高抵抗層と低抵抗層とを接合させても良い。その際、接合部の接触面積が多くなるよう、たとえば銀ペーストを塗布することが好ましい。また、炭素粒子等の導電性粒子と有機高分子とを溶剤に分散させたペーストによって高抵抗層と低抵抗層とを接着することで接合を行なっても良い。接合部には、ポリイミドやPDVF等の耐熱性、絶縁性に優れた樹脂でコーティングすることにより絶縁封止部を設けることが好ましい。また絶縁封止部は、熱硬化性樹脂や感光性樹脂からなることがさらに好ましい。
(4)拡散層形成工程
上記(3)の工程で作製された集電体のうち、電極に接着させる面と反対側の面に接着液を塗布し、該接着液を介して集電体と拡散層とを貼り合わせ、さらに後述の(6)の一体化工程で熱圧着することにより、集電体と拡散層とを一体化することができる。拡散層としては、典型的には多孔質体が好ましく用いられる。また、接着液としては、拡散層を形成する多孔質体と同様の物性を持った高分子が好ましく、親水性の多孔質体を備える場合は親水性の高分子を、撥水性の多孔質体を備える場合は撥水性の高分子を用いることが好ましい。
(5)電極形成工程
触媒粒子と導電性粒子と電解質とを有機溶媒に分散させて得られる触媒ペーストを、バーコート法、スクリーン印刷法またはスプレーコーティング法等を用いて均一に塗布し、該触媒ペースト中の有機溶媒を除去する方法等により電極を形成できる。このような方法では、多数の細孔を有した電極を形成することができるため、触媒粒子の有効な表面積を増加させることが可能となる。
本発明において、電極を構成する触媒層は電解質層の表面に形成してもよく、たとえば導電層に被覆された導電性多孔質からなる拡散層の表面に形成してもよい。あらかじめ電解質層または導電層に触媒層を一体形成することにより、密着性の良い界面を得ることが可能となる。マスクにより導電層が露出している場合は、その上から触媒層を塗布して形成することで、触媒層と導電層とを直接接触させることができる。
さらに、たとえばプラスチックフィルム等(図示せず)の上に触媒層を形成した後、電解質層や集電体等に該触媒層を転写する方法を用いても良い。このような製造方法では、あらかじめ触媒層を別に形成しておくことができる。よって、電解質層のプロトン伝導率を低下させてしまう有機溶媒や導電層の表面に絶縁層を形成させてしまう有機溶媒であっても、触媒粒子と導電性粒子との分散性を向上させる目的で上記のペーストの溶媒として用いることが可能となる。
(6)一体化工程
集電体と電解質層と電極とは、たとえば熱圧着等により一体化することができる。具体的には、上記(5)の電極形成工程において得られた、触媒層の形成された電解質層の触媒層面と上記の(1)、(2)、(3)の工程において作製された集電体の開孔部とが面接するように配置し、さらに上記の(4)の工程で設けた拡散層を配置する。次に、ホットプレス機を用いて、電解質層、触媒層、拡散層、および上記の(4)の工程で用いた接着液の軟化温度やガラス転移温度を超える温度で熱圧着する。
以上のような方法により作製されたMEAは、各界面において良好な密着性を有するとともに、微細な開孔パターンが形成されているため、このようなMEAを用いて燃料電池を作製することにより、メタノールおよび酸素の供給不足による出力電圧の低下を抑えることが可能となる。
なお、本発明において集電体が抵抗値の異なる3層からなる場合には、たとえば以下の方法によってMEAを作製することができる。すなわち、上記の工程(1)において3種類とも異なる抵抗値となるような3層からなる集電体を作製する。また、上記の工程(2)にて、集電体のうち低抵抗層以外の層にPVDFの溶液を塗布し、電子絶縁性を付与する。上記の工程(3)にて、3層の集電体を接着する。図7に示すように、低抵抗層703bを電極に接着させ、絶縁層711bを挟んで、中抵抗層703c、絶縁層711a、高抵抗層703aの順に積層する。集電体の各層にスイッチを設けることにより、各層に出力電流が流れるように制御することができる。
本発明において集電体と絶縁層と電解質層とを接合する場合には、上記の工程(1)〜(5)までは前述の通りとし、工程(6)の一体化工程において、絶縁層を電解質層と接着させる方法がある。電極の形成領域外では、電解質層と絶縁層とを接着剤を用いて接着させることができる。接着剤としては、電解質層と同様の高分子を絶縁層と電解質層とに塗布し、上記の工程(6)に記載の方法で絶縁層と電解質層とを重ね合わせ、ホットプレスにより接着させる。接着剤としては、その他にも、耐酸性、耐薬品性が優れ、ホットプレス時の温度で軟化して、熱圧着により接着できる高分子が好ましく用いられる。また、電解質層の耐熱温度以下の温度、すなわち電解質層に変質および軟化が生じない温度で熱硬化する高分子は好ましい。これにより、更に集電体とMEAとを強固に密着させることが出来、長期に渡る密着性の向上、集電時の接触抵抗による損失の軽減、熱伝導の効率化、を長期に渡って実現することが出来る。これにより製品の信頼性、歩留まりが向上する。
本発明において、電解質材料からなる絶縁層を設ける場合、工程(2)において、絶縁層の材料として電解質材料を用い、工程(6)の一体化工程における接着剤として、たとえば電解質材料を有機溶剤で分散させた溶液を用いることができる。これにより、集電体と電解質層とを強固に接着させるだけでなく、アノード電極のアノード触媒層で得られたプロトンは速やかに電解質層に移動し、カソード側へ移動することが出来る。また、カソード側でも、電解質層からカソード触媒層へのプロトンおよび水の拡散が向上し、燃料電池の出力電力を向上させることが出来る。
図12は、本発明の燃料電池の構造を示す断面図である。燃料電池1200においては、筐体59の内部に、電解質層1201を挟んで対向するようにアノード電極1202a,カソード電極1202bが形成されている。アノード集電体としては低抵抗層1203bが、カソード集電体としては絶縁層1211を挟んで高抵抗層1203aおよび低抵抗層1203bが、それぞれ形成され、さらに、アノード側の拡散層1208a、カソード側の拡散層1208bが形成されている。高抵抗層1203aと低抵抗層1203bとは、電極が形成されていない領域において接合部材1214によって電気的に接続されている。カーボンGDLからなるカソード側の拡散層1208bにカソード集電体をプレスして押し付け、カソード電極1202bとしてのカソード触媒層をカソード集電体の上に塗布することにより、カソード極が形成されている。アノード側には、燃料容器19、燃料供給口29、換気孔49が設けられている。アノード集電体、カソード集電体には、それぞれアノード極配線69a、カソード極配線69bが接続されている。
低抵抗層1203bとしては、100μm程度の厚みのTi板に縦0.5mm、横1mm程度のひし形の貫通孔を開けたメタルラス(エキスパンデッドメタル)に金を1μmの厚みでメッキしたものを用いることができる。また、高抵抗層1203aとしては、たとえば、材質がSUS316Lで線径30μmの金網(100メッシュ)であるSUS316Lメッシュを用いることができる。たとえばアノード側の拡散層1208aとアノード集電体とをプレスにより固定した上にアノード電極1202aとしてアノード触媒層を塗布することで、アノード電極が集電体と接して形成されている。アノード極、たとえばナフィオン(登録商標)117からなる電解質層1201、カソード極、の順で、アノード極とカソード極との触媒形成領域の位置を合わせて積層し、たとえば130℃、10kgf/cm2で2分間ホットプレス処理することにより、膜電極複合体が形成される。
さらに、筐体59はたとえばアクリル樹脂の削り出しにより作製できる。上記の筐体と上記の膜電極複合体との外周を、たとえば熱硬化性高分子、エポキシ樹脂、より好ましくは光重合性高分子、等の接着層39を用いて接着することにより、図12に示す燃料電池が作製される。
上述のようにして作製される本発明の燃料電池は、たとえば携帯用電子機器等に対して好適に適用され得る。
<燃料電池システム>
本発明はまた、負荷として外部機器を駆動するための燃料電池システムであって、上述のいずれかの燃料電池と、集電体を構成する2以上の層への通電の有無をそれぞれ制御するためのスイッチ部と、燃料電池のアノード電極および/またはカソード電極の温度ならびに外気温度の少なくともいずれかを検知するための温度センサーと、温度センサーの検知結果に基づいてスイッチ部を制御するための制御部と、を備える、燃料電池システムに関する。図13〜15は、本発明の燃料電池システムの例について説明する図である。図13〜15では、アノード側およびカソード側の集電体が高抵抗層と低抵抗層とからなる場合を例に説明するが、既述のように集電体は3以上の層で構成されても良い。なお図13〜15では、便宜上セル構造の上部をカソード側、下部をアノード側として説明する。
(実施の形態7)
図13に示す燃料電池システム1300は、図3に示したセル構造の燃料電池300と、アノード電極の近傍に設けられた温度センサー91と、制御部92とを備え、スイッチ部として、スイッチ441,442,443,444、445,446が設けられる。集電体は、アノード側およびカソード側の高抵抗層303aと、アノード側およびカソード側の低抵抗層303bとからなる。各々のスイッチにより、集電体の各層への通電の有無をそれぞれ制御することができる。なお図13において、燃料電池300の構造は簡略化して表されている。図13においては、温度センサー91がアノード電極の近傍に設けられる場合について示しているが、該温度センサー91の設置場所はこれに限定されない。温度センサーは1のみまたは2以上設けることができる。典型的には、アノード電極および/またはカソード電極の温度ならびに外気温度の少なくともいずれかを感知できる態様で設けられることができる。電極の温度は直接感知されることが好ましいが、電極近傍に温度センサーを設け、電極近傍の温度を電極の温度として感知しても良い。特にアノード電極近傍に温度センサーを設けることは特に好ましい。
温度センサーで温度をモニターし、外部機器に導通させる部分を集電体の低抵抗層と高抵抗層とに切り替えて行なうことで温度制御を行なうことにより、外部機器の定常時においても高効率で燃料電池を発電し続けることができる。また、水素と酸素とを燃料とする燃料電池は、カソードで生成する水の除去がうまく出来ていない場合、連続的に出力を取り出していると出力が落ちることがある。これは、水がたまり、酸素が供給されなくなることが原因の1つである。定常時において電極近傍の温度が高い場合には、カソードで発生した水が結露せず、カソード燃料および酸素の供給を阻害しないので、連続出力特性も向上することができる。本発明によれば、従来とは異なり、特に電極の触媒付近の温度を高くすることができるので、顕著な出力向上効果を得ることができる。さらに、本発明によれば、触媒活性も向上する。有機化合物燃料、例えばメタノール等を燃料とする場合には、CO被毒などによる触媒活性の失活が起こるが、高温で動作させることにより失活の割合を減らすことが出来、連続出力特性を向上させることができる。
本発明の燃料電池システムが、温度センサーと制御部とを備える場合、外部機器の待機時の軽負荷時や停止時に、燃料電池が所定温度未満になると燃料電池を発電させることができる。自己発熱、および、必要によっては高抵抗層に電流を流すことによる発熱、によって、燃料電池の特に電極や電解質層の近傍の温度が一定未満にならないように制御し、燃料電池の構成材料の耐久性を低下させないという効果が得られる。また、電極および電解質層の温度を所定の温度以上に維持している場合、外部機器が急に待機時から復帰した時にも燃料電池から出力を瞬時に取り出せる利点もある。
(実施の形態8)
図14においては、図3に示す燃料電池におけるセル構造と同様のセル構造が複数スタックされた燃料電池を含む燃料電池システムを例に示しており、簡略化のため燃料電池の各部材の参照符号は図示していない。本発明の燃料電池システムは蓄電装置をさらに備えることが好ましく、図14においては該蓄電装置を備える場合について示している。
燃料電池システム1400は、セル300a,300b,300cとして代表して表される、同じ構造の複数のセルがスタックされた燃料電池と、該燃料電池のアノード電極の近傍に設けられた温度センサー(図示せず)と、制御部96とを備える。また図14に示す燃料電池システム1400には、動作状態モニター93、後述するスイッチ441a,442aの開閉を探知する動作状態モニター93、2つの蓄電池からなる蓄電装置94、および充放電回路95が接続されている。なお図14において温度センサーは図示しないが、各セルに対し図13と同様の態様で設けられることができる。また図14においても、図13と同様燃料電池の構造は簡略化して表されている。図14では、スタック構造、およびスタック構造の中間部分に接続されるスイッチが一部省略して記載されている。
一例として、燃料電池システム1400における3つのセル300a,300b,300cの接続関係について説明する。セル300aにおいて、アノード側の集電体およびカソード側の集電体は、高抵抗層303aと低抵抗層303bとで構成される。他のセル300b,300cについても同様である。集電体の各層への通電の有無は、スイッチ部でそれぞれ制御できる。
セル300aのカソード側は、外部機器の端子(+側)と、スイッチおよび動作状態モニター93を介して接続される。具体的には、スイッチ441aは、動作状態モニター93とカソード側における高抵抗層303aの一端側との間に第1のスイッチ素子として設けられる。また、スイッチ442aは、動作状態モニター93とカソード側における低抵抗層303bとの間に第2のスイッチ素子として設けられる。
また、セル300aとセル300bとの間を接続するためのスイッチが設けられる。具体的には、セル300aのアノード側とセル300bのカソード側とを接続するためのスイッチが設けられる。本例においては一例としてセル300aのアノード側の低抵抗層303bとセル300bのカソード側の低抵抗層303bとを接続するためのスイッチ444a、セル300aのアノード側の高抵抗層303aとセル300bのカソード側の高抵抗層303aとを接続するためのスイッチ445a、が設けられる場合が示されている。他の直列に接続されるセル同士を接続する場合においても同様のスイッチ444b,445bが設けられる。
また、各セルに対応して設けられ、蓄電装置94および充放電回路95と接続されて、各セルの高抵抗層に電流を供給するためのスイッチが設けられる。具体的には、セル300aのカソード側の高抵抗層303aの一端側と充放電回路95との間を接続するためのスイッチ447aと、セル300aのカソード側の高抵抗層303aの他端側と蓄電装置94との間を接続するためのスイッチ443aとが設けられる。同様に、セル300aのアノード側の高抵抗層303aの一端側と充放電回路95との間を接続するためのスイッチ448aと、セル300aのアノード側の高抵抗層303aの他端側と蓄電装置94との間を接続するためのスイッチ446aとが設けられる。他のセルについても同様であり、セル300bのカソード側の高抵抗層303aに対応して一端および他端側にそれぞれスイッチ447b,443bが設けられている場合が示されている。また、セル300bのアノード側の高抵抗層303aに対応して一端および他端側にそれぞれスイッチ448b,446bが設けられている場合が示されている。
また、セル300cのカソード側の高抵抗層303aに対応して一端および他端側にそれぞれスイッチ447c,443cが設けられている場合が示されている。セル300cのアノード側の高抵抗層303aに対応して一端および他端側にそれぞれスイッチ448c,446cが設けられている場合が示されている。また、セル300cのアノード側の高抵抗層303aの一端側と蓄電装置94との間を接続するためのスイッチ449cが設けられている場合が示されている。
また、セル300cのアノード側は、外部機器の端子(−側)とスイッチを介して接続される。具体的には、第4のスイッチ素子としてのスイッチ444cは、一方を外部機器の端子(−側)と接続され、他方をアノード側における低抵抗層と接続される。また、第3のスイッチ素子としてのスイッチ445cは、一方を外部機器の端子(−側)と接続され、他方をアノード側における高抵抗層と接続される。
(実施の形態9)
本発明の燃料電池システムは、上記の温度センサーに代えて、または温度センサーとともに、燃料電池の出力電流および/または出力電圧を検知するためのモニター部を備えても良い。図15に示す燃料電池システム1500は、図14に示す燃料電池システム1400の温度センサーに代えて、または該温度センサーとともに、モニター部97を設け、制御部として制御部98を設ける例について示している。
燃料電池が特にダイレクトメタノール方式である場合、出力が低下する要因として、カソードで生成した水の結露による燃料の供給不足と触媒反応過程における一酸化炭素による触媒の被毒が挙げられる。本発明の燃料電池システムが、出力電流および/または出力電圧のモニター部を有する場合、燃料電池の出力電流および/または出力電圧をモニターし、該出力電流および/または該出力電圧が低下してきた場合に、燃料電池の材料の耐熱以上の高温に成り過ぎない範囲で集電体による加熱を行なうように、燃料電池を制御することができる。これにより、触媒活性を向上させ、上記の被毒から回復させるとともに、結露した水を蒸発させて、カソードの燃料の供給を良くさせることができる。本発明の燃料電池においては、電極および電解質層に近接して集電体を設けるため、従来に比べて、触媒の温度が上がるまでに必要とされる時間およびエネルギーが少なくて済み、燃料電池に供給される燃料のエネルギーをより高効率で発電電力に利用することができる。
本発明の燃料電池システムに設けられる温度センサーとしては、たとえば熱電対等を使用できる。また、スイッチとしては、たとえば、MOSトランジスタやサイリスタ等の半導体を利用したスイッチや、電磁コイルを利用したメカリレー等を使用できる。
本発明の燃料電池システムに設けられる制御部が、温度センサーと組み合されることを前提とした温度制御部である場合、温度センサーとしてサーミスタを用いることが好ましい。具体的には、たとえばアノード電極の近傍等、温度をセンシングしたい位置にサーミスタを設け、サーミスタの抵抗変化により、トランジスタ等のスイッチをオン/オフ制御する様に回路を組み、該回路を制御部とすることで、回路の切替えによる自動温度制御を行なうことが可能となる。これにより、複雑な制御や回路による電力の消費が不要であり、燃料電池の小型化が可能となる。トランジスタとしてはバイポーラトランジスタ、FETトランジスタなどが挙げられ、トランジスタとしては、電圧で駆動するFETトランジスタが消費電力の面で低消費であり好ましい。また、サーミスタの抵抗値をコンパレータに入力し、コンパレータで任意の温度の抵抗値と比較して、温度制御を行なうことが好ましい。また、マイコンを用いてAD変換した値をCPUにより演算することにより制御しても良い。たとえば、KOA株式会社製の「NTCサーミスタNT」等は、サーミスタとして好ましく使用できる。また、温度センサーとして、KOA株式会社製の白金薄膜温度センサーを用いることもできる。温度センサーを電極近傍に設置する場合、表面が絶縁皮膜で被覆された温度センサーを電極に接触させて温度測定を行ない、そのときの温度を電極の温度とみなすことができる。
本発明の燃料電池システムの制御部としては、たとえばマイコンを用いることが好ましく、特にADコンバータを備えていることが好ましい。また、出力電流の値は、たとえば、抵抗とオペアンプとを用いて、電流−電圧変換させ、電圧値として、マイコンのADコンバータ端子に入力し、マイコンのCPUにより演算させることによりモニターできる。出力電圧の値は、抵抗を用いて測定したいノードとグランドとを接続することによりモニターできる。出力電圧が高い場合には上記の抵抗として複数の抵抗を用いることが好ましく、抵抗の分圧値をADコンバータ端子に入力して、マイコンのCPUにより演算させることが好ましい。
また、本発明の燃料電池システムは、燃料電池と、たとえば図14および図15にも示されるような蓄電装置と、を備えることが好ましい。この場合、燃料電池から取り出した電流は、二次電池やキャパシタ等の、1または2以上の蓄電池からなる蓄電装置に蓄電し、再利用することができる。これにより、燃料電池の出力が低下した場合や燃料電池の起動時には蓄電装置から電流を流すことによって不足する出力電力を補い、電極および電解質層の近傍の温度を一定以上に保持することができる。一方、蓄電装置がフル充電状態である場合には、燃料電池の発電を止めて、蓄電装置から、外部機器に電力を供給することもできる。蓄電装置が2以上の蓄電池からなる場合、集電体の高抵抗層に電流を流すことによる加熱処理を行なっている際に、燃料電池の電力を1の蓄電池に蓄電し、他の蓄電池から燃料電池を動作させることができるため好ましい。
蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、プロトン電池、導電性高分子電池等の二次電池やキャパシタ等が挙げられる。また蓄電装置は、たとえば図14および図15に示す蓄電装置94のような態様で設けることができる。
図16は、本発明の燃料電池システムの制御部として設けられる温度制御部の一態様を示す回路図である。温度制御部としては、たとえば、温度をセンシングしたい位置に、温度センサーとして、PTC(POSITIVE TEMPERATURE COEFFICIENT)特性を持つサーミスタを設置し、該サーミスタの抵抗変化により、所定の温度でトランジスタのスイッチをオン/オフ制御できる様に組まれた回路を採用することができる。
図16を参照し、たとえば図13〜15に示されるようなスイッチによって高抵抗層および低抵抗層に電流を流すか否かのスイッチ切替えを行なう方法について、以下に例示する。なお以下では、温度センサーで感知される温度が40℃以上である場合にスイッチが切替えられる場合を例に説明するが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。まず、二次電池から−5Vの定電圧46が作られる。FETトランジスタ36のゲート−ソース間電位は、抵抗56bとサーミスタ16との分圧により決められる。サーミスタ16の抵抗値は温度が上昇するにしたがって増加し、ゲート−ソース間電位が約2V以上でオンする。サーミスタ16は25℃で470Ωであり、45℃で4.7kΩになる特性をもつ。抵抗56bは3kΩとする。約40℃以下ではサーミスタ16の抵抗値は4.5Ω以下であり、ゲート電圧は抵抗56bの分圧により2V以上であるから、MOSFET36はオン状態となり、MOSFET26のゲート電圧に−5Vが印加されるので、MOSFET26がオンする。ここで、MOSFET26はゲート−ソース間電圧が約−2VでオンするMOSFETである。また抵抗56aは100kΩとする。これにより、温度によって、高抵抗層に電流を流す場合と、流さない場合のスイッチの切替えを温度40℃で自動制御することが可能となる。以上のような方法により、あらかじめ設定された所定温度以上で入力端子66と出力端子76とが電気的に接続されるように制御することができる。
<燃料電池システムの制御方法>
本発明はまた、上述のいずれかの燃料電池システムを制御するための方法であって、温度センサーにより燃料電池のアノード電極および/またはカソード電極の温度ならびに外気温度の少なくともいずれかを検知するステップと、検知結果に基づいて、制御部によりスイッチ部を制御して集電体における低抵抗層以外の層に通電するステップと、を備え、低抵抗層以外の層に電流を流すことによって、アノード電極および/またはカソード電極の温度を上昇させる、燃料電池システムの制御方法に関する。典型的には、アノード電極および/もしくはカソード電極の温度または外気温度があらかじめ設定された所定温度より低い時に、低抵抗層以外の層に通電することによって、アノード電極および/またはカソード電極の温度を上昇させる。この場合、アノード電極および/もしくはカソード電極の温度または外気温度が該所定温度に達した時には、低抵抗層以外の層への通電を停止させれば良い。
図17〜20は、本発明における燃料電池の制御の態様の例について説明するフローチャートを示す図である。以下に、燃料電池を電力源とする外部機器の動作における燃料電池の制御の態様について説明する。
(実施の形態10)
まず、図17を参照して、図13に示す燃料電池システムを用いる場合の燃料電池の制御フローについて説明する。燃料電池を起動し、アノード電極近傍の温度があらかじめ設定された所定温度A以上であるか否かの温度センサー91および制御部92による判定(ステップS102)において、アノード電極近傍の温度が所定温度Aより低い場合(ステップS102で、NO)には加熱処理1に進み(ステップS104)、該温度が所定温度A以上である場合(ステップS102で、YES)には、制御部92によってスイッチ441,445をオフ、スイッチ442,444をオンにし、低抵抗層303bにて集電された電力を外部機器へ供給する定常動作に進む(ステップS106)。
上記の加熱処理1は以下のように行なう。すなわち、制御部92によって、スイッチ441,445として示される、高抵抗層303aに接続する第1および第3のスイッチ素子をオンに、スイッチ442,444として示される、低抵抗層303bに接続する第2および第4のスイッチ素子をオフにし、高抵抗層303aに電流を流すことで、電流の抵抗損失によって高抵抗層303aを発熱させるとともに、低抵抗層303bから高抵抗層303aを経て集電された電力を外部機器へ供給する。高抵抗層303aの熱は低抵抗層303bに速やかに伝わり、電極および電解質層が加熱される。加熱処理1によりアノード電極近傍の温度が所定温度A以上となった場合(ステップS102で、YES)、制御部96によってスイッチが切替えられ、上記の定常動作(ステップS106)に移行する。定常動作(ステップS106)においては、燃料電池で外部機器を動作(ステップS108)させる。燃料電池の発電によって外部機器を動作させると、燃料電池の温度は外気温度によって徐々に低下する場合がある。アノード電極近傍の温度が上述の所定温度Aよりも低い温度としてあらかじめ設定された所定温度B以上であるか否かの、温度センサー91および制御部92による判定(ステップS110)に進み、アノード電極近傍の温度が所定温度Bよりも低い場合(ステップS110で、NO)には、ステップS102に戻り、該温度が所定温度B以上である場合(ステップS110で、YES)には、引き続き燃料電池で外部機器を動作(ステップS108)させる。
ここで、所定温度Aは、たとえば40〜60℃の範囲内に設定されることが好ましい。また所定温度Bは、最低動作環境温度、すなわち、−5℃の環境温度において通常到達しうる温度であることが好ましく、たとえば、20〜30℃の範囲内に設定されることができる。
(実施の形態11)
ダイレクトメタノール方式の燃料電池においては、外気温度が0℃以下になると水が凍結してしまうという問題がある。特に、カソードで生成した水や、電解質層中の水分が問題となる。カソードで生成した水や電解質層中の水が凍結すると、イオン伝導度が低下する。また、水の凍結による膨張、伸縮により、電解質層やMEAの耐久性も損なわれる。待機時のような軽負荷時や、停止時においては、燃料電池の自己発熱が少ないために燃料電池温度が低下する。
本発明では、たとえば図14の動作状態モニター93のような動作状態モニターにより、外部機器が待機状態か、停止状態か、定常動作状態か等、動作状態を判定し、動作状態に応じて、燃料電池の特に電極および電解質層の近傍の温度を所定の範囲内に維持することが好ましい。動作状態の判定は、燃料電池の出力電流および/または出力電圧をモニターし、出力電流および/または出力電圧が所定の値以上であるか否かを制御部で判定すること等により行なうことができる。
図18および図19を参照して、図14に示す燃料電池システムを用いる場合の動作状態の制御フローについて説明する。
図18を参照し、定常時には、制御部96によって、図14においてスイッチ442a,444a,444b,444cとして示される、低抵抗層303bに接続するスイッチをオンにし、スイッチ441a,445a,445b,445cとして示される、高抵抗層303aに接続するスイッチをオフにすることで、低抵抗層303bから集電した電力を機器に供給し、燃料電池で機器を動作(ステップS202)させる。動作中、動作状態モニター93および制御部96による、待機時か否かの判定(ステップS204)において、待機時である場合(ステップS204で、YES)には、待機時(ステップS208)に移行し、待機時でない場合(ステップS204で、NO)、温度センサー91および制御部96による、アノード電極近傍の温度が前述の所定温度B以上であるか否かの判定(S206)に進む。アノード電極近傍の温度が所定温度B以上である場合(ステップS206で、YES)、燃料電池で機器を動作(ステップS202)し、アノード電極近傍の温度が所定温度Bより低い場合(ステップS206で、NO)、加熱処理1(ステップS214)に移行する。
加熱処理1は、図17を参照して前述した方法と同様に、高抵抗層303aに接続するスイッチをオンに、低抵抗層303bに接続するスイッチをオフに切替えることで行なう。加熱処理1の後、温度センサー91および制御部96による、アノード電極近傍の温度が前述の所定温度A以上であるか否かの判定(S216)に進む。アノード電極近傍の温度が所定温度A以上である場合(ステップS216で、YES)、燃料電池での外部機器の動作(ステップS202)に戻り、アノード電極近傍の温度が所定温度Aより低い場合(ステップS216で、NO)、アノード電極近傍の温度が所定温度A以上となるまで上述の加熱処理1(S214)を行なう。
待機時へ(ステップS208)移行した後、図19において、動作状態モニター93および制御部96による定常時か否かの判定(ステップS302)において、定常時でない場合(ステップS302で、NO)、アノード電極近傍の温度があらかじめ設定された所定温度C以上であるか否かの、温度センサー91および制御部96による判定(ステップS304)に進む。アノード電極近傍の温度が所定温度C以上である場合(ステップS304で、YES)には、定常時か否かの判定(ステップS302)に戻る。一方ステップS302の判定が定常動作時である場合(ステップS302で、YES)、定常時へ復帰する(ステップS306)。アノード電極近傍の温度が所定温度Cより低い場合(ステップS304で、NO)、制御部96に信号を送り、加熱処理2(ステップS308)に進む。
待機時における加熱処理2は以下の通り行なう。すなわち、制御部96によって、スイッチ443a,443b,443c,447a,447b,447cをオンにし、その他のスイッチをオフにして、高抵抗層303aで集電した電力を燃料電池から蓄電装置94の一方の蓄電池へ、充放電回路95により充電電圧以上に昇圧または降圧して定電流で充電する。燃料電池の発電量が増えると、自己発熱および高抵抗層での抵抗損失による発熱により、燃料電池がさらに加熱される。加熱処理2は、あらかじめ設定された所定時間行なうように制御部96によって制御される。
所定時間の経過とともに、制御部96によって、上記加熱処理2でオンにしたスイッチをオフに切替え、加熱処理2(ステップS308)を終了する。動作状態モニター93および制御部96による定常時か否かの判定(ステップS310)において、定常時である場合(ステップS310で、YES)、定常時に復帰し(ステップS306)、定常時でない場合(ステップS310で、NO)、アノード電極近傍があらかじめ設定された所定温度D以上であるか否かの温度センサー91および制御部96による判定(ステップS312)に進む。アノード電極近傍の温度が所定温度D以上である場合(ステップS312で、YES)には、定常時か否かの判定(ステップS302)に戻り、アノード電極近傍の温度が所定温度Dより低い場合(ステップS312で、NO)、加熱処理2(ステップS308)に戻る。上記で定常時へ復帰(ステップS306)する場合、図18に示す待機時からの復帰(ステップS210)を経て、図18に示すフローチャートでの制御に移行する。以上の態様で、定常時および待機時におけるアノード電極近傍の温度制御を行なうことができる。
本発明において、上記の所定温度Cとしては、5〜9℃が好ましい。また、所定温度Dとしては、10〜13℃程度が好ましい。所定温度Cおよび所定温度Dが上記の範囲内に設定される場合、燃料電池の内部での水の凍結を良好に防止するとともに、待機時の燃料電池の消費電力を小さくして発電効率の低下を防止することができる。
なお、本発明の燃料電池システムが蓄電装置を備える場合の上記の加熱処理1(ステップS214)の態様について、図14に示される燃料電池システムの場合を例に説明する。すなわち、制御部96によって、スイッチ441a,445a,445b,445c,447a,447cをオン、その他のスイッチをオフにして、高抵抗層303aに電流を流し、高抵抗層303aを発熱させるとともに、2つの蓄電池からなる蓄電装置94のいずれかの蓄電池に充電する。いずれの蓄電池に充電するかは、制御部96で充放電回路95を制御することによって決定される。
蓄電装置94のうち充電中の蓄電池の充電状態を、充放電回路95で開放電圧によってモニターし、90%以上に充電されていれば、制御部96によって、放電中の他方の蓄電池と充電対象を切替える。すべての蓄電池が90%以上に充電され、燃料電池からの充電電流が所定値以上流れなくなった場合には、充放電回路95は充電電流を遮断し、燃料電池から機器への出力を停止する。外部機器が動作していないとき(ステップS204で、YES)、図19に示すフローチャートでの制御に移行する。外部機器が待機時である場合、スイッチ441a,445c,443a,446a,443b,446b,443c,446c,447a,448a,447b,448b,447c,448cをオンに、その他のスイッチをオフにして、外部機器および高抵抗層303aへは蓄電装置から電力を供給する。充放電回路95でモニターされ制御部96に伝えられる蓄電装置の電圧があらかじめ設定された所定の電圧以下になった場合には、制御部96によってスイッチを切替え燃料電池により加熱処理と蓄電とを再開する。
なお本発明においては、加熱処理1を行なう際、蓄電装置と燃料電池との両方の電力を機器に供給するハイブリッド方式が採用されても良い。この場合、スイッチ441a,445a,445b,445c,447a,449cをオンに、その他のスイッチをオフにする。充放電回路95により、燃料電池からの出力で外部機器を動作させるために足りない電力を蓄電池から供給するように制御する。
また、定常時において外部機器の消費電力以上の出力を燃料電池から取り出すことが可能である場合、スイッチ442a,444a,444b,444c,447a,446cをオンに、その他のスイッチをオフにすることで蓄電装置94に蓄電することが好ましい。
起動時、燃料電池から電流が取れない場合は、スイッチ443a,446a,443b,446b,443c,446c,447a,448a,447b,448b,447c,448cをオンに、その他のスイッチをオフにすることにより、蓄電装置94から高抵抗層303aに電流を流し、燃料電池を迅速に昇温させることが好ましい。
本発明において、所定時間の加熱処理を行なう際には、電極および電解質層の近傍が高温になり過ぎた場合に加熱処理を一時中断することができるよう、温度センサーによるリミッターをかけることが好ましい。この場合、リミッターが働いて加熱処理が中断される間の機器への供給電力の不足分を蓄電装置から供給する事が好ましい。リミッターとしては、たとえば、燃料電池の出力端子のスイッチであるスイッチ441a,442aの両方をオフにする事により燃料電池の出力電流を流さなくする事、充放電回路95で出力電流を遮断する事で、加熱処理を中断する構成や、低抵抗層に電流を流すように切替える構成が例示できる。
(実施の形態12)
本発明においては、外気温度があらかじめ設定された所定温度より低い時に高抵抗層に電流を流すことによってアノード電極および/またはカソード電極の温度を上昇させ、外気温度が該所定温度に達した時に電流の流れを停止させることによって燃料電池システムを制御しても良い。この場合は、前述の温度センサーを外気中に設置することで外気温度をモニターする他は上述と同様の方法で燃料電池の制御を行なえば良い。
(実施の形態13)
本発明においては、カソード電極の温度からアノード電極の温度を引いた温度差の値があらかじめ設定された所定値より低い時に高抵抗層に電流を流すように制御しても良い。この場合、該温度差の値が所定値に達した時に電流の流れを停止させれば良い。本発明において、カソード電極がアノード電極よりも高温で、かつ両電極の温度差が所定値以上に維持される場合、カソード側で生成した水や水蒸気、アノード側からカソード側へ拡散した水、およびクロスオーバーしたメタノールが酸化されて生成した水、がアノード側とカソード側の水との蒸気圧差によって電解質層中に戻り、電解質層中を通ってカソード極側からアノード極側へ移動する水の量を増加させることが出来る。この制御により、上述した温度上昇による発電効率の向上だけでなく、カソード側の水がアノード側に移動することにより、アノード電極の触媒層でのメタノール濃度が低減され、クロスオーバーによる発電特性の低下を防ぐことが出来、燃料電池の発電効率が向上する。また、カソード側で生成した水をアノード側での反応に再利用することにより、あらかじめ準備されるアノード側の燃料容器に含まれる水の量を減らすことが可能となり、燃料容器の小型化、軽量化が可能となり、燃料電池システム全体の出力密度、エネルギー密度を向上させることが出来る。
カソード電極の温度からアノード電極の温度を引いた温度差の値を所定値以上にするためには、前述の温度センサーをアノード電極近傍およびカソード電極近傍に設置する。各々の電極の温度をモニターし、該温度差が所定値よりも低い場合には、カソード側の集電体の高抵抗層に電流を流して、カソード電極の温度を上昇させることにより、該温度差を所定値以上にすることができる。該温度差は、10〜15℃程度に設定されることが好ましい。カソード電極の加熱処理は、間欠的に、所定の動作タイミングで所定の動作時間行なうことが好ましい。
間欠的な加熱処理は、たとえば以下のように行なうことができる。すなわち、加熱処理を行なって該温度差の値を10℃以上とした後、該温度差の値が10℃以下とならないように1分間加熱処理を継続する。1分後に加熱処理を止め、5分間は加熱処理を行なわず、定常運転にて動作させる。上記の操作を繰り返して、間欠的な加熱処理を行なうことができる。
(実施の形態14)
本発明においては、燃料電池の出力電流および/または出力電圧をモニター部で検知し、出力電流および/または出力電圧の値が、あらかじめ設定された所定値より低い時に、高抵抗層に電流を流すことによってアノード電極および/またはカソード電極の温度を上昇させるように制御しても良い。この場合、上記値が所定値に達した時に電流の流れを停止させれば良い。このような制御によれば、燃料電池の動作時において、出力電流および/または出力電圧を所定の値以上に維持することができ、燃料電池から外部機器への安定した出力を得ることができる。
具体的には、燃料電池の出力電流および/または出力電圧を常時モニターし、出力電流および/または出力電圧の値が所定値以上である時には、集電体の低抵抗層にて電流を取り出し、出力電流および/または出力電圧の値が所定値よりも低い場合には、所定時間、高抵抗層に電流を流すように切替えて、電極および電解質層の近傍の温度を上昇させることが好ましい。
図20を参照して、モニター部97を備えた図15に示す燃料電池システムを用いて単セル電圧をモニターすることによる動作状態の制御フローについて説明する。
図20において、定常時には、燃料電池で機器を動作(ステップS402)させる。動作中、単セル電圧があらかじめ設定された所定値V1以上であるか否かの、モニター部97および制御部98による判定(ステップS404)において、単セル電圧が該所定値V1以上である場合(ステップS404で、YES)、動作状態モニター93および制御部98による待機時か否かの判定(ステップS410)に進む。単セル電圧が該所定値V1より低い場合(ステップS404で、NO)、加熱処理2(ステップS502)に進む。加熱処理2は、図19において説明した方法と同様に行なう。
加熱処理2を行ない(ステップS502)、動作状態モニター93および制御部98による待機時か否かの判定(ステップS504)に進み、判定が待機時である場合(ステップS504で、YES)、加熱処理2を終了して待機時へ移行(ステップS506)し、待機時でない場合(ステップS504で、NO)、制御部98による所定時間Eが経過したか否かの判定(ステップS508)に進む。所定時間Eが経過した場合(ステップS508で、YES)、単セル電圧が所定電圧V1以上であるか否かの判定(ステップS406)に進む。所定時間Eが経過していない場合(ステップS508で、NO)、加熱処理2(ステップS502)に戻る。
単セル電圧が所定値V1以上である場合(ステップS406で、YES)は、動作状態モニター93および制御部98による待機時か否かの判定(ステップS410)に進み、単セル電圧が所定値V1より低い場合(ステップS406で、NO)は、異常と判断してシステムを停止する(ステップS412)。待機時か否かの判定(ステップS410)で待機時である場合(ステップS410で、YES)は、待機時に移行し(ステップS414)、待機時でない場合(ステップS410で、NO)、アノード電極近傍の温度が前述の所定温度B以上であるか否かの温度センサー(図示せず)および制御部98による判定(ステップS416)に進み、アノード電極近傍の温度が所定温度B以上である場合(ステップS416で、YES)、燃料電池で機器を動作(ステップS402)させ、アノード電極近傍の温度が所定温度Bより低い場合(ステップS416で、NO)、アノード電極近傍の温度が所定温度A以上であるか否かの温度センサーおよび制御部98による判定(ステップS418)に進む。アノード電極近傍の温度が所定温度A以上である場合(ステップS418で、YES)には、燃料電池で機器を動作(ステップS402)させ、アノード電極近傍の温度が所定温度Aより低い場合(ステップS418で、NO)には、加熱処理1(ステップS420)に進む。加熱処理1は、図17を参照して前述した方法と同様に行なう。動作状態モニター93および制御部98による待機時か否かの判定(ステップS420)において、待機時である場合(ステップS420で、YES)、待機時へ移行(ステップS422)し、待機時でない場合(ステップS420で、NO)、アノード電極近傍の温度が所定温度A以上であるか否かの判定(ステップS418)に戻る。
待機時へ移行(ステップS414,ステップS422)した場合には、図19を参照して前述したのと同様の制御を行なう。図19において、定常時と判定された場合(ステップS302でYES、またはステップS310でYES)には、定常時へ復帰(ステップS306)し、図20の待機時からの復帰(ステップS424)を経て、図20に示すフローチャートによる制御に移行する。
上記の所定電圧V1は、たとえば0.2V±0.05V程度に設定することができる。また、上記の所定時間Eは、たとえば5〜10分程度に設定することができる。
なお、本発明において、加熱処理1および加熱処理2は、たとえば下記の方法でアノード側とカソード側とを交互に加熱する方法により行なっても良い。すなわち、まずアノード側の加熱として、スイッチ443a,443b,443c,447a,447b,447cとして示される、アノード側の高抵抗層に接続されたスイッチのみ全てオンにし、他のスイッチはオフにして、アノード側の高抵抗層に電流を流す。次に、カソード側の加熱として、スイッチ446a,446b,446c,448a,448b,448cとして示される、カソード側の高抵抗層に接続されたスイッチのみ全てオンにし、他のスイッチをオフにして、カソード側の高抵抗層に電流を流す。また、スイッチ441a,444a,445b,444cをオンにして、出力する場合と、スイッチ442a,445a,444b,445cをオンにして、出力する場合とを交互にして、所定時間ごとにスイッチを切り替え、アノード側とカソード側とを交互に加熱しても良い。上記のスイッチ切替えを繰り返すことにより、アノード側とカソード側との加熱を交互に行なうことができる。
なお本発明において、燃料電池システムが蓄電装置を備える場合、該蓄電装置への蓄電は、機器の軽負荷時、停止時、動作終了時等に行なわれても良い。また本発明において、燃料電池にヒーターを設ける場合は、高抵抗層への通電と同時にオン/オフ制御されるスイッチを該ヒーターに接続することが好ましい。
また、本発明における外部機器の待機時の加熱処理としては、図19に示すような設定温度による制御以外に、たとえば出力電圧モニターによる制御等を行なっても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
電解質層として、30mm×30mm、厚み約175μmのナフィオン(登録商標)117膜(デュポン社製)を用いた。
触媒ペーストは下記の手順により作製した。Pt担持量32.5wt%、Ru担持量16.9wt%のPt−Ru粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(TEC66E50、田中貴金属社製)と、20wt%のナフィオン(登録商標)のアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イソプロパノールと、アルミナボールとを、所定の割合でPTFE製の容器に入れ、攪拌機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより、アノード触媒ペーストを作製した。
また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(TEC10E50E、田中貴金属社製)を用いて、上記のアノード触媒ペーストと同様にして、カソード触媒ペーストを作製した。
集電体としては、100μmの厚みのTi板に、縦0.5mm、横1mm、横ピッチ1.5mm、縦ピッチ0.75mmのひし形の貫通孔を開けて、白金を1μmの厚みでメッキしてなる低抵抗層と、材質がTiで線径30μmの金網(100メッシュ)であるチタンメッシュにメッキしていない高抵抗層との積層体からなる集電体を用いた。絶縁層として、高抵抗層であるチタンメッシュにポリイミドコーティング材を塗布し、キュアを行なった。キュアは、3.5℃/分で昇温して170℃で30分間保持した後、3.5℃/分で昇温して320℃で60分間保持する条件で行ない、その後室温へ降温させた。ハンダにて、高抵抗層と低抵抗層との端部同士を接合して接合部材とし、さらにポリイミド樹脂をコーティングしてハンダ接合部を封止し、絶縁封止部とした。メタルラスは加工業者(株式会社サンクメタル)にて加工処理を行なった。
高抵抗層の抵抗値は、1cm2の正方形の向かい合う2辺の各々に端子をつけ、平面方向に電流を流した時の抵抗、すなわち面積1cm2あたりのシート抵抗で、170mΩであり、低抵抗層の抵抗値は、該シート抵抗で、16mΩであった。なお集電体の端部は電流取り出し部とした。
カーボンのガス拡散層であるGDL31BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を23mm×23mmの大きさで多孔質基体として用い、GDL31BCと、集電体の高抵抗層側の面とを対向させて積層し、GDL31BCと集電体とを1t/cm2でプレスして一体化した。このような方法で2つの一体化物を形成し、一方の一体化物の集電体の上に、アノード触媒ペーストを100μmの厚さで、他方の一体化物の集電体の上に、カソード触媒ペーストを20μmの厚さで、それぞれ塗布し、アノード電極およびカソード電極を形成した。
GDL31BC、集電体、アノード電極、ナフィオン(登録商標)117、カソード電極、集電体、GDL31BCの順で積層して積層体を作製した。GDL31BCは電極の形成領域に一致するように配置した。GDL31BCの電極側の表面は撥水性を有する炭素多孔質体である。この積層体を130℃、10kgf/cm2で2分間ホットプレス処理した。これにより、集電体が触媒層内に埋め込まれた図4の構造で、集電体を挟んで電解質層と対向するようにカーボンのガス拡散層が備えられた構造である膜電極複合体を作製した。
上記の膜電極複合体の外側をポリアクリル樹脂からなる絶縁性のセパレータで狭持することによって、アノード拡散層およびカソード拡散層のそれぞれとセパレータとの間に、燃料および空気を供給するためのアノード燃料流路およびカソード燃料流路を設けた。セパレータの内側のアノード極の壁面の位置にヒーターを設置し、セパレータと一体化した。ヒーターとしては、ニクロム線の表面が耐腐食性の樹脂でコーティングされた電気抵抗ヒーターを用いた。上記の方法で燃料電池の単位セルを作製した。これを直列接続で10セル積み上げ、スタックとした。
上記で作製した燃料電池を用いた他は、図13に示す構成と同様になるように、燃料電池システムを構築した。
構築した燃料電池システムを起動し、燃料電池から電力を出力して高抵抗層への通電を行なって加熱を行ない、起動時からアノード電極の温度が40℃になるまでの加熱時間を測定したところ、約2分であり、後述する従来例1の燃料電池を用いた場合と比べ、加熱時間が約10分の1に短縮された。本実施例では、高抵抗層であるチタンメッシュは絶縁層であるポリイミド樹脂によりコーティングされている為、電極の触媒層とは接触していない。またポリイミド樹脂によって、高抵抗層と低抵抗層とはハンダ付け部以外では絶縁されている。本実施例では、低抵抗層であるTi−Au板がハンダ付け部以外で触媒層により電気的に短絡することを防いでいるため、電極の触媒層は効果的に加熱される。
[従来例1]
従来例1として燃料電池を以下のように作製した。実施例1と同様のアノード触媒ペーストおよびカソード触媒ペーストを用いた。実施例1と同様のカーボンのガス拡散層であるGDL31BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を23mm×23mmの大きさで多孔質基体として用い、アノード触媒ペーストとカソード触媒ペーストとを各々GDL31BC上に塗布し、電極を形成した。電解質層として、30mm×30mm、厚み約175μmのナフィオン(登録商標)117膜(デュポン社製)を用いた。GDL31BC、アノード電極、ナフィオン(登録商標)117、カソード電極、GDL31BCの順で積層した。GDL31BCは電極に一致するように配置した。GDL31BCの電極側の表面は撥水性を有する炭素多孔質体とされている。この積層体を130℃、10kgf/cm2で2分間ホットプレス処理することにより、膜電極複合体を作製した。この膜電極複合体を、図21に示される形状の、アノード極、カソード極共に燃料、空気の流路が構成されているカーボン製のセパレータで挟み、ボルトおよびナットを用いて、各々の部材を締結し、燃料電池スタックとした。カーボンセパレータとしては、大きさが4×4cmで、アノード流路およびカソード流路の深さは1mm、流路間の幅は2mmのカーボンセパレータを用い、10セル積層してスタック化した。このスタックの外周に電熱線のヒーターを設け、さらに各セルのアノード電極近傍にも温度センサーを備えた。以上の方法で燃料電池を作製し、燃料電池の起動時から、アノード電極の温度が40℃になるまでの加熱時間を測定した。
[実施例2]
本実施例では、集電体に積層された絶縁層を電解質層と接合し、その上から、アノード電極およびカソード電極とアノード拡散層およびカソード拡散層とを配置して、膜電極複合体、集電体および拡散層を接合した構造の燃料電池を作製した。
集電体としては、150μmの厚みのTi板に、縦0.5mm、横1mm、横ピッチ1.5mm、縦ピッチ0.75mmのひし形の貫通孔を開けて、白金を1μmの厚みでメッキしてなる低抵抗層と、材質がTiで線幅30μmのメタルラス(100メッシュ)であるチタンメッシュに白金を100nmの厚みでメッキした高抵抗層との積層体からなる集電体を用いた。ポリイミド樹脂を薄く集電体に塗布した後、高抵抗層と低抵抗層との間に絶縁層として厚み50μmの多孔質のポリイミドのシートを挟み、該ポリイミドを熱硬化させて高抵抗層と低抵抗層とを接合した。絶縁層としては、低抵抗層と同じ形状の貫通孔を有するものを用い、上記の接合は、低抵抗層と絶縁層との貫通孔の位置を合わせた状態で行なった。
上記の接合は、図3に示されるのと同様に、集電体の両端に電極と接合していない領域を有するように行ない、一端を電流取り出し部とし、他端を高抵抗層と低抵抗層との電気的な接合部とした。すなわち、該他端において、高抵抗層と低抵抗層とを、接合部材としてのハンダで接合した。ハンダには腐食防止のため、また取り出し部付近にも剥離強度向上のため、それぞれポリイミド樹脂のコーティングを施した。接合部材に燃料液が接触しないよう、接合部材の周囲に絶縁封止部を設けた。
図8、9に示すように、集電体の端にはみ出した多孔質ポリイミドシートを接着剤を用いて電解質層と接合した。すなわち、150℃で熱硬化する接着剤であるフェノール樹脂を塗布した後、150℃、10分間ホットプレスし、プレスした状態で室温まで冷却し、接合させた。その後、実施例1と同様に作製したアノード触媒ペーストとカソード触媒ペーストとを各々塗布し、乾燥して、アノード触媒層およびカソード触媒層を形成した後、カーボンのガス拡散層であるGDL31BCを、アノード触媒層およびカソード触媒層の上に積層させ、130℃、2分間ホットプレスして一体化させた。
上記した部材以外は実施例1と同様にして、燃料電池システムの構築、および起動からアノード電極の温度が40℃になるまでの加熱時間を測定したところ、約2分という結果が得られた。本実施例では、集電体と電解質層とが絶縁層を介して接着剤で強固に接着している為、温度変化による膨潤、収縮に起因する剥離が生じにくい。
[実施例3]
集電体としては、150μmの厚みのTi板に、縦0.5mm、横1mm、横ピッチ1.5mm、縦ピッチ0.75mmのひし形の貫通孔を開けて、白金を1μmの厚みでメッキしてなる低抵抗層と、材質がTiで線径30μmの金網(100メッシュ)であるチタンメッシュにメッキしていない高抵抗層との積層体からなる集電体を用いた。絶縁層として、高抵抗層であるチタンメッシュに電解質高分子であるポリアリーレンエーテルスルホン酸樹脂を塗布し、150℃で乾燥させた。ハンダにて、高抵抗層と低抵抗層との端部同士を接合し、PVDF樹脂をコーティングして、ハンダ接合部を封止した。高抵抗層の抵抗値は、前述と同様の方法で測定した1cm2のシート抵抗で、170mΩであり、低抵抗層の抵抗値は、該シート抵抗で、16mΩであった。なお集電体の端部は電流取り出し部とした。
ポリアリーレンエーテルスルホン酸樹脂を被覆した高抵抗層側を、電解質層として用いたものと同種のポリアリーレンエーテルスルホン酸樹脂からなる絶縁層の上に積層させ、150℃、5分間、10kgf/cm2の条件でホットプレスして、電解質層と集電体と絶縁層とを接合させた。同種の高分子からなることにより、電解質層と絶縁層とはよくなじんで接着した。この上から実施例2と同様の作製方法で膜電極複合体を作製した。
上記した部材以外は実施例1と同様にして、燃料電池システムの構築、および起動からアノード電極の温度が40℃になるまでの加熱時間を測定したところ、約2分という結果が得られた。
[実施例4]
高抵抗層を以下の方法で作製した。ウェットエッチング法により穴をあけたP型シリコン基板を作製し、ダイシングにより、25cm×25cmの大きさに調製し、図6に示すように、1000μmの厚みで、0.01Ω・cmとされたP型シリコン基板に、直径100μmの貫通孔を開け、基板15を作製した。なお該貫通孔は、200μmのピッチで六方最密充填となるように開けた。基板15上の一部の領域に、金属層25,35として金をスパッタにより積層した。また基板15の表面を酸化処理し、金以外の部分を絶縁化した。酸化処理は乾燥酸素中にて900℃で3時間加熱することで行ない、約100nmの厚みの酸化層45を形成した。
次に、低抵抗層を以下の方法で作製した。酸化された基板の表面に金属箔55を積層した。本実施例では、P型シリコン基板の表面を金(Au)で0.2μm厚でメッキし、さらに表面を処理したチタン箔100μmを積層することで金属箔55を形成した。チタン箔には、P型シリコン基板に形成した貫通孔と同様の形状の貫通孔をドリル加工によって形成した。次に、金属層35と、低抵抗層の金が形成されている側の面とを半田により接合した。半田部にはポリイミド樹脂によりコーティングを行なった。2つの電流取り出し部65,75に各々スイッチを設けた。金属箔55を膜電極複合体の触媒層面に接触させた。
なお高抵抗層の抵抗値は、1cm2のシート抵抗で200mΩであり、低抵抗層の抵抗値は、シート抵抗で18mΩであった。
上記した部材以外は実施例1と同様にして、燃料電池システムの構築、および起動からアノード電極の温度が40℃になるまでの加熱時間を測定したところ、約2分という結果が得られた。
[実施例5]
実施例1で作製した燃料電池を用い、図15に示すような、集電体の低抵抗層(Tiラス−Pt層)と高抵抗層(Tiメッシュ層)との端部に、スイッチと、温度センサーと、制御部98と、2つの二次電池からなる蓄電装置94と、出力電圧をモニターするためのモニター部97とを備える燃料電池システムを構築した。温度センサーとしては熱電対を用いた。温度センサーによってアノード電極の触媒温度をモニターし、起動時から、温度が40℃未満の場合には、加熱処理1を以下の通り行なった。
スイッチ441a,445a,445b,445cで示される高抵抗層に接続するスイッチをオン、スイッチ442a,444a,444b,444cで示される低抵抗層に接続するスイッチをオフにし、高抵抗層303aに電流を流すことで、電流の抵抗損失により発熱させた。
起動時は、スイッチ447aおよび一番端のセルの高抵抗層に接続されているスイッチ446cと、スイッチ445a,445bとをオンにし、燃料電池から蓄電装置94の一方の二次電池に充放電回路95で一方に定電流で充電した。その間、スイッチ441a,442a,444c,445cはオフにし、機器へは蓄電装置94の他方の二次電池から供給した。
従来例1の燃料電池においては25℃で1.25Aの定電流で触媒温度が40℃に達するまで約20分ほどかかったが、本実施例においては、約2分ほどで40℃に達した。
触媒温度が40℃以上に達した時、スイッチ447a,446cをオフに、スイッチ442a,444a,444b,444cで示される低抵抗層に接続するスイッチをオンにして、低抵抗層303bに電流を流し、高抵抗層303aに電流を流さないようにして、燃料電池の定常動作に移行させた。
燃料電池の動作フローは、図17に従った。起動時から、集電体部分の温度をモニターし、触媒温度が40℃未満では、高抵抗層303aに電流を流し、蓄電装置である二次電池に充電した。機器は二次電池により起動させた。触媒温度が40℃以上に達した時、燃料電池で機器を動作させた。セパレータは断熱性であり、セパレータ内部は熱容量が小さいため、触媒部の温度低下が少ない。温度が20℃まで下がると、再び、起動時と同じように、二次電池に充電しながら加熱した。その際、一方の二次電池に定電流で充電し、他方の電池で機器を動作させた。二次電池がフル充電されると、放電中の二次電池と充放電を交換し、放電済の二次電池を充電した。二次電池への充電は所定電圧V1まで低下しないと行なわないように、電圧モニターで二次電池の電圧を監視する方法で制御した。その間、燃料電池は発電せず、待機状態とした。放電中の二次電池が所定電圧V1以下になると所定電圧V2(但し、V2>V1)間になるように充電した。二次電池の電圧は充放電回路にてモニターした。なお、本実施例において、スイッチはパワートランジスタによってオン/オフ制御を行なった。
なお、触媒温度が40℃以上であるか否かを判定し、トランジスタでスイッチ切替えを行なう際の制御は、下記の方法で行なった。
図16に示すように、温度をセンシングしたい位置にPTC(POSITIVE TEMPERATURE COEFFICIENT)特性を持つサーミスタを設置し、その抵抗変化により、トランジスタのスイッチをオン/オフ制御できる様に回路を組んだ。
二次電池から−5Vの定電圧46を作成した。MOSFET36のゲート−ソース間電位は抵抗56bとサーミスタ16との分圧により決定した。サーミスタ16は温度が上昇するにしたがって抵抗値が増加し、ゲート−ソース間電位が約2V以上でオンするようにした。サーミスタ16としては25℃で470Ωであり、45℃で4.7kΩになる特性をもつものを用いた。抵抗56bは3kΩとした。約40℃以下ではサーミスタは4.5Ω以下であり、ゲート電圧は抵抗の分圧により、2V以上であるから、MOSFET36はオン状態となり、MOSFET26のゲート電圧に−5Vが印加されるので、MOSFET26がオンする。MOSFET26はゲート−ソース間電圧が約−2VでオンするMOSFETである。抵抗56aは100kΩとした。これにより、温度によって、高抵抗部分に電流を流す場合と、流さない場合のスイッチの切替えを温度40℃で自動制御することが可能である。
上記のようにして、起動時に素早く集電体の温度を上昇させることができ、定常時も高温で高効率の発電が可能であった。二次電池は、外部機器の停止時に所定電圧まで充電した。これにより、外部機器の立ち上がり時には二次電池で外部機器を動作させることが可能であった。
[実施例6]
本実施例では、図12に示す構成の燃料電池を作製した。カソード極の集電体はカソード低抵抗層とカソード高抵抗層とからなり、両層の間には絶縁層を形成した。カソード極の集電体は、実施例2と同様の方法で作製した。カーボンGDLからなる拡散層にカソード集電体をプレスして押し付け、実施例1と同様の方法で作製したカソード触媒ペーストをカソード集電体の上に塗布してカソード触媒層を形成した。こうして、カソード極を形成した。なお、カソード高抵抗層の抵抗値は、前述と同様の方法で測定される1cm2のシート抵抗で170mΩであり、カソード低抵抗層の抵抗値は、該シート抵抗で、16mΩであった。
アノード極の集電体としては、直径70μm、100メッシュのAuメッシュをアノード低抵抗層として用いた。なおアノード低抵抗層の抵抗値は、該シート抵抗で11mΩであった。カーボンGDLからなる拡散層とアノード集電体とをプレスにより固定した上に、アノード触媒ペーストを塗布し、アノード触媒層を形成した。アノード極、ナフィオン(登録商標)117からなる電解質層、カソード極の順で、アノード極とカソード極との電極形成領域の位置を合わせて積層し、130℃、10kgf/cm2で2分間ホットプレス処理し、膜電極複合体を作製した。
さらに、削り出しにて作製したポリアクリル製の筐体に上記の膜電極複合体を挟み、エポキシ樹脂にて外周を封止して、図12に示す燃料電池を作製した。
上記で作製した燃料電池を用い、室温、相対湿度50%での発電特性を測定した。燃料電池はアクリル製のカバーケースで囲まれており、下部の供給口から3mol/Lのメタノール水溶液をアノード触媒層がすべて漬かるように供給し、カソード触媒層は大気に開放させた。燃料は追加で供給しない為、アノード極側の液面は1時間発電後に燃料が触媒層のすべてに浸かるように、多めに7CC供給しておいた。カソード側の集電体の高抵抗層と低抵抗層とにそれぞれ単独に電流が流れるようにスイッチを設けた。燃料電池の定常動作時には低抵抗層を集電体として用いて該低抵抗層から出力を取り出し、5分おきに1分間スイッチを切替えてカソード極の高抵抗層に電流を流すことで、所定時間の加熱処理を行なった。
その結果、発電特性は、100mA/cm2の時、0.31Vであった。この状態で、1時間発電させた後のアノード極側に残っている燃料の体積を確認したところ、6.11CCであった。
なお、実施例6と同じセルを用い、低抵抗層に電流を流すのみの制御を行なった場合、1時間発電後にアノード極側に残っている燃料の体積は、5.62CCであった。以上の結果から、本発明によれば、小型の燃料電池により、簡便な方法でカソード側の水をアノード側に戻して再利用でき、長時間発電させる為には濃度の高いメタノールを供給すれば良くなる為、カートリッジなど燃料タンクの大きさを小型化できることが分かった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,101,1201 電解質層、2,102a,302a,702a,1202a アノード電極、3,102b,302b,702b,1202b カソード電極、4,106 セパレータ、5 取り出し電極、6,59 筐体、7,109a,109b ヒーター、8,107a アノード燃料流路、9,107b カソード燃料流路、15 基板、25,35 金属層、45 酸化層、55 金属箔、65,75 電流取り出し部、16 サーミスタ、26,36 MOSET、46 定電圧、56a,56b 抵抗、66 入力端子、76 出力端子、19 燃料容器、29 燃料供給口、39 接着層、49 換気孔、69a アノード極配線、69b カソード極配線、91 温度センサー、92,96,98 制御部、93 動作状態モニター、94 蓄電装置、95 充放電回路、97 モニター部、100,200,300,700,1200 燃料電池、103,104,105 集電体、108a,108b,1208a,1208b 拡散層、300a,300b,300c セル、303a,403a,503a,703a,803a,1003a,1203a 高抵抗層、55,303b,403b,503b,703b,803b,1003b,1203b 低抵抗層、99,311,411a,411b,511,711a,711b,811,1011,1211 絶縁層、312,412,512,712 絶縁接着層、313,413,513,713,813,1013 絶縁封止部、402,502,802,1002 電極、414,514,814,1014,1214 接合部材、703c 中抵抗層、816,1016 接着層、441,441a,441b,441c,442,442a,442b,442c,443,443a,443b,443c,444,444a,444b,444c,445,445a,445b,445c,446,446a,446b,446c,447a,447b,447c,448a,448b,448c,449c スイッチ、1300,1400,1500 燃料電池システム。