JP2008148437A - 永久磁石型同期モータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】V/f制御とセンサレスベクトル制御とを円滑に切り換え可能な永久磁石型同期モータの制御装置を提供すること。
【解決手段】V/f制御の演算では、回転子の位置・速度の情報を用いず、インバータの座標軸であるδ−γ座標を基準に制御を行う。一方、センサレスベクトル制御では、回転子の位置・速度を推定し、回転子の座標軸であるd−q座標を基準に制御を行う。したがって、2つの制御の切換えを行う場合は、制御座標軸を変換する必要がある。同図で、モータ電圧をv、モータ電流をi、V/f制御時の座標軸(δ−γ座標軸)とセンサレスベクトル制御時の座標軸(d−q座標軸)との位相差をθとする。V/f制御時は基本的にδ軸電流を0に制御しているので、モータ電流iはγ軸電流iγにほぼ等しくなる。位相差θの大きさは、予めテーブル化された値を用いたり、関数化された値を用いればよい。
【選択図】 図3
【解決手段】V/f制御の演算では、回転子の位置・速度の情報を用いず、インバータの座標軸であるδ−γ座標を基準に制御を行う。一方、センサレスベクトル制御では、回転子の位置・速度を推定し、回転子の座標軸であるd−q座標を基準に制御を行う。したがって、2つの制御の切換えを行う場合は、制御座標軸を変換する必要がある。同図で、モータ電圧をv、モータ電流をi、V/f制御時の座標軸(δ−γ座標軸)とセンサレスベクトル制御時の座標軸(d−q座標軸)との位相差をθとする。V/f制御時は基本的にδ軸電流を0に制御しているので、モータ電流iはγ軸電流iγにほぼ等しくなる。位相差θの大きさは、予めテーブル化された値を用いたり、関数化された値を用いればよい。
【選択図】 図3
Description
本発明は、永久磁石型同期モータの制御装置に関するものであり、更に詳しくは、周期的な負荷変動がある場合も考慮した永久磁石型同期モータの制御装置に関する。
従来、永久磁石型同期モータの制御には、低速モードはセンサレス制御、高速モードではV/f制御と、いずれかを選択する方式の制御がある。そのような制御において、例えば、高速モードから低速モードに切り換える際に、モータに印加する電圧および電流が急変しないように電圧指令および電流指令を補償する補償手段を有するものが開示されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、上記従来の制御では、制御の切り換えの前後で電圧指令及び電流指令の双方を徐々に変化させていく必要があり、制御が複雑となり、演算装置にも負担が掛かる。また、トルク脈動のある負荷(たとえば、シングルロータリー型圧縮機)に対しては、当該トルク脈動との関係が考慮されておらず、脈動の大きな位相で上記制御方式の切り換えが行われると、電圧および電流が急変し、円滑な切り換えができない場合もある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シンプルな構成でも制御方式を円滑に切り換えることができる永久磁石型同期モータの制御装置を提供することを第一の目的とする。また、トルク脈動のある負荷がある場合も考慮して工夫した上記永久磁石型同期モータの制御装置を提供することを第二の目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、速度指令に比例した電圧指令を用いてインバータを稼働させ、出力電圧位相角と、所望の力率角とを用いてモータに印加する電流を3相/2相変換して速度指令にフィードバックするV/f制御の演算と、電圧指令と、フィードバックする当該モータ印加電流とから、当該モータの回転子位置を推定し、当該推定された速度から所定の演算、またはテーブルからの選択によって最小電流となる電流指令を用いて制御するセンサレスベクトル制御の演算と、を切り換えて当該モータを制御する演算装置を有するようにしたものである。
この発明によれば、V/f制御とセンサレス制御も基本的にモータの運転状態に差がなく、駆動制御の切り換えを円滑に行うことが可能となる。
また、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、前記永久磁石型同期モータの制御装置において、前記V/f制御の演算から前記センサレスベクトル制御の演算への切り換えに際し、インバータ座標系と前記モータの回転子座標系との位相差を補正するようにしたものである。
この発明によれば、モータ電流指令及びモータ電圧指令を徐々に変更して電圧・電流の急変を抑制する必要がない為、制御アルゴリズムを簡略化可能であり、演算処理にかかる負担が少ない。
また、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、前記永久磁石型同期モータの制御装置において、前記センサレスベクトル制御の演算から前記V/f制御の演算への切り換えに際し、インバータ座標系と前記モータの回転子座標系との位相差および力率制御角を補正するようにしたものである。
この発明によれば、モータ電流指令及びモータ電圧指令を徐々に変更して電圧・電流の急変を抑制する必要がない為、制御アルゴリズムを簡略化可能であり、演算処理にかかる負担が少ない。
また、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、前記永久磁石型同期モータの制御装置において、励磁方向の電流が一定値以上のときには前記V/f制御の演算と前記センサレスベクトル制御の演算とを切り替えないようにしたものである。
この発明によれば、周波数指令が大きく、いわゆる弱め界磁制御を行ってトルクを増大させるときは、励磁方向の電流が大きくなる。そのようなときは、切り換えを行わず、電流が過大になって制御が不安定になるのを防止する。
また、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、前記永久磁石型同期モータの制御装置において、定位相脈動トルクを有する負荷の場合、前記V/f制御の演算と前記センサレスベクトル制御の演算とを切換える位相を、脈動ピークを外した所定の位相に固定させるようにしたものである。
この発明によれば、トルク脈動(変動)によってモータ電流波形に急変がある場合であって、その変化が一定の位相で起こることが分かっている場合、当該ポイントを外した所定位置をトリガーとして制御演算の切り換えを行うので、過電流による緊急停止という事態を回避することができる。
本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置は、モータ回転速度領域に拘わらず、それぞれ演算の基礎となる座標が異なるV/f駆動制御(δ-γ座標軸)と、センサレスベクトル駆動制御(d−q座標軸)の切換えにおいて、シンプルな構成で円滑な切り換えができ、失敗が抑制されるという効果を奏する。また、定位相の脈動トルクがある負荷に対しても円滑な切り換えができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、当業者によく知られているように、δ-γ座標は、励磁方向であるδ軸と、それに90度電気角が進んだγ軸とのインバータにおける直角座標を意味し、d−q座標は、モータ回転子の界磁方向をd軸、それに90度電気角が進んだq軸との直角座標を意味する。
[V/f制御の演算]
図1は、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置で行うV/f制御の演算工程を示すブロック線図である。同図において、ωmは回転数指令、nはモータの極対数、ω1はインバータ出力周波数(一次周波数)、vδ*、vγ*は、それぞれδ軸、γ軸電圧指令、vu *、vv *、vw *はそれぞれu相、v相、w相の電圧指令、vu、vv、vwはそれぞれu相、v相、w相の出力電圧、iu、iv、iwは、それぞれu相、v相、w相の出力電流、iδ、iγはそれぞれδ軸、γ軸のインバータ出力電流、θは出力電圧位相、およびφは力率角である。
図1は、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置で行うV/f制御の演算工程を示すブロック線図である。同図において、ωmは回転数指令、nはモータの極対数、ω1はインバータ出力周波数(一次周波数)、vδ*、vγ*は、それぞれδ軸、γ軸電圧指令、vu *、vv *、vw *はそれぞれu相、v相、w相の電圧指令、vu、vv、vwはそれぞれu相、v相、w相の出力電圧、iu、iv、iwは、それぞれu相、v相、w相の出力電流、iδ、iγはそれぞれδ軸、γ軸のインバータ出力電流、θは出力電圧位相、およびφは力率角である。
V/f制御とは、永久磁石型同期モータ4に供給する電圧の電圧指令v*δ、v*γを速度指令ωf *に比例させる制御である。
本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置で行う演算は、速度指令演算手段(図示省略)による速度指令nωmを基礎とする。当該速度指令は、負荷の状態に応じて速度の増減を指令するものである。例えば、永久磁石型同期モータを空気調和装置等に用いられる圧縮機に適用する場合、室温等の温度を上下させるため、冷媒の循環量を増減させるときに速度指令nωmを増減させて圧縮機の回転数を上下させる。なお、ωmは回転数指令(機械角)、nωmは速度指令(電気角)で、速度指令=n×回転数指令との関係がある。
永久磁石型同期モータ4に対して本制御装置で行う演算は、電圧指令演算手段1、2相/3相変換手段2、インバータ3、3相/2相変換手段5、力率角演算手段6、ゲイン7、積分器8で構成される。ここでは、簡略化のためにインバータ3にPWM回路も含むこととした。モータ4は、最終的に電力調整器たるインバータ3から印加される電圧で駆動される。
本発明に用いるV/f制御の演算では、一般的に行われるV/f制御を基調としながら、電圧指令演算手段1、力率角演算手段6、および3相/2相変換手段5に特徴を有する。なお、インバータ3と積分器8は、一般的にモータ制御に用いられるものであればよい。すなわち、インバータ3は、電圧指令v*δ、v*γに応じて電力変換し、所望の電圧をモータ4に印加するものであればよい。積分器8は、速度指令(角周波数指令)ω1を積分して角度ψを導出するものであればよい。
電圧指令演算手段1では、一般的に行われるように、インバータ3の出力電圧から演算されるu、v、w3相の各電流iu、iv、iwを3相/2相変換した後のδ軸電流iδ、γ軸電流iγ、インバータ出力周波数ω1、比例定数K、d軸の誘起電圧係数Λd、および比例ゲインKδを用いた以下の式(1−1)(1−2)の演算によって、δ軸電圧指令vδ*およびγ軸電圧指令vγ*を求める。
具体的に式(1−1)の演算では、δ軸電圧指令はδ軸電流iδが0になるように負の比例制御を行っている。これで、iδの正負のふらつきがあれば、ゲインKδによって早急にiδのふらつきをなくすように電圧指令vδ*が決定される。γ軸電圧指令vγ*は、誘起電圧に相当するΛdω1の電圧を補うような電圧値とすることに加え、δ軸電流iδを0にする演算をするために、ここではiδを積分する積分制御を行う。つまり、式(1−2)の演算では、δ軸電流iδが正負のどちらか一方の値で累積すれば、その分大きな値で元に戻るような電圧値が決定される。なお、ここでは積分制御を用いたが、制御応答性によっては、比例制御、比例+積分制御等としてもよい。
このようにすることで、モータのインダクタンスに異方性がない場合、iδは0になり、iδが0になればvδも0になる。結局、モータ4に流す電流とモータ印加電圧はγ軸成分のみとなり、位相は一致するので力率1となる。
しかしながら、永久磁石型同期モータでは、リラクタンストルクも利用できるので、マグネットトルクとリラクタンストルクの双方をバランスよく利用することで、電流を最小電流にすることができる。そこで、発明者は、鋭意研究の末、マグネットトルクとリラクタンストルクの双方をバランスよく用いるためのδ軸電流とγ軸電流が流れるときの力率角φを積極的に利用することを見いだした。具体的には、δ軸電流とγ軸電流合成絶対値Iと、q軸のインダクタンスとを用いて、当該δ軸電流とγ軸電流力率角φを定義できることを見いだした(詳細は、特願2004−366837参照)。
このように、発明者は、トルクを出すために必要となる最小電流の制御は、φ=0ではなく、力率角(位相差)を積極的に制御してやることにより実現できることを見いだした。そこで、本発明では、図1に示すように、モータ端子の電流を3相2相変換する際に用いられる回転軸をθではなくθ−φとする力率角演算手段6を有するようにした。φは、電流Iの関数であるから、同図に示すように、まず、フィードバックされるδ軸およびγ軸電流を用いてIを求める。Iが求まれば、それに上記定数を乗じてφを求める。これによってφを3相2相変換の回転軸θから差し引くようにする。
そして、θ−φを回転軸として3相2相変換された電流は、ゲインKω7が乗じられて周波数たる速度指令nω*に負帰還され、最小電流となるようなモータの力率角φに合うように指令nω*が修正される。これは、負荷が重くなり、モータの回転子の位置が回転磁界に対して遅れると電流が増え、逆に負荷が軽くなり、回転子の位置が回転磁界に対して進むと電流が減るので、速度指令を修正することで安定化させるものである。
上記電流Iと位相差φの関係は、比例関係であるので、適切な比例定数を選択して演算によりφを導くようにしてもよいし、電流値の大きい範囲での正確性を求めるのであれば、Iとφの関係をテーブル化してもよい。Iは、実際のフィードバックで得られるので、φは一義的に決定でき、常に適切な位相差φを求めることができる。
以上により、この発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置におけるV/f制御の演算によれば、永久磁石型同期モータのリラクタンストルクも考慮した最小電流で永久磁石型同期モータのトルクを制御することができる。また、複雑な演算を必要とせず、3相2相変換の際の回転軸角度を変化させるだけで、最小電流によるトルク制御が可能になるので、構成がシンプルとなり、メンテナンス性も向上する。さらに、本発明では、一般的なV/f制御に比べてトルク範囲が拡張され、低速回転から高速回転まで電流を最小にして動作させることが可能となる。
このような制御が可能になると、工業製品の小型化、省電力化に寄与することができる。たとえば、エアコンの圧縮機用のモータは、小型化の要請と共にエアコンが大量に電力を消費する機器であることから、ことの他省電力化の要請が強い。永久磁石型同期モータが採用されてきているのも、その現れの一つであるが、本発明により、最小電流制御がコンパクトな構成で可能となれば、上記要請に沿うものとなる。
[センサレスベクトル制御]
図2は、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置で行うセンサレスベクトル制御の演算工程を示すブロック線図である。センサレスベクトル制御とは、永久磁石型同期モータ4の電機子電流からロータの位置と回転速度とを推定し、推定されたロータの位置と回転速度とに応答して、永久磁石型同期モータ4に供給される電機子電流のq軸電流iqとd軸電流idとを制御する制御である。
図2は、本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置で行うセンサレスベクトル制御の演算工程を示すブロック線図である。センサレスベクトル制御とは、永久磁石型同期モータ4の電機子電流からロータの位置と回転速度とを推定し、推定されたロータの位置と回転速度とに応答して、永久磁石型同期モータ4に供給される電機子電流のq軸電流iqとd軸電流idとを制御する制御である。
本発明に係る永久磁石型同期モータの制御装置におけるセンサレスベクトル制御は、3相/2相変換手段5、位置/速度推定演算手段13、速度制御演算手段11、電流制御演算手段12、2相/3相変換手段2、及びインバータ3とで行われる。なお、当該制御装置における演算は、システムクロックのクロックサイクル毎に行われる。
3相2相変換手段5では、取得されたu相電流iu、v相電流iv、及びw相電流iw(又はこれらのうちの2つ)に対して、一つ前のクロックサイクルで算出されたロータの推定位置(角度)ψを用いて3相2相変換が行われ、q軸電流iq及びd軸電流idが算出される。
位置/速度推定演算13では、3相2相変換手段5で算出されたq軸電流iq及びd軸電流idと、一つ前のクロックサイクルにおいて電流制御演算手段12で算出されたq軸電圧v* q及びd軸電圧v* dとから、現在のロータの推定位置ψ及びロータの推定速度、並びに、次のクロックサイクルにおけるロータの推定位置ψが算出される。推定位置ψ、及び推定速度ω1は、永久磁石型同期モータ4のモータモデルを用いて算出される(詳細は省略)。
速度制御演算手段11では、速度指令ωm *とロータの推定速度ω1との偏差が算出され、該偏差が0に近づくように、q軸電流指令値iq *とd軸電流指令値id *とが生成される。モータのインダクタンスに異方性がない場合、一般的には、d軸電流指令値id *は0である。しかし、速度指令ω*が高いために弱め界磁制御を行う必要がある場合には、d軸電流指令値id *は負に設定される。また、モータのインダクタンスが異方性を有する場合も、d軸電流指令値id *は0とならない。最小電流で永久磁石型同期モータ4を制御するためには、まず速度指令ωm *とロータの推定速度ω1との偏差に応じたトルクを算出、または選択する。そして、当該トルクを出すために必要となるq軸電流指令値iq *とd軸電流指令値id *の組み合わせを演算、またはテーブルにより選択する。
電流制御演算手段12では、q軸電流指令値iq *とq軸電流iqとの偏差、及びd軸電流指令値id *とd軸電流idとの偏差が算出され、これらの偏差が0に近づくようにq軸電圧vq *及びd軸電圧vd *が決定される。q軸電圧vq *及びd軸電圧vd *の決定には、ロータの推定速度ω1が使用される。
2相/3相変換手段2では、決定されたq軸電圧vq *及びd軸電圧vd *に対して2相3相変換が行われ、永久磁石型同期モータ5に供給されるべき3相駆動電圧のu相電圧v* u、v相電圧v* v、及びw相電圧v* wが算出される。この2相3相変換では、次のクロックサイクルにおけるロータの推定位置ψが使用される。なお、2相/3相変換では、ロータの推定位置ψに対して推定速度に応じた補正が加えられることにより、次のクロックサイクルにおけるロータの推定位置ψが算出される。
インバータ3に含まれるとして図示しなかったPWMでは、算出されたu相電圧vu *、v相電圧v* v、及びw相電圧vw *を有する3相駆動電圧が永久磁石型同期モータ4に供給されるようにインバータ3を制御するPWM信号が生成される。
センサレスベクトル制御の利点は、同一モータ出力電流に対しては(即ち、スイッチング素子の容量がある値に定められた、あるインバータに対しては)、その出力トルクが大きいことである。q軸電流iqとd軸電流idとを独立して制御可能なセンサレスベクトル制御は、他の制御方法と比べて、より大きな出力トルクの出力が可能である。加えて、センサレスベクトル制御は、d軸電流idの制御によって弱め界磁制御を行うことができる。弱め界磁制御は、逆起電力を抑制して永久磁石型同期モータ5の高速運転を可能にする。
以上、V/f制御、およびセンサレスベクトル制御の最小電流による制御について説明した。本発明では、これらの制御の切り換え演算について最大の特徴がある。
図3は、V/f制御からセンサレスベクトル制御への切り換え時の位相差を示す電流・電圧ベクトル図である。既述したように、V/f制御の演算では、回転子の位置・速度の情報を用いず、インバータの座標軸であるδ−γ座標を基準に制御を行う。一方、センサレスベクトル制御では、回転子の位置・速度を推定し、回転子の座標軸であるd−q座標を基準に制御を行う。したがって、2つの制御の切換えを行う場合は、制御座標軸を変換する必要がある。
同図で、モータ電圧をv、モータ電流をi、V/f制御時の座標軸(δ−γ座標軸)とセンサレスベクトル制御時の座標軸(d−q座標軸)との位相差をθとする。V/f制御時はδ軸電流iδをゼロに制御しているので、モータ電流はγ軸方向を向いていると考えられる。また、センサレスベクトル制御時のモータ電流iは、d軸電流idとq軸電流iqに分けることができる。同図に示すように、位相差θは、センサレスベクトル制御時のidとiqを用いて、θ=tan-1(id/iq)と表すことができる。但し、θはq軸の正の方向をゼロとする。
V/f制御時は基本的にδ軸電流を0に制御しているので、モータ電流iはγ軸電流iγにほぼ等しくなる。位相差θの大きさは、予めテーブル化された値を用いたり、関数化された値を用いればよい。例えば、図6に示すように、θをγ軸電流iγに比例させた値とし、切換え時のγ軸電流iγから位相差θを求め、制御座標軸が異なる分の位相差を補正する。θはγ軸電流iγの関数としてもよいし、γ軸電流iγとθのテーブルとして有し、選択できるようにしてもよい。θをγ軸電流に比例させた値とすれば、計算式が簡単になり、演算処理の負担が小さくなるメリットがある。なお、モータのインダクタンスに異方性がない場合、モータトルクτは、τ∝モータ電流I×sinθ' (θ'は誘起電圧とモータ電流のなす角)の関係にあり、θ'が小ならばθ'≒sinθ' と考えられるため、θをγ軸電流に比例させた値とすることができる。
このように、座標軸を変換すれば、V/f制御の演算からセンサレスベクトル制御の演算へ円滑に切り換えができる。すなわち、どちらの制御でも最小電流の制御を行うので、基本的に、永久磁石型同期モータを駆動させるためのインバータ出力電流にもほとんど差がなく、切り換えによって、急激な電流変化、電圧変化を抑制することができる。また、モータ電流指令及びモータ電圧指令を徐々に変更して電圧・電流の急変を抑制する必要がない為、制御アルゴリズムを簡略化可能であり、演算処理にかかる負担が少ない。
次に、センサレスベクトル制御の演算からV/f制御の演算への切り換える場合について説明する。図4は、センサレスベクトル制御からV/f制御へ切り換え時の位相差を示す電流・電圧ベクトル図である。本発明で用いるV/f制御では、力率角を3相/2相変換に用いて最小電流での制御を行っているので、センサレスベクトル制御の演算からV/f制御の演算に切り換える際には、位相差および力率角を補正する。
位相差θがd軸電流idとq軸電流iqを用いてθ=tan-1(id/iq)と表される点はV/f制御の演算からセンサレス制御の演算への切換えと同様である。V/f制御では、最小電流制御(若しくは最大効率制御)となるようにモータ電圧指令の位相とモータ電流の位相に位相差φを設けている。センサレスベクトル制御においても、最小電流制御(若しくは最大効率制御)を行っているので、V/f制御におけるモータ電圧およびモータ電流の力率角φは同じになる。したがって、センサレスベクトル制御からV/f制御に切換えを行う場合は、上記と同様に、制御座標軸が異なる分の位相差θの補正に加え、V/f制御で最小電流制御(若しくは最大効率制御)を行う力率角分φを加算する。力率角φの大きさは、例えば、図7に示すように、モータ電流に比例させた値とし、切換え時のd、q軸電流の2乗和平方根相当の値から求めることができる。また、電流値とφの値をテーブルとして有し、選択できるようにしてもよい。なお、2乗和平方根の値としたのは、略、モータトルク∝モータ電流Iの関係がなりたっているので、I=(id 2+iq 2)1/2とすれば、それが2乗和平方根の値となるからである。
このように、座標軸を変換すれば、センサレスベクトル制御の演算から、V/f制御の演算へ円滑に切り換えができる。すなわち、どちらの制御でも最小電流の制御を行うので、基本的に、永久磁石型同期モータを駆動させるためのインバータ出力電流にもほとんど差がなく、切り換えによって、急激な電流変化、電圧変化を抑制することができる。また、本発明では、力率角を3相/2相変換に用いて、極めて合理的に最小電流制御していることもあり、電圧指令や電流指令を直接操作しなくても、制御の演算の切り換えを円滑に行うことができる。また、モータ電流指令及びモータ電圧指令を徐々に変更して電圧・電流の急変を抑制する必要がない為、制御アルゴリズムを簡略化可能であり、演算処理にかかる負担が少ない。
図8は、定期的な脈動トルクを有する負荷に対して永久磁石型同期モータを適用するときの切り換え位相を示すグラフであり、横軸は位相(角度)であり、縦軸は負荷である。同図に示すように、永久磁石型同期モータを適用する負荷によっては、定期的にトルクが脈動するものがある。例えば、シングルロータリ圧縮機は、シャフト1回転につき、1回のトルク脈動がある。同図は、それを示している。
トルク脈動があれば、制御する側である制御装置にも電流ピークが出やすく、この短い時間(位相)の間は、どうしても不安定となりやすい。また、周波数指令が大きくなり、いわゆる弱め界磁制御を行ってトルクを増大させるときも、励磁方向の電流が大きくなる。そのようなときは、制御の切り換えを行わず、電流が過大になって制御が不安定になるのを防止する。具体的には、制御を切換える位相を、脈動ピークを外した所定の位相に固定させるとよい。また、一般的に、励磁方向の電流、またはトルク方向の電流が一定の位相で一定値以上になることが予め判明している場合には、当該一定の位相で、V/f制御の演算とセンサレスベクトル制御の演算とを切り替えないようにする。図8の場合、所定の位相を、例えばモータ電流が脈動周期の平均値となる位相(A点)とする。
このように、トルク脈動(変動)によってモータ電流波形に急変がある場合であって、その変化が一定の位相で起こることが分かっている場合、当該位相を外した所定位置をトリガーとして制御演算の切り換えを行えば、過電流による緊急停止という事態を回避することができる。
図5は、電流、位相差、および力率角等のテーブルの例を示す表である。V/f制御の演算からセンサレスベクトル制御の演算への切り換え時は、V/f制御において、Iγが例えば5.5[A]と判っているので、これに対応する位相差θを12.5として、センサレスベクトル制御への切り換えを行う。反対に、センサレスベクトル制御の演算においては、idおよびiqが判っている(これらは最小電流となるような組み合わせ)ので、これらの絶対値等から、位相差θと力率角φを選択し、座標の切り換えを行う。なお、一般的には、低速回転数でセンサレスベクトル制御の演算、高速回転数でV/f制御を行うことが予想されるが、本発明においては、特に回転数による切り換えは直接関係なく、どちらの制御も可能な領域では、相互に、そして円滑に切り換え可能である。
以上のように、本発明にかかる永久磁石型同期モータの制御装置は、シンプルな構成でV/f制御の演算と、センサレスベクトル制御の演算とを円滑に切り換える永久磁石型同期モータ用の制御装置に有用である。特に、コストを抑えたい永久磁石型同期モータの制御装置に適している。
1 電圧指令演算手段
2 2相/3相変換手段
3 インバータ
4 永久磁石型同期モータ
5 3相/2相変換手段
6 力率角演算手段
7 ゲイン
8 積分器
11 速度制御演算手段
12 電流制御演算手段
13 速度推定演算手段
2 2相/3相変換手段
3 インバータ
4 永久磁石型同期モータ
5 3相/2相変換手段
6 力率角演算手段
7 ゲイン
8 積分器
11 速度制御演算手段
12 電流制御演算手段
13 速度推定演算手段
Claims (5)
- 速度指令に比例した電圧指令を用いてインバータを稼働させ、出力電圧位相角と、所望の力率角とを用いてモータに印加する電流を3相/2相変換して速度指令にフィードバックするV/f制御の演算と、
電圧指令と、フィードバックする当該モータ印加電流とから、当該モータの回転子位置を推定し、当該推定された速度から所定の演算、またはテーブルからの選択によって最小電流となる電流指令を用いて制御するセンサレスベクトル制御の演算と、
を切り換えて当該モータを制御する演算装置を有することを特徴とする永久磁石型同期モータの制御装置。 - 前記V/f制御の演算から前記センサレスベクトル制御の演算への切り換えに際し、インバータ座標系と前記モータの回転子座標系との位相差を補正することを特徴とする請求項1に記載の永久磁石型同期モータの制御装置。
- 前記センサレスベクトル制御の演算から前記V/f制御の演算への切り換えに際し、インバータ座標系と前記モータの回転子座標系との位相差および力率制御角を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の永久磁石型同期モータの制御装置。
- 励磁方向の電流が一定値以上のときには前記V/f制御の演算と前記センサレスベクトル制御の演算とを切り替えないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の永久磁石型同期モータの制御装置。
- 定位相脈動トルクを有する負荷の場合、前記V/f制御の演算と前記センサレスベクトル制御の演算とを切換える位相を、脈動ピークを外した所定の位相に固定させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の永久磁石型同期モータの制御装置。
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|---|---|---|---|
| JP2006332318A JP2008148437A (ja) | 2006-12-08 | 2006-12-08 | 永久磁石型同期モータの制御装置 |
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-
2006
- 2006-12-08 JP JP2006332318A patent/JP2008148437A/ja active Pending
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