JP2007321181A - マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 - Google Patents
マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2007321181A JP2007321181A JP2006150945A JP2006150945A JP2007321181A JP 2007321181 A JP2007321181 A JP 2007321181A JP 2006150945 A JP2006150945 A JP 2006150945A JP 2006150945 A JP2006150945 A JP 2006150945A JP 2007321181 A JP2007321181 A JP 2007321181A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- stainless steel
- martensitic stainless
- welding
- pwht
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Arc Welding In General (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.015%未満、N:0.015%未満、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.0〜8.0%を含み、さらにSi、Mn、P、S、Alを適正量含み、さらに、Mo、Cu、Wのうちから選ばれた1種または2種以上、を含有するマルテンサイト系ステンレス鋼材に溶接を施して溶接部を形成するに際し、溶接後に、溶接部に、P1=(T+273)(20+log(t/3600))(ここでT:PWHT温度(℃)、t:PWHT保持時問(s))で定義されるP1が15500以上、P2=20logt+T−(A1+120)(ここで、A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限の温度(℃))で定義されるP2が0以下を満足し、かつPWHT保持時間tが60〜1000sの範囲内であるPWHTを施す。これにより、HAZの耐IGSCC性および耐水素脆化性が顕著に向上する。
【選択図】図2
Description
従来、例えば、炭酸ガスを多量に含む環境では、炭素鋼鋼管を使用し、防食手段として、腐食抑制剤(インヒビター)の添加が行なわれてきた。しかし、腐食抑制剤の添加は、コスト高となるだけでなく、高温では十分な効果が得られない場合があることや、環境への影響を配慮して、最近では腐食抑制剤を使用せず、耐食性に優れた鋼管を使用する傾向となっている。
しかし、最近、炭酸ガスを含有する環境下で、マルテンサイト系ステンレス鋼管を円周溶接した溶接熱影響部(以下、HAZともいう)に粒界応力腐食割れ(Intergranular Stress Corrosion Cracking)(以下、IGSCCともいう)と推定される割れが生じるという問題が生じている。
このような円周溶接部のHAZに発生するIGSCCを防止できる実用的な方策として、溶接後熱処理(Post Welding Heat Treatment)(以下、PWHTともいう)の適用が考えられている。これは、溶接後に溶接部に適正な条件でPWHTを施すことにより、IGSCCの原因となるCr欠乏層にCrを拡散させ、Cr欠乏層を消滅させるという考え方に基づいている。
マルテンサイト系ステンレス鋼管を海底パイプラインとして使用する場合には、海水からの鋼管外面の腐食を防止するために、鋼管外表面に有機被覆と陰極防食が施される。通常、パイプライン操業時には、陰極防食条件の最適化が行なわれているが、しかし、時には、不適切な陰極防食が施され、陰極反応で過剰に水素が生成される場合があることが考えられる。また、溶接施工時においても、溶接材料の予熱やシールド管理の最適化が図られている。しかし、時には、不適切な溶接が行われ、鋼中に水素が多量に侵入する場合があることが考えられる。このような場合には、侵入した水素に起因して、円周溶接部、あるいは、犠牲陽極を具備した部品が溶接された部分で、割れが発生することがある。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼管の溶接材料として一般的な二相ステンレス鋼を使用した溶接部に、不適切な条件でPWHTを施した場合には、σ相が析出し溶接金属の靭性が低下するという懸念もある。また、PWHTは、パイプライン敷設の工期を長引かせ、敷設コストを上昇させるため、PWHTの処理時間をできるだけ短時間とすることが要望されている。
P1=(T+273)(20+log(t/3600))……(1)
(ここでT:PWHT温度(℃)、t:PWHT保持時問(s))
で定義されるP1値が15500以上となるようにPWHT条件を調整することにより、HAZの耐IGSCC性が顕著に向上することを見いだした。また、耐水素脆化性は、HAZの最高硬さに依存することを見いだし、次(2)式
P2=20logt+T−(A1+120) ……(2)
(ここでT:PWHT温度(℃)、t:PWHT保持時問(s)、A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限の温度(℃))
で定義されるP2値が0以下となるように、PWHT条件を調整することにより、マルテンサイト系ステンレス鋼材HAZの最高硬さが300HV以下となり、耐水素脆化性が顕著に向上することを知見した。
質量%で、0.011%C−0.20%Si−0.47%Mn−12.1%Cr−5.2%Ni−2.1%Mo−0.010%N−0.025%Alを含有するマルテンサイト系ステンレス熱延鋼板(板厚:15mm)に焼入れ−焼戻処理を施し、X80級の強度に調整した。得られた熱延鋼板から、熱サイクル試験片(大きさ:厚さ4mm×幅15mm×長さ115mm、または厚さ10mm×幅10mm×長さ115mm)を採取し、該熱サイクル試験片に溶接熱サイクルをグリーブル試験機を用いて付与した。付与した溶接熱サイクルは、図3に示すように、ピーク温度:1300℃、保持時間:1sの第1パス(800〜500℃間の冷却時間:9s)と、それに続き、温度T(℃)、保持時間t(s)をそれぞれ変化した第2パス(保持後冷却:第1パスと同等)とで構成される、熱サイクルとした。ここで、第1パスは本溶接の高温の熱サイクルを、第2パスは本溶接における後続のパスによる低温の熱サイクルおよび溶接後のPWHTによる熱サイクルを合わせて模擬したものとした。
応力腐食割れ試験は、図5に示すような治具を用いて試験片を内半径:8mmでU字型に曲げてボルト締めし、腐食環境中に浸漬する試験とした。試験期間は168hrとした。なお、腐食環境は、液温:100℃、CO2圧:0.1MPa、pH:2.0の5%NaCl水溶液とした。試験後、試験片断面について、100倍の光学顕微鏡で割れの有無を観察し、耐粒界応力腐食割れ性(耐IGSCC性)を評価した。得られた結果を図1に示す。○が割れなしの場合、●が割れありの場合である。なお、図1には、P1=(T+273)(20+log(t/3600))(ここで、T:第2パス熱サイクルの温度(℃)、t:第2パス熱サイクルの保持時間(s))の等値線を併せて示す。
さらに、これら溶接熱サイクル付与済みの試験片中央部から、水素脆化試験用試験片(平行部直径3.8mmの丸棒試験片)を採取し水素脆化試験を実施した。
水素脆化試験は、陰極防食環境を模擬して、試験片を3.5%水溶液(液温:25℃)中に浸漬して、−1100mmV vs SCEの電位を付与しながら、歪速度:1.0×10−6/sで引張試験を実施し、絞り値を求める試験とした。また、大気環境下でも同様の試験を実施し、絞り値を求めた。これらの測定値から、大気環境下の絞り値に対する陰極防食環境下の絞り値の比、絞り比=(陰極防食環境下での絞り値)/(大気環境下での絞り値)で、耐水素脆化性を評価した。
図2から、P1が15500以上で、かつ、硬さが300HVを超えると絞り比が50%を下回り、耐水素脆化性が低下していることがわかる。硬さが300HV以下であれば、絞り比は50%以上であり、良好な耐水素脆化性を有すると判断できる。なお、温度Tが高温、保持時間tが長時間である、第2の熱サイクルを受けると、硬さHVが高くなり硬化するのは、温度Tに保持されている間にα→γ変態が起こり、冷却中にオーステナイト(γ)の一部がマルテンサイト変態するためである。ただし、温度Tがα→γ変態点を超えても、それがわずかで、かつ短時間であれば、変態したγ相は安定であり、冷却してもγ相として残留することができる。この場合、硬化は生じない。このようことから、本発明者らは、PWHT熱サイクル後の硬さは、加熱される温度Tと保持時間t、ならびに、α→γ変態点に依存すると考えた。
(1)質量%で、C:0.015%未満、N:0.015%未満、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.0〜8.0%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Al:0.10%以下を含み、さらに、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、W:4.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するマルテンサイト系ステンレス鋼材に溶接を施して溶接部を形成するに当り、
前記溶接後に、前記溶接部に、次(1)式
P1=(T+273)(20+log(t/3600))……(1)
(ここでT:溶接後熱処理温度(℃)、t:溶接後熱処理保持時問(s))
で定義されるP1が15500以上、次(2)式
P2=20logt+T−(A1+120) ……(2)
(ここでT:溶接後熱処理温度(℃)、t:溶接後熱処理保持時問(s)、A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限の温度(℃))
で定義されるP2が0以下を満足し、かつ溶接後熱処理保持時間tが60〜1000sの範囲内である溶接後熱処理を施すことを特徴とする耐粒界応力腐食割れ性および耐水素脆化性に優れた溶接熱影響部を有するマルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法。
(3)(1)または(2)において、前記マルテンサイト系ステンレス鋼材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法。
前記溶接後に、前記円周溶接部に、次(1)式
P1=(T+273)(20+log(t/3600))……(1)
(ここでT:溶接後熱処理温度(℃)、t:溶接後熱処理保持時問(s))
で定義されるP1が15500以上、次(2)式
P2=20logt+T−(A1+120) ……(2)
(ここでT:溶接後熱処理温度(℃)、t:溶接後熱処理保持時問(s)、A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限の温度(℃))
で定義されるP2が0以下を満足し、かつ保持時間tが60〜1000sの範囲内である溶接後熱処理を施すことを特徴とする耐粒界応力腐食割れ性および耐水素脆化性に優れた溶接熱影響部を有するマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記マルテンサイト系ステンレス鋼管が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
また、本発明でいう溶接部には、マルテンサイト系ステンレス鋼材同士を溶接接合してなる溶接部に加えて、マルテンサイト系ステンレス鋼材と他の材質からなる材料とを溶接接合してなる溶接部を含むものとする。
C:0.015%未満
Cは、鋼に固溶し、鋼の強度増加に寄与する元素であるが、多量の含有は、HAZを硬化させ、溶接割れを生じさせたり、溶接熱影響部靭性を低下させるため、本発明では、できるだけ低減することが望ましい。また、HAZのIGSCCを防止するため、Cr炭化物として析出してCr欠乏層形成の原因となるCはできるだけ低減することが望ましい。しかしながら、適正なPWHTを施せば、極端な低C化は必要がないため、Cは0.015%未満に限定した。Cを0.015%以上含有すると、溶接割れの防止や溶接熱影響部靭性の確保が困難となる。なお、好ましくは0.010%以下である。
Nは、Cと同様に、鋼に固溶し、鋼の強度増加に寄与する元素であり、多量の含有は、HAZを硬化させ、溶接割れを生じさせたり、HAZ靭性を低下させる。また、Nは、Ti、Nb、Zr、V、Hf、Taと結合し窒化物を形成するため、炭化物を形成しCr炭化物の形成を防止できるTi、Nb、Zr、V、Hf、Ta量を実質的に低減することになり、これら元素のCr欠乏層形成を抑制しIGSCCを抑制する効果を低下させることになる。このため、Nはできるだけ低減することが望ましい。上記したNの悪影響は、0.015%未満であれば許容できるため、本発明では、Nは0.015%未満に限定した。なお、好ましくは0.010%以下である。
Crは、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性等の耐食性を向上させるための基本元素であり、本発明では10.0%以上含有する必要がある。一方、14.0%を超える含有は、フェライト相が形成しやすくなり、マルテンサイト組織を安定して確保するために多量の合金元素添加を必要とし材料コストの上昇を招く。このため、本発明ではCrは10.0〜14.0%の範囲に限定した。
Niは、耐炭酸ガス腐食性を向上させるとともに、固溶して強度上昇に寄与し、また靭性を向上させる元素である。また、Niはオーステナイト形成元素であり、低炭素域でマルテンサイト組織を安定して確保するために有効に作用する。このような効果を得るためには、1.0%以上の含有を必要とする。一方、8.0%を超える含有は、変態点が低下しすぎて、所望の特性を確保するための焼戻処理が長時間となるうえ、材料コストの高騰を招く。このため、Niは1.0〜8.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.0〜6.0%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して強度増加に寄与する元素であり、本発明では0.1%以上含有することが望ましい。しかし、Siはフェライト生成元素でもあり、1.0%を超える多量の含有は母材およびHAZ靭性を低下させる。このため、Siは1.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.3%である。
Mnは、固溶して鋼の強度上昇に寄与するとともに、オーステナイト生成元素であり、
フェライト生成を抑制して母材およびHAZ靭性を向上させる。このような効果を得るためには0.2%以上含有することが好ましい。一方、2.0%を超えて含有しても効果が飽和する。このため、Mnは2.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.4〜1.5%である。
Pは、粒界に偏析して粒界強度を低下させ、耐応力腐食割れ性に悪影響を及ぼす元素であり、できるだけ低減することが好ましいが、0.03%までは許容できる。このため、Pは0.03%以下に限定した。なお、熱間加工性の観点からは、0.02%以下とすることが好ましい。
Sは、MnS等の硫化物を形成し、加工性を低下させる元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.010%までは許容できる。このため、Sは0.010%以下に限定した。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として作用し、0.01%以上含有することが好ましいが、0.10%を超える含有は靭性を低下させる。このため、Alは0.10%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.04%である。
Mo、Cu、Wはいずれも、CO2を含有する天然ガスを輸送するラインパイプ用鋼管に要求される特性である耐炭酸ガス腐食性を向上させる元素であり、本発明では選択して1種又は2種以上を含有できる。
Ti、Nb、V、Zr、Hf、Taはいずれも、炭化物形成元素であり、1種または2種以上を選択して含有することができる。Ti、Nb、V、Zr、Hf、Ta はいずれも、Crに比べて炭化物形成能が強く、溶接熱で固溶したCが、冷却時にCr炭化物として旧オーステナイト粒界に析出するのを抑制し、HAZの耐IGSCC性を向上させる効果を有する。また、Ti、Nb、V、Zr、Hf、Taの炭化物は、溶接熱で高温に加熱されても溶解しにくく固溶Cの発生が抑制され、このことを介してCr炭化物の形成を抑制し、HAZの耐IGSCC性を向上させるという効果もある。このような効果を得るためには、Ti:0.03%以上、Nb:0.03%以上、V:0.02%以上、Zr:0.03%以上、Hf:0.03%以上、Ta:0.03%以上、をそれぞれ含有することが好ましい。一方、Ti:0.15%、Nb:0.10%、V:0.10%、Zr:0.10%、Hf:0.20%、Ta:0.20%をそれぞれ超える含有は、耐溶接割れ性、靭性を低下させる。このため、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、好ましくはTi:0.05〜0.12%、Nb:0.03〜0.08%、V:0.02〜0.08%、Zr:0.03〜0.08%、Hf:0.10〜0.18%、Ta:0.10〜0.18%である。
Ca、Mg、REM、Bは、いずれも熱間加工性、連続鋳造における安定製造性の向上に有効に作用する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0010%以上、REM:0.0010%以上、B:0.0005%以上、それぞれ含有することが好ましい。一方、Ca:0.010%、Mg:0.010%、REM:0.010%、B:0.010%を超えて含有すると粗大介在物として存在しやすくなるため耐食性の低下、靭性の低下が著しくなる。このため、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、Caは、鋼管の品質安定性が高く、製造コストも低く抑えることができ、品質安定性、経済性の観点から最も有効である。Caのより好ましい範囲は0.005〜0.0030%である。
本発明で好適に使用するマルテンサイト系ステンレス鋼材は、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉などの通常の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法などの公知の方法で製品素材とし、該製品素材に公知の熱間加工を適用し、所定の寸法の継目無鋼管、熱延鋼板、厚鋼板、形鋼、棒鋼等の鋼材とすることが好ましい。熱間加工後、室温まで冷却したこれら鋼材には、さらにAc3変態点以上の温度に再加熱したのち空冷以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施し、ついで、Ac1変態点以下の温度で焼戻し処理を行うことが好ましい。なお、上記した組成の鋼材は、熱間加工後、空冷以上の冷却速度で冷却すれば、マルテンサイト組織とすることができるので、焼入れ処理を省略して、熱間加工後、室温まで冷却したのち、直接焼戻し処理を施してもよい。
本発明では、溶接部に施すPWHTは、次(1)式
P1=(T+273)(20+log(t/3600))……(1)
(ここでT:PWHT温度(℃)、t:PWHT保持時問(s))
で定義されるP1が15500以上、かつ次(2)式
P2=20logt+T−(A1+120) ……(2)
(ここでT:PWHT温度(℃)、t:PWHT保持時問(s)、A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限の温度(℃))
で定義されるP2が0以下を満足し、かつ保持時間tが60〜1000sの範囲内である処理とする。
また、PWHTの保持時間tは、上記した(1)、(2)式を満足する範囲内であれば溶接部特性には問題ないが、安定した処理を行うにはある程度の時間が必要であるという観点から、本発明では、PWHTの保持時間tを60〜1000sの範囲に限定した。保持時間tが10s未満では、溶接部特性のばらつきが大きく安定した特性が確保できない。一方、1000sを超えると、二相ステンレス鋼を用いて形成された溶接金属にσ相が析出し、溶接金属靭性が低下する。また、長時間のPWHTは、施工効率を低下させる。このため、PWHTの保持時間tを60〜1000sの範囲に限定した。なお、好ましくは120〜500sである。
ついで、得られた継目無鋼管に、焼入れ焼戻し処理を施し、X−80グレードの鋼管とした。得られた継目無鋼管から厚さ4mm×幅15mm×長さ115mm、および厚さ10mm×幅10mm×長さ115mmの試験用素材を採取し、試験用素材の中央部に、図1に示す鋭敏化領域に相当する熱サイクル、すなわち、ピーク温度:1300℃、保持時間:1sの第1パス(800〜500℃の間の冷却時間:9s)と、それに続き、ピーク温度:450℃、保持時間:300sの第2パス(保持後冷却:第1パスと同様)とで構成される熱サイクルを付与した。
得られた結果を表2に示す。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.015%未満、 N:0.015%未満、
Cr:10.0〜14.0%、 Ni:1.0〜8.0%、
Si:1.0%以下、 Mn:2.0%以下、
P:0.03%以下、 S:0.010%以下、
Al:0.10%以下
を含み、さらに、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、W:4.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するマルテンサイト系ステンレス鋼材に溶接を施して溶接部を形成するに当り、
前記溶接後に、前記溶接部に、下記(1)式で定義されるP1が15500以上、下記(2)式で定義されるP2が0以下を満足し、かつ溶接後熱処理保持時間tが60〜1000sの範囲内である溶接後熱処理を施すことを特徴とする耐粒界応力腐食割れ性および耐水素脆化性に優れた溶接熱影響部を有するマルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法。
記
P1=(T+273)(20+log(t/3600)) ……(1)
P2=20logt+T−(A1+120) ……(2)
ここでT:溶接後熱処理温度(℃)、
t:溶接後熱処理保持時問(s)、
A1:100体積%マルテンサイト組織としたのち加熱し20秒間保持したときに1体積%以上オーステナイト相が形成される下限温度(℃) - 前記マルテンサイト系ステンレス鋼材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法。
- 前記マルテンサイト系ステンレス鋼材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006150945A JP2007321181A (ja) | 2006-05-31 | 2006-05-31 | マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006150945A JP2007321181A (ja) | 2006-05-31 | 2006-05-31 | マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2007321181A true JP2007321181A (ja) | 2007-12-13 |
Family
ID=38854255
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2006150945A Pending JP2007321181A (ja) | 2006-05-31 | 2006-05-31 | マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2007321181A (ja) |
Cited By (6)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2009280850A (ja) * | 2008-05-21 | 2009-12-03 | Jfe Steel Corp | 溶接部耐食性に優れた構造用ステンレス鋼板および溶接構造物 |
| JP2010111930A (ja) * | 2008-11-07 | 2010-05-20 | Jfe Steel Corp | 耐高圧炭酸ガス腐食性に優れたCr含有鋼管 |
| JP2010242162A (ja) * | 2009-04-06 | 2010-10-28 | Jfe Steel Corp | 超臨界圧炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管 |
| CN102747298A (zh) * | 2012-06-06 | 2012-10-24 | 兰州理工大学 | 一种奥氏体不锈钢及其制备方法 |
| CN110592362A (zh) * | 2019-10-25 | 2019-12-20 | 无锡市华立石化工程有限公司 | 一种用于液氮储罐的304l焊接件的焊后热处理方法 |
| CN114787406A (zh) * | 2020-05-13 | 2022-07-22 | 日铁不锈钢株式会社 | 奥氏体系不锈钢材及其制造方法以及板簧 |
Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001300730A (ja) * | 2000-04-17 | 2001-10-30 | Kawasaki Steel Corp | 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の接続方法 |
| JP2002226947A (ja) * | 2001-01-31 | 2002-08-14 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 耐歪み時効性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼溶接継手 |
| WO2005023478A1 (ja) * | 2003-09-05 | 2005-03-17 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | 耐応力腐食割れ性に優れた溶接構造物 |
-
2006
- 2006-05-31 JP JP2006150945A patent/JP2007321181A/ja active Pending
Patent Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001300730A (ja) * | 2000-04-17 | 2001-10-30 | Kawasaki Steel Corp | 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の接続方法 |
| JP2002226947A (ja) * | 2001-01-31 | 2002-08-14 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 耐歪み時効性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼溶接継手 |
| WO2005023478A1 (ja) * | 2003-09-05 | 2005-03-17 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | 耐応力腐食割れ性に優れた溶接構造物 |
Cited By (7)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2009280850A (ja) * | 2008-05-21 | 2009-12-03 | Jfe Steel Corp | 溶接部耐食性に優れた構造用ステンレス鋼板および溶接構造物 |
| JP2010111930A (ja) * | 2008-11-07 | 2010-05-20 | Jfe Steel Corp | 耐高圧炭酸ガス腐食性に優れたCr含有鋼管 |
| JP2010242162A (ja) * | 2009-04-06 | 2010-10-28 | Jfe Steel Corp | 超臨界圧炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管 |
| CN102747298A (zh) * | 2012-06-06 | 2012-10-24 | 兰州理工大学 | 一种奥氏体不锈钢及其制备方法 |
| CN110592362A (zh) * | 2019-10-25 | 2019-12-20 | 无锡市华立石化工程有限公司 | 一种用于液氮储罐的304l焊接件的焊后热处理方法 |
| CN114787406A (zh) * | 2020-05-13 | 2022-07-22 | 日铁不锈钢株式会社 | 奥氏体系不锈钢材及其制造方法以及板簧 |
| CN114787406B (zh) * | 2020-05-13 | 2023-08-08 | 日铁不锈钢株式会社 | 奥氏体系不锈钢材及其制造方法以及板簧 |
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| JP5765036B2 (ja) | 溶接熱影響部の耐粒界応力腐食割れ性に優れたラインパイプ用Cr含有鋼管 | |
| KR101893845B1 (ko) | 내변형 시효 특성 및 내hic 특성이 우수한 고변형능 라인 파이프용 강재 및 그 제조 방법 그리고 용접 강관 | |
| RU2677554C1 (ru) | Толстолистовая сталь для конструкционных труб или трубок, способ производства толстолистовой стали для конструкционных труб или трубок и конструкционные трубы или трубки | |
| JP4400423B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼管 | |
| JP6048615B2 (ja) | 耐歪時効特性及び耐hic特性に優れた高変形能ラインパイプ用鋼材およびその製造方法ならびに溶接鋼管 | |
| JP4250851B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼および製造方法 | |
| JP5640777B2 (ja) | 溶接熱影響部の耐粒界応力腐食割れ性に優れたラインパイプ用Cr含有鋼管 | |
| JP5040973B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法 | |
| JP4529269B2 (ja) | 耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法 | |
| US12276014B2 (en) | High strength micro alloyed steel seamless pipe for sour service and high toughness applications | |
| JP2008240021A (ja) | ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管 | |
| CN100473736C (zh) | 马氏体类不锈钢管 | |
| JP3555579B2 (ja) | 高耐食性マルテンサイト系ステンレス鋼 | |
| JP2007321181A (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼材溶接部の形成方法 | |
| JP4765283B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法 | |
| JPWO1999004052A1 (ja) | 高耐食性マルテンサイト系ステンレス鋼 | |
| JPH09327721A (ja) | 溶接性に優れたマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法 | |
| JP5387440B2 (ja) | マルテンサイト系高Cr電縫鋼管の溶接部の熱処理方法及びマルテンサイト系高Cr電縫鋼管の製造方法 | |
| JP2004107773A (ja) | 耐食性に優れたラインパイプ用ステンレス鋼管 | |
| JP4465066B2 (ja) | フェライト・オーステナイト二相系ステンレス鋼用溶接材料 | |
| JP4997695B2 (ja) | 耐粒界応力腐食割れ性に優れたラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管円周溶接継手の製造方法およびラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管 | |
| JP5793562B2 (ja) | 高耐食マルテンサイト系ステンレス鋼 | |
| JP3666388B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管 | |
| WO2013161089A1 (ja) | 溶接熱影響部の耐粒界応力腐食割れ性に優れたラインパイプ用Cr含有鋼管 | |
| JP3009126B2 (ja) | ラインパイプ用高Crマルテンサイト鋼管の製造方法 |
Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090421 |
|
| A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100324 |
|
| A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20110112 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20110208 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
| A521 | Written amendment |
Effective date: 20110406 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
| A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20120327 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |