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JP2007039399A - マクロファージの活性化に起因するiNOS産生または細胞運動能の抑制剤、およびそのスクリーニング方法 - Google Patents

マクロファージの活性化に起因するiNOS産生または細胞運動能の抑制剤、およびそのスクリーニング方法 Download PDF

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JP2007039399A
JP2007039399A JP2005227128A JP2005227128A JP2007039399A JP 2007039399 A JP2007039399 A JP 2007039399A JP 2005227128 A JP2005227128 A JP 2005227128A JP 2005227128 A JP2005227128 A JP 2005227128A JP 2007039399 A JP2007039399 A JP 2007039399A
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slit3
cells
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Shigeo Takenaka
重雄 竹中
Satohiko Tanno
聡彦 丹野
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Osaka Metropolitan University
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Osaka Prefecture University PUC
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Abstract

【課題】マクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の産生または細胞運動能を抑制する物質または組成物(抑制剤)を提供する。また当該抑制剤の有効成分をスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】上記抑制剤は、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とする。上記スクリーニング方法は、下記の工程を有する:(a)slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、(b)上記マクロファージについて、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルを測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるslit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルと対比する工程、及び(c)上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルが低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を標的物質として選択する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は炎症期における活性化マクロファージの誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)産生および細胞運動に関わる体内分子、並びに当該体内分子が関わるシグナル伝達経路に関して新たな知見を提供するものである。さらに本発明は、かかる知見に基づいて、活性化マクロファージに起因する誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)産生または細胞運動能を抑制するために用いられる物質または組成物(抑制剤)に関する。また本発明は、上記抑制作用に基づいて、一酸化窒素(NO)産生または細胞運動に起因して生じる疾患(例えば、炎症、慢性炎症から伸展する癌、癌転移などを始め、感染症、生活習慣病、神経損傷、神経変性疾患、心筋梗塞など)を予防または治療するために用いられる医薬組成物に関する。
さらにまた本発明は、上記抑制剤または上記医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法に関する。
マクロファージは、細菌や真菌など外界からくる病原体を攻撃したり、ウイルスに感染した異常細胞やガン細胞を除去することにより、生体防御機構の中心的役割を果たしている。この際、マクロファージは炎症性刺激に応答して、活性酸素を産生し、さらに誘導性一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)の合成を高める。合成されたiNOSにより一酸化窒素(NO)というフリーラジカルが産生され、体内での炎症反応が増幅される結果となる。こうした炎症反応は、生体防御における生理的な応答であるが、炎症が蔓延して慢性炎症の状態が長期間持続すると、活性酸素や一酸化窒素などのフリーラジカルの存在によってガンの伸展が促進されることが知られている。一般に、慢性炎症がガンの促進因子であり、抗炎症剤がガンの予防剤となるのはこのような理由によるものである。また、炎症反応が過剰に進むとショック反応や敗血症などの複合的な病気を起こし得る。このため、従来より、NO産生を制御して炎症反応を抑制することによって、炎症性疾患及びこれに付随する疾患を予防ないし治療する方法が広く検討されている。
ところで、ヒトを始めとする脊椎動物の脳や神経系に発現する細胞作用分子としてスリット(Slit)と称されるタンパク質が知られている(例えば、特許文献1など参照)。Slitタンパクは神経軸索を反発する分泌型ガイダンス因子に分類され、3種類(Slit1、Slit2、Slit3)が報告されている。その受容体としてRobo(Roundabout)が同定されており、Slitのガイダンスシグナルは当該Roboを介した、成長円錐内の細胞骨格制御機構により調節されると言われている。Slit1およびSlit2は発生過程において神経軸索の反発因子として機能し、さらにSlit 2はタンパク翻訳後のプロセッシングにより軸索の伸長、分枝にも関与すると報告されている。しかしながら、Slit 3は発生期における横隔膜形成、腎臓形成に関与し、ミトコンドリアに局在すると報告されているものの、その機能は不明である。
特開平11−164690号公報
本発明は、第1にマクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の産生または細胞運動能を抑制する物質または組成物(抑制剤)を提供することを目的とする。第2に、本発明はマクロファージの活性化に起因する一酸化窒素(NO)の産生または細胞運動に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供することを目的とする。第3に、本発明はマクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)または一酸化窒素(NO)の産生または細胞運動を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、Slitタンパクに関する一連の研究の中で、炎症期にある活性化マクロファージにおいてSlit3が特異的に発現することを見出し、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能を、RNAi法によりslit3の発現を抑制したマクロファージ(slit3-RNAi細胞)を用いて解析していたところ、
(1) slit3-RNAi細胞をLPS(リポポリサッカライド)で刺激した場合、活性化マクロファージに通常認められる細胞の伸展が認められないこと、
(2) slit3-RNAi細胞をLPSで刺激した場合、活性化マクロファージで通常認められるiNOSの発現が減少すること、
(3) iNOSの発現を制御するMAPキナーゼファミリー(ERK、p38、JNK)のリン酸化を検討したところ、slit3-RNAi細胞ではERKのリン酸化のみが減少したこと、
を見出し、このことから、Slit3はマクロファージにおいて、LPS刺激によるERKを介したiNOS遺伝子の転写制御に関与することが 判明した。
さらに、slit3-RNAi細胞において細胞骨格制御に関与する低分子量Gタンパク質RhoファミリーRac, Cdc42の活性化が低下することから、Slit3は、LPS刺激によるRacやCdc42を介したシグナル伝達経路に関与することが判明した。
またさらに、Wound-healingアッセイにより活性化マクロファージの移動能を評価したところ、slit3-RNAi細胞の移動能は低下しており、Slit3は活性化マクロファージの運動機能において重要な役割を担っていることが判明した。
以上のことから、Slit3は、炎症期のマクロファージに発現し、MAPキナーゼが関わるシグナル伝達経路の一因として、活性化マクロファージのNO産生および細胞運動に関わっていることが判明した。このことは、逆に、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制することにより、活性化マクロファージによるNO産生を抑制し、また細胞運動(細胞伸展)を抑制できること、すなわち活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制することによって、活性化マクロファージによるNO産生や細胞運動(細胞伸展)に関連して生じる疾患を予防または治療できる可能性を示すものである。
また、Slit3には腫瘍細胞の細胞移動能を高める作用があるという知見が得られ、このことからSlit3の機能発現を抑制することによって、腫瘍細胞の湿潤や癌転移を予防できる可能性が示唆された。
本発明はかかる知見に基づいて開発されたものであり、下記の態様を含むものである:
I.マクロファージの活性化に起因するiNOSの産生、または細胞運動能の抑制剤
(1)活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とする、マクロファージの活性化に起因するiNOSの産生、または細胞運動能の抑制剤。
(2)有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現またはその産生物(Slit3)の活性化を抑制する作用を有する物質である、(1)に記載する抑制剤。
(3)有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現を抑制するアンチセンス分子、リボザイムまたはRNAiエフェクターである、(1)または(2)に記載する抑制剤。
II.マクロファージの活性化に起因するNO産生、または細胞運動に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物
(1)活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とする、マクロファージの活性化に起因するNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物。
(2)有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現またはその産生物(Slit3)の活性化を抑制する作用を有する物質である、(1)に記載する医薬組成物。
(3)有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現を抑制するアンチセンス分子、リボザイムまたはRNAiエフェクターである、(1)または(2)に記載する医薬組成物。
(4)上記疾患が、感染症、炎症性疾患、生活習慣病、神経損傷、神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍である、(1)乃至(3)のいずれかに記載する医薬組成物。
III.マクロファージの活性化に起因するiNOSまたはNOの産生、または細胞運動を抑制する物質のスクリーニング方法
(1)下記の工程を有する、活性化マクロファージの活性化に起因するiNOSまたはNOの産生または細胞運動を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、
(b) 上記マクロファージについて、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルを測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるslit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルと対比する工程、及び
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルが低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を、標的物質として選択する工程。
(2)下記の工程を有する、活性化マクロファージの活性化に起因するiNOSまたはNOの産生または細胞運動を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、
(b) 上記マクロファージについて、Slit3の活性を測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるSlit3の活性と対比する工程、及び
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、Slit3の活性が低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を、標的物質として選択する工程。
(3)マクロファージの活性化に起因するNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物の有効成分の取得方法である、(1)に記載するスクリーニング方法。
(4)上記疾患が、感染症、炎症性疾患、生活習慣病、神経損傷、神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍である(4)に記載するスクリーニング方法。
活性化マクロファージでのslit3の機能発現を抑制する本発明の抑制剤は、活性化マクロファージにおけるiNOS産生および細胞運動性に関わるシグナル伝達経路に携わるSlit3の機能発現を抑制することによって、当該iNOS産生、それに基づくNO産生ならびに細胞運動の誘導を阻止若しくは抑制することができる。このため、本発明の抑制剤は、マクロファージの活性化によるNO産生や細胞運動の誘導を抑制することによって、NO産生や細胞運動に起因する疾患、具体的には、種々の感染症(免疫不全ウイルス感染、ピロリ感染、結核菌感染、マラリア感染など)、炎症性疾患(慢性関節リウマチ、多発性硬化症、ショーグレン症候群、喘息、突発性肺線維症、気管支拡張症、アテローム性老人斑、潰瘍性大腸炎、クローン病など)、種々の生活習慣病(糖尿病、高血圧など)、その他、神経損傷や神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍などの疾患を予防または治療するための医薬品組成物として有効に用いることができる。
また本発明は、活性化マクロファージにおけるシグナル経路を介したiNOS産生または細胞運動の誘導にSlit3が主要成分として深く関わっていることを新たに見いだし、これを提供するものである。よって、本発明が提供するiNOS産生並びに細胞運動メカニズムに関する知見を利用することにより、iNOS産生、NO産生並びに細胞運動の誘導を抑制するための有効成分、またはNO産生並びに細胞運動に関連して生じる疾患の予防または治療のための有効成分をスクリーニングする方法を構築することができる。そして、当該スクリーニング方法によって取得された物質を用いることによって、種々の感染症(免疫不全ウイルス感染、ピロリ感染、結核菌感染、マラリア感染など)、炎症性疾患(慢性関節リウマチ、多発性硬化症、ショーグレン症候群、喘息、突発性肺線維症、気管支拡張症、アテローム性老人斑、潰瘍性大腸炎、クローン病など)、種々の生活習慣病(糖尿病、高血圧など)、その他、神経損傷や神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍等の疾患の予防または治療のために有効な組成物を調製し、提供することができる。
下記の説明において使用する略称は、特に言及しない限り、次の用語を意味するものとする。
Slit3: スリット3タンパク質
slit3: スリット3の遺伝子
iNOS : 誘導性一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase)
NO : 一酸化窒素(nitric oxide)
LPS : リポポリサッカライド(lipopolysaccharide)
BSA : ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)
GFP : 緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein)
PBS : リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline)
FBS : ウシ胎児血清(Featal Bovine Serum)
DMEM : ダルベッコ修飾イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's Medium)。
I.マクロファージの活性化に起因するiNOS産生または細胞運動能の抑制剤
本発明の抑制剤は、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とするものである。なお、ここで「抑制」とはSlit3の活性化マクロファージにおける機能発現を100%抑制(阻止)する場合と、100%阻止しなくてもSlit3が本来有する活性化マクロファージにおける機能を低減させる場合の両者を含む。
対象とするSlit3は、ヒトを始めとする脊椎動物に由来するタンパク質である。例えば、ヒト由来のSlit3(Accession No.O75094, 1523aa, “Brain Res. Mol. Brain Res., 62, 175-186, 1998”)、マウス由来のSlit3(Accession No.Q9WVB4, 1523aa, “Dev. Biol., 212, 290-306, 1999”)、ラット由来のSlit3(Accession No.O88280, 1523aa, “Genomics, 51, 27-34, 1998”)、ゼブラフィッシュ由来Slit3(Accession No.XP_683369, 346aa)、ニワトリ由来のSlit3(Accession No.XP_414503, 1222aa)、チンパンジー由来のSlit3(Accession No.XP_518089, 154aa)、イヌ由来のSlit3(Accession No.BAD91588, 199aa)はいずれもアミノ酸配列および遺伝子配列ともに公知となっており、これらをいずれも対象とすることができる。好ましくはヒト由来のSlit3である。
かかる物質としては、結果として活性化マクロファージにおけるSlit3の機能の発現を抑制し得るものであればよく、例えば活性化マクロファージにおけるslit3 mRNAの発現またはSlit3の産生を抑制する物質、活性化マクロファージにおけるSlit3を介したシグナルを遮断若しくは抑制する物質、並びに活性化マクロファージにおけるSlit3の活性化を抑制する物質を挙げることができる。
例えば、活性化マクロファージにおけるslit3 mRNAの発現またはSlit3の産生を抑制する物質としては、活性化マクロファージにおけるslit3 mRNAの発現またはSlit3の産生において、slit3の転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳、及び/又は安定性を抑制する物質を挙げることできる。こうした物質として具体的には、Slit3をコードする遺伝子(slit3)の塩基配列にハイブリダイズし、その転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳、及び/又は安定性を抑制し得るアンチセンス分子、リボザイム、及びRNAiエフェクターを例示することができる。
本発明で用いられるアンチセンス分子は、slit3のプロモーターまたはその他の制御領域、エキソン、イントロンあるいはエキソン−イントロン境界に結合するように設計される。多くの効果的なアンチセンス分子は、イントロン/エキソン・スプライス接合部とハイブリダイズし得るように設計されている。よって、本発明におけるアンチセンス分子も、slit3のイントロン/エキソン・スプライス接合部の50〜200塩基内の領域にハイブリダイズするように、当該領域に対して実質的に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましい。
リボザイムは、RNA−タンパク質複合体であり、対象の遺伝子(mRNA)に部位特異的に結合してそれを切断することで、タンパク質への翻訳を阻害し、遺伝子機能の発現を抑制する機能を発揮する物質である。本発明で用いられるリボザイムは、slit3(DNA)から転写されたmRNAの任意領域とハイブリダイズするように当該領域に対して実質的に相補的な塩基配列を有し、そして結合した対象のオリゴヌクレオチド領域内のリン酸エステルを切断して、Slit3への翻訳を阻害するように設計される。
RNAiエフェクターは、RNAi(RNA干渉)の機能を発揮することによって、PKD1のDNAもしくはmRNAにハイブリダイズし、slit3の発現を特異的に抑制するものである。RNAiエフェクターとしては、siRNA(small interfering RNA)、stRNA(small temporally regulated RNA)及びshRNA(short hairpin RNA)等を挙げることができる。より具体的には、後述する実験例で使用する56-merのslit3-特異的オリゴヌクレオチド(5’-ACCTCAAAGGACGTGACTGAACTGTATCAAGAGTACAGTTCAGTCACGTCCTTTTT-3’)(配列番号1)を挙げることができる。なお、これらは、siRNA発現ベクターに組み込んでslit3-特異的干渉RNAとして使用することができる。
なお、RNAiエフェクターを利用したRNAi技術並びにその方法は、多比良和誠ら編,「RNAi実験プロトコール」,羊土社発行,2003年等に詳細に記載されており、その内容は援用により本発明の内容に組み込まれる。
これらの物質は、被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。かかる形態としては、遺伝子治療用の発現ベクターを挙げることができる。
当該遺伝子治療に用いられる発現ベクターは、所望の投与経路に応じて当業界で公知の方法で処方することができる。また、当該発現ベクターは、他のベヒクル(例えば、リポソームのような脂質ベースの分子、凝集タンパク質、またはトランスポーター分子)などと複合体を形成した状態で使用することもできる。
発現ベクターには、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターの場合、上記分子は、マクロファージにおける発現に必要な機能性DNA配列を作動可能に結合した状態で、ウイルス粒子内に封入された状態で使用される。かかるウイルスベクターとしても当業界で公知のものを任意に使用することができ、例えばアデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、及びポリオーマウイルス等を挙げることができる。
また活性化マクロファージにおけるSlit3の活性化を抑制する物質としては、Slit3の機能の発現を抑制する作用を有するものであれば特に制限されない。かかる物質として、具体的には、Slit3またはその任意の部分と免疫反応性である抗体を挙げることができる。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。好ましくはモノクローナル抗体である。ポリクローナル抗体並びにモノクローナル抗体の調製方法は、当業界で周知であり、本発明の抗体もこれに準じて調製することができる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies; A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratry, 1988;米国特許第4,196,265号公報等参照、これらの文献の内容は援用により本発明の内容に組み込まれる)。本発明で好適に用いられる抗体としては、具体的には、抗−Slit3抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の両方を意味する)を挙げることができる。
II.マクロファージの活性化に起因するNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物
誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の産生によりフリーラジカルである一酸化窒素(NO)が産生される。マクロファージの活性化に起因するiNOSの産生、並びにこれに引き続いて生じるNOの産生が、体内での炎症反応を増幅させ、炎症の遷延によって慢性炎症、ガンの発生、並びにガンの進展を促進することが知られている。また、細胞運動能の亢進によって、ガンの転移が促進されると考えられる。
前述する本発明の抑制剤は、活性化マクロファージにおいてiNOS並びにNOの産生を抑制する作用を発揮することに基づいて、当該NOの産生に関連して生じる各種の疾患の発症を予防または治療するための医薬組成物の有効成分として、有効に使用することができる。また、前述する本発明の抑制剤は、上記NOの産生を抑制する作用に加えて、活性化マクロファージならびに腫瘍細胞において細胞の運動性を低下させる作用を発揮する。従って、本発明の抑制剤は、これらの作用に基づいて、NO産生および細胞運動に関連して生じる疾患の発症を予防または治療するための医薬組成物の有効成分として有効に使用することができる。
NOの産生または細胞運動に関連して生じる疾患として、上記疾患のほか、具体的には、種々の感染症(例えば、免疫不全ウイルス感染、ピロリ感染、結核菌感染、マラリア感染など)、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、ショーグレン症候群、喘息、突発性肺線維症、気管支拡張症、アテローム性老人斑、潰瘍性大腸炎、クローン病など)、種々の生活習慣病(例えば、糖尿病、高血圧など)(Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2005 Jul;8(4):347-354. Role of macrophage tissue infiltration in metabolic diseases.
Bouloumie A, Curat CA, Sengenes C, Lolmede K, Miranville A, Busse R.)、その他、神経損傷や神経変性疾患(Acta Neurochir Suppl. 2005;93:147-50.Macrophages and dendritic cells treatment of spinal cord injury: from the bench to the clinic. Schwartz M, Yoles E.)、心筋梗塞(Mol Aspects Med. 2005 Feb-Apr;26(1-2):33-65. Epub 2005 Jan 24. The role of nitric oxide in cardiovascular diseases. Naseem KM.)、腫瘍(Semin Cancer Biol. 2005 Aug;15(4):277-289.Inducible nitric oxide synthase (iNOS) in tumor biology: The two sides of the same coin. Lechner M, Lirk P, Rieder J.)などが知られている。
本発明の医薬組成物は、有効量の上記本発明の抑制剤とともに、その種類に応じて、自体公知の薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。当該医薬組成物は、所望の投与方法、例えば経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経肺投与、経鼻投与、経腸投与、腹腔内投与、または冠動脈もしくは冠状静脈洞投与などによって投与することができ、その投与経路に応じて、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体投与形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、リポソーム製剤、注射剤、静注剤、点滴剤及びエリキシルなどの液剤投与形態;貼付剤、軟膏、クレーム及び噴霧剤などの外用投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
これらの医薬組成物(医薬製剤)の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
上記医薬組成物中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、通常、1回投与あたりの有効成分(上記本発明の抑制剤)の量に換算して、0.1pg〜100mg/kgの範囲で投与することができる。
III.マクロファージの活性化によるiNOS産生または細胞運動に関するシグナル伝達経路を遮断する方法
前述する本発明の抑制剤、並びに医薬組成物は、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する作用を有するものであるが、これは活性化マクロファージ中でのSlit3の機能発現を抑制することによって、活性化マクロファージにおけるTLR4(Toll-like receptor 4)、p38、Rac/Cdc42およびERKを介するiNOS産生に関わるシグナル伝達経路、またはTLR4(Toll-like receptor 4)、p38、およびRac/Cdc42を介する細胞運動性に関わるシグナル伝達経路を阻害することに基づく。
ゆえに本発明は、別の観点から、活性化マクロファージにおけるiNOS産生に関わるシグナル伝達経路、または活性化マクロファージにおける細胞運動性に関わるシグナル伝達経路を遮断または抑制する方法を提供するものでもある。
なお、ここで対象とするiNOS産生に関わるシグナル伝達は、直接的にはTLR4(Toll-like receptor 4)、p38、Rac/Cdc42およびERKを介したシグナル伝達であり、細胞運動性に関わるシグナル伝達は、直接的にはTLR4、p38、およびRac/Cdc42を介したシグナル伝達である。
当該シグナル伝達の遮断または抑制は、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を被験対象物に有効量投与することによって達成することができる。当該被験対象物は、マクロファージまたはそれを有する組織であればよく、培養細胞、培養組織、または生体内のマクロファージまたは組織であってもよい。なお、ここでマクロファージ及び組織の由来は特に問わず、ヒトまたはその他の哺乳動物(ラット、マウス、ハムスター、モルモット、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)を広く挙げることができる。被験対象物に投与する、Slit3の機能発現を抑制する物質、並びにその量としては、I.に前述する抑制剤ならびにその量を同様に挙げることができる。
IV.スクリーニング方法
本発明は、活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を制御することができる物質をスクリーニングする方法を提供する。当該物質は、活性化マクロファージにおけるTLR4(Toll-like receptor 4)を介したiNOS産生または細胞運動に関わるシグナル伝達を遮断もしくは抑制することによって、iNOSおよびNOの産生、または細胞運動を抑制することができる。さらに当該物質によれば、マクロファージの活性化に起因するNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の発症または進展を抑制し、当該疾患を予防または治療することができると期待される。
すなわち、本発明は、活性化マクロファージにおけるiNOSの産生または細胞運動を抑制する物質のスクリーニングする方法を提供する。さらに本発明は、マクロファージの活性化に起因するNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の予防若しくは治療剤の有効成分をスクリーニングする方法を提供する。
当該スクリーニング方法は、基本的には活性化マクロファージにおいてSlit3の機能発現を抑制する作用を発揮する物質を探索することからなるが、具体的には、下記のスクリーニング方法(1)および(2)を例示することができる。
(1)下記の工程を有する、マクロファージの活性化に起因するiNOSおよびNO産生、または細胞運動を抑制する物質をスクリーニングする方法:
(a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、
(b) 上記マクロファージのslit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルを測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるslit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルと対比する工程、及び
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルが低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を、標的物質として選択する工程。
かかる工程により、slit3 mRNAの発現及びSlit3の産生を抑制する作用を有する物質を取得することができる。
ここで使用されるマクロファージは、内来性及び外来性を問わず、slit3 (遺伝子)を発現可能な状態で有するものであり、その由来は特に制限されない。好ましくはヒト由来またはヒト以外の脊椎動物由来のslit3(遺伝子)を発現可能な状態で有するマクロファージである。また、ヒトもしくはヒト以外の脊椎動物から単離調製した培養細胞を好適に使用することができる。また細胞の集合体である組織も当該範疇に含まれる。またヒト由来またはヒト以外の脊椎動物に由来するslit3(遺伝子)を発現可能な状態で有する原核細胞または真核細胞(昆虫細胞を含む)を用いることもできる。
なお、マクロファージの活性化の方法は公知であり、当該方法を利用することができる。具体的には、マクロファージはLPS, IFN-γ, IL-4, IL-13, TNF-αに代表されるサイトカインを与えることによって活性化させることができ、上記スクリーニングは、マクロファージを活性化させた状態で行うことができる。
被験物質としては、制限はされないが、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、または無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的には、これらの被験物質またはこれらを含む組成物(例えば、細胞抽出物、遺伝子ライブラリーの発現産物等を含む)を対象の細胞と接触させることにより行うことができる。また、スクリーニングに際して採用される被験物質と細胞との接触条件は、特に制限されないが、細胞が死滅せず所望の遺伝子を発現できる培養条件を選択することが好ましい(以下のスクリーニング方法においても同じ)。
slit3の発現レベルは、slit3の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダイゼーション解析法、デファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、DNAチップ法、RNase保護アッセイなどの公知の方法を行うことにより測定することができる。また、slit3の発現レベルは、発現産生されたSlit3(タンパク質)の量を測定することによっても評価することができる。この場合は、Slit3を認識する抗体をマーカーとして用いて、ウエスタンブロット法などの公知の方法で、産生されたSlit3を検出し、定量する。
かかるスクリーニング方法による、活性マクロファージにおけるiNOS産生または細胞運動を抑制する物質の選別、ならびにNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の予防・治療剤の有効成分(候補物質)の選別は、被験物質を接触させた活性化マクロファージにおけるslit3の発現レベル(またはSlit3の産生レベル)が、被験物質を接触させない活性化マクロファージにおけるslit3の発現レベル(またはSlit3の産生レベル)に比して、低くなることを指標として行うことができる。
実験例で示すように、Slit3は、活性化マクロファージにおけるTRL4レセプター、p38、Rac/Cdc42、及びERKを介したiNOS産生に関わるシグナル伝達、ならびにTLR4レセプター、p38、及びRac/Cdc42を介した細胞運動に関わるシグナル伝達において重要な役割を担う。
ゆえに上記スクリーニング方法で選別される物質(活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質)は、上記シグナルカスケードを阻止もしくは抑制することができ、ゆえにiNOSおよびNO産生または細胞運動を抑制するための物質として、またNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の予防・治療剤の有効成分として使用することが可能である。
(2)下記の工程を含む、マクロファージの活性化に起因するiNOSおよびNO産生、または細胞運動を抑制する物質をスクリーニングする方法:
(a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに、被験物質を接触させる工程、
(b) 上記マクロファージについて、Slit3の活性を測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおける上記に対応するSlit3の活性と対比する工程、及び
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、Slit3の活性が低下してなるマクロファージに投与した被験物質を、標的物質として選択する工程。
かかる工程により、Slit3の活性を阻害する物質を取得することができる。
Slit3の活性測定は、活性化マクロファージのiNOSの発現または産生能、NO産生量、または細胞運動性を評価することによって行うことができる。その方法は特に制限されないが、具体的には実験例に記載する方法を例示することができる。
かかるスクリーニング方法による、iNOS及びNO産生または細胞運動を抑制する物質の選別、ならびにNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の予防・治療剤の有効成分(候補物質)の選別は、被験物質を接触させた活性化マクロファージにおけるSlit3の活性が、被験物質を接触させない活性化マクロファージにおけるSlit3の活性に比して、低くなることを指標として行うことができる。
実験例で示すように、Slit3は、活性化マクロファージにおけるTRL4レセプター、p38、Rac/Cdc42、及びERKを介したiNOS産生に関わるシグナル伝達、ならびにTLR4レセプター、p38、及びRac/Cdc42を介した細胞運動に関わるシグナル伝達における重要な成分であり、Slit3の活性化を介して更に下流のカスケードが起動してiNOS産生およびNO産生が誘導され、また細胞運動性が亢進する。
ゆえに上記スクリーニングで選別される物質は、上記シグナルカスケードを阻止もしくは抑制することができ、iNOSおよびNO産生または細胞運動を抑制するための物質として、またNO産生または細胞運動に関連して生じる疾患の予防・治療剤の有効成分として使用することが可能である。
上記のスクリーニング方法によって選別された標的物質は、さらに非ヒト動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらに対象とする疾患を有する患者(ヒト)もしくはその前状態にある患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な本発明の医薬組成物の有効成分を選別取得することができる。
このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、心肥大抑制用医薬組成物または心疾患予防または治療用医薬組成物の調製に使用することができる。
以下、本発明を実験例によって更に詳細に説明するが、下記実験例は本発明を何ら限定するものではない。なお、本発明で用いられる遺伝子工学的技術並びに分子生物学的実験操作は、一般に広く用いられている方法、例えばJ.,Sambrook, E., F., Frisch,T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド・スプリング・ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory press)発行、1989年、及びD.,M.,Glover著、DNAクローニング、IRL発行、1985年などに記載されている方法に従って行うことができる。
<実験材料・実験手法>
下記の実験例において使用した材料と実験手法は下記の通りである。
(1)細胞培養
マウス由来マクロファージ細胞株としてRAW264.7を、またマウス由来メラノーマ細胞(株)としてB16BL6を使用した。RAW264.7およびB16BL6はいずれも、10%FBSと50μg/mlゲンタマイシンを添加したDMEM(ナカライテスク製)中で、5%COの雰囲気下37℃で保存した。
マクロファージの活性化(活性化マクロファージの調製)は、RAW264.7(5×105細胞)を、35mm径の培養皿(アサヒテクノグラス製)の上で終夜培養し、次いで大腸菌株O26:B6(シグマ製)に由来するLPS(100ng/ml)で刺激することによって行った。
(2)Realtime−PCR(RT-PCR)
上記培養細胞(マクロファージ、メラノーマ細胞)から総RNAを単離し、これを定法に従ってcDNAに変換して、当該cDNAを鋳型として、目的に応じて下記のプライマー対を用いて増幅した。
slit3用:5’-CTAAACCAGACCCTGAACCTGGTGGTAGAC-3’(配列番号2)
5’-AAGGTAGAGGGGGCTGTTGCTGCCCACT-3’(配列番号3)
TNFα用:5’-AACTTCGGGGTGATCGGTCC-3’(配列番号4)
5’-CAAATCGGCTGACGGTGTGGG-3’(配列番号5)
IL-1β用:5’-GGAATCTGTGTCTTCCTAAAGTATGG-3’(配列番号6)
5’-ATAAATAGGTAAGTGGTTGCCCATC-3’(配列番号7)
iNOS用:5’-TCTGCGCCTTTGCTCATGAC-3’(配列番号8)
5’-TAAAGGCTCCGGGCTCTG-3’(配列番号9)。
増幅後、得られた増幅PCR産物を1%アガロースゲルで電気泳動して分離した。プライマーセットをPCRにより試験してアガロースゲル上でシングルバンドになることを確認し、次いでPCR産物を精製し、シークエンスしてプライマー特異性を確認した。
(3)DNA構築物(ベクター)の調製およびトランスフェクション
(3-1) slit3の過剰発現細胞の調製
RAW264.7(5×10細胞)またはB16BL6(5×10細胞)を35mm径培養皿上で、終夜培養した。この培地を、Slit3をコードする遺伝子(slit3)を組み込んだpCI-neo(プロメガ製)ベクター(4μg)およびリポフェクタミン2000試薬(インビトロゲン製)(10μl)を含む血清フリーのDMEMで置換して、37℃で6時間培養した(トランスフェクション)。次いで、この培地を新鮮な血清を含有するDMEMで置換し、さらに培養した。2日後、トランスフェクトされた細胞(slit3の過剰発現細胞)を、200μg/ml G418(ナカライテスク製)を含む培地中で2週間かけて選抜した。
(3-2) slit3の発現を抑制した「slit3-RNAi細胞」の調製
RNAi用に、56-mer slit3-特異的オリゴヌクレオチド(5’-ACCTCAAAGGACGTGACTGAACTGTATCAAGAGTACAGTTCAGTCACGTCCTTTTT-3’)(配列番号1)を、GFPを共発現するsiRNA発現用ベクター(psiRNA-hH1GFPzeo G2;インビボゲン製)にクローンして、ヒトH1プロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーターによって働く、短いヘアピンslit3-特異的干渉RNA(発現ベクター:psiRNAベクター)を作成した。これらの中からオリゴヌクレオチドが安定に融合したものをゼオシン(zeocin)により選抜した。RAW264.7(5×10細胞)を、リポフェクタミンを用いて上記psiRNAベクター(4μg)でトランスフェクトし、6時間インキュベートした。2日後、トランスフェクトされた細胞(slit3-RNAi細胞)を、2週間にわたって、200μg/mlゼオシン(インビボゲン製)を用いて選抜した。当該、slit3-RNAi細胞は、GFP遺伝子を含むためGFP観察によって確認することができる。
(4)免疫ブロッティング
(4-1) RAW264.7におけるSlit3の発現産生および培地への分泌の測定
RAW264.7を、FLAGでタグ付けしたslit3を含む発現ベクターでトランスフェクトし、5ml容量の10%FBS含有DMEMを入れた60mm径の皿中で、1×106細胞/ml密度で37℃、終夜培養した。100ng/mlのLPSで8時間刺激した後、培養上清を回収した。細胞を1M NaClを含む10mM HEPES緩衝液(pH7.4)で洗浄し、この塩洗浄液を上記培養上清と混合した。一方、細胞は、氷上で30分間、細胞溶解緩衝液(lysis buffer)(20mM Tris-HCl[pH7.5],150mM NaCl, 1% Triton X-100, 1mM PMSF, プロテナーゼ阻害剤カクテル)でインキュベーションして溶菌し、これを細胞溶解物とした。培養上清+塩洗浄液、及び細胞溶解物を、抗FLAG M2抗体(シグマ製)を用いた免疫ブロット分析に供した。
(4-2) RAW264.7におけるSlit3およびiNOSの発現産生の測定
Slit3及びiNOS分析のために、RAW264.7を10%FBS含有DMEM(5mL)中で細胞密度;1×106細胞/mLで、60mm径皿中で終夜培養した(37℃)。氷で冷却したPBSで洗浄した後、細胞を細胞溶解緩衝液(lysis buffer)(20mM Tris-HCl[pH7.5],150mM NaCl, 1% Triton X-100, 1mM PMSF, プロテナーゼ阻害剤カクテル)を用いて、氷上で30分間インキュベートした。得られた細胞溶解物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動用ゲル(7%分離ゲル使用)上で電気泳動し、PVDF膜に移した。この膜を1%BSAで1時間処理して、Can get signal reagent I(Toyobo製)で希釈した0.05% Tween-TBSで洗浄した後、2時間、Slit3, iNOS に対する初期抗体とともに2時間培養した。次いで、膜を、Can get signal reagent I(Toyobo製)で希釈したビオチン結合第2抗体で1時間処理した。シグナルの検出に、Immunostar Kit(Wako製)を使用した。
(4-3) RAW264.7におけるリン酸化-MAPキナーゼ(p38, ERK1/2,リン酸化-ERK1/2, リン酸化-p38、リン酸化-JNK)の発現産生の測定
リン酸化-MAPキナーゼ分析のため、RAW264.7を氷冷したPBSで洗浄し、次いで細胞溶解緩衝液(20mM Tris-HCl(pH7.5), 150mM NaCl, 1% Triton X-100, 0.5% deoxychokate, 5mM EGTA, 1mM DTT, 12mM β-glycerophosphate, 10mM NaF, 1mM Na3VO4, 1mM PMSF, プロテナーゼ阻害剤カクテル)を用いて30分間、氷上でインキュベートした。細胞残骸を、遠心分離(13,000xg,10分間,4℃)することによって除いた。上清をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動用ゲル(10%分離ゲル使用)上で電気泳動を行い、PVDF膜に移した。この膜を1%BSAで1時間処理して、Can get signal reagent I(Toyobo製)で希釈した、0.05% Tween-TBSで洗浄した後、2時間、Slit3,p38(Santa Cruz Biotechnology), ERK1/2, β-チューブリン(シグマ製),リン酸化-ERK1/2, リン酸化-p38、またはリン酸化-JNK(プロメガ製) に対する初期抗体とともに2時間培養した。次いで、膜を、Can get signal reagent I(Toyobo製)で希釈したビオチン結合第2抗体で1時間処理した。シグナルの検出に、Immunostar Kit(Wako製)を使用した。
(5)免疫蛍光染色
RAW264.7またはB16BL6を、poly-L-lysine-被覆カバースリップ(アサヒテクノグラス製)上で、終夜培養し、次いで100ng/ml LPSで8時間処理した。細胞を氷冷アセトンで固定化した。1%BSAでブロッキングした後、カバースリップをPBSで希釈した抗-Slit3抗体(サンタクローズバイオテクノロジー製)で終夜インキュベーションした。洗浄後、カバースリップを、0.5% BSA配合PBSで希釈したFITC結合ウサギ抗-ヒツジIgG(シグマ製)で1時間インキュベーションした。
ミトコンドリアを染色するために、細胞を50nM Mitotracker(モレキュラープローブ製)で5分間インキュベーションした。F-actinを染色するために、細胞を10nM rhodamine-phalloidin(モレキュラープローブ製)で5分間インキュベーションした。カバースリップを、Prolong gold antifade reagents(モレキュラープローブ製)に配して、次いで蛍光マイクロスコープ(オリンパス製)で測定した。
(6)Spreadingアッセイ
RAW264.7を、poly-L-lysine被覆カバースリップ上で、10%FBSを含むDMEM中で、一ウエルあたり5×10細胞/mlの密度で終夜培養した。次いで細胞を、LPS(100ng/ml)で8時間刺激した。1カバースリップあたり200個の細胞が計算された。そして、平坦な伸展細胞(spread cell)の形態を指標として、伸展した細胞の割合(%)を求めた(73)。全ての実験は少なくとも3回繰り返した。結果は平均±標準偏差として示す。
(7)Nitriteアッセイ
100ng/ml LPSの存在下でRAW264.7を24時間培養した培養液を回収した。この培養液(100μl)を、Griess reagent(0.1% naphhalethylenediamine dihydrochloride, 1% sulfanilamine, 2.5% H3PO4) 100μlでインキュベーションし(74)、波長550nmの吸光度を測定した。培養液中の亜硝酸塩の濃度は、標品として亜硝酸ナトリウムを用いて計算した。
(8)Rac/Cdc42活性測定
Rac/Cdc42活性測定は、Rac/Cdc42 activation assay kit(Chemicon, Temecula, カナダ)を用いて行った。RAW264.7を、5mlの10%FBS含有DMEMを入れた60mm径の皿の中に、密度1×106細胞/mlとなるように植え、37℃で終夜生育させて、次いで100ng/ml LPSに8時間、晒した。得られたRAW264.7を2回氷冷PBSで洗浄し、1mM PMSFとプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む、コールドアッセイ緩衝液中で溶解(lysis)させた。細胞の残骸を14,000xgで10分間遠心分離することによって除去した。細胞溶解物の中にPAK-1 PBDアガロースを添加し、その混合物を4℃で60分間回転ホイールの上でインキュベーションした。得られたマトリックスをアッセイ緩衝液で3回洗浄し、抗-Rac抗体または抗-Cdc42抗体を用いて、SDS-PAGE及び免疫ブロット分析に供した。
(9)Wound-healingアッセイ
RAW264.7(5x10細胞/ml)を、24穴培養プレートの、5%FBS配合DMEMを入れたカバースリップ付きのウエル内に植えた。細胞が70%コンフルエントになったとき、10μlのマイクロピペットチップを用いて慎重に、単層細胞に傷(350-400μm)を付けた。培地を注意深く、新鮮なものに代えて、100ng/ml LPSの存在下または非存在下で24時間培養した。
実験例1 LPSで刺激されたマクロファージ中でのslit3の発現
LPS刺激によって、RAW264.7(マウスマクロファージ)内でslit3 mRNAが発現することを、RT-PCRによって確認した。具体的には、RAW264.7をLPS存在(100ng/ml)または非存在の下で0〜10時間にわたり培養した。培養後0、2、4、6、8、および10時間目に、各々、LPS刺激したRAW264.7を、slit3用のプライマーセット〔5’-CTAAACCAGACCCTGAACCTGGTGGTAGAC-3’(配列番号2)、5’-AAGGTAGAGGGGGCTGTTGCTGCCCACT-3’(配列番号3)〕を用いて、RT-PCR増幅し、得られたPCR産物を、1%アガロースゲルを用いた電気泳動に供したところ、いずれもシングルバンドが観察された。このPCR産物をシークエンスした結果、公表されているマウスslit3の塩基配列と一致した(Genbank accession No.XM203363)。一方、LPS非存在下のRAW264.7(マウスマクロファージ)内でのslit3 mRNAの発現は検出されたものの小さかった。LPS刺激後、2時間目から6時間目にわたり slit3 mRNAの顕著な増加が見られた(図1A参照)。LPS存在下のRAW264.7細胞内でのslit3 mRNAの増加は、LPS非存在下のRAW264.7細胞内でのslit3 mRNAの増加と比べて約7倍であった(図1B)。
次いで、LPS存在下またはLPS非存在下でのRAW264.7細胞内におけるSlit3産生を確認するために、抗-Slit3抗体(サンタクローズバイオテクノロジー製)を用いてイムノブロット分析を行った。その結果、LPSで刺激したRAW264.7中でSlit3(タンパク質)の量が、刺激後4-10時間の間増加することがわかった(図1C)。これらの結果から、RAW264.7内でのSlit3の発現がLPS刺激によって誘導されることが確認された。
実験例2 マクロファージ中でのSlit3の細胞内局在
(1)RAW264.7内で発現生成したSlit3が、細胞から分泌されるか否かを調べた。具体的には、まずFLAGでタグ付けしたslit3を含むDNA構築物(発現ベクター)をトランスフェクトしたRAW264.7を、LPS(100ng/ml)存在下で培養して(37℃、終夜)、培養上清を回収した。細胞を洗浄した液(塩洗浄液)をこの培養上清と合わせて(Sup+Wash)、当該培養上清中にFLAGでタグ付けしたSlit3(FLAG-Slit3)が存在するか否かを、抗FLAG M2抗体(シグマ製)を用いて調べた。比較のため、同時に、細胞溶解物中におけるFLAG-Slit3の存在の有無も測定した。結果を図2Aに示す。図2Aに示されるように、Slit3は細胞溶解物中に存在しており、細胞から分泌されないことが判明した。
(2)次に、RAW264.7中のミトコンドリア内でのSlit3の局在を、Slit3抗体を用いた免疫蛍光染色法で調べた。具体的には、RAW264.7細胞を、poly-L-lysine-被覆カバースリップ(アサヒテクノグラス製)上で、終夜培養し、次いでLPS存在下(100ng/ml)または非存在下で8時間処理した。細胞を氷冷アセトンで固定化し、1%BSAでブロッキングした後、カバースリップをPBSで希釈した抗-Slit3抗体(サンタクローズバイオテクノロジー製)で終夜インキュベーションした。洗浄後、カバースリップを、0.5% BSA配合PBSで希釈したFITC結合ウサギ抗-ヒツジIgG(シグマ製)で1時間インキュベーションした。次いで抗Slit3抗体で標識したRAW264.7中のミトコンドリアを染色した。ミトコンドリアの染色は、上記RAW264.7を50nM Mito tracker(モレキュラープローブ製)で5分間インキュベーションして実施した。斯くして調整したカバースリップを、Prolong gold antifade reagents(モレキュラープローブ製)に配して、蛍光マイクロスコープ(オリンパス製)で測定した。結果を図2Bに示す。図a-cはLPS(100ng/ml)で刺激した細胞の免疫蛍光染色画像、図d-fはLPSで刺激しなかった細胞の免疫蛍光染色画像を示す。また図bとeは、抗Slit3抗体を用いて免疫蛍光標識(イムノフルオレッセンス)した細胞の画像を、図cとfは、抗Slit3抗体で免疫蛍光標識した細胞について、さらにミトコンドリアをMito Tracker標識した細胞の画像(merge image)を示す。
殆どの細胞の形状は、LPS刺激の下で、円形から平べったくて広がった形状(伸展形状)に変化していた(図2Bのa、図2Cのa)。Slit3は、外見上殆どミトコンドリア分布に似ている核周囲で検出された(図2Bのb、図2Cのb)。LPSで刺激した伸展細胞内に、Slit3は原形質膜とともに検出された(図2Bのb)。merge imageの結果(図c,f)から、Slit3がLPSで刺激したRAW264.7中のミトコンドリアに部分的に共局在することがわかった(図中、矢印)。
(3)次に、RAW264.7内でのSlit3のF-actinとの局在を、上記と同様にして免疫蛍光染色法で調べた。なお、RAW264.7のF-actinによる標識は、抗Slit3抗体で標識したRAW264.7をrhodamine phalloidinで染色することによって行った。結果を図2Cに示す。図a-cはLPS(100ng/ml)で刺激した細胞の免疫蛍光染色画像、図d-fはLPSで刺激しなかった細胞の免疫蛍光染色画像を示す。また図bとeは、抗Slit3抗体を用いて免疫蛍光標識(イムノフルオレッセンス)した細胞の画像を、図cとfは、抗Slit3抗体で免疫蛍光標識した細胞について、さらにF-アクチンをrhodamine phalloidin標識した細胞の画像(merge image)を示す。この結果から、殆どのSlit3が、原形質膜とともにF-actinと共局在化していることが判明した。
実験例3 slit3-RNAiによるRAW264.7の細胞伸展の阻害
マクロファージのLPS-誘導細胞伸展に対するslit3-RNAiの影響を調べた。
(1)「材料と方法」の欄に記載する方法に従って、GFP遺伝子を共発現したslit3-RNAi発現ベクターでRAW264.7をトランスフェクトし、slit3に対する特異的なsiRNA(slit3-RNAi細胞)を作成した。斯くして調製したトランスフェクト細胞(slit3-RNAi細胞)について、RT-PCR分析(図3A)及びSlit3抗体を用いたイムノブロット分析(図3B)を行い、LPS刺激(+)によるslit3のmRNA発現及びSlit3(タンパク質)生成の有無を調べた。結果を図3A及び図3Bに示す。なお、比較または対照のため、非トランスフェクト細胞(RAW264.7)(-)またはコントロールベクター(vector)でトランスフェクトした細胞についても同様にRT-PCR分析(図3A)及びイムノブロット分析(図3B)を行った。RT-PCR分析によって、slit-RNAi細胞では、LPS刺激によるslit3の発現が抑制されていることが確認された(図3A)。またRAW264.7中のSlit3タンパク質は、slit-RNAi細胞中では減少することが確認された(図3B)。
(2)GFP遺伝子を共発現させたslit3-RNAi発現ベクターでトランスフェクトした細胞(slit3-RNAi細胞)(図3C、c-d)、およびGFP遺伝子を含むコントロールベクターでトランスフェクトした細胞(図3C、a-b)の形態を、蛍光検出により観察した。結果を図3Cに示す。コントロールベクターでトランスフェクトした細胞の形態(図3C、a)と比べて、slit3-RNAi発現ベクターでトランスフェクトした細胞は、LPS刺激下での細胞伸展が抑制されていることがわかった(図3C、c)。この結果を定量的に評価するために、slit3-RNAi発現ベクターでトランスフェクトした細胞(slit3-RNAi細胞)、非トランスフェクト細胞(-)、コントロールベクター(vector)でトランスフェクトした細胞をそれぞれ固定化して、伸展した細胞の割合を測定した。個々の検体数3で、各々3回実験を行った結果(mean±SEM、n=3)を、図3Dに示す。その結果、slit3-RNAi発現ベクターでトランスフェクトした細胞の、LPS刺激による細胞伸展は、通常の1/4程度まで低下することが判明した。
これらの結果は、Slit3が、RAW246.7(マウスマクロファージ)のLPS誘導細胞伸展に必要であることを示すとともに、逆にSlit3の機能発現を抑制することによってLPS誘導による細胞伸展を抑制することができることを示している。
実験例4 iNOS発現およびNO産生は、Slit3によって制御される
免疫メディエーターであるiNOS(誘導性一酸化窒素合成酵素)と炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β)の、LPS刺激RAW264.7中における発現に対する、Slit3の影響を確認するため、slit3-RNAi発現ベクター(RNAi)またはslit3-過剰発現ベクター(Slit3)でトランスフェクトしたRAW264.7内での、LPS刺激によるiNOS、TNFαおよびIL-1β のmRNAの発現を、各々対応するプライマー対を用いてRT-PCRによって測定した。なお、対照として、同時に、上記ベクターに代えて、RNAiコントロールベクター(RNAi control vector)および発現コントロールベクター(expression control vector)を用いて同様にしてLPS刺激によるiNOS、TNFαおよびIL-1β のmRNAの発現を調べた。
結果を図4Aに示す。iNOS、TNFαおよびIL-1βの発現レベルは、LPS刺激の下、RNAiコントロールベクターをトランスフェクトした細胞中で増加した。slit3-RNAi細胞におけるTNFαとIL-1βの発現レベルは、RNAiコントロールベクターをトランスフェクトした細胞におけるこれらの発現レベルと同様に増加したが、iNOS mRNAの発現レベルは、slit3-RNAi細胞中で僅かに減少した。一方、iNOS、TNFα及びIL-1βの発現は、LPS刺激下で過剰発現したコントロールベクターをトランスフェクトした細胞中で増加していた。iNOSの発現は、slit3過剰発現細胞中で有意に誘導された。TNFαとIL-1βの発現は、過剰発現したコントロールベクターをトランスフェクトした細胞中の当該発現レベルと同じであった(図4A)。
また、これらの細胞について、iNOSの発現生成をイムノブロット分析した結果を図4B示す。この結果からわかるように、iNOSの発現生成は、slit3-過剰発現細胞中で誘導されるのに対し、slit-RNAi細胞中では有意に減少した。
(2)Slit3のLPS誘導NO生成を確認するため、培地中に生成された亜硝酸塩の量(μM)を測定した。具体的には、slit3-RNAi発現ベクター(RNAi)またはRNAiコントロールベクター(vector)で各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)の、LPS刺激または非刺激下での、培養上清中の亜硝酸塩濃度(μM)(図4C)、slit3-過剰発現ベクター(Slit3)または発現コントロールベクター(vector)で各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)の、LPS刺激または非刺激下での、培養上清中の亜硝酸塩濃度(μM)(図4D)を測定した。なお、培養上清は、LPS刺激または非刺激後24時間目に回収したものを使用した。
結果を図4C及び図4Dに示す。この結果から、LPS存在下、slit3-過剰発現は、RAW264.7におけるNO産生を誘導するのに対し、slit3-RNAiは、NO産生を阻害することがわかる。この結果は、Slit3がRAW264.7内での、LPS誘導iNOS遺伝子転写(iNOS産生)に必要であることを示すとともに、逆にSlit3の機能発現を抑制することによってLPS誘導によるiNOS遺伝子転写(iNOS産生)を抑制することができることも示している。
実験例5 亜硝酸塩(NO)産生はマクロファージの細胞伸展と関係しない
LPS誘導細胞伸展に対する亜硝酸塩(NO)の影響を調べるために、iNOS阻害剤(NG-nitro-L-arginine-methyl ester:L-NAME)の存在下でRAW264.7の伸展を評価した。
(1)具体的には、まず、L-NAMEの存在下(1.5mM)または非存在下でRAW264.7を培養し、LPS刺激(100ng/ml)または非刺激から24時間後に上清を回収し、上清中の亜硝酸塩濃度(μM)を測定した。結果を図5Aに示す。図5Aに示すように、RAW264.7の亜硝酸塩の産生は、LPS刺激後24時間以上インキュベーションすることで強く誘導された。この亜硝酸塩の産生は、1.5mM L-NAMEの存在で阻害された。LPS刺激または非刺激下におけるRAW264.7の形態に対するNOS阻害剤(L-NAME)の影響を調べたところ(図5B)、L-NAMEはマクロファージの細胞伸展に変化を与えないことがわかった(図5B、d)。また、L-NAMEのLPS誘導細胞伸展に対する影響を調べるために、LPS刺激または非刺激下、L-NAME 処理またはL-NAME 未処理のRAW264.7を固定化して、伸展細胞の割合(%)を測定したが、L-NAMEは、伸展細胞の数にも影響をあたえなかった(図5C)。この結果は、LPS誘導亜硝酸塩(NO)産生は、RAW264.7のLPS誘導による細胞伸展とは無関係であり、個々に独立して生じることを示す。
実験例6 亜硝酸塩(NO)産生のための、LPS誘導ERKシグナリングはSlit3によって制御される
マクロファージへのLPS刺激は、転写因子の活性化やiNOS発現及びそれに続く亜硝酸塩(NO)産生を導くERK(ERK1、ERK2)、p38、及びJNK(JNK1、JNK 2)といったMAPキナーゼのリン酸化をもたらすことが知られている(文献1-4)。
RAW264.7中でのiNOS発現をもたらすMAPキナーゼの活性化(リン酸化)に対するSlit3の役割を調べるために、slit3-RNAi発現ベクターでトランスフェクトした細胞またはslit3-過剰発現細胞中でのERK1、ERK2、p38、JNK1およびJNK 2のリン酸化を、抗-リン酸化MAPキナーゼ抗体を用いたイムノブロッティングによって測定した。なお、RAW264.7はLPS(100ng/ml)の存在下で図に示す時間(0-10時間)培養した。イムノブロッティングは、各トランスフェクト細胞の細胞溶解物を対象として、抗-リン酸化ERK1抗体、抗-リン酸化ERK2抗体、抗-リン酸化p38抗体、抗-リン酸化JNK1抗体および抗-リン酸化JNK2抗体をそれぞれ用いて、行った。slit3-RNAiベクターでトランスフェクトした細胞における結果を、RNAiコントロールベクターでトランスフェクトした細胞の結果と合わせて、図6Aに示す。また、slit3-過剰発現細胞における結果を、発現コントロールベクターでトランスフェクトした細胞の結果と合わせて、図6Bに示す。
slit3-RNAi細胞中で、p38、JNK1およびJNK 2のリン酸化はLPS刺激によって有意に誘導されたが、ERK1およびERK2のリン酸化は、僅かに減少したが、(図6A)。一方、slit3-過剰発現細胞中で、ERK1またはERK 2のリン酸化は、LPSでの刺激後6及び8時間目に、有意に誘導された(図6B)。その時間は、LPS刺激下におけるRWA264.7細胞内でのSlit3発現の時間と殆ど一致していた(図1C参照)。
これらの結果から、Slit3は、ERK1またはERK2 MAPキナーゼのシグナリング経路における、マクロファージのLPS誘導iNOS遺伝子転写(iNOS生成)のための成分であることが示唆された。
実験例7 Slit3は、LPS誘導Rac及びCdc42活性化に関与する
スモール-GTPase Rac及びCdc42活性化が、細胞伸展及び細胞遊走をもたらすアクチン細胞骨格の組織化に関係していること(文献5,6)、並びにRac活性化がマクロファージのLPS刺激によって誘導されること(文献7)が報告されている。そこで、Slit3のRac及びCdc42経路に対する関与を調べた。
具体的には、slit3-RNAiベクターまたはコントロールベクターでトランスフェクトされた細胞を100ng/ml LPSの存在または不存在下で培養し、活性GTP-結合Rac(活性化Rac)(図7A)および活性GTP-結合Cdc42(活性化Cdc42)(図7B)を検出した。結果を図7A及びBに示すが、slit3-RNAiは、LPS刺激によって誘導されるRacの活性化並びにCdc42の活性化を有意に阻害することがわかった(図7A、B)。
Wound-healingアッセイにより、RAW264.7の傷口への遊走を調べた。細胞を24時間インキュベーションし、その挙動をモニターし、映像を位相差法(a,c)および蛍光法(b,d)により撮影した。GFP遺伝子を含むpsiRNAでトランスフェクトした細胞を、GFP観察により確認した。結果を図7Cに示す。Wound-healingアッセイにおいて、slit3-RNAiでトランスフェクトされた細胞の場合、傷口の空間は空いたままであったが、RNAiコントロールベクターでトランスフェクトされた細胞の場合は、インキュベーション24時間以内でその空間の殆どが埋まっていた(図7C)。この結果から、Slit3は、Rac及びCdc42シグナリング経路を介した、LPS-誘導による細胞伸展及び細胞遊走に必要であることが示された。このことは、逆にSlit3の機能抑制により、Rac及びCdc42シグナリング経路を介した細胞伸展及び細胞遊走を抑制できることを意味する。
実験例8 Slit3は腫瘍細胞の細胞移動に関与する
<実験材料・実験手法>に記載する(3-1)の方法に従って、Slit3をコードする遺伝子(slit3)を組み込んだpCI-neo(プロメガ製)ベクター(4μg)を用いてslit3を過剰発現するB16BL6細胞(マウス由来メラノーマ細胞)を調製した(図8A)。このslit3過剰発現B16BL6細胞(Slit3)について、下記の方法に従って細胞移動能を評価した。なお、比較のため、slit3過剰発現B16BL6細胞作成に使用したベクター〔pCI-neo(プロメガ製)ベクター〕(vector)および宿主細胞〔B16BL6細胞〕(normal)についても同様に細胞移動能を評価した。
<細胞移動能計測>
測定は8μm径のHTS Multiwell Insert System (BD製)を用いて行った。対数増殖期にある細胞を集め、PBSによる洗浄後、0.1 % FBSを含むDMEM中に1 mL あたり2.5 x 105 細胞となるように懸濁し、transwell insertに1.0 x 105細胞を移した。次いで10 % FBSを含むDMEMによる化学的誘引を行い、48時間培養した。培養後、移動していない細胞を綿棒で取り除き、移動した細胞を固定し、染色後、顕微鏡下で細胞数の計測を行い、細胞移動能を評価した。
結果を、図8B及びCに示す。slit3過剰発現B16BL6細胞、pCI-neoベクター(vector)および宿主B16BL6細胞(normal)のそれぞれをtranswell insert上に播種し、血清による誘引効果によって膜上面から膜下面への移動能を測定した結果、図8Bに示すように細胞の移動が観察された。染色された移動細胞数を計測し、その平均値を求めた結果を図8Cに棒グラフとして示す。宿主B16BL6細胞(normal)の移動能を100%として示す。その結果、Slit3を強く発現する組み換え細胞(slit3過剰発現B16BL6細胞)の移動能が亢進していた。この結果から、Slit3は腫瘍細胞の移動能を高めること、すなわち腫瘍細胞の浸潤・転移能を増強するものと考えられる。この結果は、Slit3の機能発現を抑制することによって、腫瘍(癌)の湿潤や転移を抑制(予防)することができることを示唆している。
<考察>
以上の実験例から次のことが考察される。
slit3の発現が、マクロファージ細胞株(RAW264.7)(図1)、及びマウスマクロファージJ774.1(結果示さず)で確認された。Slit3の発現は、COS、CHO、NIH/3T3、HeLa、SV40形質転換-中腎マウス細胞株M15、及びヒト糸球体上皮細胞株GEC4といった多くの細胞株で検出されること (文献8)、及びslit3の発現レベルは腎臓、骨格筋および心臓において、発生過程と生後の両方で高いことが報告されている(文献9)。Slit3は、全般的に機能性分子である。
Raw264.7中のslit3の発現は、LPSの存在で増加する(図1)。LPSは、グラム陰性菌の外被膜の成分であり、多くの細胞によって認識される。その効果は主として、単球やマクロファージを含む、免疫および炎症系の細胞による仲介である(文献10,11)。LPSシグナリングは、LPSとLPS結合タンパク質との相互作用によって始動し、これによってCD14への結合、および細胞内シグナルドメインを含む他の細胞膜受容体(Toll-like receptor(TLR)4)との関連が可能となる(文献12)。slit3の発現はRAW264.7細胞中でのTLR4を介したLPSシグナリングによって制御されることが示唆される。
Slit3は、LPS活性化RAW264.7細胞の細胞溶解物中で検出されたが、培養上清および細胞洗浄液の混合物中には検出されなかった(図2A)。これは、Slit3が細胞から分泌されないことを意味する。Slit3は、Slit1及びSlit2とは違って、細胞から分泌されないことが示されている(文献8)。このことから、Slit3は、他のSlitが有さない固有の機能を有している可能性がある。
Slit3は、LPS刺激RAW264.7のミトコンドリア中(図2B)に、原形質膜とともに存在している(図2C)。哺乳類のSlit3は、圧倒的にミトコンドリアに局在しており、その理由としてSlit3はN末端にミトコンドリアの標的シグナルを含んでいるからと報告されている(文献8)。Slit3のミトコンドリア内での機能は不明である。ミトコンドリアとアポトーシス始動との関係が最近明らかになりつつある(文献13)。発生過程におけるslit3の一時的かつ空間的な発現パターンから、細胞死促進にSlit3が役割を担っている可能性は低い(文献14,15)。LPS活性化RAW264.7中でSlitタンパク質の受容体として公知のrobo1及びrobo2の発現を認めることができなかった(結果示さず)。この結果は、Slit3がミトコンドリアとRobo受容体以外の他の分子との相互作用において機能している可能性を示唆する。一方、Slit3は、コンフルエント状態にある上皮単層に輸送されることが示されている(文献8)。Slit3はマクロファージの原形質膜と一緒に、F-アクチンと共局在化する(図2C)。slit3-RNAi細胞は、LPS処理下、RAW264.7の細胞伸展を抑制した(図3)。一方、slit3過剰発現系において、伸展細胞の数は、コントロールベクターをトランスフェクトした細胞と比較すると増加する傾向にある(データ示さず)。LPS刺激はマクロファージの形態を、平坦で伸展した形状に変化させる(文献16)。
形態変化の過程は、アクチン細胞骨格の複雑で動的な識別を含んでいる(文献17,18)。Slit3は、LPSシグナリングによってアクチン再編成を介した細胞伸展を含む。
LPS刺激は、マクロファージから、TNFα、IL-1β、及びiNOSといった炎症性メディエーターの分泌をもたらす(文献16)。本発明の実験から、Slit3は、TNFαとIL-1β遺伝子の転写に影響しないことがわかった(図4A)。一方、iNOS遺伝子転写とNO産生は、slit3-RNAi細胞によって減少し、かつslit3-過剰発現細胞では誘導されたことから(図4)、Slit3が、LPS刺激マクロファージにおいて、NO産生をもたらすiNOS遺伝子の転写シグナリングに関与していることが考えられた。
細胞伸展に対するNOの関与を確認するために、NO阻害剤であるL-NAMEの存在下での、LPS刺激RAW264.7の細胞伸展を調べたところ、活性マクロファージの細胞伸展は、LPS刺激下、L-NAMEによって影響されなかった(図5)。このことから、細胞伸展がNOによって制御されていないことが示唆された。
ERK、p38、及びJNKといった一連のMAPキナーゼが、LPSで刺激されたマクロファージ中で活性化されることが知られている(文献1-4)。キナーゼはまたRAW264.7におけるLPS-誘導iNOS遺伝子転写に関係していることが知られている(文献19)。slit3-RNAi細胞は、部分的にiNOS遺伝子の転写およびERK1/2のリン酸化を阻害し、p38およびJNKのリン酸化には影響せず、またslit3-過剰発現はiNOS遺伝子の転写およびERK1/2のリン酸化を誘導し、p38およびJNKのリン酸化には影響しなかった(図4,6)。ERK1/2経路は、マクロファージ内でのLPS誘導iNOS発現及びそれに続くNO産生のアップレギュレーションを仲介する(文献19,20)。Slit3は、LPS刺激の下で、p38やJNKではなくERK1/2に対するNO産生のシグナル経路において重要な役割を担っている。LPSはマクロファージ内で、下記の連続的な活性化を通じて、一連のNO産生を誘導すると考えられる:
LPS→TLR4→Slit3→ERK1/2→iNOS。
これらのことから想定される、iNOS転写及び細胞運動の活性化を誘導する、Slit3を介したLPS刺激シグナリング経路モデルを図9に示す。
なお、本明細書中で引用する文献は下記の通りである。当該文献は本願明細書に参考として援用される。
1. Heitmer, M.R., et al., J.Biol.Chem.273,(1999) pp.15301-15306
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LPSで刺激したRAW264.7細胞中でのslit3発現を調べた結果を示す(実験例1)。図Aは、LPS 存在(LPS+)またはLPS 非存在(LPS−)下でのRAW264.7細胞のslit3発現をRT-PCR分析した結果を示す。コントロールとしてβ-アクチン転写物(β-actin)を使用した。図Bは、RT-PCR法によって測定した、LPS 存在(LPS+)またはLPS 非存在(LPS−)下でのRAW264.7細胞内のslit3発現の相対的レベルを示す。LPS存在(N=3)またはLPS非存在(N=3)下で個々に行ったデータの定量的結果である。図Cは、LPS 存在(LPS+)またはLPS 非存在(LPS−)下でのRAW264.7細胞中のSlit3タンパク質発現をイムノブロット分析した結果を示す。コントロールとして行った抗-チューブリン抗体を用いたイムノブロッティングは、各レーンに等量のタンパク質(20ng)がロードされたことを示している。 RAW264.7細胞内でのSlit3タンパク質の局在化を示す図である(実験例2参照)。図Aは、100ng/ml LPSで刺激したRAW264.7細胞の、培養上清および細胞内(細胞溶解物)におけるSlit3の存在をイムノブロット分析した結果を示す。Slit3は細胞溶解物(CL)中に検出されたが、培養上清及び塩洗浄液(Sup+Wash)中では検出されなかった。図Bは、RAW264.7細胞中のミトコンドリア内でのSlit3の局在を示す。図a-cは、LPS(100ng/ml)で刺激した細胞の画像、図d-fは、LPSで刺激しない細胞の画像である。これらのうち、図bおよびeは抗Slit3抗体で標識した細胞を免疫蛍光法で測定した画像、図cおよびfは抗Slit3抗体標識とミトコンドリア染色用Mito Tracker標識の両方を行った細胞の画像(merge image)である。図Cは、Slit3の、RAW264.7細胞内のF-actinとの局在を示す。図a-cは、LPS(100ng/ml)で刺激した細胞の画像、図d-fは、LPSで刺激しない細胞の画像である。これらのうち、図bおよびeは抗Slit3抗体で標識した細胞を免疫蛍光法で測定した画像、図cおよびfは抗Slit3抗体標識とF-actin染色用rhodamine-phalloidin標識の両方を行った細胞の画像(merge image)である。 slit3-RNAi構築物(RNAi)でトランスフェクトした細胞、非トランスフェクト細胞(-)及びコントロールベクター(vector)でトランスフェクトした細胞を、LPS(100ng/ml)の存在下(+)または非存在下で培養後、RT-PCR分析(図A)およびSlit抗体を用いたイムノブロット分析(図B)し、各々slit3のmRNA発現およびSlit3生成を調べた結果を示す。図Cは、コントロールベクター(a-b)またはslit3-RNAiベクター(c-d)でトランスフェクトした細胞(100ng/ml LPS刺激)の蛍光染色画像、GFP遺伝子を含むpsiRNAでトランスフェクトされた細胞のGFP観察画像(b,d)を示す。図Dは、slit3-RNAiベクター(RNAi)でトランスフェクトした細胞、非トランスフェクト細胞(-)、コントロールベクター(vector)でトランスフェクトした細胞のうち伸展細胞の割合を定量した結果を示す。個々の検体数3で、各々3回実験を行った結果(mean±SEM、n=3)である。 図Aは、slit3-RNAiベクター(RNAi)、RNAiコントロールベクター(RNAi control vector)、slit3-過剰発現ベクター(Slit3)または発現コントロールベクターで各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)中のslit3、iNOS、TNFα、及びIL-1βの発現レベルをRT-PCR分析で測定した結果を示す。なお、細胞は、図面に示す時間にわたって(〜10時間)、100ng/ml LPSで刺激した。図Bは、上記slit3-RNAiベクター(RNAi)、RNAiコントロールベクター(RNAi control vector)、slit3-過剰発現ベクター(Slit3)または発現コントロールベクターで各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)内におけるiNOSタンパク質の発現生成をイムノブロット分析した結果を示す。図Cは、slit3-RNAiベクター(RNAi)またはRNAiコントロールベクター(vector)で各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)の、LPS刺激または非刺激下での、培養上清中の亜硝酸塩濃度(μM)、図Dは、slit3-過剰発現ベクター(Slit3)または発現コントロールベクター(vector)で各々トランスフェクトした細胞(RAW264.7細胞)の、LPS刺激または非刺激下での、培養上清中の亜硝酸塩濃度(μM)を測定した結果を示す。検体数3で3回実験を行った結果を示す(mean±SEM、n=3)。P<0.05 図Aは、LPS刺激によるRAW264.7細胞の亜硝酸塩産生に対するNOS阻害剤(NG-nitro-L-arginine-methyl ester:L-NAME)の影響を示す。図Bは、LPS刺激または非刺激下におけるRAW264.7細胞の形態に対するNOS阻害剤(L-NAME)の影響を示す。図中、LPS+はLPS刺激、LPS-はLPS非刺激、L-NAME+はNOS阻害剤処理、L-NAME-はNOS阻害剤非処理を意味する。図Cは、LPS刺激または非刺激下におけるRAW264.7細胞の細胞伸展に対するNOS阻害剤(L-NAME)の影響を示す。結果は、検体数3で3回実験を行った結果を示す(mean±SEM、n=3)。 図Aは、slit3-RNAiベクターでトランスフェクトした細胞におけるERK1、ERK2、p38、JNK1およびJNK 2のリン酸化を、抗-リン酸化MAPキナーゼ抗体を用いたイムノブロッティングによって測定した結果を、RNAiコントロールベクターでトランスフェクトした細胞の結果と合わせて示す。図Aは、slit3-RNAiがERK(ERK 1、ERK 2)のリン酸化を阻害することを示す。図Bは、slit3-過剰発現ベクターでトランスフェクトした細胞におけるERK1、ERK2、p38、JNK1およびJNK 2のリン酸化を、抗-リン酸化MAPキナーゼ抗体を用いたイムノブロッティングによって測定した結果を、発現コントロールベクターでトランスフェクトした細胞の結果と合わせて示す。図Bは、slit3-過剰発現がERK(ERK 1、ERK 2)のリン酸化を誘導することを示す。図中、抗-ERK1抗体、抗-ERK2抗体および抗-p38抗体でのイムノブロッティングの結果から、等量のタンパク質(20μg)が各レーンに付されたことがわかる。 図Aは、slit3-RNAiベクターでトランスフェクトしたRAW264.7細胞中の、LPS刺激または非刺激下における、活性GTP-結合Rac(活性化Rac)を調べた結果を示す。図Bは、slit3-RNAiベクターでトランスフェクトしたRAW264.7細胞中の、LPS刺激または非刺激下における、活性GTP-結合Cdc42(活性化Cdc42)を調べた結果を示す。図Cは、Wound-healingアッセイにより、Raw264.7細胞の傷口への遊走を調べた結果を示す。24時間インキュベーション後の細胞の挙動を位相差法(a,c)および蛍光法(b,d)により撮影した画像である。写真による結果は、検体数3で3回実験を行った結果の1つを示す。 図Aは、slit3を過剰発現するB16BL6細胞(マウス由来メラノーマ細胞)(Slit3)、slit3過剰発現B16BL6細胞作成に使用したベクター〔pCI-neo(プロメガ製)ベクター〕(vector)および宿主細胞〔B16BL6細胞〕(normal)の発現を調べた結果を示す。図BおよびCは、これらの細胞またはベクターについて細胞移動能を評価した結果を示す。図Bは染色細胞の画像を、図Cは染色細胞数を計測し、その平均値を求めた結果を棒グラフで示すものである。 iNOS転写及び細胞運動の活性化を誘導する、Slit3を介したLPS刺激シグナリング経路モデルを示す。LPS活性化細胞の運動性(cell motility)はTLR、p38、Slit3、Rac/Cdc42およびERKからなる経路によって仲介されている。LPS誘導iNOSは、NF-κBシグナリング経路及びTLR→p38→Slit3→Rac/Cdc42→ERKからなるシグナリング経路によって仲介されている。

Claims (11)

  1. 活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とする、マクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素の産生または細胞運動能の抑制剤。
  2. 有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現またはその産生物(Slit3)の活性化を抑制する作用を有する物質である、請求項1に記載する抑制剤。
  3. 有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現を抑制するアンチセンス分子、リボザイムまたはRNAiエフェクターである、請求項1または2に記載する抑制剤。
  4. 活性化マクロファージにおけるSlit3の機能発現を抑制する物質を有効成分とする、マクロファージの活性化に起因する一酸化窒素の産生または細胞運動能に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物。
  5. 有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現またはその産生物(Slit3)の活性化を抑制する作用を有する物質である、請求項4に記載する医薬組成物。
  6. 有効成分が、活性化マクロファージにおけるslit3の発現を抑制するアンチセンス分子、リボザイムまたはRNAiエフェクターである、請求項4または5に記載する医薬組成物。
  7. 上記疾患が、感染症、炎症性疾患、生活習慣病、神経損傷、神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍である、請求項4乃至6のいずれかに記載する医薬組成物。
  8. 下記の工程を有する、活性化マクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素および一酸化窒素の産生、または細胞運動能を抑制する物質のスクリーニング方法:
    (a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、
    (b) 上記マクロファージについて、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルを測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるslit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルと対比する工程、及び
    (c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、slit3 mRNAの発現レベルまたはSlit3の産生レベルが低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を、標的物質として選択する工程。
  9. 下記の工程を有する、活性化マクロファージの活性化に起因する誘導性一酸化窒素合成酵素および一酸化窒素の産生、または細胞運動能を抑制する物質のスクリーニング方法:
    (a) slit3を発現し得る活性化マクロファージに被験物質を接触させる工程、
    (b) 上記マクロファージについて、Slit3の活性を測定し、被験物質を接触させない対照のマクロファージにおけるslit3の活性と対比する工程、及び
    (c) 上記(b)の比較結果に基づいて、対照のマクロファージに比して、slit3の活性が低下してなるマクロファージと接触させた被験物質を、標的物質として選択する工程。
  10. マクロファージの活性化に起因する一酸化窒素の産生または細胞運動能に関連して生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物の有効成分を取得する方法である、請求項8または9に記載するスクリーニング方法。
  11. 上記疾患が、感染症、炎症性疾患、生活習慣病、神経損傷、神経変性疾患、心筋梗塞、または腫瘍である請求項10に記載するスクリーニング方法。
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