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JP2007040827A - タンパク質分析方法及びタンパク質分析キット - Google Patents

タンパク質分析方法及びタンパク質分析キット Download PDF

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JP2007040827A JP2005225260A JP2005225260A JP2007040827A JP 2007040827 A JP2007040827 A JP 2007040827A JP 2005225260 A JP2005225260 A JP 2005225260A JP 2005225260 A JP2005225260 A JP 2005225260A JP 2007040827 A JP2007040827 A JP 2007040827A
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由貴江 笹倉
Katsuhiro Kanda
勝弘 神田
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Hitachi High Technologies Corp
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Abstract

【課題】煩雑で危険を伴う操作を行うことなく、ターゲットタンパク質の発現量及びリン酸化量を測定する。
【解決手段】解析のターゲットとなるタンパク質を他の夾雑タンパク質と分離して検出し、更に分離したターゲットタンパク質中のリン酸化された残基を特異的に検出することにより、ターゲットタンパク質の発現量とリン酸化量を同時に測定し、最後にターゲットタンパク質のリン酸化されている割合を計算することで、当該タンパク質のリン酸化率を測定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、タンパク質分析方法に関し、より詳細にはタンパク質のリン酸化状態を測定する方法に関する。
膨大なゲノム情報の蓄積に伴い、ライフサイエンス分野の流れはゲノミクスからプロテオミクスへと移行しつつある。タンパク質はDNAからの転写・翻訳により細胞内で合成されるが、その後のスプライシング、フォールディング、翻訳後修飾などを経て初めて成熟したタンパク質となり、その機能を発揮することができる。翻訳後修飾にはリン酸化、メチル化、糖鎖付加など様々な種類が存在するが、中でも最も数多く存在するのがリン酸化修飾である。真核生物のタンパク質の1/3は何らかの形でリン酸化を受けていると予測されている(Trends Biotechnol. 2002 Jun; 20(6): 261-8)。多くの場合、リン酸化は可逆的であり、リン酸化によってタンパク質が活性化してその機能を発揮し、脱リン酸化によって不活性化する。タンパク質をリン酸化する酵素をキナーゼ、脱リン酸化する酵素をフォスファターゼと呼び、ヒトは500種類以上のキナーゼと100種類以上のフォスファターゼを持つことが知られている。これらによって生体内のリン酸化状態を厳密に制御することで、生体内メカニズムを正常に保つことができる。逆にリン酸化制御に異常をきたした場合、ガンをはじめとする種々の疾患を引き起こすことも報告されており、創薬研究ではリン酸化を制御することのできる薬剤物質の探索が行われている。また臨床分野では、ターゲットタンパク質のリン酸化状態を測定することで疾患を診断するマーカーとしての利用が期待されている。
従来、リン酸化状態を測定する手法として、放射性同位体である32Pを細胞に取り込ませて培養した後、抽出したタンパク質を二次元電気泳動によって分離し、CBB染色等によってタンパク質を検出し、なおかつオートラジオグラフィーによって32Pのタンパク質への取り込みを測定することで、リン酸化状態を解析する手法が用いられていた。他の手法として、タンパク質試料を電気泳動した後にメンブレンに転写し、リン酸化部位認識抗体を用いて検出するウエスタンブロッティング法も、リン酸化タンパク質の検出に用いることができる。
また、プロテインマイクロアレイを使用したリン酸化状態測定技術として、特開2005-69788号公報に示されたように、ターゲットタンパク質に対して特異的な抗体を予め支持体上に固定化し、試料を添加してターゲットタンパク質を抗原抗体反応によって支持体上に捕捉した後、リン酸化部位認識抗体を用いてリン酸化を検出する手法が報告されている。
特開2005-69788号公報 Trends Biotechnol. 2002 Jun;20(6):261-8
タンパク質の疾患マーカーは、疾患に伴って発現量が変動することが経験的に見出されてはいるものの、必ずしも疾患を引き起こすメカニズムに直接関与しているわけではない。一方、リン酸化はその異常自体が疾患の原因と密接な関係があるため、リン酸化を正常な状態に制御することは疾患の治療につながる。また、同じ疾患でも患者ごとに原因が異なる場合が存在する。従って治療の開始前に患者のタンパク質のリン酸化状態を測定し、何が疾患の原因になっているかを予め判定することで、薬剤の効果を事前に予測して治療方針を決定することや、治療の経過を観察することが可能となる。
以上のような薬剤開発や治療方法開発のためには、ターゲットとなるタンパク質のリン酸化状態を測定することが重要であり、高精度かつハイスループットな測定技術の開発が求められている。そしてタンパク質のリン酸化状態の測定においては、そのリン酸化量だけではなく、ターゲットタンパク質の発現量に対してリン酸化されている割合を測定することが、生命現象の制御機構としてのリン酸化/脱リン酸化を解析する上で重要となる。
しかし、32Pを使う従来の方法は、実験工程が煩雑である上、放射性物質である32Pは取扱いに特別な設備を要し、取扱い作業には危険が伴う。またその危険性から人体に投与することは不可能であり、測定対象が培養細胞や実験動物に限られてしまう。ウエスタンブロッティング法の場合は、ターゲットタンパク質の発現量を同時に測定することは不可能であり、タンパク質の定量用の実験を別に行う必要が生じる。また、特開2005-69788号公報に記載の方法では、ターゲットタンパク質のリン酸化量を測定することが可能であるが、ターゲットタンパク質の発現量を測定することができないため、タンパク質のリン酸化されている割合(リン酸化率)を知ることは不可能である。ターゲットタンパク質の発現量は個人差があることから、リン酸化量ではなくリン酸化率を測定することにより、初めてリン酸化状態の正常/異常を判断することが可能となる。従って、ターゲットタンパク質のリン酸化量とともに発現量を測定することが、リン酸化解析を臨床診断や創薬に利用する上で必要となる。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、煩雑で危険を伴う操作を行うことなく、ターゲットタンパク質の発現量及びリン酸化量を測定する方法、及びその方法に用いる分析キットを提供することを目的とする。
本発明では、解析のターゲットとなるタンパク質を他の夾雑タンパク質から分離して検出し、更に分離したターゲットタンパク質中のリン酸化された残基を特異的に検出することにより、ターゲットタンパク質の発現量とリン酸化量を同時に測定する。そして、測定されたターゲットタンパク質の発現量とリン酸化量から、ターゲットタンパク質のリン酸化されている割合を計算することで、当該タンパク質のリン酸化率を測定する。
本発明によると、従来別々に測定していたタンパク質発現量とリン酸化量を同時に測定することにより実験操作が簡易化されて測定のスループットを向上させることができ、なおかつ使用する試料を半減することが可能となる。本発明は検査、診断、創薬、基礎研究等幅広い分野で有効である。
タンパク質を分離する方法としては、試料中の微量なターゲットタンパク質を途中でロスすることなく精製できる手法である必要がある。例として電気泳動、液体クロマトグラフィー、免疫沈降、分子アレイ等があるが、特に分子アレイは本発明が最も有効となる形体の一つであると考えられる。測定したいターゲットタンパク質に対して特異的に結合する分子を支持体上に固定化し、必要に応じて支持体表面のブロッキング処理を行った後、組織抽出物等の試料を添加して試料中のターゲットタンパク質を支持体上に捕捉する。次に、タンパク質のリン酸化部位を特異的に認識する分子を添加してターゲットタンパク質のリン酸化部位を検出するという手法が考えられる。
上述の分子アレイの場合、支持体としては、捕捉用の分子が固定化可能な固相であれば何でも用いることができる。例えばニトロセルロースやPVDF等のメンブレン、ガラス、ウエハー等のシリコン、プラスチック等の樹脂、金属等に、必要に応じて固定に適した修飾を施したものを用いることができる。修飾の種類には、物理吸着によって目的分子を固定化することができるポリ-L-リジンやアミノシラン、共有結合によって目的分子を固定化することができるアルデヒド基やエポキシ基のような官能基、及び目的分子との親和性を利用して固定化することができるアビジンやNi-NTAなどを用いることができる。また、ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルのような、親水性の多孔質マトリックスの薄層から成る固相も利用できる。
支持体に固定化する捕捉用分子としては、ターゲットタンパク質との特異的な結合によりターゲットタンパク質を支持体上に捕捉できる分子を用いる。ただし、ターゲットタンパク質との結合はターゲットタンパク質のリン酸化状態には依存しないものでなければならない。例として抗体、抗体様物質、タンパク質、ペプチド、核酸、核酸様物質、アプタマー等が挙げられる。
ブロッキング剤は、支持体上の目的分子が固定化されなかった領域に、他の分子が吸着して非特異的なシグナルの増加を引き起こすことを防ぐため、支持体や試料及び試薬の性質に応じて用いる。一般的にはBovine Serum Albumin (BSA)のような不活性なタンパク質や、Polyethylene Glycol (PEG)、Polyvinyl Alcohol (PVA)などのポリマーが用いられる。しかし、スキムミルクのようなリン酸基を持つタンパク質は、ブロッキング剤としては一般的であるが本発明には適さない。
検出方法は、一つの試料からターゲットタンパク質の発現量とリン酸化量を同時に検出できる必要がある。例えば上述の分子アレイの場合、ターゲットタンパク質を含んだ試料を予め蛍光色素Aで標識し、リン酸化部位を特異的に認識する分子として蛍光色素Bで標識したリン酸化部位認識抗体を用いることで、蛍光色素Aからターゲットタンパク質の発現量を、蛍光色素Bからターゲットタンパク質のリン酸化量を測定し、そのリン酸化率を求めることができる。
ターゲットタンパク質の検出は、予め試料を標識するのではなく、試料の分離が終了した後に行うのでも構わない。また、固定化した捕捉用分子とは別の部位を認識する分子を用いてターゲットタンパク質の発現量を測定することも可能である。
リン酸化量の測定には、標識したリン酸化部位認識抗体の他、非標識リン酸化部位認識抗体とリン酸化部位認識抗体に対して特異的に結合する標識抗体とを組み合わせて用いることもできる。あるいは抗体を用いずに、ProQ Diamond(Molecular Probe社)など、リン酸基と特異的に結合する色素を用いることもできる。
また、標識は用いずに、抗原や抗体の結合による分子量変化をSurface Plasmon Resonance (SPR)によって検出することも考えられる。SPRとは、金属表面の励起状態である表面プラズモン波を共鳴励起する現象であり、2つの分子が結合・解離することによる質量変化の検出に利用することができる。質量変化を感知するため、標識や染色を必要としない利点がある。
以下に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。ただし本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
図1及び図2を参照し、プロテインマイクロアレイを用いたリン酸化タンパク質分析工程を説明する。また図3に、本実施例の実験操作の模式図を示す。
本実施例では、(1)ターゲットタンパク質を認識する抗体の支持体への固定、(2)蛍光色素Aで標識したターゲットタンパク質を含む試料と、濃度及びリン酸化率が既知のコントロール試料の添加、(3)リン酸化部位認識抗体の添加、(4)リン酸化部位認識抗体に結合する蛍光色素Bで標識した抗体の添加、(5)蛍光検出、(6)リン酸化率の算出、の順番で作業を進める。
本実施例では、前述した材料の他、試料や試薬を支持体上にスポットするためのスポット用シール302、ピペッター303、密封容器306、気相インキュベーター307、洗浄容器308、蛍光検出装置309を用いる。
スポット用シール302は、直径2 mmのスポット用孔を縦4列に5 mm間隔、横12列に4.5 mm間隔で配置した縦25 mm×横55 mmのシートである。スポット用シール302を支持体に予め貼付することで、試料や試薬を支持体上の同じ位置に同じ大きさでスポットすることができる。ピペッター303は、支持体上に試料や試薬304を任意の分量でスポットするためのものである。密封容器306は、支持体を少量の水滴305と共に密封することにより、容器の内部の湿度を長時間保ち、支持体上の試料や試薬の蒸発を防ぐためのものである。気相インキュベーター307は、試料や試薬の結合反応に適した温度を保持するためのものである。洗浄容器308は、支持体を洗浄溶液とともに振とうすることで、支持体に結合しなかった分子を除去する目的で用いる。
まず、ターゲットタンパク質に対する特異的な抗体を支持体に固定する。スポット用シール302を支持体301に貼付し、ピペッター303を使用して、ターゲットタンパク質に対する特異的な抗体201を滴下する。この際使用する抗体は、ターゲットタンパク質のリン酸化状態には依存せずに結合するものである。支持体を水滴305とともに密封容器306中に設置し、インキュベーター307内で保温して抗体の支持体上への結合反応を行う。洗浄操作によって未結合の抗体を取り除き、抗原抗体反応に影響を与えないタンパク質202により支持体表面の未反応領域のブロッキングを行った後、再度洗浄を行ってリン酸化状態測定チップとする。
次に、蛍光色素Aで標識したターゲットタンパク質を含む試料と、濃度及びリン酸化率が既知のコントロール試料を添加する。予め蛍光色素Aで標識した測定対象の試料及びコントロール試料を、上記抗体を固定化した支持体上のそれぞれ異なるスポットに対して滴下する。支持体を水滴305とともに密封容器306中に設置し、インキュベーター307内で保温して支持体に固定化された抗体との結合反応を行う。リン酸化型ターゲットタンパク質203及び非リン酸化型ターゲットタンパク質204はともに固定化した抗体201によって支持体上に捕捉される。ターゲットタンパク質以外の夾雑物205は支持体上に捕捉されず、洗浄操作によって除去される。
次に、リン酸化部位認識抗体206を添加する。タンパク質中のリン酸化されたアミノ酸残基(主にセリン、チロシン、スレオニン)に対する抗体、ここではマウス由来リン酸化部位認識抗体を支持体に対して滴下し、支持体を水滴305とともに密封容器306中に設置し、インキュベーター307内で保温してターゲットタンパク質中のリン酸基との結合反応を行う。その後、洗浄操作によって未反応の抗体を取り除く。
次に、蛍光色素Bで標識した、リン酸化部位認識抗体に対して特異的な抗体を添加する。試料を標識した蛍光色素Aとは別の励起/蛍光波長を持つ蛍光色素Bで予め標識された、リン酸化部位認識抗体206に対して特異的な抗体207、ここでは蛍光色素B標識抗マウスIgG抗体を支持体に対して滴下し、支持体を水滴305とともに密封容器306中に設置し、インキュベーター307内で保温してリン酸化部位認識抗体206との結合反応を行う。その後、洗浄操作によって未反応の抗体を取り除いた後、窒素ガス吹き付けにより支持体を乾燥させる。
次に、蛍光検出を行う。蛍光色素A、蛍光色素Bの各強度をそれぞれの励起/検出波長を用いて測定し、蛍光色素Aの強度310からターゲットタンパク質の発現量を、蛍光色素Bの強度311からターゲットタンパク質のリン酸化量を測定する。
最後に、コントロール試料の蛍光強度に基づき測定対象試料中のターゲットタンパク質量、リン酸化量、リン酸化率を算出する。コントロール試料はタンパク質濃度及びリン酸化量ごとに検量線を求め、これをもとに測定対象試料のタンパク質濃度、リン酸化量を計算し、最後に両者の比からリン酸化率を求める。
〔実験例〕
本実験例では、MAPキナーゼ(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)ファミリーの一つであり、リン酸化によって活性を制御される酵素ERK2(細胞外シグナル制御キナーゼ2)について、タンパク質量とリン酸化量を同時に測定した実験を例に、本発明をより詳細に解説する。
[捕捉用抗体の支持体への固定化]
本実験では、支持体としてProteoChip (TypeA、Proteogen Inc.)を用いた。ProteoChip表面には試料や試薬を同じ位置に同じ大きさでスポットするためのスポット用シール(意匠1213441号)を予め貼付した。捕捉用抗体としてウサギ由来抗ヒトERK2ポリクローナル抗体(71-1800、Zymed Laboratories Inc.)を、30%Glycerolを含んだPBS(pH 7.4)を用いて100 μg/mlに希釈し、ピペッター303を用いて支持体に対して1.5 μlずつ滴下した。
支持体を、隅に水滴305を入れた密閉容器306に設置し、37℃で一晩インキュベートして捕捉用抗体を支持体に固定化した。固定化後、支持体を50 mlの洗浄溶液(0.5% Tween20を含むPBS、pH 7.8)中に浸漬し、10分間振とうして未結合の抗体を取り除いた。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
[ブロッキング]
50 mlの3%BSAを含んだPBS (pH 7.4)に支持体を浸漬し、1時間穏やかに振とうした。溶液を捨てた後、50 mlの洗浄溶液を加え、10分間振とうして洗浄した。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
[抗原を含んだ試料溶液の標識]
リン酸化型ERK2(14-439、Upstate)及び非リン酸化型ERK2(14-515、Upstate)をBSAを1 mg/ml含んだPBSに10 μg/mlとなるように希釈し、Cy3Dye標識試薬-NHSタイプ(Q13008、Amersham Bioscience)を用いて蛍光標識した。SephadexG25(17-0032-01、Amersham Bioscience)を用いたゲル濾過法によって遊離の色素と分離・精製した後、20 μg/mlとなるまで遠心濃縮した。タンパク質濃度及びCy3標識効率は、波長250〜700 nmの吸収スペクトルを測定し、280 nm及び556 nmの各吸収極大波長から求めた。
[捕捉用抗体による抗原の捕捉]
標識済みリン酸化型ERK2及び標識済み非リン酸化型ERK2を、捕捉用抗体が固定化された支持体に対してピペッター303を用いて1.5 μlずつ滴下した。支持体を、隅に水滴305をいれた密閉容器306に設置し、37℃で1.5時間インキュベートして抗原を捕捉用抗体と反応させた。抗原溶液を吸引によって除いた後、50 mlの洗浄溶液中に支持体を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗原を取り除いた。濾紙により余分な水分を取り除いた。
[リン酸化部位認識抗体によるリン酸化タンパク質の捕捉]
マウス由来抗ホスホスレオニン抗体(13-9200、Zymed Laboratories Inc.)及びマウス由来抗ホスホチロシン抗体(9200、Zymed Laboratories Inc.)を各100 μg/ml含んだ溶液を30%Glycerol、10%BSAを含んだPBS (pH 7.4)を用いて調製し、支持体に対してピペッター303を用いて1.5 μlずつ滴下した。支持体を、隅に水滴305を入れた密閉容器306に設置し、37℃で1.5時間インキュベートして抗原と反応させた。抗体溶液を吸引によって除いた後、50 mlの洗浄溶液中に支持体を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。濾紙により余分な水分を取り除いた。
[標識抗体との反応]
Cy5標識ヤギ由来抗マウスIgGポリクローナル抗体(81-6516、Zymed Laboratories Inc.) を30%Glycerol、10%BSAを含んだPBS (pH 7.4)を用いて2 μg/mlに調製し、支持体に対してピペッター303を用いて1.5 μlずつ滴下した。支持体を、隅に水滴305を入れた密閉容器306に設置し、37℃で30分インキュベートしてリン酸化部位認識抗体と反応させた。抗体溶液を吸引により除いた後、50 mlの洗浄溶液中に支持体を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除き、スポット用シールを剥がした。
[蛍光スキャナーによる検出]
蛍光検出用スキャナーScanArray Express(Packard BioScience)を用いて支持体をスキャンした。QuantumArray(Packard BioScience)を用いて画像を解析し、各スポットの蛍光強度を数値化した。Cy3(励起波長550 nm、蛍光波長 570 nm)から試料溶液中のERK2の総量を、そしてCy5(励起波長650 nm、蛍光波長 680 nm)からERK2のリン酸化量を測定した。
[実験結果]
図4(A)上図にCy3で測定した場合の蛍光スキャン画像模式図を、下図にCy5で測定した場合の蛍光スキャン画像模式図をそれぞれ示す。スキャン画像は、解析ソフトにより蛍光強度を示す数値へと変換し、各試料の強度値からネガティブコントロールの強度値をバックグラウンドとして差し引いた後、リン酸化型ERK2の蛍光強度を1とした相対値で示した(図4(B))。非リン酸化型ERK2を測定した場合、Cy3で検出した蛍光強度がリン酸化型ERK2とほぼ同じであったことから、試料中のERK2の総量は同じであるが、リン酸化量は蛍光強度で34%と優位に低下することが認められた。更に同結果に基づき、図4(C)に示したようにリン酸化率を予め100%、75%、50%、25%に調節したERK2について同様の実験を行ったところ、ERK2総量がほぼ一定であるのに対して、リン酸化量は濃度依存的に増減することが認められた(図4(D))。これらの結果より、本手法がタンパク質発現量とリン酸化量を同時に測定する方法として利用可能であることが示された。
リン酸化状態測定キット
図11は、本発明のタンパク質分析を簡便に行うために用いられるタンパク質分析用キットの例を示す説明図である。
図11(A)に示す測定キットは、支持体301、スポット用シール302、目的タンパク質に対する捕捉用抗体201、測定対象試料を蛍光色素Aで標識するための試薬208、蛍光色素Aで標識済みのコントロール試料209、リン酸化部位認識抗体206及び同抗体を特異的に認識する蛍光色素B標識抗体207を含んだリン酸化状態測定キットである。
この測定キットの使用者は、初めに支持体301にスポット用シール302を添付して目的タンパク質に対する捕捉用抗体201を固定化する。次に、測定対象試料をキットに含まれる試料の蛍光色素A標識試薬208を用いて標識する。次に、測定対象試料及びキットに含まれるコントロール試料209を添加して、目的タンパク質を支持体上に捕捉させる。次に、リン酸化部位認識抗体206及び同抗体を特異的に認識する蛍光色素B標識抗体207を順次添加し、最後に蛍光強度を検出する。コントロール試料の蛍光強度から検量線を作成し、測定対象試料中の目的タンパク質量とリン酸化量を得た後、そのリン酸化率を算出する。
図11(B)に示す測定キットは、目的タンパク質に対する捕捉用抗体を固定化した状態の支持体210、測定対象試料を蛍光色素Aで標識するための試薬208、蛍光色素Aで標識済みのコントロール試料209、リン酸化部位認識抗体206及び同抗体を特異的に認識する蛍光色素B標識抗体207を含んだリン酸化状態測定キットである。
この測定キットの使用者は、測定対象試料をキットに含まれる蛍光色素A標識試薬208を用いて標識する。次に、測定対象試料及びキットに含まれるコントロール試料209を支持体に添加して、目的タンパク質を支持体上に捕捉させる。次に、リン酸化部位認識抗体206及び同抗体を特異的に認識する蛍光色素B標識抗体207を順次添加し、最後に蛍光強度を検出する。コントロール試料の蛍光強度から検量線を作成し、測定対象試料中の目的タンパク質量とリン酸化量を得た後、そのリン酸化率を算出する。
電気泳動を用いたリン酸化状態の測定
蛍光色素Aで予め標識したターゲットタンパク質を含む試料を、電気泳動によって分子サイズや等電点などに基づきゲル中で分離する。次に、ゲル中のタンパク質をニトロセルロースメンブレン等に転写し、メンブレン上のタンパク質非結合領域をブロッキングした後、リン酸化部位認識抗体206を含んだ溶液にメンブレンを浸漬してタンパク質中のリン酸基と結合させる。次に、蛍光色素Bで標識したリン酸化部位認識抗体に対して特異的な抗体207を含む溶液にメンブレンを浸漬して、リン酸化部位認識抗体に結合させる。次に、蛍光色素A、蛍光色素Bの各強度をそれぞれの励起/検出波長を用いて測定する。ターゲットタンパク質の分子量や等電点の情報に基づいてメンブレン上でのターゲットタンパク質の位置を決定し、そのタンパク質バンドあるいはスポットの蛍光色素Aの強度からターゲットタンパク質の発現量を、蛍光色素Bの強度からターゲットタンパク質のリン酸化量を測定し、リン酸化率を算出する。
リン酸化に基づいた臨床診断
本実施例では患者から採取した試料中の特定のタンパク質のリン酸化状態を、本発明のリン酸化状態測定キットを用いて測定することで、疾患の有無やその種類及びステージを診断する方法について解説する。本実施例の測定フローを図5に、測定模式図ならびにデータ表示例を図6に示す。
[組織からのタンパク質抽出]
患者601より手術やバイオプシー等で摘出した組織から測定対象細胞を切り出し、破砕用バッファー(例えば0.25 Mショ糖)に添加してホモジナイザーにより破砕する。遠心分離によって沈殿を除き、試料602を得る。あるいは採取した血液に適切な処理を施し、試料として用いる場合もある。試料602は蛍光色素Aによって標識し、蛍光色素A標識試料603を得る。
[リン酸化状態の測定]
捕捉用抗体の固定化ならびに試料のリン酸化状態の測定を、リン酸化状態測定キットを用いて実施する。例えば図11(B)に示したリン酸化状態測定キットを用いる場合には、上記のようにして用意した測定対象試料及びキットに含まれるリン酸化型コントロール試料604,非リン酸化型コントロール試料605,ネガティブコントロール606を支持体に添加して、目的タンパク質を支持体上に捕捉させる。次に、リン酸化部位認識抗体206及び同抗体を特異的に認識する蛍光色素B標識抗体207を順次添加する。
こうして処理の終わったリン酸化状態測定チップ607を蛍光色素Aの励起光及び蛍光色素Bの励起光でそれぞれスキャンし、蛍光色素Aの強度分布を表す画像608及び蛍光色素Bの強度分布を表す画像609を得る。各画像は解析ソフトによって蛍光強度を数値化し、グラフ610及び611を得る。グラフ610は各患者抽出試料のタンパク質発現量の比較情報であり、グラフ611は各患者抽出試料のリン酸化量の比較情報である。2つのグラフより得られる各患者抽出試料におけるターゲットタンパク質の発現量及びリン酸化量から各試料のリン酸化率を算出し、疾患の有無やその種類及びステージを判断する。図6の下段に示した表612は、各患者抽出試料のリン酸化率の比較及び診断結果をまとめて示したものである。
リン酸化を標的とした薬剤開発
本発明のリン酸化状態測定キットを用いてリン酸化を制御することのできる薬剤候補物質を探索し、リン酸化を標的とした薬剤を開発する例について解説する。本実施例の測定フローを図7に、測定模式図ならびにデータ表示例を図8に示す。
異常なリン酸化状態を示す患者抽出試料801に対して、各種薬剤候補物質803を添加する。薬剤添加を行わないコントロール試料802とともに、リン酸化状態測定チップ804を用いて実施例1の方法に従ってリン酸化状態の解析を行う。チップを蛍光色素A及び蛍光色素Bの励起波長でそれぞれスキャンし、蛍光色素Aの強度分布を表す画像805及び蛍光色素Bの強度分布を表す画像806を得る。各画像は解析ソフトによって蛍光強度を数値化し、グラフ807及び808を得る。グラフ807は各試料のタンパク質発現量の比較情報をもたらし、グラフ807は各試料のリン酸化量の比較情報をもたらす。各薬剤を添加した試料におけるターゲットタンパク質の発現量及びリン酸化量から各試料のリン酸化率を算出し、コントロール試料とのリン酸化率の差から、各薬剤候補物質のリン酸化制御における効果を判断する。図8の下段に示した表809は、各薬剤候補物質のリン酸化率への影響比較及び薬効判定結果をまとめて示したものである。
リン酸化状態に基づいた治療
例えば図9(A)に示すように、同じ疾患でもその原因が異なる患者に対して同一の薬剤を投与した場合、その効果には個人差が生じ、また患者によっては疾患とは無関係の正常な機能に影響を及ぼす副作用を引き起こす可能性がある。
しかし図9(B)のように、各患者のリン酸化状態を本発明のリン酸化状態測定キットを用いて予め測定し、疾患の原因となっているタンパク質を同定することで、患者ごとに適した薬剤を選択することが可能となる。また疾患の原因のみに作用する薬剤を用いることで、その他の正常な機能に影響を与える副作用を低減することができる。
疾患の原因となるリン酸化の同定
例えば図10に示すように、本発明はその発症メカニズムが不明な疾患の原因解明にも利用することができる。一定数の患者からなる被験者グループA及び健常者からなる被験者グループBから採取した試料1003,1004について、複数のタンパク質のリン酸化状態を本発明のリン酸化状態測定キットを用いて測定し、グループA及びグループBでリン酸化状態に差が認められたタンパク質を疾患原因タンパク質の候補とすることができる。またリン酸化は疾患のステージに依存して変化する場合も報告されており、疾患ステージの診断の基準とすることも可能である。
ターゲットタンパク質のリン酸化状態測定フロー図。 ターゲットタンパク質の発現量とリン酸化量の同時検出の測定原理を示す模式図。 プロテインマイクロアレイ実験操作の模式図。 実験例の結果を示す図。 タンパク質のリン酸化状態に基づいた臨床診断フロー図。 タンパク質のリン酸化状態に基づいた臨床診断の模式図。 タンパク質のリン酸化を標的とした薬剤開発フロー図。 タンパク質のリン酸化を標的とした薬剤開発模式図。 タンパク質のリン酸化に基づいた治療模式図。 疾患原因となるリン酸化タンパク質の探索模式図。 リン酸化状態測定キットの模式図。
符号の説明
201:捕捉用抗体
202:ブロッキング剤
203:蛍光色素A標識リン酸化型ターゲットタンパク質
204:蛍光色素A標識非リン酸化型ターゲットタンパク質
205:蛍光色素A標識夾雑タンパク質
206:リン酸化部位認識抗体
207:蛍光色素B標識抗マウスIgG抗体
208:測定対象試料を蛍光色素Aで標識するための試薬
209:蛍光色素Aで標識済みのコントロール試料
210:目的タンパク質に対する捕捉用抗体を固定化した状態の支持体
301:支持体
302:スポット用シール
303:ピペッター
304:試料及び試薬
305:水滴
306:密封容器
307:インキュベーター
308:洗浄容器
309:蛍光検出装置
310:蛍光色素Aによるスキャン画像
311:蛍光色素Bによるスキャン画像
601:患者
602:患者抽出試料
603:蛍光色素Aにより標識した患者抽出試料
604:コントロール試料(リン酸化型)
605:コントロール試料(非リン酸化型)
606:ネガティブコントロール試料
607:リン酸化状態測定チップ
608:蛍光色素Aで測定したチップ
609:蛍光色素Bで測定したチップ
610:各患者抽出試料のタンパク質発現量の比較
611:各患者抽出試料のリン酸化量の比較
612:各患者抽出試料のリン酸化率の比較および診断結果
801:患者抽出試料
802:薬剤候補物質を添加しないコントロール試料
803:薬剤候補物質
804:リン酸化状態測定チップ
805:蛍光色素Aで測定したチップ
806:蛍光色素Bで測定したチップ
807:各試料のタンパク質発現量の比較
808:各試料のリン酸化量の比較
809:各薬剤候補物質のリン酸化率への影響比較および薬効判定結果
1001:患者からなる被験者グループA
1002:健常者からなる被験者グループB
1003:被験者グループAから採取した試料
1004:被験者グループBから採取した試料
1005:リン酸化状態測定チップ
1006:被験者グループAおよび被験者グループBの各タンパク質リン酸化率
1007:疾患原因タンパク質および疾患判定基準となるリン酸化状態

Claims (9)

  1. 試料中の特定のタンパク質のタンパク質量とリン酸化量を別々の方法で検出し、前記検出したタンパク質量とリン酸化量から当該タンパク質のリン酸化されている割合を計算し、当該タンパク質のリン酸化率を求めることを特徴とするタンパク質分析方法。
  2. 請求項1記載のタンパク質分析方法において、前記特定のタンパク質を夾雑タンパク質から分離して検出し、当該タンパク質のリン酸化部位を特異的に検出することを特徴とするタンパク質分析方法。
  3. 請求項2記載のタンパク質分析方法において、前記特定のタンパク質を、当該タンパク質にそのリン酸化状態に関わらず特異的に結合する分子を固定化した支持体に捕捉し、次に当該タンパク質のリン酸化部位を特異的に検出して当該タンパク質のタンパク質量とリン酸化量を測定することを特徴とするタンパク質分析方法。
  4. 請求項3記載のタンパク質分析方法において、前記特定のタンパク質にそのリン酸化状態に関わらず特異的に結合する分子として抗体を用いたことを特徴とするタンパク質分析方法。
  5. 請求項1記載のタンパク質分析方法において、前記リン酸化量を検出する手法として、タンパク質中のリン酸基に対して特異的に結合する分子を用いたことを特徴とするタンパク質分析方法。
  6. 請求項5記載のタンパク質分析方法において、前記タンパク質中のリン酸基に対して特異的に結合する分子としてリン酸化部位認識抗体を用いたことを特徴とするタンパク質分析方法。
  7. 請求項1記載のタンパク質分析方法において、前記特定のタンパク質のタンパク質量とリン酸化量を別々に検出する手法として、前記特定のタンパク質を含む試料を第一の蛍光物質で標識し、リン酸基に対して特異的に結合する分子を前記第一の蛍光物質とは異なる励起・検出波長を持つ第二の蛍光物質で標識することにより、両者を区別して検出することを特徴とするタンパク質分析方法。
  8. 支持体と、
    特定のタンパク質と、そのリン酸化状態には関わらず特異的に結合する分子と、
    測定対象試料を蛍光色素Aで標識するための試薬と、
    蛍光色素Aで標識済みのコントロール試料と、
    前記蛍光色素Aとは励起・検出波長が異なる蛍光色素Bで標識した、リン酸基を特異的に認識する分子と、
    を含むことを特徴とするタンパク質分析用キット。
  9. 特定のタンパク質を、そのリン酸化状態には関わらず特異的に結合する分子を固定化した支持体と、
    測定対象試料を蛍光色素Aで標識するための試薬と、
    蛍光色素Aで標識済みのコントロール試料と、
    前記蛍光色素Aとは励起・検出波長が異なる蛍光色素Bで標識した、リン酸基を特異的に認識する分子と、
    を含むことを特徴とするタンパク質分析キット。
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