以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
[I.本発明の基本概念1]
本発明では、まず、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素からなる記録層及び金属を含有する反射層を有し、最短マーク長が0.4μm未満である、或いは、35.0m/s以上の記録線速度において記録を行なう光記録媒体において、前記基板上の案内溝のトラックピッチが0.8μm以下、溝幅が0.4μm以下、溝内の記録層膜厚が70nm以下であり、前記記録層を形成する有機色素単層の下記定義による色素保持率が、ISO−105−B02に示される光照射条件のWool scale 5級(耐光性試験)において70%以下であり、前記反射層の空気中での波長λに対する反射率Rの微分値dR/dλ(%/nm)が、300nm以上500nm以下の波長域において3以下であることを特徴とする光記録媒体が提供される(これを以下「本発明の第1の光記録媒体」という場合がある)。
本発明者らは、高密度記録用又は高速記録用の光記録媒体であって、広い記録線速度において良好な記録特性を有する光記録媒体を提供するべく、鋭意検討を行なった。
なお、本発明における“高密度記録”とは、最短マーク長0.4μm未満の密度の記録を前提とする。何故ならば、本発明の解決しようとする課題は、記録マークを短くし、トラックピッチを狭くすることにより高密度化された光記録媒体において、特に顕著であるからである。“高密度記録”においては、過度の記録部形成を低減させることが重要である。
また、本発明における“高速記録”とは、記録線速度35.0m/s以上での記録(DVDを例とすると、DVDの1倍速、即ち、線速3.5m/sの10倍以上の回転数での記録)を意味する。
なお、本発明の第1の光記録媒体の記録が“高速記録”に該当する場合は、必ずしも上述の“高密度記録”、即ち、最短マーク長0.4μm未満の密度の記録でなくてもよい。但し、この場合でも、最短マーク長が通常0.5μm未満、好ましくは0.44μm以下、より好ましくは0.4μm以下の範囲の密度で記録を行なうものであることが望まれる。
本発明者らの検討の結果、記録層(色素層)に使用する色素として好適な色素或いは色素の組み合わせがあることがわかった。即ち、記録層単層の耐光性試験後の色素保持率が70%以下である色素を用いること、或いは、“耐光性の劣る色素”と“耐光性の良好な色素”とを混合して、記録層単層の耐光性試験前後の色素保持率を70%以下となるように混合することである。
しかしながら、かかる高密度で高速記録に好適な色素或いは色素の組み合わせは、ディスクの耐光性の劣化の原因になるという、新たな課題を引き起こすことがわかった。
この新たな課題に対して、本発明者らは更に検討を行なった。その結果、反射層の空気中での波長λに対する反射率Rの微分値dR/dλ(%/nm)を、300nm以上500nm以下の波長域において3以下であるようにすることによって、上記の新たな課題が解決できることがわかった。即ち、「実用上の」耐光性を向上させることができるのである。尚、本発明における「実用上の」耐光性とは、記録層単層での耐光性は十分に良好ではないにもかかわらず、ディスク構成にした時に、Wool scale 5級の光を照射しても、ディスクの記録部分のジッターやエラーが好ましい範囲内に納まるかどうかという指標を意味する。従って、記録層そのものの色素保持率の指標とは区別される。
即ち、本発明の基本概念1においては、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素からなる記録層及び金属を含有する反射層を有し、最短マーク長が0.4μm未満である、或いは、35.0m/s以上の記録線速度において記録を行なう光記録媒体において、前記基板上の溝幅が0.4μm以下、溝内の記録層膜厚が70nm以下であり、記録層を形成する有機色素単層の色素保持率が、ISO−105−B02に示される光照射条件のWool scale 5級(耐光性試験)において70%以下であり、反射層の空気中での波長λに対する反射率Rの微分値dR/dλ(%/nm)が、300nm以上500nm以下の波長域において3以下であることを特徴とするものである。
ここで「色素保持率」とは、300〜800nmの波長域における記録層を形成する有機色素単層の塗布膜の最大吸収波長における、前記耐光性試験前後の吸光度の比率、すなわち{(試験後吸光度)/(試験前吸光度)}×100(%)とする。
尚、基板の溝幅が0.4μm以下とすることにより、トラックピッチが0.8μm以下の高密度化が可能となると共に、十分なプッシュプル信号振幅が確保されているので、上述のように、高速でディスクを回転して記録する場合において、安定に溝上にトラッキングを行なうことが可能となる。尚、溝幅は、十分なプッシュプル信号振幅を確保する上で通常0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。なお、トラックピッチは、通常0.2μm以上、好ましくは0.4μm以上とする。
また、溝内の記録層膜厚を70nm以下とすることにより、過度の記録部の形成が抑制され、クロストークの少ない、良好な“高密度記録”や“高速記録”が可能となる。尚、溝内の記録層の膜厚は通常5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。
上記高速記録においては、通常、レーザー光の照射時間が非常に短小化したパルスで最短マークを形成しなければならない。即ち、かかる高速記録においては、最短マーク長(本実施の形態の例では3Tマーク)を記録するための記録用のレーザー光照射時間が8nsを下回るようになる。このため、かかる高速記録において記録が可能ということは、最短マーク長記録時のレーザー照射時間が8nsを下回る記録条件において、ボトムジッター(ジッター値の最小値)が9%を超えないで記録ができる、或いは、市販の再生装置で再生上問題がない程度に良好なエラーレートを有する、ということを意味する。この、「照射時間が8nsを下回るような短小化したパルスで最短マーク長の記録を行なう」ということは、例えば、DVDの波長域の半導体レーザーの立ち上がり時間が4ns前後であることを考慮すると、いかに厳しい記録条件であるかがわかる。
尚、後述の各実施例及び比較例において用いた3Tマーク長記録用のレーザーの照射パルス幅は、10倍速記録(35m/s)と16倍速記録(56.0m/s)で、それぞれ7.9nsと6.5nsであった。
また、本発明において、「広い記録線速度において良好な記録が可能」とは、3.5m/s〜およそ70m/s(DVDを例とすると、DVDの1倍速記録(3.5m/s)〜およそ20倍速記録(70m/s))にわたり、ボトムジッターが9%を超えないで記録ができる、或いは、市販の再生装置で再生上問題がない程度に良好なエラーレートを有する、ということを意味する。例えばDVD−Rにおいては、記録品質の評価にはジッター値が良い指標である。例えば、現在知られている範囲では、3.5m/s〜28m/s(例えばDVDでは、1倍速記録〜8倍速記録)において、通常8.0%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは6%以下のボトムジッターが得られる記録ができる場合、一般的には特に良好と判定される。
本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題の中の記録マージンの問題は、有機色素媒体の記録速度依存性を小さくすること、更に、短小化パルスに対する応答性を大きくすることにより解決できると考えた。
より具体的には、本発明者らの検討により、“耐光性の劣る色素”を記録層に含むことにより、広い記録速度において良好な記録特性を確保することができること、即ち、耐光性の悪さと高速記録特性、広い記録速度範囲における記録特性とに相関があることがわかった。この効果は、“耐光性の劣る色素”が記録用の光として入射された光エネルギーを、色素の分解により有効に利用することができること(光学モード)に起因するものと考えられる。即ち、かかる色素においては、光学モードが色素の結合の開裂反応に関与し、効率よく光エネルギーが使用され、エッジが急峻な記録マークが形成されて記録特性が向上する可能性があると考えられる。或いは、一般的に、光学モード記録は、反応速度が速いことが知られており、fsec〜psecのオーダーで反応が終了させることが原理的に可能である。この時間オーダーで反応が終了すれば、ディスクの回転速度から考えて、隣接マーク間との干渉は起きない可能性が極めて高い。
一方、記録用の光として入射された光を、熱エネルギーとして色素の反応(分解、溶融を含む)に利用することは、ヒートモード記録と一般的には呼ばれている。
このヒートモード記録には、熱伝導速度による反応速度の限界があり、例えばDVD−Rにおいては、通常nsのオーダーで反応が終了すると考えられる。このオーダーで反応が終了すると、ディスク回転速度と反応速度のオーダーが同程度であることから、隣接マークに熱の影響が及ぶ可能性がある。隣接マークに熱の影響が及ぶと、マーク間でいわゆる熱干渉が起こり、ジッターを悪化させる可能性が高くなる。しかし、このヒートモードは耐光性とは関係しないため、“耐光性の良好な色素”は主としてこのモードで分解が起こり、記録されると考えられる。
更に、かかる“耐光性の劣る色素”に、“耐光性の良好な色素”を混合することにより、記録部分の物理的変化と光学的変化のバランスを巧みにとることができ、よりいっそうの高速記録特性の向上が可能となると考えられる。何故ならば、例えば、上記ヒートモード記録があまり起こらない傾向である“耐光性の劣る色素”で十分な記録変調度が得られない分を、ヒートモード記録が起こる傾向が大きい“耐光性の良好な色素”で補うことが可能だと考えられるからである。
上記“耐光性の劣る色素”は、光で励起された状態からのいわゆる「無輻射遷移」の起こる確率が小さい色素化合物等が該当すると考えられる。例えば、(1)記録再生波長近傍にπ−π*遷移或いは電荷移動遷移等が関与すると考えられる強い吸収帯を有するのみならず、空間配置(configuration)を数多く有さない平面性が良い構造の色素が挙げられる。これに該当するものとしては、π−π*遷移が起こりやすく多くが蛍光を発する、数多くの有機色素が挙げられるが、光ディスクに好適なものとしては、例えば、以下で挙げる特定のシアニン系色素が挙げられる。また、金属キレート色素は耐光性が良好であるといわれてきたが、その金属キレート色素の中でも、(2)中心金属が光によって配位結合から脱離しやすい傾向にある金属キレート色素が、“耐光性の劣る色素”に該当すると考えられる。(2)は、亜鉛のように、中心金属イオンが、本来配位結合に関与すべき最外殻のd軌道に空のd軌道を持たない場合、或いは空のd軌道が少ない場合(本発明において、例えばZn2+は、Znの電子配置3d104s2から(イオン化によって)電子2個がとれるため、3d10電子配置をとる。)、金属−配位子の共有結合性が小さくなる。そして、光励起により配位子に電子が励起され、中心金属が脱離しやすい傾向となる。その結果、吸収帯が短波長側にシフトして、光学定数が変化する場合がある。また、配位結合からフリーになった配位子が、耐光性に劣るものである場合には、その配位子が光学モードで反応する傾向が大きいため、かかる色素の分解反応は(1)のタイプの“耐光性の劣る色素”と同じ様に、光学モード記録の傾向を有すると考えられる。従って、この様な“耐光性の劣る”金属キレート色素の中心金属としては、イオン化により空のd軌道が少ない、もしくは空のd軌道がないような金属が該当する。また、配位子は、MLCT(metal-to-ligand charge transfer)等がおこりやすい分子軌道を有する(例えば、配位子が空の反結合性のπ軌道(anti-bonding orbital)を有する)ことも好ましい。尚、これらの色素の分解における光学モードの寄与の大きさは、蛍光を発するかどうかによっても推測することができる。即ち、蛍光を発する色素は、分解における光学モードの寄与が大きい傾向があると考えられる。また、配位子と中心金属イオンとの共有結合性(配位結合が強い)が小さいという性質は、中心金属イオンがd9或いはd10電子配置をとるものの、構造選択エネルギーが0近傍であることとも関連していると考えることもできる。なお、上記「構造選択エネルギー」については、K. F. Puncell et al., Inorganic Chemistry, 1977年, p.550に従った。
一方、“耐光性の良好な色素”においては、例えば無輻射遷移の起こる確率が大きい色素化合物が挙げられる。かかる色素化合物においては、吸収された光が主として熱エネルギーに変換されるのである。かかる金属キレート色素は、例えばその中心金属イオンのd軌道に、空のd軌道がある、或いは空のd軌道ができうる、第一遷位元素(3d遷移元素)であるアゾ金属キレート色素が挙げられる。これらは、金属イオンの空のd軌道と配位子の軌道との重なりを介して混成軌道が形成され、金属−配位子の共有結合性が大きいことにより、励起状態においても安定なキレート構造が形成される可能性が大きい。即ち、光励起によっても配位子が配位結合からフリーになることがないと考えられる。
上記“耐光性の劣る色素”の例としては、Znを中心金属とするアゾ錯体、或いはクエンチャーを含有しないシアニン系色素などが挙げられる。その他には、配位子の種類によってはCuやNiなどを中心金属とするアゾ錯体も使用できる可能性があるが、Znを中心金属とするアゾ錯体が特に好ましい。かかる色素の例としては、Zn元素1個に対して下記のアゾ系化合物を2個配位する金属キレート色素が挙げられる。
尚、本発明における“耐光性の劣る色素”とは、その色素の単独組成で、本発明に規定する色素保持率が70%以下のものが好ましい。色素保持率がこの範囲内で小さいほど、“耐光性の劣る色素”であるから、上述の理由により、高速記録又は高密度記録での特性に優れる可能性があるので好ましい。
また、本発明における“耐光性の良好な色素”とは、その色素の単独組成で、本発明に規定する色素保持率が70%を超えるものが好ましい。より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。
上記“耐光性の劣る色素”として好ましいアゾ錯体の例としては、下記一般式(1)で表されるアゾ系化合物とZnの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素(以下、適宜「色素(1)」という。)が挙げられる。
一般式(1)中、R1は、水素原子又はCO2R3で示されるエステル基(ここで、R3は、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、シクロアルキル基を表わす。)を表わす。
R2は、直鎖又は分岐のアルキル基を表わす。
X1及びX2のうち、少なくともいずれか一方はNHSO2Y基(ここで、Yは、少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基を表わす。)を表わすとともに、残りは水素原子を表わす。
R4及びR5はそれぞれ独立して、水素原子、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐のアルコキシ基を表わす。
R6、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基を表わす。
尚、前記NHSO2Y基からH+が脱離してNSO2Y-(陰性)基となり、上記一般式(1)で表されるアゾ系化合物は金属イオンと配位結合を形成する。
R3として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数が1以上8以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3以上8以下のシクロアルキル基;である。特に好ましくは、立体障害が小さいという理由から、メチル基、エチル基等の炭素数1若しくは2の直鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3以上6以下のシクロアルキル基;である。
R2として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1以上8以下の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシルメチル基等の炭素数3以上8以下の分岐アルキル基等が挙げられる。
Yは、少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基を表わす。直鎖又は分岐のアルキル基として好ましくは、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基である。
R4、R5として好ましくは、水素原子、炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基である。R4、R5としてより好ましくは、水素原子、炭素数1若しくは2のアルキル基、又は、炭素数1若しくは2のアルコキシ基である。上記アルキル基、アルコキシ基は無置換であることが好ましい。R4、R5として特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、又はメトキシ基である。
R6、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基を表わす。水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基を用いることにより、吸光度や屈折率を所定の値に調整しやすくなるため好ましい。炭素数1若しくは2のアルキル基は、炭素原子に結合している水素原子が他の置換基(例えばハロゲン原子)で置換されていてもよいが、無置換のアルキル基であることが好ましい。炭素数1若しくは2のアルキル基としては、メチル基、エチル基が挙げられる。合成の容易性や立体構造の点から、R6、R7、R8、及びR9として最も好ましいのは、水素原子である。
かかる色素(1)を構成する、一般式(1)のアゾ系化合物(配位子)の具体例としては、以下に示す構造のアゾ系化合物が挙げられる。
一方、上記“耐光性の劣る色素”として好ましいシアニン系色素の例としては、下記一般式(2)で表されるシアニン系色素(以下、適宜「色素(2)」という。)が挙げられる。
一般式(2)中、環A及び環Bはそれぞれ独立して、置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環を表わす。
R10及びR11はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1から5のアルキル基を表わす。
R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1から5のアルキル基を表わす。
R16は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は置換基を有してもよい炭素数1から5のアルキル基を表わす。
Q-は、対アニオンを表わす。対アニオンとしては、BF4 -、PF6 -、金属錯体などの各種のアニオンが挙げられる。
R10及び R11として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数が1以上5以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。特に好ましくは、立体障害が小さいという理由から、メチル基、エチル基、等の炭素数1若しくは2の直鎖アルキル基である。またアルキル鎖の水素原子は、フッ素や後述する置換基によって置換されていてもよい。
R12、R13、R14、及びR15として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1以上5以下の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数3以上5以下の分岐アルキル基等が挙げられる。またアルキル鎖の水素原子は、フッ素や後述する置換基によって置換されていてもよい。
R16として好ましくは、水素原子;Cl,Br等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数が1以上5以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。また、アルキル基を用いる場合には、アルキル鎖の水素原子は後述する置換基によって置換されていてもよい。
尚、環A及び環Bのベンゼン環又はナフタレン環の好ましい置換基としては、
炭素数1から6の直鎖あるいは分岐のアルキル基、
炭素数1から12の芳香族あるいは複素のアリール基(炭素数1から12の炭素環式あるいは複素環式アリール基)、
炭素数1から6のアルコキシ基、
炭素数1から6のエステル基、
炭素数1から6のジアルキルアミノ基、
ニトロ基、
炭素数1から6のチオアルキル基、
炭素数1から6のアルキルスルホニル基、
炭素数1から6のトリアルキルシリル基、
スルホン酸基、
リン酸基、
カルボン酸基、
シアノ基、
ハロゲン原子
などが挙げられる。
また、R10ないしR16のアルキル基への好ましい置換基としては、
炭素数1から12の芳香族あるいは複素のアリール基(炭素数1から12の炭素環式あるいは複素環式アリール基)、
炭素数1から6のアルコキシ基、
炭素数1から6のエステル基、
炭素数1から6のジアルキルアミノ基、
ニトロ基、
炭素数1から6のチオアルキル基、
炭素数1から6のアルキルスルホニル基、
炭素数1から6のトリアルキルシリル基、
スルホン酸基、
リン酸基、
カルボン酸基、
シアノ基、
ハロゲン原子、
などが挙げられる。
上記置換基として好ましくは、炭素数1から12の炭素環式あるいは複素環式アリール基である。より好ましくは炭素数6から12の炭素環式アリール基である。記録特性の観点から、さらに好ましくはベンゼン環である。
記録特性の面から最も好ましいのは、R12〜R16に用いられるアルキル基の一部において、アルキル鎖の水素をベンゼン環で置換することが好ましい。具体的には、ベンゼン環を置換基として用いる方法として、下記(α)〜(γ)の組み合わせを挙げることができる。立体障害等を考慮すると、(α)及び(β)の組み合わせで用いることが好ましい。
(α)R12、R13をアルキル基とした場合に、R12、R13のいずれか又は両方のアルキル鎖の水素をベンゼン環で置換する。
(β)R14、R15をアルキル基とした場合に、R14、R15のいずれか又は両方のアルキル鎖の水素をベンゼン環で置換する。
(γ)R16をアルキル基とした場合に、R16のアルキル鎖の水素をベンゼン環で置換する。
かかる色素(2)の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。
なお、記録層中の上記“耐光性の劣る色素”は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。中でも、上述の色素(1)及び/又は色素(2)を少なくとも一種用いることが好ましい。この場合、上述の色素(1)のみを何れか一種又は二種以上用いてもよく、上述の色素(2)のみを何れか一種又は二種以上用いてもよく、更には、上述の色素(1)何れか一種又は二種以上と、上述の色素(2)何れか一種又は二種以上とを、適宜組み合わせて用いてもよい。勿論、上述の色素(1)及び/又は色素(2)に加えて、更に別の“耐光性の劣る色素”を組み合わせて用いてもよい。
一方、上記の色素(1)や色素(2)と組み合わせることが好ましい“耐光性の良好な色素”としては、具体的には、各種のアゾ系化合物が2個配位した、Zn以外の遷移金属(例えばV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu)を中心金属とする含金属アゾ錯体が挙げられる。配位結合を形成する中心金属イオンは、2価イオンであることが好ましい。
好ましくは、下記一般式(3)、(4)、(5)、(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアゾ系化合物と、Znを除く3d遷移元素の金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素(以下、各々の一般式に該当するアゾ系化合物を有するアゾ金属キレート色素を、それぞれ「色素(3)」「色素(4)」「色素(5)」「色素(6)」という場合がある。)が挙げられる。
一般式(3)及び(5)中、R20は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1から6の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1から6の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基を有するエステル基を表わす。
一般式(4)及び(6)中、R17は、置換基を有してもよい炭素数1以上6以下のアルキル基を表わす。
一般式(3)及び(4)中のR21ないしR27、並びに、一般式(5)及び(6)のR18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1以上6以下の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基を表わす。R18及びR19は、互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(3)、(4)、(5)、(6)中、X1及びX2のうち、少なくともいずれか一方はNHSO2Y基(ここで、Yは、少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基を表わす。)を表わすとともに、残りは水素原子を表わす。
尚、前記NHSO2Y基からH+が脱離してNSO2Y-(陰性)基となり、上記一般式(3)、(4)、(5)、(6)で表わされるアゾ系化合物は、金属イオンと配位結合を形成する。)
R17として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数が1以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。
R18、R19として好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1以上6以下の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基が挙げられる。またR18、R19は、互いに結合して環状のシクロヘキシル基等の環状アルキル基を形成してもよい。
R20として好ましくは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基;メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、ブチルエステル基、イソブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロヘキシルエステル基等の炭素数1以上6以下の直鎖もしくは環状アルキル基を有するエステル基である。工業的な合成のしやすさ、及び記録特性等を総合的に考慮すると、R20として特に好ましくは水素原子である。
R21ないしR27として好ましくは、水素原子;メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1以上6以下の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基;が挙げられる。
X1、X2、及びYとしては、一般式(1)で表わされるアゾ系化合物と同様とすればよい。
尚、上記一般式(3)、(4)、(5)、(6)のR17〜R27のアルキル基に置換していてもよい置換基としては、
炭素数1から12の芳香族あるいは複素のアリール基(炭素数1から12の炭素環式あるいは複素環式アリール基)、
炭素数1から6のアルコキシ基、
炭素数1から6のエステル基、
炭素数1から6のジアルキルアミノ基、
ニトロ基、
炭素数1から6のチオアルキル基、
炭素数1から6のアルキルスルホニル基、
炭素数1から6のトリアルキルシリル基、
シアノ基、
ハロゲン原子
などが挙げられる。
かかるアゾ金属キレート色素を構成する一般式(3)、(4)、(5)、(6)のアゾ系化合物(配位子)の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。
なお、上記“耐光性の良好な色素”も、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。中でも、上述の色素(3)、色素(4)、色素(5)及び/又は色素(6)を少なくとも一種用いることが好ましい。この場合、上述の色素(3)、(4)、(5)及び(6)のうち何れか一つに該当するもののみを、一種又は二種以上用いてもよく、上述の色素(3)、(4)、(5)及び(6)のうち、複数のものをそれぞれ一種又は二種以上ずつ、組み合わせて用いてもよい。勿論、上述の色素(3)、色素(4)、色素(5)及び/又は色素(6)に加えて、更に別の“耐光性の良好な色素”を組み合わせて用いてもよい。
尚、上記のように、記録特性にその効果が明確となる色素の耐光性の指標は、以下に説明する通りである。即ち、記録層を構成する“耐光性の劣る色素”と“耐光性の良好な色素”とを併用する場合には、これら色素の混合比率を以下のように制御する。つまり、かかる記録層単層(記録層を形成する有機色素単層)の色素保持率がISO−105−B02に示される光照射条件、即ち、Wool scale 5級において70%以下となるような比率で混合する。
この値よりも耐光性が良い場合には、分解において、十分な光学モードが発揮されないために、色素の分解におけるヒートモード(熱分解反応)の寄与が大きく、それ故十分な記録特性の向上が望めない可能性がある。
尚、上記記録層単層の色素保持率は、貼り合わせたディスクを貼り合わせ部分で剥離し、現れた基板と色素とを有するディスク切片においても、下記実施例に記載する方法で評価することが可能である。
以上述べたように、高速記録に好適な上記のような色素の組み合わせは、その一方で、ディスクの耐光性を劣化させるおそれがある。
かかる“耐光性の劣る色素”の耐光性の向上の解決策として、一般的には、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していてもよい。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
しかしながら、かかるクエンチャーを添加することにより、記録マークのエッジの急峻性が失われたり、製造工程が複雑になるおそれがある。
本発明者らは、かかる添加剤を積極的に用いることなく、「実用上の」耐光性を向上させる検討を行なった。その結果、波長300nm≦λ≦500nmにおける空気中での波長に対する反射率Rの微分値(dR/dλ)が(dR/dλ)≦3である反射層を用いることにより、記録層の耐光性を向上させることができる、という知見を得たのである。
その理由としては、以下のように考えられる。即ち、金属の自由電子モデルに基づけば、金属はある特定の光周波数を照射した際、金属内電子が集団的に共鳴する現象が起こる。この共鳴が起こると、屈折率(n)、ひいては反射率が特定の周波数で急激に変化する。この電子集団共鳴が起こると、色素との界面において光励起による、化学反応(触媒反応も含む)が進みやすくなり、色素が劣化する可能性が高い。ゆえに、ある特定の光周波数で急峻に反射率変動が起こることは耐光性の観点から望ましくない。この結果から、反射率の絶対値のみならず、反射率の相対値が急激に変化しない条件、すなわち、上記波長範囲において、(dR/dλ)≦3である反射層を選ぶことが必要なのである。かかる条件を満たす材料としては、例えば、バンド間遷移が300nm〜500nmの範囲にないものなどが挙げられる。より好ましくは(dR/dλ)≦2、更に好ましくは(dR/dλ)≦1である。尚、dR/dλの規定の波長範囲を300nmから500nmとする理由は、以下で説明する。
かかる条件を満たす反射層の例としては、Cu、Au及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素(これを以下「特定元素」ということがある。)を含有するとともに、反射層中におけるこれら特定元素の合計の比率が50at%以上である反射層を挙げることができる。この比率が50at%を下回る場合には、前記の波長範囲での(dR/dλ)≦3を満たさないおそれがあり、従って、十分な耐光性を得ることができないおそれがある。また、かかる反射層における上記特定元素以外の元素として、好ましくは、Ag、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ti、Zn、Zr及び希土類金属よりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。中でも、反射層におけるこれらの元素の比率が、上記特定元素の比率とあわせて100at%となることが好ましい。特定元素以外の元素の種類並びにその混合量は、前記の(dR/dλ)≦3を満たすように調整することが好ましい。
また、300nm〜500nmでの空気中の反射率が20%〜70%の反射層も好ましい。この要件は、従来のように、単に記録再生光波長での反射層が高い反射層を使用するということばかりを意味するものではない。即ち、記録再生光波長では80%以上の高反射率でありながら、300nm〜500nmの波長域での空気中の反射層が20%〜70%である反射層を用いることにより、記録層の「実用上の」耐光性がより向上するというものである。
かかる要件を満たす反射層が記録層の耐光性を向上させる理由としては、以下のように考えられる。そもそも、一般的に実施されている光ディスクの耐光性試験(ISO−105−B02)は、太陽光暴露を想定した試験方法である。太陽光は、300nm〜500nm、特に、400nm〜500nmで強度が飽和に達することが知られており、また、光粒子のエネルギーは、光の振動数に比例することから、光粒子のエネルギーも、長波長の光粒子のエネルギーよりも高い。高いエネルギーを持つ光粒子は、色素の結合を破壊する閾値を越す確率が高くなるため、ディスクの耐光性を向上させるためには、この波長の光を過度に色素に吸収させないことが望ましい。つまり、この波長範囲での反射率が小さい反射層を用いることが好ましいのである。そこで、上記波長範囲において反射率が小さい反射層を使用すれば、色素記録層−反射層間の多重反射の光量が低減されるために、耐光性の悪い色素を有する記録層の劣化が抑制されると考えられる。この様にして、「実用上の」耐光性をより向上させることができるのである。
図3(a)は、主な金属材料の屈折率(n)の波長分布を表わすグラフであり、図3(b)は、主な金属材料の消衰係数(k)の波長分布を表わすグラフであり、図3(c)は、主な金属材料を用いて形成した反射層(膜厚120nm)について計算した空気中での反射率の波長分布を表わすグラフである。なお、反射層の膜厚120nmは、反射率が十分飽和する膜厚である。また、本明細書において「空気中での」反射率とは、入射光を空気を介して直接反射層の膜面に照射した時の、もどり光強度の入射光強度に対する割合を意味する。
図3(a)から、一般的に反射層として使用されているAgに対して、Au、Cu、及びAlの屈折率(n)が350nm〜500nmの領域において大きいことがわかる。特にAu及びCuの屈折率(n)は、この波長域で安定して1前後である。また、図3(c)から、Au及びCuの反射率は30%〜70%と、Agに比べてかなり小さいことがわかる。
尚、図3(a),(b)における金属材料の屈折率(n)及び消衰係数(k)の値としては、下記の文献に掲載されている値を使用した。
Springer-Verlag Heidelberg, Landolt Bornstein - Group III Condensed matter, Volume 15, subvolume B, 1985, p.222-236 (Ag-Ca), p.237-248 (Cd-Eu), p.280-291 (Ni-Pb) (ISSN:1616-9549)
かかる条件を満たす反射層の例としては、Cu、Au及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素(これを以下「特定元素」ということがある。)を含有するとともに、反射層中におけるこれら特定元素の合計の比率が50at%以上である反射層を挙げることができる。この比率が50at%を下回る場合には、前記の好ましい反射率の範囲を満たさないおそれがある。また、かかる反射層における上記特定元素以外の元素として、好ましくは、Ag、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ti、Zn、Zr及び希土類金属よりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。中でも、反射層におけるこれらの元素の比率が、上記特定元素の比率とあわせて100at%となることが好ましい。
更に、本発明者らは検討の結果、例えば、従来実用化されている銀又は銀合金では、記録層及び反射層の記録前後の変化が低速記録時とは異なるために、35.0m/s以上の高速記録が困難となる可能性があることがわかった。これは、特に35.0m/sを超える記録においては、記録のため照射されるレーザー光のパルス幅が短小化されることにより、反射層の塑性変形性、熱伝導度、吸収や屈折といった光学定数の違いがより顕著に記録特性に反映する傾向があると考えられるからである。従って、かかる高速記録用途の反射層の選択には、従来の低速記録における場合よりも、いっそうの注意を要する。しかし、低速記録での記録特性の実績があること、また、比較的安価なことにより銀或いは銀合金を反射層とする光記録媒体が広く実用化されているのが現状である。
本発明者らは鋭意検討の結果、高速(特に35.0m/s以上)の記録線速度、ひいては低速から高速までの広い記録線速度における記録特性は、反射層により差異が見られ、例えば、銅、金、ないしアルミニウムを主成分とする反射層を用いることにより良好となることを見出した。
高速で記録することが記録特性にもたらす影響は様々ある。特に記録層が有機色素からなる場合には、金属や半導体からなる記録膜媒体などと比べて記録感度、ジッターなどの記録速度依存性が非常に顕著となる。そのため、有機色素を記録層とする媒体の反射層に要求される条件としては、ある値以上の高反射率を有し、且つ、より高い熱伝導を持つ反射層が望まれる。反射率が高い金属反射膜とは、即ち、記録波長における屈折率の実数部nが一定値以下、且つ、虚数部kが大きい反射層であることである。実用的な反射率を得るための反射層の屈折率は、具体的には0.0<n<1.0かつk>2.0である。
また、熱伝導率は高いことが好ましい。上記の反射率が高い金属の例で言えば、Ag(320W/M・K)、Cu(300W/M・K)、Au(230W/M・K)、Al(158W/M・K)などが挙げられる。
これらの金属、あるいはその合金を用いることにより、高速記録が良好な媒体を得られる可能性がある。将来的に記録波長が短波長化した場合にも、上記金属の組み合わせを最適化することにより、高い反射率と熱伝導率を両立できる良好な記録特性を得られる可能性が高い。
また、有機色素を記録層に用いる媒体においては、長マーク(6Tマーク以上)を記録した場合に、波形のボトムラインが水平ではなく、傾斜する傾向(以下、波形歪みと呼ぶ場合がある。)がある。その波形歪みがボトムジッターの劣化の原因になっている場合がある。低速記録でボトムジッターが良好であるにもかかわらず、高速記録でのボトムジッターが悪い、或いは、その逆の場合もある。本発明者らは、かかる波形歪みが記録層の膜厚方向の温度分布と関係があり、それは、記録層と反射層の膜厚、光学定数と反射層の熱伝導度の組み合わせを最適化することにより低減することができ、その結果、3.5m/s〜35.0m/s、ひいては3.5m/s〜およそ70m/sという広い記録線速度において、良好な記録が可能となると考えている。
つまり、上記の理由から、熱的光学的に記録用レーザー光を無駄なく利用できる反射層を有することによって、広い記録線速度範囲において、記録マークの波形が良好になる可能性があるのである。
尚、上記「反射層が銅、金、アルミニウムを主成分とする」とは、反射層が銅、金、もしくはアルミニウムをそれぞれ単独で、または、銅、金、及びアルミニウムの任意の二種以上の組み合わせを合計で、50原子%以上含む、ということを意味する。耐侯性、膜の構造、及び、光学特性を最適化するために、銅、金以外の元素を含有することが好ましい。このような元素としては、例えば、Al、Ag、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ti、Zn、Zr及び希土類金属よりなる群が挙げられる。これら元素の含有量は、0.1〜40原子%であることが好ましい。このような元素を含有する材料としては、例えば、CuAg、CuZrAg等が好ましい。
また、銅、金、及びアルミニウムは実施例で説明するように、波長300nm〜500nmにおける空気中での波長に対する反射率の微分値dR/dλ(%/m)が3以下である。これに対して、300nm〜500nmにおける純銀の反射率の微分値は、最大値で5を超えており、実用上の耐光性から好ましくないが、例えば銀を含む金属反射膜においても銀の組成比を少なくして、本発明のdR/dλ値が3以下とすることは可能である。
以上説明したように、波長300nm〜500nmにおける空気中での波長に対する反射率の微分値dR/dλ(%/nm)が3以下である反射層と、耐光性の良くない色素を含む記録層とを組み合わせることにより、初めて、35m/s以上という極めて高速の記録特性を持ちながら実用に耐えうる「実用上の」耐光性を有する光記録媒体が得られるのである。
上述のように、本発明で規定する特定の波長域において(dR/dλ)≦3を満たすように反射層を形成するためには、スパッタリングターゲットを選定することにより、反射層がCu、Au及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するとともに、前記元素の合計の比率が、前記反射層中で50原子%(「原子%」を「at%」と記載する場合がある。)以上となるようにすることが好ましい。Cu、Au及びAlの中では、少なくとも反射率の観点から、CuとAlが好ましい。
本発明者らの検討により、Alはスパッタした膜の島状構造が、高温高湿度試験や記録時の昇温過程において成長し、膜の平滑性が低下する可能性があり、その結果、記録部分のジッターを低下させてしまう場合があることがわかった。
以上のことから、反射層は、下記の組成(A)で表わされるCu合金を少なくとも含有する薄膜であることが好ましい。
[組成(A)]
50at%≦Cu≦97at%
3at%≦Ag≦50at%
0.05at%≦X≦10at%
(ここで、Xは、Zn、Al、Pd、In、Sn、Cr、Niから成る群より選択される少なくとも1種の元素を表わす。以下の記載ではこのXを「第三元素種」という場合がある。但し、Cu、Ag、及びXの合計量は100at%以下である。)
具体的に、上記組成(A)において、Cuの含有率は、通常50at%以上、好ましくは65at%以上、更に好ましくは80at%以上、また、通常97at%以下、好ましくは95at%以下、更に好ましくは90at%以下の範囲である。
また、上記組成(A)において、Agの含有率は、通常3at%以上、好ましくは5at%以上、また、通常50at%以下、好ましくは30at%以下の範囲である。
本発明で規定する特定の波長域特定の波長域において(dR/dλ)≦3を満たすように反射層を形成するためには、Agの含有量を50at%以下とすることが好ましい。また、後述する実施例より裏付けられるように、本発明の記載するような、高速記録に耐え得る有機色素層を記録層としながら、反射層との組み合わせにより十分な耐光性を向上させる効果をより確実に確保するためには、Agの含有量を30at%以下とすることが好ましい。
また、上記組成(A)において、Xの含有率は、通常0.05at%以上、好ましくは0.1at%以上、また、通常10at%以下、好ましくは5at%以下の範囲である。尚、Xとして2種以上の金属元素が選択される場合には、それらの合計が上記範囲を満たすことが好ましい。
第三元素種Xの含有率は、0.05at%以上とすることが好ましい。十分な効果を安定して得やすくするためには、0.1at%以上とすることがより好ましい。特にZnは融点が低い故に、ターゲットをスパッタした時に分量がスパッタされない場合があり得るので、より安定な組成として0.1at%以上とすることが好ましいと考えられる。
また、第三元素種Xの含有率は、10at%以下とすることが好ましい。10at%以下であれば、高い反射率が確保し易くなる。十分高い反射率を確保し易くするためには、第三元素種Xの含有量を5at%以下とすることがより好ましい。
尚、(dR/dλ)に対する第三元素種Xの影響は殆ど無いと考えられる。つまり、第三元素種Xは、本発明の耐光性向上効果のために好ましいというよりは、むしろ、反射率の微調整や反射層の保存安定性を確保するために好ましいものである。
上述の第三元素種Xのうち、Zn、Al、Pd、In、Snが更に好ましい。中でも、Zn、Al、Pdは、十分な反射率を確保し易くなるので好ましい。特にZnは、本発明者らの検討により、添加量が少なくてもより高い反射率が得られる可能性があることが分かった。InとSnも、Zn、Al、Pdと同様、上述の効果が期待できる。特にZn、In、Snは、Cu合金をアタックするO2成分と、導電性酸化物であるZnO、In2O3、SnO2を形成する。この導電性酸化物ZnO、In2O3、SnO2はn型半導体であり、Cuと接触電位差を発生する。その結果、酸素イオン(O2-)はCuよりもZn、In、Sn側に引き寄せられ易くなり、Cuの酸化を遅延するものと考えられる。
なお、第三元素種Xとして低融点・低沸点の元素を使用する場合、以上のような高反射率であり保存安定性に優れたCu合金を少なくとも含有する薄膜(反射層)を形成(製造)するためには、以下のようなスパッタリングターゲットを使用することが好ましい。
例えば、第三元素種XとしてZn(融点419.6℃、沸点907℃)を選択する場合には、前述の組成(A)よりも0.01〜2.5at%程度多く、Znをスパッタリングターゲット中に含有させるようにすることが好ましい。何故ならば、低融点・低沸点の元素は揮発し易いためである。スパッタの際のターゲットと基板との間隔を他の場所よりも近くしたりすることにより揮発を抑制する方法もあるが、より安定に無駄なく所定の反射層を得るためには、スパッタリングターゲットが下記の組成(B)を満たすことが特に好ましい。組成(B)をみてわかるように、反射層の組成とターゲットの組成とを同一又は近い範囲とすれば、組成(A)を有する反射層を製造しやすくなる。
[組成(B)]
50at%≦Cu≦97at%
3at%≦Ag≦50at%
0.05at%≦X≦10at%
(ここで、Xは、Zn、Al、Pd、In、Sn、Cr、Niから成る群より選択される少なくとも1種の元素を表わす。但し、Cu、Ag、及びXの合計量は100at%以下である。)
ここで、Cu、Ag、及び第三元素種Xの好ましい含有量の範囲は、上記反射層の組成として説明した組成(A)と同様とすればよい。
尚、Xの融点は、先に述べたZn以外には、Alが660.4℃、Pdが1550℃、Snが231.97℃、Inが156.6℃である(岩波理化学辞典 第5版、岩波書店、1998年参照)。
上記のXのうち、特にZn、Al、Pd、In、Snが好ましい。
上記スパッタリングターゲットは、上述のように融点の差が小さい。従って、前述の特許文献4(国際公開第WO2002/021524号パンフレット)に記載された母合金の作製を省略できるようになる。つまり、以下のような工程が可能となる。すなわち、高周波溶解炉においてCu及びAgを所定の割合で坩堝に入れ、真空溶解し、前記Cu及びAgが十分溶解された後に、第三元素種Xを添加する。又は、高周波溶解炉においてCu、Ag及び第三元素種Xを所定の割合で坩堝に入れ、真空溶解をすればよい。このとき、第三元素種XとしてAl、Cr、Ni、Pd、In、Snを添加するときは、Cu、Agと共に所定の割合で添加しておけばよい。一方、第三元素種XとしてZnを添加するときは、Cu及びAgが十分溶解された後に添加することが好ましい。これは蒸気圧の高いZnを最初から装填すると揮発により組成が規定値とならない傾向にあるためである。
ここで、炉内の溶解温度は1100℃〜1200℃程度に設定し、坩堝の材料としてはC、Al2O3、MgO又はZrO2等を使用する。次いで溶湯の鋳型への鋳込みを行ない、溶融物を鋳型内で冷却し、凝固させてインゴットを作製し、そのインゴットを鋳型から取り出して常温まで冷却する。次にインゴットの最上部の押湯部を切断除去し、インゴットを圧縮機により圧延して、板状の合金を作製する。その後、前記の板状の合金を製品形状にワイヤーカットし、製品の前面を研磨して、最終的に本発明のCu合金のスパッタリングターゲットを作製するのである。
尚、上記の母合金の作製工程が必要となる場合は、通常、主元素(上記スパッタリングターゲットではCu)の融点と添加元素の融点とが数百℃程度離れているような、著しく高い場合である。仮に主元素Cuの溶湯(約1000℃)へ融点1668℃のTiを添加する場合、固体拡散により合金化が進行するが、その速度は遅く、均一に歩留まりよく合金化することは困難である。もし、CuとTiの量の割合を1:1にすると、相関により融点は960℃となる。その為、主元素溶湯へ容易に合金化を行なうことが可能となる。しかし、融点が大きく異なっていても、母合金化が必要でないものもある。それは、XとしてのPdである。溶湯温度1100℃のAgにPd(融点1554℃)を母合金化せずに投入しても、拡散速度が速いために、容易に合金化が進行する。
以上述べたスパッタリングターゲットは、後述のように優れた反射層を提供するものである。このため、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した反射層のみの観点から考えると、当該反射層を用いる光記録媒体の記録層に含有させる有機色素は特に制限されない。このような有機色素としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ金属キレート系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。これらの有機色素のうち、生産性、性能、実績等の種々の要素を考慮すると、アゾ金属キレート系色素やフタロシアニン系色素を用いることが好ましい。アゾ金属キレート系色素の好ましい例としては、上記所定の構造を有するアゾ化合物とNi、Znの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素を挙げることができる。但し、上記反射層は“耐光性の悪い色素”を含有する記録層と組み合わせて用いることで、所定の効果が発揮されていることは前述の通りである。
次に記録層、及び反射層に好ましい記録再生波長における物性を示す。記録を実施するレーザー波長において、記録するドライブ又は光学系の制約により、適切な反射率を維持することが望ましい。また、例えばDVD−Rでは、通常、一般的に記録後の屈折率(n)が下がることから記録前の記録層の屈折率(n)が高いこと、吸収がある一定量より小さいことが、記録後の十分な信号振幅を確保するための必要条件となる。また、反射層が薄いと透過光が増加し信号に寄与しない成分が増加することから、反射層はある一定膜厚以上の膜厚が必要とされる。
このためには、記録層において、記録再生波長での屈折率(nw)がnw≧1.4を、記録再生波長での消衰係数(kw)がkw≦0.3を、溝内の膜厚(dw)が0.05≦(nwdw/λ)≦0.3をそれぞれ満たすことが好ましい。且つ、反射層が半透明膜として使用されるのでない場合には、反射層において、膜厚(dr)が50nm≦dr≦250nmを満たすことが好ましい。nwの上限は、通常4.0である。kwの下限は、通常0.01である。
記録層及び反射層が上記の光学定数及び膜厚を満たすことにより、ドライブで記録するために必要な、記録再生光波長における高い反射率、及び十分な記録後の信号振幅を得ることができる。
[II.本発明の実施の形態]
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第1の光記録媒体は、基板上に上述した記録層及び反射層を有するものであれば、その他の構成については特に制限されるものではないが、好ましい構成としては、図1(a),(b)に表わす構成に代表されるような、2枚の基板間に記録層及び反射層を狭持した構成と、図1(c)に表わす構成に代表されるような、1枚の基板上に反射層及び記録層が積層されてなる構成とが挙げられる。更には、図2(a),(b)に示すような、片面2層タイプの構成にも本発明が適用できる。なお、図1(a)〜(c)及び図2(a),(b)は何れも、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成を示す模式的な断面図である。
図1(a)に示す光記録媒体100は、基板(1)101と、記録層(1)102と、反射層(1)103と、保護コート層(1)104と、接着層105と、保護コート層(2)106と、反射層(2)107と、記録層(2)108と、基板(2)109とが順に積層された層構成を有する。この様な光記録媒体100は、基板(1)101、記録層(1)102、反射層(1)103、保護コート層(1)104をこの順に積層した貼り合わせ用ディスク11と、基板(2)109、記録層(2)108、反射層(2)107、保護コート層(2)106をこの順に積層した貼り合わせ用ディスク12とを、保護コート層(1)104及び保護コート層(2)106を対向させて接着層105で貼り合わせることにより構成される。そして、基板(2)109側からレーザー光110を照射することにより、記録層(1)102において、また、基板(1)101側からレーザー光111を照射することにより、記録層(2)108において、それぞれ情報の記録・再生が行なわれる。
図1(b)に示す光記録媒体200は、基板(1)201と、反射層(1)202と、保護コート層(1)203と、接着層204と、保護コート層(2)205と、反射層(2)206と、記録層207と、基板(2)208とが順に積層された層構成を有する。この様な光記録媒体200は、基板(1)201、反射層(1)202、保護コート層(1)203をこの順に積層したダミーディスク21と、基板(2)208、記録層207、反射層(2)206、保護コート層(2)205をこの順に積層した貼り合わせ用ディスク22とを、保護コート層(1)203及び保護コート層(2)205を対向させて接着層204で貼り合わせることにより構成される。そして、基板(2)208側からレーザー光210を照射することにより、記録層207で情報の記録・再生が行なわれる。
図1(c)に示す光記録媒体300は、基板301と、反射層302と、記録層303と、バリア層304と、透明樹脂層305とが順に積層された層構成を有する。この光記録媒体300においては、基板301側ではなく透明樹脂層305側からレーザー光310を照射することにより、記録層303において情報の記録・再生が行なわれる(膜面入射タイプ)。
図2(a)に示す光記録媒体400は、基板(1)401と、記録層(1)402と、反射層(1)403と、中間層404と、記録層(2)405と、反射層(2)406と、接着層407と、基板(2)408とが順に積層された層構成を有する。また、図2(b)に示す光記録媒体500は、基板(1)501と、記録層(1)502と、反射層(1)503と、接着層(中間層)504と、バリア層508と、記録層(2)505と、反射層(2)506と、基板(2)507とが順に積層された層構成を有する。これらの光記録媒体400,500においては、基板(1)401,501側からレーザー光410,510を照射することにより、記録層(1)402,502及び記録層(2)405,505において情報の記録・再生が行なわれる。
そして、図1(a)に示す光記録媒体100の記録層(1)102及び記録層(2)108、図1(b)に示す光記録媒体200の記録層207、図1(c)に示す光記録媒体300の記録層303、図2(a)に示す光記録媒体400の記録層(1)402及び記録層(2)405、図2(b)に示す光記録媒体500の記録層(1)502及び記録層(2)505として、上述した本発明の記録層を適用することができる。また、それらの記録層と組み合わせて、図1(a)に示す光記録媒体100の反射層(1)103及び反射層(2)107、図1(b)に示す光記録媒体200の反射層(1)202及び反射層(2)206、図1(c)に示す光記録媒体300の反射層302、図2(a)に示す光記録媒体400の反射層(1)403及び反射層(2)406、図2(b)に示す光記録媒体500の反射層(1)503及び反射層(2)506として、上述した本発明の反射層を適用することができる。
なお、図1(a)〜(c)の光記録媒体100,200,300及び図2(a),(b)の光記録媒体400,500の構成に、種々の変形を加えることも可能である。例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の各層の他に別の層を設けたり、一部の層を省略したり、各層の積層順を変更したりしてもよい。具体例としては、図1(b)の光記録媒体200において、反射層(1)202及び保護コート層(1)203を省略し、基板201を接着層204によって直接、貼り合わせ用ディスク22に貼り合わせる構成としてもよい。更には、図1(a),(b)の光記録媒体100,200において、保護コート層(1)104,203及び保護コート層(2)106,205を設けず、その替わりに保護コート層の機能を有する接着層105,204を用いて接着してもよい。
また、その他の変形例として、基板の鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂層や、無機系薄膜等を成膜してもよい。また、記録再生光の入射面ではない側の面に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ或いは各種筆記用具に記入(印刷)が可能な印刷受容層を設けてもよい。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体における基板の材料としては、基本的には記録層に至るまでの厚さ方向において、記録光及び再生光の波長で透明であればよい。
このような透明な厚み部分を有する材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるもの、ガラスからなるもの、ガラス上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設けたもの等を使用することができる。
なお、高生産性、コスト、耐吸湿性などの点からは、射出成型ポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、耐吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
記録層に接して樹脂基板又は樹脂層を設け、その樹脂基板又は樹脂層上に記録再生光の案内溝やピットを有していてもよい。このような案内溝やピットは、基板の成形時に付与することが好ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を用いて付与することもできる。案内溝がスパイラル状の場合、この溝ピッチが0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。
溝深さは、AFM(原子間力顕微鏡)測定値で、通常50nm以上である。DVD−Rのように赤色半導体レーザー光では通常100nm以上であるが、特に、低速の1倍速(以下、「1×」のように記載する場合がある。)から高速の8×の記録速度の範囲で記録可能であるためには、溝深さは120nm以上である。また、溝深さは通常200nm以下であり、好ましくは180nm以下である。溝深さが上記の下限値より大きい場合は、低速で変調度が出やすく、溝深さが上記の上限値より小さい場合は、充分な反射率を確保しやすい。溝幅は、AFM(原子間力顕微鏡)測定値で、通常0.10μm以上であり、好ましくは0.20μm以上である。また、溝幅は0.40μm以下が好ましい。尚、DVD−Rのように赤色半導体レーザー光での高速記録用途には、溝幅は0.28μm以上0.34μm以下とすることが更に好ましい。溝幅が上記の下限値より大きい場合には、プッシュプル信号振幅が充分に得られやすい。また、基板の変形は記録信号振幅に大きく影響する。このため、溝幅を上記の下限値より大きくすれば、8×以上の高速で記録する場合において、熱干渉の影響を抑え、良好なジッターを得ることが容易となる。更に、記録パワーマージンが広くなり、レーザーパワーの変動に対する許容値が大きくなる等、記録特性や記録条件が良好となる。溝幅が前記の上限値より小さい場合には、1×等の低速記録において、記録マーク内の熱干渉を抑えることができ、良好なジッター値が得られやすい。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体には、アドレス情報、媒体の種類の情報、記録パルス条件、及び最適記録パワー等の情報を記録することができる。これらの情報を記録する形態としては、例えば、DVD−R、DVD+Rの規格書に記載されているLPP(Land Pre-Pit)やADIP(Adress in Pre-groove)のフォーマット等を用いればよい。
記録層の材料、混合の割合及び膜厚については上述の通りである。尚、溝間部の膜厚は、溝内の膜厚よりも小さいことが好ましい。
記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。また厚みの均一な記録層が得られるという点からは、塗布法より真空蒸着法の方が好ましい。
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱或いは溶媒蒸気にあてる等の処理を行なってもよい。
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
真空蒸着法の場合は、例えば有機色素と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置された坩堝に入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、坩堝を加熱して記録層成分を蒸発させ、坩堝と向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより、記録層を形成する。
記録層は、前述の、記録層の安定や耐光性向上のための化合物の他に、通常CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザーや、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザー、或いは波長410nmや515nmなどのいわゆるブルーレーザーなど、複数の波長の記録光に対し、各々を用いての記録に適する色素を併用して、複数の波長域でのレーザー光による記録に対応する光記録媒体とすることもできる。
併用可能な色素としては、上記特定の特性又は構造を有するアゾ金属キレート色素と同系統の、アゾ系色素又はアゾ系金属キレート色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ポルフィリン系色素、テトラピラポルフィラジン系色素、インドフェノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、インダンスレン系色素、インジゴ系色素、チオインジゴ系色素、メロシアニン系色素、ビスピロメテン系色素、チアジン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、インドアニリン系色素等が挙げられ、他系統の色素でもよい。また、色素の熱分解促進剤としては、例えば、金属系アンチノッキング剤、メタロセン化合物、アセチルアセトナート系金属錯体等の金属化合物が挙げられる。
更に、本発明の記録層には、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
反射層の材料及び組成は、上述の通りである。
反射層を形成する方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
反射層の膜厚は、記録特性や工業生産等を考慮して以下の範囲とする。つまり、反射層の膜厚は、通常50nm以上、好ましくは60nm以上、一方、通常300nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下とする。
また、反射層の膜の荒さ(粒径)は金の薄膜並かそれ以下の程度に小さい方が、耐侯性や反射率の観点から好ましい。特に記録再生光波長が短い高密度記録の場合、アルミニウムの場合にはその荒さが大きくなりやすいので、合金化により平滑性を向上させる工夫が必要である。また、反射層の膜の荒さを低減するためには、スパッタ時のアルゴン圧を小さくするなどの工夫も挙げられる。
反射層の上に形成する保護層の材料としては、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、SiO2、SiN4、MgF2、SnO2等が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。UV硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独で或いは混合して用いてもよいし、1層だけではなく多層膜にして用いてもよい。
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
保護層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは3μm以上が好ましい。一方、保護層の膜厚は、通常100μm以下、好ましくは30μm以下である。
記録・再生に使用するレーザーに特に限定はないが、例えば、可視領域の広範囲で波長選択のできる色素レーザー、波長633nmのヘリウムネオンレーザー、最近開発されている波長680、660、650、635nm付近の高出力半導体レーザー、波長532nmの高調波変換YAGレーザー、405nm付近の青色半導体レーザー等が挙げられる。中でも、軽量性、取り扱いの容易さ、コンパクト性、コスト等の点で、半導体レーザーが好適である。本発明の実施の形態に係る光記録媒体は、これらの中から選択される一波長又は複数波長において、高密度記録及び再生が可能となる。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体への記録は、通常、基板の両面又は片面に設けた記録層に1μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行なう。レーザー光が照射された部分の記録層は、レーザー光エネルギーの吸収による昇温の結果、分解、発熱、溶融等の記録層の熱的変化が起こり、位相差や光学定数等の光学特性が変化する。
記録された情報の再生は、再生用のレーザー光を照射して、光学特性の変化が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読みとることにより行なう。
[III.本発明の基本概念2]
なお、上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物とZnの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素は、上記[I.本発明の基本概念1]で述べた光記録媒体(本発明の第1の光記録媒体)に制限されず、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素を含有する記録層及び金属を含有する反射層を有し、最短マーク長が0.4μm未満である、或いは、35.0m/s以上の記録線速度において記録を行なう光記録媒体において、前記記録層の有機色素として広く用いることが可能である。
即ち、本発明の別の光記録媒体は、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素を含有する記録層及び金属を含有する反射層を有し、最短マーク長が0.4μm未満である、或いは、35.0m/s以上の記録線速度において記録を行なう光記録媒体であって、前記記録層の有機色素が、上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物とZnの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素であるものである(これを以下「本発明の第2の光記録媒体」という場合がある。)。本発明の第2の光記録媒体によれば、特にライフ特性(長期保存安定性、及び高温高湿下における保存安定性)に優れるという利点が得られる。
なお、本発明の第2の光記録媒体における、上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物の詳細や具体例、及び、当該アゾ系化合物とZn金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素の詳細や具体例は、上記[I.本発明の基本概念1]の欄で説明したものと同様である。
なお、本発明の第2の光記録媒体においても、当該光記録媒体の反射層を、上記組成(A)で表される材料を含有するように構成することが好ましい。こうした構成の光記録媒体によれば、反射率の低下を最小限に抑制でき、かつライフ特性に優れるという利点が得られる。
なお、本発明の第2の光記録媒体における、上記組成(A)の詳細や具体例も、上記[I.本発明の基本概念1]の欄で説明したものと同様である。
[IV.本発明の基本概念3]
また、上述の組成Bで表される材料を少なくとも有するスパッタリングターゲットも、上記[I.本発明の基本概念1]で述べた光記録媒体(本発明の第1の光記録媒体)の反射層の形成に制限されず、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素を含有する記録層及び金属を含有する反射層を有する光記録媒体において、前記反射層を形成する際に広く用いることが可能である。
即ち、本発明のスパッタリングターゲットは、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素を含有する記録層及び金属を含有する反射層を有する光記録媒体において、前記反射層を形成する際に用いられるスパッタリングターゲットであって、上述の組成Bで表される材料を少なくとも有するものである。本発明のスパッタリングターゲットによれば、反射率の低下を最小限に抑制でき、かつライフ特性に優れる高品質な媒体を提供できることに加えて、さらに安価に製造できるという利点が得られる。
なお、本発明のスパッタリングターゲットにおける、上述の組成Bの詳細や具体例は、上記[I.本発明の基本概念1]の欄で説明したものと同様である。
なお、本発明のスパッタリングターゲットは、前記有機色素が、上述の一般式(1)で表わされるアゾ系化合物とNi,Znの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素である光記録媒体の反射層の形成に、とりわけ好適に用いられる。このような光記録媒体の反射層の形成に本発明のスパッタリングターゲットを用いることにより、従来の製造プロセスを、ほとんど変更することなく媒体を安価に製造できるという利点が得られる。
[V.本発明の基本概念4]
また、上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物とZnの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素は、同心円状又はスパイラル状の溝を有する基板上に、少なくとも有機色素を含有する記録層及び金属を含有する反射層を有し、最短マーク長が0.4μm未満である、或いは、35.0m/s以上の記録線速度において記録を行なう光記録媒体の前記有機色素として、広く好適に用いることが可能である。
上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物とZnの金属イオンとからなるアゾ金属キレート色素を、以下「本発明の色素」と呼ぶ。本発明の色素を上述の高速記録又は高密度記録の光記録媒体に用いることにより、従来と比較して低ジッター、低エラーレート、及び広記録マージンを達成できるという利点が得られる。
なお、本発明の色素が有する、上記一般式(1)で表わされるアゾ系化合物の詳細や具体例、及び、本発明の色素の詳細や具体例は、上記[I.本発明の基本概念1]の欄で説明したものと同様である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[単層色素保持率の測定法]
以下の各実施例及び比較例において、特に断らない限り、色素保持率の測定は以下の手順で行なった。
まず、鏡面加工を施したポリカーボネート製の基板を用意した。測定対象となる色素混合物の濃度1.4重量%のテトラフルオロプロパノール(以下「TFP」という。)溶液を用いて、以下の各実施例及び比較例における色素層の作製と同様にスピンコートを実施した。得られた色素単層の小片を切り取り、分光光度計(UV−VIS)を用いて、吸光度の波長分散の測定を行なった。得られた吸光度の最大値を初期値とした。
次に、耐光性試験機(東洋精機製サンテストXLS+)を用いて、Wool scale 5級を満たす積算照射を測定し、装置を校正した。その照射強度の光を上述の色素単層の小片に照射し、再び、分光光度計で吸光度の波長分散を測定した。ここで得られた吸光度の最大値と、上述の初期値との比率を色素保持率とした。以下の各実施例及び比較例では、2200Wのキセノンランプを放射強度550W/m2で40時間照射することが、Wool scale 5級を満たす設定条件であった。
[反射率の測定法]
以下の各実施例及び比較例において、特に断らない限り、反射層の空気中の反射率の測定は、以下の手順で行なった。即ち、反射層の材料をスライドガラスにスパッタしたサンプルを用い、膜面から反射率測定光を照射した(装置:日立U3010型分光光度計、測定モード:反射測定モード、スキャンスピード:300nm/min、スリット:1nm)。得られた反射率の測定値より、波長λ=300nm〜500nmに対するdR/dλを算出し、その最大値dR/dλ(max)を求めた。
[実施例1]
トラックピッチ0.74μm、溝幅320nm、溝深さ160nmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート製の支持基板上に、色素A(下記構造式(a)に示すアゾ系化合物2個とニッケルとからなるアゾ金属キレート色素)40重量%と色素B(下記構造式(b)に示すアゾ系化合物2個と亜鉛(2価イオン:Zn2+)とからなるアゾ金属キレート色素)60重量%からなる記録層(溝内膜厚50nm)を、吸光度(Optical Density:空気をリファレンスとして測定した、波長598nmにおける吸光度)0.65を示す厚みとなるように、スピンコート法により設けた。尚、塗布溶液は、濃度1.3重量%のTFP溶液であり、スピンコートの回転数は1000rpm〜2500rpmであった。次いで、その上に銅(Cu)をスパッタ法により堆積させ、120nmの厚みのCu反射層を形成した。スパッタの際に、通常良く知られている反射層の成膜条件よりもアルゴン圧を小さくして、投入パワーを高くした。更に、この反射層の上に、紫外線硬化性樹脂(日本化薬(株)製KAYARAD SPC−920)をスピンコートし硬化させて10μmの保護層を形成した。こうして得られた積層体を2枚用意して、UV硬化型接着剤(ソニーケミカル製SK7100)を用いて、基板が外側になるように2枚貼り合わせることにより、光記録媒体を作製した。
尚、色素Aと色素Bそれぞれの色素単層塗布膜の色素保有率は、それぞれ90.4%と0%であり、記録層単層の色素保持率は56%であった。
また、上述の手法により、Cu反射層単層の反射率及びdR/dλの値を測定した。その結果をそれぞれ図8及び図9(a)のグラフに示す。Cu反射層単層の300nm〜500nmの反射率は29%〜56%であった(図8)。また、同波長域におけるdR/dλ(max)の値は0.36であった(図9(a))。
得られた光記録媒体に対し、波長650nm、開口数0.65の記録再生装置でDVD-R Specification for General Ver.2.1 やDVD+R Specification Ver.1.20 に準拠した記録パルスストラテジー条件を用いて、記録速度56.0m/s(DVD−Rの16倍速)において、最短マーク長が0.4μmであるEFMプラス変調のランダム信号記録を行なった。なお、3Tマーク長記録用のレーザーの照射パルス幅は、6.5nsであった。そして、同じ評価機を用いて記録した部分の信号を再生し、マージン(ジッターの記録パワーマージン及びジッターのアシンメトリーマージン)を測定した。また、「実用上の」耐光性の評価(キセノン照射前後の記録特性評価)のための記録は、8倍速記録を行ない、その記録部分のジッター(data to clock jitter)の最小値(最も良好なジッター特性値。以下「ボトムジッター」という。)、及びPI(Parity of Inner-code)エラーの最大値(以下「PI max」という。)をDVD−ROM検査機(株式会社シバソク製 LM2 20A)で測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図4(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図4(b)のグラフにそれぞれ示す。図4(a),(b)から明らかなように、Cu反射層を用いた本実施例の光記録媒体は、ボトムジッターが7%と極めて良好であった。また、ジッターが9%以下となるアシンメトリーマージンが18%程度、ジッターが8%以下となるアシンメトリーマージンが10%以上であり、アシンメトリー5%近傍でもジッターが8%前後と、非常に良好であった。
また、ボトムジッターの耐光性試験前後の測定結果を図4(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図4(d)のグラフにそれぞれ示す。図4(c),(d)から明らかなように、Cu反射層を用いた本実施例の光記録媒体は、キセノン照射時間40時間(Wool scale 5級)でも、ボトムジッターはわずかに増加したものの、PI maxが全く増加せず、後述のAg反射層の場合に比べて、「実用上の」耐光性が非常に改善されていることがわかる。
[実施例2]
実施例1において、反射層の材料を金(Au)に変え、その膜厚を90nmに変えた他は、同様の手順により光記録媒体を作製した。得られた光記録媒体に対して、実施例1と同様な条件で記録、再生を実施し、耐光性試験前後のボトムジッター及びPI maxを測定した。
ボトムジッターの測定結果を図4(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図4(d)のグラフにそれぞれ示す。図4(c),(d)から明らかなように、Au反射層を用いた本実施例の光記録媒体は、Cu反射層の場合よりはその効果は若干劣るものの、良好な結果が得られた。
また、上述の手法により、Au反射層単層の反射率及びdR/dλの値を測定した。その結果をそれぞれ図8及び図9(b)のグラフに示す。Au反射層単層の300nm〜500nmの反射率は37%〜50%であった(図8)。また、同波長域におけるdR/dλ(max)の値は0.72であった(図9(b))。
[比較例1]
実施例1において、反射層の材料を銀(Ag)に変え、その膜厚を120nmに変えた他は、同様の手順により光記録媒体を作製した。得られた光記録媒体に対して、実施例1と同様な条件で記録、再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)、耐光性試験前後のボトムジッター及びPI maxを測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図4(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図4(b)のグラフにそれぞれ示す。図4(a),(b)から明らかなように、Ag反射層を用いた本比較例の光記録媒体は、Cu反射層の場合に比べて、ボトムジッターが悪く、また、アシンメトリーのマージンも狭いことがわかる。
また、ボトムジッターの測定結果を図4(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図4(d)のグラフにそれぞれ示す。図4(c),(d)から明らかなように、Ag反射層を用いた本比較例の光記録媒体は、Wool scale 5級の条件(キセノン照射40時間)において、ボトムジッター、エラー(PI max)共に悪化しており、Ag反射層ではWool scale 5級条件に耐えられない、即ち、「実用上の」耐光性に劣ることがわかる。尚、エラー(PI max)は、DVD−Rの規格では280個を超えないことが要件として記載されている。
また、上述の手法により、Ag反射層単層の反射率及びdR/dλの値を測定した。その結果をそれぞれ図8及び図9(c)のグラフに示す。Ag反射層単層の300nm〜500nmの反射率は4%〜96%であった(図8)。また、同波長域におけるdR/dλ(max)の値は5.6であった(図9(c))。
[実施例3]
実施例1において、色素Aを、下記構造式(c)に示すアゾ系化合物を2個配位するNi錯体色素C(65重量%)(Niは2価イオン:Ni2+)に変え、色素Bを、下記構造式(d)に示すシアニン系色素D(35重量%)に変えた以外は、同様の手順により光記録媒体を作製した。なお、記録層の溝内膜厚を電子顕微鏡による断面解析で確認すると、25nmであった。また、Cu反射層の膜厚は、実施例1と同様120nmであった。この光記録媒体に対して、実施例1と同様な条件で記録、再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)、耐光性試験前後のボトムジッター及びPImaxを測定した。
尚、色素Cと色素Dのそれぞれの色素単層塗布膜の色素保有率は、それぞれ97.0%と0%であり、記録層単層の色素保持率は68.2%であった。
記録パワーマージンの測定結果を図5(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図5(b)のグラフにそれぞれ示す。図5(a),(b)から明らかなように、Cu反射層を用いた本実施例の光記録媒体では、ジッターが9%以下であるパワーマージンが約10mwと極めて安定なパワーマージンが実現されている。また、アシンメトリーが+6.0%を超えても9%以下のジッターを有し、9%以下のジッターのアシンメトリーマージンは約20%という非常に広いマージンを示している。これら、マージンが極めて良好であるということは、56m/s(16倍速)という極めて高速の記録においても、記録マークの熱的な劣化(蓄熱や熱干渉)が小さいことを意味する。
また、ボトムジッターの測定結果を図5(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図5(d)のグラフにそれぞれ示す。図5(c),(d)から明らかなように、Cu反射層を用いた本実施例の光記録媒体では、後述のAg反射層の場合に比べて、「実用上の」耐光性がはるかに向上することがわかる。そして、色素単層では色素保持率が0%である耐光性がはるかに劣る色素Dを含みながら、Wool scale 5級の「実用上の」耐光性を有する光ディスクを実現できたことがわかる。
[比較例2]
実施例3において、反射層の材料を銅から銀に変え、膜厚120nmのAg反射層を設けた以外は、同様の手順により光記録媒体を作製した。この光記録媒体に対して、実施例1と同様な条件で記録、再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)、耐光性試験前後のボトムジッター及びPI maxを測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図5(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図5(b)のグラフにそれぞれ示す。図5(a)から明らかなように、Ag反射層を用いた本比較例の光記録媒体では、Cu反射層の場合に比べて、記録パワーマージンがはるかに狭いことがわかる。
また、ボトムジッターの測定結果を図5(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図5(d)のグラフにそれぞれ示す。Ag反射層を用いた本比較例の光記録媒体は、図5(c)では40時間後のボトムジッターが悪化しており、図5(d)ではエラー(PI max)が280をはるかに超えている。このことから、Ag反射層を用いた本比較例の光記録媒体は、Wool scale 5級に耐えられないことがわかる。
[実施例4]
実施例3の光記録媒体に対して、記録速度を35.0m/s(10×相当)に変え、3Tマーク長記録用のレーザーの照射パルス幅を7.9nsに変えた他は、実施例1と同様な条件で記録・再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)を測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図6(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図6(b)のグラフにそれぞれ●印で示す。図6(a)より、35.0m/sで記録を行なった本実施例においても、56.0m/s記録の場合と同様に、ボトムジッター6.0%の非常に良好な記録が可能なことがわかる。
[比較例3]
比較例2の光記録媒体に対して、記録速度を35.0m/s(10×相当)に変え、3Tマーク長記録用のレーザーの照射パルス幅を7.9nsに変えた他は、実施例1と同様な条件で記録・再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)を測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図6(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図6(b)のグラフに、何れも中黒の△印で示す。図6(a),(b)より、ボトムジッター6.7%と比較的良好であるものの、実施例4のCu反射膜を用いた光記録媒体と比較すると、相対的にパワーマージンが劣っていることがわかる。
[比較例4]
実施例1において、“耐光性の劣る”色素Bを、下記構造式(e)で表わされるアゾ系化合物を2個配位する、“耐光性の良好な”Ni錯体色素E(Niは2価イオン:Ni2+)に変え、色素Aと色素Eとを50重量%:50重量%の比率で混合して用いた以外は、実施例1と同様の手順により光記録媒体を作製した。得られた記録層の溝内膜厚は30nmであった。また、Cu反射層の膜厚は120nmであった。
尚、色素E単層塗布膜の色素保持率は87.3%であり、この記録層単層の色素保持率は89.0%であった。
この光記録媒体に対して、実施例1と同様な条件で記録、再生を実施し、マージン(記録パワーマージン及びアシンメトリーマージン)、耐光性試験前後のボトムジッター及びPI maxを測定した。
記録パワーマージンの測定結果を図7(a)のグラフに、アシンメトリーマージンの測定結果を図7(b)のグラフにそれぞれ示す。図7(a),(b)から明らかなように、反射層をCu反射層にしても、あまり特性の改善は見られないことがわかる。ボトムジッターは9%以上であり、パワーマージン、アシンメトリーマージン共に、極めて狭いことがわかる。特に、アシンメトリーマージンが悪く、−5%というかなり低い記録パワーにおいてもすでに熱的劣化が見られ、ジッターがボトムジッターよりも1%以上も劣化している。尚、アシンメトリーマージンは、5%においてジッター9%以下であることが好ましいとされている。
また、ボトムジッターの測定結果を図7(c)のグラフに、PI maxの測定結果を図7(d)のグラフにそれぞれ示す。図7(c),(d)に明らかなように、「実用上の」耐光性は非常に良好であった。
また、上記記録層上の反射層を、比較例1と同じAg反射層に変えた場合には、耐光性試験でのボトムジッターは6.9%から7.0%に、耐光性試験でのPI maxは5から8にそれぞれ変化し、非常に良好な「実用上の」耐光性を示した。
以上の結果から、耐光性の良好な色素のみを含む記録層を用いた本比較例の光記録媒体においては、16倍速記録という極めて高速の記録では熱的な劣化が大きく、良好な記録マークが形成されないことがわかる。その劣化の程度は大きく、たとえCu反射層を使用したとしても、改善することは難しいといえる。
[1倍速記録試験]
上述の実施例1、実施例3、比較例1、比較例2、比較例4の光記録媒体について、記録速度を1倍速に変えた他は、実施例1と同様な条件で記録・再生を実施し、ボトムジッターを測定した。結果を下記表1に示す。
一般に、ボトムジッターは9%以下が必要とされている。表1から明らかなように、実施例1、実施例3、比較例1、比較例2、比較例4の光記録媒体は、いずれも1倍速記録ではボトムジッターが9%以下と、良好な記録特性を示している。それにもかかわらず、高速記録では、上記に記載したように優劣が見られるのである。
以上の結果から、本発明の規定を満たす各実施例の光記録媒体は、1倍速、10倍速、16倍速と、非常に広い記録速度において良好な記録特性を示すことがわかる。
[実施例5]
上述の手法により、アルミニウム(Al)を材料とした反射層(Al反射層単層)の反射率及びdR/dλを測定した。その結果をそれぞれ図8及び図9(d)のグラフに示す。図9(d)から明らかなように、Al反射層単層のdR/dλの値は、300nm〜500nmの範囲においては常に0.1以下であった。
[実施例6]
前記の[反射率の測定法]と同様に、Cu87.2原子%/Ag12.8原子%(以下適宜「CuAg12.8」と記す。)と、Cu86.4原子%/Ag12.9原子%/Pd0.7原子%(以下適宜「CuAg12.9Pd0.7」と記す。)とを、それぞれ別のスライドガラスにスパッタし、膜面側から反射率を測定した。尚、スパッタの条件は実施例1と同様とした。
図10は、CuAg12.8及びCuAg12.9Pd0.7の反射率の測定結果を、[実施例5]等において得られたAg、Au、Cuの測定結果とともに示すグラフである。図10において、横軸は波長λ(nm)を表わし、縦軸は反射率(%)を表わす。図10より、CuAg12.8とCuAg12.9Pd0.7とは、何れもCuとは明らかに異なる光学特性を有し、CuよりもAgに反射率がやや近くなっていることが分かる。
また、これらCuAg12.8及びCuAg12.9Pd0.7のdR/dλを計算した。図11(a),(b)はそれぞれ、CuAg12.8及びCuAg12.9Pd0.7のdR/dλの計算結果を示すグラフである。図11(a),(b)からわかるように、全体的にノイズが高くなっているが、AgのdR/dλの最大値5.6のピーク波長が存在する300〜500nmの波長域(図9参照)において、微弱ながらdR/dλのノイズの高まりが見られる。
ここで、比較例1のAgの反射率RAgと実施例1のCuの反射率RCuとから、Cu(1-X)AgX(原子%:at%)の各波長での反射率R(Cu(1-X)AgX)を、下記式により計算した。
R(Cu(1-X)AgX)=
{(1−X)/100}×R(Cu)+(X/100)×R(Ag)
その結果、AgとCuとの混合比を任意とした場合における図10のような反射率の波長依存性を示すスペクトルが得られる。そして、それぞれ所定のAg及びCuの混合比率において、図11(a)と同様にしてdR/dλを計算して300〜500nmにおけるdR/dλの最大値を求めた。ここで、Agの含有量を横軸に、上記手順により求めた300〜500nmの波長域でのdR/dλの最大値を縦軸にプロットして得られたグラフを図12に示す。同図に示すように、300nm〜500nmに見られるdR/dλの最大値とAg量との相関があることがわかる。そして、同図から、dR/dλが3となるのは、Agがおよそ50at%となる場合であると言える。
一方、CuAg12.8における300〜500nmでのdR/dλの最大値の実測値(図11(a)参照)、Cu(100at%)における300〜500nmでのdR/dλの最大値の実測値(図9(a)参照)、及びAg(100at%)における300〜500nmでのdR/dλの最大値(図9(c)参照)の実測値から予想すると、dR/dλが3となるのはAg量がおよそ50at%の場合となる。つまり、実測結果も先の計算結果とよい一致を示すと言える。つまり、Agに由来するdR/dλの300〜500nmの波長域の最大値は、AgにCu、Al、Au等、300〜500nmの波長域のdR/dλ値が小さい金属を添加することによって、低下させることができることがわかる。従って、Agの含有量を50at%以下とすれば、300〜500nmの波長域におけるdR/dλの最大値を3以下に制御できることがわかる。
十分な耐光性を得ることができるかどうかについて、図4(c)のキセノン照射時間40時間で、反射層がCuの場合と反射層がAgの場合とで比較を行なった。先に示したように、300〜500nmの波長域におけるdR/dλの最大値は、Agの含有量とほぼ線形の相関を有する。このため、耐光性がAgの含有量とほぼ線形な相関を有すると仮定して、プレーヤーで再生可能とされるジッター値13%をジッター劣化の許容限界とした。そして、反射層をCu(100at%)とした光記録媒体、及び反射層をAg(100at%)とした光記録媒体における、キセノン照射を40時間行った後のボトムジッター値を図13にプロットした。つまり、図13は、上記仮定を行った下での、Cu(100-X)AgXにおけるXの値(Agの含有量:at%)とボトムジッター値との関係を示すグラフである。図13より、良好なジッター特性が得やすくなるAgの含有量の上限は、およそ30at%であると考えられる。
次に、実施例1において、Cu反射層をCuAg12.8とCuAg12.9Pd0.7にそれぞれ変えた以外は同様にして光記録媒体(以下、それぞれ「CuAg12.8DVD−R」及び「CuAg12.9Pd0.7DVD−R」という場合がある。)を作製した。そしてこれら光記録媒体に対して8倍速の記録を施した後、実施例1と同様に耐光性試験(但し、キセノン照射時間は120時間とした。)を行なった。結果を図14(a)(ジッター値)及び図14(b)(PIエラー)のグラフに示す。何れも劣化が全く見られず、極めて良好であり、上記銅合金がCu反射層と同様の効果を有することが明らかとなった。
更に、CuAg12.8DVD−R及びCuAg12.9Pd0.7DVD−Rについて、保存安定性試験を行なった。保存安定性試験(ライフテストという場合もある。)は、恒温恒湿槽(エスペック社製SH−641)を使用し、光記録媒体を80℃、相対湿度85%中で875時間保持することにより行なった。上記のCuAg12.8DVD−R及びCuAg12.9Pd0.7DVD−Rの高温高湿での保存安定性試験の結果を、図15(a)(ジッター値)及び図15(b)(PIエラー)のグラフに示す。図15(a),(b)中、CuAg12.8DVD−Rを「CuAg12.8」と示し、CuAg12.9Pd0.7DVD−Rを「CuAg12.9Pd0.7」と示している。何れも劣化が非常に小さく、極めて良好であった。
[実施例7及び実施例8]
実施例6のCuAg12.8反射層、或いはCuAg12.9Pd0.7反射層を、CuAg12.8Zn1.1反射層とCuAg12.9Zn10.6反射層に変えた以外は、全く同様にして光記録媒体を作製した(以下、CuAg12.8Zn1.1DVD−R(実施例7)、CuAg12.9Zn10.6DVD−R(実施例8)という場合がある。)。
それぞれの光記録媒体に対して、実施例6と同様にして耐光性テスト(結果を図14(a)及び図14(b)に示す。)と、高温高湿での保存安定性試験(結果を図15(a)及び図15(b)に示す。)を実施した。
CuAg12.8Zn1.1を反射層に有する場合には、耐光性テストにおいても保存安定性試験においても、実施例6のCuAg12.8を反射層に有する場合及びCuAg12.9Pd0.7を反射層に有する場合と同様に、極めて良好な特性を示した。それに対して、CuAg12.9Zn10.6を反射層に有する場合には、高温高湿での保存安定性が、他の光記録媒体と比較して若干劣る傾向が見られた。その理由はよくわからないが、改良の余地はあるものと考えられる。
[実施例9]
以下に説明する真空中での溶融方法に従い、スパッタリングターゲットの作製を行なった。
まず、高周波溶解炉において、Cu及びAgを所定の割合を坩堝に入れ、十分に真空引きを行ないながら溶解した。このとき、第三元素種XとしてPd(実施例6)、Al、Cr、Ni(実施例9)、及びIn、Sn(後述の実施例10)を添加するときは、Cu、Agと共に所定の割合で添加しておいた。一方、第三元素種XとしてZn(実施例7、8、9及び後述の実施例10)を添加するときは、Cu及びAgが十分溶解された後に添加した。これは蒸気圧の高いZnを最初から装填すると揮発により組成が規定値とならないためである。
炉内の溶融温度は、1100〜1200℃とした。坩堝は、C、Al2O3、MgO又はZrO2等を使用した。
溶湯の鋳込みは、アルミナ若しくはマグネシウム系タルクを内面に塗布してあるFe若しくはC製の鋳型に鋳込むことにより行なった。
鋳型は引け巣を防止するため、押湯部を注入前に予めヒーターで300℃〜500℃程度に熱しておき、下部から上部に向けて一方向凝固させた。
溶融物を鋳型内で冷却、凝固させてインゴットを作製し、そのインゴットを圧延機により圧延して、90(mm)×90(mm)×8.1(mm)の板状の合金を作製した。
その後、電気炉で400℃〜500℃でArガスを封入した状態で、該板状合金を1〜1.5時間程度熱処理し、その後更にプレス機により反りを修正した。
そして、修正した板を製品形状にワイヤーカットした。耐水研磨紙を用いて製品の前面を研磨して、表面粗度を調整し、最終的にCu合金のスパッタリングターゲットを作製した。
なお、真空度は1.3×10-2Pa(1×10-4Torr)以下の高真空に保った。これは、Ag、Cuは溶湯に酸素を含有し易いために、減圧下での溶湯保持において脱酸を目的とするものである。しかし、減圧下においてはAgの揮発が進行するため、状況に応じ種々の雰囲気調整を行なった。
上記の方法にて、下記表2に示す組成を有するスパッタリングターゲットを作製した。
上記組成のターゲット並びにスパッタ膜の保存安定性及び反射率の傾向を調べるために以下の実験を行なった。つまり、下記のスパッタ条件でガラス基板の上に通常よりも厚目の膜厚である150nmのスパッタ膜を形成した。そして、膜面側から650nmの光を照射したときの反射率を測定した。その反射率の測定は、成膜直後と、80℃で相対湿度が80%の高温高湿下に24時間保持した後とで実施した。成膜直後の反射率の測定結果により、反射率とターゲット組成との相関を知ることができる。また、高温高湿下に24時間保持した後と、成膜直後の反射率の変化を測定することにより、極めて厳しい保存安定性のテストの結果が得られる。尚、上記の反射率の測定に使用した分光器は島津製作所製UV−3100PCであった。
<スパッタ条件>
スパッタ装置 = アルバック製(ULVAC)BC4341
到達真空度 = 5×10-4Pa
Arガス圧 = 0.3Pa
スパッタ時投入パワー(最大値) = 200W
成膜直後の反射率の測定結果、高温高湿下に24時間保持した後の反射率の測定結果、及び反射率変化の測定結果を表2に示す。表2中、「time0」と表示されているものが「成膜直後の反射率の測定結果」を示す。また、表2中、「80℃80%RH24hr後」と表示されているものが「高温高湿下に24時間保持した後の反射率の測定結果」を示す。そして、表2中、「反射率変化」と表示されているものが「反射率変化の測定結果」を示す。
表2において、Cu、Agの二元系に比べて、第三元素種Xの添加による保存安定性の向上の効果が明確に現れている。即ち、例えば、Cu87.2Ag12.8では反射率の低下が26.8%と大きくなる傾向にあるのに対して、Cu84.8Ag12.7Al2.5、Cu86.1Ag12.8Zn1.1、Cu85.9Ag12.8Cr1.3、Cu85.3Ag12.8Ni1.2の反射率の低下は、それぞれ5.96%、2.23%、5.05%、3.28%と、小さくなっている。また、第三元素種Xとして、表2においては、Al、Zn、Crの場合により高い反射率(90%強)が得られ、特にそれらの中では、AlとZnが高反射率で好ましいことが分かる。一方、Alで検証したように、CuAgの合金に第三元素種Xを添加する際に、第三元素種Xの含有量が10at%を超えると、反射率変化が大きい傾向となることがわかる。
尚、第三元素種Xとしては、一種類以上ならば何種類でもよく、二種類以上の金属元素を用いる場合には、その総和が10at%以下に設定すればよい。
[実施例10]
実施例9と同様にして、下記の表3に記載された組成を有するスパッタリングターゲットを作製した。更に、そのスパッタリングターゲット並びにそのスパッタ膜の耐酸化性及び耐腐食性を調べるために以下の実験を行なった。つまり、実施例9と同様にガラス基板上にスパッタ膜を設けた。そして、ガラス基板上に設けられた上記スパッタ膜の反射率を実施例9と同様の方法で測定した後、濃度が100ppmのH2Sガス雰囲気に2時間保持した。そして、保持後の反射率を再度実施例9と同様の方法で測定した。尚、反射率測定の650nmの光は、基板側から入射した。以上の実験で得られた結果を表3に示す。
表3において、「スパッタ膜成膜直後」と表示されているものが、ガラス基板上にスパッタ膜を成膜した直後の反射率の測定結果を示している。また、表3において、「暴露後」と表示されているものが、H2Sガス雰囲気に2時間保持した後の反射率の測定結果を示している。そして、表3において、「変化率」と表示されているものが、「スパッタ膜成膜直後」と「暴露後」とにおける反射率の変化率を示している。
表3の結果より、CuにAgを10at%以下含有させた状態で第三元素種Xを5at%以下含有させると、H2Sガス暴露という極めて過酷な酸化及び腐食試験にもかかわらず、反射率の変化率の多くが数%と非常に小さい値に制御できることがわかる。なお、第三元素種Xの5at%以下の含有量は、従来用いられてきた添加量よりも少ない。このことからも、第三元素種Xを5at%以下でも、上記反射層において耐酸化性向上効果及び耐腐食性向上効果が十分に発揮されることが分かる。