JP2004115549A - インクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い濃度と、優れた耐擦過性、耐マーカー性とを備え、異なる色の画像とが隣接した境界におけるブリードの発生が抑制された高品位なカラー画像を形成し得るインクセット等の提供。
【解決手段】第1のインクと、これと色の異なる第2のインクとを有し、これらのインクでカラー画像を形成するのに用いられるインクセットであって、第1のインクは、顔料粒子表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と水性媒体とを含み、有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体との反応物を含み、第2のインクは色材を含み、第1のインクと混合されたときに第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる水性インクであるインクセット。
【選択図】 なし
【解決手段】第1のインクと、これと色の異なる第2のインクとを有し、これらのインクでカラー画像を形成するのに用いられるインクセットであって、第1のインクは、顔料粒子表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と水性媒体とを含み、有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体との反応物を含み、第2のインクは色材を含み、第1のインクと混合されたときに第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる水性インクであるインクセット。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の色のインクを用い、これらのインクを組み合わせて記録媒体にカラー画像を記録する際に使用するインクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関し、とりわけ、普通紙に対して、充分な画像濃度を有し、鮮明で高品質な画像が得られ、更に、印字物の耐水性、耐光性に優れる画像を与えると共に、黒色画像とカラー画像とが隣接した場合にも、その境界領域におけるブリードが十分に緩和されたカラー画像を与えるインクセット、これを用いた画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷インクの着色剤として、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた顔料が広く用いられている。インクジェット記録用のインクにおいても、インクジェット記録画像の堅牢性のより一層の向上を目指して、インク中の色材に顔料を採用することの検討が活発となってきている。ところで、顔料をインクジェット用の水性インクの色材として用いるためには、水性媒体中に顔料を安定して分散させることが肝要である。一般に、顔料を水性媒体中に均一に分散するためには、分散剤、例えば、樹脂分散剤が用いられている。かかる樹脂分散剤は、一般に、水性媒体に対して顔料を安定に分散させるための親水性基と、疎水性である顔料表面に物理的に吸着するための疎水性部とを有する水溶性樹脂が用いられている。このような顔料インクによって得られるインクジェット記録画像は、樹脂分散剤の存在により、耐擦過性や耐マーカー性等の点で、比較的良好な品位を備えている。
【0003】
一方、高品位なインクジェット記録画像を安定して形成するためには、インクジェット記録ヘッドの微細なノズルから、インクが安定な液滴として吐出させることが重要である。具体的に述べれば、例えば、インクジェット記録ヘッドのオリフィスの乾燥によって、該オリフィスにおいてインクが固化しないことが安定なインクジェット記録を行なう上で重要である。しかし、上記したような樹脂分散剤によって水性媒体中に顔料を分散させているインクジェット用の顔料インクは、この点において課題を抱えている。即ち、上記したようなインク中には、顔料表面に吸着せずに、インク中に溶解状態で存在している樹脂分散剤が相当量あると考えられており、そのような樹脂分散剤がインクジェット記録ヘッドのオリフィス等に付着することによってノズルの目詰まりを生じさせる場合がある。
【0004】
又、べた印字等の連続印字等を行う場合には、ヘッド温度上昇に伴いインクの吐出が不規則になり吐出方向曲がりが発生し、インクの着弾点がずれるという問題が生じる。又、更に、連続印字を継続すると、ノズルからインクがあふれながら吐出を繰り返していくうちに、ノズル近傍のオリフィス面にインクが付着するようになる。そして、そのノズル近傍のインクの付着部を核として、大きなインクダマリがオリフイス上に形成される。そして、この状態で更に印字を続けた場合には、吐出すべきインクがオリフイス上のインクダマリに引き込まれ、吐出不可能になる、といったヌレ不吐問題等、顔料インクを用いた場合には、記録ヘッドに対するインクの信頼性に劣るという課題があった。
【0005】
上記したような課題に対し、顔料インクの信頼性を改善する方法が、例えば、特許文献1、特許文献2で述べられている。具体的には、カーボンブラック粒子表面に水溶性基を導入することによって、分散剤を使用することなく安定に水性インク中に分散させることのできる顔料(自己分散性顔料)を色材として用いた、顔料インクが開示されている。
【0006】
しかしながら、かかる自己分散性顔料を用いた水性顔料インクを用いて記録媒体、特に普通紙上に印刷を行った場合には、インクが充分に乾いた後でも、印字面を強く擦った場合に印字面が汚れてしまい、画像の耐擦過性が十分でないことがある。このように、樹脂分散剤をインクに用いないことは、インクジェット記録の信頼性のより一層の向上には有効に機能するものの、インクジェット記録物のある種の品位を損ねてしまう場合がある。
【0007】
一方、特許文献3は、顔料表面に樹脂を化学的に結合させたタイプの自己分散性顔料を含むインクジェット用インク及びそれを用いたインクジェット記録方法を開示している。そして、該自己分散性顔料は、顔料表面の官能基と反応し得る反応性基を有するセグメント(A)と、前記反応性基を実質的に有さず、且つ前記セグメント(A)よりも液媒体に対して高い親和性を示すセグメント(B)とを有する重合体を、顔料と加熱させることで得られるものであることが開示されている。
【0008】
しかしながら、この発明においては、顔料表面に反応させる重合体として特定の官能基が必要であり、使用できる重合体が限定されてしまい、又、顔料表面にも重合体と反応可能な官能基が必須であり、使用できる顔料の種類も限定されてしまう、といった問題がある。又、本発明者らの検討によれば、製造上の問題として、顔料表面と反応性基を有さないセグメントにイオン性を持たせることは難しく、水性媒体に対して十分な分散性を有する顔料を得ることは難しい、と考えられる。
【0009】
又、特許文献4に、少なくとも1つの水可溶化官能基と、少なくとも1つの共有結合で付着されたポリマーとを含む巨大分子発色団を含んでいるインクジェット用インク組成物であって、上記ポリマーが、上記巨大分子発色団に対し、求核置換又はアシル化反応によって付着されてなるインクジェット用インク組成物が開示されている。しかしながら、この発明においては、ポリマー中に、アミン又はヒドロキシル終端が必須であり、使用できるポリマー種が限定されてしまうこと、末端変性ホモポリマーの官能基による分散によって耐擦過性の改善はなされるものの、耐マーカー性については不十分である、といった課題があった。
【0010】
更に、特許文献5には、少なくとも1つの水可溶化官能基と、少なくとも1つの共有結合で付着されたポリマーとを含む、巨大分子発色団を含有するインクジェット用インク組成物が開示されている。この発明におけるインクジェット用インク組成物は、水溶性を付与するために付着された官能基、及び共有結合で付着されたビニルポリマー鎖の両者を有する変性された顔料粒子(巨大分子発色団)を含むが、かかる組成物を製造する場合に、顔料表面にポリマー鎖を共有結合で付加させる工程において、顔料を、モノマーと開始剤の存在下でラジカル重合させることでポリマーを成長させている。しかしながら、本発明者らの検討では、この方法では、モノマーのラジカル重合におけるポリマーの分子量制御が困難であり、又、水溶性ポリマーの水中に対する溶解性の指標としての酸価若しくはアミン価の制御も困難であり、それに加えて、それらのポリマーが顔料表面と確実に共有結合しているかが定かではなかった。つまり、成長していくポリマーの末端ラジカルが、確実に顔料表面と結合し、重合が停止するとは限らず、一部は顔料表面と結合するが、成長していくポリマー同士の結合によって重合反応が停止してしまう場合もあり、効率的にポリマーを顔料表面に結合させることは非常に困難である、という製造上の課題が認められた。
【0011】
又、特許文献6において、複数の分子を用いた樹脂結合タイプの自己分散性顔料のことが述べられている。この樹脂結合タイプの自己分散性顔料は、イオン性を有する水性顔料分散が可能である。しかし、本発明者らの検討によれば、これらの樹脂結合タイプの自己分散性顔料を用いることによって、インクの記録ヘッドに対する信頼性は確保できるものの、印字後における画像の、耐擦過性や耐マーカー性については未だ改善の余地があった。
【0012】
上記した課題に加えて、近年、インクジェット記録画像に対して、銀塩写真とほぼ同レベルの画質が要求されてきている状況下においては、単色の画像の品位ばかりでなく、記録媒体上で2つの異なる色の画像が隣接して形成されたときに生じる、画像の境界における境界部の滲み(以下、ブリードと呼ぶ)を抑制することも、重要な解決すべき技術課題となっている。
【0013】
これらの課題に対して、従来より、インクジェット方式の記録において、特に普通紙に対しての、印字濃度、印字品位、耐水性及び耐光性等の堅牢性に優れた黒色画像を形成するために顔料を用いたブラックインク、更には、ブラックインクで印字された画像とカラーインクで印字された画像との境界部にブリードを生じることのないインクセット、及びそれを用いたインクジェット記録方法や機器についての報告が多数なされている。
【0014】
例えば、特許文献7には、顔料からなる着色剤と、特定のpH環境下で不溶化する分散剤とからなるブラックインクと、該分散剤が不溶化するpHとしたカラーインクとを用いることで、ブリードの発生を防止し得るインクジェットプリント方法、及びインクセットが記載されている。
【0015】
又、特許文献8には、化学的に改質されたブラック顔料、即ち、官能基の導入により水溶性にしたブラック顔料からなるブラックインクと、ブラックインクよりも高いイオン強度が備わるカラーインクを用いることで、イオン強度の急激な変化によって溶解した顔料の凝集を起こし、これによってブリードを軽減し得るインクセットが記載されている。
【0016】
しかしながら、特許文献7に記載されているような、顔料からなる着色剤と、特定のpH環境下で不溶化する分散剤とからなるブラックインクと、該分散剤が不溶化するpHを有するカラーインク、とを用いたインクセットの場合は、確かにブリードの発生はかなり抑えられるが、ブラックインク中において、顔料に吸着していないフリーなポリマー分散剤が存在し、それらも分散剤が不溶化するpHを有するカラーインクによって凝集を起こすため、結果として、より高濃度の緩衝剤を含むカラーインクが必要となる。このことは、カラーインクの吐出安定性等の、インクジェット記録用インクとしての信頼性の低下を生じさせる原因となる。
【0017】
又、特許文献8に記載されているような、化学的改質されたブラック顔料、即ち、官能基の導入により水溶性にしたブラック顔料からなるブラックインクと、ブラックインクよりも高いイオン強度が備わるカラーインクを用いたインクセットの場合は、ブラックインクの印字濃度、印字品位、画像堅牢性等を満足させることはできるものの、ブリードを抑える効果は充分であるとは言えず、滲みを軽減させるために高分子量コロイドを添加しなければならず、その結果、ブラックインクの粘度が上昇し、吐出性能が低下することが生じる場合がある。
【0018】
又、その他にも、特許文献9には、酸性カーボンブラックとアルカリ可溶性の重合体を用いたインクが記載され、特許文献10には、ブラックインクの中に少なくとも1種のアニオン染料を有し、イエローインク中に少なくとも1種のカチオン染料と多価沈澱剤とを含むブリーディングを防止し得るインクジェット用インクセットが記載されている。又、特許文献11には、アニオン性インクとカチオン性インクとを用い、少なくとも一方のインク中に、そのインクのイオン特性を有するポリマーを含有させておき、該ポリマーの存在下、多色印刷時にアニオン性インクとカチオン性インクを接触させることで、ブリードの発生を低減をさせたインクセットが記載されている。
【0019】
しかしながら、上記、特許文献9に記載されているような酸性カーボンブラックとアルカリ可溶性の重合体を用いたインクの場合、アルカリ可溶性の重合体によりカーボンブラックが分散されるが、この樹脂分散型顔料インクは、ヘッドに対する信頼性を確保する上での制約が多い。又、これらの樹脂分散型や自己分散型顔料インクで、記録媒体、特に普通紙上に印刷を行った場合には、インクが十分に乾いた後に印字面を強く擦った場合に、印字面が汚れてしまうという耐擦過性や、水性マーカーで印字面をなぞった場合の耐マーカー性が悪い、といった問題があった。
【0020】
又、特許文献11に記載されているような、多色印字時に、ポリマーの存在下でアニオン性インクとカチオン性インクとを互いに接触させることにより、ブリードを低減させる場合には、含有させるポリマーの種類によっては、インクの信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。特に、印字中に、あるノズルからインクを吐出させた後、そのノズルから一定時間(例えば、1分間程度)インクの吐出を行わなかった場合に、そのノズルから次の1滴目のインクを吐出させた場合に安定した吐出が行えず、印字が乱れてしまうといった不都合が生じる場合がある。本明細書においては、以降、このような状態のことを“発一性が悪い”と言う。
【0021】
更に、特許文献12には、カチオン性基をその表面に有してなるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、アニオン性染料を着色剤としたカラーインクを用いたインクセットについての記載がある。しかし、この場合には、ブラックインクによって形成したブラックインク画像については、印字濃度、印字品位、画像堅牢性等を満足させることはできるが、印字後の擦れによる印字汚れ耐擦過性や、水性マーカーによる耐マーカー性が十分ではなく、更には、カラーインク画像との間に生じるブリードの発生に対する抑制効果に関しては、まだ不十分であった。
【0022】
【特許文献1】
特開平8−3498号公報
【特許文献2】
特開平10−195360号公報
【特許文献3】
特開平9−272831号公報
【特許文献4】
特開2000−53902公報
【特許文献5】
特開2000−95987公報
【特許文献6】
国際公開第01/51566号パンフレット
【特許文献7】
特開平7−1837号公報
【特許文献8】
特開平10−272768号公報
【特許文献9】
特開平3−210373号公報
【特許文献10】
特開平6−57192号公報
【特許文献11】
特開平7−145336号公報
【特許文献12】
特開平10−183046号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い画像濃度(OD)と、優れた耐擦過性、耐マーカー性とを備えた画像を与えると共に、異なる色の画像とが隣接したときに、その境界におけるブリードの発生を抑制することができ、高品位なカラー画像の形成を達成し得るインクセットを提供することにある。又、本発明の他の目的は、高品位なカラー画像を形成することのできる画像形成方法、このような画像形成方法に用いることのできる記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0024】
又、本発明の目的は、ブラックインクやカラーインクによって得られる画像の発色性に優れ、特にブラックインク画像に求められている、高い印字品位や、印字汚れ耐擦過性や印字汚れ耐マーカー性に対する高い画像堅牢性等、種々の性能を満たすと同時に、記録媒体上に形成されたブラック画像とカラー画像との境界領域におけるブリードの発生が、より有効に抑制された画像形成ができ、しかも、各インクが、吐出安定性等のインクジェット記録特性にも優れ、ヘッドに対する高い信頼性をも有するインクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一態様によれば、少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクと、を有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するのに用いられるインクセットであって、上記第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含み、上記第2のインクは、色材を含み、且つ上記第1のインクと混合されたときに上記第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる水性インクであることを特徴とするインクセットである。
【0026】
好ましい形態としては、上記構成において、第2のインクが多価金属イオンを含んでいるインクセットが挙げられる。更に、かかる構成において、上記多価金属イオンは、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+からなる群から選ばれる少なくとも1つであるインクセット、又、上記多価金属イオンは、第2のインクの全質量に対して0.1〜15質量%含まれているインクセット、又、上記第2のインクは、アニオン性染料を少なくとも1種を含み、且つ、酸性のpHを有するインクセット、又、上記第2のインク中の色材は、酸性染料及び直接染料から選ばれる少なくとも何れかであるインクセットが挙げられる。
【0027】
好ましい別の形態としては、上記構成において、第2のインクは、第1のインクとの混合により、該第1のインクにpH変化を生じさせ、該第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用(水素イオン濃度の変化に対して緩衝作用)を有するインクセットが挙げられる。更に、かかる構成において、上記第2のインクのpH値が、該第2のインク50mlに対して1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前の第2のインクのpH値との差が1.0以内になるように調整されているインクセット、又、第1のインクのpHが、前記第2のインクのpHよりも低いインクセット、又、第2のインクのpHが、中性領域から酸性領域の値をとるインクセットが挙げられる。
【0028】
好ましい別の形態としては、上記構成において、第2のインク中の色材の極性が、前記第1のインク中の顔料が有している極性とは逆であるインクセットが挙げられる。更に、上記したいずれかの構成を有する、ブリストウ法によって求められる上記第2のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満であるインクセットが挙げられる。
【0029】
好ましい別の形態としては、上記いずれかの構成において、第1のインクを構成する顔料が、カーボンブラックであるインクセット、又、前記第1のインクを構成する他の原子団が、フェニル(2−スルホエチル)基であるインクセット、又、前記第1のインクを構成する共重合体のMwが1,000〜30,000であり、且つ酸価若しくはアミン価が100〜500であるインクセット、又、前記第1のインクを構成する共重合体の多分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、3以下であるインクセット、又、ブリストウ法によって求められる前記第1のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満であるインクセット、又、前記Ka値が0.2(ml/m2/msec1/2)以上であるインクセット、又、前記第1のインクが、改質された顔料中における有機基の、該顔料の全質量に対する割合が5〜40質量%、更に好ましくは、10〜25質量%のものであるインクセット、又、前記第1のインクはブラックインクであり、且つ前記第2のインクはカラーインクであるインクセットが挙げられる。
【0030】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを用い、記録媒体上にインクジェット記録方式でカラー画像を形成する画像形成方法であって、上記インクセットを構成している第1のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、を具備していることを特徴とする画像形成方法が提供される。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを構成している第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2のインク収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッド群と、を有していることを特徴とする記録ユニットが提供される。
【0032】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを構成しているブラックインクを収容している第1のインク収容部と、カラーインクを収容している第2のインク収容部と、該ブラックインク及び該カラーインクを各々吐出するためのインクジェットヘッド群と、記録情報に応じて、該インクジェットヘッドを駆動する手段と、を有していることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
【0033】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るインクセットは、少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクと、の組み合わせを有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するのに用いられるインクセットであって、上記第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含み、上記第2のインクは、色材を含み、且つ上記第1のインクと混合されたときに、上記第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有する水性インクであることを特徴とする。
【0034】
先に述べたように、インクジェット記録に用いるインクにおいて、高い画像濃度や完全な画像堅牢性を確保するためには、染料インクよりも、色材として顔料を用いる顔料インクが有利である。ところが、顔料をインクの色材に用いるには、一般的には、顔料を良好な状態に分散させるために何らかの分散剤が添加されるが、このような顔料インクをインクジェット記録に利用した場合においては、分散剤を含むことによる種々の弊害を生じ易い。例えば、高分子型の分散剤を用いた場合には、ヘッド部のフェイス面が濡れ易くなったり、目詰まりが起こったり、保存安定性が悪いといった問題があった。又、界面活性剤型の分散剤を用いた場合には、画像濃度が低く、更に、ヘッド部のフェイス面が濡れ易い等の問題があった。
【0035】
これに対し、本発明において使用する第1のインクの色材として含有させる特定の顔料の場合は、分散剤を含有させなくても、顔料自体が所謂自己分散をするので、上記したインク中に分散剤が含まれることによる弊害を生じることはなくなる。即ち、本発明において使用する第1のインクに用いる顔料は、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料であり、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体、との反応物を含む。このために、本発明において使用する第1のインクにおいては、先ず、顔料表面に結合している反応物を構成している共重合体中に、イオン性モノマーユニット(親水性部)を含むため、この働きによって顔料自体が水等の水性媒体に対して安定した分散状態を保つことができ、分散剤を特に必要とすることなく、インクジェット記録用のインクとすることができる。このため、前記したインク中に分散剤が含まれることによる弊害を有効に防止できる。更に、顔料表面に結合している反応物を構成している共重合体中には、疎水性モノマーユニット(疎水性部)を有するため、水性顔料インクであるにもかかわらず、該インクによって形成された画像の耐擦過性や、耐マーカー性が向上する。これらについては、後述する。
【0036】
そして、本発明では、カラー画像の形成にあたり、更に、上記した第1のインクと組み合わせる、第1のインクとは色の異なる第2のインクとして、上記第1のインクと混合されたときに第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクを用いる。かかる構成によって、異なる色のインク画像が隣接したときに、その境界において生じるブリードを抑制することのでき、この結果、高品位なカラー画像の形成が達成される。上記における第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させるインクの具体的な形態としては、下記に挙げる3つの態様を挙げることができる。第1の態様では、多価金属イオンを含んでいるインクを、第2のインクとして用いる。又、第2の態様では、第1のインクと混合されたときに、第1のインクにpH変化を生じさせ、第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用を有するインクを、第2のインクとして用いる。更に、第3の態様では、色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性とは逆であるインクを、第2のインクとして用いる。以下、先ず、第1のインクについて説明した後、第2のインクについて、これらの3つの態様に分けて説明する。
【0037】
<第1のインク>
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含んで構成されている。以下、第1のインクを構成する改質された顔料について、顔料、官能基、及び共重合体の項に分けて説明する。更に、該顔料とともにインクを構成する水性媒体等について説明する。
【0038】
[顔料]
本発明のインクセットを構成する第1のインクに使用する顔料は、特に限定されず、下記に挙げるようなものが使用可能である。そして、それぞれ後述する方法で、これらの顔料を改質して用いる。顔料の含有量としては、水性インク全質量に対する割合が、0.1〜15質量%、更には、1〜10質量%となるようにすることが好ましい。
【0039】
黒色インクに使用される顔料としては、特に、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品や、別途新たに調製されたものも使用することができる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを何れも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0040】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0041】
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0042】
[官能基]
本発明にかかる水性インク中の顔料において官能基は、顔料表面に直接、若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。該官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、ここで官能基の種類は、該共重合体が担持している官能基との関連において選択される。そして、官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体中に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じるような反応とすることが好ましい。該官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることによって、共重合体を、顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。また、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることによっても同様に共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
【0043】
ここで、顔料表面に化学的に結合されている官能基は、直接、顔料表面に結合していてもよく、また他の原子団を介して結合していてもよい。しかし、比較的分子量の大きな共重合体を顔料表面に導入する場合、共重合体同士の立体障害を避けるために、他の原子団を介して官能基を顔料表面に導入することが好ましい。ここで、他の原子団は、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものでない。しかし、上記した理由により官能基の顔料表面からの距離を制御するという観点から、例えば2価の有機残基が好ましく用いられる。2価の有機残基の例は、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等を包含する。
【0044】
より具体的に述べると、例えば後述する実施例においては、顔料をアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンと反応させて、顔料表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入している。この場合には、アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料表面に化学的に結合している、ということができる。ところで、本発明で使用する第1のインクによる効果としては、以下のことが挙げられる。
【0045】
先ず、第1の効果としては、本発明で使用する第1のインクを構成する顔料は、その表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むので、表面を改質する場合に用いられる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これにより、改質された顔料の親水性を適宜に調整することが可能である。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与できる。更に、インク化する際に、このような顔料と組み合わせて使用する溶媒の選択によって、インクとしての特性のコントロールも可能になる。
【0046】
又、第2の効果としては、本発明者らの検討によれば、顔料表面に結合している共重合体中に疎水性モノマーを用いると、インクの印字汚れ耐マーカー性が向上することがわかった。以下、この耐マーカー性の向上の理由について説明する。
【0047】
先ず、顔料の表面改質に親水性の高分子を用いると、記録媒体への定着後、紙面上で、顔料粒子表面の高分子の絡まり合いが生じ、これによって顔料の凝集力が強くなり、この結果、インクの印字汚れ耐擦過性(耐擦れ性)は向上する。しかしながら、水溶性のマーカーペンで印字面を擦った場合には、顔料表面に存在するものが親水性であるために、マーカーペン中の水や、水性有機溶剤によって、顔料粒子表面の親水性高分子が再溶解してしまうため、マーカーペンの擦れと共に顔料粒子が解けるように流れ出し、その結果、印字汚れ耐マーカー性が発現しにくくなると考えられる。
【0048】
これに対して、本発明で使用する第1のインクを構成する顔料は、顔料表面に化学的に結合している有機基が、イオン性モノマーユニット(親水性部)を有する共重合体を含むため、先ず、記録媒体への印字後、紙面上で顔料粒子表面の共重合体の絡まり合いにより顔料の凝集力が強くなって、インク定着後の印字汚れ耐擦過性が向上する。この点では、上記の親水性の高分子による表面改質顔料を使用したインクの場合と同様である。しかしながら、該有機基は、同時に、疎水性モノマーユニット(疎水性部)を有する共重合体を含むため、インクの定着の過程において、インク中の水及び有機溶剤が乾燥若しくは浸透していく際に、顔料表面の高分子が絡まり合うだけでなく、印字物の最表面に、顔料表面に結合している共重合体の疎水性部が外側を向くように配向すると考えられる。このため、印字物の最外表面に、共重合体の疎水性部が配向することになり、印字物の表面は疎水性になる。この結果、水溶性のマーカーペンで印字面を擦った際にも、マーカーペンのインク中の水や有機溶剤に顔料粒子が再溶解し難くなり、マーカーペンの擦れによる顔料粒子の流れ出しを抑制することができる。
【0049】
[共重合体]
上記イオン性モノマーと疎水性モノマーからなる共重合体としては、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好適に用いられる。
上記アニオン性の共重合体としては、疎水性モノマーと、アニオン性モノマーからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。この際に使用する代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等である。
【0050】
上記において使用するアニオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0051】
本発明にかかる共重合体の一態様としての、アニオン性モノマーと疎水性モノマーと、からなるアニオン性の共重合体としては、上記に挙げた疎水性モノマーから選択された何れかと、上記に挙げたアニオン性モノマーから選択された少なくとも1つとの、少なくとも2つ以上のモノマーからなる。該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等を包含する。
【0052】
かかるアニオン性の共重合体の酸価としては、100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、酸価のばらつきが平均酸価の20%以内であるものを使用することが好ましい。酸価をかかる範囲内とすることによって、顔料表面の親水性が高過ぎて、印字後におけるインク中の水及び溶剤が顔料表面にとどまり、記録媒体への印字後における、インクの耐マーカー性の発現が遅くなることを有効に抑制することができる。又、顔料の表面の親水性が低過ぎてしまい、インク中に顔料が安定に分散しにくくなるといったことも有効に抑制することができる。
【0053】
尚、前記した塩とは、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられ、これらを、単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0054】
上記したアニオン性の共重合体セグメントの重量平均分子量(Mw)は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものであることが好ましく、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものを使用するとよい。更に、共重合体の多分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、3以下であることが好ましい。又、アニオン性の共重合体セグメントの含有量は、表面改質された顔料に対するアニオン性の共重合体の含有率が5質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上、25質量%以下の割合で使用される。共重合体の含有率をこの範囲内とすることで、インクの高粘度化の抑制と分散安定性とを高いレベルで両立させることができる。
【0055】
又、共重合体の多分散度については、共重合体の分子量分布が広くなると、先に述べた共重合体の分子量に基づく性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0056】
次に、本発明にかかる共重合体の他の実施態様としての、カチオン性モノマーと疎水性モノマーとからなるカチオン性の共重合体について説明する。カチオン性の共重合体としては、下記に挙げる疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等を使用することができる。
【0057】
カチオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。具体的には、例えば、アリルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0058】
カチオン性の共重合体は、上記モノマーから選ばれた疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとを含む少なくとも2つ以上のモノマーからなるブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いはこれらの塩等が挙げられる。特に、カチオン性の共重合体のアミン価が100〜500の範囲のものが好ましく、又、アミン価のばらつきが平均アミン価の20%以内であることが好ましい。アミン価とは、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の、KOHのmg数で表す。
尚、前記、塩としては、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、これらを単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0059】
上記カチオン性の共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,000〜30,000の範囲のものを好ましく使用でき、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものが好ましく使用できる。又、カチオン性の共重合体セグメントの多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が、3以下であるものを使用することが好ましい。このようなカチオン性の共重合体のインク中における含有量は、該共重合体によって表面改質された顔料粒子に対して、その含有率が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、カチオン性の共重合体の含有率が、10質量%以上25質量%以下の割合となるようにする。共重合体の含有率をこの範囲内とすることで、インクの高粘度化の抑制と分散安定性とを高いレベルで両立させることができる。
【0060】
又、共重合体の多分散度については、多分散度が大きい場合には、共重合体の分子量分布が広くなり、共重合体の分子量に基づく上記で述べた性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0061】
次に、カーボンブラックを例に挙げて、顔料粒子表面に化学的に有機基を結合させて、顔料を改質する方法について説明する。本発明においては、先ず、顔料粒子表面の官能基、或いは顔料粒子表面に官能基を導入し、これらの官能基に、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体を結合させ、該共重合体を顔料粒子表面に化学的に結合させる方法であれば、通常用いられる何れの方法でもよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
【0062】
カーボンブラック等の顔料粒子表面に、ポリエチレンイミン等を導入し、その末端官能基に、アミノ基を有する、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法や、カーボンブラック等の顔料粒子表面に、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法等の方法を用いることができる。この他のものとしては、最も典型的な例が、WO 01/51566 A1に開示されている。
【0063】
上記した方法において、例えば、アニオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の3工程を含むこととなる。
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加させる工程。
第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
【0064】
上記第2の工程では、第1の工程によってカーボンブラック表面に化学的に結合しているフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等のアミノ基とを反応させることによって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてのアミノ基が導入される。そして第3の工程においては、例えば共重合体のイオン性モノマー部分が有するカルボキシル基の一部をアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基とPEHAの残基とを含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0065】
又、上記した方法において、例えば、カチオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の2工程を含むこととなる。
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
上記第1の工程によって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてスルホン基が導入される。そして第2の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するアミノ基の一部をスルホン基と反応させて(求核置換)、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0066】
(フリーポリマーの存在)
ところで、本発明は、顔料表面に化学結合していない、前記共重合体を含むセグメント(以降「フリーポリマー」と称し、これには、顔料表面に物理吸着しているセグメントも包含する)がインク中に存在することを排除するものではない。しかし、フリーポリマーは、本発明に係る水性インクのインクジェット特性のより一層の向上という観点から、その量は制御されることが好ましい。具体的には、上記フリーポリマーと、顔料表面に結合している有機基との総質量を基準として、上記フリーポリマーの割合を50質量%未満、特には35質量%未満、更には20質量%未満とすることが好ましい。
【0067】
フリーポリマーを多く含むインクをインクジェット記録に用いた場合には、記録ヘッドの吐出口周りのオリフィス等にフリーな有機基が付着し、吐出口周りに不均一なぬれを生じ、インクの吐出が不規則になって吐出方向曲がりが発生し、インクの着弾点がずれるといった問題が生じることがある。又、更に、連続印字を継続すると、ノズルからインクが溢れながら吐出を繰り返していくうちに、ノズル近傍のオリフィス面にインクが付着するようになり、そのノズル近傍のインクの付着部を核として大きなインク溜りがオリフィス上に形成されることがある。この状態で、更に印字を続けた場合には、吐出すべきインクがオリフィス上のインク溜りに引き込まれ、吐出不可能になるといったヌレ不吐と呼ばれる問題が生じることがある。
【0068】
そして、記録ヘッドに対するインクの信頼性において有効な範囲は、顔料粒子表面に化学的に結合している有機基の、該有機基と該フリーポリマーとの総和に占める割合が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上、更には、80%以上であることが好ましい。尚、この値は、後述するような方法によってインク中から取り出した乾固物試料を用い、該試料に対する熱重量分析方法等によって求めることができる。
【0069】
[水性媒体]
上記で説明したようにして得られる共重合体を含む有機基を顔料表面に化学的に結合させてなる改質顔料をインクの色材とした場合に、該顔料の分散媒である水性媒体の例として、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0070】
具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0071】
本発明にかかるインク中に含有される上記に挙げたような水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
【0072】
又、インクの保湿性維持のために、その他、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
【0073】
更に、本発明にかかるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
特に、本発明においては、下記に挙げる構造式(1)〜(4)で表される界面活性剤の何れかを、インク中に含有させることが好ましい。
【0074】
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキルを表し、nは整数を表す。)
【0075】
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表し、nは整数を表す。)
【0076】
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnは、それぞれ整数を表す。)
【0077】
(但し、上記構造式(4)中、m及びnは、それぞれ整数を表す。)
【0078】
上記したような構成を有する本発明にかかるインクは、筆記具用インクや、インクジェット用インクに用いることができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出するバブルジェット(登録商標)記録方法があるが、本発明のインクは、これらの記録方法に特に好適である。
【0079】
ところで、本発明にかかるインクを、上記したようなインクジェット記録に用いる場合には、該インクが、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。
【0080】
又、インクの、記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
【0081】
ここで、インク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは、記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の粗さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、Ka値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定可能である。
【0082】
そして、前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5(ml/m2/msec1/2)未満とすることは、記録画像品質をより一層向上させる上で好ましく、更に好ましくは、0.2以上1.5(ml/m2/msec1/2)未満とすることである。即ち、Ka値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満である場合に、インクの記録媒体への浸透過程の早い段階で固液分離が起こり、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができる。尚、本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙[例えば、キヤノン(株)製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等]を記録媒体として用いて測定した値である。又、測定環境としては、通常のオフィス環境、例えば、温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0083】
[分析方法]
以下、顔料にカーボンブラックを用いた水性顔料インクを例にとって、本発明にかかるインクの特性を評価する際に用いた、分析方法及び評価方法について説明する。しかし、これによって本発明にかかるインクに使用する顔料が、特に限定されるわけではない。本発明で使用する粒子表面が改質された顔料の、表面改質状態を分析する方法としては特に限定されず、通常考えられ得る方法を用いて分析を行うことができる。好ましくは、ESCAやTOF−SIMS等で、カーボンブラック等の顔料粒子表面に存在する有機基の結合状態を分析する方法が挙げられる。
【0084】
カーボンブラック粒子の表面に結合している有機基の量等を測定する方法も特に限定されないが、例えば、下記の方法によって行なうことができる。先ず、前記表面改質したカーボンブラックを含むインクから、塩析若しくは凝析によってインク中から有機基で改質されたカーボンブラック粒子を含む固形分を分取することができる。そして、この方法によってインク中から取り出した固形分から、表面改質されたカーボンブラック(有機基が粒子表面に結合しているカーボンブラック)のみを高純度で分取するには、更に、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させた共重合体の良溶媒で、インク中から取り出したカーボンブラック等を洗浄、乾燥するといった方法を用いることができる。以下、更に詳細な、インク中から表面改質されたカーボンブラックを分取する方法、分取後、乾燥して得られた乾固物を測定用試料として用いることで行なう、表面改質されたカーボンブラック粒子表面に結合している有機基の量の測定、或いはフリーポリマーとしてインク中に存在していることのある該共重合体部分を含むセグメントの量を測定する分析方法について説明する。
【0085】
先ず、分析に先だって、以下のようにして前処理を実施し、測定用試料を調製する。上記で説明した表面改質されたカーボンブラックを含むインクから、塩析若しくは凝析して沈澱物として得られる固形分を乾固させ、その後に、共重合体の良溶媒を用いて洗浄してから、該有機基が粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラックのみの抽出処理を行う。その方法は、(1)塩析若しくは凝析、(2)沈澱物の洗浄、(3)乾固、(4)表面改質カーボンブラックのみの抽出、及び(5)乾燥、という一連の手順によって行うことができる。以下、順を追って説明する。
【0086】
(1)インク中から、表面改質カーボンブラックを含む固形分を塩析若しくは凝析させる方法としては特に限定されず、例えば、(a)塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩で塩析させる、(b)硝酸や塩酸等の酸を用いて凝析(酸析)させる、等の方法を用いることができる。この際、必要に応じて、塩析等の前工程として、例えば、限外濾過等を行ってもよい。
【0087】
(2)上記塩析若しくは凝析等によって得られる固形分を純水で十分に洗浄する。特に、(1)に記載した(b)の凝析を行う際には、洗浄後の濾液が中性になるまで十分に洗浄を行うことが好ましい。
【0088】
(3)上記で得られる洗浄後の固形分は、オーブン等で充分に乾燥し、乾固物として取り出す。この際の乾燥条件等は特に限定されず、例えば、60℃で2時間程度乾燥させればよい。
【0089】
(4)上記(3)で得られる乾固物には、有機基がカーボンブラック粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラック以外に、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合していないフリーポリマー(顔料に物理吸着しているものも含む)が混入している可能性がある。そこで、(3)で得られた乾固物を、該共重合体の良溶媒を用いて洗浄することで、表面改質カーボンブラックを更に高純度に抽出する。上記において使用する、フリーポリマーの良溶媒は、共重合体の構造によって異なり、一概に限定できるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等は、汎用性のある良溶媒である。この場合、このような良溶媒を用いて繰り返して上記乾固物を洗浄し、固形分に混入している可能性のあるフリーポリマーの除去作業を繰り返すことが好ましい。
【0090】
(5)上記したように共重合体部分を含むセグメントの良溶媒による洗浄によって、フリーポリマーの除去処理がなされた固形分は、最後にオーブン等で十分な乾燥処理を行って、残存水分や残存溶剤を揮発させて乾固物試料とする。乾燥の際に使用するオーブン等は特に限定されず、例えば、市販の真空乾燥機等を用いた乾燥を行えばよい。又、乾燥条件等についても、上記表面改質カーボンブラック乾固物から、十分に残存水や残存溶剤が除去できる条件であれば特に限定されない。例えば、数百Pa以下の真空度で、60℃×3時間程度で乾燥させればよい。
【0091】
上記した(1)〜(5)の一連の方法によってインク中から取り出した表面改質カーボンブラック乾固物を測定用試料とし、該試料の重量変化を熱重量分析を用いて測定することで、カーボンブラック粒子表面に結合した有機基の結合量を定量的に測定することができる。この結果、表面改質カーボンブラック粒子の質量を基準として該カーボンブラックに化学的に結合している有機基の含有率の測定が可能となる。
【0092】
この分別には、例えば液体クロマトグラフィーを用いることができる。又、上記(1)〜(3)までの一連の手順で得られた乾固物を測定用試料とし、該試料の重量変化を熱重量分析を用いて測定することで、カーボンブラック粒子表面に結合している有機基の他、フリーポリマー等のインク中の顔料を除く固形分の量を知ることができる。この結果、インク中に含まれている有機基とフリーポリマーとの総和に対する、有機基の割合を求めることができる。尚、インク中に、該共重合体以外の第2のポリマーが混在している場合に、インク中の、有機基とフリーポリマーとの総和に対する該有機基の割合を正確に算出するためには、該フリーポリマーのみの量を測定することが好ましい。その場合には、上記(4)の手順におけるカーボンブラックの洗浄液を、液体クロマトグラフィー等を用いて測定すれば、フリーポリマーのみの量を測定することができる。
【0093】
上記で説明した、(1)塩析若しくは凝析、(2)沈澱物の洗浄、(3)乾固、(4)表面改質カーボンブラックのみの抽出、及び(5)乾燥という一連の手順によって得られる、表面改質カーボンブラックのみを含む乾固物試料中の、結合している有機基の含有率を測定する方法は特に限定されない。例えば、上記手順によって最終的に得られる充分に乾燥させたカーボンブラック乾固物を、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)等により測定し、その結果得られる熱重量分析重量減少率から、容易に求めることができる。以下、この際に行う熱重量分析について詳細に説明する。
【0094】
上記方法によって測定される熱重量分析重量減少率は、表面改質カーボンブラック中におけるカーボンブラック粒子表面に導入された有機基の含有率となる。即ち、かかる熱重量分析重量減少率は下記式で与えられるが、熱重量分析前に高分子物質の良溶媒を用いて洗浄し、表面改質カーボンブラックのみを抽出した乾固物試料の重量に対する、100〜700℃まで昇温して行なった熱重量分析において生じる、カーボンブラック粒子表面に結合している有機基の脱着や燃焼等によって生じる重量減少量の割合である。
熱重量分析重量減少率=A/B×100(%)
A=熱重量分析において100〜700℃まで昇温した際の重量減少量
B=熱重量分析前における試料の重量
【0095】
上記において行なう熱重量分析における分析条件等は特に限定されず、前処理や昇温速度等、通常の条件によって測定すればよい。測定装置としては、例えば、METTLER TOLEDO社製のTGA熱重量測定装置、TGA851e/SDTA等を使用することができる。
【0096】
更に、上記した熱重量分析重量減少率の測定方法を用いれば、本発明で用いる水性顔料インクに含まれる表面改質カーボンブラック等の顔料における、表面改質に用いた物質と顔料粒子との結合状態を知ることができる。即ち、本発明で使用する顔料である、例えば、カーボンブラック粒子表面には、有機基が化学的に結合されている。このため、カーボンブラック粒子表面の有機基は、上記高分子物質の良溶媒を用いた洗浄後も洗い流されることはなく、カーボンブラック粒子表面に安定に結合しているため、上記した抽出処理の有無にかかわらず、熱重量分析重量減少率は、ほぼ同じ値を示す。これに対して、一般的に用いられる樹脂分散型の顔料では、分散剤に用いられている水溶性樹脂がカーボンブラック(顔料)と化学的に結合しているわけではないので、分散に使用した樹脂の良溶媒によって洗浄すると、樹脂は洗い流されてしまうため、上記した抽出処理を行った場合と、処理を行わなかった場合とでは、熱重量分析重量減少率は大きく違ったものとなる。
【0097】
このことから、本発明に好適に用いられる改質された顔料とは、該共重合体の良溶媒による洗浄の前後において、熱重量分析による重量減少率が変化しないか、或いは実質的に変化しないものとすることができる。ここで、洗浄の前後において熱重量分析による重量減少率が実質的に変化しないとは、重量減少率の洗浄前後における値の差が、例えば、7%未満、更には、5%以内であることを指す。
【0098】
上記した熱重量分析を用いる以外にも、顔料粒子表面における、表面改質に用いた物質との結合状態を調べる方法がある。例えば、本発明で用いる表面改質したカーボンブラックを、先に述べたようにして塩析若しくは凝析した後に乾固させたカーボンブラック乾固物を測定用試料とし、かかる試料を、TG−GC−MS(熱重量分析−ガスクロマトグラフ−マススペクトル)、TOF−MS(飛行時間型質量分析装置)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)等とを組み合わせて分析する方法も好適である。これらの方法によって、カーボンブラック乾固物試料における表面改質に用いた物質の結合状態(吸着エネルギーの測定)、更には、カーボンブラック乾固物試料において、結合している有機基の、組成、分子量分布、更には結合ユニットを詳細に知ることができる。
【0099】
<第2のインク>
本発明に係るインクセットは、上記で説明したような第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクとの組み合わせを有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するためのものである。従って、例えば、第1のインクを、カーボンブラックを色材とする黒色インクとした場合には、第2のインクは、他のカラーインクとして構成することを要する。更に、第2のインクには、第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクを用いる。先にも述べたように、第1のインクを構成する顔料としては、カーボンブラックを用いることが好ましいため、通常、第2のインクには、カラーインクを用いる。以下、第2のインクとして使用できるインクについて、色材及び溶媒について説明し、その後、先に述べた第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクとするための3つの態様について、それぞれ説明する。
【0100】
[色材]
本発明にかかる第2のインクに用いることのできる色材としては、公知の染料や顔料を用いることができる。染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、等を用いることができる。アニオン性染料としては、既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度を有するものであれば、大抵のものを用いることができる。又、これらのうち何れかを混合して用いることも可能である。
【0101】
本発明において、発色性等の点から特に好適に使用できるアニオン性染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0102】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、39、41、44、48、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、135、142、144
C.I.アシッドイエロー 1、3、4、7、11、12、13、14、17、19、23、25、29、34、36、38、40、41、42、44、53、55、61、76、79、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42
C.I.フードイエロー 3
【0103】
(マゼンタ用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 1、2、4、8、9、11、13、15、20、23、24、28、31、33、37、39、46、51、59、62、63、73、75、79、80、81、83、87、89、90、95、99、101、110、189、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 1、4、6、8、9、13、14、15、18、21、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、257、265、289
C.I.リィアクティブレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、58、59、63、64、180
C.I.フードレッド 87、92、94
【0104】
(シアン用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、8、15、22、25、34、41、70、71、76、77、78、80、86、90、98、106、108、120、142、158、163、168、199、200、201、202、203、207、218、226、236、287
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、43、55、59、62、74、78、80、81、90、100、102、104、111、117、127、138、158、161、185、254
C.I.リィアクティブブルー 1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、100
【0105】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 7、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック 1、2
【0106】
本発明において好適に使用できるカチオン性染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
C.I.ベーシックイエロー 1、2、11、13、14、19、21、25、32、33、36、51
C.I.ベーシックレッド 1、2、9、12、13、37、38、39、92
C.I.ベーシックブルー 1、3、5、7、9、19、24、25、26、28、29、45、54、65
C.I.ベーシックブラック 2、8
【0107】
第2のインクに用いることのできる有機顔料としては、下記のものが挙げられる。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の、その他の顔料が例示できる。
【0108】
又、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、207、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0109】
これらの顔料は、インク中に樹脂分散されていても、水溶性基をつけることにより自己分散されていても、先に述べた第1のインクと同様に、樹脂結合型自己分散をしていてもかまわない。
【0110】
上記した色材の含有量としては、インク全質量中の0.2〜15質量%の範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲とする。即ち、この範囲とすることで、例えば、発色性や、インクの吐出安定性等のインクジェット記録用インクとしての信頼性を、より一層向上させることができる。
【0111】
[溶媒]
上記したような色材の溶媒又は分散媒としては、例えば、水性媒体が挙げられる。水性媒体は、水、或いは水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。第2のインクを調製する場合に使用する水溶性有機溶媒としては、前記第1のインクにて記載したのと同様なものが挙げられる。又、第2のインクをインクジェット法(例えば、バブルジェット(登録商標)法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、インクジェット吐出特性を有するように、前述した第1のインクにて記載したと同様に、インク所望の粘度、表面張力を有するように調製することが好ましい。
【0112】
ここで、第2のインク中の水溶性有機溶媒の含有量は、例えば、インクジェット記録に用いる場合には、該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、又、所望の色調や濃度を有するように適時選択すればよいが、目安としては、例えば、第2のインク全質量に対して3〜50質量%の範囲が好ましい。又、インクに含有される水の量は第2のインク全質量に対して50〜95質量%の範囲が好ましい。
【0113】
[他の成分]
又、第1のインクの場合と同様に、第2のインクの成分として、インクの保湿性維持のためにの保湿性固形分や、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0114】
特に、第2のインク中には、上記で述べた成分の他に、そのインク中の色材の極性と同じか、又はノニオン性の少なくとも1種の界面活性剤を含有させることが好ましい。これらの界面活性剤を含有させることによって、インクに所望の浸透性や粘度を付与させることができ、インクジェット記録用インクに要求される性能をより一層満足させることができる。この際に使用される界面活性剤としては、下記に挙げるような、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤、或いは、これらの2種以上の混合物の何れでもよい。
【0115】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコール酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩等が挙げられる。
【0116】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては例えば、脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0117】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルカノールアミンの脂肪酸アミド類等が挙げられる。
【0118】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0119】
本発明においては、これらのものは何れも好ましく使用されるが、より好ましくは、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤を用いる。更に、上記エチレンオキサイド付加物の付加モル数が4〜20の範囲のものが特に好ましい。
【0120】
上記のような界面活性剤の各インク中における添加量については特に制限はないが、インク全質量の0.01〜10質量%の範囲とするのが好ましい。0.01質量%未満では、界面活性剤の種類にもよるが、一般に所望の浸透性が得られず、10質量%を超える場合には、インクの初期粘度が大きくなり、好ましくない。更に好ましくは、インク全質量の0.1〜5.0質量%の範囲とするのがよい。
【0121】
上記した基本構成を有する第2のインクには、更に、下記に挙げる第1〜3の方法等によって、第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能が付与されている。以下、これについて説明する。
【0122】
[第1の態様:多価金属イオン含有インク]
(多価金属塩)
第2のインクを、前記した第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる一つの方法として、多価金属陽イオンを第2のインク中に含有させる態様がある。即ち、多価金属イオンとして、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+からなる群から選ばれる少なくとも一つが、第2のインク中に含有されるように構成する。
【0123】
ここで第2のインクに含有させる多価金属イオンとしては、第2のインクの全質量に対して、例えば、0.1〜15質量%を含有させることが好ましい。上記に列挙したような多価金属陽イオンは、例えば、硝酸塩や酢酸塩等の塩でカラーインク中に添加することが好ましい。尚、第2のインクに、このような多価金属イオンを含有させる場合には、色材として、多価金属イオンと共存した場合においても、その安定性が不安定化しないものを、先に挙げたものの中から選択することが好ましいことは当然のことである。
【0124】
[第2の態様:pH変化に対して緩衝作用を持つインク]
第2のインクを、前記した第1のインクと混合したときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる一つの方法として、第1のインクと混合されたときに、第1のインクにpH変化を生じさせ、第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用を有するものとなるように、第2のインクを構成する。
【0125】
例えば、前記した構成の第1のインクをブラックインクとし、これと組み合わせる第2のインクをカラーインクとして、第2のインクとして、第1のインクの水素イオン濃度(pH)の変化に対して緩衝作用を持つインクを採用することで、ブラックインクで印字された画像と、カラーインクで印字された画像との境界部のブリードが有効に防止される。ここでいう「pH変化に対して緩衝作用を持つ」とは、インクが、pH変化が緩やかな特定領域を有することを意味する。具体的には、50mlのインクに対して、1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加したインクのpH値と、水酸化リチウム水溶液を添加しない状態でのインクのpH値との差が、1.0以内になる領域を有することをいう。以後、上記条件を満たすことを「緩衝作用を持つ」と記す。
【0126】
本発明者らの検討によれば、例えば、第2のインクのカラーインクの構成を、第1のインクのブラックインクのpHよりも低いpH領域で緩衝作用を示すようにすることによって、ブラックインクとカラーインクとの間で生じるブリードが有効に抑制されることが確認できた。特に、ブラックインクとカラーインクとの間でブリードが生じると、品位に劣る画像になる。以下、この例を用いて説明する。
【0127】
上記構成を有する本発明のインクセットによって、上記した効果が得られる理由としては、下記のように考えられる。ブラック画像とカラー画像とが隣接するような画像が印字され、記録媒体上で、上記構成のブラックインクとカラーインクとが隣接すると、ブラックインク中の、例えば、カーボンブラックと、カラーインク中の、例えば、アニオン性染料との間に凝集が起こる。そして、この凝集に伴って、ブラックインク中のカーボンブラックとカラーインク中の染料が、記録媒体上で移動できなくなるような状態となり、この結果、ブリードが有効に防止されたものと考えられる。
【0128】
つまり、記録媒体上で、ブラックインク中の、先述した樹脂結合タイプの自己分散性顔料と、カラーインク中の色材との間に電気的中和が安定して起これば、各々のインクを構成する色材等の分散状態や溶解状態が完全に破壊される。このようにして、ブラックインクやカラーインク中の色材等が移動できなくなれば、記録媒体上において、各インクで印字された領域へ、別のインクが入り込むことがなくなるので、ブリードは生じなくなる。
【0129】
本発明者らの検討によれば、上記した各々のインクを構成する色材等同士の電気的中和は、ブラックインクとカラーインクとが接触した際の境界部のpHに大きな影響を受け、境界部のpHにより、ブリードの効果は大きく左右されることが分かった。即ち、上記2種類のインクが接触した際のpHが塩基性となった場合には、色材等同士の電気的中和は、各々のインクの色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するには不十分な場合があり、その場合にはブリード抑制効果が十分に達成されない可能性がある。従って、ブリードの発生をより有効に防止し、或いはより有効に抑制するためには、上記2種のインクが接触した際の境界部のpHが、各々のインク中の色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するのに十分な色材同士の電気的中和を起こすような値で維持されるようにすることが重要となる。
【0130】
そこで、本発明においては、カラーインク(第2のインク)に対して、これと混合された場合にブラックインク(第1のインク)にpH変化を生じさせ、且つ該pH変化に対して緩衝作用を持たせ、これにより、記録媒体上で2種のインクが接触した際のpH値が、各々のインクの色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するのに十分な状態に維持されるようにして、印字物のブリードの防止を図る。
【0131】
本発明で使用するpH変化に対して緩衝作用を持つ第2のインクを調製する具体的な方法としては、先に述べたように、50mlのインクに1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前のpH値の差が1.0以内になるようにする。このためには、従来公知の緩衝溶液を作製するのと同様の方法を用いることができる。
【0132】
この際に使用する緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、酢酸、乳酸、酒石酸、炭酸、ジエチルバルビルツ酸等の有機酸、りん酸、ホウ酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸リチウム、クエン酸二水素カリウム、フタル酸水素カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸塩、乳酸ナトリウム、りん酸リチウム、りん酸一ナトリウム、りん酸二ナトリウム、りん酸三ナトリウム、りん酸カリウム、りん酸二カリウム、りん酸三カリウム、りん酸二水素カリウム、りん酸一アンモニウム、りん酸二アンモニウム、りん酸三アンモニウム等のりん酸塩、四ホウ酸ナトリウム、ジエチルバルビルツ酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩、塩化カリウムや塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等の無機アルカリ金属塩、水酸化ナトリウムや水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、グリシン、等が挙げられる。そして、これらの緩衝剤を、単独で、若しくは適宜組み合わせて使用できる。
【0133】
具体的には、例えば、フタル酸水素カリウム/塩酸、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム、クエン酸カリウム/クエン酸、クエン酸二水素カリウム/塩酸、クエン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/コハク酸、クエン酸二水素カリウム/四ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム/乳酸、酢酸ナトリウム/酢酸、りん酸水素二カリウム/クエン酸、酒石酸/酒石酸ナトリウム、ホウ酸+クエン酸/りん酸三ナトリウム、グリシン+塩化ナトリウム/塩酸、クエン酸+りん酸二水素カリウム+ホウ酸+ジエチルバルビルツ酸/りん酸三ナトリウム、ジエチルバルビルツ酸ナトリウム+酢酸ナトリウム/塩酸、等が挙げられる。しかし、これらの組み合わせに限定されるものではない。
【0134】
より具体的には、例えば、りん酸二水素ナトリウム/水酸化ナトリウム、グリシン+塩化ナトリウム/水酸化ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム/四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、塩酸/炭酸ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム/水酸化ナトリウム、塩化アンモニウム/アンモニア、ジメチルグリシンナトリウム/塩酸、ホウ酸+塩化カリウム/炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム等の緩衝剤が挙げられる。これらの塩のインクへの添加量は、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは、1〜8質量%である。これらの範囲にすることで、インクのpHを一定にすることができ、且つインクの安定性を保つことができる。
【0135】
上記に列挙したような化合物の含有量としては、50mlの第2のインクに1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前のpH値との差が1.0以内という条件を、第2のインクが満たすように適宜に調製することが好ましい。但し、この際に、発色性や、インクの吐出安定性等のインクジェット記録特性が、インクジェット記録用インクとしての信頼性を損なわない範囲にする必要がある。
【0136】
[第3の態様:第1のインク中の顔料極性と逆の極性の色材を有するインク]
第2のインクを、前記した第1のインクと混合したときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる方法として、第2のインクの構成を、前記した第1のインク中の顔料が有している極性とは逆の極性の色材を含有するものとする。
【0137】
本発明者らの検討によれば、例えば、第2のインクとして用いるカラーインクの色材を、第1のインクとして用いるカーボンブラックを色材とするブラックインクと逆極性とした場合に、これらのインク画像が隣接、或いは重ね打ちされた場合に、ブリードの発生が有効に抑制できることを見いだした。互いに極性の異なる色材については、先に列挙したものの中から適宜に選択して使用すればよい。
【0138】
例えば、先述した樹脂結合タイプのカチオン性の自己分散性顔料であるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、先に挙げたアニオン性染料から選択された色材を含有するカラーインクとを用いた本発明のインクセットは、従来の自己分散性顔料であるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、アニオン性染料を着色剤としたカラーインクとのインクセットと比較した場合においても、ブリードの抑制効果が格段に高いことが確認できた。本発明者らは、これは、逆極性の色材を持つカラーインクと接触したときに、従来の単なる水溶性基をつけただけの自己分散顔料の場合よりも、本発明で使用する樹脂結合タイプの自己分散顔料の場合の方が、より大きな凝集体を形成するため、紙面上でインクの移動ができなくなる結果、ブリードの発生の抑制が格段に改善できたものと考えている。
【0139】
(第2のインクの浸透性)
上記したような第2のインクに関して、記録媒体上に高品質なカラー画像を形成するためには、前記で説明したブリストウ法によって求められるKa値を、例えば、1.5(ml/m2/msec1/2)以上のインクとすることが好ましい。即ち、このようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高いため、例えば、イエロー、マゼンタ及びシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも、隣接する異なる色の画像間で生じる色のにじみ(ブリーディング)を抑えることができ、又、これらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも、各々のインクの浸透性が高いため、異なる色の画像との間でブリードを有効に抑えることができる。第2のインクのKa値をこのような値に調整する方法としては、例えば、先に述べたような界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤を添加する等の、従来公知の方法が適用できる。勿論、添加量は適宜選択すればよい。
【0140】
以上のような構成を有する本発明のインクセットは、インクジェット記録に用いられる際に、特に効果的である。この場合に使用するインクジェット記録方法には、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインクを吐出するインクジェット記録方法がある。本発明のインクセットは、これらのインクジェット記録方法に適用した場合に、ブレードが抑制され、しかも耐擦過性や耐マーカー性に優れた画像を形成することができる。以下、これらについて説明する。
【0141】
[記録方法、記録ユニット、カートリッジ及び記録装置]
次に、上記した本発明にかかる第1、第2のインクを用いて記録を行うのに好適に用いることのできる、本発明にかかるインクジェット記録装置の一例について以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図5及び図6に示す。図5は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図6は図5のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0142】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図7には、図5に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図5に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0143】
図8に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図8において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0144】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0145】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0146】
51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0147】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0148】
図9は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0149】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図10に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図10において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図8に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0150】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図11に示す。
【0151】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0152】
図11において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図8に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0153】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例より限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0154】
[第1のインクの調製]
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
比表面積が220m2/gであり、DBP吸油量が112ml/100gであるカーボンブラックを500g、アミノフェニル−2−スルホエチル−スルフォン(APSES)を45g、蒸留水を900g、反応器に投入し、55℃に保温し、回転数300RPMで20分間攪拌した。この後、25%濃度の亜硝酸ナトリウム40gを15分間で滴下し、更に蒸留水50gを加えた。この後、60℃に保温して、2時間反応させた。反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、固形分15%の濃度に調整した。この後、遠心分離処理、及び不純物を除去する精製処理を行った。得られた分散液は、カーボンブラックに前述した(APSES)の官能基が結合した分散液となった。この分散液をA1とする。
【0155】
ここで、この分散液A1中のカーボンブラックに結合した官能基のモル数を求めるために、以下の操作を行った。分散液中のNaイオンをプローブ式ナトリウム電極で測定し、得られた値をカーボンブラック粉末当りに換算し、カーボンブラックに結合した官能基のモル数を求めた。
【0156】
次いで、上記で調製した固形分15%の分散液A1を、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)溶液中に滴下した。この際、PEHA溶液を強力に攪拌しながら室温に保ち、1時間かけて分散液A1を滴下した。このときのPEHA濃度は、先に測定したNaイオンのモル数の1〜10倍量の濃度とし、溶液量は分散液A1と同量で行った。更に、この混合物を18〜48時間攪拌し、この後、不純物を除去するための精製処理を行い、最終的に、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が結合した固形分10%の分散液とした。この分散液をB1とする。
【0157】
次に、共重合体セグメントとしてのスチレン−アクリル酸樹脂を以下のようにして調製した。先ず、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂を190g秤り取り、これに1,800gの蒸留水を加え、樹脂を中和するのに必要なNaOHを加えて、攪拌して溶解して、スチレン−アクリル酸樹脂水溶液を調製した。次に、先に調製した固形分10%の分散液B1を500g、上記スチレン−アクリル酸樹脂水溶液中に攪拌しながら滴下した。次に、分散液B1とスチレン−アクリル酸樹脂水溶液の混合物をパイレックス(登録商標)蒸発皿に移し、150℃で15時間加熱し、蒸発させた後、蒸発乾燥物を室温に冷却した。
【0158】
次いで、この蒸発乾燥物を、pH=9.0に調整したNaOH添加蒸留水中に分散機を用いて分散させ、更に攪拌しながら1.0MのNaOHを添加して、pHを10〜11に調整した。その後、脱塩、不純物を除去する精製及び粗大粒子除去を行って、顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1の物性値は、固形分が10%であり、pH=10.1、平均粒子径130nmであった。下記に、上記における顔料分散液1中に含まれている、カーボンブラック粒子の表面に有機基が化学的に結合してなる改質顔料の合成スキームを示す。
【0159】
【0160】
又、得られた顔料分散液1について、下記の方法で熱分析したところ重量減少率は2.5%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している有機基の割合を測定したところ、18%であった。
【0161】
先ず、顔料分散液1を、塩析若しくは凝集等を行った後のカーボンブラック沈殿物をろ過により分取し、ろ過により得られた固形分を純水で十分に洗浄し、洗浄後のカーボンブラック固形物を、60℃のオーブンで一晩程度乾燥させた。次に、このカーボンブラック乾固物を(C)とし、このカーボンブラック乾固物を、高分子の良溶媒であるテトロヒドロフラン(THF)を用いてカーボンブラック乾固物の洗浄抽出作業を3回繰り返した。上記のようにして高分子を抽出除去した後のカーボンブラック乾固物から、残存水分や残存溶剤を揮発させるために、真空乾燥機を用いて数百Pa以下の真空度で、60℃×3時間程度乾燥させて、溶媒抽出後のカーボンブラックを得た。そして、この抽出後のカーボンブラックを(D)とし、顔料分散液1について、(C)及び(D)のTGA(熱重量分析)による100℃から700℃の範囲における重量減少率を測定した。得られたそれぞれの測定結果を用い、重量減少率の差=(C)の重量減少率(%)−(D)の重量減少率(%)として、熱分析による重量減少率の差を求めた。
【0162】
(顔料分散液2の調製)
顔料分散液1を調製した場合に使用したスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=10,000、酸価=240、多分散度Mw/Mn=1.6のスチレン−アクリル酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の操作を同様に行い、顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液2の物性値は、固形分が10.5%、pHが9.5、平均粒子径が155nmであった。得られた顔料分散液2について、先に説明した方法で熱分析したところ、重量減少率は4.0%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している有機基の割合を測定したところ、20%であった。
【0163】
(顔料分散液Bkの調製)
顔料分散液1を調製した場合に使用したスチレン−アクリル酸共重合樹脂の代わりに、重量平均分子量=30,000のポリアクリル酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の操作を同様に行い、樹脂結合型の顔料分散液Bkを得た。得られた顔料分散液Bkの物性値は、固形分が10%、pHが9.0、平均粒子径が175nmであった。得られた顔料分散液Bkについて、先に説明した方法で熱分析したところ、重量減少率は3.0%であり、カーボンブラック粒子表面に重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している重合体の割合を測定したところ、15%であった。
【0164】
[熱分析方法]
以下、表面改質された顔料中における有機基の割合の、具体的な測定方法について説明する。先ず、顔料分散液1に対してそれぞれ塩析若しくは凝析を行なった。具体的には、有機基がアニオン性基を有する場合は、塩酸又は硫酸等の酸を添加し、有機基がカチオン性基を有する場合には水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することで顔料分散液1中の顔料及び有機基を塩析により沈殿させることができる、又、場合によってはアルコールを過剰に加える凝析を行うことにより顔料分散液1中の顔料を沈殿させることが可能である。
【0165】
又、顔料分散液1中の顔料を沈殿させる方法として、塩析若しくは凝析を組み合わせる、又、遠心分離を行う等とすることで、有効に顔料分散液1中の顔料を取り出すことが可能である。上記操作により得られた顔料であるカーボンブラックを含む沈澱物をろ過により分取して、ろ過した固形分を純水で十分に洗浄し、洗浄後のカーボンブラック含有固形物を、60℃のオーブンで一晩程度乾燥させた。そして、得られたカーボンブラック含有乾固物を、該共重合体を含むセグメントの良溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)で洗浄した。このカーボンブラック含有乾固物のTHFによる洗浄作業を3回繰り返して行なった後、残存水分や残存溶剤を揮発させるために、真空乾燥機を用いて、数百Pa以下の真空度で60℃×3時間程度乾燥させた。以上のようにして、フリーポリマーとしての該共重合体を含むセグメントが、該共重合体の良溶媒による洗浄の結果、除去された表面改質カーボンブラックのみからなる乾固物を得た。
【0166】
次に、上記で得られた乾固物を測定用試料として、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)により熱重量分析重量減少率を測定した。先に述べたように、その際に得られる重量減少率の値から、顔料であるカーボンブラックに化学的に結合している有機基の結合量を求めた。尚、熱重量分析には、METTLERTOLEDO社製のTGA熱重量測定装置、TGA851e/SDTAを使用した。
【0167】
図1及び2は、顔料分散液1について、上記した方法によって調製した乾固物試料に対する熱重量分析によって得られた、熱重量分析重量減少率の測定データである。図1は、凝析後の、THF洗浄を行なわない乾固物試料についての熱分析結果である。この図1に表われる熱重量分析重量減少率は、インク中の表面改質されてなる顔料に化学的に結合している有機基と、フリーポリマーとしての該重合体部分を含むセグメントとの総量の、該表面改質された顔料に対する割合を表している。
【0168】
又、図2は、上記の乾固物試料を更にTHF洗浄した後に得られる乾固物試料に対する熱重量分析の測定データである。即ち、この図2に表われている熱重量分析重量減少率は、該反応物の良溶媒であるTHFによってフリーポリマーとしてのセグメントを取り除いた後の試料に対するものであるため、表面改質された顔料中の化学結合している有機基の割合を示すものである。
【0169】
顔料分散液1についての熱重量分析測定データでは、図1及び2に示したように、何れの場合も350℃近傍で著しい重量減が見られた。図2においてもこのような結果が得られたことは、熱重量分析用試料を調製する際に、乾固物を該共重合体に対する良溶媒で洗浄したにもかかわらず、該共重合体が失われなかったことを意味している。即ち、顔料分散液1中の顔料には、その表面改質によって、顔料粒子表面に有機物が化学的に結合した状態のものとなっていることを示している。更に、図1及び図2から得られる熱重量分析重量減少率から、次式によって、インク中に含まれる有機基とフリーポリマーとの総和に対する、顔料粒子表面に化学的に結合している有機基の質量割合が求められる。
【0170】
【0171】
<インクの調製>
ブラックンクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
(ブラックインク1)
・トリメチロールプロパン 5部
・グリセリン 7部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・顔料分散液1 50部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミ
カル(株)社製) 0.1部
・水 残部
【0172】
(ブラックインク2)
・エチレングリコール 4部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 3部
・顔料分散液2 45部
・アセチレノールEH(商品名) 0.15部
・水 残部
【0173】
(ブラックインクBk)
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 3部
・顔料分散液Bk 50部
・純水 残部
【0174】
[第2のインクの調製]
カラーインクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
(イエローインクY−1)
・エチレン尿素 6部
・グリセリン 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0175】
(マゼンタインクM−1)
・トリメチロールプロパン 6部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドレッド52 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0176】
(シアンインクC−1)
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・C.I.アシッドブルー9 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0177】
(第1の態様の第2のインク:多価金属イオン含有インク)
更に、上記の各々のカラーインクに、ブラック顔料の沈澱材として機能する2価金属塩をそれぞれ加え、多価金属イオン含有のカラーインクを調製した。
(イエローインク1)
・エチレン尿素 6部
・グリセリン 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・硝酸カルシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0178】
(マゼンタインク1)
・トリメチロールプロパン 6部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドレッド52 3部
・硝酸マグネシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0179】
(シアンインク1)
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・C.I.アシッドブルー9 3部
・硝酸マグネシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0180】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
上記で調製した第1のインクであるブラックインクと、カラーインクの各インクを下記表1のように組み合わせて、実施例1〜4、比較例1〜3のインクセットを作製した。
【0181】
[評価]
上記の実施例1〜4、比較例1〜3の各インクを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。インクジェット記録装置としては、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有する3種類のインクジェット記録装置(商品名:BJF−600、BJF−800、BJF−850;キヤノン(株)社製)を、それぞれ1/600inch平方の領域に、ブラックインクは30ng、カラーインクは15ng相当のインクを付与できるように改造したものを用いた。又、印字パターンとしては、図12のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードとブラック領域の白モヤの評価を目視で行った。
【0182】
尚、実施例2のインクセットを用いた場合では、カラーの印字領域をイエロー及びマゼンタとしたときには、記録媒体のブラックの画像が形成される領域に、シアンインクを予め打ち込んでおいた。このときのブラックインクとシアンインクとの印字デューティは、ブラックインクが100%、シアンインクが15%とした。実施例及び比較例のインクセットを用いて、上記のようにして画像を形成し、各画像について、下記の方法でブリードについて評価を行なった。
【0183】
印字パターンとしては図12のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードの評価を目視で行った。実施例に用いたインクセットは何れも境界部のにじみは抑えられていたが、比較例に用いたインクセットは、何れも境界部のにじみが目立った。
【0184】
(第2の態様の第2のインク:pH変化に対して緩衝作用を持つインク)
先ず、下記の構成材料の混合物をベースとして、シアンインクC−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(シアンインクベース)
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.ダイレクトブルー 199 3.5部
【0185】
(シアンインクC−2)
・上記ベース 21.5部
・水 78.5部
【0186】
(シアンインク2−1)
・上記ベース 21.5部
・酢酸ナトリウム 0.5部
・酢酸 0.65部
・水 77.35部
【0187】
(シアンインク2−2)
・上記ベース 21.5部
・コハク酸 0.35部
・四ホウ酸ナトリウム 0.65部
・水 77.5部
【0188】
下記の構成材料の混合物をベースとして、シアンインクM−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(マゼンタインクベース)
・1,5−ペンタンジオール 5部
・2−ピロリドン 5部
・エチレン尿素 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.アシッドレッド 289 3部
【0189】
(マゼンタインクM−2)
・上記ベース 21部
・水 79部
【0190】
(マゼンタインク2−1)
・上記ベース 21部
・クエン酸ナトリウム 1部
・酢酸 0.9部
・水 77.1部
【0191】
(マゼンタインク2−2)
・上記ベース 21部
・クエン酸二水素カリウム 1部
・酢酸 0.9部
・水 77.1部
【0192】
下記の構成材料の混合物をベースとして、イエローY−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(イエローインクベース)
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.アシッドイエロー 23 3部
【0193】
(イエローインクY−2)
・上記ベース 21部
・水 79部
【0194】
(イエローインク2−1)
・上記ベース 21部
・乳酸ナトリウム 1.5部
・乳酸 1.85部
・水 75.65部
【0195】
(イエローインク2−2)
・上記ベース 21部
・フタル酸水素カリウム 1部
・乳酸 0.9部
・水 77.1部
【0196】
<実施例5〜8、比較例4〜8>
先に調製した第1のインクであるブラックインクと、上記で得られたカラーインクを下記表1に示したように組み合わせて、実施例5〜8、比較例4〜8のインクセットを得た。
【0197】
【0198】
実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを構成する第2のインクに用いたカラーインクが、pHの変化に対して緩衝作用を持つか否かを、50mlのカラーインクに対して1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加したインクのpH値と、水酸化リチウム水溶液を添加しない状態でのインクのpH値との差を測定することにより調べた。その結果を下記表3に示した。又、第1のインクであるブラックインクのpHについても表3に併せて示した。
【0199】
【0200】
<評価>
次に、上記で得られた実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるBJF 800(キヤノン製)の改造機に各々搭載して、印字試験を行った。そして、ブラックインクとカラーインクとの間のブリードについて評価を、下記のようにして行った。印字試験に用いた記録媒体は、キヤノン製コピー用紙:PB PAPER(PBと表示)、ゼロックス製:4024 PAPER(XXと表示)の、普通紙2紙である。
【0201】
(ブラックインクと各カラーインクとの間のブリーディング)
ブラックインクとカラーインクを同一のスキャンで印字する印字方法で、上記普通紙2紙に、実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを用いて、ブラックインクで形成したベタ部に、イエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクで形成したベタ部が隣接するようなパターンを印字した。色の隣接する境界部分を目視で観察して、下記の評価基準で評価した。表4に、得られた結果を示した。
○:全ての境界とで目視でブリードが認められない。
△:目視でわずかにブリードが認められるが、あまり気にならない。
×:目視でブリードが認められる。
【0202】
【0203】
(第3の態様の第2のインク:第1のインク中の顔料極性と逆の極性の色材を有するインク)
[第1のインクの調製]
<顔料分散液の調製>
第1のインクとして先に調製した顔料分散液1と、下記のようにして調製した顔料分散液3〜6を用いた。
【0204】
(顔料分散液3)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液B1を調製した。そして、顔料分散液1の作製で用いた、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=5,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−アクリル酸樹脂を用いて、その後の操作を同様に行って顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液3の物性値は、固形分が10.5%、pHが10、平均粒子径が134nmであった。得られた顔料分散液3について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は4.0%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0205】
(顔料分散液4)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液B1を調製した。そして、顔料分散液1の作製で用いた、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=4,000、酸価=480、多分散度Mw/Mn=2.2のスチレン−アクリル酸樹脂を用いて、その後の操作を同様に行って顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液4の物性値は、固形分が10%、pHが9.0、平均粒子径が140nmであった。得られた顔料分散液4について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は6.2%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0206】
(顔料分散液5)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液A1を作製した。次いで、顔料分散液1の作製の場合に使用したペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の代わりに、アミン価=200、分子量=10,000、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−N,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート樹脂(St−DM)を用い、その後の操作を同様に行って、最終的にSt−DMがカーボンブラックに化学的に結合した顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液5の物性値は、固形分が11%、pHが5.5、平均粒子径が120nmであった。得られた顔料分散液5について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は1.8%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0207】
(顔料分散液6)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液A1を作製した。次いで、顔料分散液1の作製の場合に使用したペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の代わりに、アミン価=450、分子量=4,000、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−N,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート樹脂(St−DM)を用い、その後の操作を同様に行って、最終的にSt−DMがカーボンブラックに化学的に結合した顔料分散液6を得た。得られた顔料分散液6の物性値は、固形分が10%、pHが4.5、平均粒子径が142nmであった。得られた顔料分散液6について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は3.8%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0208】
(インクの調製)
上記で得られた、共重合体セグメントを含む樹脂結合タイプの自己分散型カーボンブラックを用い、下記の成分を混合し、十分に攪拌して溶解或は分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、第1のインクを調製した。
【0209】
(ブラックインク1)
・上記顔料分散液1 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・トリメチロールプロパン 5部
・アセチレングリコールEO付加物 0.1部
・純水 残部
【0210】
(ブラックインク3)
・上記顔料分散液3 45部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0211】
(ブラックインク4)
・上記顔料分散液4 50部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 3部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0212】
(ブラックインク5)
・上記顔料分散液5 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0213】
(ブラックインク6)
・上記顔料分散液6 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.15部
・純水 残部
【0214】
[第2のインクの調製]
<カラー顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸共重合体(分子量5000)
5.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・純水 67.5部
【0215】
先ず、上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂成分を完全に溶解させた。次に、この溶液にC.I.Pigment Yellow 74を20部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記条件で分散処理を行い、更に、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去することで、イエロー顔料分散液3−1を得た。
・分散機:サンドグラインダー
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ1mm径
・粉砕メディア充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
【0216】
又、上記で用いたイエロー顔料分散液3−1のC.I.Pigment Yellow 74の代わりに、C.I.Pigment Red 122を加える以外は、上記と同様にして調製し、マゼンタ顔料分散液3−1を得た。更に、イエロー顔料分散液3−1のC.I.Pigment Yellow 74の代わりに、C.I.Pigment Blue 15:3を用いた以外は、上記と同様にして調製しシアン顔料分散液3−1を得た。
次に、上記で調製した各色顔料分散液3−1の作製条件において、顔料分散剤であるスチレン−アクリル酸共重合体(分子量5,000)の代わりに、ポリオキシエチレンアミンを5.5部使用する以外は、上記したと同様にして、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色顔料分散液3−2を作製した。
【0217】
<カラーインクの作製>
下記の成分を混合し、十分攪拌して溶解或は分散した後、ポアサイズ0.2又は3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、各カラーインクを調製した。
【0218】
(シアンインク3−1)
・C.I.ダイレクトブルー199 3部
・グリセリン 7部
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0219】
(シアンインク3−2)
・C.I.ベーシックブルー100 3部
・グリセリン 7部
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0220】
(シアンインク3−3)
・前記シアン顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0221】
(シアンインク3−4)
・前記シアン顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・水 残部
【0222】
(マゼンタインク3−1)
・C.I.アシッドレッド289 3部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 5部
・トリエチレングリコール 7部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・水 残部
【0223】
(マゼンタインク3−2)
・C.I.ベーシックレッド12 3部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 5部
・トリエチレングリコール 7部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・水 残部
【0224】
(マゼンタインク3−3)
・前記マゼンタ顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0225】
(マゼンタインク3−4)
・前記マゼンタ顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0226】
(イエローインク3−1)
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 7部
・尿素 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0227】
(イエローインク3−2)
・C.I.ベーシックイエロー21 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 7部
・尿素 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0228】
(イエローインク3−3)
・前記イエロー顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0229】
(イエローインク3−4)
・前記イエロー顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0230】
<実施例9〜17>
上記で調製した第1のインクであるブラックインクと、上記で得られた各カラーインクを下記表5に示したように組み合わせて、第2のインク中の色材の極性が、前記第1のインク中の顔料が有している極性とは逆である、実施例9〜17の各インクセットを得た。
【0231】
【0232】
<比較例9>
比表面積が210m2/gで、DBP吸油量が74ml/100gであるカーボンブラックを7部、酸価=200、重量平均分子量=10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を2部、モノエタノールアミンを1部、ジエチレングリコールを15部、グリセリンを10部、純水65部を混合し、サンドグラインダーを用いて1時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、ブラックインクを得た。得られたブラックインク7を、比較例9のインクセットの第1のインクに用いた。該ブラックインク7に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。
【0233】
<比較例10>
先に調製した、ポリアクリル酸樹脂がカーボンブラック表面に結合した顔料分散液3を含むブラックインク3を、比較例10のインクセットの第1のインクに用いた。このブラックインク3に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用した、シアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。
【0234】
<比較例11>
30gの水にH3N+C6H4N+(CH3)3Cl−が3.08g溶けた溶液中に、硝酸銀1.69gを攪拌しながら加える。発生した沈澱物をろ過により除去し、ろ液を、水70gに比表面積が230m2/gでDBPAが70ml/100gのカーボンブラック10gが分散している懸濁液に攪拌しながら加えた。次に、2.25gの濃塩酸を加え、それから水10gに0.83gの亜硝酸ナトリウムが溶けた溶液を加える。すると、NN+C6H4N+(CH3)3基を有するジアゾニウム塩がカーボンブラックと反応して、窒素ガスが発生する。窒素ガスの泡が止まったら、その分散液を20℃のオーブンで乾燥させた。その結果、カーボンブラック粒子表面ににC6H4N+(CH3)3基がついた生成物が得られた。この生成物4部を、実施例で使用したブラックインク4の調製の際の顔料分散液4の代わりに使用して、ブラックインク8を得、これを比較例11のインクセットの第1のインクに用いた。このブラックインク8に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用した、シアンインク3−1、マゼンタインク3−1、イエローインク3−1を用いた。
【0235】
<比較例12>
第1のインクとして、ブラックインク1を用い、このブラックインク1に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−1、マゼンタインク3−1、イエローインク3−1を用いた。この組み合わせは、第2のインク中の色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性と、アニオン性同士で同じである。
【0236】
<比較例13>
第1のインクとして、ブラックインク6を用い、このブラックインク6に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。この組み合わせは、第2のインク中の色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性と、カチオン性同士で同じである。
【0237】
<評価>
上記上記実施例9〜17及び比較例9〜13の各インクを用いて、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−660(キヤノン(株)製)を改造して下記の評価を行った。そして、得られた評価結果を表6に示した。
【0238】
1.印字持続性
実施例及び比較例の各インクと、上記インクジェット記録装置を用い、ノズルチェックパターンが最初に入っているベタ印字を連続してA4用紙3枚に印字を行ない、次に、その後2時間印字を行わず、その後再びベタ印字を連続して3枚印字するサイクルを10回繰り返した。その時の印字みだれ、及び不吐出の有無を下記の基準で評価した。
○:印字みだれ及び不吐出がみられない。
△:印字みだれが若干みられるが、不吐出はみられない。
×:印字みだれ、不吐出がみられる。
【0239】
2.耐マーカー性
上記各インクと上記したインクジェット記録装置とを用い、下記の5種類のコピー用普通紙A〜Eに印字を行い、得られた画像を1日放置した後、市販の水性蛍光マーカーペン(例えば、ゼブラ製蛍光ペン OPTEX OP−100−Y)を用いて印字部分をマーキングして、マーキング部分の汚れを観察して、以下の基準で評価した。
○:全ての紙で汚れが目立たない。
△:一部の紙で汚れが目立つ。
×:全ての紙で汚れが目立つ。
【0240】
上記画出し試験において、コピー用紙は以下に示すものを用いた。
A:キヤノン(株)社製、PPC用紙NSK
B:キヤノン(株)社製、PPC用紙NDK
C:ゼロックス(株)社製、PPC用紙4024
D:フォックスリバー(株)社製、PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ(株)社製、キヤノン用PPC用紙
【0241】
3.耐ブリード性
ブラックインクのベタ部と、イエロー又はマゼンタ、又はシアンインクのベタ部が隣接するようなパターンをCanon/PB paperに印字し、ブラックインクとカラーインクとの境界部分を目視にて観察し、ブリードの発生の有無を下記基準にて評価した。
◎:全ての境界部でブリーディングが全く認められない。
○:僅かにブリーディングが認められるが、問題ないレベルである。
△:若干のブリーディングがみられる。
×:殆どすべての境界でブリーディングが目立つ。
【0242】
【0243】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特に、ブラックインクに求められる印字品位、画像堅牢性等の種々の性能を満たし、このブラックインクが、他の色のインクとの間にブリードを生じることがない画像を得ることができ、優れたカラー画像の形成が可能な、記録ヘッドに対するインクの信頼性を有しつつ、且つ、印字後の擦れによる印字汚れ耐擦過性や、印字後の水性マーカーによる耐マーカー性を改善できる、インクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した顔料分散液の顔料を凝析した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図2】実施例で使用した顔料分散液の顔料を凝析後、更に、THFで洗浄処理した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図3】比較例で使用した顔料分散液の顔料を凝析した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図4】比較例で使用した顔料分散液の顔料を凝析後、更に、THFで洗浄処理した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図5】インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図である。
【図6】インクジェット記録装置ヘッドの縦横面図である。
【図7】図5に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図8】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図9】インクカートリッジの縦断面図である。
【図10】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図11】記録ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図12】カラーとブラックの画像領域が隣接する印字パターンを示す図である。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:紙給部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の色のインクを用い、これらのインクを組み合わせて記録媒体にカラー画像を記録する際に使用するインクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関し、とりわけ、普通紙に対して、充分な画像濃度を有し、鮮明で高品質な画像が得られ、更に、印字物の耐水性、耐光性に優れる画像を与えると共に、黒色画像とカラー画像とが隣接した場合にも、その境界領域におけるブリードが十分に緩和されたカラー画像を与えるインクセット、これを用いた画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷インクの着色剤として、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた顔料が広く用いられている。インクジェット記録用のインクにおいても、インクジェット記録画像の堅牢性のより一層の向上を目指して、インク中の色材に顔料を採用することの検討が活発となってきている。ところで、顔料をインクジェット用の水性インクの色材として用いるためには、水性媒体中に顔料を安定して分散させることが肝要である。一般に、顔料を水性媒体中に均一に分散するためには、分散剤、例えば、樹脂分散剤が用いられている。かかる樹脂分散剤は、一般に、水性媒体に対して顔料を安定に分散させるための親水性基と、疎水性である顔料表面に物理的に吸着するための疎水性部とを有する水溶性樹脂が用いられている。このような顔料インクによって得られるインクジェット記録画像は、樹脂分散剤の存在により、耐擦過性や耐マーカー性等の点で、比較的良好な品位を備えている。
【0003】
一方、高品位なインクジェット記録画像を安定して形成するためには、インクジェット記録ヘッドの微細なノズルから、インクが安定な液滴として吐出させることが重要である。具体的に述べれば、例えば、インクジェット記録ヘッドのオリフィスの乾燥によって、該オリフィスにおいてインクが固化しないことが安定なインクジェット記録を行なう上で重要である。しかし、上記したような樹脂分散剤によって水性媒体中に顔料を分散させているインクジェット用の顔料インクは、この点において課題を抱えている。即ち、上記したようなインク中には、顔料表面に吸着せずに、インク中に溶解状態で存在している樹脂分散剤が相当量あると考えられており、そのような樹脂分散剤がインクジェット記録ヘッドのオリフィス等に付着することによってノズルの目詰まりを生じさせる場合がある。
【0004】
又、べた印字等の連続印字等を行う場合には、ヘッド温度上昇に伴いインクの吐出が不規則になり吐出方向曲がりが発生し、インクの着弾点がずれるという問題が生じる。又、更に、連続印字を継続すると、ノズルからインクがあふれながら吐出を繰り返していくうちに、ノズル近傍のオリフィス面にインクが付着するようになる。そして、そのノズル近傍のインクの付着部を核として、大きなインクダマリがオリフイス上に形成される。そして、この状態で更に印字を続けた場合には、吐出すべきインクがオリフイス上のインクダマリに引き込まれ、吐出不可能になる、といったヌレ不吐問題等、顔料インクを用いた場合には、記録ヘッドに対するインクの信頼性に劣るという課題があった。
【0005】
上記したような課題に対し、顔料インクの信頼性を改善する方法が、例えば、特許文献1、特許文献2で述べられている。具体的には、カーボンブラック粒子表面に水溶性基を導入することによって、分散剤を使用することなく安定に水性インク中に分散させることのできる顔料(自己分散性顔料)を色材として用いた、顔料インクが開示されている。
【0006】
しかしながら、かかる自己分散性顔料を用いた水性顔料インクを用いて記録媒体、特に普通紙上に印刷を行った場合には、インクが充分に乾いた後でも、印字面を強く擦った場合に印字面が汚れてしまい、画像の耐擦過性が十分でないことがある。このように、樹脂分散剤をインクに用いないことは、インクジェット記録の信頼性のより一層の向上には有効に機能するものの、インクジェット記録物のある種の品位を損ねてしまう場合がある。
【0007】
一方、特許文献3は、顔料表面に樹脂を化学的に結合させたタイプの自己分散性顔料を含むインクジェット用インク及びそれを用いたインクジェット記録方法を開示している。そして、該自己分散性顔料は、顔料表面の官能基と反応し得る反応性基を有するセグメント(A)と、前記反応性基を実質的に有さず、且つ前記セグメント(A)よりも液媒体に対して高い親和性を示すセグメント(B)とを有する重合体を、顔料と加熱させることで得られるものであることが開示されている。
【0008】
しかしながら、この発明においては、顔料表面に反応させる重合体として特定の官能基が必要であり、使用できる重合体が限定されてしまい、又、顔料表面にも重合体と反応可能な官能基が必須であり、使用できる顔料の種類も限定されてしまう、といった問題がある。又、本発明者らの検討によれば、製造上の問題として、顔料表面と反応性基を有さないセグメントにイオン性を持たせることは難しく、水性媒体に対して十分な分散性を有する顔料を得ることは難しい、と考えられる。
【0009】
又、特許文献4に、少なくとも1つの水可溶化官能基と、少なくとも1つの共有結合で付着されたポリマーとを含む巨大分子発色団を含んでいるインクジェット用インク組成物であって、上記ポリマーが、上記巨大分子発色団に対し、求核置換又はアシル化反応によって付着されてなるインクジェット用インク組成物が開示されている。しかしながら、この発明においては、ポリマー中に、アミン又はヒドロキシル終端が必須であり、使用できるポリマー種が限定されてしまうこと、末端変性ホモポリマーの官能基による分散によって耐擦過性の改善はなされるものの、耐マーカー性については不十分である、といった課題があった。
【0010】
更に、特許文献5には、少なくとも1つの水可溶化官能基と、少なくとも1つの共有結合で付着されたポリマーとを含む、巨大分子発色団を含有するインクジェット用インク組成物が開示されている。この発明におけるインクジェット用インク組成物は、水溶性を付与するために付着された官能基、及び共有結合で付着されたビニルポリマー鎖の両者を有する変性された顔料粒子(巨大分子発色団)を含むが、かかる組成物を製造する場合に、顔料表面にポリマー鎖を共有結合で付加させる工程において、顔料を、モノマーと開始剤の存在下でラジカル重合させることでポリマーを成長させている。しかしながら、本発明者らの検討では、この方法では、モノマーのラジカル重合におけるポリマーの分子量制御が困難であり、又、水溶性ポリマーの水中に対する溶解性の指標としての酸価若しくはアミン価の制御も困難であり、それに加えて、それらのポリマーが顔料表面と確実に共有結合しているかが定かではなかった。つまり、成長していくポリマーの末端ラジカルが、確実に顔料表面と結合し、重合が停止するとは限らず、一部は顔料表面と結合するが、成長していくポリマー同士の結合によって重合反応が停止してしまう場合もあり、効率的にポリマーを顔料表面に結合させることは非常に困難である、という製造上の課題が認められた。
【0011】
又、特許文献6において、複数の分子を用いた樹脂結合タイプの自己分散性顔料のことが述べられている。この樹脂結合タイプの自己分散性顔料は、イオン性を有する水性顔料分散が可能である。しかし、本発明者らの検討によれば、これらの樹脂結合タイプの自己分散性顔料を用いることによって、インクの記録ヘッドに対する信頼性は確保できるものの、印字後における画像の、耐擦過性や耐マーカー性については未だ改善の余地があった。
【0012】
上記した課題に加えて、近年、インクジェット記録画像に対して、銀塩写真とほぼ同レベルの画質が要求されてきている状況下においては、単色の画像の品位ばかりでなく、記録媒体上で2つの異なる色の画像が隣接して形成されたときに生じる、画像の境界における境界部の滲み(以下、ブリードと呼ぶ)を抑制することも、重要な解決すべき技術課題となっている。
【0013】
これらの課題に対して、従来より、インクジェット方式の記録において、特に普通紙に対しての、印字濃度、印字品位、耐水性及び耐光性等の堅牢性に優れた黒色画像を形成するために顔料を用いたブラックインク、更には、ブラックインクで印字された画像とカラーインクで印字された画像との境界部にブリードを生じることのないインクセット、及びそれを用いたインクジェット記録方法や機器についての報告が多数なされている。
【0014】
例えば、特許文献7には、顔料からなる着色剤と、特定のpH環境下で不溶化する分散剤とからなるブラックインクと、該分散剤が不溶化するpHとしたカラーインクとを用いることで、ブリードの発生を防止し得るインクジェットプリント方法、及びインクセットが記載されている。
【0015】
又、特許文献8には、化学的に改質されたブラック顔料、即ち、官能基の導入により水溶性にしたブラック顔料からなるブラックインクと、ブラックインクよりも高いイオン強度が備わるカラーインクを用いることで、イオン強度の急激な変化によって溶解した顔料の凝集を起こし、これによってブリードを軽減し得るインクセットが記載されている。
【0016】
しかしながら、特許文献7に記載されているような、顔料からなる着色剤と、特定のpH環境下で不溶化する分散剤とからなるブラックインクと、該分散剤が不溶化するpHを有するカラーインク、とを用いたインクセットの場合は、確かにブリードの発生はかなり抑えられるが、ブラックインク中において、顔料に吸着していないフリーなポリマー分散剤が存在し、それらも分散剤が不溶化するpHを有するカラーインクによって凝集を起こすため、結果として、より高濃度の緩衝剤を含むカラーインクが必要となる。このことは、カラーインクの吐出安定性等の、インクジェット記録用インクとしての信頼性の低下を生じさせる原因となる。
【0017】
又、特許文献8に記載されているような、化学的改質されたブラック顔料、即ち、官能基の導入により水溶性にしたブラック顔料からなるブラックインクと、ブラックインクよりも高いイオン強度が備わるカラーインクを用いたインクセットの場合は、ブラックインクの印字濃度、印字品位、画像堅牢性等を満足させることはできるものの、ブリードを抑える効果は充分であるとは言えず、滲みを軽減させるために高分子量コロイドを添加しなければならず、その結果、ブラックインクの粘度が上昇し、吐出性能が低下することが生じる場合がある。
【0018】
又、その他にも、特許文献9には、酸性カーボンブラックとアルカリ可溶性の重合体を用いたインクが記載され、特許文献10には、ブラックインクの中に少なくとも1種のアニオン染料を有し、イエローインク中に少なくとも1種のカチオン染料と多価沈澱剤とを含むブリーディングを防止し得るインクジェット用インクセットが記載されている。又、特許文献11には、アニオン性インクとカチオン性インクとを用い、少なくとも一方のインク中に、そのインクのイオン特性を有するポリマーを含有させておき、該ポリマーの存在下、多色印刷時にアニオン性インクとカチオン性インクを接触させることで、ブリードの発生を低減をさせたインクセットが記載されている。
【0019】
しかしながら、上記、特許文献9に記載されているような酸性カーボンブラックとアルカリ可溶性の重合体を用いたインクの場合、アルカリ可溶性の重合体によりカーボンブラックが分散されるが、この樹脂分散型顔料インクは、ヘッドに対する信頼性を確保する上での制約が多い。又、これらの樹脂分散型や自己分散型顔料インクで、記録媒体、特に普通紙上に印刷を行った場合には、インクが十分に乾いた後に印字面を強く擦った場合に、印字面が汚れてしまうという耐擦過性や、水性マーカーで印字面をなぞった場合の耐マーカー性が悪い、といった問題があった。
【0020】
又、特許文献11に記載されているような、多色印字時に、ポリマーの存在下でアニオン性インクとカチオン性インクとを互いに接触させることにより、ブリードを低減させる場合には、含有させるポリマーの種類によっては、インクの信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。特に、印字中に、あるノズルからインクを吐出させた後、そのノズルから一定時間(例えば、1分間程度)インクの吐出を行わなかった場合に、そのノズルから次の1滴目のインクを吐出させた場合に安定した吐出が行えず、印字が乱れてしまうといった不都合が生じる場合がある。本明細書においては、以降、このような状態のことを“発一性が悪い”と言う。
【0021】
更に、特許文献12には、カチオン性基をその表面に有してなるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、アニオン性染料を着色剤としたカラーインクを用いたインクセットについての記載がある。しかし、この場合には、ブラックインクによって形成したブラックインク画像については、印字濃度、印字品位、画像堅牢性等を満足させることはできるが、印字後の擦れによる印字汚れ耐擦過性や、水性マーカーによる耐マーカー性が十分ではなく、更には、カラーインク画像との間に生じるブリードの発生に対する抑制効果に関しては、まだ不十分であった。
【0022】
【特許文献1】
特開平8−3498号公報
【特許文献2】
特開平10−195360号公報
【特許文献3】
特開平9−272831号公報
【特許文献4】
特開2000−53902公報
【特許文献5】
特開2000−95987公報
【特許文献6】
国際公開第01/51566号パンフレット
【特許文献7】
特開平7−1837号公報
【特許文献8】
特開平10−272768号公報
【特許文献9】
特開平3−210373号公報
【特許文献10】
特開平6−57192号公報
【特許文献11】
特開平7−145336号公報
【特許文献12】
特開平10−183046号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い画像濃度(OD)と、優れた耐擦過性、耐マーカー性とを備えた画像を与えると共に、異なる色の画像とが隣接したときに、その境界におけるブリードの発生を抑制することができ、高品位なカラー画像の形成を達成し得るインクセットを提供することにある。又、本発明の他の目的は、高品位なカラー画像を形成することのできる画像形成方法、このような画像形成方法に用いることのできる記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0024】
又、本発明の目的は、ブラックインクやカラーインクによって得られる画像の発色性に優れ、特にブラックインク画像に求められている、高い印字品位や、印字汚れ耐擦過性や印字汚れ耐マーカー性に対する高い画像堅牢性等、種々の性能を満たすと同時に、記録媒体上に形成されたブラック画像とカラー画像との境界領域におけるブリードの発生が、より有効に抑制された画像形成ができ、しかも、各インクが、吐出安定性等のインクジェット記録特性にも優れ、ヘッドに対する高い信頼性をも有するインクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一態様によれば、少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクと、を有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するのに用いられるインクセットであって、上記第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含み、上記第2のインクは、色材を含み、且つ上記第1のインクと混合されたときに上記第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる水性インクであることを特徴とするインクセットである。
【0026】
好ましい形態としては、上記構成において、第2のインクが多価金属イオンを含んでいるインクセットが挙げられる。更に、かかる構成において、上記多価金属イオンは、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+からなる群から選ばれる少なくとも1つであるインクセット、又、上記多価金属イオンは、第2のインクの全質量に対して0.1〜15質量%含まれているインクセット、又、上記第2のインクは、アニオン性染料を少なくとも1種を含み、且つ、酸性のpHを有するインクセット、又、上記第2のインク中の色材は、酸性染料及び直接染料から選ばれる少なくとも何れかであるインクセットが挙げられる。
【0027】
好ましい別の形態としては、上記構成において、第2のインクは、第1のインクとの混合により、該第1のインクにpH変化を生じさせ、該第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用(水素イオン濃度の変化に対して緩衝作用)を有するインクセットが挙げられる。更に、かかる構成において、上記第2のインクのpH値が、該第2のインク50mlに対して1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前の第2のインクのpH値との差が1.0以内になるように調整されているインクセット、又、第1のインクのpHが、前記第2のインクのpHよりも低いインクセット、又、第2のインクのpHが、中性領域から酸性領域の値をとるインクセットが挙げられる。
【0028】
好ましい別の形態としては、上記構成において、第2のインク中の色材の極性が、前記第1のインク中の顔料が有している極性とは逆であるインクセットが挙げられる。更に、上記したいずれかの構成を有する、ブリストウ法によって求められる上記第2のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満であるインクセットが挙げられる。
【0029】
好ましい別の形態としては、上記いずれかの構成において、第1のインクを構成する顔料が、カーボンブラックであるインクセット、又、前記第1のインクを構成する他の原子団が、フェニル(2−スルホエチル)基であるインクセット、又、前記第1のインクを構成する共重合体のMwが1,000〜30,000であり、且つ酸価若しくはアミン価が100〜500であるインクセット、又、前記第1のインクを構成する共重合体の多分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、3以下であるインクセット、又、ブリストウ法によって求められる前記第1のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満であるインクセット、又、前記Ka値が0.2(ml/m2/msec1/2)以上であるインクセット、又、前記第1のインクが、改質された顔料中における有機基の、該顔料の全質量に対する割合が5〜40質量%、更に好ましくは、10〜25質量%のものであるインクセット、又、前記第1のインクはブラックインクであり、且つ前記第2のインクはカラーインクであるインクセットが挙げられる。
【0030】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを用い、記録媒体上にインクジェット記録方式でカラー画像を形成する画像形成方法であって、上記インクセットを構成している第1のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、を具備していることを特徴とする画像形成方法が提供される。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを構成している第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2のインク収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッド群と、を有していることを特徴とする記録ユニットが提供される。
【0032】
本発明の他の実施態様によれば、上記した何れかのインクセットを構成しているブラックインクを収容している第1のインク収容部と、カラーインクを収容している第2のインク収容部と、該ブラックインク及び該カラーインクを各々吐出するためのインクジェットヘッド群と、記録情報に応じて、該インクジェットヘッドを駆動する手段と、を有していることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
【0033】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るインクセットは、少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクと、の組み合わせを有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するのに用いられるインクセットであって、上記第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含み、上記第2のインクは、色材を含み、且つ上記第1のインクと混合されたときに、上記第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有する水性インクであることを特徴とする。
【0034】
先に述べたように、インクジェット記録に用いるインクにおいて、高い画像濃度や完全な画像堅牢性を確保するためには、染料インクよりも、色材として顔料を用いる顔料インクが有利である。ところが、顔料をインクの色材に用いるには、一般的には、顔料を良好な状態に分散させるために何らかの分散剤が添加されるが、このような顔料インクをインクジェット記録に利用した場合においては、分散剤を含むことによる種々の弊害を生じ易い。例えば、高分子型の分散剤を用いた場合には、ヘッド部のフェイス面が濡れ易くなったり、目詰まりが起こったり、保存安定性が悪いといった問題があった。又、界面活性剤型の分散剤を用いた場合には、画像濃度が低く、更に、ヘッド部のフェイス面が濡れ易い等の問題があった。
【0035】
これに対し、本発明において使用する第1のインクの色材として含有させる特定の顔料の場合は、分散剤を含有させなくても、顔料自体が所謂自己分散をするので、上記したインク中に分散剤が含まれることによる弊害を生じることはなくなる。即ち、本発明において使用する第1のインクに用いる顔料は、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料であり、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体、との反応物を含む。このために、本発明において使用する第1のインクにおいては、先ず、顔料表面に結合している反応物を構成している共重合体中に、イオン性モノマーユニット(親水性部)を含むため、この働きによって顔料自体が水等の水性媒体に対して安定した分散状態を保つことができ、分散剤を特に必要とすることなく、インクジェット記録用のインクとすることができる。このため、前記したインク中に分散剤が含まれることによる弊害を有効に防止できる。更に、顔料表面に結合している反応物を構成している共重合体中には、疎水性モノマーユニット(疎水性部)を有するため、水性顔料インクであるにもかかわらず、該インクによって形成された画像の耐擦過性や、耐マーカー性が向上する。これらについては、後述する。
【0036】
そして、本発明では、カラー画像の形成にあたり、更に、上記した第1のインクと組み合わせる、第1のインクとは色の異なる第2のインクとして、上記第1のインクと混合されたときに第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクを用いる。かかる構成によって、異なる色のインク画像が隣接したときに、その境界において生じるブリードを抑制することのでき、この結果、高品位なカラー画像の形成が達成される。上記における第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させるインクの具体的な形態としては、下記に挙げる3つの態様を挙げることができる。第1の態様では、多価金属イオンを含んでいるインクを、第2のインクとして用いる。又、第2の態様では、第1のインクと混合されたときに、第1のインクにpH変化を生じさせ、第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用を有するインクを、第2のインクとして用いる。更に、第3の態様では、色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性とは逆であるインクを、第2のインクとして用いる。以下、先ず、第1のインクについて説明した後、第2のインクについて、これらの3つの態様に分けて説明する。
【0037】
<第1のインク>
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含んで構成されている。以下、第1のインクを構成する改質された顔料について、顔料、官能基、及び共重合体の項に分けて説明する。更に、該顔料とともにインクを構成する水性媒体等について説明する。
【0038】
[顔料]
本発明のインクセットを構成する第1のインクに使用する顔料は、特に限定されず、下記に挙げるようなものが使用可能である。そして、それぞれ後述する方法で、これらの顔料を改質して用いる。顔料の含有量としては、水性インク全質量に対する割合が、0.1〜15質量%、更には、1〜10質量%となるようにすることが好ましい。
【0039】
黒色インクに使用される顔料としては、特に、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品や、別途新たに調製されたものも使用することができる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを何れも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0040】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0041】
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0042】
[官能基]
本発明にかかる水性インク中の顔料において官能基は、顔料表面に直接、若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。該官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、ここで官能基の種類は、該共重合体が担持している官能基との関連において選択される。そして、官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体中に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じるような反応とすることが好ましい。該官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることによって、共重合体を、顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。また、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることによっても同様に共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
【0043】
ここで、顔料表面に化学的に結合されている官能基は、直接、顔料表面に結合していてもよく、また他の原子団を介して結合していてもよい。しかし、比較的分子量の大きな共重合体を顔料表面に導入する場合、共重合体同士の立体障害を避けるために、他の原子団を介して官能基を顔料表面に導入することが好ましい。ここで、他の原子団は、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものでない。しかし、上記した理由により官能基の顔料表面からの距離を制御するという観点から、例えば2価の有機残基が好ましく用いられる。2価の有機残基の例は、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等を包含する。
【0044】
より具体的に述べると、例えば後述する実施例においては、顔料をアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンと反応させて、顔料表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入している。この場合には、アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料表面に化学的に結合している、ということができる。ところで、本発明で使用する第1のインクによる効果としては、以下のことが挙げられる。
【0045】
先ず、第1の効果としては、本発明で使用する第1のインクを構成する顔料は、その表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むので、表面を改質する場合に用いられる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これにより、改質された顔料の親水性を適宜に調整することが可能である。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与できる。更に、インク化する際に、このような顔料と組み合わせて使用する溶媒の選択によって、インクとしての特性のコントロールも可能になる。
【0046】
又、第2の効果としては、本発明者らの検討によれば、顔料表面に結合している共重合体中に疎水性モノマーを用いると、インクの印字汚れ耐マーカー性が向上することがわかった。以下、この耐マーカー性の向上の理由について説明する。
【0047】
先ず、顔料の表面改質に親水性の高分子を用いると、記録媒体への定着後、紙面上で、顔料粒子表面の高分子の絡まり合いが生じ、これによって顔料の凝集力が強くなり、この結果、インクの印字汚れ耐擦過性(耐擦れ性)は向上する。しかしながら、水溶性のマーカーペンで印字面を擦った場合には、顔料表面に存在するものが親水性であるために、マーカーペン中の水や、水性有機溶剤によって、顔料粒子表面の親水性高分子が再溶解してしまうため、マーカーペンの擦れと共に顔料粒子が解けるように流れ出し、その結果、印字汚れ耐マーカー性が発現しにくくなると考えられる。
【0048】
これに対して、本発明で使用する第1のインクを構成する顔料は、顔料表面に化学的に結合している有機基が、イオン性モノマーユニット(親水性部)を有する共重合体を含むため、先ず、記録媒体への印字後、紙面上で顔料粒子表面の共重合体の絡まり合いにより顔料の凝集力が強くなって、インク定着後の印字汚れ耐擦過性が向上する。この点では、上記の親水性の高分子による表面改質顔料を使用したインクの場合と同様である。しかしながら、該有機基は、同時に、疎水性モノマーユニット(疎水性部)を有する共重合体を含むため、インクの定着の過程において、インク中の水及び有機溶剤が乾燥若しくは浸透していく際に、顔料表面の高分子が絡まり合うだけでなく、印字物の最表面に、顔料表面に結合している共重合体の疎水性部が外側を向くように配向すると考えられる。このため、印字物の最外表面に、共重合体の疎水性部が配向することになり、印字物の表面は疎水性になる。この結果、水溶性のマーカーペンで印字面を擦った際にも、マーカーペンのインク中の水や有機溶剤に顔料粒子が再溶解し難くなり、マーカーペンの擦れによる顔料粒子の流れ出しを抑制することができる。
【0049】
[共重合体]
上記イオン性モノマーと疎水性モノマーからなる共重合体としては、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好適に用いられる。
上記アニオン性の共重合体としては、疎水性モノマーと、アニオン性モノマーからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。この際に使用する代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等である。
【0050】
上記において使用するアニオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0051】
本発明にかかる共重合体の一態様としての、アニオン性モノマーと疎水性モノマーと、からなるアニオン性の共重合体としては、上記に挙げた疎水性モノマーから選択された何れかと、上記に挙げたアニオン性モノマーから選択された少なくとも1つとの、少なくとも2つ以上のモノマーからなる。該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等を包含する。
【0052】
かかるアニオン性の共重合体の酸価としては、100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、酸価のばらつきが平均酸価の20%以内であるものを使用することが好ましい。酸価をかかる範囲内とすることによって、顔料表面の親水性が高過ぎて、印字後におけるインク中の水及び溶剤が顔料表面にとどまり、記録媒体への印字後における、インクの耐マーカー性の発現が遅くなることを有効に抑制することができる。又、顔料の表面の親水性が低過ぎてしまい、インク中に顔料が安定に分散しにくくなるといったことも有効に抑制することができる。
【0053】
尚、前記した塩とは、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられ、これらを、単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0054】
上記したアニオン性の共重合体セグメントの重量平均分子量(Mw)は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものであることが好ましく、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものを使用するとよい。更に、共重合体の多分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、3以下であることが好ましい。又、アニオン性の共重合体セグメントの含有量は、表面改質された顔料に対するアニオン性の共重合体の含有率が5質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上、25質量%以下の割合で使用される。共重合体の含有率をこの範囲内とすることで、インクの高粘度化の抑制と分散安定性とを高いレベルで両立させることができる。
【0055】
又、共重合体の多分散度については、共重合体の分子量分布が広くなると、先に述べた共重合体の分子量に基づく性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0056】
次に、本発明にかかる共重合体の他の実施態様としての、カチオン性モノマーと疎水性モノマーとからなるカチオン性の共重合体について説明する。カチオン性の共重合体としては、下記に挙げる疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等を使用することができる。
【0057】
カチオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。具体的には、例えば、アリルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0058】
カチオン性の共重合体は、上記モノマーから選ばれた疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとを含む少なくとも2つ以上のモノマーからなるブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いはこれらの塩等が挙げられる。特に、カチオン性の共重合体のアミン価が100〜500の範囲のものが好ましく、又、アミン価のばらつきが平均アミン価の20%以内であることが好ましい。アミン価とは、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の、KOHのmg数で表す。
尚、前記、塩としては、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、これらを単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0059】
上記カチオン性の共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,000〜30,000の範囲のものを好ましく使用でき、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものが好ましく使用できる。又、カチオン性の共重合体セグメントの多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が、3以下であるものを使用することが好ましい。このようなカチオン性の共重合体のインク中における含有量は、該共重合体によって表面改質された顔料粒子に対して、その含有率が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、カチオン性の共重合体の含有率が、10質量%以上25質量%以下の割合となるようにする。共重合体の含有率をこの範囲内とすることで、インクの高粘度化の抑制と分散安定性とを高いレベルで両立させることができる。
【0060】
又、共重合体の多分散度については、多分散度が大きい場合には、共重合体の分子量分布が広くなり、共重合体の分子量に基づく上記で述べた性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0061】
次に、カーボンブラックを例に挙げて、顔料粒子表面に化学的に有機基を結合させて、顔料を改質する方法について説明する。本発明においては、先ず、顔料粒子表面の官能基、或いは顔料粒子表面に官能基を導入し、これらの官能基に、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体を結合させ、該共重合体を顔料粒子表面に化学的に結合させる方法であれば、通常用いられる何れの方法でもよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
【0062】
カーボンブラック等の顔料粒子表面に、ポリエチレンイミン等を導入し、その末端官能基に、アミノ基を有する、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法や、カーボンブラック等の顔料粒子表面に、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法等の方法を用いることができる。この他のものとしては、最も典型的な例が、WO 01/51566 A1に開示されている。
【0063】
上記した方法において、例えば、アニオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の3工程を含むこととなる。
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加させる工程。
第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
【0064】
上記第2の工程では、第1の工程によってカーボンブラック表面に化学的に結合しているフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等のアミノ基とを反応させることによって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてのアミノ基が導入される。そして第3の工程においては、例えば共重合体のイオン性モノマー部分が有するカルボキシル基の一部をアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基とPEHAの残基とを含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0065】
又、上記した方法において、例えば、カチオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の2工程を含むこととなる。
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
上記第1の工程によって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてスルホン基が導入される。そして第2の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するアミノ基の一部をスルホン基と反応させて(求核置換)、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0066】
(フリーポリマーの存在)
ところで、本発明は、顔料表面に化学結合していない、前記共重合体を含むセグメント(以降「フリーポリマー」と称し、これには、顔料表面に物理吸着しているセグメントも包含する)がインク中に存在することを排除するものではない。しかし、フリーポリマーは、本発明に係る水性インクのインクジェット特性のより一層の向上という観点から、その量は制御されることが好ましい。具体的には、上記フリーポリマーと、顔料表面に結合している有機基との総質量を基準として、上記フリーポリマーの割合を50質量%未満、特には35質量%未満、更には20質量%未満とすることが好ましい。
【0067】
フリーポリマーを多く含むインクをインクジェット記録に用いた場合には、記録ヘッドの吐出口周りのオリフィス等にフリーな有機基が付着し、吐出口周りに不均一なぬれを生じ、インクの吐出が不規則になって吐出方向曲がりが発生し、インクの着弾点がずれるといった問題が生じることがある。又、更に、連続印字を継続すると、ノズルからインクが溢れながら吐出を繰り返していくうちに、ノズル近傍のオリフィス面にインクが付着するようになり、そのノズル近傍のインクの付着部を核として大きなインク溜りがオリフィス上に形成されることがある。この状態で、更に印字を続けた場合には、吐出すべきインクがオリフィス上のインク溜りに引き込まれ、吐出不可能になるといったヌレ不吐と呼ばれる問題が生じることがある。
【0068】
そして、記録ヘッドに対するインクの信頼性において有効な範囲は、顔料粒子表面に化学的に結合している有機基の、該有機基と該フリーポリマーとの総和に占める割合が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上、更には、80%以上であることが好ましい。尚、この値は、後述するような方法によってインク中から取り出した乾固物試料を用い、該試料に対する熱重量分析方法等によって求めることができる。
【0069】
[水性媒体]
上記で説明したようにして得られる共重合体を含む有機基を顔料表面に化学的に結合させてなる改質顔料をインクの色材とした場合に、該顔料の分散媒である水性媒体の例として、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0070】
具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0071】
本発明にかかるインク中に含有される上記に挙げたような水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
【0072】
又、インクの保湿性維持のために、その他、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
【0073】
更に、本発明にかかるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
特に、本発明においては、下記に挙げる構造式(1)〜(4)で表される界面活性剤の何れかを、インク中に含有させることが好ましい。
【0074】
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキルを表し、nは整数を表す。)
【0075】
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表し、nは整数を表す。)
【0076】
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnは、それぞれ整数を表す。)
【0077】
(但し、上記構造式(4)中、m及びnは、それぞれ整数を表す。)
【0078】
上記したような構成を有する本発明にかかるインクは、筆記具用インクや、インクジェット用インクに用いることができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出するバブルジェット(登録商標)記録方法があるが、本発明のインクは、これらの記録方法に特に好適である。
【0079】
ところで、本発明にかかるインクを、上記したようなインクジェット記録に用いる場合には、該インクが、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。
【0080】
又、インクの、記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
【0081】
ここで、インク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは、記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の粗さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、Ka値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定可能である。
【0082】
そして、前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5(ml/m2/msec1/2)未満とすることは、記録画像品質をより一層向上させる上で好ましく、更に好ましくは、0.2以上1.5(ml/m2/msec1/2)未満とすることである。即ち、Ka値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満である場合に、インクの記録媒体への浸透過程の早い段階で固液分離が起こり、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができる。尚、本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙[例えば、キヤノン(株)製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等]を記録媒体として用いて測定した値である。又、測定環境としては、通常のオフィス環境、例えば、温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0083】
[分析方法]
以下、顔料にカーボンブラックを用いた水性顔料インクを例にとって、本発明にかかるインクの特性を評価する際に用いた、分析方法及び評価方法について説明する。しかし、これによって本発明にかかるインクに使用する顔料が、特に限定されるわけではない。本発明で使用する粒子表面が改質された顔料の、表面改質状態を分析する方法としては特に限定されず、通常考えられ得る方法を用いて分析を行うことができる。好ましくは、ESCAやTOF−SIMS等で、カーボンブラック等の顔料粒子表面に存在する有機基の結合状態を分析する方法が挙げられる。
【0084】
カーボンブラック粒子の表面に結合している有機基の量等を測定する方法も特に限定されないが、例えば、下記の方法によって行なうことができる。先ず、前記表面改質したカーボンブラックを含むインクから、塩析若しくは凝析によってインク中から有機基で改質されたカーボンブラック粒子を含む固形分を分取することができる。そして、この方法によってインク中から取り出した固形分から、表面改質されたカーボンブラック(有機基が粒子表面に結合しているカーボンブラック)のみを高純度で分取するには、更に、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させた共重合体の良溶媒で、インク中から取り出したカーボンブラック等を洗浄、乾燥するといった方法を用いることができる。以下、更に詳細な、インク中から表面改質されたカーボンブラックを分取する方法、分取後、乾燥して得られた乾固物を測定用試料として用いることで行なう、表面改質されたカーボンブラック粒子表面に結合している有機基の量の測定、或いはフリーポリマーとしてインク中に存在していることのある該共重合体部分を含むセグメントの量を測定する分析方法について説明する。
【0085】
先ず、分析に先だって、以下のようにして前処理を実施し、測定用試料を調製する。上記で説明した表面改質されたカーボンブラックを含むインクから、塩析若しくは凝析して沈澱物として得られる固形分を乾固させ、その後に、共重合体の良溶媒を用いて洗浄してから、該有機基が粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラックのみの抽出処理を行う。その方法は、(1)塩析若しくは凝析、(2)沈澱物の洗浄、(3)乾固、(4)表面改質カーボンブラックのみの抽出、及び(5)乾燥、という一連の手順によって行うことができる。以下、順を追って説明する。
【0086】
(1)インク中から、表面改質カーボンブラックを含む固形分を塩析若しくは凝析させる方法としては特に限定されず、例えば、(a)塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩で塩析させる、(b)硝酸や塩酸等の酸を用いて凝析(酸析)させる、等の方法を用いることができる。この際、必要に応じて、塩析等の前工程として、例えば、限外濾過等を行ってもよい。
【0087】
(2)上記塩析若しくは凝析等によって得られる固形分を純水で十分に洗浄する。特に、(1)に記載した(b)の凝析を行う際には、洗浄後の濾液が中性になるまで十分に洗浄を行うことが好ましい。
【0088】
(3)上記で得られる洗浄後の固形分は、オーブン等で充分に乾燥し、乾固物として取り出す。この際の乾燥条件等は特に限定されず、例えば、60℃で2時間程度乾燥させればよい。
【0089】
(4)上記(3)で得られる乾固物には、有機基がカーボンブラック粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラック以外に、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合していないフリーポリマー(顔料に物理吸着しているものも含む)が混入している可能性がある。そこで、(3)で得られた乾固物を、該共重合体の良溶媒を用いて洗浄することで、表面改質カーボンブラックを更に高純度に抽出する。上記において使用する、フリーポリマーの良溶媒は、共重合体の構造によって異なり、一概に限定できるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等は、汎用性のある良溶媒である。この場合、このような良溶媒を用いて繰り返して上記乾固物を洗浄し、固形分に混入している可能性のあるフリーポリマーの除去作業を繰り返すことが好ましい。
【0090】
(5)上記したように共重合体部分を含むセグメントの良溶媒による洗浄によって、フリーポリマーの除去処理がなされた固形分は、最後にオーブン等で十分な乾燥処理を行って、残存水分や残存溶剤を揮発させて乾固物試料とする。乾燥の際に使用するオーブン等は特に限定されず、例えば、市販の真空乾燥機等を用いた乾燥を行えばよい。又、乾燥条件等についても、上記表面改質カーボンブラック乾固物から、十分に残存水や残存溶剤が除去できる条件であれば特に限定されない。例えば、数百Pa以下の真空度で、60℃×3時間程度で乾燥させればよい。
【0091】
上記した(1)〜(5)の一連の方法によってインク中から取り出した表面改質カーボンブラック乾固物を測定用試料とし、該試料の重量変化を熱重量分析を用いて測定することで、カーボンブラック粒子表面に結合した有機基の結合量を定量的に測定することができる。この結果、表面改質カーボンブラック粒子の質量を基準として該カーボンブラックに化学的に結合している有機基の含有率の測定が可能となる。
【0092】
この分別には、例えば液体クロマトグラフィーを用いることができる。又、上記(1)〜(3)までの一連の手順で得られた乾固物を測定用試料とし、該試料の重量変化を熱重量分析を用いて測定することで、カーボンブラック粒子表面に結合している有機基の他、フリーポリマー等のインク中の顔料を除く固形分の量を知ることができる。この結果、インク中に含まれている有機基とフリーポリマーとの総和に対する、有機基の割合を求めることができる。尚、インク中に、該共重合体以外の第2のポリマーが混在している場合に、インク中の、有機基とフリーポリマーとの総和に対する該有機基の割合を正確に算出するためには、該フリーポリマーのみの量を測定することが好ましい。その場合には、上記(4)の手順におけるカーボンブラックの洗浄液を、液体クロマトグラフィー等を用いて測定すれば、フリーポリマーのみの量を測定することができる。
【0093】
上記で説明した、(1)塩析若しくは凝析、(2)沈澱物の洗浄、(3)乾固、(4)表面改質カーボンブラックのみの抽出、及び(5)乾燥という一連の手順によって得られる、表面改質カーボンブラックのみを含む乾固物試料中の、結合している有機基の含有率を測定する方法は特に限定されない。例えば、上記手順によって最終的に得られる充分に乾燥させたカーボンブラック乾固物を、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)等により測定し、その結果得られる熱重量分析重量減少率から、容易に求めることができる。以下、この際に行う熱重量分析について詳細に説明する。
【0094】
上記方法によって測定される熱重量分析重量減少率は、表面改質カーボンブラック中におけるカーボンブラック粒子表面に導入された有機基の含有率となる。即ち、かかる熱重量分析重量減少率は下記式で与えられるが、熱重量分析前に高分子物質の良溶媒を用いて洗浄し、表面改質カーボンブラックのみを抽出した乾固物試料の重量に対する、100〜700℃まで昇温して行なった熱重量分析において生じる、カーボンブラック粒子表面に結合している有機基の脱着や燃焼等によって生じる重量減少量の割合である。
熱重量分析重量減少率=A/B×100(%)
A=熱重量分析において100〜700℃まで昇温した際の重量減少量
B=熱重量分析前における試料の重量
【0095】
上記において行なう熱重量分析における分析条件等は特に限定されず、前処理や昇温速度等、通常の条件によって測定すればよい。測定装置としては、例えば、METTLER TOLEDO社製のTGA熱重量測定装置、TGA851e/SDTA等を使用することができる。
【0096】
更に、上記した熱重量分析重量減少率の測定方法を用いれば、本発明で用いる水性顔料インクに含まれる表面改質カーボンブラック等の顔料における、表面改質に用いた物質と顔料粒子との結合状態を知ることができる。即ち、本発明で使用する顔料である、例えば、カーボンブラック粒子表面には、有機基が化学的に結合されている。このため、カーボンブラック粒子表面の有機基は、上記高分子物質の良溶媒を用いた洗浄後も洗い流されることはなく、カーボンブラック粒子表面に安定に結合しているため、上記した抽出処理の有無にかかわらず、熱重量分析重量減少率は、ほぼ同じ値を示す。これに対して、一般的に用いられる樹脂分散型の顔料では、分散剤に用いられている水溶性樹脂がカーボンブラック(顔料)と化学的に結合しているわけではないので、分散に使用した樹脂の良溶媒によって洗浄すると、樹脂は洗い流されてしまうため、上記した抽出処理を行った場合と、処理を行わなかった場合とでは、熱重量分析重量減少率は大きく違ったものとなる。
【0097】
このことから、本発明に好適に用いられる改質された顔料とは、該共重合体の良溶媒による洗浄の前後において、熱重量分析による重量減少率が変化しないか、或いは実質的に変化しないものとすることができる。ここで、洗浄の前後において熱重量分析による重量減少率が実質的に変化しないとは、重量減少率の洗浄前後における値の差が、例えば、7%未満、更には、5%以内であることを指す。
【0098】
上記した熱重量分析を用いる以外にも、顔料粒子表面における、表面改質に用いた物質との結合状態を調べる方法がある。例えば、本発明で用いる表面改質したカーボンブラックを、先に述べたようにして塩析若しくは凝析した後に乾固させたカーボンブラック乾固物を測定用試料とし、かかる試料を、TG−GC−MS(熱重量分析−ガスクロマトグラフ−マススペクトル)、TOF−MS(飛行時間型質量分析装置)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)等とを組み合わせて分析する方法も好適である。これらの方法によって、カーボンブラック乾固物試料における表面改質に用いた物質の結合状態(吸着エネルギーの測定)、更には、カーボンブラック乾固物試料において、結合している有機基の、組成、分子量分布、更には結合ユニットを詳細に知ることができる。
【0099】
<第2のインク>
本発明に係るインクセットは、上記で説明したような第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクとの組み合わせを有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するためのものである。従って、例えば、第1のインクを、カーボンブラックを色材とする黒色インクとした場合には、第2のインクは、他のカラーインクとして構成することを要する。更に、第2のインクには、第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクを用いる。先にも述べたように、第1のインクを構成する顔料としては、カーボンブラックを用いることが好ましいため、通常、第2のインクには、カラーインクを用いる。以下、第2のインクとして使用できるインクについて、色材及び溶媒について説明し、その後、先に述べた第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能を有するインクとするための3つの態様について、それぞれ説明する。
【0100】
[色材]
本発明にかかる第2のインクに用いることのできる色材としては、公知の染料や顔料を用いることができる。染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、等を用いることができる。アニオン性染料としては、既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度を有するものであれば、大抵のものを用いることができる。又、これらのうち何れかを混合して用いることも可能である。
【0101】
本発明において、発色性等の点から特に好適に使用できるアニオン性染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0102】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、39、41、44、48、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、135、142、144
C.I.アシッドイエロー 1、3、4、7、11、12、13、14、17、19、23、25、29、34、36、38、40、41、42、44、53、55、61、76、79、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42
C.I.フードイエロー 3
【0103】
(マゼンタ用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 1、2、4、8、9、11、13、15、20、23、24、28、31、33、37、39、46、51、59、62、63、73、75、79、80、81、83、87、89、90、95、99、101、110、189、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 1、4、6、8、9、13、14、15、18、21、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、257、265、289
C.I.リィアクティブレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、58、59、63、64、180
C.I.フードレッド 87、92、94
【0104】
(シアン用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、8、15、22、25、34、41、70、71、76、77、78、80、86、90、98、106、108、120、142、158、163、168、199、200、201、202、203、207、218、226、236、287
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、43、55、59、62、74、78、80、81、90、100、102、104、111、117、127、138、158、161、185、254
C.I.リィアクティブブルー 1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、100
【0105】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 7、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック 1、2
【0106】
本発明において好適に使用できるカチオン性染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
C.I.ベーシックイエロー 1、2、11、13、14、19、21、25、32、33、36、51
C.I.ベーシックレッド 1、2、9、12、13、37、38、39、92
C.I.ベーシックブルー 1、3、5、7、9、19、24、25、26、28、29、45、54、65
C.I.ベーシックブラック 2、8
【0107】
第2のインクに用いることのできる有機顔料としては、下記のものが挙げられる。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の、その他の顔料が例示できる。
【0108】
又、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、207、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0109】
これらの顔料は、インク中に樹脂分散されていても、水溶性基をつけることにより自己分散されていても、先に述べた第1のインクと同様に、樹脂結合型自己分散をしていてもかまわない。
【0110】
上記した色材の含有量としては、インク全質量中の0.2〜15質量%の範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲とする。即ち、この範囲とすることで、例えば、発色性や、インクの吐出安定性等のインクジェット記録用インクとしての信頼性を、より一層向上させることができる。
【0111】
[溶媒]
上記したような色材の溶媒又は分散媒としては、例えば、水性媒体が挙げられる。水性媒体は、水、或いは水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。第2のインクを調製する場合に使用する水溶性有機溶媒としては、前記第1のインクにて記載したのと同様なものが挙げられる。又、第2のインクをインクジェット法(例えば、バブルジェット(登録商標)法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、インクジェット吐出特性を有するように、前述した第1のインクにて記載したと同様に、インク所望の粘度、表面張力を有するように調製することが好ましい。
【0112】
ここで、第2のインク中の水溶性有機溶媒の含有量は、例えば、インクジェット記録に用いる場合には、該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、又、所望の色調や濃度を有するように適時選択すればよいが、目安としては、例えば、第2のインク全質量に対して3〜50質量%の範囲が好ましい。又、インクに含有される水の量は第2のインク全質量に対して50〜95質量%の範囲が好ましい。
【0113】
[他の成分]
又、第1のインクの場合と同様に、第2のインクの成分として、インクの保湿性維持のためにの保湿性固形分や、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0114】
特に、第2のインク中には、上記で述べた成分の他に、そのインク中の色材の極性と同じか、又はノニオン性の少なくとも1種の界面活性剤を含有させることが好ましい。これらの界面活性剤を含有させることによって、インクに所望の浸透性や粘度を付与させることができ、インクジェット記録用インクに要求される性能をより一層満足させることができる。この際に使用される界面活性剤としては、下記に挙げるような、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤、或いは、これらの2種以上の混合物の何れでもよい。
【0115】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコール酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩等が挙げられる。
【0116】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては例えば、脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0117】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルカノールアミンの脂肪酸アミド類等が挙げられる。
【0118】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0119】
本発明においては、これらのものは何れも好ましく使用されるが、より好ましくは、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤を用いる。更に、上記エチレンオキサイド付加物の付加モル数が4〜20の範囲のものが特に好ましい。
【0120】
上記のような界面活性剤の各インク中における添加量については特に制限はないが、インク全質量の0.01〜10質量%の範囲とするのが好ましい。0.01質量%未満では、界面活性剤の種類にもよるが、一般に所望の浸透性が得られず、10質量%を超える場合には、インクの初期粘度が大きくなり、好ましくない。更に好ましくは、インク全質量の0.1〜5.0質量%の範囲とするのがよい。
【0121】
上記した基本構成を有する第2のインクには、更に、下記に挙げる第1〜3の方法等によって、第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる機能が付与されている。以下、これについて説明する。
【0122】
[第1の態様:多価金属イオン含有インク]
(多価金属塩)
第2のインクを、前記した第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる一つの方法として、多価金属陽イオンを第2のインク中に含有させる態様がある。即ち、多価金属イオンとして、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+からなる群から選ばれる少なくとも一つが、第2のインク中に含有されるように構成する。
【0123】
ここで第2のインクに含有させる多価金属イオンとしては、第2のインクの全質量に対して、例えば、0.1〜15質量%を含有させることが好ましい。上記に列挙したような多価金属陽イオンは、例えば、硝酸塩や酢酸塩等の塩でカラーインク中に添加することが好ましい。尚、第2のインクに、このような多価金属イオンを含有させる場合には、色材として、多価金属イオンと共存した場合においても、その安定性が不安定化しないものを、先に挙げたものの中から選択することが好ましいことは当然のことである。
【0124】
[第2の態様:pH変化に対して緩衝作用を持つインク]
第2のインクを、前記した第1のインクと混合したときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる一つの方法として、第1のインクと混合されたときに、第1のインクにpH変化を生じさせ、第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用を有するものとなるように、第2のインクを構成する。
【0125】
例えば、前記した構成の第1のインクをブラックインクとし、これと組み合わせる第2のインクをカラーインクとして、第2のインクとして、第1のインクの水素イオン濃度(pH)の変化に対して緩衝作用を持つインクを採用することで、ブラックインクで印字された画像と、カラーインクで印字された画像との境界部のブリードが有効に防止される。ここでいう「pH変化に対して緩衝作用を持つ」とは、インクが、pH変化が緩やかな特定領域を有することを意味する。具体的には、50mlのインクに対して、1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加したインクのpH値と、水酸化リチウム水溶液を添加しない状態でのインクのpH値との差が、1.0以内になる領域を有することをいう。以後、上記条件を満たすことを「緩衝作用を持つ」と記す。
【0126】
本発明者らの検討によれば、例えば、第2のインクのカラーインクの構成を、第1のインクのブラックインクのpHよりも低いpH領域で緩衝作用を示すようにすることによって、ブラックインクとカラーインクとの間で生じるブリードが有効に抑制されることが確認できた。特に、ブラックインクとカラーインクとの間でブリードが生じると、品位に劣る画像になる。以下、この例を用いて説明する。
【0127】
上記構成を有する本発明のインクセットによって、上記した効果が得られる理由としては、下記のように考えられる。ブラック画像とカラー画像とが隣接するような画像が印字され、記録媒体上で、上記構成のブラックインクとカラーインクとが隣接すると、ブラックインク中の、例えば、カーボンブラックと、カラーインク中の、例えば、アニオン性染料との間に凝集が起こる。そして、この凝集に伴って、ブラックインク中のカーボンブラックとカラーインク中の染料が、記録媒体上で移動できなくなるような状態となり、この結果、ブリードが有効に防止されたものと考えられる。
【0128】
つまり、記録媒体上で、ブラックインク中の、先述した樹脂結合タイプの自己分散性顔料と、カラーインク中の色材との間に電気的中和が安定して起これば、各々のインクを構成する色材等の分散状態や溶解状態が完全に破壊される。このようにして、ブラックインクやカラーインク中の色材等が移動できなくなれば、記録媒体上において、各インクで印字された領域へ、別のインクが入り込むことがなくなるので、ブリードは生じなくなる。
【0129】
本発明者らの検討によれば、上記した各々のインクを構成する色材等同士の電気的中和は、ブラックインクとカラーインクとが接触した際の境界部のpHに大きな影響を受け、境界部のpHにより、ブリードの効果は大きく左右されることが分かった。即ち、上記2種類のインクが接触した際のpHが塩基性となった場合には、色材等同士の電気的中和は、各々のインクの色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するには不十分な場合があり、その場合にはブリード抑制効果が十分に達成されない可能性がある。従って、ブリードの発生をより有効に防止し、或いはより有効に抑制するためには、上記2種のインクが接触した際の境界部のpHが、各々のインク中の色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するのに十分な色材同士の電気的中和を起こすような値で維持されるようにすることが重要となる。
【0130】
そこで、本発明においては、カラーインク(第2のインク)に対して、これと混合された場合にブラックインク(第1のインク)にpH変化を生じさせ、且つ該pH変化に対して緩衝作用を持たせ、これにより、記録媒体上で2種のインクが接触した際のpH値が、各々のインクの色材等の分散状態や溶解状態を完全に破壊するのに十分な状態に維持されるようにして、印字物のブリードの防止を図る。
【0131】
本発明で使用するpH変化に対して緩衝作用を持つ第2のインクを調製する具体的な方法としては、先に述べたように、50mlのインクに1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前のpH値の差が1.0以内になるようにする。このためには、従来公知の緩衝溶液を作製するのと同様の方法を用いることができる。
【0132】
この際に使用する緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、酢酸、乳酸、酒石酸、炭酸、ジエチルバルビルツ酸等の有機酸、りん酸、ホウ酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸リチウム、クエン酸二水素カリウム、フタル酸水素カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸塩、乳酸ナトリウム、りん酸リチウム、りん酸一ナトリウム、りん酸二ナトリウム、りん酸三ナトリウム、りん酸カリウム、りん酸二カリウム、りん酸三カリウム、りん酸二水素カリウム、りん酸一アンモニウム、りん酸二アンモニウム、りん酸三アンモニウム等のりん酸塩、四ホウ酸ナトリウム、ジエチルバルビルツ酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩、塩化カリウムや塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等の無機アルカリ金属塩、水酸化ナトリウムや水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、グリシン、等が挙げられる。そして、これらの緩衝剤を、単独で、若しくは適宜組み合わせて使用できる。
【0133】
具体的には、例えば、フタル酸水素カリウム/塩酸、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム、クエン酸カリウム/クエン酸、クエン酸二水素カリウム/塩酸、クエン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/コハク酸、クエン酸二水素カリウム/四ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム/乳酸、酢酸ナトリウム/酢酸、りん酸水素二カリウム/クエン酸、酒石酸/酒石酸ナトリウム、ホウ酸+クエン酸/りん酸三ナトリウム、グリシン+塩化ナトリウム/塩酸、クエン酸+りん酸二水素カリウム+ホウ酸+ジエチルバルビルツ酸/りん酸三ナトリウム、ジエチルバルビルツ酸ナトリウム+酢酸ナトリウム/塩酸、等が挙げられる。しかし、これらの組み合わせに限定されるものではない。
【0134】
より具体的には、例えば、りん酸二水素ナトリウム/水酸化ナトリウム、グリシン+塩化ナトリウム/水酸化ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム/四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、塩酸/炭酸ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム/水酸化ナトリウム、塩化アンモニウム/アンモニア、ジメチルグリシンナトリウム/塩酸、ホウ酸+塩化カリウム/炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム等の緩衝剤が挙げられる。これらの塩のインクへの添加量は、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは、1〜8質量%である。これらの範囲にすることで、インクのpHを一定にすることができ、且つインクの安定性を保つことができる。
【0135】
上記に列挙したような化合物の含有量としては、50mlの第2のインクに1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前のpH値との差が1.0以内という条件を、第2のインクが満たすように適宜に調製することが好ましい。但し、この際に、発色性や、インクの吐出安定性等のインクジェット記録特性が、インクジェット記録用インクとしての信頼性を損なわない範囲にする必要がある。
【0136】
[第3の態様:第1のインク中の顔料極性と逆の極性の色材を有するインク]
第2のインクを、前記した第1のインクと混合したときに、第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる方法として、第2のインクの構成を、前記した第1のインク中の顔料が有している極性とは逆の極性の色材を含有するものとする。
【0137】
本発明者らの検討によれば、例えば、第2のインクとして用いるカラーインクの色材を、第1のインクとして用いるカーボンブラックを色材とするブラックインクと逆極性とした場合に、これらのインク画像が隣接、或いは重ね打ちされた場合に、ブリードの発生が有効に抑制できることを見いだした。互いに極性の異なる色材については、先に列挙したものの中から適宜に選択して使用すればよい。
【0138】
例えば、先述した樹脂結合タイプのカチオン性の自己分散性顔料であるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、先に挙げたアニオン性染料から選択された色材を含有するカラーインクとを用いた本発明のインクセットは、従来の自己分散性顔料であるカーボンブラックを着色剤としたブラックインクと、アニオン性染料を着色剤としたカラーインクとのインクセットと比較した場合においても、ブリードの抑制効果が格段に高いことが確認できた。本発明者らは、これは、逆極性の色材を持つカラーインクと接触したときに、従来の単なる水溶性基をつけただけの自己分散顔料の場合よりも、本発明で使用する樹脂結合タイプの自己分散顔料の場合の方が、より大きな凝集体を形成するため、紙面上でインクの移動ができなくなる結果、ブリードの発生の抑制が格段に改善できたものと考えている。
【0139】
(第2のインクの浸透性)
上記したような第2のインクに関して、記録媒体上に高品質なカラー画像を形成するためには、前記で説明したブリストウ法によって求められるKa値を、例えば、1.5(ml/m2/msec1/2)以上のインクとすることが好ましい。即ち、このようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高いため、例えば、イエロー、マゼンタ及びシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも、隣接する異なる色の画像間で生じる色のにじみ(ブリーディング)を抑えることができ、又、これらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも、各々のインクの浸透性が高いため、異なる色の画像との間でブリードを有効に抑えることができる。第2のインクのKa値をこのような値に調整する方法としては、例えば、先に述べたような界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤を添加する等の、従来公知の方法が適用できる。勿論、添加量は適宜選択すればよい。
【0140】
以上のような構成を有する本発明のインクセットは、インクジェット記録に用いられる際に、特に効果的である。この場合に使用するインクジェット記録方法には、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインクを吐出するインクジェット記録方法がある。本発明のインクセットは、これらのインクジェット記録方法に適用した場合に、ブレードが抑制され、しかも耐擦過性や耐マーカー性に優れた画像を形成することができる。以下、これらについて説明する。
【0141】
[記録方法、記録ユニット、カートリッジ及び記録装置]
次に、上記した本発明にかかる第1、第2のインクを用いて記録を行うのに好適に用いることのできる、本発明にかかるインクジェット記録装置の一例について以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図5及び図6に示す。図5は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図6は図5のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0142】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図7には、図5に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図5に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0143】
図8に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図8において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0144】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0145】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0146】
51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0147】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0148】
図9は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0149】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図10に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図10において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図8に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0150】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図11に示す。
【0151】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0152】
図11において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図8に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0153】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例より限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0154】
[第1のインクの調製]
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
比表面積が220m2/gであり、DBP吸油量が112ml/100gであるカーボンブラックを500g、アミノフェニル−2−スルホエチル−スルフォン(APSES)を45g、蒸留水を900g、反応器に投入し、55℃に保温し、回転数300RPMで20分間攪拌した。この後、25%濃度の亜硝酸ナトリウム40gを15分間で滴下し、更に蒸留水50gを加えた。この後、60℃に保温して、2時間反応させた。反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、固形分15%の濃度に調整した。この後、遠心分離処理、及び不純物を除去する精製処理を行った。得られた分散液は、カーボンブラックに前述した(APSES)の官能基が結合した分散液となった。この分散液をA1とする。
【0155】
ここで、この分散液A1中のカーボンブラックに結合した官能基のモル数を求めるために、以下の操作を行った。分散液中のNaイオンをプローブ式ナトリウム電極で測定し、得られた値をカーボンブラック粉末当りに換算し、カーボンブラックに結合した官能基のモル数を求めた。
【0156】
次いで、上記で調製した固形分15%の分散液A1を、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)溶液中に滴下した。この際、PEHA溶液を強力に攪拌しながら室温に保ち、1時間かけて分散液A1を滴下した。このときのPEHA濃度は、先に測定したNaイオンのモル数の1〜10倍量の濃度とし、溶液量は分散液A1と同量で行った。更に、この混合物を18〜48時間攪拌し、この後、不純物を除去するための精製処理を行い、最終的に、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が結合した固形分10%の分散液とした。この分散液をB1とする。
【0157】
次に、共重合体セグメントとしてのスチレン−アクリル酸樹脂を以下のようにして調製した。先ず、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂を190g秤り取り、これに1,800gの蒸留水を加え、樹脂を中和するのに必要なNaOHを加えて、攪拌して溶解して、スチレン−アクリル酸樹脂水溶液を調製した。次に、先に調製した固形分10%の分散液B1を500g、上記スチレン−アクリル酸樹脂水溶液中に攪拌しながら滴下した。次に、分散液B1とスチレン−アクリル酸樹脂水溶液の混合物をパイレックス(登録商標)蒸発皿に移し、150℃で15時間加熱し、蒸発させた後、蒸発乾燥物を室温に冷却した。
【0158】
次いで、この蒸発乾燥物を、pH=9.0に調整したNaOH添加蒸留水中に分散機を用いて分散させ、更に攪拌しながら1.0MのNaOHを添加して、pHを10〜11に調整した。その後、脱塩、不純物を除去する精製及び粗大粒子除去を行って、顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1の物性値は、固形分が10%であり、pH=10.1、平均粒子径130nmであった。下記に、上記における顔料分散液1中に含まれている、カーボンブラック粒子の表面に有機基が化学的に結合してなる改質顔料の合成スキームを示す。
【0159】
【0160】
又、得られた顔料分散液1について、下記の方法で熱分析したところ重量減少率は2.5%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している有機基の割合を測定したところ、18%であった。
【0161】
先ず、顔料分散液1を、塩析若しくは凝集等を行った後のカーボンブラック沈殿物をろ過により分取し、ろ過により得られた固形分を純水で十分に洗浄し、洗浄後のカーボンブラック固形物を、60℃のオーブンで一晩程度乾燥させた。次に、このカーボンブラック乾固物を(C)とし、このカーボンブラック乾固物を、高分子の良溶媒であるテトロヒドロフラン(THF)を用いてカーボンブラック乾固物の洗浄抽出作業を3回繰り返した。上記のようにして高分子を抽出除去した後のカーボンブラック乾固物から、残存水分や残存溶剤を揮発させるために、真空乾燥機を用いて数百Pa以下の真空度で、60℃×3時間程度乾燥させて、溶媒抽出後のカーボンブラックを得た。そして、この抽出後のカーボンブラックを(D)とし、顔料分散液1について、(C)及び(D)のTGA(熱重量分析)による100℃から700℃の範囲における重量減少率を測定した。得られたそれぞれの測定結果を用い、重量減少率の差=(C)の重量減少率(%)−(D)の重量減少率(%)として、熱分析による重量減少率の差を求めた。
【0162】
(顔料分散液2の調製)
顔料分散液1を調製した場合に使用したスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=10,000、酸価=240、多分散度Mw/Mn=1.6のスチレン−アクリル酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の操作を同様に行い、顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液2の物性値は、固形分が10.5%、pHが9.5、平均粒子径が155nmであった。得られた顔料分散液2について、先に説明した方法で熱分析したところ、重量減少率は4.0%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している有機基の割合を測定したところ、20%であった。
【0163】
(顔料分散液Bkの調製)
顔料分散液1を調製した場合に使用したスチレン−アクリル酸共重合樹脂の代わりに、重量平均分子量=30,000のポリアクリル酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の操作を同様に行い、樹脂結合型の顔料分散液Bkを得た。得られた顔料分散液Bkの物性値は、固形分が10%、pHが9.0、平均粒子径が175nmであった。得られた顔料分散液Bkについて、先に説明した方法で熱分析したところ、重量減少率は3.0%であり、カーボンブラック粒子表面に重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。又、後述する方法で、改変された顔料の質量に対する、該顔料に化学結合している重合体の割合を測定したところ、15%であった。
【0164】
[熱分析方法]
以下、表面改質された顔料中における有機基の割合の、具体的な測定方法について説明する。先ず、顔料分散液1に対してそれぞれ塩析若しくは凝析を行なった。具体的には、有機基がアニオン性基を有する場合は、塩酸又は硫酸等の酸を添加し、有機基がカチオン性基を有する場合には水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することで顔料分散液1中の顔料及び有機基を塩析により沈殿させることができる、又、場合によってはアルコールを過剰に加える凝析を行うことにより顔料分散液1中の顔料を沈殿させることが可能である。
【0165】
又、顔料分散液1中の顔料を沈殿させる方法として、塩析若しくは凝析を組み合わせる、又、遠心分離を行う等とすることで、有効に顔料分散液1中の顔料を取り出すことが可能である。上記操作により得られた顔料であるカーボンブラックを含む沈澱物をろ過により分取して、ろ過した固形分を純水で十分に洗浄し、洗浄後のカーボンブラック含有固形物を、60℃のオーブンで一晩程度乾燥させた。そして、得られたカーボンブラック含有乾固物を、該共重合体を含むセグメントの良溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)で洗浄した。このカーボンブラック含有乾固物のTHFによる洗浄作業を3回繰り返して行なった後、残存水分や残存溶剤を揮発させるために、真空乾燥機を用いて、数百Pa以下の真空度で60℃×3時間程度乾燥させた。以上のようにして、フリーポリマーとしての該共重合体を含むセグメントが、該共重合体の良溶媒による洗浄の結果、除去された表面改質カーボンブラックのみからなる乾固物を得た。
【0166】
次に、上記で得られた乾固物を測定用試料として、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)により熱重量分析重量減少率を測定した。先に述べたように、その際に得られる重量減少率の値から、顔料であるカーボンブラックに化学的に結合している有機基の結合量を求めた。尚、熱重量分析には、METTLERTOLEDO社製のTGA熱重量測定装置、TGA851e/SDTAを使用した。
【0167】
図1及び2は、顔料分散液1について、上記した方法によって調製した乾固物試料に対する熱重量分析によって得られた、熱重量分析重量減少率の測定データである。図1は、凝析後の、THF洗浄を行なわない乾固物試料についての熱分析結果である。この図1に表われる熱重量分析重量減少率は、インク中の表面改質されてなる顔料に化学的に結合している有機基と、フリーポリマーとしての該重合体部分を含むセグメントとの総量の、該表面改質された顔料に対する割合を表している。
【0168】
又、図2は、上記の乾固物試料を更にTHF洗浄した後に得られる乾固物試料に対する熱重量分析の測定データである。即ち、この図2に表われている熱重量分析重量減少率は、該反応物の良溶媒であるTHFによってフリーポリマーとしてのセグメントを取り除いた後の試料に対するものであるため、表面改質された顔料中の化学結合している有機基の割合を示すものである。
【0169】
顔料分散液1についての熱重量分析測定データでは、図1及び2に示したように、何れの場合も350℃近傍で著しい重量減が見られた。図2においてもこのような結果が得られたことは、熱重量分析用試料を調製する際に、乾固物を該共重合体に対する良溶媒で洗浄したにもかかわらず、該共重合体が失われなかったことを意味している。即ち、顔料分散液1中の顔料には、その表面改質によって、顔料粒子表面に有機物が化学的に結合した状態のものとなっていることを示している。更に、図1及び図2から得られる熱重量分析重量減少率から、次式によって、インク中に含まれる有機基とフリーポリマーとの総和に対する、顔料粒子表面に化学的に結合している有機基の質量割合が求められる。
【0170】
【0171】
<インクの調製>
ブラックンクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
(ブラックインク1)
・トリメチロールプロパン 5部
・グリセリン 7部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・顔料分散液1 50部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミ
カル(株)社製) 0.1部
・水 残部
【0172】
(ブラックインク2)
・エチレングリコール 4部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 3部
・顔料分散液2 45部
・アセチレノールEH(商品名) 0.15部
・水 残部
【0173】
(ブラックインクBk)
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 3部
・顔料分散液Bk 50部
・純水 残部
【0174】
[第2のインクの調製]
カラーインクは以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧濾過し調製した。
(イエローインクY−1)
・エチレン尿素 6部
・グリセリン 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0175】
(マゼンタインクM−1)
・トリメチロールプロパン 6部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドレッド52 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0176】
(シアンインクC−1)
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・C.I.アシッドブルー9 3部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0177】
(第1の態様の第2のインク:多価金属イオン含有インク)
更に、上記の各々のカラーインクに、ブラック顔料の沈澱材として機能する2価金属塩をそれぞれ加え、多価金属イオン含有のカラーインクを調製した。
(イエローインク1)
・エチレン尿素 6部
・グリセリン 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・硝酸カルシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0178】
(マゼンタインク1)
・トリメチロールプロパン 6部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・2−ピロリドン 6部
・C.I.アシッドレッド52 3部
・硝酸マグネシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0179】
(シアンインク1)
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・C.I.アシッドブルー9 3部
・硝酸マグネシウム塩 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・水 残部
【0180】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
上記で調製した第1のインクであるブラックインクと、カラーインクの各インクを下記表1のように組み合わせて、実施例1〜4、比較例1〜3のインクセットを作製した。
【0181】
[評価]
上記の実施例1〜4、比較例1〜3の各インクを用いて、市販コピー用紙に記録を行った。インクジェット記録装置としては、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有する3種類のインクジェット記録装置(商品名:BJF−600、BJF−800、BJF−850;キヤノン(株)社製)を、それぞれ1/600inch平方の領域に、ブラックインクは30ng、カラーインクは15ng相当のインクを付与できるように改造したものを用いた。又、印字パターンとしては、図12のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードとブラック領域の白モヤの評価を目視で行った。
【0182】
尚、実施例2のインクセットを用いた場合では、カラーの印字領域をイエロー及びマゼンタとしたときには、記録媒体のブラックの画像が形成される領域に、シアンインクを予め打ち込んでおいた。このときのブラックインクとシアンインクとの印字デューティは、ブラックインクが100%、シアンインクが15%とした。実施例及び比較例のインクセットを用いて、上記のようにして画像を形成し、各画像について、下記の方法でブリードについて評価を行なった。
【0183】
印字パターンとしては図12のようなカラーとブラックの画像領域が隣接するものを印字し、境界部のブリードの評価を目視で行った。実施例に用いたインクセットは何れも境界部のにじみは抑えられていたが、比較例に用いたインクセットは、何れも境界部のにじみが目立った。
【0184】
(第2の態様の第2のインク:pH変化に対して緩衝作用を持つインク)
先ず、下記の構成材料の混合物をベースとして、シアンインクC−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(シアンインクベース)
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.ダイレクトブルー 199 3.5部
【0185】
(シアンインクC−2)
・上記ベース 21.5部
・水 78.5部
【0186】
(シアンインク2−1)
・上記ベース 21.5部
・酢酸ナトリウム 0.5部
・酢酸 0.65部
・水 77.35部
【0187】
(シアンインク2−2)
・上記ベース 21.5部
・コハク酸 0.35部
・四ホウ酸ナトリウム 0.65部
・水 77.5部
【0188】
下記の構成材料の混合物をベースとして、シアンインクM−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(マゼンタインクベース)
・1,5−ペンタンジオール 5部
・2−ピロリドン 5部
・エチレン尿素 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.アシッドレッド 289 3部
【0189】
(マゼンタインクM−2)
・上記ベース 21部
・水 79部
【0190】
(マゼンタインク2−1)
・上記ベース 21部
・クエン酸ナトリウム 1部
・酢酸 0.9部
・水 77.1部
【0191】
(マゼンタインク2−2)
・上記ベース 21部
・クエン酸二水素カリウム 1部
・酢酸 0.9部
・水 77.1部
【0192】
下記の構成材料の混合物をベースとして、イエローY−2と、pH変化に対して緩衝作用を持つ2−1、2−2を作製した。
(イエローインクベース)
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・エタノール 2部
・アセチレノールEH(商品名) 1.0部
・C.I.アシッドイエロー 23 3部
【0193】
(イエローインクY−2)
・上記ベース 21部
・水 79部
【0194】
(イエローインク2−1)
・上記ベース 21部
・乳酸ナトリウム 1.5部
・乳酸 1.85部
・水 75.65部
【0195】
(イエローインク2−2)
・上記ベース 21部
・フタル酸水素カリウム 1部
・乳酸 0.9部
・水 77.1部
【0196】
<実施例5〜8、比較例4〜8>
先に調製した第1のインクであるブラックインクと、上記で得られたカラーインクを下記表1に示したように組み合わせて、実施例5〜8、比較例4〜8のインクセットを得た。
【0197】
【0198】
実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを構成する第2のインクに用いたカラーインクが、pHの変化に対して緩衝作用を持つか否かを、50mlのカラーインクに対して1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加したインクのpH値と、水酸化リチウム水溶液を添加しない状態でのインクのpH値との差を測定することにより調べた。その結果を下記表3に示した。又、第1のインクであるブラックインクのpHについても表3に併せて示した。
【0199】
【0200】
<評価>
次に、上記で得られた実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるBJF 800(キヤノン製)の改造機に各々搭載して、印字試験を行った。そして、ブラックインクとカラーインクとの間のブリードについて評価を、下記のようにして行った。印字試験に用いた記録媒体は、キヤノン製コピー用紙:PB PAPER(PBと表示)、ゼロックス製:4024 PAPER(XXと表示)の、普通紙2紙である。
【0201】
(ブラックインクと各カラーインクとの間のブリーディング)
ブラックインクとカラーインクを同一のスキャンで印字する印字方法で、上記普通紙2紙に、実施例5〜8、比較例4〜8の各インクセットを用いて、ブラックインクで形成したベタ部に、イエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクで形成したベタ部が隣接するようなパターンを印字した。色の隣接する境界部分を目視で観察して、下記の評価基準で評価した。表4に、得られた結果を示した。
○:全ての境界とで目視でブリードが認められない。
△:目視でわずかにブリードが認められるが、あまり気にならない。
×:目視でブリードが認められる。
【0202】
【0203】
(第3の態様の第2のインク:第1のインク中の顔料極性と逆の極性の色材を有するインク)
[第1のインクの調製]
<顔料分散液の調製>
第1のインクとして先に調製した顔料分散液1と、下記のようにして調製した顔料分散液3〜6を用いた。
【0204】
(顔料分散液3)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液B1を調製した。そして、顔料分散液1の作製で用いた、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=5,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−アクリル酸樹脂を用いて、その後の操作を同様に行って顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液3の物性値は、固形分が10.5%、pHが10、平均粒子径が134nmであった。得られた顔料分散液3について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は4.0%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0205】
(顔料分散液4)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液B1を調製した。そして、顔料分散液1の作製で用いた、重量平均分子量=15,000、酸価=140、多分散度Mw/Mn=1.5のスチレン−アクリル酸樹脂の代わりに、重量平均分子量=4,000、酸価=480、多分散度Mw/Mn=2.2のスチレン−アクリル酸樹脂を用いて、その後の操作を同様に行って顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液4の物性値は、固形分が10%、pHが9.0、平均粒子径が140nmであった。得られた顔料分散液4について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は6.2%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0206】
(顔料分散液5)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液A1を作製した。次いで、顔料分散液1の作製の場合に使用したペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の代わりに、アミン価=200、分子量=10,000、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−N,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート樹脂(St−DM)を用い、その後の操作を同様に行って、最終的にSt−DMがカーボンブラックに化学的に結合した顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液5の物性値は、固形分が11%、pHが5.5、平均粒子径が120nmであった。得られた顔料分散液5について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は1.8%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0207】
(顔料分散液6)
前記した顔料分散液1と同様の作製方法で、分散液A1を作製した。次いで、顔料分散液1の作製の場合に使用したペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の代わりに、アミン価=450、分子量=4,000、多分散度Mw/Mn=1.8のスチレン−N,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート樹脂(St−DM)を用い、その後の操作を同様に行って、最終的にSt−DMがカーボンブラックに化学的に結合した顔料分散液6を得た。得られた顔料分散液6の物性値は、固形分が10%、pHが4.5、平均粒子径が142nmであった。得られた顔料分散液6について、先に説明した方法で熱分析したところ、質量減少率は3.8%と少なく、カーボンブラック粒子表面に共重合体セグメントが化学的に結合したものであることが確認できた。
【0208】
(インクの調製)
上記で得られた、共重合体セグメントを含む樹脂結合タイプの自己分散型カーボンブラックを用い、下記の成分を混合し、十分に攪拌して溶解或は分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、第1のインクを調製した。
【0209】
(ブラックインク1)
・上記顔料分散液1 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 6部
・トリメチロールプロパン 5部
・アセチレングリコールEO付加物 0.1部
・純水 残部
【0210】
(ブラックインク3)
・上記顔料分散液3 45部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0211】
(ブラックインク4)
・上記顔料分散液4 50部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 3部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0212】
(ブラックインク5)
・上記顔料分散液5 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.1部
・純水 残部
【0213】
(ブラックインク6)
・上記顔料分散液6 50部
・グリセリン 5部
・1,5−ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレノールEH(商品名) 0.15部
・純水 残部
【0214】
[第2のインクの調製]
<カラー顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸共重合体(分子量5000)
5.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・純水 67.5部
【0215】
先ず、上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂成分を完全に溶解させた。次に、この溶液にC.I.Pigment Yellow 74を20部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記条件で分散処理を行い、更に、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去することで、イエロー顔料分散液3−1を得た。
・分散機:サンドグラインダー
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ1mm径
・粉砕メディア充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
【0216】
又、上記で用いたイエロー顔料分散液3−1のC.I.Pigment Yellow 74の代わりに、C.I.Pigment Red 122を加える以外は、上記と同様にして調製し、マゼンタ顔料分散液3−1を得た。更に、イエロー顔料分散液3−1のC.I.Pigment Yellow 74の代わりに、C.I.Pigment Blue 15:3を用いた以外は、上記と同様にして調製しシアン顔料分散液3−1を得た。
次に、上記で調製した各色顔料分散液3−1の作製条件において、顔料分散剤であるスチレン−アクリル酸共重合体(分子量5,000)の代わりに、ポリオキシエチレンアミンを5.5部使用する以外は、上記したと同様にして、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色顔料分散液3−2を作製した。
【0217】
<カラーインクの作製>
下記の成分を混合し、十分攪拌して溶解或は分散した後、ポアサイズ0.2又は3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、各カラーインクを調製した。
【0218】
(シアンインク3−1)
・C.I.ダイレクトブルー199 3部
・グリセリン 7部
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0219】
(シアンインク3−2)
・C.I.ベーシックブルー100 3部
・グリセリン 7部
・2−ピロリドン 5部
・エチレングリコール 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0220】
(シアンインク3−3)
・前記シアン顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0221】
(シアンインク3−4)
・前記シアン顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・水 残部
【0222】
(マゼンタインク3−1)
・C.I.アシッドレッド289 3部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 5部
・トリエチレングリコール 7部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・水 残部
【0223】
(マゼンタインク3−2)
・C.I.ベーシックレッド12 3部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 5部
・トリエチレングリコール 7部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・水 残部
【0224】
(マゼンタインク3−3)
・前記マゼンタ顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0225】
(マゼンタインク3−4)
・前記マゼンタ顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0226】
(イエローインク3−1)
・C.I.アシッドイエロー23 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 7部
・尿素 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0227】
(イエローインク3−2)
・C.I.ベーシックイエロー21 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 7部
・尿素 6部
・アセチレノールEH(商品名) 1部
・純水 残部
【0228】
(イエローインク3−3)
・前記イエロー顔料分散液3−1 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0229】
(イエローインク3−4)
・前記イエロー顔料分散液3−2 30部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・ポリエチレングリコール♯400 5部
・アセチレノールEH(商品名) 0.8部
・純水 残部
【0230】
<実施例9〜17>
上記で調製した第1のインクであるブラックインクと、上記で得られた各カラーインクを下記表5に示したように組み合わせて、第2のインク中の色材の極性が、前記第1のインク中の顔料が有している極性とは逆である、実施例9〜17の各インクセットを得た。
【0231】
【0232】
<比較例9>
比表面積が210m2/gで、DBP吸油量が74ml/100gであるカーボンブラックを7部、酸価=200、重量平均分子量=10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を2部、モノエタノールアミンを1部、ジエチレングリコールを15部、グリセリンを10部、純水65部を混合し、サンドグラインダーを用いて1時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、ブラックインクを得た。得られたブラックインク7を、比較例9のインクセットの第1のインクに用いた。該ブラックインク7に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。
【0233】
<比較例10>
先に調製した、ポリアクリル酸樹脂がカーボンブラック表面に結合した顔料分散液3を含むブラックインク3を、比較例10のインクセットの第1のインクに用いた。このブラックインク3に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用した、シアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。
【0234】
<比較例11>
30gの水にH3N+C6H4N+(CH3)3Cl−が3.08g溶けた溶液中に、硝酸銀1.69gを攪拌しながら加える。発生した沈澱物をろ過により除去し、ろ液を、水70gに比表面積が230m2/gでDBPAが70ml/100gのカーボンブラック10gが分散している懸濁液に攪拌しながら加えた。次に、2.25gの濃塩酸を加え、それから水10gに0.83gの亜硝酸ナトリウムが溶けた溶液を加える。すると、NN+C6H4N+(CH3)3基を有するジアゾニウム塩がカーボンブラックと反応して、窒素ガスが発生する。窒素ガスの泡が止まったら、その分散液を20℃のオーブンで乾燥させた。その結果、カーボンブラック粒子表面ににC6H4N+(CH3)3基がついた生成物が得られた。この生成物4部を、実施例で使用したブラックインク4の調製の際の顔料分散液4の代わりに使用して、ブラックインク8を得、これを比較例11のインクセットの第1のインクに用いた。このブラックインク8に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用した、シアンインク3−1、マゼンタインク3−1、イエローインク3−1を用いた。
【0235】
<比較例12>
第1のインクとして、ブラックインク1を用い、このブラックインク1に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−1、マゼンタインク3−1、イエローインク3−1を用いた。この組み合わせは、第2のインク中の色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性と、アニオン性同士で同じである。
【0236】
<比較例13>
第1のインクとして、ブラックインク6を用い、このブラックインク6に組み合わせるカラーインクには、実施例で使用したシアンインク3−4、マゼンタインク3−4、イエローインク3−4を用いた。この組み合わせは、第2のインク中の色材の極性が、第1のインク中の顔料が有している極性と、カチオン性同士で同じである。
【0237】
<評価>
上記上記実施例9〜17及び比較例9〜13の各インクを用いて、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−660(キヤノン(株)製)を改造して下記の評価を行った。そして、得られた評価結果を表6に示した。
【0238】
1.印字持続性
実施例及び比較例の各インクと、上記インクジェット記録装置を用い、ノズルチェックパターンが最初に入っているベタ印字を連続してA4用紙3枚に印字を行ない、次に、その後2時間印字を行わず、その後再びベタ印字を連続して3枚印字するサイクルを10回繰り返した。その時の印字みだれ、及び不吐出の有無を下記の基準で評価した。
○:印字みだれ及び不吐出がみられない。
△:印字みだれが若干みられるが、不吐出はみられない。
×:印字みだれ、不吐出がみられる。
【0239】
2.耐マーカー性
上記各インクと上記したインクジェット記録装置とを用い、下記の5種類のコピー用普通紙A〜Eに印字を行い、得られた画像を1日放置した後、市販の水性蛍光マーカーペン(例えば、ゼブラ製蛍光ペン OPTEX OP−100−Y)を用いて印字部分をマーキングして、マーキング部分の汚れを観察して、以下の基準で評価した。
○:全ての紙で汚れが目立たない。
△:一部の紙で汚れが目立つ。
×:全ての紙で汚れが目立つ。
【0240】
上記画出し試験において、コピー用紙は以下に示すものを用いた。
A:キヤノン(株)社製、PPC用紙NSK
B:キヤノン(株)社製、PPC用紙NDK
C:ゼロックス(株)社製、PPC用紙4024
D:フォックスリバー(株)社製、PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ(株)社製、キヤノン用PPC用紙
【0241】
3.耐ブリード性
ブラックインクのベタ部と、イエロー又はマゼンタ、又はシアンインクのベタ部が隣接するようなパターンをCanon/PB paperに印字し、ブラックインクとカラーインクとの境界部分を目視にて観察し、ブリードの発生の有無を下記基準にて評価した。
◎:全ての境界部でブリーディングが全く認められない。
○:僅かにブリーディングが認められるが、問題ないレベルである。
△:若干のブリーディングがみられる。
×:殆どすべての境界でブリーディングが目立つ。
【0242】
【0243】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特に、ブラックインクに求められる印字品位、画像堅牢性等の種々の性能を満たし、このブラックインクが、他の色のインクとの間にブリードを生じることがない画像を得ることができ、優れたカラー画像の形成が可能な、記録ヘッドに対するインクの信頼性を有しつつ、且つ、印字後の擦れによる印字汚れ耐擦過性や、印字後の水性マーカーによる耐マーカー性を改善できる、インクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した顔料分散液の顔料を凝析した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図2】実施例で使用した顔料分散液の顔料を凝析後、更に、THFで洗浄処理した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図3】比較例で使用した顔料分散液の顔料を凝析した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図4】比較例で使用した顔料分散液の顔料を凝析後、更に、THFで洗浄処理した後の試料についての熱重量分析結果である。
【図5】インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図である。
【図6】インクジェット記録装置ヘッドの縦横面図である。
【図7】図5に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図8】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図9】インクカートリッジの縦断面図である。
【図10】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図11】記録ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図12】カラーとブラックの画像領域が隣接する印字パターンを示す図である。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:紙給部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
Claims (24)
- 少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色の異なる第2のインクと、を有し、各々のインクを記録媒体に付与することによってカラー画像を記録媒体上に形成するのに用いられるインクセットであって、
上記第1のインクは、顔料粒子の表面に有機基が化学的に結合している改質された顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体と、を含む水性インクであって、上記有機基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含み、
上記第2のインクは、色材を含み、且つ上記第1のインクと混合されたときに上記第1のインク中の顔料の分散安定性を不安定化させる水性インクであることを特徴とするインクセット。 - 前記第2のインクは、多価金属イオンを含んでいる請求項1に記載のインクセット。
- 前記多価金属イオンは、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項2に記載のインクセット。
- 前記多価金属イオンは、第2のインクの全質量に対して0.1〜15質量%含まれている請求項2又は3に記載のインクセット。
- 前記第2のインクは、アニオン性染料を少なくとも1種を含み、且つ、酸性のpHを有する請求項4に記載のインクセット。
- 前記第2のインク中の色材は、酸性染料及び直接染料から選ばれる少なくとも何れかである請求項1〜5の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第2のインクは、前記第1のインクとの混合により、該第1のインクにpH変化を生じさせ、該第1のインク中の顔料の分散性を不安定化させるpHを有し、更に、そのpHに対する緩衝作用を有する請求項1に記載のインクセット。
- 前記第2のインクのpH値が、該第2のインク50mlに対して1規定の水酸化リチウム水溶液を1.0ml添加した際のpH値と、添加前の第2のインクのpH値との差が1.0以内になるように調整されている請求項7に記載のインクセット。
- 前記第1のインクのpHが、前記第2のインクのpHよりも高い請求項7又は8に記載のインクセット。
- 前記第2のインクのpHが、中性領域から酸性領域の値をとる請求項7〜9の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第2のインク中の色材の極性が、前記第1のインク中の顔料が有している極性とは逆である請求項1に記載のインクセット。
- ブリストウ法によって求められる前記第2のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満である請求項1〜11の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクを構成する顔料が、カーボンブラックである請求項1〜12の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクを構成する他の原子団が、フェニル(2−スルホエチル)基である請求項1〜13の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクを構成する共重合体のMwが1,000〜30,000であり、且つ酸価若しくはアミン価が100〜500である請求項1〜14の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクを構成する共重合体の多分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、3以下である請求項1〜15の何れか1項に記載のインクセット。
- ブリストウ法によって求められる前記第1のインクのKa値が1.5(ml/m2/msec1/2)未満である請求項1〜16の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記Ka値が0.2(ml/m2/msec1/2)以上である請求項17に記載のインクセット。
- 前記第1のインクが、改質された顔料中における有機基の、該顔料の全質量に対する割合が5〜40質量%のものである請求項1〜18の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクが、改質された顔料中における有機基の、該顔料の全質量に対する割合が10〜25質量%のものである請求項1〜18の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記第1のインクはブラックインクであり、且つ前記第2のインクはカラーインクである、請求項1〜20の何れか1項に記載のインクセット。
- 請求項1〜21の何れか1項に記載のインクセットを用い、記録媒体上にインクジェット記録方式でカラー画像を形成する画像形成方法であって、
上記インクセットを構成している第1のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクをインクジェット法で記録媒体に付与する工程と、を具備していることを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1〜21の何れか1項に記載のインクセットを構成している第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2のインク収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッド群と、を有していることを特徴とする記録ユニット。
- 請求項21に記載のインクセットを構成しているブラックインクを収容している第1のインク収容部と、カラーインクを収容している第2のインク収容部と、該ブラックインク及び該カラーインクを各々吐出するためのインクジェットヘッド群と、記録情報に応じて、該インクジェットヘッドを駆動する手段と、を有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
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| JP2002276330A JP2004115549A (ja) | 2002-09-20 | 2002-09-20 | インクセット、画像形成方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置 |
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2002
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