JP2004018767A - 難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、成形加工性に優れ、且つ、難燃性能を併せ持つポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部および(B)特定の有機リン化合物(B成分;好適には2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド化合物)1〜100重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部および(B)特定の有機リン化合物(B成分;好適には2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド化合物)1〜100重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な難燃性および良好な物性を有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物を難燃剤として含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐衝撃性等が優れた熱可塑性樹脂として、電気、電子機器、及び自動車部品等の幅広い用途に使用されている。また、ポリカーボネート樹脂単独では不十分な性質に対しては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂や、ABS樹脂、AS樹脂等に代表されるスチレン系樹脂等とブレンドし、樹脂組成物にして補強することで、更に幅広い分野に対応し、多くの製品に使用されている。
【0003】
これらの製品の安全性を高めるために、オフィスオートメーション機器や、家電製品等において難燃性が要求されており、特に近年、材料の絶対量を低くし、軽く、薄くという観点から、より薄肉成形品での難燃性が必要とされている。この場合、成形品の薄肉部分は樹脂の溶融滴下(ドリップ)が発生しやすいため、他の可燃物に燃え広がるおそれを内在する。従って、これらの用途に使用される樹脂組成物には、まずドリップ着火しない高度の難燃性が要求される。
【0004】
難燃性を発現させる為には、各種方法が存在するが、ポリカーボネート系樹脂又はポリカーボネート系樹脂と他の熱可塑性樹脂との樹脂組成物の場合、通常はハロゲン系化合物の難燃剤及びアンチモン化合物等の難燃助剤が添加されている。しかし、この様な難燃剤は、一般に加工時或いは燃焼時に腐食性ガスの発生があるため、成形加工時の金型の保守による工数増加等の問題がある。また将来、製品廃棄時の環境への影響等の懸念もあり、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有しない難燃性樹脂組成物が望まれているのが現状である。
【0005】
また、ポリカーボネート系樹脂に対しては、従来から種々の非ハロゲン系難燃剤の使用が試みられており、特に現在、有機リン系化合物が広く使用され、多くの研究がなされている。かかる化合物の代表として、トリフェニルフォスフェートが挙げられる。しかしながら、トリフェニルフォスフェートの添加は組成物の耐熱性を大きく低下させ、かつ、トリフェニルフォスフェートは揮発性が高い為に、押出し時や成形時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があり、その揮発性のため、成形加工時の金型汚染の問題があった。これらの問題から、従来使用していたハロゲン系難燃剤を含有するポリカーボネート系難燃性樹脂組成物を代替するには不十分であった。
【0006】
上記問題に対し、縮合リン酸エステルを用いて樹脂組成物の性能を向上させる方法が多く提案されており、例えば特開平2−115262号公報、特開平6−228426号公報等に記載されている。しかしながら、かかる縮合リン酸エステルを用いても未だ耐熱性の十分な樹脂組成物は得られず、また、縮合リン酸エステルは、その多くが液体であることから、樹脂との混練には液注装置が必要となり混練時のハンドリング性にも問題があった。
【0007】
また、特に近年、環境問題やリサイクル性の観点から、有機リン系化合物、とりわけ有機リン酸エステルの加水分解性が問題となっている。かかるリン酸エステルとして、レゾルシノールジフェニルホスフェートオリゴマー等の縮合リン酸エステルが挙げられ、該化合物を含有した成形品を高温高湿度下に長時間暴露すると、表面外観が悪化するなどの問題が指摘されている。また、該成形品は本質的にリサイクル不可能であり、廃棄時のリン酸成分流出等による環境に与える負荷も大きい。
【0008】
一方、ハロゲンを全く含まない芳香族環状リン酸エステルについては、米国特許4749645号明細書に写真層の映像染料安定剤として、米国特許5072014号明細書に難燃剤として開示されている。ところが、これらは、分子内にt−ブチル基のような嵩高い置換基を含有するため、樹脂を高度に難燃化するためには多量に添加する必要があり、耐熱性等の機械物性が低下する結果となった。
【0009】
また、特開昭54−157156号公報では、ホスホネート化合物またはホスフェート化合物をポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物が示されている。具体的には、ジフェニルペンタエリスリトールジホスホネート化合物やジメチルペンタエリスリトールジホスホネート化合物使用されている。しかしながら、これらの化合物はそれぞれ難燃性や安全性等が不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、高度な難燃性を有し、且つ工業的に有用な耐熱性および機械的特性等のバランスを兼ね備えたポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、実質的にハロゲンを含有しないで、UL94規格のV−0レベル以上の高度な難燃性を達成することができるポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、押出混練時にガス発生量が少なく、また、成形時に金型汚染が少ない高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、OA機器、家電製品、電気・電子機器、自動車部品などに有利に利用できる難燃性のポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、透明性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、
(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部および(B)下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
本発明によれば、優れた機械的特性、殊に優れた耐熱性を有し、かつ難燃レベルが少なくともV−0を達成する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0018】
以下本発明の難燃性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明において樹脂成分はポリカーボネート樹脂が構成樹脂成分(A成分)中主たる成分を占めればよく、好ましくはポリカーボネート樹脂(A−1成分)が少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%であればよい。A成分中50重量%以下、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下は他の樹脂(A−2成分)であってもよい。この他の樹脂については後で詳しく説明する。
【0020】
本発明の構成樹脂成分(A成分)中のポリカーボネート樹脂(A−1成分)は、塩化メチレン等の溶媒を用いて種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重合反応によって得られるもの、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応により得られるものが挙げられる。代表的なものとしては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンの反応で得られるポリカーボネートである。
【0021】
ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ −3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ −3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、等が挙げられる。これらのジヒドロキシアリール化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
好ましいジヒドロキシアリール化合物には、耐熱性の高い芳香族ポリカーボネートを形成するビスフェノール類、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルケトンなどである。特に好ましいジヒドロキシアリール化合物には、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを形成する2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0023】
なお、耐熱性、機械的強度などを損なわない範囲であれば、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを製造する際、ビスフェノールAの一部を、他のジヒドロキシアリール化合物で置換してもよい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限する必要はないが、あまりに低いと強度が十分でなく、あまりに高いと溶融粘度が高くなり成形し難くなるので、粘度平均分子量で表して通常10,000〜50,000、好ましくは、15,000〜30,000である。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10−4M0.83
(但し[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度で0.7)
ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いる界面重合法(溶液重合法)では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。尚結果として得られた分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0025】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融重合法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノールを炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。かかる反応の初期段階で二価フェノール等と同時にまたは反応の途中段階で末端停止剤を添加させる。また反応を促進するために現在公知のエステル交換反応に用いられる触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0026】
本発明の構成樹脂(A成分)は、前記ポリカーボネート樹脂(A−1成分)の他に熱可塑性樹脂(A−2成分)を含有していてもよい。前述したように他の熱可塑性樹脂(A−2成分)はA成分に基づいて50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0027】
このA−2成分としての熱可塑性樹脂としてはスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらA−2成分のうち、好ましいのはスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーである。
【0028】
次にこのA−2成分としての熱可塑性樹脂について具体的に説明する。
【0029】
A−2成分としてのスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。耐衝撃性の観点からは、ゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、ゴム変性スチレン系樹脂はビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0030】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0031】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
【0032】
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
ゴム変性スチレン樹脂におけるゴム状重合体は、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜50重量%、好ましくは98〜60重量%である。
【0034】
A−2成分としての芳香族ポリエステル樹脂は芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。好ましくはジカルボン酸成分の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分からなる。一方、グリコール成分は好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が炭素数2〜10の脂肪族ジオール成分からなる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種または2種以上を用いることができる。芳香族ジカルボン酸以外の従たるジカルボン酸としては例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0036】
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外のグリコールとしては例えばp,p’−ジヒドロキシエトキシビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール等を挙げることができる。
【0037】
かかる芳香族ポリエステル樹脂の好ましい例としては、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、主たるジオール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、およびテトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のジオールからなるエステル単位を有するポリエステルである。
【0038】
芳香族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0039】
特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
また、本発明に使用できる芳香族ポリエステル樹脂として、上記繰り返し単位をハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーを用いることもできる。
【0041】
テトラメチレンテレフタレートまたはテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしては、例えばジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなり、ジオール成分が炭素数5〜10の長鎖ジオールおよびH(OCH2CH2)iOH(i=2〜5)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールからなり、さらに融点が100℃以下または非晶性であるポリエステルまたはポリカプロラクトンからなるものを用いることができる。
【0042】
なお、主たる成分とは、全ジカルボン酸成分または全グリコール成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の成分であり、主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の繰り返し単位である。
【0043】
本発明における芳香族ポリエステル樹脂の分子量は、通常成形品として使用しうる固有粘度を有していればよく、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が好ましくは0.5〜1.6dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gである。
【0044】
また芳香族ポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基(−COOH)量が1〜60当量/T(ポリマー1トン)であるのが有利である。この末端カルボキシル基量は、例えばm−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定法により求めることができる。
【0045】
A−2成分としてのポリアリレート樹脂とは、全芳香族ポリエステル樹脂全体を指すものである。ポリアリレート樹脂の呼称は、非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂のみを指す場合もあるが、本発明においては、いわゆる液晶ポリマーと称されるタイプの結晶性ポリエステル樹脂を含むものである。
【0046】
本発明で使用する非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂とは、二価フェノール、又は二価フェノールとハイドロキノン及び/又はレゾルシノールをジオール成分とし、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸をジカルボン酸成分とする全芳香族ポリエステル樹脂をいう。かかる二価フェノール成分としては、前記ポリカーボネート樹脂の説明において記載したようなビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系が好ましく使用できるが、特にビスフェノールAが好ましい。またハイドロキノン及び/又はレゾルシノールの使用は、本発明の樹脂組成物の耐薬品性を向上させる点から好ましく使用できるものである。かかる場合、特にハイドロキノンの使用が好ましい。
【0047】
非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂の成形加工製及び耐薬品性を高めるのに好ましい態様の1つとしては、ハイドロキノンとビスフェノールAとをジオール成分とし、イソフタル酸を酸成分として、ハイドロキノンとビスフェノールAとの割合は50/50〜70/30当量%とするものが挙げられる。また本発明の樹脂組成物の耐熱温度を高めるのに有用な他の1つの態様としては、ビスフェノールAをジオール成分とし、テレフタル酸を酸成分として使用する場合が挙げられる。
【0048】
かかる非晶性の全芳香族ポリエステルの製造方法としては特に制限はないが、例えば、酸成分としてテレフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを用い、ジオール成分とアルカリ成分等の触媒を用いて反応させる界面重合法、又は溶液重合法により製造する方法が挙げられる。又、酸成分としてテレフタル酸アリールエステル又はイソフタル酸ジアリールエステルを用い、チタンテトラブトキシド等のチタン化合物の他、ポリエステル重合体の溶融重縮合触媒として既に知られているゲルマニウム化合物、アンチモン化合物及び錫化合物等の触媒を用いてジオール成分と反応させる溶融重合法、及び酸成分としてテレフタル酸又はイソフタル酸を用い、ジオール成分としてp―ジアセトキシベンゼンや2,2’―ビス(4―アセトキシフェニル)プロパンを用い、上記の溶融重縮合触媒を用いて反応させる溶融重合法等を適宜使用することが可能である。
【0049】
本発明の非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂はフェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、35℃にて測定した固有粘度が、耐熱性、成形加工性の観点から0.3〜1.2となることが好ましく、特に、0.4〜0.9が好ましい。
【0050】
本発明に使用する結晶性全芳香族ポリエステル樹脂とは、1種以上のアルキレン基を含有しない二価フェノールと、1種以上の芳香族ジカルボン酸及び/又は1種以上の芳香族ジヒドロキシカルボン酸から得られるものである。より具体的には、かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールをアセテート等の誘導体とし、かかる二価フェノールの活性を高めたものを使用する方法や、又はかかる芳香族ジカルボン酸を酸クロリド及びフェニルエステル等の誘導体としカルボン酸の活性を高めたものを使用する方法から得られるものである。さらに芳香族ジカルボン酸を直接使用し、p−トルエンスルホニルクロリド等の縮合剤によりカルボン酸の活性を高める方法により得られたものが使用できる。
【0051】
かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールのうち好ましいものとしては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0052】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂に使用する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0053】
更に芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼン、1−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼン、2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0054】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂の好ましい態様の1つとしては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレンとを、70/30〜85/15当量%とするものが挙げられる。また他に1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと4,4’−ジヒドロキシジフェニルとテレフタル酸とを、40/30/30〜30/20/20当量%とするものが挙げられる。
【0055】
A−2成分としてのジエン系樹脂としては、1,2−ポリブタジエン樹脂、トランス−1,4−ポリブタジエン樹脂等ジエン構造を有する単量体単独またはこれと共重合可能な単量体との共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
A−2成分としてのポリアミド樹脂としては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドおよびポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。本発明に使用できるポリアミドとしては特に限定されるものではない。
【0057】
このようなポリアミド樹脂の分子量としては特に限定されるものではないが、98%硫酸中、濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.7〜4.5を使用することができ、好ましくは、2.0〜4.0、特に好ましくは2.0〜3.5である。
【0058】
A−2成分としてのポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単重合体もしくは共重合体、あるいはこれらのオレフィン類と共重合可能な単量体成分との共重合体である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂の分子量に関しては特に限定されるものではないが、高分子量のものほど難燃性が良好となる。
【0059】
A−2成分としてのポリフェニレンエーテル樹脂としては、通常PPE樹脂として知られたものが使用できる。かかるPPEの具体例としては、(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル等の単独重合体および/または共重合体が挙げられ、特に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが挙げられる。また、これらのPPEにスチレン化合物がグラフト重合した共重合体であってもよい。かかるPPEの製造法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号記載の方法による第一銅塩とアミン類の錯体を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。
【0060】
PPE樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は、0.2〜0.7dl/gであり、好ましくは0.3〜0.6dl/gである。還元粘度がこの範囲のPPE樹脂は成形加工性、機械物性のバランスがよく、PPE製造時の触媒量等を調整する事により、容易に還元粘度を調整することが可能である。
【0061】
A−2成分としてのポリスルホン樹脂とは、ビスフェノールAとジクロロジフェニルスルフォンから得られるものが挙げられる。かかる化合物をジメチルスルホキシド溶媒中、水酸化カリウム等の存在下、脱塩化カリウムの縮合反応により得ることができる。
【0062】
A−2成分としてのポリフェニレンサルファイド樹脂は下記式で表される繰返し単位を有する。
【0063】
【化5】
【0064】
式中、nは1以上の整数であり、50〜500の整数が好ましく100〜400の整数がより好ましく、直鎖状、架橋状いずれであってもよい。
【0065】
ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法の例としてはジクロロベンゼンと二硫化ナトリウムとを反応させる方法が挙げられる。架橋状のものは低重合度のポリマーを重合ののち、空気の存在下で加熱し、部分架橋を行い高分子量化する方法で製造することができ、直鎖状のものは重合時に高分子量化する方法で製造することができる。
【0066】
A−2成分としてのポリアルキルメタアクリレート樹脂とは、メチルメタクリレートを主成分とするものであり、メチルメタクリレート単独の重合体、もしくはその共重合体である。かかる共重合体の共重合成分としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、又エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、1種または2種以上用いてよい。
【0067】
かかるポリアルキルメタクリレート樹脂におけるメチルメタクリレート成分の割合としては、ポリアルキルメタクリレート樹脂100重量%中、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上含有するものである。さらに共重合成分としてはメチルアクリレートがより好ましく使用できる。
【0068】
A−2成分としてのポリエーテルイミド樹脂は、下記式で表される繰返し単位を有する。
【0069】
【化6】
【0070】
式中のAr1は芳香族ジヒドロキシ化合物残基を示し、Ar2は芳香族ジアミン残基を示す。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前述したポリカーボネート樹脂の説明で示した芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、特にビスフェノールAが好ましい。芳香族ジアミンとしてはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0071】
前記式中のnは5〜1,000の整数を示し、10〜500の整数が好ましい。
【0072】
また、ポリエーテルイミド樹脂の製造方法の例は、米国特許第3,847,867号、米国特許第3,847,869号、米国特許第3,850,885号、米国特許第3,852,242号および米国特許第3,855,178号などに記載されている。
【0073】
A−2成分としての熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、有機ポリイソシアネート、ポリオール及び官能基を2乃至3個有し且つ分子量が50〜400の鎖延長剤の反応により得られるものであり、各種熱可塑性ポリウレタンエラストマーが使用可能である。かかる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えばクラレ(株)製「クラミロンU」(商品名)等容易に入手可能である。
【0074】
A−2成分としての熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、二官能性カルボン酸成分、アリキレングリコール成分、及びポリアルキレングリコール成分を重縮合して得られるものであり、各種熱可塑性ポリエステルエラストマーの使用が可能である。かかる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば東洋紡(株)製「ペルプレン」(商品名)、帝人(株)製「ヌーベラン」(商品名)の等容易に入手可能なものである。
【0075】
前述した種々のA−2成分のうち、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、特にスチレン系樹脂または芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0076】
本発明の難燃性樹脂組成物では、下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)が難燃剤として使用される。
【0077】
【化7】
【0078】
上記一般式(1)において、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、なかでも水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル(異性体を含む)基、ブチル(異性体を含む)基が挙げられる。フェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0079】
上記一般式(1)中、R1およびR4の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、水素原子、メチル基またはフェニル基がより好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0080】
上記一般式(1)において、R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、好ましくはフェニル基である。かかるフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0081】
上記一般式(1)中、R2、R3、R5およびR6の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基、アントリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0082】
前記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)は、ポリカーボネート樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来ポリカーボネート樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、リン化合物単独の使用で実用可能なV−0レベルの組成物を達成することは困難であり、実用上多くの問題点があった。リン化合物を使用してV−0レベルを達成するためには多量のリン化合物を使用する必要があった。更に従来のリン化合物は低沸点化合物であり、押出混練時のガス発生や成形時の金型汚染等の問題が発生した。また、更に通常のリン化合物をポリカーボネート樹脂に添加すると耐熱性が極端に低下し、ポリカーボネート本来の特徴を損なう事が一般に知られている。本発明の樹脂組成物においては、後述する荷重たわみ温度(HDT)保持率が好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0083】
ところが本発明によれば、前記有機リン化合物(B成分)は驚くべきことにそれ自体単独の少量使用によりポリカーボネート樹脂のV−0レベルの難燃化が容易に達成され、また驚くべき事に耐熱性の低下を起こさず、さらに押出混練時のガス発生および成型加工時の金型汚染が抑制されることが見出された。
【0084】
しかし本発明ではB成分の他に、B成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤は、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。これらの他の配合成分については後に具体的に説明する。
【0085】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(B成分)は、前記一般式(1)で表されるが、最も好ましい代表的化合物は下記式(1−a)で示される化合物である。
【0086】
【化8】
【0087】
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
【0088】
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0089】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0090】
B成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(i)B成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0091】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0092】
前述したB成分は、その酸価が好ましくは0.7mgKOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0093】
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0094】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0095】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0096】
前記B成分は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは2〜90重量部、より好ましくは2〜70重量部の範囲で配合される。特に5〜50重量部の範囲が好ましい。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤またはフッ素含有樹脂の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
【0097】
本発明の難燃性樹脂組成物にはフッ素含有樹脂(C成分)を配合することができる。C成分の配合により成形品の難燃性が改良される。殊に成形品の燃焼テストにおける滴下が抑制される。
【0098】
C成分として使用するフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
【0099】
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。
【0100】
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1〜1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10〜500μmのものを用いることができる。
【0101】
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン6Jおよびテフロン30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA−500、ポリフロンF−201LおよびポリフロンD−1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
【0102】
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70〜95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において1万〜100万、より好ましく1万〜80万である。
【0103】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
【0104】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
【0105】
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0106】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0107】
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0108】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1〜80重量%、特に1〜60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0109】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0110】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0111】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
【0112】
C成分を配合する場合その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以上では十分な溶融滴下防止性能が得られ易く、10重量部以下では外観不良や分散不良を起こし難くなり、さらに経済的にも有利となるため好ましい。
【0113】
本発明の実施態様の1つとして、下記(A)〜(C)の成分よりなる難燃性樹脂組成物があり、この態様による組成物は(C)成分としてフッ素含有樹脂が含有され、成形品の燃焼テストにおいて、滴下防止効果が優れている。
(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、
(B)下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部、および
(C)フッ素含有樹脂(C成分)0.01〜10重量部からなる難燃性樹脂組成物。
【0114】
【化9】
【0115】
(式中、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
本発明の難燃性樹脂組成物において、これら組成物を構成するA成分、B成分およびC成分については既に説明したが、これら成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り、使用することができる。以下添加することができる他の成分について説明する。
【0116】
(1)リンまたはリン化合物(D成分);
本発明の難燃性樹脂組成物において、有機リン化合物(B成分)以外に、難燃剤としてそれ自体公知のリンまたはリン化合物(D成分)を使用することができる。B成分にD成分を併用することにより、難燃効果または物理的強度改良することもでき、さらにコストを低減できる効果がある。
【0117】
D成分としては下記(D−a)〜(D−e)を例示することができる。
(D−a);赤リン
(D−b);下記一般式(D−b)で表されるトリアリールホスフェート
【0118】
【化10】
【0119】
(D−c);下記一般式(D−c)で表される縮合リン酸エステル
【0120】
【化11】
【0121】
(D−d);下記一般式(D−d)で表される縮合リン酸エステル
【0122】
【化12】
【0123】
(D−e);下記一般式(D−e)で表される有機リン化合物
【0124】
【化13】
【0125】
前記式(D−b)〜(D−d)中Q1〜Q4は、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0126】
前記式(D−e)の芳香族環は1〜4個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0127】
式(D−c)および(D−d)において、Ar4およびAr5は、両者が存在する場合(D−dの場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q5−W2−式で示される基(ここでW2は−O−または−S−を示し、Q5は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0128】
式(D−c)および(D−d)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
【0129】
式(D−d)においてZはAr4およびAr5を結合する単結合もしくは基であり、−Ar4−Z−Ar5−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
【0130】
前記(D−a)〜(D−e)のリンまたはリン化合物以外のリン化合物であってもB成分と併用することができる。
【0131】
前記(D−a)〜(D−e)のリンもしくはリン化合物(D成分)を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(B成分)100重量部当たり、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは10〜60重量部の範囲が適当である。前記(D−a)〜(D−e)のリンもしくはリン化合物の内、好ましくは(D−b)〜(D−e)のリン化合物である。
【0132】
(2)ビスクミル化合物;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに下記式で示されるビスクミル化合物を配合することができる。
【0133】
【化14】
【0134】
このビスクミル化合物の芳香族環は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0135】
このビスクミル化合物を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲が好ましく、0.02〜2重量部の範囲がより好ましく、0.03〜1重量部の範囲が特に好ましい。
【0136】
(3)難燃助剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに知られた難燃助剤を配合することができる。難燃助剤としては、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。かかるシリコーンオイルとしては、ポリジオルガノシロキサンを骨格とし、好ましくはポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、あるいはそれらの任意の共重合体または混合物であり、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。その粘度は好ましくは0.8〜5,000センチポイズ(25℃)、より好ましくは10〜1,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは50〜500センチポイズ(25℃)であり、かかる粘度の範囲のものは難燃性に優れ好ましい。かかるシリコーンオイルの配合量は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0137】
(4)難燃性改良剤;
さらに本発明の樹脂組成物は種々の難燃性改良剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物に配合することができる難燃性改良剤の例として、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0138】
難燃性改良剤として使用されるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0139】
フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。
【0140】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。
【0141】
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0142】
フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
【0143】
難燃性改良剤として使用されるエポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0144】
前記難燃性改良樹脂を配合する場合、その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜45重量部、好ましくは0.1〜40重量部、特に好ましくは0.5〜35重量部である。
【0145】
(5)相溶化剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、相溶化剤を添加してもよい。本相溶化剤の種類に関しては特に限定されるものではなく、A成分中のA−1成分とA−2成分、またはA−1成分およびA−2成分を2種以上の混合物として使用する際に、重合体同士、A−1成分および/またはA−2成分の樹脂成分とその他の添加剤を相溶化できるものが好ましい。相溶化剤を添加することによって、本発明の難燃性樹脂組成物の機械物性等を向上させるのみならず、難燃性についても向上させることが可能である。相溶化剤の添加量に関しては、特に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0146】
(6)充填剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の充填剤を配合することができる。充填剤は成形品の物性、殊に機械的特性を改良する目的で配合されるものであればよく、無機あるいは有機の充填剤いずれであってもよい。好ましくは繊維状の充填剤である。
【0147】
充填剤としては、例えばガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスロービングストランド、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末等のガラス系充填剤;カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、カーボンロービングストランド、カーボンフレーク等のカーボン系充填剤;タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、ゾノトライト、クレー、シリカ等の無機充填剤;アラミドファイバー等の有機充填剤;酸化チタン等の無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、これらのなかから選択するか、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、樹脂組成物を補強する目的では、繊維状の充填剤を配合することが好ましく、ガラス繊維、または炭素繊維、もしくはこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0148】
これらの無機充填剤は必要に応じて収束剤または表面処理剤を用いることができる。収束剤または表面処理剤の種類としては特に限定はされないが、一般に官能性化合物、例えばエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられ、樹脂に適したものを選択することが好ましい。好ましくはエポキシ系化合物、より好ましくはビスフェノールA型または/およびノボラック型エポキシ樹脂である。
【0149】
前記充填剤を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。200重量部より多く配合すると樹脂組成物の難燃性および物性低下の原因となり、また操作性、成形性についても困難となり、あまり好ましくない。
【0150】
(7)添加剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤(顔料)などを添加してもよい。前記添加剤の使用量は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類および目的に応じて適当に選択できる。
【0151】
前記した本発明の難燃性樹脂組成物は、ハロゲンを実質的に含有しない組成物であり、V−0レベルの難燃性が達成される。本発明の樹脂組成物は、具体的には厚さ1.6mmの成形品においてUL−94規格の難燃レベルV−0を達成することができ、また、好適条件下では厚さ0.8mmの成形品においてもV−0を達成することができる。
【0152】
また、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、透明性の良好な成形品を与える。B成分の有機リン化合物は無着色の粉末であり、A成分の樹脂に対する相溶性にも優れているので、この組成物の成形品は透明性に優れしかも染料や顔料を添加した場合、鮮やかな着色を有する透明成形品が得られる。3mm厚の成形品の全光線透過率が50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、特に好ましくは85%以上の透明性を有する樹脂組成物である。
【0153】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、樹脂成分(A成分)、有機リン化合物(B成分)および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を220〜280℃、好ましくは230〜270℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0154】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、家庭電化製品、OA機器等のハウジングやエンクロージャー、携帯情報機器等のハウジングやケーシング、自動車部品等の種々の用途に好適に使用される。
【0155】
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
【0156】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)および1/32インチ(0.8mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。どの試験片も炎を取り去った後の燃焼が10秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、燃焼が30秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2であり、この評価基準以下のものをnotVとした。
(2)リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
(3)リン化合物の純度
試料を、アセトニトリルと水の6:4混合溶液に溶かし、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−267nmを用いた。
(4)荷重たわみ温度(HDT)、荷重たわみ温度保持率
荷重たわみ温度は、ASTM−D648に準拠した方法により6.35mm(1/4インチ)試験片を用いて18.5Kg荷重で測定した。また、荷重たわみ温度保持率(M)は、使用した樹脂(A成分)からの成形品の荷重たわみ温度X(℃)と樹脂組成物からの成形品の荷重たわみ温度Y(℃)を測定し、M=(Y/X)×100(%)の計算式により算出した。
(5)押出混練時の発煙量
押出混練時にノズルからの発煙量について、目視で判定を行った。
【0157】
発煙なし:○
発煙量小:△
発煙量大:×
(6)金型汚染
樹脂組成物の色見本板成形を500Shot行った後の金型汚染を、目視にて判定を行った。
【0158】
金型汚染なし:○
金型汚染小:△
金型汚染大:×
(7)成形品の色相
押出混練にて得られたペレットから、色見本板を射出成形しその色相について目視で判定した。判定基準は下記の基準で行った。
色相良好:○
色見本板に若干ヤケが観られるもの:△
色見本板にヤケが観られるもの:×
次に実施例において使用した有機リン化合物の調製例を示した。
【0159】
調製例1
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×102Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0160】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
調製例2
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
3口フラスコに攪拌機、温度計、およびコンデンサーを取り付け、窒素気流下、このフラスコに3,9−ビス(ジフェニルメトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン40.4g(0.072モル)、ジフェニルメチルブロマイド35.5g(0.14モル)、キシレン48.0g(0.45モル)を入れ、還流温度(約130℃)で3時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン30mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン30mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール100mLをナス型フラスコにいれ、コンデンサーを取り付け、約1時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール50mLで2回洗浄した後、120℃にて減圧乾燥した。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。得られた固体は白色の粉末であり、収量は36.8g、収率は91%であった。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.07mgKOH/gであった。
【0161】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.2−7.6(m,20H),6.23(d,J=9Hz、2H),3.89−4.36(m,6H),3.38−3.46(m,2H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ20.9(S)、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
調製例3
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、100℃、1.33×102Paで10時間乾燥した。得られた白色固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。酸価は1.9mgKOH/gであった。
【0162】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(イ)ポリカーボネート樹脂(A−1成分)
▲1▼ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL−1225WP)を用いた(以下PC−1と称する)。
【0163】
▲2▼ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL−1225WS)を用いた(以下PC−2と称する)。
(ロ)熱可塑性樹脂(A−2成分)
▲1▼ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製サンタックUT−61)を用いた(以下ABSと称する)。
【0164】
▲2▼ポリブチレンテレフタレート(帝人(株)製TRB−H)を用いた(以下PBTと称する)。
【0165】
▲3▼ポリエチレンテレフタレート(帝人(株)製TR−8580H)を用いた(以下PETと称する)。
【0166】
▲4▼ポリフェニレンエーテル(旭化成工業(株)製ザイロンP−402)を用いた(以下PPEと称する)。
(ハ)有機リン化合物(B成分)
▲1▼調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−1と称する)}
▲2▼調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−2と称する)}
▲3▼調製例3で合成した高酸価2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−3と称する)}
(ニ)その他の有機リン化合物
▲1▼トリフェニルホスフェート{大八化学工業(株)製TPP(以下TPPと称する)}
▲2▼1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]{前記一般式(D−c)でAr4がフェニレン基、Q1、Q2、Q3およびQ4が2,6−ジメチルフェニル基である有機リン酸エステル化合物、旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500(以下FP−500と称する)}
(ホ)フッ素含有樹脂(C成分)
▲1▼ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン化学工業(株)製ポリフロンMPAFA−500)を用いた(以下C−1と称する)。
【0167】
▲2▼AS被覆ポリテトラフルオロエチレン(GEスペシャリティーケミカルズ社製BLENDEX449)を用いた(以下C−2と称する)。
【0168】
尚、BLENDEX449に関しては、PTFE含有量が50%、アクリロニトリル成分含有量が10%、スチレン成分含有量が40%であった。
【0169】
[実施例1〜33、比較例1〜50および参考例1〜10]
表1〜9記載の各成分を表1〜9記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを120℃の熱風乾燥機にて4時間以上乾燥を行った。乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75Si)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1〜9に示した。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8】
【0178】
【表9】
【0179】
上記実施例1、実施例2、実施例7および実施例8の組成物は、透明性が良好であり、3mm厚の見本板にて全光線透過率を測定したところ、それぞれ87%、86%、81%および80%であった。
【0180】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(I)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
(II)難燃剤としての有機リン化合物は、ポリカーボネート樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−0レベルの難燃効果を有する組成物も容易に得られる。すなわち、V−0レベルを達成するために多くの成分の添加を必要とせず、比較的簡単な組成によりV−0レベルの組成物が得られる。
(III)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、ポリカーボネート樹脂の成形時または成形品の使用時に、ポリカーボネート樹脂の熱劣化をほとんど起さず、熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および熱安定性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
(IV)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、該有機リン化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物の押出混練時にガス発生量が少なく、また、成形時に金型汚染が少ない高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
(V)難燃剤としての有機リン化合物は、無色でありポリカーボネート樹脂に対して相溶性であるから、透明性に優れた成形品を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な難燃性および良好な物性を有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物を難燃剤として含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐衝撃性等が優れた熱可塑性樹脂として、電気、電子機器、及び自動車部品等の幅広い用途に使用されている。また、ポリカーボネート樹脂単独では不十分な性質に対しては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂や、ABS樹脂、AS樹脂等に代表されるスチレン系樹脂等とブレンドし、樹脂組成物にして補強することで、更に幅広い分野に対応し、多くの製品に使用されている。
【0003】
これらの製品の安全性を高めるために、オフィスオートメーション機器や、家電製品等において難燃性が要求されており、特に近年、材料の絶対量を低くし、軽く、薄くという観点から、より薄肉成形品での難燃性が必要とされている。この場合、成形品の薄肉部分は樹脂の溶融滴下(ドリップ)が発生しやすいため、他の可燃物に燃え広がるおそれを内在する。従って、これらの用途に使用される樹脂組成物には、まずドリップ着火しない高度の難燃性が要求される。
【0004】
難燃性を発現させる為には、各種方法が存在するが、ポリカーボネート系樹脂又はポリカーボネート系樹脂と他の熱可塑性樹脂との樹脂組成物の場合、通常はハロゲン系化合物の難燃剤及びアンチモン化合物等の難燃助剤が添加されている。しかし、この様な難燃剤は、一般に加工時或いは燃焼時に腐食性ガスの発生があるため、成形加工時の金型の保守による工数増加等の問題がある。また将来、製品廃棄時の環境への影響等の懸念もあり、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有しない難燃性樹脂組成物が望まれているのが現状である。
【0005】
また、ポリカーボネート系樹脂に対しては、従来から種々の非ハロゲン系難燃剤の使用が試みられており、特に現在、有機リン系化合物が広く使用され、多くの研究がなされている。かかる化合物の代表として、トリフェニルフォスフェートが挙げられる。しかしながら、トリフェニルフォスフェートの添加は組成物の耐熱性を大きく低下させ、かつ、トリフェニルフォスフェートは揮発性が高い為に、押出し時や成形時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があり、その揮発性のため、成形加工時の金型汚染の問題があった。これらの問題から、従来使用していたハロゲン系難燃剤を含有するポリカーボネート系難燃性樹脂組成物を代替するには不十分であった。
【0006】
上記問題に対し、縮合リン酸エステルを用いて樹脂組成物の性能を向上させる方法が多く提案されており、例えば特開平2−115262号公報、特開平6−228426号公報等に記載されている。しかしながら、かかる縮合リン酸エステルを用いても未だ耐熱性の十分な樹脂組成物は得られず、また、縮合リン酸エステルは、その多くが液体であることから、樹脂との混練には液注装置が必要となり混練時のハンドリング性にも問題があった。
【0007】
また、特に近年、環境問題やリサイクル性の観点から、有機リン系化合物、とりわけ有機リン酸エステルの加水分解性が問題となっている。かかるリン酸エステルとして、レゾルシノールジフェニルホスフェートオリゴマー等の縮合リン酸エステルが挙げられ、該化合物を含有した成形品を高温高湿度下に長時間暴露すると、表面外観が悪化するなどの問題が指摘されている。また、該成形品は本質的にリサイクル不可能であり、廃棄時のリン酸成分流出等による環境に与える負荷も大きい。
【0008】
一方、ハロゲンを全く含まない芳香族環状リン酸エステルについては、米国特許4749645号明細書に写真層の映像染料安定剤として、米国特許5072014号明細書に難燃剤として開示されている。ところが、これらは、分子内にt−ブチル基のような嵩高い置換基を含有するため、樹脂を高度に難燃化するためには多量に添加する必要があり、耐熱性等の機械物性が低下する結果となった。
【0009】
また、特開昭54−157156号公報では、ホスホネート化合物またはホスフェート化合物をポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物が示されている。具体的には、ジフェニルペンタエリスリトールジホスホネート化合物やジメチルペンタエリスリトールジホスホネート化合物使用されている。しかしながら、これらの化合物はそれぞれ難燃性や安全性等が不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、高度な難燃性を有し、且つ工業的に有用な耐熱性および機械的特性等のバランスを兼ね備えたポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、実質的にハロゲンを含有しないで、UL94規格のV−0レベル以上の高度な難燃性を達成することができるポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、押出混練時にガス発生量が少なく、また、成形時に金型汚染が少ない高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、OA機器、家電製品、電気・電子機器、自動車部品などに有利に利用できる難燃性のポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、透明性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、
(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部および(B)下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
本発明によれば、優れた機械的特性、殊に優れた耐熱性を有し、かつ難燃レベルが少なくともV−0を達成する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0018】
以下本発明の難燃性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明において樹脂成分はポリカーボネート樹脂が構成樹脂成分(A成分)中主たる成分を占めればよく、好ましくはポリカーボネート樹脂(A−1成分)が少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%であればよい。A成分中50重量%以下、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下は他の樹脂(A−2成分)であってもよい。この他の樹脂については後で詳しく説明する。
【0020】
本発明の構成樹脂成分(A成分)中のポリカーボネート樹脂(A−1成分)は、塩化メチレン等の溶媒を用いて種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重合反応によって得られるもの、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応により得られるものが挙げられる。代表的なものとしては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンの反応で得られるポリカーボネートである。
【0021】
ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ −3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ −3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、等が挙げられる。これらのジヒドロキシアリール化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
好ましいジヒドロキシアリール化合物には、耐熱性の高い芳香族ポリカーボネートを形成するビスフェノール類、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルケトンなどである。特に好ましいジヒドロキシアリール化合物には、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを形成する2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0023】
なお、耐熱性、機械的強度などを損なわない範囲であれば、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを製造する際、ビスフェノールAの一部を、他のジヒドロキシアリール化合物で置換してもよい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限する必要はないが、あまりに低いと強度が十分でなく、あまりに高いと溶融粘度が高くなり成形し難くなるので、粘度平均分子量で表して通常10,000〜50,000、好ましくは、15,000〜30,000である。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10−4M0.83
(但し[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度で0.7)
ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いる界面重合法(溶液重合法)では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。尚結果として得られた分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0025】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融重合法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノールを炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。かかる反応の初期段階で二価フェノール等と同時にまたは反応の途中段階で末端停止剤を添加させる。また反応を促進するために現在公知のエステル交換反応に用いられる触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0026】
本発明の構成樹脂(A成分)は、前記ポリカーボネート樹脂(A−1成分)の他に熱可塑性樹脂(A−2成分)を含有していてもよい。前述したように他の熱可塑性樹脂(A−2成分)はA成分に基づいて50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0027】
このA−2成分としての熱可塑性樹脂としてはスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらA−2成分のうち、好ましいのはスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーである。
【0028】
次にこのA−2成分としての熱可塑性樹脂について具体的に説明する。
【0029】
A−2成分としてのスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。耐衝撃性の観点からは、ゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、ゴム変性スチレン系樹脂はビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0030】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0031】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
【0032】
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
ゴム変性スチレン樹脂におけるゴム状重合体は、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜50重量%、好ましくは98〜60重量%である。
【0034】
A−2成分としての芳香族ポリエステル樹脂は芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。好ましくはジカルボン酸成分の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分からなる。一方、グリコール成分は好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が炭素数2〜10の脂肪族ジオール成分からなる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種または2種以上を用いることができる。芳香族ジカルボン酸以外の従たるジカルボン酸としては例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0036】
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外のグリコールとしては例えばp,p’−ジヒドロキシエトキシビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール等を挙げることができる。
【0037】
かかる芳香族ポリエステル樹脂の好ましい例としては、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、主たるジオール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、およびテトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のジオールからなるエステル単位を有するポリエステルである。
【0038】
芳香族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0039】
特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
また、本発明に使用できる芳香族ポリエステル樹脂として、上記繰り返し単位をハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーを用いることもできる。
【0041】
テトラメチレンテレフタレートまたはテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしては、例えばジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなり、ジオール成分が炭素数5〜10の長鎖ジオールおよびH(OCH2CH2)iOH(i=2〜5)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールからなり、さらに融点が100℃以下または非晶性であるポリエステルまたはポリカプロラクトンからなるものを用いることができる。
【0042】
なお、主たる成分とは、全ジカルボン酸成分または全グリコール成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の成分であり、主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の繰り返し単位である。
【0043】
本発明における芳香族ポリエステル樹脂の分子量は、通常成形品として使用しうる固有粘度を有していればよく、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が好ましくは0.5〜1.6dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gである。
【0044】
また芳香族ポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基(−COOH)量が1〜60当量/T(ポリマー1トン)であるのが有利である。この末端カルボキシル基量は、例えばm−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定法により求めることができる。
【0045】
A−2成分としてのポリアリレート樹脂とは、全芳香族ポリエステル樹脂全体を指すものである。ポリアリレート樹脂の呼称は、非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂のみを指す場合もあるが、本発明においては、いわゆる液晶ポリマーと称されるタイプの結晶性ポリエステル樹脂を含むものである。
【0046】
本発明で使用する非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂とは、二価フェノール、又は二価フェノールとハイドロキノン及び/又はレゾルシノールをジオール成分とし、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸をジカルボン酸成分とする全芳香族ポリエステル樹脂をいう。かかる二価フェノール成分としては、前記ポリカーボネート樹脂の説明において記載したようなビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系が好ましく使用できるが、特にビスフェノールAが好ましい。またハイドロキノン及び/又はレゾルシノールの使用は、本発明の樹脂組成物の耐薬品性を向上させる点から好ましく使用できるものである。かかる場合、特にハイドロキノンの使用が好ましい。
【0047】
非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂の成形加工製及び耐薬品性を高めるのに好ましい態様の1つとしては、ハイドロキノンとビスフェノールAとをジオール成分とし、イソフタル酸を酸成分として、ハイドロキノンとビスフェノールAとの割合は50/50〜70/30当量%とするものが挙げられる。また本発明の樹脂組成物の耐熱温度を高めるのに有用な他の1つの態様としては、ビスフェノールAをジオール成分とし、テレフタル酸を酸成分として使用する場合が挙げられる。
【0048】
かかる非晶性の全芳香族ポリエステルの製造方法としては特に制限はないが、例えば、酸成分としてテレフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを用い、ジオール成分とアルカリ成分等の触媒を用いて反応させる界面重合法、又は溶液重合法により製造する方法が挙げられる。又、酸成分としてテレフタル酸アリールエステル又はイソフタル酸ジアリールエステルを用い、チタンテトラブトキシド等のチタン化合物の他、ポリエステル重合体の溶融重縮合触媒として既に知られているゲルマニウム化合物、アンチモン化合物及び錫化合物等の触媒を用いてジオール成分と反応させる溶融重合法、及び酸成分としてテレフタル酸又はイソフタル酸を用い、ジオール成分としてp―ジアセトキシベンゼンや2,2’―ビス(4―アセトキシフェニル)プロパンを用い、上記の溶融重縮合触媒を用いて反応させる溶融重合法等を適宜使用することが可能である。
【0049】
本発明の非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂はフェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、35℃にて測定した固有粘度が、耐熱性、成形加工性の観点から0.3〜1.2となることが好ましく、特に、0.4〜0.9が好ましい。
【0050】
本発明に使用する結晶性全芳香族ポリエステル樹脂とは、1種以上のアルキレン基を含有しない二価フェノールと、1種以上の芳香族ジカルボン酸及び/又は1種以上の芳香族ジヒドロキシカルボン酸から得られるものである。より具体的には、かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールをアセテート等の誘導体とし、かかる二価フェノールの活性を高めたものを使用する方法や、又はかかる芳香族ジカルボン酸を酸クロリド及びフェニルエステル等の誘導体としカルボン酸の活性を高めたものを使用する方法から得られるものである。さらに芳香族ジカルボン酸を直接使用し、p−トルエンスルホニルクロリド等の縮合剤によりカルボン酸の活性を高める方法により得られたものが使用できる。
【0051】
かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールのうち好ましいものとしては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0052】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂に使用する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0053】
更に芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼン、1−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼン、2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0054】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂の好ましい態様の1つとしては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレンとを、70/30〜85/15当量%とするものが挙げられる。また他に1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと4,4’−ジヒドロキシジフェニルとテレフタル酸とを、40/30/30〜30/20/20当量%とするものが挙げられる。
【0055】
A−2成分としてのジエン系樹脂としては、1,2−ポリブタジエン樹脂、トランス−1,4−ポリブタジエン樹脂等ジエン構造を有する単量体単独またはこれと共重合可能な単量体との共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
A−2成分としてのポリアミド樹脂としては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドおよびポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。本発明に使用できるポリアミドとしては特に限定されるものではない。
【0057】
このようなポリアミド樹脂の分子量としては特に限定されるものではないが、98%硫酸中、濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.7〜4.5を使用することができ、好ましくは、2.0〜4.0、特に好ましくは2.0〜3.5である。
【0058】
A−2成分としてのポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単重合体もしくは共重合体、あるいはこれらのオレフィン類と共重合可能な単量体成分との共重合体である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂の分子量に関しては特に限定されるものではないが、高分子量のものほど難燃性が良好となる。
【0059】
A−2成分としてのポリフェニレンエーテル樹脂としては、通常PPE樹脂として知られたものが使用できる。かかるPPEの具体例としては、(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル等の単独重合体および/または共重合体が挙げられ、特に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが挙げられる。また、これらのPPEにスチレン化合物がグラフト重合した共重合体であってもよい。かかるPPEの製造法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号記載の方法による第一銅塩とアミン類の錯体を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。
【0060】
PPE樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は、0.2〜0.7dl/gであり、好ましくは0.3〜0.6dl/gである。還元粘度がこの範囲のPPE樹脂は成形加工性、機械物性のバランスがよく、PPE製造時の触媒量等を調整する事により、容易に還元粘度を調整することが可能である。
【0061】
A−2成分としてのポリスルホン樹脂とは、ビスフェノールAとジクロロジフェニルスルフォンから得られるものが挙げられる。かかる化合物をジメチルスルホキシド溶媒中、水酸化カリウム等の存在下、脱塩化カリウムの縮合反応により得ることができる。
【0062】
A−2成分としてのポリフェニレンサルファイド樹脂は下記式で表される繰返し単位を有する。
【0063】
【化5】
【0064】
式中、nは1以上の整数であり、50〜500の整数が好ましく100〜400の整数がより好ましく、直鎖状、架橋状いずれであってもよい。
【0065】
ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法の例としてはジクロロベンゼンと二硫化ナトリウムとを反応させる方法が挙げられる。架橋状のものは低重合度のポリマーを重合ののち、空気の存在下で加熱し、部分架橋を行い高分子量化する方法で製造することができ、直鎖状のものは重合時に高分子量化する方法で製造することができる。
【0066】
A−2成分としてのポリアルキルメタアクリレート樹脂とは、メチルメタクリレートを主成分とするものであり、メチルメタクリレート単独の重合体、もしくはその共重合体である。かかる共重合体の共重合成分としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、又エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、1種または2種以上用いてよい。
【0067】
かかるポリアルキルメタクリレート樹脂におけるメチルメタクリレート成分の割合としては、ポリアルキルメタクリレート樹脂100重量%中、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上含有するものである。さらに共重合成分としてはメチルアクリレートがより好ましく使用できる。
【0068】
A−2成分としてのポリエーテルイミド樹脂は、下記式で表される繰返し単位を有する。
【0069】
【化6】
【0070】
式中のAr1は芳香族ジヒドロキシ化合物残基を示し、Ar2は芳香族ジアミン残基を示す。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前述したポリカーボネート樹脂の説明で示した芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、特にビスフェノールAが好ましい。芳香族ジアミンとしてはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0071】
前記式中のnは5〜1,000の整数を示し、10〜500の整数が好ましい。
【0072】
また、ポリエーテルイミド樹脂の製造方法の例は、米国特許第3,847,867号、米国特許第3,847,869号、米国特許第3,850,885号、米国特許第3,852,242号および米国特許第3,855,178号などに記載されている。
【0073】
A−2成分としての熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、有機ポリイソシアネート、ポリオール及び官能基を2乃至3個有し且つ分子量が50〜400の鎖延長剤の反応により得られるものであり、各種熱可塑性ポリウレタンエラストマーが使用可能である。かかる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えばクラレ(株)製「クラミロンU」(商品名)等容易に入手可能である。
【0074】
A−2成分としての熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、二官能性カルボン酸成分、アリキレングリコール成分、及びポリアルキレングリコール成分を重縮合して得られるものであり、各種熱可塑性ポリエステルエラストマーの使用が可能である。かかる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば東洋紡(株)製「ペルプレン」(商品名)、帝人(株)製「ヌーベラン」(商品名)の等容易に入手可能なものである。
【0075】
前述した種々のA−2成分のうち、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、特にスチレン系樹脂または芳香族ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0076】
本発明の難燃性樹脂組成物では、下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)が難燃剤として使用される。
【0077】
【化7】
【0078】
上記一般式(1)において、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、なかでも水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル(異性体を含む)基、ブチル(異性体を含む)基が挙げられる。フェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0079】
上記一般式(1)中、R1およびR4の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、水素原子、メチル基またはフェニル基がより好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0080】
上記一般式(1)において、R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、好ましくはフェニル基である。かかるフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0081】
上記一般式(1)中、R2、R3、R5およびR6の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基、アントリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0082】
前記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)は、ポリカーボネート樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来ポリカーボネート樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、リン化合物単独の使用で実用可能なV−0レベルの組成物を達成することは困難であり、実用上多くの問題点があった。リン化合物を使用してV−0レベルを達成するためには多量のリン化合物を使用する必要があった。更に従来のリン化合物は低沸点化合物であり、押出混練時のガス発生や成形時の金型汚染等の問題が発生した。また、更に通常のリン化合物をポリカーボネート樹脂に添加すると耐熱性が極端に低下し、ポリカーボネート本来の特徴を損なう事が一般に知られている。本発明の樹脂組成物においては、後述する荷重たわみ温度(HDT)保持率が好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0083】
ところが本発明によれば、前記有機リン化合物(B成分)は驚くべきことにそれ自体単独の少量使用によりポリカーボネート樹脂のV−0レベルの難燃化が容易に達成され、また驚くべき事に耐熱性の低下を起こさず、さらに押出混練時のガス発生および成型加工時の金型汚染が抑制されることが見出された。
【0084】
しかし本発明ではB成分の他に、B成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤は、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。これらの他の配合成分については後に具体的に説明する。
【0085】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(B成分)は、前記一般式(1)で表されるが、最も好ましい代表的化合物は下記式(1−a)で示される化合物である。
【0086】
【化8】
【0087】
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
【0088】
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0089】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0090】
B成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(i)B成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0091】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0092】
前述したB成分は、その酸価が好ましくは0.7mgKOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0093】
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0094】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0095】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0096】
前記B成分は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは2〜90重量部、より好ましくは2〜70重量部の範囲で配合される。特に5〜50重量部の範囲が好ましい。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤またはフッ素含有樹脂の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
【0097】
本発明の難燃性樹脂組成物にはフッ素含有樹脂(C成分)を配合することができる。C成分の配合により成形品の難燃性が改良される。殊に成形品の燃焼テストにおける滴下が抑制される。
【0098】
C成分として使用するフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
【0099】
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。
【0100】
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1〜1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10〜500μmのものを用いることができる。
【0101】
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン6Jおよびテフロン30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA−500、ポリフロンF−201LおよびポリフロンD−1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
【0102】
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70〜95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において1万〜100万、より好ましく1万〜80万である。
【0103】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
【0104】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
【0105】
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0106】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0107】
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0108】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1〜80重量%、特に1〜60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0109】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0110】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0111】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
【0112】
C成分を配合する場合その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以上では十分な溶融滴下防止性能が得られ易く、10重量部以下では外観不良や分散不良を起こし難くなり、さらに経済的にも有利となるため好ましい。
【0113】
本発明の実施態様の1つとして、下記(A)〜(C)の成分よりなる難燃性樹脂組成物があり、この態様による組成物は(C)成分としてフッ素含有樹脂が含有され、成形品の燃焼テストにおいて、滴下防止効果が優れている。
(A)ポリカーボネート樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、
(B)下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部、および
(C)フッ素含有樹脂(C成分)0.01〜10重量部からなる難燃性樹脂組成物。
【0114】
【化9】
【0115】
(式中、R1およびR4は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R2、R3、R5およびR6は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
本発明の難燃性樹脂組成物において、これら組成物を構成するA成分、B成分およびC成分については既に説明したが、これら成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り、使用することができる。以下添加することができる他の成分について説明する。
【0116】
(1)リンまたはリン化合物(D成分);
本発明の難燃性樹脂組成物において、有機リン化合物(B成分)以外に、難燃剤としてそれ自体公知のリンまたはリン化合物(D成分)を使用することができる。B成分にD成分を併用することにより、難燃効果または物理的強度改良することもでき、さらにコストを低減できる効果がある。
【0117】
D成分としては下記(D−a)〜(D−e)を例示することができる。
(D−a);赤リン
(D−b);下記一般式(D−b)で表されるトリアリールホスフェート
【0118】
【化10】
【0119】
(D−c);下記一般式(D−c)で表される縮合リン酸エステル
【0120】
【化11】
【0121】
(D−d);下記一般式(D−d)で表される縮合リン酸エステル
【0122】
【化12】
【0123】
(D−e);下記一般式(D−e)で表される有機リン化合物
【0124】
【化13】
【0125】
前記式(D−b)〜(D−d)中Q1〜Q4は、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0126】
前記式(D−e)の芳香族環は1〜4個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0127】
式(D−c)および(D−d)において、Ar4およびAr5は、両者が存在する場合(D−dの場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q5−W2−式で示される基(ここでW2は−O−または−S−を示し、Q5は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0128】
式(D−c)および(D−d)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
【0129】
式(D−d)においてZはAr4およびAr5を結合する単結合もしくは基であり、−Ar4−Z−Ar5−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
【0130】
前記(D−a)〜(D−e)のリンまたはリン化合物以外のリン化合物であってもB成分と併用することができる。
【0131】
前記(D−a)〜(D−e)のリンもしくはリン化合物(D成分)を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(B成分)100重量部当たり、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは10〜60重量部の範囲が適当である。前記(D−a)〜(D−e)のリンもしくはリン化合物の内、好ましくは(D−b)〜(D−e)のリン化合物である。
【0132】
(2)ビスクミル化合物;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに下記式で示されるビスクミル化合物を配合することができる。
【0133】
【化14】
【0134】
このビスクミル化合物の芳香族環は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0135】
このビスクミル化合物を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲が好ましく、0.02〜2重量部の範囲がより好ましく、0.03〜1重量部の範囲が特に好ましい。
【0136】
(3)難燃助剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに知られた難燃助剤を配合することができる。難燃助剤としては、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。かかるシリコーンオイルとしては、ポリジオルガノシロキサンを骨格とし、好ましくはポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、あるいはそれらの任意の共重合体または混合物であり、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。その粘度は好ましくは0.8〜5,000センチポイズ(25℃)、より好ましくは10〜1,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは50〜500センチポイズ(25℃)であり、かかる粘度の範囲のものは難燃性に優れ好ましい。かかるシリコーンオイルの配合量は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0137】
(4)難燃性改良剤;
さらに本発明の樹脂組成物は種々の難燃性改良剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物に配合することができる難燃性改良剤の例として、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0138】
難燃性改良剤として使用されるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0139】
フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。
【0140】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。
【0141】
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0142】
フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
【0143】
難燃性改良剤として使用されるエポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0144】
前記難燃性改良樹脂を配合する場合、その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜45重量部、好ましくは0.1〜40重量部、特に好ましくは0.5〜35重量部である。
【0145】
(5)相溶化剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、相溶化剤を添加してもよい。本相溶化剤の種類に関しては特に限定されるものではなく、A成分中のA−1成分とA−2成分、またはA−1成分およびA−2成分を2種以上の混合物として使用する際に、重合体同士、A−1成分および/またはA−2成分の樹脂成分とその他の添加剤を相溶化できるものが好ましい。相溶化剤を添加することによって、本発明の難燃性樹脂組成物の機械物性等を向上させるのみならず、難燃性についても向上させることが可能である。相溶化剤の添加量に関しては、特に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0146】
(6)充填剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の充填剤を配合することができる。充填剤は成形品の物性、殊に機械的特性を改良する目的で配合されるものであればよく、無機あるいは有機の充填剤いずれであってもよい。好ましくは繊維状の充填剤である。
【0147】
充填剤としては、例えばガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスロービングストランド、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末等のガラス系充填剤;カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、カーボンロービングストランド、カーボンフレーク等のカーボン系充填剤;タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、ゾノトライト、クレー、シリカ等の無機充填剤;アラミドファイバー等の有機充填剤;酸化チタン等の無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、これらのなかから選択するか、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、樹脂組成物を補強する目的では、繊維状の充填剤を配合することが好ましく、ガラス繊維、または炭素繊維、もしくはこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0148】
これらの無機充填剤は必要に応じて収束剤または表面処理剤を用いることができる。収束剤または表面処理剤の種類としては特に限定はされないが、一般に官能性化合物、例えばエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられ、樹脂に適したものを選択することが好ましい。好ましくはエポキシ系化合物、より好ましくはビスフェノールA型または/およびノボラック型エポキシ樹脂である。
【0149】
前記充填剤を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。200重量部より多く配合すると樹脂組成物の難燃性および物性低下の原因となり、また操作性、成形性についても困難となり、あまり好ましくない。
【0150】
(7)添加剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤(顔料)などを添加してもよい。前記添加剤の使用量は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類および目的に応じて適当に選択できる。
【0151】
前記した本発明の難燃性樹脂組成物は、ハロゲンを実質的に含有しない組成物であり、V−0レベルの難燃性が達成される。本発明の樹脂組成物は、具体的には厚さ1.6mmの成形品においてUL−94規格の難燃レベルV−0を達成することができ、また、好適条件下では厚さ0.8mmの成形品においてもV−0を達成することができる。
【0152】
また、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、透明性の良好な成形品を与える。B成分の有機リン化合物は無着色の粉末であり、A成分の樹脂に対する相溶性にも優れているので、この組成物の成形品は透明性に優れしかも染料や顔料を添加した場合、鮮やかな着色を有する透明成形品が得られる。3mm厚の成形品の全光線透過率が50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、特に好ましくは85%以上の透明性を有する樹脂組成物である。
【0153】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、樹脂成分(A成分)、有機リン化合物(B成分)および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を220〜280℃、好ましくは230〜270℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0154】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、家庭電化製品、OA機器等のハウジングやエンクロージャー、携帯情報機器等のハウジングやケーシング、自動車部品等の種々の用途に好適に使用される。
【0155】
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
【0156】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)および1/32インチ(0.8mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。どの試験片も炎を取り去った後の燃焼が10秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、燃焼が30秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2であり、この評価基準以下のものをnotVとした。
(2)リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
(3)リン化合物の純度
試料を、アセトニトリルと水の6:4混合溶液に溶かし、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−267nmを用いた。
(4)荷重たわみ温度(HDT)、荷重たわみ温度保持率
荷重たわみ温度は、ASTM−D648に準拠した方法により6.35mm(1/4インチ)試験片を用いて18.5Kg荷重で測定した。また、荷重たわみ温度保持率(M)は、使用した樹脂(A成分)からの成形品の荷重たわみ温度X(℃)と樹脂組成物からの成形品の荷重たわみ温度Y(℃)を測定し、M=(Y/X)×100(%)の計算式により算出した。
(5)押出混練時の発煙量
押出混練時にノズルからの発煙量について、目視で判定を行った。
【0157】
発煙なし:○
発煙量小:△
発煙量大:×
(6)金型汚染
樹脂組成物の色見本板成形を500Shot行った後の金型汚染を、目視にて判定を行った。
【0158】
金型汚染なし:○
金型汚染小:△
金型汚染大:×
(7)成形品の色相
押出混練にて得られたペレットから、色見本板を射出成形しその色相について目視で判定した。判定基準は下記の基準で行った。
色相良好:○
色見本板に若干ヤケが観られるもの:△
色見本板にヤケが観られるもの:×
次に実施例において使用した有機リン化合物の調製例を示した。
【0159】
調製例1
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×102Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0160】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
調製例2
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
3口フラスコに攪拌機、温度計、およびコンデンサーを取り付け、窒素気流下、このフラスコに3,9−ビス(ジフェニルメトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン40.4g(0.072モル)、ジフェニルメチルブロマイド35.5g(0.14モル)、キシレン48.0g(0.45モル)を入れ、還流温度(約130℃)で3時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン30mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン30mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール100mLをナス型フラスコにいれ、コンデンサーを取り付け、約1時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール50mLで2回洗浄した後、120℃にて減圧乾燥した。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。得られた固体は白色の粉末であり、収量は36.8g、収率は91%であった。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.07mgKOH/gであった。
【0161】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.2−7.6(m,20H),6.23(d,J=9Hz、2H),3.89−4.36(m,6H),3.38−3.46(m,2H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ20.9(S)、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
調製例3
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、100℃、1.33×102Paで10時間乾燥した。得られた白色固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。酸価は1.9mgKOH/gであった。
【0162】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(イ)ポリカーボネート樹脂(A−1成分)
▲1▼ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL−1225WP)を用いた(以下PC−1と称する)。
【0163】
▲2▼ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL−1225WS)を用いた(以下PC−2と称する)。
(ロ)熱可塑性樹脂(A−2成分)
▲1▼ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製サンタックUT−61)を用いた(以下ABSと称する)。
【0164】
▲2▼ポリブチレンテレフタレート(帝人(株)製TRB−H)を用いた(以下PBTと称する)。
【0165】
▲3▼ポリエチレンテレフタレート(帝人(株)製TR−8580H)を用いた(以下PETと称する)。
【0166】
▲4▼ポリフェニレンエーテル(旭化成工業(株)製ザイロンP−402)を用いた(以下PPEと称する)。
(ハ)有機リン化合物(B成分)
▲1▼調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−1と称する)}
▲2▼調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−2と称する)}
▲3▼調製例3で合成した高酸価2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−3と称する)}
(ニ)その他の有機リン化合物
▲1▼トリフェニルホスフェート{大八化学工業(株)製TPP(以下TPPと称する)}
▲2▼1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]{前記一般式(D−c)でAr4がフェニレン基、Q1、Q2、Q3およびQ4が2,6−ジメチルフェニル基である有機リン酸エステル化合物、旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500(以下FP−500と称する)}
(ホ)フッ素含有樹脂(C成分)
▲1▼ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン化学工業(株)製ポリフロンMPAFA−500)を用いた(以下C−1と称する)。
【0167】
▲2▼AS被覆ポリテトラフルオロエチレン(GEスペシャリティーケミカルズ社製BLENDEX449)を用いた(以下C−2と称する)。
【0168】
尚、BLENDEX449に関しては、PTFE含有量が50%、アクリロニトリル成分含有量が10%、スチレン成分含有量が40%であった。
【0169】
[実施例1〜33、比較例1〜50および参考例1〜10]
表1〜9記載の各成分を表1〜9記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを120℃の熱風乾燥機にて4時間以上乾燥を行った。乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75Si)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1〜9に示した。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8】
【0178】
【表9】
【0179】
上記実施例1、実施例2、実施例7および実施例8の組成物は、透明性が良好であり、3mm厚の見本板にて全光線透過率を測定したところ、それぞれ87%、86%、81%および80%であった。
【0180】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(I)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
(II)難燃剤としての有機リン化合物は、ポリカーボネート樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−0レベルの難燃効果を有する組成物も容易に得られる。すなわち、V−0レベルを達成するために多くの成分の添加を必要とせず、比較的簡単な組成によりV−0レベルの組成物が得られる。
(III)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、ポリカーボネート樹脂の成形時または成形品の使用時に、ポリカーボネート樹脂の熱劣化をほとんど起さず、熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および熱安定性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
(IV)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、該有機リン化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物の押出混練時にガス発生量が少なく、また、成形時に金型汚染が少ない高度な難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
(V)難燃剤としての有機リン化合物は、無色でありポリカーボネート樹脂に対して相溶性であるから、透明性に優れた成形品を得ることができる。
Claims (16)
- A成分は、ポリカーボネート樹脂(A−1成分)50〜100重量部およびスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(A−2成分)50〜0重量部よりなる請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (B)有機リン化合物(B成分)は、酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (B)有機リン化合物(B成分)は、HPLC純度が少なくとも90%である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (B)有機リン化合物(B成分)は、上記式(1)中のR2、R3、R5、およびR6が同一または異なっていてもよく、置換基を有してもよいフェニル基である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (B)有機リン化合物(B成分)は、上記式(1)中のR1およびR4が同一または異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基、または置換基を有してもよいフェニル基である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- A成分100重量部に対して、B成分が2〜70重量部の割合で含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 実質的にハロゲンを含有しない請求項1または9記載の難燃性樹脂組成物。
- 厚さ1.6mmの成形品において、UL−94規格の難燃レベルV−0を少なくとも達成する請求項1または9記載の難燃性樹脂組成物。
- 厚さ0.8mmの成形品において、UL−94規格の難燃レベルV−0を少なくとも達成する請求項1または9記載の難燃性樹脂組成物。
- 下記式で表される荷重たわみ温度保持率(M)が少なくとも80%を達成することができる請求項1または9記載の難燃性樹脂組成物。
M(%)=(Y/X)×100
但しXは樹脂成分(A成分)自体からの成形品の荷重たわみ温度(℃)を示し、Yは樹脂組成物からの成形品の荷重たわみ温度(℃)を示す。 - 全光線透過率が50%以上の透明性を有する請求項1または9記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)であるポリカーボネート樹脂用の難燃剤。
- 前記請求項1〜14のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物から形成された成形品。
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