JP2004058145A - 鋼構造物用溶接継手の溶接方法及び溶接材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接部のあらゆる部位において安定した圧縮残留応力を導入し、溶接継手の疲労強度を向上させるのに有効な鋼構造物用溶接継手の溶接方法を提供する。
【解決手段】溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で鋼材を溶接する。
【選択図】 図1
【解決手段】溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で鋼材を溶接する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶、橋梁、貯槽、建設機械等の大型鋼構造物に用いて好適な鋼構造物用溶接継手の溶接方法、特に、溶接部に圧縮残留応力を導入し、溶接継手の疲労強度を向上させる鋼構造物用溶接継手の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶、橋梁、貯槽、及び建設機械等においては、大型化とそれに伴う軽量化の目的から溶接して使用される鋼材の高強度化が求められている。鋼材が高強度化することによって使用する鋼材を少なくすることができ、構造物を軽量化することができる。これら構造物に使用される鋼材としては、Cr,Ni,Mo等を添加した引張強度レベルが300〜590MPaの鋼材が一般に用いられている。
【0003】
ところが、鋼材の引張強度が増加しても溶接継手の疲労強度が鋼材の引張強度ほどには向上しないといわれている。この原因としては、溶接継手の溶接部に生じる引張残留応力が大きいことが挙げられる。
この溶接継手の疲労強度を向上させる溶接方法として、従来、例えば、特開平11−138290号公報に記載されたものが知られている。
【0004】
この溶接方法は、溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、室温においてマルテンサイト変態の開始時よりも膨張している状態とするようにしている。そして、この溶接方法に使用される溶接材料(溶接ワイヤ)としては、マルテンサイト変態開始温度を250℃未満170℃以上と低温化させた鉄合金が用いられている。そして、このような溶接方法及び溶接材料を用いることにより、溶接継手の溶接金属に生じた引張残留応力を低減し、あるいは引張残留応力に代えて圧縮残留応力を与え、溶接施工後の研削等の特別な後処理を行わなくても溶接継手の疲労強度が向上するという効果を奏する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−138290号公報に開示された溶接方法にあっては、溶接継手の疲労強度は向上するものの、溶接部のあるゆる部位において安定した圧縮残留応力を導入するという点では不十分であることが判明した。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされれたものであり、その目的は、溶接部のあらゆる部位において安定した圧縮残留応力を導入し、溶接継手の疲労強度を向上させるのに有効な鋼構造物用溶接継手の溶接方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明者らが検討した結果、次のような知見を得た。即ち、溶接材料にCr,Niを添加させることにより促進されたマルテンサイイト変態について、凝固時の母相オーステナイトの<001>結晶方位を一定方向に揃えることにより圧縮残留応力導入に有効であることを見出したのである。
【0007】
本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を加え完成されたものである。
本発明の構成は、以下のとおりである。
(1)溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
【0008】
(2)溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下及びCa:0.5質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
【0009】
(3)(1)又は(2)記載の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接継手の溶接金属組成が、下記(1)式を満足することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
50≦719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr
−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb≦350 …(1)
ここに、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量(質量%)
【0010】
【発明の実施の形態】
本願における基本的な技術思想を以下に示す。
(1)変態膨張による応力低減効果:室温より少し高い温度範囲で溶接金属をマルテンサイト変態させ、その変態膨張を利用して熱収縮により生じる溶接引張残留応力を低減する効果。
(2)方位を揃えることによる効果:溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にすることによって、最も効率良く溶接部に圧縮残留応力を導入できる効果。
【0011】
上記の効果を総合的に利用することにより、継手の総合的性能を著しく高め、溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力を導入することにより、特に疲労強度に優れた高性能継手を得ることが本発明の骨子である。
本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法である。
【0012】
第1の発明は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴としている。
【0013】
この鋼構造物用溶接継手の溶接方法においては、溶接速度が30cm/ min以上100cm/ min以下であることを必須としている。溶接速度をこのような範囲とすることにより、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にでき、最も効率良く溶接部のあらゆる部位に安定して圧縮残留応力を導入できる。その結果、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【0014】
なお、室温より少し高い温度範囲で溶接金属をマルテンサイト変態させることにより前述の(1)の効果により引張残留応力を緩和し、溶接継手の疲労強度および耐低温割れ性は向上するが、溶接速度が30cm/ min未満では溶接部に安定して圧縮残留応力を導入することができない。
発明者らは、溶接部に安定して圧縮残留応力を導入するために溶接条件について詳細な解析を進めた結果、特に溶接速度を増加させて、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にすることによって、溶接部に最も効率良く圧縮残留応力を導入できることを見出した。
【0015】
また、第2の発明は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下およびCa:0.5質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴としている。
【0016】
この鋼構造物用溶接継手の溶接方法においても、溶接速度が30cm/ min以上100cm/ min以下であることを必須とし、これにより、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にでき、最も効率良く溶接部のあらゆる部位に安定して圧縮残留応力を導入できる。その結果、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【0017】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接継手の溶接金属組成が、下記(1)式を満足することを特徴としている。
50≦719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr
−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb≦350 …(1)
ここに、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量(質量%)
なお、(1)式における各元素のうち、含有しない元素がある場合には、その元素量を0として(1)式を計算するものとする。
【0018】
ここで、(1)式の不等号で挟まれた部分である「719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb」は、溶接金属の冷却時のマルテンサイト変態開始温度を℃単位で現した場合の経験式であり、(1)式の意味は、溶接金属の含有成分から推定される溶接金属の冷却時のマルテンサイト変態開始温度が50℃以上350℃以下となることである。
【0019】
マルテンサイト変態開始温度(Ms点)が350℃を超えると、マルテンサイト変態による膨張量が少なくなるとともに変態膨張の最大点が使用温度よりも高くなりすぎるため、変態後の冷却により再度熱収縮が生じ、これにより引張残留応力が発生するようになり疲労強度が低下する。一方、Ms点が50℃未満では、(1)変態膨張による応力低減の効果が十分でなく、疲労強度の改善効果が少ない。このようなことから、溶接金属の組成を、溶接金属のマルテンサイト変態開始点が350℃以下50℃以上となる組成に限定した。これにより、溶接継手の疲労強度が改善できるとともに溶接金属の靭性を向上させることができる。
【0020】
マルテンサイト変態開始温度を350℃以下50℃以上とした本発明の溶接金属は、温度−伸び曲線、すなわち熱膨張曲線が使用温度においてマルテンサイト変態の開始時よりやや膨張状態の伸びとなる。本発明の溶接継手における溶接金属の冷却過程における温度−伸び曲線の一例を図1に示す。
図1において、本発明の溶接金属(太い実線)は、冷却過程においてマルテンサイト変態を生じ、そのマルテンサイト変態による膨張で、使用温度においてマルテンサイト変態とほぼ同程度あるいはやや膨張状態となるものである。このような溶接金属とすることにより、冷却時の収縮による溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留することになる。溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留することになる。溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留するようにすれば、疲労強度が向上するのである。
【0021】
一方、本発明の範囲を外れる溶接金属(細い実線、従来例の溶接金属)では、マルテンサイト変態開始温度Ms点が高く、マルテンサイト変態による膨張が少ないため、使用温度においては、変態後の冷却で収縮した状態となる。すなわち、疲労強度の向上は期待できない。
なお、本発明における溶接金属の温度−延び曲線は、通常の熱膨張による伸びの温度変化を連続的に測定して得られる。
【0022】
第1の発明において、溶接材料の組成は、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とすることを必須とする。
ここで、Cは、マルテンサイトの硬さを増加し、溶接硬化性を増大し、低温割れを助長する元素であるため、できるだけその含有量を低減するのが好ましく、低温割れを防止する観点から溶接材料のCの含有量は0.20質量%以下、好ましくは0.12質量%以下とするのが好ましい。
【0023】
Crは、マルテンサイト変態開始温度を低温とする元素であるため、8.0質量%以上の含有が好ましい。Crの含有量が8.0質量%未満では、マルテンサイト変態開始温度を350℃以下とするには、溶接材料に高価なNiの多量添加、および溶接ワイヤの加工性を劣化させる元素の多量添加を必要とし、経済性、ワイヤの加工性の観点から問題がある。一方、Crの含有量が18.0質量%を超えると、溶接金属にフェライトが大量に現出し、靭性の点で好ましくない。このようなことから、溶接材料のCrの含有量は8.0〜18.0質量%とするのが好ましい。
【0024】
Niは、オーステナイトを安定化する元素であり、溶接金属においてオーステナイト相を生成し、マルテンサイト変態開始温度350℃以下と低温にするために重要な元素である。この観点からNiは6.0質量%以上含有させるのが好ましい。一方、13.0質量%を超える多量の含有は、溶接ワイヤを高価なものとして経済的に不利となるので、溶接材料のNiの含有量は6.0〜13.0質量%とするのが好ましい。
【0025】
また、δフェライトを適度に析出させて高温にて生じる割れを阻止するためにCr/ Ni比を1.3以上とすることが好ましい。
Siは、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させる作用を有し、また脱酸材として機能するため溶接金属の酸素量を低減し、靭性を向上させるのに有効である。しかし、5.0質量%を超えると、高温割れが発生しやすく、また、規格格子を形成して靭性を著しく劣化させる。
【0026】
さらに、Mnは、オーステナイト安定化作用を有し、脱酸材としても有用であるが、溶接材料にMnを5.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のMnの含有量は5.0質量%以下とするのが好ましい。
第1の発明における溶接材料の組成は、前記溶接材料の組成に加えて、Moを4.0質量%以下、及びNbを3.0質量%以下のうち一種又は二種含有していてもよい。
【0027】
Moは溶接金属の耐食性を向上させる目的として添加することができるが、溶接金属にMoを4.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のMoの含有量は4.0質量%以下とするのが好ましい。
また、Nbはマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させる作用を有し、Ms点を低下させるためには多く含有させるほうが好ましい。しかし、溶接金属にNbを3.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のNbの含有量は3.0質量%以下とするのが好ましい。
【0028】
第2の発明において、溶接材料の組成は、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とすることを必須とする。
【0029】
ここで、P,Sは、高温において発生する割れを阻止するために含有量を抑制する必要があり、それぞれ0.020質量%以下、0.010質量%以下に限定した。割れを完全に阻止するためにはP,Sをそれぞれ0.010質量%以下、0.005質量%以下とすることが望ましい。C,Cr,Ni,Si,Mnについては第1の発明と同様である。
【0030】
第2の発明における溶接材料の組成は、前記溶接材料の組成に加えて、Moを4.0質量%以下、Nbを3.0質量%以下0.5質量%以下及びCaを0.5質量%以下のうち一種又は二種含有していてもよい。
ここで、CaはSと結合して析出することにより、粒界へのSの偏析を抑制する効果がある。しかし、Caの添加量が0.5質量%を超えると、溶接金属の靭性に悪影響を及ぼすので溶接材料のCa量は0.5質量%以下とするのが好ましい。Mo,Nbについては第1の発明と同様である。
【0031】
なお、第1及び第2の発明において、上記した元素以外については、とくに限定されないが、溶接材料に、V、Cu、希土類元素をそれぞれ0.5質量%以下含有することは許容される。また、上記した元素以外に被溶接材、溶接材料に含有される元素が不可避的に含有されても何ら問題はない。
溶接金属中の各元素の含有量も上記の理由に応じて請求の範囲で規定した溶接材料中の各元素の含有量の範囲に限定される。
【0032】
本発明によって製造される鋼構造物用溶接継手においては、被溶接材として、低合金鋼材を用いるとよい。中でも、25mm厚以下の極厚490MPa級高張力鋼材あるいは590MPa級高張力鋼材を溶接した場合に好適である。しかし、本発明に用いられるこれら低合金鋼材の種類については、特に限定されず、通常公知のいずれの鋼材も適用可能である。
【0033】
また、本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、用いられる溶接材料は、前記被溶接材に適合した溶接条件で、前記の組成の溶接金属を形成できる組成を有するものであれば、通常公知の材料のいずれもが適用可能であり、特に限定されない。前記の組成の溶接金属が形成できるように、溶接条件により被溶接材からの希釈等を考慮して適宜選択すればよい。
【0034】
本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法では、被溶接材に応じて、溶接材料の組成及び溶接条件を調整して、前記の組成の溶接金属を形成する。そして、溶接方法は、被覆アーク溶接、ガスメタルアーク溶接、サブマージアーク溶接、セルフシールドアーク溶接など各種溶接法がいずれも好適に適用できる。また、継手形状は、荷重非伝達型十字溶接継手、角回し溶接などの隅肉溶接継手、突き合わせ溶接継手など、船舶、海洋構造物、ペンストック、橋梁、貯槽、建設機械等の大型鋼構造物に用いられる継手形状がいずれも好適である。
【0035】
【実施例】
表1に被溶接鋼板の化学組成及び板厚を、表2に溶接材料の化学組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表2において、手溶接棒については棒径を4.0mmφ、ソリッドワイヤ(MAG溶接用)及びフラックス入りワイヤ(FCW)についてはワイヤ径を1.2mmφとした。これら用いて角回し溶接継手、荷重非伝達型十字溶接継手及び突合せ溶接継手を作製した。溶接条件は、表3に示すとおりとした。表1、表2の組合せにより作製したそれぞれの溶接継手における溶接金属の特性を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3を参照すると、記号3,5,7,8で示す溶接継手の溶接速度は、それぞれ10cm/ min,12cm/ min,13cm/ min,12cm/ minであり、請求項1及び2の要件を満たしていないことが理解される。また、記号7で示す溶接継手に使用された溶接材料は記号Dで示すもので、表2を参照すると、記号Dで示された溶接材料は、Pの含有量が0.058質量%、Sの含有量が0.025質量%であり、請求項2の要件を満たしていないことが理解される。
【0041】
そして、各溶接継手については、溶接部の残留応力を測定した。残留応力測定には、歪みゲージを用いて応力測定マニュアル(オーム社、1972年、pp.342−346)に示した切断法を適用した。残留応力はいずれもビードから2mm離れた場所での値であり、▲1▼溶接方向に対して中央部、▲2▼「溶接方向に対して中央部」から20mm溶接開始点側、▲3▼「溶接方向に対して中央部」から20mm溶接終了点側の3点で測定した。測定した残留応力を表4に示す。残留応力の単位はMPaであり、圧縮残留応力は「−」、引張残留応力は「+」で表される。
【0042】
【表4】
【0043】
表4を参照すると、発明例を構成する記号1,2,4,6の溶接継手については、残留応力値がいずれも−150MPa以下であり、また、測定場所▲1▼、▲2▼、▲3▼間における残留応力値のばらつきも小さく、安定した圧縮残留応力が得られている。
一方、比較例を構成する記号3,5の溶接継手については、圧縮残留応力が得られているがその値が小さく、かつ、測定場所▲1▼、▲2▼、▲3▼間における残留応力値のばらつきも大きい。このため、本発明の目的である「溶接部のああらゆる部位に安定した圧縮残留応力の導入」を達成できていない。また、比較例を構成する記号6,7の溶接継手については、引張残留応力が得られている。このため、本発明の目的である「溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力の導入」を達成できていない。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る鋼構造物用溶接継手の溶接方法によれば、溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力を導入でき、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による溶接継手における溶接金属の温度−伸び曲線と従来例の溶接継手における溶接金属の温度−伸び曲線とを示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶、橋梁、貯槽、建設機械等の大型鋼構造物に用いて好適な鋼構造物用溶接継手の溶接方法、特に、溶接部に圧縮残留応力を導入し、溶接継手の疲労強度を向上させる鋼構造物用溶接継手の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶、橋梁、貯槽、及び建設機械等においては、大型化とそれに伴う軽量化の目的から溶接して使用される鋼材の高強度化が求められている。鋼材が高強度化することによって使用する鋼材を少なくすることができ、構造物を軽量化することができる。これら構造物に使用される鋼材としては、Cr,Ni,Mo等を添加した引張強度レベルが300〜590MPaの鋼材が一般に用いられている。
【0003】
ところが、鋼材の引張強度が増加しても溶接継手の疲労強度が鋼材の引張強度ほどには向上しないといわれている。この原因としては、溶接継手の溶接部に生じる引張残留応力が大きいことが挙げられる。
この溶接継手の疲労強度を向上させる溶接方法として、従来、例えば、特開平11−138290号公報に記載されたものが知られている。
【0004】
この溶接方法は、溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、室温においてマルテンサイト変態の開始時よりも膨張している状態とするようにしている。そして、この溶接方法に使用される溶接材料(溶接ワイヤ)としては、マルテンサイト変態開始温度を250℃未満170℃以上と低温化させた鉄合金が用いられている。そして、このような溶接方法及び溶接材料を用いることにより、溶接継手の溶接金属に生じた引張残留応力を低減し、あるいは引張残留応力に代えて圧縮残留応力を与え、溶接施工後の研削等の特別な後処理を行わなくても溶接継手の疲労強度が向上するという効果を奏する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−138290号公報に開示された溶接方法にあっては、溶接継手の疲労強度は向上するものの、溶接部のあるゆる部位において安定した圧縮残留応力を導入するという点では不十分であることが判明した。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされれたものであり、その目的は、溶接部のあらゆる部位において安定した圧縮残留応力を導入し、溶接継手の疲労強度を向上させるのに有効な鋼構造物用溶接継手の溶接方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明者らが検討した結果、次のような知見を得た。即ち、溶接材料にCr,Niを添加させることにより促進されたマルテンサイイト変態について、凝固時の母相オーステナイトの<001>結晶方位を一定方向に揃えることにより圧縮残留応力導入に有効であることを見出したのである。
【0007】
本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を加え完成されたものである。
本発明の構成は、以下のとおりである。
(1)溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
【0008】
(2)溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下及びCa:0.5質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
【0009】
(3)(1)又は(2)記載の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接継手の溶接金属組成が、下記(1)式を満足することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
50≦719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr
−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb≦350 …(1)
ここに、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量(質量%)
【0010】
【発明の実施の形態】
本願における基本的な技術思想を以下に示す。
(1)変態膨張による応力低減効果:室温より少し高い温度範囲で溶接金属をマルテンサイト変態させ、その変態膨張を利用して熱収縮により生じる溶接引張残留応力を低減する効果。
(2)方位を揃えることによる効果:溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にすることによって、最も効率良く溶接部に圧縮残留応力を導入できる効果。
【0011】
上記の効果を総合的に利用することにより、継手の総合的性能を著しく高め、溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力を導入することにより、特に疲労強度に優れた高性能継手を得ることが本発明の骨子である。
本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法である。
【0012】
第1の発明は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴としている。
【0013】
この鋼構造物用溶接継手の溶接方法においては、溶接速度が30cm/ min以上100cm/ min以下であることを必須としている。溶接速度をこのような範囲とすることにより、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にでき、最も効率良く溶接部のあらゆる部位に安定して圧縮残留応力を導入できる。その結果、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【0014】
なお、室温より少し高い温度範囲で溶接金属をマルテンサイト変態させることにより前述の(1)の効果により引張残留応力を緩和し、溶接継手の疲労強度および耐低温割れ性は向上するが、溶接速度が30cm/ min未満では溶接部に安定して圧縮残留応力を導入することができない。
発明者らは、溶接部に安定して圧縮残留応力を導入するために溶接条件について詳細な解析を進めた結果、特に溶接速度を増加させて、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にすることによって、溶接部に最も効率良く圧縮残留応力を導入できることを見出した。
【0015】
また、第2の発明は、溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下およびCa:0.5質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴としている。
【0016】
この鋼構造物用溶接継手の溶接方法においても、溶接速度が30cm/ min以上100cm/ min以下であることを必須とし、これにより、溶接金属の母相オーステナイトの<001>結晶方位を応力方向に平行にでき、最も効率良く溶接部のあらゆる部位に安定して圧縮残留応力を導入できる。その結果、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【0017】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、溶接継手の溶接金属組成が、下記(1)式を満足することを特徴としている。
50≦719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr
−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb≦350 …(1)
ここに、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量(質量%)
なお、(1)式における各元素のうち、含有しない元素がある場合には、その元素量を0として(1)式を計算するものとする。
【0018】
ここで、(1)式の不等号で挟まれた部分である「719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb」は、溶接金属の冷却時のマルテンサイト変態開始温度を℃単位で現した場合の経験式であり、(1)式の意味は、溶接金属の含有成分から推定される溶接金属の冷却時のマルテンサイト変態開始温度が50℃以上350℃以下となることである。
【0019】
マルテンサイト変態開始温度(Ms点)が350℃を超えると、マルテンサイト変態による膨張量が少なくなるとともに変態膨張の最大点が使用温度よりも高くなりすぎるため、変態後の冷却により再度熱収縮が生じ、これにより引張残留応力が発生するようになり疲労強度が低下する。一方、Ms点が50℃未満では、(1)変態膨張による応力低減の効果が十分でなく、疲労強度の改善効果が少ない。このようなことから、溶接金属の組成を、溶接金属のマルテンサイト変態開始点が350℃以下50℃以上となる組成に限定した。これにより、溶接継手の疲労強度が改善できるとともに溶接金属の靭性を向上させることができる。
【0020】
マルテンサイト変態開始温度を350℃以下50℃以上とした本発明の溶接金属は、温度−伸び曲線、すなわち熱膨張曲線が使用温度においてマルテンサイト変態の開始時よりやや膨張状態の伸びとなる。本発明の溶接継手における溶接金属の冷却過程における温度−伸び曲線の一例を図1に示す。
図1において、本発明の溶接金属(太い実線)は、冷却過程においてマルテンサイト変態を生じ、そのマルテンサイト変態による膨張で、使用温度においてマルテンサイト変態とほぼ同程度あるいはやや膨張状態となるものである。このような溶接金属とすることにより、冷却時の収縮による溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留することになる。溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留することになる。溶接継手に残留する引張応力を緩和するか、あるいは圧縮応力が溶接継手に残留するようにすれば、疲労強度が向上するのである。
【0021】
一方、本発明の範囲を外れる溶接金属(細い実線、従来例の溶接金属)では、マルテンサイト変態開始温度Ms点が高く、マルテンサイト変態による膨張が少ないため、使用温度においては、変態後の冷却で収縮した状態となる。すなわち、疲労強度の向上は期待できない。
なお、本発明における溶接金属の温度−延び曲線は、通常の熱膨張による伸びの温度変化を連続的に測定して得られる。
【0022】
第1の発明において、溶接材料の組成は、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とすることを必須とする。
ここで、Cは、マルテンサイトの硬さを増加し、溶接硬化性を増大し、低温割れを助長する元素であるため、できるだけその含有量を低減するのが好ましく、低温割れを防止する観点から溶接材料のCの含有量は0.20質量%以下、好ましくは0.12質量%以下とするのが好ましい。
【0023】
Crは、マルテンサイト変態開始温度を低温とする元素であるため、8.0質量%以上の含有が好ましい。Crの含有量が8.0質量%未満では、マルテンサイト変態開始温度を350℃以下とするには、溶接材料に高価なNiの多量添加、および溶接ワイヤの加工性を劣化させる元素の多量添加を必要とし、経済性、ワイヤの加工性の観点から問題がある。一方、Crの含有量が18.0質量%を超えると、溶接金属にフェライトが大量に現出し、靭性の点で好ましくない。このようなことから、溶接材料のCrの含有量は8.0〜18.0質量%とするのが好ましい。
【0024】
Niは、オーステナイトを安定化する元素であり、溶接金属においてオーステナイト相を生成し、マルテンサイト変態開始温度350℃以下と低温にするために重要な元素である。この観点からNiは6.0質量%以上含有させるのが好ましい。一方、13.0質量%を超える多量の含有は、溶接ワイヤを高価なものとして経済的に不利となるので、溶接材料のNiの含有量は6.0〜13.0質量%とするのが好ましい。
【0025】
また、δフェライトを適度に析出させて高温にて生じる割れを阻止するためにCr/ Ni比を1.3以上とすることが好ましい。
Siは、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させる作用を有し、また脱酸材として機能するため溶接金属の酸素量を低減し、靭性を向上させるのに有効である。しかし、5.0質量%を超えると、高温割れが発生しやすく、また、規格格子を形成して靭性を著しく劣化させる。
【0026】
さらに、Mnは、オーステナイト安定化作用を有し、脱酸材としても有用であるが、溶接材料にMnを5.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のMnの含有量は5.0質量%以下とするのが好ましい。
第1の発明における溶接材料の組成は、前記溶接材料の組成に加えて、Moを4.0質量%以下、及びNbを3.0質量%以下のうち一種又は二種含有していてもよい。
【0027】
Moは溶接金属の耐食性を向上させる目的として添加することができるが、溶接金属にMoを4.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のMoの含有量は4.0質量%以下とするのが好ましい。
また、Nbはマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させる作用を有し、Ms点を低下させるためには多く含有させるほうが好ましい。しかし、溶接金属にNbを3.0質量%を超えて含有させるためには、溶接ワイヤの製造における加工性が低下する。このため、溶接材料のNbの含有量は3.0質量%以下とするのが好ましい。
【0028】
第2の発明において、溶接材料の組成は、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とすることを必須とする。
【0029】
ここで、P,Sは、高温において発生する割れを阻止するために含有量を抑制する必要があり、それぞれ0.020質量%以下、0.010質量%以下に限定した。割れを完全に阻止するためにはP,Sをそれぞれ0.010質量%以下、0.005質量%以下とすることが望ましい。C,Cr,Ni,Si,Mnについては第1の発明と同様である。
【0030】
第2の発明における溶接材料の組成は、前記溶接材料の組成に加えて、Moを4.0質量%以下、Nbを3.0質量%以下0.5質量%以下及びCaを0.5質量%以下のうち一種又は二種含有していてもよい。
ここで、CaはSと結合して析出することにより、粒界へのSの偏析を抑制する効果がある。しかし、Caの添加量が0.5質量%を超えると、溶接金属の靭性に悪影響を及ぼすので溶接材料のCa量は0.5質量%以下とするのが好ましい。Mo,Nbについては第1の発明と同様である。
【0031】
なお、第1及び第2の発明において、上記した元素以外については、とくに限定されないが、溶接材料に、V、Cu、希土類元素をそれぞれ0.5質量%以下含有することは許容される。また、上記した元素以外に被溶接材、溶接材料に含有される元素が不可避的に含有されても何ら問題はない。
溶接金属中の各元素の含有量も上記の理由に応じて請求の範囲で規定した溶接材料中の各元素の含有量の範囲に限定される。
【0032】
本発明によって製造される鋼構造物用溶接継手においては、被溶接材として、低合金鋼材を用いるとよい。中でも、25mm厚以下の極厚490MPa級高張力鋼材あるいは590MPa級高張力鋼材を溶接した場合に好適である。しかし、本発明に用いられるこれら低合金鋼材の種類については、特に限定されず、通常公知のいずれの鋼材も適用可能である。
【0033】
また、本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、用いられる溶接材料は、前記被溶接材に適合した溶接条件で、前記の組成の溶接金属を形成できる組成を有するものであれば、通常公知の材料のいずれもが適用可能であり、特に限定されない。前記の組成の溶接金属が形成できるように、溶接条件により被溶接材からの希釈等を考慮して適宜選択すればよい。
【0034】
本発明の鋼構造物用溶接継手の溶接方法では、被溶接材に応じて、溶接材料の組成及び溶接条件を調整して、前記の組成の溶接金属を形成する。そして、溶接方法は、被覆アーク溶接、ガスメタルアーク溶接、サブマージアーク溶接、セルフシールドアーク溶接など各種溶接法がいずれも好適に適用できる。また、継手形状は、荷重非伝達型十字溶接継手、角回し溶接などの隅肉溶接継手、突き合わせ溶接継手など、船舶、海洋構造物、ペンストック、橋梁、貯槽、建設機械等の大型鋼構造物に用いられる継手形状がいずれも好適である。
【0035】
【実施例】
表1に被溶接鋼板の化学組成及び板厚を、表2に溶接材料の化学組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表2において、手溶接棒については棒径を4.0mmφ、ソリッドワイヤ(MAG溶接用)及びフラックス入りワイヤ(FCW)についてはワイヤ径を1.2mmφとした。これら用いて角回し溶接継手、荷重非伝達型十字溶接継手及び突合せ溶接継手を作製した。溶接条件は、表3に示すとおりとした。表1、表2の組合せにより作製したそれぞれの溶接継手における溶接金属の特性を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3を参照すると、記号3,5,7,8で示す溶接継手の溶接速度は、それぞれ10cm/ min,12cm/ min,13cm/ min,12cm/ minであり、請求項1及び2の要件を満たしていないことが理解される。また、記号7で示す溶接継手に使用された溶接材料は記号Dで示すもので、表2を参照すると、記号Dで示された溶接材料は、Pの含有量が0.058質量%、Sの含有量が0.025質量%であり、請求項2の要件を満たしていないことが理解される。
【0041】
そして、各溶接継手については、溶接部の残留応力を測定した。残留応力測定には、歪みゲージを用いて応力測定マニュアル(オーム社、1972年、pp.342−346)に示した切断法を適用した。残留応力はいずれもビードから2mm離れた場所での値であり、▲1▼溶接方向に対して中央部、▲2▼「溶接方向に対して中央部」から20mm溶接開始点側、▲3▼「溶接方向に対して中央部」から20mm溶接終了点側の3点で測定した。測定した残留応力を表4に示す。残留応力の単位はMPaであり、圧縮残留応力は「−」、引張残留応力は「+」で表される。
【0042】
【表4】
【0043】
表4を参照すると、発明例を構成する記号1,2,4,6の溶接継手については、残留応力値がいずれも−150MPa以下であり、また、測定場所▲1▼、▲2▼、▲3▼間における残留応力値のばらつきも小さく、安定した圧縮残留応力が得られている。
一方、比較例を構成する記号3,5の溶接継手については、圧縮残留応力が得られているがその値が小さく、かつ、測定場所▲1▼、▲2▼、▲3▼間における残留応力値のばらつきも大きい。このため、本発明の目的である「溶接部のああらゆる部位に安定した圧縮残留応力の導入」を達成できていない。また、比較例を構成する記号6,7の溶接継手については、引張残留応力が得られている。このため、本発明の目的である「溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力の導入」を達成できていない。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る鋼構造物用溶接継手の溶接方法によれば、溶接部のあらゆる部位に安定した圧縮残留応力を導入でき、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による溶接継手における溶接金属の温度−伸び曲線と従来例の溶接継手における溶接金属の温度−伸び曲線とを示すグラフである。
Claims (3)
- 溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
- 溶接材料を利用する鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、前記溶接材料の組成が、C:0.20質量%以下、Cr:8.0〜18.0質量%、Ni:6.0〜13.0質量%、Si:5.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下を含み、かつ/ あるいはMo:4.0質量%以下、Nb:3.0質量%以下及びCa:0.5質量%以下のうち一種又は二種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する前記溶接材料を用いて30cm/ min以上100cm/ min以下の溶接速度で前記鋼材を溶接することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
- 請求項1又は2記載の鋼構造物用溶接継手の溶接方法において、
溶接継手の溶接金属組成が、下記(1)式を満足することを特徴とする鋼構造物用溶接継手の溶接方法。
50≦719−795C−35.55Si−13.25Mn−23.7Cr
−26.5Ni−23.7Mo−11.85Nb≦350 …(1)
ここに、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量(質量%)
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Cited By (2)
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|---|---|---|---|---|
| JP2006274391A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Nisshin Steel Co Ltd | ひずみ検出センサー基板用ステンレス鋼 |
| JP2006289421A (ja) * | 2005-04-11 | 2006-10-26 | Jfe Steel Kk | 鋼構造物用溶接継手および継手作製方法 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223926A patent/JP2004058145A/ja active Pending
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