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JP2003501098A - 基質捕捉性プロテインチロシンホスファターゼ - Google Patents

基質捕捉性プロテインチロシンホスファターゼ

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Publication number
JP2003501098A
JP2003501098A JP2001502601A JP2001502601A JP2003501098A JP 2003501098 A JP2003501098 A JP 2003501098A JP 2001502601 A JP2001502601 A JP 2001502601A JP 2001502601 A JP2001502601 A JP 2001502601A JP 2003501098 A JP2003501098 A JP 2003501098A
Authority
JP
Japan
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substrate
ptp
protein
tyrosine
tyrosine phosphatase
Prior art date
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Pending
Application number
JP2001502601A
Other languages
English (en)
Inventor
トンクス,ニコラス,ケイ.
チャン,シャオ−フイ
Original Assignee
コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by コールド スプリング ハーバー ラボラトリー filed Critical コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
Publication of JP2003501098A publication Critical patent/JP2003501098A/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/16Hydrolases (3) acting on ester bonds (3.1)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide
    • C07K2319/01Fusion polypeptide containing a localisation/targetting motif
    • C07K2319/02Fusion polypeptide containing a localisation/targetting motif containing a signal sequence

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Abstract

(57)【要約】 触媒機能を有さないが、ホスホチロシン含有タンパク質基質と結合する能力を保持し、かつ少なくとも1つのチロシン残基とリン酸化され得ないアミノ酸との置換によりさらに改変される、新規な基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)に関する組成物および方法が提供される。PTP基質の同定のためのかかるPTPの使用、PTP−基質相互作用を変える薬剤の使用が開示され、PTP活性を変更する方法が開示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出願の相互参照 本出願は、1996年7月25日に提出された米国特許出願第08/685,
992号の分割出願である、1998年9月1日提出の米国特許出願番号第09
/144,925号の一部継続出願である。本出願はまた、1999年6月3日
提出の米国特許仮出願第60/137,319号(代理人名簿番号CSHL99
−06P)の特典を主張する。これらの出願の教示は、その全体が参照によりこ
こに組み込まれる。
【0002】 米国政府の権利の言明 ここで述べる研究は、米国立衛生研究所によって授与された研究補助金CA
53840の下で政府の資金援助を受けた。米国政府はこの発明の権利の一部を
所有しうる。
【0003】 発明の分野 本発明は一般に、細胞増殖、細胞分化及び/又は細胞の生存を制御するものの
ような、細胞の生化学的経路の欠陥に関連する状態を治療するために有用な組成
物と方法に関する。本発明は、より特定すると、プロテインチロシンホスファタ
ーゼポリペプチドの基質捕捉性変異体、及びそのバリアントに関する。本発明は
また、生物学的シグナル伝達及び細胞の生化学的経路を変化させる、小分子を含
めた抗体及び他の薬剤を同定するためのそのようなポリペプチドの使用に関する
【0004】 発明の背景 ポリペプチドにおいて一部のチロシン残基をリン酸化するプロテインチロシン
キナーゼ(PTK)、及び一部のホスホチロシン残基を脱リン酸化するプロテイ
ンチロシンホスファターゼ(PTP)の作用によって同調(coordinate)される可
逆的な蛋白質チロシンのリン酸化は、多くの細胞活動を調節する上での鍵となる
機序である。PTPとPTKの多様性と複雑さは同等であり、PTPは、細胞機
構が適切に機能するために正と負の両方のシグナルを送達するのに等しく重要で
あることが明らかになりつつある。チロシンリン酸化の調節は、細胞の分裂、増
殖及び分化に関連するものを含む、生物学的シグナル伝達の特異的経路に寄与す
る。これらの経路の欠陥及び/又は機能不全は、例えば悪性疾患、自己免疫疾患
、糖尿病、肥満及び感染を含む、介入処置のための有効な手段があいまいなまま
である一部の疾患状態の原因となりうる。
【0005】 プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの酵素は、共通して
高度に保存された250アミノ酸のPTP触媒ドメインを持つが、その非触媒セ
グメントにおいてはかなりの変動性を示す、500以上の構造的に異なる蛋白質
から成る(CharbonneauとTonks,1992 Annu.Rev
.Cell Biol.8:463−493;Tonks,1993 Semi
n.Cell Biol.4:373−453)。この構造的多様性は、ある場
合には、増殖、発生及び分化において特異的機能を持つことが明らかにされてい
るPTPファミリーの個々の成員の生理的役割の多様性をおそらく反映している
。(Desaiら、1996 Cell 84:599−609;Kishih
araら、1993 Cell 74:143−156;Perkinsら、1
992 Cell 70:225−236;PingelとThomas,19
89 Cell 58:1055−1065;Schultzら、1993 C
ell 73:1445−1454)。
【0006】 最近の研究ではまた、PTPの構造、発現及び調節に関してかなりの情報が得
られているが、PTPがその作用を及ぼすためのチロシンリン酸化基質の性質は
解明されないままである。合成リンペプチド基質についての限られた数の研究は
、種々のPTPの基質選択性におけるある程度の相違を明らかにした(Choら
、1993 Protein Sci.2:977−984;Dechertら
、1995 Eur.J.Biochem.231:673−681)。PTP
が仲介するPTP基質の脱リン酸化の分析は、リン酸化チロシン残基に対して基
質ポリペプチドの特定位置にある種のアミノ酸残基が存在することにより、触媒
活性に好都合でありうることを示唆している(Ruzzeneら、1993 E
ur.J.Biochem.211:289−295;Zhangら、1994
Biochemistry 33:2285−2290)。それ故、これらの
研究において使用された基質の生理学的関連性は不明であるが、PTPはin
vitroである程度のレベルの基質選択性を示す。
【0007】 PTPファミリーの酵素は、共通する、PTP触媒ドメインとして知られる約
250個のアミノ酸の進化的に保存されたセグメントを含む。この保存されたド
メイン内に、すべてのPTPにおいて不変である特有のシグナチャー(signature
) 配列モチーフ、 [I/V]HCXAGXXR[S/T]G 配列番号:36 が存在する。このモチーフ内のシステイン残基は該ファミリーの成員において不
変であり、ホスホチロシンの脱リン酸化反応の触媒作用にとって不可欠であるこ
とが知られている。かかる残基は、入ってきた基質のホスホチロシン残基上に存
在するホスフェート部分を攻撃する求核試薬として機能する。システイン残基を
部位特異的突然変異誘発によってセリン(例えばシステインからセリンへの変異
体又は「CS」変異体において)又はアラニン(例えばシステインからアラニン
への変異体又は「CA」変異体)に置き換えると、生じたPTPは、触媒作用は
減衰しているが、少なくともin vitroではその基質と複合体を形成する
又は結合する能力を保持している。そのような変異体は、例えばPTPファミリ
ーの成員であるMKP−1(Sunら、1993 Cell 75:487−4
93)、並びに他のPTPを用いて作製することができる。しかし、これらのC
S変異体は一般にin vitroでホスホチロシル基質と有効に結合して、安
定な酵素−基質複合体を形成することができるが、多くの場合そのような複合体
は、例えば変異体PTPとホスホチロシル蛋白質基質の両方が1個の細胞内に一
緒に存在するときには、in vivoで単離することができる。それ故、CS
変異体は有用性が限られており、すべての組合せのPTPと基質を単離するため
には使用することができない。
【0008】 現在、PTPが仲介する細胞事象を支配する分子機序を明らかにするための望
ましいゴールは、特に、PTPが相互作用する分子、基質及び結合パートナーの
決定、及びPTP活性を調節する薬剤の同定を含む。ある種の状況では、しかし
ながら、現在のアプローチは、PTPによるチロシンリン酸化の調節の一部の局
面についての理解を導きうるが、細胞内での特異的チロシンリン酸化及び/又は
脱リン酸化事象を制御するための戦略を提供することはできないであろう。
【0009】 従って当該技術においては、PTPの調節を含むホスホチロシンのシグナル伝
達を調節する改善された能力が求められている。PTPの調節に関する理解を高
めることは、ホスホチロシンシグナル伝達経路に関与する蛋白質の活性を調節し
、そのような経路に関連する状態を治療するための方法の開発を促進すると考え
られる。本発明はこれらの必要を満たし、さらに他の関連する利益を提供する。
【0010】 発明の概要 本発明はPTPの基質1つ以上と結合(捕捉)する、基質捕捉性PTP(ST
−PTP)とも称される、哺乳類PTPの新規な基質捕捉性の変異体または改変
型を提供する。ST−PTPとPTP基質との結合により、容易に観察でき、そ
して所望により単離して同定することのできる複合体が形成される。これらのP
TPの変異体は野生型のPTPと比較した場合、減衰された触媒活性(触媒活性
を欠くか低下した触媒活性を有する)を有するが、野生型PTPのチロシンリン
酸化基質に結合する能力を保持している。ST−PTPは例えばPTP1つ以上
の微妙な(fine)基質特異性を測定するために有用である。
【0011】 本発明の1つの局面は野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイン
の不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが1分あ
たり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、少なく
とも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのできないアミノ酸で置換
されている、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼを提供する。
特定の実施態様においては、少なくとも1つの野生型チロシン残基がアラニン、
システイン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、
グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパ
ラギン、プロリン、アルギニン、バリンまたはトリプトファンであるアミノ酸で
置換されている。特定の別の実施態様においては、置換されているチロシン残基
の少なくとも1個はプロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインに位置する
。特定の実施態様においては、置換されているチロシン残基の少なくとも1個が
プロテインチロシンホスファターゼ活性部位に位置し、さらに特定の実施態様に
おいてはチロシン残基の少なくとも1個がフェニルアラニンで置換されている。
特定の別の実施態様においては、置換されているチロシン残基の少なくとも1個
がプロテインチロシンホスファターゼ保存残基であり、特定のさらなる実施態様
においては、保存された残基がヒトPTPH1のアミノ酸部位676位における
チロシンに相当する。特定の実施態様においては、チロシン残基の少なくとも1
個がプロテインチロシンホスファターゼおよび基質分子少なくとも1個を含有す
る複合体を安定化させるアミノ酸で置換されている。特定の実施態様においては
、基質捕捉性変異体は変異体PTPH1を有しており、特定の実施態様において
は、基質捕捉性変異体はPTP1B、PTP−PEST、PTPγ、MKP−1
、DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX10、SHP2、PTP−PE
Z、PTP−MEG1、LC−PTP、TC−PTP、CD45、LARまたは
PTPH1である変異体プロテインチロシンホスファターゼを包含する。特定の
実施態様においては、基質捕捉性変異体は231位のアミノ酸がセリン残基で置
換されている変異体PTP−PESTホスファターゼを包含する。
【0012】 本発明の別の局面は、(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ド
メインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが
1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ
(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がチロシンリン酸化タンパク質と
基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとの間の複合体の形成を可
能にするのに十分な条件下およびそのような時間にリン酸化されることのできな
いアミノ酸で置換されている基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファター
ゼ少なくとも1個を、チロシンリン酸化タンパク質少なくとも1個を含む試料と
合わせる工程;および、チロシンリン酸化タンパク質および基質捕捉性変異体プ
ロテインチロシンホスファターゼを有する複合体の存在または非存在を測定する
工程、ここで、複合体の存在がチロシンリン酸化タンパク質がその複合体形成相
手であるプロテインチロシンホスファターゼの基質であることを示す、を含む、
プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質を
同定するための方法を提供する。特定の実施態様において、基質捕捉性変異体は
PTP1B、PTP−PEST、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ
、PTPX1、PTPX10、SHP2、PTP−PEZ、PTP−MEG1、
LC−PTP、TC−PTP、CD45、LARまたはPTPH1である変異体
プロテインチロシンホスファターゼを包含する。特定の実施態様において、試料
はチロシンリン酸化タンパク質を発現する細胞を含有し、そして別の特定のさら
なる実施態様において、該細胞は該基質をコードする核酸分子少なくとも1個で
トランスフェクションされている。他の特定の実施態様において少なくとも1個
の基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼは細胞により発現され、
そして別の更なる特定の実施態様においては細胞は該基質捕捉性変異体プロテイ
ンチロシンホスファターゼをコードする核酸分子少なくとも1つでトランスフェ
クションされている。特定の別の実施態様において、試料は(i)プロテインチ
ロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質および(ii)
少なくとも1 個の基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼを発現す
る細胞を含有する。特定の別の実施態様において、細胞は(i)該基質をコード
する核酸少なくとも1個および(ii)基質捕捉性変異体プロテインチロシンホ
スファターゼをコードする核酸少なくとも1個でトランスフェクションされてい
る。特定の別の実施態様において、試料はチロシンリン酸化タンパク質を少なく
とも1個含有する細胞溶解物を含有し、そして特定の更なる実施態様において、
細胞溶解物はチロシンリン酸化タンパク質をコードする核酸少なくとも1個でト
ランスフェクションされた細胞から誘導される。特定の更に別の実施態様におい
て細胞溶解物はプロテインチロシンキナーゼをコードする核酸少なくとも1個で
トランスフェクションされた細胞から誘導される。さらに別の特定の実施態様に
おいて、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼの少なくとも1個
が細胞溶解物内に存在し、そして特定の更なる実施態様において、細胞溶解物は
基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする核酸少なくと
も1個でトランスフェクションされた細胞から誘導される。別の実施態様におい
て、チロシンリン酸化タンパク質はVCP、p130cas ,EGF受容体、p2
10 bcr:abl,MAPキナーゼ、Shc(Tiganisら、1998
Mol. Cell. Biol.18:1622−163)またはインスリ
ン受容体である。
【0013】 別の局面において、本発明は、薬剤候補の非存在下および存在下、プロテイン
チロシンホスファターゼ、およびプロテインチロシンホスファターゼの基質であ
るチロシンリン酸化タンパク質を、基質の検出可能な脱リン酸化が起こるのに十
分な条件下およびそのような時間、接触させること(ここで、プロテインチロシ
ンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質は、(1)(i)野
生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基
が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが1分あたり1未満までのKcat
の減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ(ii)少なくとも1つの野生型チ
ロシン残基が、チロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体プロテインチロ
シンホスファターゼとの間の複合体の形成を可能にするのに十分な条件下および
そのような時間にリン酸化されることのできないアミノ酸で置換されている基質
捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼ少なくとも1個を、チロシンリ
ン酸化タンパク質を少なくとも1個含む試料と合わせること;および(2)チロ
シンリン酸化タンパク質および基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファタ
ーゼを有する複合体の存在または非存在を測定すること、ここで、複合体の存在
はチロシンリン酸化タンパク質がその複合体形成相手であるプロテインチロシン
ホスファターゼの基質であることを示す、により同定される);および薬剤の非
存在下の基質の脱リン酸化のレベルと薬剤の存在下の基質の脱リン酸化の程度を
比較すること(ここで、基質脱リン酸化のレベルの差は薬剤がプロテインチロシ
ンホスファターゼと基質との間の相互作用を変化させることを示す)を含む、プ
ロテインチロシンホスファターゼと、プロテインチロシンホスファターゼの基質
であるチロシンリン酸化タンパク質との間の相互作用を変化させる薬剤の同定方
法を提供する。
【0014】 別の局面において本発明は、(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ
触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさ
ないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;
かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基が、リン酸化されることので
きないアミノ酸で置換されている突然変異されたプロテインチロシンホスファタ
ーゼを基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼが含む、候補薬剤の
非存在下および存在下、プロテインチロシンホスファターゼおよびプロテインチ
ロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質を、チロシンリ
ン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとの間
の複合体の形成を可能にするのに十分な条件下およびそのような時間接触させる
こと;および、薬剤の非存在下の複合体形成のレベルと薬剤の存在下の複合体形
成のレベルを比較すること(ここで、複合体形成のレベルの差は薬剤がプロテイ
ンチロシンホスファターゼと基質との間の相互作用を変化させることを示す)を
含む、プロテインチロシンホスファターゼとプロテインチロシンホスファターゼ
の基質であるチロシンリン酸化タンパク質との間の相互作用を変化させる薬剤の
同定方法を提供する。
【0015】 別の局面において、本発明は(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ
触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさ
ないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;
かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基が、リン酸化されることので
きないアミノ酸で置換されている、プロテインチロシンホスファターゼの基質捕
捉性変異体を被験体に投与し、それにより基質捕捉性変異体プロテインチロシン
ホスファターゼのチロシンリン酸化タンパク質との相互作用がチロシンリン酸化
タンパク質の活性を低下させる、チロシンリン酸化タンパク質の活性を低下させ
る方法を提供する。特定の実施態様において、チロシンリン酸化タンパク質はV
CP、p130cas , EGF受容体、p210 bcr:abl, MAPキ
ナーゼ、Shc(Tiganisら、1998 Mol. Cell. Bio
l.18:1622−1634)またはインスリン受容体である。特定の別の実
施態様において、プロテインチロシンホスファターゼはPTP1B、PTP−P
EST、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX
10、SHP2、PTP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、TC−P
TP、CD45、LARまたはPTPH1である。
【0016】 本発明の更に別の局面において、本発明は、(i)野生型プロテインチロシン
ホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な
変化をもたらさないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ
酸で置換され;かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化さ
れることのできないアミノ酸で置換されているPTP−PESTの基質捕捉性変
異体を、p130cas を発現することのできる哺乳類に投与し、それにより基質
捕捉性変異体がp130cas と相互作用を起こしてp130cas リン酸化に関わ
る癌遺伝子少なくとも1個の形質転換作用を低減することを含む、p130cas リン酸化に関わる癌遺伝子少なくとも1個の形質転換作用を低減する方法を提供
する。特定の実施態様においては癌遺伝子はv−crk, v−srcまたはc
−Ha−rasである。
【0017】 別の局面において、本発明は、(i)野生型プロテインチロシンホスファター
ゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたら
さないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され
;かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基が、リン酸化されることの
できないアミノ酸で置換されているPTP−PESTの基質捕捉性変異体を、p
130cas 発現可能な哺乳類に投与し、それにより基質捕捉性変異体がp130 cas と相互作用を起こしてp130cas に関わるシグナル伝達複合体の形成を低
減させることを含む、p130cas に関わるシグナル伝達複合体の形成を低減す
る方法を提供する。
【0018】 本発明は別の局面において、(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ
触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさ
ないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;
かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのでき
ないアミノ酸で置換されているプロテインチロシンホスファターゼの基質捕捉性
変異体を哺乳類に投与することを含む、プロテインチロシンホスファターゼの投
与または過剰発現に関わる細胞毒性作用を低減する方法を提供する。
【0019】 本発明の別の局面において、野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ド
メインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが
1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、
少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのできないアミノ酸
で置換されている基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコード
する単離された核酸分子を提供する。特定の実施態様において、本発明は上記し
た基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする核酸分子に
相補的な少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドを提供する。
【0020】 本発明の別の局面は、野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイン
の不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが1分あ
たり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、少なく
とも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのできないアミノ酸で置換
されている基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼに融合したポリ
ペプチド配列を含有する融合タンパク質を提供することである。特定の実施態様
において、該ポリペプチドは酵素またはその変種またはフラグメントである。一
部の実施態様において、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼに
融合するポリペプチド配列はプロテアーゼにより開裂可能である。特定の別の実
施態様において、ポリペプチド配列はリガンドに対する親和性を有するアフィニ
ティータグポリペプチドである。
【0021】 更に別の局面において、本発明は野生型プロテインチロシンホスファターゼ触
媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさな
いが1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;か
つ、少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのできないアミ
ノ酸で置換されている基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコ
ードする核酸に作動可能に連結したプロモーター少なくとも1個を含有する組み
換え発現構築物を提供する。特定の実施態様において、該プロモーターは調節プ
ロモーターであり、そして特定のさらなる実施態様においては基質捕捉性変異体
プロテインチロシンホスファターゼは第2の核酸配列のポリペプチド産物との融
合タンパク質として発現される。特定のさらなる実施態様において、第2の核酸
配列のポリペプチド産物は酵素である。特定の別の実施態様において、発現構築
物は組み換えウィルス発現構築物である。特定の別の実施態様において本発明は
上記した組み換え発現構築物を含有する宿主細胞を提供する。特定の実施態様に
おいて該宿主細胞は原核細胞であり、そして、特定の実施態様においては該宿主
細胞は真核細胞である。
【0022】 本発明は別の局面において、野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ド
メインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが
1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、
少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化されることのできないアミノ酸
で置換されている基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコード
する核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター少なくとも1個を含有する組
み換え発現構築物を含有する宿主細胞を培養することを含む、組み換え基質捕捉
性変異体プロテインチロシンホスファターゼを生成する方法を提供する。特定の
実施態様においてプロモーターは調節プロモーターである。特定の別の実施態様
において、本発明は組み換え基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファター
ゼを生成する方法を提供し、該方法は上記した組み換えウィルス発現構築物に感
染した宿主細胞を培養することを含む。
【0023】 本発明は別の局面において、製薬上許容しうる担体または希釈剤と共に、野生
型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が
、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが1分あたり1未満までのKcatの
減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、少なくとも1つの野生型チロシン残
基がリン酸化されることのできないアミノ酸で置換されている基質捕捉性変異体
プロテインチロシンホスファターゼを含有する医薬組成物を提供する。
【0024】 更に別の局面において、本発明は製薬上許容しうる担体または希釈剤と共に、
野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残
基が、酵素のKmは顕著な変化をもたらさないが1分あたり1未満までのKca
tの減少をもたらすアミノ酸で置換され;かつ、少なくとも1つの野生型チロシ
ン残基がリン酸化されることのできないアミノ酸で置換されている基質捕捉性変
異体プロテインチロシンホスファターゼと相互作用を示す薬剤を含有する医薬組
成物を提供する。特定の別の実施態様において、本発明は(i)野生型プロテイ
ンチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパラギン酸残基が、酵素のK
mは顕著な変化をもたらさないが1分あたり1未満までのKcatの減少をもた
らすアミノ酸で置換され;かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基が
リン酸化されることのできないアミノ酸で置換されている基質捕捉性変異体プロ
テインチロシンホスファターゼ少なくとも1個;および、プロテインチロシンホ
スファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との複合体の存在または非存在を検
出する際に用いるのに適する補助試薬を含む、プロテインチロシンホスファター
ゼのチロシンリン酸化タンパク質基質を同定するためのキットを提供する。
【0025】 本発明のこれらおよび他の局面は以下の詳細な説明および添付する図面を参照
することにより明らかになる。本明細書に開示する全ての参考文献(ウェブサイ
トを含む)は、参照により、各々が個々に組み込まれたかのようにそのまま組み
込まれる。
【0026】 発明の詳細な説明 本発明は、PTP触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のミカエ
リス−メンテン定数(Km)の顕著な変化をもたらさないが、触媒速度定数(K
cat)の低下をもたらすアミノ酸で置換されるように突然変異させ、さらに少
なくとも1個のチロシン残基を、リン酸化され得ないアミノ酸で置換することに
よって突然変異させたPTPから誘導される新規基質捕捉性変異体プロテインチ
ロシンホスファターゼ(PTP)を対象とする。本発明は、一部、ある種のin
vivo条件下でPTP酵素自体が、PTPと、PTP基質を含めた他の分子
間での相互作用を変化させうるような様式でチロシンリン酸化を被ることがある
という予想外の所見に基づく。本明細書で定義するように、ホスファターゼは、
[I/V]HCXAGXXR[S/T]G(配列番号:36)のシグナチャーモ
チーフを含む場合、PTPファミリーの成員である。二元(dual)特異性PTP、
すなわちリン酸化チロシンとリン酸化セリン又はトレオニンの両方を脱リン酸化
するPTPも、本発明における使用に適する。適切なPTPは、PTP1B、P
TP−PEST、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、
PTPX10、SHP2、PTP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、
TC−PTP、CD45、LAR及びPTPH1を含むが、これらに限定されな
い。
【0027】 上述したように、基質捕捉性変異体PTPは、野生型プロテインチロシンホス
ファターゼの触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な
変化をもたらさないが、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミ
ノ酸で置換し、さらに少なくとも1個の野生型チロシン残基が、リン酸化され得
ないアミノ酸で置換されるように突然変異させた野生型PTPから誘導される。
これに関して、既知のPTPのアミノ酸配列解析は、PTPファミリーの成員に
おいて不変である触媒ドメインのアスパラギン酸残基を含めて、PTP一次構造
内に27個の不変残基が存在することを明らかにしている(Barfordら、
1994 Science 263:1397−1404;Jiaら、1995
Science 268:1754−1758)。多数のPTPファミリーの
成員のアミノ酸配列を整列したとき(例えば図1A−E参照;また例えばBar
fordら、1995 Nature Struct.Biol.2:1043
参照)、この不変のアスパラギン酸残基は、すべてのPTP間で不変である、P
TPシグナチャー配列モチーフ、[I/V]HCXAGXXR[S/T]G(配
列番号:36)に対して対応する位置に、各々のPTP配列の触媒ドメイン領域
において容易に同定できる(例えば、WO98/04712号;Flintら、
1997 Proc.Nat.Acad.Sci.94:1680及びその中で
引用されている参考文献参照)。しかし、触媒ドメインの不変のアスパラギン酸
残基の正確なアミノ酸配列位置番号は、様々なPTP配列の整列を最大化するこ
とを課すと考えられる配列シフトにより、PTPごとに異なると考えられる(種
々のPTP配列の整列については、例えばBarfordら、1995 Nat
ure Struct.Biol.2:1043参照)。
【0028】 特に、2個のPTPポリペプチド配列の部分は、アミノ酸の位置番号に従って
1個のPTP配列を番号付けし、次いで比較する配列を適合するアミノ酸又は保
存された残基であるアミノ酸、例えば各々の位置で極性(例えばD、E、K、R
、H、S、T、N、Q)、疎水性(例えばA、P、V、L、I、M、F、W、Y
)又は中性(例えばC、G)の残基のままであるアミノ酸の数を最大にするよう
に整列するという慣例に基づき、「対応する」アミノ酸配列、領域、断片等とみ
なされる。同様に、本明細書で提供するように突然変異を起こさせる候補PTP
をコードするDNA配列、又は部分、領域、断片等は、既知の野生型PTPのD
NA配列において核酸配列の位置を番号付けるための慣例に従って、既知の野生
型PTPをコードするDNA配列に対応させることができ、それによって、配列
の少なくとも20個の連続するヌクレオチドの所与の配列において少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のヌクレ
オチドが同一であるように候補PTPのDNA配列を既知のPTP DNAと整
列する。特定の好ましい実施態様では、候補PTPのDNA配列は、対応する既
知のPTP DNA配列と95%以上(greater than) 同一である。特定の特に
好ましい実施態様では、候補PTPのDNA配列の部分、領域又は断片は、対応
する既知のPTP DNA配列と同一である。当該技術において周知であるよう
に、そのDNAが、所与の形質の原因となる特定遺伝子において不規則性(例え
ば共通形態又は支配的形態)を含まない個人は、その遺伝子に関して野生型の遺
伝的相補体(遺伝子型)を有すると言われることがあるが、該遺伝子のDNAに
おける突然変異として知られる不規則性、例えば1個又はそれ以上のヌクレオチ
ドの置換、挿入又は欠失の存在は、突然変異を起こした又は変異体の遺伝子型を
示す。
【0029】 上述したように、本発明の一部の実施態様では、触媒ドメインの不変アスパラ
ギン酸及び少なくとも1個のチロシン残基が本明細書で提供するように置換され
ている基質捕捉性変異体PTPが提供される。Barfordら(1995)の
中で開示されているもの以外のPTP配列における触媒ドメイン不変のアスパラ
ギン酸残基の同定は、GENEWORKS、Align又はNCBIウエブサイ
ト(http://www/ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bi
n/BLAST)で入手できる、BLASTアルゴリズム(Altschul.
J.Mol.Biol.219:555−565,1991:Henikoff
とHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:
10915−10919,1992)のような当業者に周知のコンピュータアル
ゴリズムを用いて配列を比較することによって実施しうる。
【0030】 本発明の特定実施態様は、一部、不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの
顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満(1min -1未満)までのKca
tの減少をもたらすアミノ酸で置換されている新規PTPに関する。これらのP
TPは、それらのチロシンリン酸化基質と複合体を形成する又はチロシンリン酸
化基質に結合する能力を保持しているが、触媒作用は減衰している(すなわち、
基質捕捉性変異体PTPは対応する野生型PTPと同様のKmを保持するが、1
分あたり1未満のKcatと比較した野生型酵素の活性に依存して、野生型酵素
に対して少なくとも102 −105 倍低下したVmaxを有している)。この減
衰は、野生型PTPに比べて低下した又は消失した触媒活性を包含する。例えば
、不変のアスパラギン酸残基を、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、
プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン
、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、ア
ルギニン又はヒスチジンに変化させる又は突然変異させることができる。
【0031】 不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1
分あたり1未満(1min -1未満)までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置
換され、かつ少なくとも1個のチロシン残基が、リン酸化され得ないアミノ酸で
置換されている、本明細書で述べる好ましい基質捕捉性変異体PTPは、さらに
他の突然変異を含みうる。特に好ましい実施態様では、そのような付加的な突然
変異は、PTP/基質複合体を安定化するのを助ける置換、挿入又は欠失(最も
好ましくは置換)に関するものである。例えば、シグナチャーモチーフ内のセリ
ン/トレオニン残基のアラニン残基への突然変異(S/T→A変異体)は、PT
Pが仲介する基質脱リン酸化反応の律速段階を変化させうる。未修飾PTPの場
合には、遷移状態の形成が律速となりうるが、S/T→A変異体の場合には、遷
移状態の崩壊が律速となり、それによってPTP/基質複合体を安定化させるこ
とができる。そのような突然変異を、本明細書で提供するような、PTP触媒ド
メインの不変のアスパラギン酸残基の置換及びPTPチロシンの置換と、例えば
PTP−基質複合体を安定化し、その単離を容易にするために有益に組み合わせ
ることができる。もう1つの例として、本明細書で提供するようにリン酸化する
ことができる、野生型PTPに存在する任意の1個又はそれ以上の他のアミノ酸
(例えばセリン、トレオニン、チロシン)を、リン酸化され得ないアミノ酸で置
換することは、PTP−基質複合体の安定性の見地から望ましいと考えられる。
【0032】 上述したように、本発明は、触媒ドメインの不変アスパラギン酸及び少なくと
も1個のチロシン残基が置換されており、かかるチロシンが、リン酸化すること
のできないアミノ酸で置換されている、基質捕捉性変異体PTPを提供する。リ
ン酸化され得ないアミノ酸は、好ましい実施態様では、アラニン、システイン、
アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒ
スチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロ
リン、アルギニン、バリン又はトリプトファンでありうる。チロシンの置換が望
ましいことは、in vivoでの特定条件下で、PTP酵素自体が、PTPと
、PTP基質を含めた他の分子間の相互作用を変化させうるようにチロシンリン
酸化を被るという意外な所見から導かれる。PTP基質は、本明細書で提供され
るようなPTPに特異的に結合しうる及び/又はPTPによって脱リン酸化され
うる、どのような天然又は非天然のチロシンがリン酸化されたペプチド、ポリペ
プチド又は蛋白質も包含する。従って、特定のPTPの野生型アミノ酸配列にお
いて認められるチロシン残基を、本明細書で提供されるような別のアミノ酸で置
換すると、存在する複合体の量及び/又は基質に対する変異体PTPの親和性が
増大すると、チロシン残基が置換されていないPTPを使用した複合体形成と比
べて、本発明の基質捕捉性変異体PTPとPTP基質によって形成される複合体
が安定化される。
【0033】 上述したように、本発明は、野生型PTPの基質であるチロシンリン酸化蛋白
質を同定する方法を提供するために、本明細書で述べる基質捕捉性変異体PTP
を利用する。本発明のこの局面に従えば、少なくとも1個のチロシンリン酸化蛋
白質を含むサンプルを、本明細書で提供されるような少なくとも1個の基質捕捉
性変異体PTPと組み合わせて、基質と変異体PTPを含む複合体の有無を調べ
る。PTPとPTP基質間での結合相互作用は複合体の形成をもたらし、これは
PTPとPTP基質間の親和相互作用を指す。複合体はシグナル伝達複合体を含
みうるが、これは、その形成、安定な結合及び/又は解離によって直接又は間接
的に生物学的シグナルを与えるあらゆる複合体を指す。そのようなシグナルは、
例えば、限定ではなく例示として、分子結合、分子構造の共有結合性又は非共有
結合性修飾、遺伝子発現、遺伝子組換え、遺伝子組込み、核酸合成又は非細胞粒
子構築を導く細胞内及び/又は細胞間事象を含み、またエンドサイトーシス、食
作用、核溶解、蛋白分解、脂肪分解、加水分解、触媒、又は他の調節事象を含み
うる。
【0034】 PTPとPTP基質間での安定な複合体の存在の測定は、本開示に従ってPT
PとPTP基質間での分子間相互作用を明らかにするための、当該技術において
既知の何らかの方法論の使用を指す。そのような方法論は、限定ではなく例示と
して、共精製、共沈、共免疫沈降、放射又は蛍光アッセイ、ウエスタン免疫ブロ
ット分析、固相リガンド−カウンターリガンドソルベント(solid-phase ligand-
counterligand sorbent)手法、アフィニティークロマトグラフィー及び表面アフ
ィニティープラスモン共鳴のようなアフィニティー手法を含む親和捕捉等を含み
うる。これらやその他の有用なアフィニティー手法に関して、アフィニティー手
法を含めた、複合体を単離し、特性付けるための手法の詳細については、例えば
、その全体が参照によりここに組み込まれる、Scopes,R.K.,「蛋白
精製:原理と実際(Protein Purification:Princi
ples and Practice)」、1987,Springer−Ve
rlag,NY;Weir,D.M.「実験的免疫学ハンドブック(Handb
ook of Experimental Immunology)」、198
6,Blackwell Scientific,Boston;及びHerm
anson,G.T.ら、「固定化アフィニティーリガンド手法(Immobi
lized Affinity Ligand Techniques)」、1
992,Academic Press,Inc.,California参照
。PTPが、約104 -1に等しいか又はそれ以上の、好ましくは約105 -1 に等しいか又はそれ以上の、より好まし約106 -1に等しいか又はそれ以上の
、さらに一層好ましくは約107 -1〜109 -1に等しいか又はそれ以上のK
aを有する基質と結合する場合、PTPは特異的結合を介してPTP基質と相互
作用しうる。PTPとPTP基質のような結合パートナーの親和性は、従来の手
法、例えばScatchardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.51:
660(1949)が述べたような手法を用いて容易に測定できる。
【0035】 理論に縛られるのは望むところではないが、PTP分子自体の一部であるリン
酸化チロシン残基は、PTP分子と、PTPが結合及び/又は脱リン酸化しうる
チロシンリン酸化蛋白質を含むPTP基質分子間の相互作用に影響を及ぼしうる
と考えられる。この非制限的な理論に従えば、PTPの一次構造中に存在する保
存されたチロシン残基は、PTP触媒ドメインの活性部位に位置するシグナチャ
ーモチーフ(上述したような)において認められる不変システイン残基と、PT
P基質リン酸化蛋白上にホスホチロシンの形態で存在するリン酸基の間で形成さ
れうる高度に反応性のチオリン酸中間体からリン酸基を転移するためのレセプタ
であると考えられる。従って、PTP活性部位の保存されたチロシン残基は、基
質ホスホチロシンとの疎水性相互作用を与えることにより、その基質に対するP
TPの分子間配向を促進し、さらにリン酸アクセプタとして働くと考えられるが
、本発明はそのように限定されない。
【0036】 上述したように、本発明は、少なくとも1個のチロシン残基が、リン酸化され
得ないアミノ酸で置換された変異体PTPを提供する。好ましくはチロシン残基
はPTP触媒ドメインに位置し、かかるドメインは、先に述べたように種々のP
TP間で高度に保存された約250アミノ酸の領域を指す(例えばBarfor
d,1998 Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct
.27:133;Jia,1997 Biochem.Cell Biol.7
5:17;Van Vectorら、1998 Curr.Opin Gene
t.Devel.8:112も参照のこと)。より好ましくは、チロシン残基は
PTP活性部位に位置し、かかる部位は、PTPシグナチャーモチーフを含み、
且つ基質結合と脱リン酸化のためのPTP結合部位ポケット又は「クレイドル
(揺り篭)」を形成するアミノ酸を含み、さらに不変アスパラギン酸含有ループ
(存在する場合)及び基質の認識と触媒作用に寄与する隣接のペプチドバックボ
ーン配列(例えばJia,1997参照)を含む、PTP触媒ドメイン内の領域
を指す。最も好ましい実施態様では、チロシン残基はフェニルアラニンで置換さ
れており、別の最も好ましい実施態様では、チロシン残基は、ヒトPTPH1の
アミノ酸配列の676位に位置するチロシンに対応し、同時に図1に示すPTP
−1B配列の46位のアミノ酸残基に対応する保存された残基である。他の好ま
しい実施態様では、チロシン残基は、シグナチャーモチーフの位置に対して2個
又はそれ以上のPTPアミノ酸配列内の対応する位置に存在するチロシン残基を
含む、PTP保存残基である。他の好ましい実施態様では、チロシン残基は、本
明細書で提供するような、PTPと少なくとも1個の基質分子によって形成され
る複合体を安定化するアミノ酸で置換されている。
【0037】 上述したように、本発明に従って有用と考えられるPTPは、触媒ドメイン内
の対応する位置の不変のアスパラギン酸残基と1個のチロシン残基を有するあら
ゆるPTPを含む。限定ではなく例示として、本発明の一部の好ましい実施態様
では、基質捕捉性変異体PTPは、フェニルアラニンで置換された対応する野生
型配列内に認められる少なくとも1個のチロシン残基を持つ。一部の特に好まし
い実施態様では、PTPは、アラニンで置換された不変アスパラギン酸とフェニ
ルアラニンで置換された676位のチロシンを持つPTPH1、PTPH1(Y
676F/D811A)である。一部の他の実施態様では、PTPは、対応する
野生型配列内で認められるシステインがセリンで置換され、少なくとも1個の野
生型チロシン残基が、リン酸化できないアミノ酸で置換されている、変異体PT
P−PESTホスファターゼである。しかし、本明細書で特定して述べるもの以
外の変異体PTPも、PTP触媒ドメインのアミノ酸配列を、本明細書で述べる
PTPのアミノ酸配列(引用する参考文献で提供されるものを含む)と共に整列
し、触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残基と少なくとも1個のチロシン残基
を同定して、さらにこれらの残基を、例えばPTPをコードするDNAの部位指
定突然変異誘発によって変化させることにより、容易に作製できることを認識し
ておかねばならない。
【0038】 DNAの修飾は、PTPをコードするDNAの部位特異的又は部位指定突然変
異誘発及びオーバーラップ伸長によるPCRスプライシング(SOE)のような
、DNA鋳型に改変を導入し、増幅するプライマーを使用するDNA増幅法を含
めて、様々な方法によって実施しうる。部位指定突然変異誘発は、典型的には、
周知であり、市販のものが入手できるM13ファージベクターのような、一本鎖
及び二本鎖形態を持つファージベクターを使用して実施される。一本鎖ファージ
の複製起点を含む他の適当なベクターも使用しうる(例えばVeiraら、Me
th.Enzymol.15:3,1987参照)。一般に部位指定突然変異誘
発は、対象とする蛋白質(例えばPTPファミリーの成員)をコードする一本鎖
ベクターを調製することによって実施される。一本鎖ベクター中のDNAに相同
な領域内に所望する突然変異を含むオリゴヌクレオチドプライマーをベクターに
アニーリングして、次に大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI(クレノ
ー断片)のようなDNAポリメラーゼを付加する。かかるDNAポリメラーゼは
、二本鎖領域を、1本の鎖が改変された配列をコードし、他の鎖がもとの配列を
コードするヘテロ二本鎖を作製するためのプライマーとして使用する。部位指定
突然変異誘発に関するさらなる開示は、例えばKunkelら(Methods
in Enzymol.154:367,1987);及び米国特許第4,5
18,584号及び同第4,737,462号において認められる。ヘテロ二本
鎖を適切な細菌細胞に導入し、所望する突然変異を含むクローンを選択する。生
じた改変DNA分子は、組換え手法により適切な宿主細胞において、修飾された
蛋白質を産生するように発現されうる。
【0039】 部位指定突然変異の導入を通しての個々のアミノ酸の特異的置換は周知であり
、当業者が精通する方法論に従って実施しうる。生じる変異体PTPの触媒活性
への作用は、本明細書で提供されたように、またこれまでに開示されているよう
に(例えばWO98/04712号;Flintら、1997 Proc.Na
t.Acad.Sci.94:1680)、単に生じた修飾蛋白質をKmの保存
とKcatの1分あたり1未満への減少に関して試験することにより、経験的に
決定することができる。生じた変異体PTP分子をチロシンリン酸化する能力へ
の作用も、やはり本明細書で提供するように、例えばPTKアクセプタとして働
きうるin vitro又はin vivo条件に変異体を曝露させたあと、単
にそのような変異体をホスホチロシンの存在に関して試験することにより、経験
的に決定することができる。
【0040】 下記に述べるPTP変異体の特定例は、DA(アスパラギン酸からアラニンへ
)変異体、YF(チロシンからフェニルアラニンへ)変異体、CS変異体及びそ
れらの組合せであるが、本発明の基質捕捉性変異体PTPがこれらのアミノ酸置
換に限定されないことは明白であろう。不変のアスパラギン酸残基は、例えば部
位指定突然変異誘発によって、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分
あたり1未満(1min -1未満)までのKcatの減少をもたらすどのようなアミ
ノ酸にも変化させることができる。例えば、不変のアスパラギン酸残基を、アラ
ニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプ
トファン、メチオニン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン
、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン又はヒスチジン、あるいは誘
導体、変異体等を含めて当該技術において既知の他の天然又は非天然アミノ酸に
変化させる又は突然変異させることができる。同様に、少なくとも1個のチロシ
ン残基の置換は、リン酸化され得ない(すなわち、リン酸基によるアミノ酸側鎖
のヒドロキシルの安定な共有結合性修飾)任意のアミノ酸、例えばアラニン、シ
ステイン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グ
リシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラ
ギン、プロリン、アルギニン、バリン又はトリプトファン、あるいは誘導体、変
異体等を含めて当該技術において既知の他の天然又は非天然アミノ酸によって実
施しうる。
【0041】 本発明の核酸はRNAの形態又はDNAの形態をとりうるが、かかるDNAは
cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含む。DNAは二本鎖又は一本鎖で
ありうるが、一本鎖である場合には、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖
でありうる。野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変のア
スパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1
未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換されており、さらに少なく
とも1個の野生型チロシン残基が、リン酸化され得ないアミノ酸で置換されてい
る、基質捕捉性変異体PTPをコードする核酸分子は、上述したように任意の所
与のPTPについての当該技術で既知のコード配列と同一であるか、若しくは、
同じPTPをコードするが、遺伝コードの重複又は縮重の結果として異なるコー
ド配列でありうる。
【0042】 本発明はさらに、基質捕捉性変異体PTPのような突然変異を生じたPTPを
含めて、PTPポリペプチドの断片、類似体及び誘導体をコードする、本明細書
で述べる核酸の変異体に関する。PTPをコードする核酸の変異体は、核酸の天
然に生じる対立遺伝子変異体又は非天然に生じる変異体でありうる。当該技術に
おいて既知であるように、対立遺伝子変異体は、そのいずれもがコードされるP
TPポリペプチドの機能を顕著に変化させない、1個又はそれ以上のヌクレオチ
ドの置換、欠失又は付加のうちの少なくとも1つを有しうる、核酸配列の代替的
形態である。
【0043】 アミノ酸残基又は配列の様々な付加又は置換、あるいは生物学的活性に必要でな
い末端又は内部残基又は配列の欠失をコードする均等のDNA構築物も、本発明
に包含される。例えば、生物学的活性に必須でないCys残基をコードする配列
を、Cys残基を欠失させる又は他のアミノ酸で置換して、再生の際に誤った分
子内ジスルフィド架橋が形成されるのを防ぐように改変させることができる。他
の均等物は、隣接する二塩基性アミノ酸残基を、KEX2プロテアーゼ活性が存
在する酵母系での発現を増強するように修飾することによって調製できる。EP
212,914号は、蛋白質中のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活
性化するために部位特異的突然変異誘発を使用することを開示している。KEX
2プロテアーゼプロセシング部位は、Arg−Arg、Arg−Lys、及びL
ys−Argの対を、これらの隣接塩基性残基の発生を排除するように改変する
ために残基を欠失、付加又は置換することによって不活性化される。Lys−L
ysの対合はかなりKEX2の切断を受けにくく、Arg−Lys又はLys−
ArgからLys−Lysへの変換が、KEX2部位を不活性化するための伝統
的で好ましいアプローチである。
【0044】 本発明はさらに、基質捕捉性変異体PTPを含めたPTPポリペプチド、特に
PTP発現構築物を含む宿主細胞を培養することによって組換えPTPポリペプ
チドを生成するための方法、及び単離された組換えPTPポリペプチドに関する
。本発明のポリペプチドと核酸は、好ましくは単離された形態で提供され、一部
の好ましい実施態様では、均一に精製される。基質捕捉性変異体PTPを含めて
、PTPポリペプチド又は融合蛋白質に言及するとき、「断片」、「誘導体」及
び「類似体」の語は、そのようなポリペプチドと本質的に同じ生物学的機能又は
活性を保持する任意のPTPポリペプチド又は融合蛋白質を指す。従って、類似
体は、プロ蛋白部分の切断によって活性PTPポリペプチドを産生するように活
性化されうるプロ蛋白を含む。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド又は
合成ポリペプチドでありうるが、好ましくは組換えポリペプチドである。
【0045】 基質捕捉性変異体PTPを含めて、PTPポリペプチド又は融合蛋白質の断片
、誘導体又は類似体は、(i)1個又はそれ以上のアミノ酸残基が、保存された
又は保存されないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換さ
れており、そのような置換アミノ酸残基が遺伝コードによってコードされるもの
であるか又はそうではないもの、あるいは(ii)1個又はそれ以上のアミノ酸
残基が置換基を含むもの、あるいは(iii)PTPポリペプチドが、当該ポリ
ペプチドの半減期を延長させる化合物(例えばポリエチレングリコール)のよう
な、別の化合物と融合しているもの、あるいは(iv)PTPポリペプチド又は
プロ蛋白配列の精製のために用いるアミノ酸を含めて、付加的なアミノ酸がPT
Pポリペプチドに融合されているものでありうる。そのような断片、誘導体及び
類似体は、本文中の教示から当業者の技術範囲内であるとみなされる。
【0046】 本発明のポリペプチドは、当該技術分野において既知のPTP配列と同一であ
るか又は類似するアミノ酸配列を持つPTPポリペプチドおよび融合蛋白質を含
む。例えば、限定ではなく例示として、実施例において下記に言及するヒトPT
Pポリペプチド(基質捕捉性変異体PTPを含めて)は、本明細書で引用する参
考文献及び実施例の中で述べるポリペプチド及びそのようなポリペプチドの部分
(PTPポリペプチドのそのような部分が一般に少なくとも30個のアミノ酸、
より好ましくは少なくとも50個のアミノ酸を含む)と少なくとも70%の類似
性(好ましくは70%の同一性)、より好ましくは90%の類似性(より好まし
くは90%の同一性)、そしてさらに一層好ましくは95%の類似性(さらに一
層好ましくは95%の同一性)を持ち、本発明に従った使用のために考慮される
【0047】 当該技術分野において既知であるように、2個のポリペプチド間の「類似性」
は、当該ポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換基を第二
のポリペプチドの配列と比較することによって(例えば上述したようなGENE
WORKS、Align又はBLASTアルゴリズムを用いて)決定される。本
発明のポリペプチドの断片又は部分は、ペプチド合成によって対応する完全長ポ
リペプチドを生成するために使用しうる:それ故、かかる断片は完全長ポリペプ
チドを生成するための中間体として使用できる。本発明の核酸の断片又は部分は
、本発明の完全長核酸を合成するために使用しうる。
【0048】 「単離された」の語は、物質がそのもとの環境(例えば物質が天然に生じる場
合には自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生体動物中に存在
する天然に生じる核酸又はポリペプチドは単離されていないが、自然系において
共存する一部又は全部の物質から切り離された同じ核酸又はポリペプチドは単離
されている。そのような核酸はベクターの一部でありうる及び/又はそのような
核酸又はポリペプチドは組成物の一部でありうるが、そのようなベクター又は組
成物は核酸又はポリペプチドにとっての自然環境の一部ではないので、やはり単
離されている。「遺伝子」の語は、ポリペプチド鎖の生成に関わるDNAのセグ
メントを意味する;これは、コード領域の前後の「リーダー及びトレーラー」領
域並びに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を
含む。
【0049】 本明細書で述べるように、本発明は、野生型プロテインチロシンホスファター
ゼ触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもた
らさないが、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸で置換
されており、さらに少なくとも1個の野生型プロテインチロシンホスファターゼ
チロシン残基が、リン酸化され得ないアミノ酸で置換されている、基質捕捉性変
異体PTPに融合されたポリペプチドを含む融合蛋白質を提供する。そのような
PTP融合蛋白質は、例えば、限定ではなく例示として、PTP融合蛋白質の検
出、分離及び/又は精製を可能にする付加的な機能的又は非機能的ポリペプチド
配列に融合されたPTPポリペプチド配列の発現を提供するために、フレーム内
で付加的コード配列に融合された基質捕捉性変異体PTPコード配列を有する核
酸によってコードされる。そのようなPTP融合蛋白質は、蛋白−蛋白親和性、
金属親和性又は電荷親和性に基づくポリペプチド精製によって、あるいはPTP
ポリペプチドが融合蛋白質から分離されうるようにプロテアーゼによって切断さ
れうる融合配列を含む融合蛋白質の特異的プロテアーゼ切断によって、PTP融
合蛋白質の検出、単離及び/又は精製を可能にしうる。
【0050】 それ故、PTP融合蛋白質は親和性標識ポリペプチド配列を含むことができ、
これは、リガンドとの特異的親和相互作用を通してのPTPの検出と単離を容易
にするためにPTPに付加するポリペプチド又はペプチドを指す。リガンドは、
親和性標識が本明細書で提供するような特異的結合相互作用を通して相互作用し
うる任意の分子、レセプタ、カウンターレセプタ、抗体等でありうる。そのよう
なペプチドは、例えば、米国特許第5,011,912号及びHoppら(19
88 Bio/Technology 6:1204)に述べられているポリ−
His又は抗原同定ペプチド、あるいはXPRESSTMエピトープ標識(Inv
itrogen,Carlsbad,CA)を含む。親和性配列は、例えば、細
菌宿主の場合にはマーカに融合した成熟ポリペプチドの精製を行うための、pB
AD/His(Invitrogen)又はpQE−9ベクターによって供給さ
れるようなヘキサヒスチジン標識であるか、又は例えば、親和性配列は、哺乳類
宿主、例えばCOS−7細胞を使用するときには赤血球凝集素(HA)標識であ
りうる。HA標識は、インフルエンザ赤血球凝集素蛋白質から誘導される抗体決
定(defined) エピトープに対応する(Wilsonら、1984 Cell 3
7:767)。
【0051】 PTP融合蛋白質はさらに、PTPの検出、単離及び/又は定位を容易にする
ためにPTPに付加される免疫グロブリン定常領域のポリペプチドを含みうる。
免疫グロブリン定常領域ポリペプチドは、好ましくはPTPポリペプチドのC末
端に融合している。抗体由来のポリペプチドの様々な部分(Fcドメインを含む)
に融合した異種ポリペプチドを含む融合蛋白質の一般的な調製は、例えばAsh
kenaziら(PNAS USA 88:10535,1991)及びByr
nら(Nature 344:677,1990)によって記述されている。P
TP:Fc融合蛋白質をコードする遺伝子融合物は適切な発現ベクターに挿入さ
れる。本発明の特定実施態様では、PTP:Fc融合蛋白質は抗体分子のように
集合することができ、その際Fcポリペプチドの間で鎖間ジスルフィド結合が形
成され、ダイマーPTP融合蛋白質が生じる。
【0052】 PTPをコードする配列にフレーム内で連結されたDNA配列によってコード
される免疫グロブリンV領域ドメインを含む融合ポリペプチドによって、あらか
じめ選択された抗原に対して特異的結合親和性を持つPTP融合蛋白質も、本明
細書で提供されるようなその変種及び断片を含めて、本発明の範囲内である。免
疫グロブリンV領域融合ポリペプチドを有する融合蛋白質の構築のための一般的
戦略は、例えばEP 0318554号;U.S.5,132,405号;U.
S.5,091,513号及びU.S.5,476,786号に開示されている
【0053】 本発明の核酸はまた、望ましい親和特性を持つ他のポリペプチド、例えばグル
タチオン−S−トランスフェラーゼのような酵素に融合されたPTPポリペプチ
ドを含む融合蛋白質をコードしうる。別の例として、PTP融合蛋白質はまた、
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテイン
Aポリペプチドに融合したPTPポリペプチドを含みうる;プロテインAをコー
ドする核酸及び免疫グロブリン定常領域に対して親和性を持つ融合蛋白質を構築
する上でのそれらの使用は、一般に、例えば米国特許第5,100,788号に
開示されている。PTP融合蛋白質の構築のための他の有用な親和性ポリペプチ
ドは、例えばWO 89/03422号;U.S.5,489,528号;U.
S.5,672,691号;WO 93/24631号;U.S.5,168,
049号;U.S.5,272,254号及びその他で開示されているようなス
トレプトアビジン融合蛋白質、及びアビジン融合蛋白質(例えばEP 511,
747号参照)を含みうる。本文中及び引用する参考文献において提供されるよ
うに、基質捕捉性変異体PTPを含めて、PTPポリペプチド配列は、完全長融
合ポリペプチドであるか、その代わりにその変種又は断片でありうる融合ポリペ
プチド配列に融合されうる。
【0054】 本発明はまた、融合蛋白質を、細胞核に、小胞体(ER)の内腔に存するよう
に、古典的なER−ゴルジ分泌経路を通して細胞から分泌されるように(例えば
von Heijne,J.Membrane Biol.115:195−2
01,1990)、形質膜に組み込まれるように、膜貫通細胞表面レセプタの細
胞質ドメインを含む特異的細胞質成分と結合するように、又は当業者が精通する
様々な既知の細胞内蛋白ソーティング機序のいずれかによって特定の非細胞位置
に方向付けるように(例えばRothman,Nature 372:55−6
3,1994;Adraniら、1998 J.Biol.Chem.273:
10317、及び本明細書で引用する参考文献参照)指令するポリペプチド配列
を含むPTP融合蛋白質を考慮する。従って、これら及び関連する実施態様は、
対象とするポリペプチドをあらかじめ定められた細胞内の膜又は細胞外の位置に
ターゲティングすることを対象とした本発明の組成物及び方法に包含される。
【0055】 本発明はまた、本発明の核酸を含むベクター及び構築物、特に上記に提供され
るような本発明に従ったPTPポリペプチドをコードする任意の核酸を含む「組
換え発現構築物」、本発明のベクター及び/又は構築物で遺伝的に操作される宿
主細胞、及び組換え技術による本発明のPTPポリペプチド及び融合蛋白質、又
はその断片又は変種の産生に関する。PTP蛋白質は、適切なプロモーターの制
御下で哺乳類細胞、酵母、細菌、又は他の細胞において発現されうる。本発明の
DNA構築物から誘導されるRNAを使用してそのような蛋白質を産生するため
に、無細胞翻訳系も使用できる。原核及び真核宿主とともに使用するための適切
なクローニング及び発現ベクターは、例えばSambrookら、「分子クロー
ニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Lab
oratory Manual)」、第2版、Cold Spring Har
bor,New York(1989)によって記述されている。
【0056】 一般に、組換え発現ベクターは、複製の起点、宿主細胞の形質転換を可能にす
る選択マーカ、例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子やビール酵母菌(S.c
erevisiae)のTRP1遺伝子、及び下流の構造配列の転写を指令する
高度発現遺伝子から誘導されるプロモーターを含む。そのようなプロモーターは
、数ある中でも特に3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性
ホスファターゼ、又は熱ショック蛋白質のような解糖酵素をコードするオペロン
から誘導できる。異種構造配列を適当な段階で翻訳開始及び終結配列と共に構築
する。任意に異種配列は、所望する特性、例えば発現される組換え産物の安定化
又は簡単な精製をもたらすN末端同定ペプチドを含む融合蛋白質をコードしうる
【0057】 細菌での使用のための有用な発現構築物は、作動可能な読み枠(phase) に機能
的プロモーターと共に、所望する蛋白質を適当な翻訳開始及び終了シグナルと共
にコードする構造DNA配列を、発現ベクターに挿入することによって構築され
る。構築物は、1つ又はそれ以上の表現型選択マーカ及びベクター構築物の維持
を確保し、所望する場合には宿主内での増幅を与える複製起点を含みうる。形質
転換のための適当な原核生物宿主は、大腸菌、枯草菌(Bacillus su
btilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimuri
um)及びシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属
(Streptomyces)及びブドウ球菌属(Staphylococcu
s)の中の様々な種を含むが、その他も選択肢として使用しうる。任意の他のプ
ラスミド又はベクターも、それらが宿主において複製可能であり、生存可能であ
るかぎり使用できる。
【0058】 代表的であるが非制限的な例として、細菌での使用のための有用な発現ベクタ
ーは、選択マーカ及び周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 3
7017)の遺伝的要素を含む市販のプラスミドから誘導される細菌の複製起点
を含みうる。そのような市販のベクターは、例えば、pKK223−3(Pha
rmacia Fine Chemicals,Uppsala,スウェーデン
)及びGEM1(Promega Biotec,マジソン,ウィスコンシン州
,USA)を含む。これらのpBR322の「バックボーン」部分を適切なプロ
モーター及び発現する構造配列と組み合わせる。
【0059】 適当な宿主菌株を形質転換し、宿主菌株が適当な細胞密度に増殖したあと、選
択したプロモーターを、それが本明細書で提供されるような調節されたプロモー
ターである場合には、適当な手段(例えば温度シフト又は化学誘導)によって誘
導し、さらなる期間細胞を培養する。細胞を典型的には遠心分離によって採集し
、物理的又は化学的手段によって破壊して、生じた粗抽出物をさらなる精製のた
めに保持する。蛋白質の発現において使用する微生物細胞は、凍結−解凍サイク
ル、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含む、任意の従来の方法に
よって破壊することができる:そのような方法は当業者には周知である。
【0060】 それ故、例えば、本明細書で提供されるような本発明の核酸は、PTPポリペ
プチドを発現するための組換え発現構築物としての様々な発現ベクター構築物の
いずれか1つに包含されうる。そのようなベクター及び構築物は、染色体、非染
色体及び合成DNA配列、例えばSV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージ
DNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組
合せから誘導されるベクター、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス及び
仮性狂犬病のようなウイルスDNAを含む。しかし、他のいかなるベクターも、
それが宿主において複製可能であり、生存可能であるかぎり組換え発現構築物の
調製のために使用しうる。
【0061】 様々な手順によって適当なDNA配列をベクターに挿入しうる。一般に、当該
技術分野において既知の手法によってDNA配列を適当な制限エンドヌクレアー
ゼ部位に挿入する。クローニング、DNAの単離、増幅及び精製、DNAリガー
ゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等が関与する酵素的反応のた
めの標準的技術、及び様々な分離技術は、当業者に既知であり、一般的に使用さ
れているものである。いくつかの標準的技術が、例えばAusubelら(19
93、「分子生物学における現行プロトコール(Current Protoc
ols in Molecular Biology)」、Greene Pu
bl.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc
.Boston,MA);Sambrookら(1989、「分子クローニング
(Molecular Cloning)」、第2版、Cold Spring
Harbor Laboratory,Plainview,NY);Man
iatisら(1982、「分子クローニング(Molecular Clon
ing)」、Cold Spring Harbor Laboratory,
Plainview,NY)及びその他で記述されている。
【0062】 発現ベクター中のDNA配列を、mRNA合成を指令するために少なくとも1
つの適切な発現制御配列(例えばプロモーター又は調節プロモーター)に作動可
能に連結する。そのような発現制御配列の代表的な例は、LTR又はSV40プ
ロモーター、大腸菌lac又はtrp、ファージλPL プロモーター、及び原核
又は真核細胞又はそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが知ら
れている他のプロモーターを含む。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェ
ニコールトランスフェラーゼ)ベクター又は選択マーカを持つ他のベクターを用
いて任意の所望する遺伝子から選択することができる。2つの適切なベクターは
pKK232−8とpCM7である。特に命名されている細菌プロモーターは、
lacI、lacZ、T3、T7、gpt、λPR 、PL 及びtrpを含む。真
核生物プロモーターは、CMV即時初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後
期SV40、レトロウイルス由来のLTR及びマウスメタロチオネイン−Iを含
む。適切なベクターとプロモーターの選択は充分当該技術分野における通常技術
レベル内であり、PTPポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された
少なくとも1個のプロモーター又は調節プロモーターを含む一部の特に好ましい
組換え発現構築物の調製を本明細書で述べる。
【0063】 上述したように、一部の実施態様では、ベクターはレトロウイルスベクターの
ようなウイルスベクターでありうる。例えば、レトロウイルスプラスミドベクタ
ーを誘導しうるレトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウ
イルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ(Harvey)肉腫ウイルス、鳥類白血症ウイ
ルス、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノ
ウイルス、骨髄増殖性(Myeloproliferative)肉腫ウイルス、及び乳腺癌ウイルス
を含むが、これらに限定されない。
【0064】 ウイルスベクターは1以上のプロモーターを含む。用いてもよい適切なプロモ
ーターとしては、限定されないが、レトロウイルスLTR;SV40プロモータ
ー、およびMillerら、Biotechniques 7:980−990
(1989)に記述されているヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータ
ー、または他のいかなるプロモーター(例えば、限定されないが、ヒストン、po
l III 、β−アクチンプロモーターなどを含む、真核細胞プロモーターなどの細
胞プロモーター)が挙げられる。用いてもよい他のウイルスプロモーターとして
は、限定されないが、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)
プロモーター、B19パルボウイルスプロモーターが挙げられる。適切なプロモ
ーターの選択は、本明細書に含まれる教示から当業者とって明らかであり、前述
の調節プロモーターまたは上記プロモーターのいずれかから行ないうる。
【0065】 レトロウイルスプラスミドベクターは、パッケージング細胞株に形質導入して
生産細胞株を形成するために使用される。トランスフェクションしてもよいパッ
ケージング細胞の例としては、限定されないが、その全体が参照により本明細書
に組み込まれるMillerら、Human Gene Therapy,1:
5−14に記載されるような、PE501、PA317、Ψ−2、Ψ−AM、P
A−12、T19−14X、VT−19−17−H2、ΨCRE、ΨCRIP、
GP+E−86、GP+envAm12、およびDAN細胞系統が挙げられる。
前記ベクターは、当該技術分野において公知のいかなる手段によっても、パッケ
ージング細胞に形質導入してもよい。かかる手段としては、限定されないが、エ
レクトロポレーション、リポソームの使用、およびリン酸カルシウム沈殿法が挙
げられる。1つの選択肢として、レトロウイルスプラスミドベクターをリポソー
ム内に被包するか、または脂質に結合させて、その後、宿主に投与してもよい。
【0066】 生産細胞株は、PTPポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配
列を含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。ついで、かかるレトロ
ウイルスベクター粒子を用いて、in vitroまたはin vivoで真核
細胞に形質導入してもよい。形質導入した真核細胞は、PTPポリペプチドまた
は融合タンパク質をコードする核酸を発現する。形質導入してもよい真核細胞は
、限定されないが、胚性幹細胞、胚性腫瘍細胞、並びに造血幹細胞、肝細胞、線
維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、気管支上皮細胞および様々な他の培養適
合性細胞株が挙げられる。
【0067】 ウイルスベクターを使用して組換PTP発現構築物を調製する本発明の態様の
別の例として、1つの好ましい態様において、PTPポリペプチドまたは融合タ
ンパク質の発現を仕向ける組換ウイルス構築物により形質導入された宿主細胞は
、ウイルス出芽の際にウイルス粒子によって取り込まれる宿主細胞膜の部分から
得られる発現PTPポリペプチドまたは融合タンパク質を含むウイルス粒子を産
生することができるであろう。別の好ましい態様において、PTPをコードする
核酸配列をバキュロウイルスシャトルベクターにクローニングし、次にそれをバ
キュロウイルスと組換て、例えば、Baculovirus Expressi
on Protocols,Methods in Molecular Bi
ology,Vol.39,Christopher D.Richardso
n編集、Human Press,Totowa,NJ,1995;Piwni
ca−Worms,「バキュロウイルスベクターを使用した、昆虫細胞における
タンパク質の発現(Expression of Proteins in I
nsect Cells Using Baculoviral Vector
s)」、第16章§II、「分子生物学におけるショートプロトコール(Sho
rt Protocols in Molecular Biology)」第
2版より、Ausubelら編集、John Wiley & Sons,Ne
w York,New York,1992,p.16−32から16−48に
記載のようにSf9宿主細胞を感染させるために使用する組換バキュロウイルス
発現構築物を生成する。
【0068】 もう1つの局面では、本発明は、前記組換PTP発現構築物を含む宿主細胞に
関する。宿主細胞は、例えば、クローニングベクター、シャトルベクターまたは
発現構築物でありうる、本発明のベクターおよび/または発現構築物で遺伝子工
学的に作製(形質導入、形質転換またはトランスフェクト)される。ベクターま
たは構築物は、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態であって
もよい。遺伝子工学的に作製された宿主細胞は、プロモーターを活性化すること
、形質転換株を選択することまたはPTPポリペプチドもしくはPTP融合タン
パク質をコードする遺伝子などの特定の遺伝子を増幅することに適するように改
変された慣用の栄養培地で培養することができる。温度、pH等の発現のために
選択された特定の宿主細胞の培養条件は、当業者には容易に明らかであろう。
【0069】 宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞、または酵母細胞などの下等真
核細胞であり得、あるいは宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞でありうる。本
発明に従った適切な宿主細胞の代表例としては、限定される必要はないが、大腸
菌(E.coli)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ネズ
ミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞
;酵母などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞、
Spodoptera Sf9などの昆虫細胞;CHO細胞、COS細胞または
293細胞などの動物細胞;アデノウイルス、植物細胞、またはin vitr
oでの増殖に既に適合されているかまたは新たにそのように確立されたいかなる
適切な細胞をも挙げられる。適切な宿主の選択は、本明細書における教示から当
業者の技術範囲内であるとみなされるであろう。
【0070】 種々の哺乳動物細胞培養系も、組換タンパク質を発現するために使用されうる
。したがって、本発明は、野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
ンの不変アスパラギン酸残基が、酵素のKmの有意の変化をもたらさないが、K
catを1分当り1未満への低下をもたらすアミノ酸と置換され、かつ少なくと
も1つの野生型プロテインチロシンホスファターゼのチロシン残基が、リン酸化
され得ないアミノ酸で置換されているものである基質捕捉性変異体プロテインチ
ロシンホスファターゼをコードする核酸配列に作動可能に連結された少なくとも
1つのプロモーターを含有した組換発現構築物を含有した宿主細胞を培養するこ
とによる、組換基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼの製造方法
を一部となす。ある態様において、前記プロモーターは、本明細書において与え
られるような調節プロモーター、例えば、テトラサイクリン抑制性プロモーター
であってもよい。ある態様において、組換発現構築物は、本明細書で与えられる
ような組換ウイルス発現構築物である。哺乳動物発現系の例としては、Gluz
man,Cell 23:175(1981)により述べられているサル腎線維
芽細胞のCOS−7株、およびコンパチブルベクターを発現しうる他の細胞株、
例えば、C127細胞株、3T3細胞株、CHO細胞株、HeLa細胞株および
BHK細胞系統などが挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製開始起点、適
切なプロモーターとエンハンサーを含有しており、また、例えば、PTP発現構
築物の調製に関して、本明細書で記載されるいかなる必要なリボソーム結合部位
、ポリアデニル化部位、スプライシングドナー、スプライシングアクセプター部
位、転写終止配列および5’隣接非転写配列をも含有する。SV40スプライシ
ングに由来するDNA配列とポリアデニル化部位とは、必要な非転写遺伝子エレ
メントを提供するために用いられるであろう。宿主細胞への構築物の導入は、限
定されないが、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デ
キストラン媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーションなどを含
む当業者が精通する種々の方法によって実施されうる(Davisら、1986
、Basic Methods in Molecular Biology)
【0071】 PTP(基質捕捉性変異体PTPなど)をコードする核酸配列もしくはそのバ
リアントまたは断片に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイ
ムを含む、アンチセンス作用物質(antisense agents)として使用するための核酸
分子の同定、並びに遺伝子治療における標的送達のためのPTP遺伝子(基質捕
捉性変異体PTPなど)をコードするDNAオリゴヌクレオチドの同定は、当該
技術において周知の方法を含む。例えば、かかるオリゴヌクレオチドの望ましい
特性、長さおよび他の特徴は周知である。ある好ましい態様では、かかるアンチ
センスオリゴヌクレオチドは、本明細書で提供されるような基質捕捉性変異体P
TPをコードする単離された核酸分子に相補的な少なくとも15個の連続するヌ
クレオチドを含有する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、ホス
ホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、スルフェート、ケチル、ホス
ホロジチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、および他のかかる結
合(例えば、Agrwalら、Tetrehedron Lett.28:35
39−3542(1987);Millerら、J.Am.Chem.Soc.
93:6657−6665(1971);Stecら、Tetrehedron
Lett.26:2191−2194(1985);Moodyら、Nucl
.Acids Res.12:4769−4782(1989);Uznans
kiら、Nucl.Acids Res.(1989);Letsingerら
、Tetrahedron 40:137−143(1984);Eckste
in,Annu.Rev.Biochem.54:367−402(1985)
;Eckstein,Trends Biol.Sci.14:97−100
(1989);Stein、「オリゴデオキシヌクレオチド、遺伝子発現のアン
チセンス阻害因子(Oligodeoxynucleotides,Antis
ense Inhibitors of Gene Expression)」
より、Cohen編集、Macmillan Press,London,p.
97−117(1989);Jagerら、Biochemistry 27:
7237−7246(1988)参照)などの結合を使用することによって内因
性のヌクレオ分解(nucleolytic )酵素による分解に耐えるように設計される。
【0072】 アンチセンスヌクレオチドは、mRNAまたはDNAなどの核酸に配列特異的
な様式で結合するオリゴヌクレオチドである。相補的配列を有するmRNAに結
合した場合、アンチセンスは、mRNAの翻訳を妨げる(例えば、Altman
ら、米国特許第5,168,053号明細書;Inouye、米国特許第5,1
90,931号明細書;Burch、米国特許第5,135,917号明細書;
Smith、米国特許第5,087,617号明細書、およびダンベルアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを記載するCluselら、(1993)Nucl.A
cids Res.21:3405−3411などを参照のこと)。三重鎖分子
は、二重鎖DNAに結合して共直線(collinear) 三重鎖分子を形成し、それによ
り、転写を妨げる1 つのDNA鎖(single DNA strands)を指す(例えば、二重鎖
DNA上の標的部位に結合する合成オリゴヌクレオチドを作製するための方法を
記載したHoganら、米国特許第5,176,996号明細書などを参照のこ
と)。
【0073】 本発明のこの態様によれば、特に有用なアンチセンスヌクレオチドおよび三重
鎖分子は、PTPポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の阻害が行われるよ
うに、PTPポリペプチド(基質捕捉性変異体PTPなど)をコードするDNA
またはmRNAのセンス鎖に相補的である分子またはセンス鎖に結合する分子で
ある。
【0074】 リボザイムは、mRNAなどのRNA基質を特異的に切断して、細胞遺伝子発
現の特異的阻害または干渉をもたらすRNA分子である。RNA鎖の切断および
/またはRNA鎖のライゲーションに関与する少なくとも5つの既知のクラスの
リボザイムが存在する。リボザイムはどのようなRNA転写産物にも標的するこ
とができ、かかる転写産物を触媒的に切断する(例えば、米国特許第5,272
,262号明細書;米国特許第5,144,019号明細書;およびCechら
への米国特許第5,168,053号明細書、米国特許第5,180,818号
明細書、米国特許第5,116,742号明細書および米国特許第5,093,
246号明細書などを参照のこと)。本発明のある態様によれば、このようない
かなるPTP(基質捕捉性変異体PTPなど)mRNA特異的リボザイム、また
はかかるリボザイムをコードする核酸をも宿主細胞に送達し、PTP遺伝子発現
の阻害をもたらすことができるであろう。したがって、リボザイム等は、核に導
入されたときリボザイムが直接転写されるように、真核ウイルスプロモーターな
どの真核生物プロモーターに連結されたリボザイムをコードするDNAによって
宿主細胞に送達されうる。
【0075】 発現された組換PTPポリペプチドまたは融合タンパク質(基質捕捉性変異体
PTPなどを含む)は、インタクト宿主細胞において;細胞膜、細胞内小胞また
は他の細胞小器官などのインタクト細胞小器官において;または細胞ホモジネー
トまたは溶解物、ミクロソーム、単層膜および多重膜小胞または他の調製物を含
むがこれらに限定されない破砕された細胞調製物において、有用であろう。一方
、発現された組換PTPポリペプチドまたは融合タンパク質は、硫酸アンモニウ
ム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグ
ラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラ
フィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマト
グラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーなどの方法によって、組換細胞培
養物から回収し、精製することができる。成熟タンパク質の立体配置を完成する
際に、必要に応じてタンパク質のリフォールディングステップを使用することが
できる。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が最終精製段階のた
めに使用されうる。
【0076】 本発明の別の局面に注目すると、PTPの基質であるチロシンリン酸化タンパ
ク質[ チロシンがリン酸化されたタンパク質(tyrosine phosphorylated protei
n )] の同定方法が提供される。本明細書中で用いられる「試料」は、少なくと
も1つのチロシンリン酸化タンパク質を含有する生物学的試料をいい、被験体ま
たは生物学的供給源に由来する血液試料、生検標本、組織外植片、器官培養物ま
たは任意の他の組織もしくは細胞調製物を得ることによって提供され得る。さら
に、試料は、形態学的完全性または物理状態が、例えば、被験体または生物学的
供給源に由来する試料を処理するための切離、解離、可溶化、分画化、ホモジネ
ーション、生化学的もしくは化学的な抽出、粉砕化、凍結乾燥、超音波処理また
は任意の他の手段によって破砕されている組織調製物または細胞調製物を称する
であろう。いくつかの好ましい態様において、試料は、細胞溶解物であり、ある
特に好ましい態様において、溶解物は、不溶性成分が標準的な細胞生物学技術に
従って除かれている界面活性剤可溶化細胞溶解物である。被験体または生物学的
供給源は、ヒトまたは非ヒト動物、初代細胞培養物または限定されないが、染色
体に組み込まれた核酸配列またはエピソーム組換核酸配列を含有し得る遺伝子工
学的に作製された細胞株などの培養適合細胞株(これには、)、不死化細胞株ま
たは不死化可能な細胞株、体細胞ハイブリッド細胞株、分化した細胞株または分
化し得る細胞株、形質転換された細胞株などであってもよい。必要に応じて、特
定の状況では、チロシンリン酸化タンパク質に関して試料を濃縮するために、生
物学的試料内の細胞を、本明細書中に記載されているように過バナジウム酸塩で
処理することは望ましいことであろう。また、他の手段も試料中に存在するチロ
シンリン酸化タンパク質の割合を増大させるために用いることができ、プロテイ
ンチロシンキナーゼをコードする少なくとも1つの遺伝子で形質転換されている
細胞株である被験体または生物学的供給源の使用が含まれる。加えてまたは別に
、タンパク質のチロシンリン酸化は、当該技術分野で周知の様々な方法および当
該技術分野においてプロテインチロシンキナーゼ活性を刺激することが公知の組
成物の任意の1以上を使用して被験体または生物学的供給源の細胞において刺激
されてもよい。これらの刺激としては、限定されないが、細胞へのサイトカイン
、増殖因子、ホルモン、ペプチド、小分子媒介因子またはPTK媒介されたタン
パク質チロシンリン酸化を誘導する他の薬剤の曝露が挙げられるであろう。かか
る薬剤としては、例えば、インターロイキン、インターフェロン、ヒト成長ホル
モン、インスリンおよび繊維芽細胞増殖因子(FGF)、ならびに当業者が熟知
している他の薬剤が挙げられる。
【0077】 本発明によれば、少なくとも1つのチロシンリン酸化タンパク質を含有した試
料は、チロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体PTPとの間の複合体の
形成を可能にするに十分な条件かつ時間で、本明細書中に与えられる少なくとも
1つの基質捕捉性変異体PTPと混合される。かかる複合体の形成に好適な条件
は、複合体の存在を検出するための溶液条件および方法を含む、当該技術分野で
公知の本明細書中に与えられた教示に基づいて、容易に決定することができる。
次に、チロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体PTPとを含有した複合
体の有無が決定され、ここで、複合体の存在は、チロシンリン酸化タンパク質が
、それと複合体を形成するPTPの基質であることを示す。
【0078】 チロシンリン酸化タンパク質基質との複合体において会合している基質捕捉性
変異体PTPは、上記のように、PTPとPTP基質との分子間相互作用を明ら
かにするために当該技術分野で知られている様々な技術のいずれかによって、例
えば、共精製;共沈殿;共免疫沈殿;放射測定アッセイまたは蛍光測定アッセイ
;ウエスタン免疫ブロット分析;固相リガンド−対応リガンド吸着技術、アフィ
ニティークロマトグラフィーおよび表面親和性プラズモン共鳴などのアフィニテ
ィー技術などのアフィニティー捕捉などによって同定され得る(例えば、米国特
許第5,352,660号明細書を参照のこと)。PTP/基質複合体の存在の
決定は、PTPまたはチロシンリン酸化タンパク質基質に特異的に結合するモノ
クローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体および単鎖抗体などの種々の
抗体を用いてもよい。標識PTPおよび/または標識チロシンリン酸化基質もま
た、複合体の存在を検出するために使用することができる。PTPまたはリン酸
化タンパク質は、好適なレポーター分子または成分(moiety)、例えば、任意の種
々の酵素、蛍光物質、発光性物質、放射性物質などを共有結合的または非共有結
合的に結合させることによって標識されうる。好適な酵素の例としては、限定さ
れないが、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリホスファ
ターゼ、β−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる
。好適な蛍光物質の例としては、限定されないが、例えば、ウンベリフェロン、
フルオレセイン、フルオレセインイソチアシナート、ローダミン、ジクロロトリ
アジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリトリンなどが挙
げられる。適切な発光性物質としては、ルミノールが挙げられ、好適な放射性物
質としては、放射性のリン[32P]、ヨウ素[125 Iまたは131 I]あるいはト
リチウム[3 H]が挙げられる。
【0079】 かかる方法を使用して、PTP1Bとp210bcr:ablとの複合体、P
TP−PESTとp130cas との複合体、TC−PTPとShcとの複合体(
例えば、Tiganis他、1998、Mol.Cell.Biol.18:1
622〜1634)およびPTPH1とpp97/VCPとの複合体のそれぞれ
を、下記に記載されているようなウエスタン免疫ブロット分析によって容易に同
定することができる。これらの会合は、例えば、いくつかの細胞株から得られた
溶解物およびトランスフェクト細胞において観察され、p210bcr:abl
、p130cas 、ShcおよびVCPが、それぞれ、PTP1B、PTP−PE
ST、TC−PTPおよびPTPH1に対する主要な生理学的に関連する基質を
表すことを示すであろう。PTP1B、PTP−PESTおよびPTPH1に対
して特異的なチロシンリン酸化基質を同定するために、本明細書中に例示されて
いるように使用され得る本発明の組成物および方法は、限定されないが、一般に
、TC−PTP、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、SHP2、P
TP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、CD45、LARおよびPX
PX10を含むPTPファミリーの任意のメンバーに適用することができる。
【0080】 本発明のこの局面のある態様において、試料は、PTPの基質であるチロシン
リン酸化タンパク質を本来発現する細胞を含有してもよく、一方、いくつかの他
の態様において、該試料は、基質タンパク質をコードする1以上の核酸分子でト
ランスフェクトされている細胞を含有してもよい。例えば、試料は、基質タンパ
ク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を含むcDNAライブラリーなどの
核酸ライブラリーでトランスフェクトされている細胞または細胞集団を含有して
もよい。いかなるチロシンリン酸化タンパク質も、本発明における潜在的な基質
として好適である。チロシンリン酸化タンパク質は、当該技術分野ではよく知ら
れている。適切な基質の具体的な例としては、限定されないが、p130cas
pp97/VCP、EGF受容体、p210bcr :abl、MAPキナーゼ、
Shc、インスリン受容体が挙げられる。特に注目されるものは、哺乳動物の疾
患または異常に関係しているチロシンリン酸化タンパク質である。
【0081】 本発明によれば、基質としては、全長のチロシンリン酸化タンパク質ならびに
チロシン残基がリン酸化され得るポリペプチドおよびそのフラグメント(例えば
、一部分)、誘導体またはアナログが挙げられるであろう。かかるフラグメント
、誘導体およびアナログとしては、例えば、PTPとの複合体を形成することに
よって、本明細書中に与えられるようなPTPと相互作用する生物学的機能を少
なくとも保持する任意のPTP基質ポリペプチドが挙げられる。融合タンパク質
である基質などを含むPTP基質ポリペプチドのフラグメント、誘導体またはア
ナログは、(i)1以上のアミノ酸残基が、保存アミノ酸残基または非保存アミ
ノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換され、かつかかる置換アミノ
酸残基は、遺伝コードによりコードされるアミノ酸残基であってもよく、または
かかるアミノ酸残基でなくてもよいものであるフラグメント、誘導体またはアナ
ログ、あるいは(ii)1以上のアミノ酸残基が置換基を含むものであるフラグ
メント、誘導体またはアナログ、あるいは(iii)基質ポリペプチドが、ポリ
ペプチドの半減期を増大させる化合物(例えば、ポリエチレングリコールなど)
またはレポーター分子などの検出可能な部分(moiety)などの別の分子と融合して
いるものであるフラグメント、誘導体またはアナログ、あるいは(iv)追加の
アミノ酸が、基質ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製のために用いら
れるアミノ酸などを含む基質ポリペプチドに融合しているフラグメント、誘導体
またはアナログであってもよい。かかるフラグメント、誘導体およびアナログは
、当業者の範囲内であると考えられる。
【0082】 また、本発明は、(試料と混合される)基質捕捉性変異体PTPが、細胞によ
り発現される変異体PTPであるいくつかの態様が考えられ、細胞が、変異体P
TPをコードする1以上の核酸分子によってトランスフェクトされている態様が
含まれる。したがって、PTPの基質であるチロシンリン酸化タンパク質の同定
方法は、いくつかの態様において、チロシンリン酸化タンパク質を含有する試料
と変異体PTPとを混合することを含み、該試料は、チロシンリン酸化タンパク
質および変異体PTPのいずれかまたは両方を発現する細胞を含有する。任意に
、前記細胞は、チロシンリン酸化タンパク質および変異体PTPのいずれかまた
は両方をコードする核酸でトランスフェクトされていてもよい。
【0083】 別の局面において、本発明は、PTPと、PTPの基質であるチロシンリン酸
化タンパク質との間の相互作用を変化させる薬剤を、かかる相互作用を変化(す
なわち、増大または低下)させる候補薬剤の能力を検出するスクリーニングアッ
セイの使用によって同定する方法を提供する。PTPとその基質との間の相互作
用は、例えば、触媒的な基質脱リン酸化を検出することにより、酵素的に決定さ
れるであろう。他方、PTP(基質捕捉性変異体PTPを含む)とその基質との
間の相互作用は、結合相互作用として決定されるであろうし、好ましい態様にお
いて、かかる相互作用は、本明細書中に記載されている基準により、PTP−基
質結合により形成される複合体を検出することとして明らかにされる。これらの
方法により同定された薬剤は、PTP活性のアゴニスト(例えば、野生型PTP
の活性を増強または増大させる薬剤)またはアンタゴニスト(例えば、野生型P
TPの活性を阻害または低下させる薬剤)であってもよい。薬剤は、以下に記載
されているように、合成小分子を含む天然に存在化合物または非天然化合物のな
かから同定されるであろう。
【0084】 スクリーニングアッセイがPTPの触媒活性に対して行われるいくつかの態様
において、PTPの基質であるチロシンリン酸化タンパク質は、前記のように同
定され得、かかる方法は、本明細書中に開示されているような新規な基質捕捉性
変異体PTPの使用を特徴とする。したがって、PTPとチロシンリン酸化基質
とを、候補薬剤の非存在下および存在下で混合され、ここで、該基質は、基質捕
捉性変異体PTPを用いて、前記のように、まず同定されている。PTPおよび
基質は、検出可能な基質脱リン酸化が生じることを可能にし得る条件のもとで混
合される。
【0085】 いかなる好適な方法も、リンタンパク質の脱リン酸化を検出するために使用す
ることができる。かかる方法としては、限定されないが、当該技術分野ではよく
知られており、例えば、放射測定、蛍光測定、デンシトメトリー、分光測光、ク
ロマトグラフィー、電気泳動、比色測定または生物分析によるアッセイの1以上
によって基質の触媒作用を検出することなどが挙げられる。薬剤の非存在下にお
ける基質の脱リン酸化のレベルを、薬剤の存在下における基質の脱リン酸化のレ
ベルと比較し、その結果、基質の脱リン酸化レベルにおける差異(例えば、統計
学的に有意な増大または低下)が、プロテインチロシンホスファターゼと基質と
の間の相互作用を変化させる薬剤が示される。
【0086】 例えば、野生型PTPが用いられる酵素活性アッセイを候補薬剤の非存在下お
よび存在下で行なうことができる。当該技術分野で知られている酵素活性アッセ
イとしては、例えば、Flintら(1993、EMBO J.12:1937
- 1946)に記載されるような、チロシンがリン酸化された32P標識基質を用
いるPTP活性アッセイなどが挙げられる。候補薬剤の存在下におけるPTP酵
素活性の低下は、その薬剤がPTPとその基質との間の相互作用を阻害すること
を示す。逆に、候補薬剤の存在下におけるPTP酵素活性の増大は、その薬剤が
PTPとその基質との間の相互作用を増強することを示す。
【0087】 スクリーニングアッセイが、基質捕捉性変異体PTP−基質の結合相互作用を
変化させ得る薬剤を同定することに対して行われるいくつかの他の態様において
、(本明細書中に記載されるような)基質捕捉性変異体PTPと、チロシンリン
酸化基質(tyrosine phosphorylated substrate) とが、チロシンリン酸タンパク
質と基質捕捉性変異体PTPとの間の複合体の形成を可能にし、それによって結
合体(combination) を生成するのに十分な条件、かつ時間で混合される。ついで
、結合体(combination) におけるチロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異
体のタンパク質チロシンホスファターゼとを含有する複合体の形成が(本明細書
中にも与えられるように)決定され、ここで、薬剤の非存在下および存在下にお
ける複合体形成レベルの差(例えば、統計学的に有意な差)により、その薬剤が
タンパク質チロシンホスファターゼと基質との相互作用を変化(すなわち、増大
または低下)させることを示す。他方、競合的結合アッセイを、基質捕捉性変異
体PTPを候補薬剤の非存在下および存在下で用いて行うことができる。当該技
術分野で知られている競合的結合アッセイとしては、例えば、本発明のこれらの
態様の使用に適した方法を記載する米国特許第5,352,660号明細書など
が挙げられる。試験対象の薬剤の存在下におけるPTP−基質結合の程度におけ
る低下は、その薬剤がPTPとその基質との間の相互作用を阻害することを示す
。逆に、試験対象の薬剤の存在下におけるPTP−基質結合の程度における増大
は、その薬剤がPTPとその基質との間の相互作用を増強することを示す。
【0088】 PTPとそのチロシンリン酸化タンパク質基質との間の相互作用を変化させる
薬剤をスクリーニングする本発明の方法における使用のための候補薬剤は、化合
物、組成物または分子の「ライブラリー」またはコレクションとして提供される
であろう。1以上のPTPと相互作用し得る候補薬剤(本明細書中に与えられる
ような基質捕捉性変異体PTPと相互作用する薬剤を含む)としては、PTPに
結合する、Songyangら(1995、Nature、375:536〜5
39;1993、Cell、72:767〜778)に記載されているようなホ
スホチロシルペプチドライブラリーのメンバーなどが挙げられるであろう。かか
るペプチドライブラリーから同定されたペプチドは、ついで、これらのペプチド
を含有するチロシンリン酸化ペプチドが、本質的に存在するかどうかを明らかに
するために評価され得る。他方、スクリーニングされる候補分子のライブラリー
には、「小分子」として当該技術分野では公知の化合物で、分子量が105 ダル
トン未満(好ましくは104 ダルトン未満、さらにより好ましくは103 ダルト
ン未満)である化合物などが典型的に挙げられるであろう。例えば、試験化合物
のライブラリーのメンバーは、それぞれが、少なくとも1つの基質捕捉性変異体
PTPと、本明細書中に与えられるようなPTPの基質である少なくとも1つの
チロシンリン酸化タンパク質とを含む多数の試料に与えられ(administered)、つ
いで、基質への変異体PTPの結合を増強または阻害するそれらの能力について
アッセイされ得る。PTP−基質相互作用(例えば、結合および/または基質ホ
スホチロシン脱リン酸化)を変化させ得るとしてそのように同定された化合物は
、該化合物が、PTP活性に関連する疾患の処置および/または検出を可能にす
るので、治療目的および/または診断目的に有用である。また、かかる化合物は
、PTPに関連する分子シグナル伝達機構に対する研究およびより大きな特異性
を示す将来の化合物の発見および開発における精密化に対する研究において有用
である。
【0089】 さらに、候補化合物は、多数の反応容器において行なわれた多数のあらかじめ
決められた化学反応に従って調製された合成薬剤を含むことが好ましいコンビナ
トリアルライブラリーのメンバーとして提供されるであろう。例えば、種々の出
発化合物を、所定の成分が反応条件の多数の順列および/または組合せを追跡で
きるように経ることを可能にする固相合成、記録されたランダムミックス方法論
および記録された反応分割技術の1以上を用いて調製されるであろう。得られる
生成物は、ペプチドの合成コンビナトリアルライブラリー(例えば、PCT/U
S91/08694、PCT/US91/04666を参照のこと、これらはこ
れによりその全体が参照として組み込まれる)、または本明細書中に提供される
ような小分子を含んでもよい他の組成物(例えば、PCT/US94/0854
2、EP0774464、米国特許第5,798,035号明細書、米国特許第
5,789,172号明細書、米国特許第5,751,629号明細書を参照の
こと、これらはこれによりその全体が参照として組み込まれる)などのスクリー
ニングされ、その後、選抜および合成の手順が繰り返され得るライブラリーを含
有する。当業者は、かかるライブラリーの多様な取合わせは、確立された手順を
用いて調製され、そして本発明の開示に従って基質捕捉性変異体PTPを使用し
て試験され得ることを理解している。
【0090】 また、本発明は、(i)野生型PTP触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残
基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満(1min -1 未満)までのKcatの減少をもたらすアミノ酸(例えば、アラニン残基)と
置換され、かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得
ないアミノ酸と置換されるものである、基質捕捉性変異体PTPを被験体に投与
する工程を含み、それにより、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファタ
ーゼとチロシンリン酸化タンパク質との間の相互作用が、チロシンリン酸化タン
パク質の活性を低減する、チロシンリン酸化タンパク質の活性を低減させる方法
に関する。いくつかの好ましい態様において、チロシンリン酸化タンパク質は、
VCP、p130cas 、EGF受容体、p210 bcr:abl、MAPキナ
ーゼ、Shcまたはインスリン受容体である。いくつかの他の好ましい態様にお
いて、チロシンリン酸化タンパク質は、PTP1B、PTP−PEST、PTP
γ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX10、SHP2
、PTP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、TC−PTP、CD45
、LARまたはPTPH1である。
【0091】 理論によりとらわれることを望まないが、かかる変異体PTPは、対応する野
生型PTPの活性を、野生型PTPとチロシンリン酸化タンパク質基質との複合
体を形成し、それにより、野生型酵素による触媒的脱リン酸化に利用できない基
質を与えることによって低減させる。したがって、基質捕捉性変異体PTPは、
脱リン酸化することなく(または非常に低下した速度で脱リン酸化を触媒する)
リンタンパク質基質に結合し、それにより、脱リン酸化されたタンパク質基質の
活性を妨害し、その下流の影響を低減させる。本明細書中で用いられるように、
「低減」は、リン酸化タンパク質基質の1以上の活性または機能の阻害または完
全な無効化の両方が含まれる。
【0092】 チロシンリン酸化タンパク質の活性の低減方法の1つの局面において、PTP
−PESTの基質であるp130cas のリン酸化に関連する少なくとも1つのガ
ン遺伝子の悪性転換効果を低減する方法が提供される。一般的には、前記方法は
、野生型PTPの触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残基がアラニン残基と置
換され、かつ少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ
酸と置換されたものである基質捕捉性変異体PTP−PESTを被験体に投与す
る工程を含む。野生型PTP−PESTは、基質p130cas に結合して、脱リ
ン酸化し、それにより、この基質の下流の生物学的作用を負に調節するのに対し
て、本発明の基質捕捉性PTP−PEST変異体は、p130cas に結合するが
、p130cas を脱リン酸化することができない(または非常に低速度で脱リン
酸化する)。前記に開示された限定されない理論により、基質は、ついで、基質
捕捉性PTP−PESTとの複合体の中に隔離され、その下流の作用を発揮する
ことができない。本方法のいくつかの態様において、ガン遺伝子は、v−crk
、v−srcまたはc−Ha−rasのいずれかであってもよい。
【0093】 同様に、本発明は、上記に規定されるような基質捕捉性変異体PTP−PES
Tを哺乳動物に投与する工程を含む、p130cas に関連するシグナル伝達複合
体(signaling complexes associated with p130 cas ) 、特に、分裂促進経路を
誘導するこれらのシグナル伝達複合体)の形成を低減する方法に関する。PTP
は、p130cas に結合および/または該p130cas を脱リン酸化し、それに
より、p130cas の下流の作用を負に調節し、p130cas に関連するシグナ
ル変換複合体(signaling complexes associated with p130 cas ) の形成を低減
する。別の例として、いくつかの態様において、本発明は、PTPH1の基質で
あるpp97/VCPによる細胞周期の調節に関し、ここで、本明細書中に規定
されるような基質捕捉性変異体PTPH1(すなわち、触媒活性が弱められ、か
つ野生型チロシンが置換されたものである二重変異体)は、PTPH11とVC
Pとの間の相互作用を変化しうる。
【0094】 本明細書中に規定されるように、本発明の基質捕捉性変異体PTPs は、PT
P調節されるシグナル伝達を含む生物学的な調節が、例えば、対応する野生型P
TPの代わりに、あるいは対応する野生型PTPに加えて関与する事実上いかな
る状況においても有用であろう。本発明のかかる有用性の長所は、例えば、野生
型PTPが投与および/または過剰発現したときに広く認められる有害な細胞傷
害性作用を誘導することなく、野生型PTPにより媒介される脱リン酸化の後に
続くチロシンリン酸化基質の生物学的なシグナル伝達活性を弱めるために、基質
捕捉性性変異体PTPがその対応する野生型酵素の機能を模倣する能力にある。
したがって、本発明は、野生型PTPの投与または過剰発現に関連する細胞傷害
性効果を低減する方法にも関する。例えば、MKP−1のCS変異体は、潜在的
に有害な副作用を誘導することなく、野生型MKP−1と同じ機能的作用を有す
ることが示されている。したがって、野生型PTPの触媒作用ドメインの不変の
アスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり
1未満(1min-1未満)までのKcatの変化をもたらすアミノ酸(例えば、
アラニン残基)と置換され、かつ少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸
化され得ないアミノ酸と置換されるものである本明細書中に記載されたPTPは
、対応物(counterpart) の野生型酵素の代わりに、かかる対応物(counterpart)
の野生型酵素が変異体PTPと同じ基質と特異的に相互作用し得る多くの状況で
使用することができる。
【0095】 また、本明細書中に記載の基質捕捉性変異体PTPは、そのチロシンリン酸化
基質に結合する能力を保持する基質捕捉性変異体PTP(またはその機能的部分
)をコードする核酸、例えば、上記に記載されているような組換発現構築物を被
験体に導入し、そして発現する遺伝子治療法などによって、チロシンリン酸化タ
ンパク質の活性を変える(すなわち、増大または低下)ために治療的に使用して
もよい。前記変異体PTPは、部分的または全体的に、被験体において正常に産
生される対応する宿主PTP酵素の代わりになるか、あるいは基質に結合するこ
とに関して宿主のPTPと競合してもよい。例えば、特定のチロシンリン酸化タ
ンパク質基質が、特定の疾患または異常に関係するであろう場合、疑わしい基質
を脱リン酸化し得る少なくとも1つのPTPを同定できるであろう。対応する基
質捕捉性変異体PTPは、本明細書中に記載の組成物と方法とを使用して、直接
的に、あるいは遺伝子治療によって投与されうる。かかる変異体PTPは、チロ
シンリン酸化基質を隠蔽し、それにより、疾患プロセスにおける基質の役割を阻
害または低下させることができるであろう。好ましい態様において、本開示の基
質捕捉性変異体PTPは、野生型酵素の過剰発現に関連する細胞傷害性効果を低
減させるために、対応する野生型酵素の代わりに投与される。遺伝子治療の手法
が、当該技術分野で公知であり(例えば、米国特許第5,399,346号明細
書を参照のこと)、本発明の基質捕捉性変異体PTPを発現させるために知られ
ている公知の方法によって改変することができる。
【0096】 本発明の方法は、ホスファターゼPTPH1、PTP1BおよびPTP−PE
STに関して本明細書中に具体的に例示されている;しかしながら、本発明は、
これらの特定のPTPに限定されないが、PTPファミリーのすべてのメンバー
に対して適用できることが理解される。PTPH1、PTP1BおよびPTP−
PESTの潜在的な基質を同定するために、触媒作用が弱められているが、基質
結合能を保持している変異体(すなわち、変化または基質捕捉性)形態のPTP
H1、PTP1BおよびPTP−PESTが、本明細書中に記載のように作製さ
れる。
【0097】 ある態様では、本発明は、部分的に、野生型PTP1Bの181位のアスパル
ギン酸残基がアラニンで置換され、かつさらに、PTPチロシン残基が任意にリ
ン酸化され得ない残基により置換される可能性があるPTP1B(D181A)
に関する。その他のある態様では、本発明は、ホスファターゼPTP−PEST
(D199A)に関し、またその他のある態様では、本発明は、どちらのケース
でもリン酸化され得ない残基により任意に置換されるPTPチロシン残基をさら
に有するPTP−PEST(C231S)に関する。特に好適な態様では、本発
明は、PTPH1(Y676F/D811A)に関する。
【0098】 上記のように、ある態様では、本発明は、基質捕捉性変異体PTP−PEST
に関する。PTP−PESTは、哺乳動物の組織のいたるところで発現しており
(Yiら、1991, Blood 78: 2222-2228 )、人工のチロシンリン酸化基質を使用し
てinvitroにて測定すると高い特異的活性を示す(GartonとTonks, 1994,
EMBO J. 13:3763-3771 )、86kDa細胞質ゾルPTPである(Charest ら、
1995, Biochem. J. 308:425-432; den Hertog ら、1992, Biochem. Biophys. Re
s. Commun. 184: 1241-1249; Takekawa ら、1992, Biochem. Biophys. Res. Com
mun. 189: 1223-1230: Yang ら、1993, J. Biol. Chem. 268:6622-6628; Yangら
、1992, J. Biol. Chem. 268: 17650 )。PTP−PESTは、in vitroおよび
in vivo にてSer39のリン酸化による制御を必要とする。この改変物は、プ
ロテインキナーゼC(PKC)とプロテインキナーゼA(PKA)との両方によ
り触媒され、このPTPにより触媒される脱リン酸反応におけるKmの増加によ
りPTP−PEST酵素活性の減少をもたらす(GartonとTonks 、1994, EMBO J
. 13:3763-3771)。付加的な細胞内制御メカニズムには、チロシンキナーゼの1
以上の細胞質ゾル基質のPTP−PEST媒介脱リン酸化が含まれてもよい。
【0099】 本明細書に開示され、実施例に説明されるように、PTP1BおよびPTPH
1の基質特異性は、PTP触媒および/または基質との結合相互作用、例えば、
脱リン酸化およびin vitroとin vivo における基質捕捉に関する諸方法により特
徴付けることができる。PTP1B(例えば、Barford ら、1994, Science 263:
1397; Jia ら、1995, Science 268:1754を参照)とPTP1H(例えば、米国特
許第5,595,911 号明細書および米国特許第第5,863,781 号明細書を参照)は、当
業者には周知のものである。本明細書に提示されている基質捕捉方法は、一般的
に不変PTP触媒ドメインアスパラギン酸残基およびPTPアミノ酸配列におけ
るチロシンの頻度により、いかなるPTPにも適用可能であり、したがって、そ
の他のPTPファミリーメンバーの基質優先度を図示する際に有用であることを
証明すべきである。特に、潜在的な能力を有する基質を捕捉し、それにより分離
する、触媒作用が損なわれた変異体PTPの使用により、個々のPTPの生理学
的に重要な基質の同定が可能になり、細胞プロセスの制御におけるこうした酵素
の役割についての理解を改善することにつながる。さらに、リン酸化され得ない
アミノ酸によるPTPチロシン残基の置換は、チロシンリン酸化タンパク質基質
に相互作用するそれらの能力について損なわれない基質捕捉性変異体PTPを提
供する。
【0100】 また、本発明は、(i)野生型PTP触媒ドメインの不変のアスパラギン酸残
基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満(1分-1
満)までのKcatの減少をもたらすアミノ酸(例えば、アラニン残基)と置換
され、かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ない
アミノ酸(例えば、セリンまたはスレオニンあるいは他の任意の天然またはリン
酸化されるであろう非天然アミノ酸ではない)により置換されるものである基質
捕捉性変異体PTPを含有した医薬組成物に関する。したがって、本発明のPT
Pは、例えば、医薬組成物を調製するための製薬上許容され得る単体または希釈
剤などの製薬上許容され得る基材により処方することが可能である。
【0101】 患者への投与に関しては、1以上のポリペプチド(基質捕捉性変異体PTPを
含む)、核酸分子(基質捕捉性変異体PTPをコードする組換発現構築物を含む
)および/または調節薬剤(PTPおよび/または基質捕捉性変異体PTPと相
互作用する薬剤を含む)が、一般的には、医薬組成物として処方される。医薬組
成物は、付加的に生理学的に許容され得る担体(例えば、活性成分の活性を阻害
しない非毒性材料)を含有した無菌水性あるいは非水性溶液、懸濁液あるいは乳
化剤であってもよい。かかる組成物は、固体、液体または気体(エアゾール)の
形態であってもよい。他方、本発明の組成物は、凍結乾燥剤として処方してもよ
く、あるいは該組成物を周知の技術を使用してリポソーム内にカプセル化しても
よい。また、本発明の範囲内にある医薬組成物には、生物学的に活性あるいは不
活性であり得る他の成分をも含んでもよい。こうした成分としては、限定されな
いが、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水あるいはリン酸緩衝化食塩水)、炭
水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースあるいはデキストラン)
、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたは、グリシンなどのアミノ酸、
抗酸化剤、EDTAなどのキレート化剤、あるいはグルタチオン、安定剤、染料
、香味料および懸濁剤および/または保存剤などが挙げられる。
【0102】 当業者に公知のいかなる適切な担体をも本発明の医薬組成物に用いてもよい。
治療用途の担体は周知のものであり、また、例えば、Remingtons Pharmaceutica
l Sciences. Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro編、1985年刊) に記載されて
いる。一般的には、担体のタイプは、投与形態に基づいて選択される。医薬組成
物は、例えば、局所、経口、経鼻、眼内、くも膜下腔内、直腸内、膣内、舌下ま
たは皮下、静脈内、筋内、胸骨内、尿道管内ないしは尿道内注射あるいは輸液な
どの非経口投与を含むいかなる投与の適当な方法のためにも処方してもよい。非
経口投与に関しては、担体は、好適には、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、
ワックスあるいは緩衝液を含有する。経口投与に関しては、前記担体のいずれか
、またはマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サ
ッカリンナトリウム、タルク、セルロース、カオリン、グリセリン、スターチデ
キストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロース、エチルセ
ルロース、グルコース、スクロースおよび/または炭酸マグネシウムなどの固体
担体を用いることができるであろう。
【0103】 医薬組成物(例えば、経口投与または注射による送達)は、液体(例えば、エ
リキシル剤、シロップ、溶液、乳化剤または懸濁剤)の形態であってもよい。液
体医薬組成物としては、例えば、1以上の下記:注射用水、生理食塩水溶液など
の無菌賦形剤、好適には、生理学的生理食塩水、リンゲル溶液、等張性塩化ナト
リウム、溶媒あるいは懸濁液として働く合成モノグリセリドあるいはジグリセリ
ドなどの固定油ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールあ
るいはその他の溶媒、ベンジルアルコールあるいはメチルパラベンなどの抗菌剤
、アスコルビン酸あるいは重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミ
ン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤、酢酸塩、クエン酸塩あるいはリン酸
塩などの緩衝液および塩化ナトリウムあるいはデキストロースなどの緊張度調節
のための薬剤などが挙げられる。非経口製剤は、ガラスあるいはプラスチック製
のアンプル、ディスポーザルシリンジ、または複数投与バイアルの中に封入され
うる。生理学的生理食塩水の使用が好ましく、また、注射可能な医薬組成物は、
好ましくは無菌である。
【0104】 本明細書に記載の組成物は、持効性(すなわち、投与後化合物のゆっくりとし
た放出を行なうカプセルまたはスポンジ)に処方されてもよい。かかる組成物は
、一般的には、周知の技術を使用して調製され、例えば、経口、直腸内または皮
下移植により、あるいは望ましい標的部位への移植により投与されてもよい。持
効性製剤には、担体マトリックス内に分散した薬剤および/または速度制御膜に
囲まれたリザーバー内に含まれる薬剤が含まれてもよい。こうした製剤内に使用
される担体は生体適合性のものであり、また、生体分解性のものであってもよい
。好適には、製剤は、活性成分放出の比較的一定したレベルを提供する。持効性
製剤内に含有される活性成分量は移植部位、放出の速度と予想持続時間および治
療されるあるいは予防される状態の性質による。
【0105】 基質捕捉性変異体PTPポリペプチドをコードする核酸分子(ポリペプチドが
生体内で生成されるような)から成る医薬組成物に関しては、その核酸分子は、
核酸、細菌、ウイルスおよび、例えば、本出願に提示されている組換発現構築物
などの哺乳動物発現システムを含めた、当業者には公知のさまざまなデリバリー
システムのいずれかの内に存在し得る。こうした発現システムの中にDNAを組
み込むための技術は当業者には周知のものである。そのDNAは、例えば、Ulme
r ら、Science 259:1745-1749 、1993およびCohen による総括されているScienc
e259:1691-1692, 1993に説明されているように「裸の」ものである。裸のDNA
の摂取は、効率的に細胞の中に輸送される生体分解性ビーズ上のそのDNAを被
膜することにより増加させ得る。
【0106】 医薬組成物内で、基質捕捉性変異体PTPポリペプチド、核酸分子をコードす
る基質捕捉性変異体PTPあるいは調節剤が、さまざまな化合物のいずれかとリ
ンクされ得る。例えば、こうしたポリペプチド、核酸分子あるいは薬剤は、その
標的部位へのその薬剤のデリバリーを容易なものにする標的部分(例えば、モノ
クローナル抗体あるいはポリクローナル抗体、タンパク質あるいはリポソーム)
にリンクされ得る。本出願で使用されるとき、「標的部分」という用語は、薬剤
にリンクされるときに、標的細胞あるいは組織に対するその薬剤の輸送を促進し
、それによってその薬剤の局所濃度を増加させるいずれかの物質(化合物あるい
は細胞など)であり得る。標的部分にはその抗体あるいは断片、受容体、リガン
ドおよびその標的組織の細胞にあるいはその標的組織の近傍に結合するその他の
分子が含まれる。抗体標的薬剤は、完全な分子(全体)、その断片、あるいは機
能的に等価なものであり得る。抗体断片の実施例は、通常の諸方法により、ある
いは遺伝子工学あるいはタンパク質工学により産生され得るF(ab’)2、−
Fab’、FabおよびF[v]断片である。結合は一般的には共有的なもので
あり、また、例えば、直接濃縮あるいはその他の反応、あるいは二官能性あるい
は多官能リンカーにより達成され得るものである。標的部分は、薬剤が治療的恩
恵を奏すると予想される細胞(複数)あるいは組織(複数)に基づいて選択され
得る。
【0107】 医薬組成物は、治療対象(あるいは予防対象)疾患に対して適当な方法で投与
され得る。適当な投与量と、適当な持続時間と、投与の頻度はその患者の状態、
その患者の疾患のタイプと重篤度、活性成分の特定の形態および投与方法といっ
たそうした要素により決定されることであろう。一般的には、適当な投与量と治
療処方箋は、治療的および/または予防的恩恵をもたらすのに十分な量で薬剤
(複数)を供給する(例えば、さらに頻繁で完全なあるいは部分的な寛解あるい
は長い期間にわたる疾患からの解放、および/または全生存などの改善された臨
床上のアウトカム)。予防的な用途に関しては、投与は予防するのに十分なもの
であり、細胞シグナル伝達における欠陥、例えば、異常細胞サイクル制御、増殖
、活性化、分化、老化、アポトーシス、接着、代謝活性、遺伝子発現などにつな
がる欠陥に関連している疾患の発症を遅らせ、あるいは疾患の重篤度を軽減させ
るのに十分であるべきものである。
【0108】 至適投与量は一般的には、実験的なモデルおよび/または臨床治験を用いて決
定され得る。一般的には、1回の投与に存在するポリペプチドの量、あるいは1
回の投与に存在する、DNAによる生体内で産生されるペリペプチドの量は、約
0.01μg〜約100μg/宿主のkg体重の範囲であり、また典型的には、
約0.1μg〜約10μgである。効果的な治療を提供するのに十分な最少投与
量の使用が通常は好ましいものとされる。患者は一般的には、当業者には馴染み
のある、治療あるいは予防される状態に対して適当なアッセイを使用して治療あ
るいは予防上の効果に関してモニターされ得る。適当な投与量は、その患者のサ
イズによりさまざまであるが、典型的には、10〜60kg対象に対して約1m
L〜約500mLの範囲である。
【0109】 以下の実施例は、本発明を説明する目的で提供され、本発明の範囲を限定する
ように解釈されるべきものではない。本出願に引用されているすべての参考文献
の教示は全体として本出願に組み込まれている。
【0110】 実施例 実施例1 変異体PTPタンパク質の生成、発現、精製 プラスミド単離;コンピテント細胞の生産;クローニングのための形質転換お
よび関連操作;増幅;組換プラスミド、挿入物、ベクターの構築;塩基配列決定
などは、公表された手法(Sambrookら、MolecularCloni
ng,aLaboratoryManual、ColdSpringHarbo
rLaboratoryPress、ColdSpringHarbor、NY
、1989;Ausubelら、1993CurrentProtocolsinM
olecularBiology、GreenePubl.Assoc.Inc
.&JohnWiley&Sons.Inc.,Boston、MA)により実
施された。ヒトPTP−PEST(Gartonら、1994EMBOJ.13
:3763;Gartonら、1996Mol.Cell.Biol.16:6
408)およびヒトPTP−1B(Brown−Shimerら、1990Pr
oc.Nat.Acad.Sci.USA87:5148)をコードする組換核
酸発現構築物を、記載のように調製した。
【0111】 PTPの触媒ドメイン内の点変異は、標準的手法、例えば、PTP−PEST
のアミノ酸199位の不変アスパラギン酸(D)を置換変異によってアラニン
(A)に変化させること(D199A)などを用いて導入された。したがって、
PTP−PEST(D199A)、PTP−PEST(C231S)、PTP1
B(D181A)、PTP1B(C215S)を生成する変異が、Muta−G
ene(商標)invitro mutagenesisキット(Bio−Ra
d、Richmond、CA)を用い、製造者の指示に従って、部位特異的変異
導入法によって導入された。ついで、この特定の点変異を含む領域を、適切な発
現ベクター内の対応する野生型塩基配列と交換させ、その置換された変異体領域
全体の塩基配列を決定し、追加の変異がないことを証明した。
【0112】 全長PTP−PESTタンパク質(野生型および変異体タンパク質、Asp1
99からAlaへの変異またはCys231からSerへの変異のいずれかを含
む)および野生型PTP−PEST触媒ドメイン(アミノ酸1〜305)を、組
換バキュロウイルス(BaculoGold(商標)、Pharmingen、
SanDiego、CA)を用いてSf9細胞に発現させ、Gartonおよび
Tonks(EMBOJ.13:3763−3771、1994)の記載のよう
に精製した。PTP−PESTのアミノ酸残基1〜305を含有した野生型およ
び変異体PTP−PESTタンパク質の切形型が、pGEXベクター(Phar
maciaBiotechInc.,Uppsala、Sweden)中におけ
るGSTのPTP−PESTDNAインフレーム下流のサブクローニング後にG
ST融合タンパク質としてE.coliにおいて発現された。適切なベクターで
形質変換された25mlのE.coliを対数増殖期まで増殖させた (OD60 0 は約0.5)。ついで、0.2mMのイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラ
クトピラノシドの添加によって融合タンパク質発現を誘導し、細胞を30℃で2
〜4時間増殖させた。遠心分離により細胞を回収し、50mMのTris−HC
l、pH7.4と5mMのEDTAと1mMのPMSFと1mMのベンザミジン
と5mg/mlのロイペプチンと5mg/mlのアプロチニンと0.1%のTr
itonX−100と150mMのNaClとを含む3mlの緩衝液中50μg
/mlのリゾチームと共にインキュベートし、超音波処理(3×10秒)によっ
て溶解させた。遠心分離(300,000×gで20分間)によって不溶物質を
除去後、100mlのグルタチオン−Sepharose(商標)ビーズ(Ph
armaciaBiotechInc.,Uppsala、スエーデン)と4℃
で30分間インキュベーションによって融合タンパク質を分離し、つぎにこれら
のビーズを遠心分離によって集め、緩衝液A(20mMのTris−HCl、p
H7.4、1mMのEDTA、1mMのベンザミジン、1mg/mlのロイペプ
チン、1mg/mlのアプロチニン、10%のグリセロール、1%のTrito
nX−100および100mMのNaCl)で3回洗浄した。この手法によって
本質的に均一な融合タンパク質が、1mgタンパク質/mlグルタチオン−Se
pharoseビーズの濃度で得られた。アミノ酸1〜321を含有したPTP
1Bタンパク質(野生型および変異型)をE.coliに発現させ、均一になる
までBarfordら(J.Mol.Biol.239:726−730(19
94))に記載のように精製した。
【0113】 実施例2 p210BCR:ABLによるPTP1B発現レベルの調節 慢性骨髄性白血病(CML)は、第9染色体上のc−Ablプロトオンコジー
ンが第22染色体上のbcr遺伝子に結合しているフィラデルフィア染色体(P
h)により特徴づけられる造血幹細胞のクローン性疾患であるプロテインチロシ
ンキナーゼ(PTK)をコードする。これは、bcr:abl融合タンパク質p
210bcr:ablの生成をもたらし、PTK活性がc−Ablと比べて増大
される。本実施例は、リン酸化受容性p210bcr:ablタンパク質が特異
的にPTP1B発現を誘導することを示す。
【0114】 温度感受性変異型のp210bcr:ablを発現するBaF3細胞(Jai
nら、1996Blood88:1542)を、PTK活性を有するp210の
発現可能な温度までシフトさせた場合、PTP1BmRNAおよびタンパク質発
現レベルは、12〜24時間以内に増加が観察されたが、これはPTKの活性型
の発生と一致した(例えば、国際公開第98/04712号明細書;LaMon
tagneら、1998Mol.Cell.Biol.18:2965などを参
照のこと)。また、PTP1Bの発現の増加は、CML患者由来のフィラデルフ
ィア染色体−陽性(Ph+)Bリンパ系細胞でも、同一患者のPh−細胞と対比
して、観察された。酵素タンパク質レベルの変化と同一基準であるPTP1B活
性の変化も観察された。これらの変化はPTP1Bに特異的であり、密接な関連
するホモログTC−PTP(PTP1Bと65%のアミノ酸配列同一性を有する
)またはSHP−1、SHP−2、PTP−PESTなど検討したその他のPT
P類において見られなかった。p210bcr:ablPTK活性によるPTP
1B誘導の特異性は、キナーゼ欠損Rat1細胞を用いて確認された(Pend
ergastら、1993Cell75:175)。これらの細胞は、アミノ酸
1172位にリジン残基の代わりにアルギニン慙愧を含み、PTK活性を欠く不
活性型のp210bcr:ablを発現する。このp210変異体のRat1細
胞における発現は、PTP1B発現レベルを変化させることはできなかった。
【0115】 実施例3 p210BCR:ABL結合基質の基質捕捉性PTP変異体との相互作用 本実施例は、PTP基質を同定するために、基質捕捉性変異体PTPの基質相
互作用特性の検索について述べるものである。基質捕捉性PTPポリペプチドお
よび融合タンパク質を実施例1に記載の通り調製した。
【0116】 基質捕捉性変異体PTPポリペプチドまたは融合タンパク質を、様々な細胞系
由来の溶解物と接触させた。簡単に述べれば、細胞溶解物の出発材料としてHe
LaおよびCOS細胞を、5%ウシ胎児血清(FBS)を含有するDulbec
coの改変Eagle培地(DMEM)中で増殖させた。Rat1、Wi38、
C2C12、およびMvLu細胞は、10%FBS含有DMEM中で増殖させた
。293細胞は10%子ウシ血清含有DMEM中で増殖させた。MCF10A細
胞は、5%ウマ血清、20ng/mlの表皮成長因子、10mg/mlのインシ
ュリン、0.5mg/mlのヒドロコルチゾン、および0.25mg/mlのフ
ァンギゾン(fungizone) を含有する50%DMEM50%HamのF−12中で
増殖させた。BaF3細胞は既述のようにして維持した(Jainら、1996
Blood88:1542)。どの培地にもペニシリンおよびストレプトマイシ
ンがそれぞれ100U/mlおよび100mg/mlの濃度で含まれており、ど
の細胞も37℃で培養した。リン酸カルシウム仲介トランスフェクションを用い
て野生型および変異体PTP−PESTタンパク質をコード化するcDNAをC
OS細胞内に導入した。これらのタンパク質は、プラスミドpMT2(Samb
rookら、Molecular Cloning、a Laboratory
Manual. Cold Spring Harbor Laborator
y Press. Cold Spring Harbor、NY、1989)
にサブクローニングされたPTP−PEST cDNA(Gartonら、19
96Mol.Cell.Biol.16:6408)によってコード化され、こ
のプラスミドpMT2からの発現はアデノウイルスの主要後期プロモータ(major
late promoter) によって推進された。各細胞プレート10cmのトランスフェ
クションに20μgのDNAを使用した。PTP−PEST構築物の発現のレベ
ルはどの場合も同程度であった。
【0117】 細胞溶解の前に、70〜90%の融合性細胞培養液を、0.1mMの酸化バナ
ジン酸塩(過バナジン酸塩(pervanadate) )を含有する培地(10mlの培地に
添加した50mMのメタバナジン酸ナトリウム(NaVO3 )および50mMの
2 2 を含有する新鮮な溶液20μl)中30分間処理した。H2 2 および
バナジン酸塩による細胞の処理によって、ホスホチロシン濃度が、おそらく細胞
内PTP類がバナジン酸塩によって阻害されるために、相乗作用的に増加する(
Heffetzら、1990J.Biol.Chem.265:2896−29
02)。過バナジン酸塩処理によって少なくとも50個の顕著なホスホチロシン
タンパク質バンドがすべての細胞型に出現したが、未処理細胞は実質的に検出で
きない程度のホスホチロシン濃度を含んでいた。
【0118】 細胞は、5mMのヨード酢酸含有の緩衝液A(実施例1参照)中で溶解させた
。4℃30分間のインキュベーション後、DTTを添加して終濃度10mMとし
た。つぎに300,000×gで20分間の遠心分離により不溶物質を除去した
。その結果得られる溶解物は、−70℃での長期(数ヶ月)保存中、および4℃
での長時間(少なくとも20時間)インキュベーション中、外因性の添加PTP
の非存在下において、そのホスホチロシン含量に関して安定であった。
【0119】 過バナジン酸塩処理HeLa細胞溶解物を、MonoQFPLCカラム (P
harmacia)を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーによって分画した
。カラムにかける前に試料(緩衝液A中3mg/ml濃度でタンパク質総量50
mg)を3倍容の緩衝液B(20mMのtris−HCl、pH7.4、1mM
のEDTA、1mMのベンザミジン、1mg/mlのロイペプチン、1mg/m
lのアプロチニン、および0.1%のTritonX−100)で希釈した。タ
ンパク質は、緩衝液B中0〜0.5MのNaClのリニアグラジェントで、1m
l/分の流速で20画分(画分容積は1ml)にわたって溶出した後、緩衝液B
中0.5〜1.0MのNaClの第二グラジェントで5画分にわたって溶出した
。ホスホチロシン含有タンパク質は、抗−ホスホチロシン・イムノブロッティン
グによると、画分7〜21内に検出された。PTP1Bについても同一方法をお
こなったが、ただし細胞は過バナジン酸塩処理を行わなかった。
【0120】 脱リン酸化反応には、チロシンリン酸化タンパク質を含有する過バナジン酸塩
処理したHeLa細胞の溶解物(タンパク質1〜2mg/ml)を、氷上で2n
Mの濃度の精製活性PTPの非存在下または存在下でインキュベートした。脱リ
ン酸化は一定量ずつ(30μgタンパク質)をSDS−PAGE試料緩衝液中に
除去することによって終了させ、脱リン酸化の程度を、下記のように生成させた
ホスホチロシン特異的モノクローナル抗体G104を用いるイムノブロッティン
グによって測定した。基質としてチロシンリン酸化32P標識の、還元され、カル
ボキシアミドメチル化され、マレイル化されたリゾチーム(RCM−リゾチーム
)を用いるPTP活性のアッセイを、Flintら(1993、EMBOJ.1
2:1937〜1946)の記載通りに実施した。
【0121】 抗体およびイムノブロッティング:PTP−PEST特異的モノクローナル抗
体AG25を、バキュロウイルスが発現した精製全長PTP−PESTに対して
産生させた。抗−ホスホチロシンモノクローナル抗体G104は、抗原としてホ
スホチロシン、アラニン、およびグリシンを1:1:1の比率で1−エチル−3
−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとともにスカシガイのヘモ
シアニンの存在下で重合させたものを用いて産生させたが、これはKampsお
よびSeftonが最初に記載された方法である(Oncogene2:305
−315(1988))。p130cas モノクローナル抗体はTransduc
tion Laboratories(Lexington、Ky)から入手し
た。PTP1Bに対するモノクローナル抗体FG6はDavidHill博士(
Calbiochem Oncogene Research Product
s、Cambridge、MA)から提供された。イムノブロッティングによる
タンパク質の可視化は、HRP結合二次抗体(Amersham Life S
cience Inc.、Arlington Heights、Il)および
SuperSignal(登録商標)CL−HRP基質系(Pierce、Ro
ckford、Il)を用いて増強化学ルミネッセンス(ECL)によって達成
された。
【0122】 免疫沈降および基質捕捉:トランスフェクションしたCOS細胞からのPTP
−PESTの免疫沈降は、化学的交差結合剤ピメリミジン酸ジメチル(Schn
eiderら、J.Biol.Chem.257:10766−10769(1
982))を用いてプロテインA−セファロースビーズ(Pharmacia
BiotechInc.,Uppsala、スウェーデン)にモノクローナル抗
体AG25を共有結合させた後に行った。抗体はまずプロテインA−セファロー
スに1mg/mlビーズ容積の濃度で結合させた後、未結合物質を0.2Mのホ
ウ酸ナトリウム、pH9で3回洗浄して除去した。共有結合は、0.2Mホウ酸
ナトリウム、pH9中20mMのピメリミジン酸ジメチル存在下室温30分間の
インキュベーションによって達成された。つぎにこれらのビーズを過剰の0.2
Mエタノールアミン、pH8とともに1時間インキュベートして未反応クロスリ
ンキング剤をブロックし、PBSで3回洗浄後、4℃で保存した。10μlのA
G25ビーズを用いて、約0.375mgのタンパク質を含有する溶解物からト
ランスフェクションしたPTP−PESTを沈降させた。
【0123】 基質捕捉は、様々なPTPアフィニティマトリックスを用いて実施した。全長
PTP−PESTマトリックスは、精製バキュロウイルス発現PTP−PEST
タンパク質を結合させた共有結合AG25−プロテインA−セファロースビーズ
を利用した。一定量ずつ(10μl)のAG25ビーズを、5μgの精製PTP
−PEST(野生型または変異型)存在下で100μlの緩衝液A中4℃で2時
間インキュベートした。つぎに1mlの緩衝液Aで3回洗浄することによって未
結合PTP−PESTを除去した。その結果得られたPTP−PEST−AG2
5プロテインA−セファロースビーズは、10mlについて約2mgのPTP−
PESTを含有した。基質捕捉は、PTP−PESTの触媒ドメインを含有する
細菌発現GST融合タンパク質に結合させたグルタチオン−セファロースビーズ
を用いても行った。
【0124】 PTP1Bも基質捕捉実験に使用した。この場合、モノクローナル抗体FG6
を、クロスリンキング剤なしでプロテインA−セファロースにあらかじめ結合さ
せ(2μg抗体/10μlビーズ)、つぎに精製PTP1Bタンパク質を過剰に
添加し、4℃で2時間インキュベートした。未結合PTP1Bの除去後、10μ
lのビーズは約2μgのPTP1Bを含有した。
【0125】 過バナジン酸塩処理細胞溶解物、またはカラム画分を、基質捕捉実験のために
ホスホチロシン含有タンパク質の起源として使用した。一般に、0.5mlの緩
衝液A(5mMのヨード酢酸、10mMのDTTを含む)中0.25〜0.5m
gのタンパク質を含有する溶解物を、約2μgの適切なPTPタンパク質を含有
する10μlのアフィニティマトリックス中4℃で2時間インキュベートした。
つぎに未結合タンパク質を1mlの緩衝液Aで3回洗浄することによって試料か
ら除去し、結合物質は50μLのSDS−PAGE試料緩衝液の添加によって採
取した後、95℃5分間加熱した。つぎにビーズに結合したタンパク質を、SD
S−PAGE後、イムノブロッティングにより分析した。
【0126】 COS細胞における一時的同時トランスフェクション実験では、PTP1Bは
p210 bcr:ablを脱リン酸化するが、v−ablの脱リン酸化は行わ
ない。PTP1B(D181A)変異体をGST融合タンパク質として発現させ
、精製し、Mo7−p210細胞(p210 bcr:ablを過剰発現する)
の溶解物とインキュベートしたとき、変異体PTPとp210 bcr:abl
の複合体が分離された。これに対して、チロシンリン酸化c−ablも上記溶解
物中に存在するが、これは変異体PTPに結合しなかった。PTP1B(D18
1A)とp210 bcr:ablとの相互作用はバナジン酸塩でブロックされ
たが、これはこの相互作用にはPTPの活性部位が関与していることを示唆する
所見である。
【0127】 COS細胞における一過性共発現後、PTP1B(D181A)はp210
bcr:ablと複合体を形成した。p210 bcr:ablのY177F変
異体はPTP1B(D181A)と相互作用を行わなかったが、これはこのチロ
シン残基がPTKにおける結合部位の一成分であることを示唆している。p21
0bcr:abl中のこのチロシン残基はインビボでリン酸化され、GRB2に
対するドッキング部位として働くことが証明された(Pendergastら、
1993Cell75:175)。p210 bcr:abl中のpTyrとG
RB2のSH2ドメインとの直接相互作用は、PTKの形質転換活性にとって必
須である。PTP1B(D181A)とp210 bcr:ablとの相互作用
はPTKのGRB2との会合を妨害する。以上をすべてを考慮に入れれば、これ
らのデータは、p210 bcr:ablがPTP1Bの生理学的基質であるこ
と、PTP1Bはインビボで癌タンパク質PTKの拮抗剤として機能することを
示唆している。RCMLに対する37kDaのPTP1B変異体のVmax、K
m、Kcatを図2に示す。
【0128】 PTP1BおよびEGF受容体:COS細胞においてPTP1B(D181A
)が発現されると、180kDaタンパク質中ならびに120および70kDa
のタンパク質中のチロシル残基のリン酸化が増強する。GST−PTP1B(D
181A)融合タンパク質をCOS細胞で発現させグルタチオン−セファロース
(登録商標)上に沈降させる場合は、この180kDaおよびこれより少量のp
120およびp70は同時沈降した。p180タンパク質はイムノブロッティン
グによって表皮成長因子(EGF)受容体であると同定された。しかしp120
およびp70タンパク質の実体は不明であり、後者はsrc,p60でもパキシ
リン(paxillin)でもない。
【0129】 COS細胞中PTP1B(D181A)の発現によって、そのリガンドである
EGFの不在下でEGF受容体のチロシンのリン酸化が誘導されるが、これは、
変異体PTPが未変化細胞ではその作用を行うが、溶解後には行わないことを示
している。199位の該当するアスパラギン酸をアラニンで置換した等量のPT
P−PEST(D199A)変異体はEGF受容体とは相互作用をせず、この所
見はこの基質相互作用の特異性を表している。
【0130】 EGF受容体の自己リン酸化がPTP1B(D181A)との相互作用には必
要である。キナーゼが作動しないか、または自動リン酸化部位が欠失してしまっ
ているような受容体変異体は、PTP1B(D181A)と相互作用を行わない
。v−src発現細胞では、チロシンリン酸化タンパク質が過剰に観察されたが
、EGF受容体のリン酸化は検出されなかった。このような条件下では、PTP
1B D181Aは圧倒的に70kDaのチロシンリン酸化タンパク質に結合し
、したがってPTP1BはEGF誘導シグナル伝達経路を調節することができる
ようである。
【0131】 実施例4 PTP−PESTは130kDaホスホチロシン含有タンパク質を優先的に脱リ
ン酸化する PTP−PESTのインビトロでの基質特異性を検索するために、一定量の過
バナジン酸塩処理HeLa細胞溶解物を氷上でインキュベートしたところ、モノ
クローナル抗−ホスホチロシン抗体G104を用いた細胞溶解物のイムノブロッ
ティングによる判定によれば、50〜100のはっきり見分けられるホスホチロ
シン含有タンパクが生成した。つぎに、精製全長PTP−PEST(組換えバキ
ュロウイルスを用いてSf9細胞に発現させたもの)、PTP−PEST触媒ド
メイン、またはPTP1B触媒ドメイン(37kDa型)のいずれかを上記溶解
物に添加し、一定量ずつを様々な時点で取出し、SDS−PAGEによる分析後
、抗−ホスホチロシンイムノブロッティングを行った。
【0132】 意外にも、顕著な130kDaホスホチロシンバンド(p130)は10分以
内にPTP−PESTによって選択的に脱リン酸化されたが、その他の全バンド
の強度は60分間のPTP−PESTとのインキュベーション後も実質上不変で
あった。これより高い濃度のPTP−PEST(100倍以上)との長時間イン
キュベーションの結果、すべてのホスホチロシンバンドは溶解物から完全に除か
れた。しかし、検索したすべての条件下で、p130はその他のすべての存在バ
ンドよりも迅速に脱リン酸化されることが判明した。
【0133】 PTP−PESTによるp130の選択的脱リン酸化は、実質上該酵素の触媒
ドメインのみを含有する短縮型のホスファターゼ(アミノ酸残基1〜305)を
用いた場合にも観察された。この結果は、今回の分析でPTP−PESTによっ
て示された顕著な基質選択性はホスファターゼ触媒ドメインの固有の性質であり
、一方、C−末端の500個のアミノ酸残基は該酵素の基質特異性に対して検出
できるような影響をほとんど持たないことを示唆している。
【0134】 PTP−PESTとp130との相互作用の特異性を、脱リン酸化反応におけ
るPTP1Bの触媒ドメイン(アミノ酸残基1〜321)を用いて検索した。P
TP−PESTで使用したものと同様なモル濃度で添加した場合、PTP1Bは
過バナジン酸塩処理HeLa溶解物中に存在するホスホチロシン含有タンパク質
のほとんどを完全にかつ迅速に(15分以内)脱リン酸化することが認められた
。さらに、p130の脱リン酸化の経時的変化は、PTP1Bによって脱リン酸
化された他のホスホチロシンバンドの脱リン酸化よりも有意に迅速であるという
ことはなかった。したがって、任意の基質の利用性が異なり、単離されたPTP
触媒サブユニットの特性が明らかになっている場合は、インビトロとインビボに
おけるPTP1B基質特異性の範囲は異なることがありうる。
【0135】 実施例5 基質捕捉によるPTP−PESTの130kDa基質の同定 本実施例は、ある細胞溶解物中のPTP基質を同定するために、アフィニティ
マトリックスにおける基質捕捉性変異体PTPの使用について述べる。基質捕捉
性PTPアフィニティマトリックスの調製のために、PTP−PESTの変異型
(D199A)を、部位特異的変異導入法によって生成させ、この変異体酵素を
、組換えバキュロウイルスを用いて発現後精製した。チロシンリン酸化RCM−
リゾチームを基質として使用して分析すると、この精製変異体酵素は、野生型酵
素の約10,000分の1の特異的活性を示した。この精製タンパク質を、プロ
テインA−Sepharoseビーズに共有結合させた抗−PTP−PESTモ
ノクローナル抗体(AG25)からなるアフィニティマトリックスに結合させ、
つぎに実施例3に述べたようにしてHeLa細胞溶解物から調製したMonoQ
画分のそれぞれとインキュベートした。
【0136】 過バナジン酸塩処理HeLa細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィによ
って分画し(実施例3)、一定量ずつの画分をSDS−PAGE後抗−ホスホチ
ロシンまたは抗−p130cas 抗体を用いるイムノブロッティングによって分析
した。つぎに、分析したすべての試料の一定量ずつについて、Asp199がア
ラニンに変化している全長PTP−PEST(D199A)を、共有結合させた
プロテインA−Sepharose/抗体(AG25)ビーズに結合させたもの
から成る基質捕捉性PTP−PEST変異体を含有するアフィニティマトリック
スとともにインキュベートした。45分間インキュベーション後、変異体PTP
−PESTと会合するタンパク質を遠心により採取し、ビーズを洗浄し、SDS
−PAGE試料緩衝液を添加した。つぎに、会合したタンパク質をモノクローナ
ル抗−ホスホチロシン抗体G104を用いるイムノブロッティングによって分析
した。PTP−PESTと会合したタンパク質をつぎにSDS−PAGEにより
、ついで抗−ホスホチロシンまたは抗−p130cas 抗体を用いるイムノブロッ
ティングによって分析した。
【0137】 これらのカラム画分の抗−ホスホチロシンイムノブロッティングによると、p
130ホスホチロシンバンドは画分11〜14(約0.3MのNaCl)に単一
ピークとして溶出することが示された。HeLa溶解物中にチロシンがリン酸化
したp130が多量にあることを考えれば、p130は以前に同定されたホスホ
チロシンを含有する130kDaタンパク質であろうと思われる。いくつかの可
能性のある候補物質が文献中に見られ、フォーカルアドヒージョンキナーゼp1
25FAK 、ras−GAP、gp130、p130cas などがある。これらの候
補物質のうち、p130cas が、多種多様な系の特に顕著なホスホチロシンバン
ドであると同定されており、たとえばv−crk(MayerおよびHanaf
usa、Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2638−26
42(1990);Mayerら、Nature332:272−275(19
88)およびsrc(Kannerら、Proc.Natl.Acad.Sci
.USA87:3328−3332(1990);Reynoldsら、Mol
.Cell.Biol.9:3951−3958(1989))形質転換線維芽
細胞、インテグリン仲介細胞接着(Nojimaら、J.Biol.Chem.
270:15398−15402(1995);Petchら、J.CellS
cience108:1371−1379(1995);VuoriおよびRu
oslahti、J.Biol.Chem.270:22259−22262(
1995))およびPDGF刺激3T3細胞(RankinおよびRozeng
urt、J.Biol.Chem.269:704−710(1994))など
が挙げられる。
【0138】 したがって、p130ホスホチロシンバンドがp130cas に該当するという
可能性を、p130cas に対する抗体を用いてMonoQ画分のイムノブロッテ
ィングによって検討した。p130cas に該当する130kDaバンドはp13
0チロシンリン酸化バンドと同じ画分に溶出し、みかけの分子量はほぼ同じであ
ったため、これらは同一のタンパク質であると考えられる。さらに、これらの画
分から免疫沈降させたp130cas はチロシル残基にリン酸化されていることが
判明した。
【0139】 変異体PTP−PESTタンパク質は、分子量(130kDa)とMono
Q溶出位置(画分11〜14)がp130cas と一致する単一のホスホチロシン
含有タンパク質と会合することが判明した。p130cas 抗体を用いたこのPT
P−PEST会合タンパク質のイムノブロッティングにより、変異体PTP−P
ESTによって捕捉された130kDaのチロシンリン酸化タンパク質は実際に
p130cas であることが証明された。したがってp130cas はPTP−PE
STにとって生理学的に関連する基質であると思われる。
【0140】 チロシンリン酸化p130cas との特異的相互作用におけるPTP−PEST の構造的特徴 :P130cas とPTP−PESTとの相互作用を、過バナジン酸
塩処理HeLa溶解物からタンパク質を沈降させるために様々な精製変異型PT
P−PESTを用いる基質捕捉実験においてさらに検索した。いくつかのアフィ
ニティマトリックスを過バナジン酸塩処理HeLa細胞溶解物とインキュベート
し、ビーズと会合させたタンパク質を、SDS−PAGE後、抗−ホスホチロシ
ンまたは抗−p130cas 抗体を用いるイムノブロッティングによって分析した
【0141】 野生型全長ホスファターゼはチロシンリン酸化p130cas と安定な会合はで
きないことが判明したが、PTP−PEST(D191A)変異体タンパク質も
、活性部位システイン残基のない変異体(C231S)も、溶解物からp130 cas を特異的に沈降させた。野生型ホスファターゼが、チロシンリン酸化p13
cas を沈降できないのは、おそらく、PTP−PESTとチロシンリン酸化p
130cas との正常な相互作用が一時的なものであることを反映していると思わ
れ、この相互作用はp130cas がPTP−PESTによって脱リン酸化される
と直ちに終結すると思われる。
【0142】 PTP−PESTのC末端の500のアミノ酸は、src相同性−3(SH3
)ドメイン結合配列に類似するいくつかのプロリンに富む領域を含有するため、
PTP−PESTとp130cas との相互作用の特異性は、これらのセグメント
の、p130cas のSH3ドメインとの会合にある程度依存性のようであった。
したがって、PTP−PESTのC末端セグメントが、観察されたp130cas とのPTP−PESTの特異的相互作用に関与している可能性について、野生型
および変異体(D199A)型両者のPTP−PESTの触媒ドメインのみを含
むGST融合タンパク質を用いる基質捕捉実験をさらに行って、検索した。GS
Tに融合させたPTP−PEST変異体触媒ドメインは、p130cas ホスホチ
ロシンバンドを特異的に沈降させることが判明したが、野生型融合タンパク質も
GST単独もp130cas を沈降させることはできなかった。したがって、これ
らの実験で観察されたPTP−PESTとp130cas との特異的相互作用は、
PTP−PESTの触媒ドメインの固有の性質であると思われ、p130cas
インビトロ脱リン酸化に活性なPTP−PEST触媒ドメインの観察された選択
性に匹敵する。
【0143】 変異体PTP−PESTとチロシンリン酸化p130cas との相互作用の特異 :過バナジン酸塩処理HeLa細胞溶解物中にチロシンリン酸化p130cas が比較的豊富にあることから考えて、観察されたPTP−PEST不活性変異体
タンパク質のp130cas への選択的結合が、酵素指向性(PTP−PESTの
真の基質選択性を反映する)というよりも、基質指向性(上記溶解物中に存在す
る他のホスホチロシン含有タンパク質に比べてこの潜在的基質が豊富にあること
を反映する)である可能性が考えられた。この可能性について2通りの方法で検
討した。まず、PTP1Bの触媒ドメインの不活性変異型を用いて、この酵素の
基質となると思われる物質を過バナジン酸塩処理HeLa溶解物から捕捉した。
やはり、野生型ホスファターゼはどのホスホチロシン含有タンパク質とも安定な
相互作用を行うことができないことが判明し、一方、PTP1Bホスファターゼ
ドメインの変異体バリアント(PTP−PESTについて上記のものと類似した
CysまたはAsp突然変異を含有する)は多くのチロシンリン酸化タンパク質
と会合した。これはとくにPTP1Bのアスパラギン酸変異体(D181A)に
ついて明確であり、これは実質上すべてのホスホチロシン含有タンパク質を、ほ
ぼ同じ程度の有効性で、溶解物から沈降させるようであった。これらのデータは
、PTP−PESTとp130cas との相互作用の特異性を強調しており、これ
はすべてのPTP触媒ドメインが共有している特徴というよりも、PTP−PE
ST触媒ドメインに特有の性質のようである。
【0144】 PTP−PESTとp130cas との相互作用の特異性について、それぞれチ
ロシンリン酸化タンパク質の異なる配列を有するいくつかの異なる細胞系(W1
38、293、COS、MCF10A、C2C12、MvLu)の過バナジン酸
塩処理後さらに検討した。得られた溶解物を、SDS−PAGE後、抗−ホスホ
チロシンイムノブロッティングによって分析した。一定量ずつをPTP−PES
T(D199A)アフィニティマトリックスまたは対照マトリックスとインキュ
ベートし、PTP−PESTと会合しているチロシンリン酸化タンパク質を、S
DS−PAGEと、抗−ホスホチロシンまたは抗−p130cas 抗体を用いるイ
ムノブロッティングによって上記のように分析した。
【0145】 いずれの場合も、D199A変異体PTP−PESTタンパク質は様々な細胞
系において120〜150kDaのみかけの分子量を持った単一の広いホスホチ
ロシンバンドを沈降させたが、アフィニティマトリックス単独ではホスホチロシ
ン含有タンパク質を沈降させることはできなかった。この沈降物のp130cas 抗体によるイムノブロッティングを行ったところ、すべての細胞溶解物から沈降
したタンパク質はp130cas に該当することが判明した。細胞系によって分子
量が異なることが観察されたが、これはおそらく、p130cas の分子量が種に
よって異なること、または択一的スプライシングを受けた様々な型が発現される
ことを反映しているのであろう(Sakaiら、EMBOJ.13:3748−
3756(1994))。
【0146】 PTP−PEST沈降物中のチロシンリン酸化p130cas の相対的含量は、
溶解物中のp130cas タンパク質の含量にほぼ相関関係を示すようであった(
データは掲載せず)。意外にも、溶解物中のチロシンリン酸化p130cas の含
量に関係なく、p130cas タンパク質をほとんど含まないが他のチロシンが豊
富にリン酸化された多種多様なタンパク質を示す293細胞溶解物においても、
p130cas が常に沈降物中の唯一のホスホチロシン含有タンパク質であった。
同様に、過バナジン酸塩処理293細胞の溶解物(溶解物の抗−ホスホチロシン
イムノブロッティングでも検出できない量で、チロシンリン酸化p130cas
含む)を活性なPTP−PESTとインキュベートしたとき、どのホスホチロシ
ンバンドでも認められるほどの脱リン酸化は起こらなかった(Gartonおよ
びTonks、未発表データ)。これらの結果は、PTP−PESTのp130 cas に対する親和力は、存在する他のどのような基質に対するよりもかなり大き
いことを示し、PTP−PESTのp130cas に対する顕著な基質選択性をい
っそう強調するものである。
【0147】 チロシンリン酸化p130cas と変異体PTP−PESTとの会合のバナジン 酸塩による阻害 :不活性な変異体PTP−PESTとは対照的に、野生型酵素は
チロシンリン酸化p130cas と安定な複合体として会合することはできないと
いうことが一貫して観察され、これは、観察された会合は活性部位指向性である
ことを示唆している。この可能性を検討するために、過バナジン酸塩処理HeL
a細胞溶解物に添加する前に、変異体PTP−PEST(D199A)を様々な
濃度でPTP阻害剤バナジン酸塩とインキュベートした(Denuら、1996
Proc.,Natl.Acad.Sci.USA93:2493−2498
)。つぎに、p130cas のPTP−PESTとの会合の程度を分析した。共有
結合させたプロテインA−Sepharose/抗体(AG25)ビーズに全長
PTP−PEST(D199A)を結合させたものから成るPTP−PESTア
フィニティマトリックスを、様々な濃度のオルトバナジン酸ナトリウム存在下、
氷上で10分間インキュベートした。つぎに試料を一定量の過バナジン酸塩処理
HeLa細胞溶解物とインキュベートした。会合したタンパク質をSDS−PA
GEおよび抗−ホスホチロシンまたは抗−p130cas 抗体を用いるイムノブロ
ッティングで分析した。野生型PTP−PESTの活性も、同一条件下で、チロ
シンリン酸化32P標識RCM−リゾチームを基質として用いて測定した。
【0148】 会合は、バナジン酸塩によって強力に破壊され、この破壊は野生型PTP−P
ESTのバナジン酸塩阻害と同様の濃度依存性を示し、完全な破壊は10mMの
バナジン酸塩で観察されることが判明した。
【0149】 実施例6 COS細胞における内因性p130CAS とトランスフェクトされた変異体PTP
−PESTの会合 上記の実験は、p130cas がPTP-PESTの生理条件下での基質を代表するもの
であることを強く示唆している。完全な細胞の中でPTP-PESTがp130cas と相
互作用するか否かを測定するため、PTP-PESTの野生型または基質捕捉性変異体
(D199A またはC231S )をコードするプラスミドでCOS 細胞を形質転換した。こ
の細胞を溶解する前に過バナジン酸で30分間処理した。PTP-PESTタンパク質を免
疫沈降し、得られた沈殿物を抗−ホスホチロシン免疫ブロッティングして、会合
しているチロシンリン酸化タンパク質を解析した。また、細胞溶解物を共有結合
したプロテインA−セファロース/抗PTP-PEST(AG25)ビーズとインキュベート
して、会合したタンパク質をSDS-PAGE、および抗−ホスホチロシン抗体による免
疫ブロッティングによって解析した。
【0150】 これらの条件下で、再び、C231S PTP-PESTタンパク質と結合することができた
のは、p130cas に相当するホスホチロシンを含むバンドだけであったため、
基質となりうるものが別に多数あるときに細胞内において、PTP-PESTが基質とし
てp130cas を特異的に選択できることが示された。過バナジン酸処理したCO
S 細胞においては、PTP-PESTの野生型もD199A 型も、チロシンリン酸化p130 cas と安定に相互作用することができなかった。
【0151】 これらの条件下では、PTP-PESTの活性部位であるシステイン残基に結合された
過バナジン酸が存在しているため、p130cas のホスホチロシン残基の結合が
効率よく排除されてしまい、PTP-PESTの野生型およびD199A 型とも、チロシンリ
ン酸化p130cas への結合が阻害されるという可能性がもっとも高い(Denuら
、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 2493-2498 (1996) )。C231S 変異体PTP-PE
STが、過バナジン酸存在下でp130cas と結合して安定した複合体になりうる
ことは、この変異体タンパク質が過バナジン酸による影響をほとんど受けないこ
とを示唆しており、通常の形態である、バナジン酸イオンによるPTP の阻害とい
うのは、バナジン酸と、PTP の活性部位であるシステイン残基のチオールアニオ
ンとの間の直接的な相互作用に決定的に依存していることを示している。したが
って、これらの観察結果から、PTP-PESTとp130cas の間に、専らPTP-PESTの
活性部位に関係すると思われる排他的な相互作用が存在することがさらに裏付け
られ、それによって、PTP-PESTのp130cas に対する生理学的に非常に限定的
な基質選択性が結果に反映されている。
【0152】 実施例7 基質捕捉性PTP 変異体の調製 基質と相互作用して安定した複合体となりうる変異型PTP の作製は、実質的に
、(Flint ら、1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 1680; Garton ら、1996
, Mol. Cell. Biol. 16:6408; Tiganis ら、1997 J. Biol. Chem. 272: 21548;
PCT US97/13016も参照のこと)に記載されている。プラスミド単離、コンピテン
トセルの製造、形質転換、およびM13 の操作は、公開された方法に従った(Samb
rookら、Molecular Cloning, a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドス
プリングハーバーにあるコールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring
Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY )1989年)。DNA 断片の精
製は、QIAGEN社(カリフォルニア州チャッツワース(Chatsworth))から購入し
たQIAEX (登録商標)キットを用いて行なった。さまざまな構築物の配列決定は
、製造業者の説明に従って、Sequenase (登録商標)キット(ニュージャージー
州ピスカタウエイ(Piscataway, NJ)のアマーシャム−ファルマシア社(Amersh
am-Pharmacia))を用いて行なった。制限酵素と修飾酵素は、ロシュモレキュラ
ーバイオケミカルズ社(Roche Molecular Biochemicals)(インディアナ州イン
ディアナポリス(Inndianapolis, IN ))およびニューイングランドバイオラブ
ズ社(New England Biolabs )(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly, MA )
)から購入した。
【0153】 簡単に説明すると、pBlueScript プラスミド(カリフォルニア州ラホヤ(LaJo
lla, CA )のストラタジーン社(Stratagene))にライゲーションされたヒトPT
PH1 のcDNA(米国特許第5,595,911 号明細書)を、部位特異的変異導入法により
、製造業者の説明に従って、Muta-Gene (登録商標)(カリフォルニア州ハーキ
ュリー(Hercules, CA)のバイオラド社(Bio-Rad Inc.))を使用して変異させ
た。842 位のシステインをセリンにインビトロで変異させるために使用したオリ
ゴヌクレオチドは、 CCT AGT TCA CTC CAG TGC TGG AAT AG 配列番号:37 であり、PTPH1 の2537〜2562に相当している。811 位のアスパラギン酸をアラニ
ンに変異させるためのオリゴヌクレオチドは、 GCA TGG CCT GCC CAC GGT GTG C 配列番号:38 であり、PTPH1 のヌクレオチド2445〜2466に相当している。変異した複製型DNA
を大腸菌(E. coli )の菌株DH10B (カリフォルニア州ラホヤ(LaJolla, CA )
のストラタジーン社(Stratagene))に形質転換し、変異を確認するため、コロ
ニーを拾い、製造業者の説明に従って、Sequenase (登録商標)キット(ニュー
ジャージー州ピスカタウエイ(Piscataway, NJ)のアマーシャム−ファルマシア
社 (Amersham-Pharmacia))を用いてジデオキシ法による配列決定を行なった
。PTP 触媒ドメイン(634 〜913 のアミノ酸残基)をコードする野生型と変異型
のPTPH1 遺伝子部位をインフレームで、発現ベクターpGEX(ニュージャージー州
ピスカタウエイ(Piscataway, NJ)のアマーシャム−ファルマシア社(Amersham
-Pharmacia))に連結して、3種類のグルタチオン- S- トランスフェラーゼ(
GST )融合タンパク質をコードする配列:GST-PTPH1 (野生型)、GST-PTPH1 (
D811A )およびGST-PTPH1 (C842S )を作製した。GST-PTPH1 融合タンパク質を
大腸菌で発現させ、製造業者のプロトコルに従って、Sepharose (登録商標)ビ
ーズ(ニュージャージー州ピスカタウエイ(Piscataway, NJ)のファルマシア社
(Pharmacia ))上に固定されたグルタチオンへのアフィニティー結合によっ
て精製を行なった。
【0154】 あるいは、哺乳動物細胞のトランスフェクションに使用される上記のような野
生型と変異型のPTPH1 構築物を、HAエピトープをコードする核酸配列によってC
末端側をコードする配列によるタグを付けた。このHAタグは、インフルエンザの
血球凝集素タンパク質に由来する、抗体規定エピトープ: SYPYDVPDYAS 配列番号:39 に対応している(Wilsonら、1984、Cell 37: 767)。
【0155】 DNA 配列決定によって確認した後、これらの構築物をベクターpCDNA3(カリフ
ォルニア州カールズバッド(Carlsbad, CA)のインビトロジェン社(インビトロ
gen ))およびレトロウイルスベクターpBSTR1(マサチューセッツ州ボストンの
マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital, Boston, MA)のS.
Reeves )中にクロニーングした。
【0156】 上記したような部位特異的変異導入法により、PTPH1 のヌクレオチド2034〜20
70に相当するオリゴヌクレオチド: TTG GAC AAA AAC CGA TTT AAA GAT GTG CTG CCT TAT G 配列番号:40 を用いて、GST-PTPH1 (D811A )変異体構築物をさらに改変し、保存されたPTP
触媒部位である676 位のチロシン残基をフェニルアラニンに置換した二重変異体
(Y676F/D811A )を作製した。
【0157】 実施例8 トランスフェクト細胞における、PTPH1 発現の細胞増殖に対する影響 本実施例では、トランスフェクトされたPTPH1 遺伝子を培養細胞で過剰発現さ
せると、細胞増殖が著しく阻害されるが、トランスフェクトされた変異型基質捕
捉性PTPH1 遺伝子を過剰発現させた場合には阻害が起こらないことを示すもので
ある。
【0158】 レトロウイルス遺伝子送達系を用いて、テトラサイクリン抑制型プロモーター
の調節下で野生型または基質捕捉性変異体PTPH1 GST 融合タンパク質(実施例7
参照)を発現する、安定したNIH3T3細胞株を構築した(Paulusら、1996、J. Vir
ol. 70:62; Wang ら、1998、Genes Develop. 12:1769)。簡単に説明すると、直
径10 cm の組織培養皿でコンフルエントになったウイルスパッケージング細胞株
LinX(ニューヨーク州コールドスプリングハーバーにあるコールドスプリングハ
ーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY )の
G. Hannon )をリン酸カルシウム沈殿法で、15μg の野生型またはD811A 変異型
のPTPH1 レトロウイルス構築物によりトランスフェクトした。PTPH1 遺伝子の発
現抑制状態を維持するために、2 μg/mlのテトラサイクリン(カリフォルニア州
パロアルト(Palo Alto, CA )のクロンテック社(Clontech))存在下で、安定
した細胞株を樹立維持するための以下の工程を行なった。レトロウイルスは、ト
ランスフェクトしたLinX細胞を30℃で48時間培養し、その後、パッケージング細
胞を除去するためにウイルスを含む培養液を0.45μm のフィルター(マサチュー
セッツ州ベドフォード(Bedford, MA) のミリポア社(Millipore ))を用いて濾
過して作製した。ウイルス上清に4μg/mlのポリブレン(ミズーリ州セントルイ
ス (St. Louis, MO )のシグマ社(Sigma ))を添加し、10% ウシ胎児血清(
FBS 、ニューヨーク州グランドアイランド(Grand Island, NY)のギブコ- ビー
アールエル社(GIBCO-BRL ))を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、
ギブコ- ビーアールエル社(GIBCO-BRL ))の中で維持されていたNIH3T3細胞(
コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory )の保存
株、最初は、メリーランド州ロックビル(Rockville, MD )のアメリカンタイプ
カルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から入手したも
の)に感染させるために使用した。30℃に一晩置いて感染させた後、培地を新し
いものと交換して、培養物を37℃でインキュベートした。2日後、ピューロマイ
シンを最終濃度が2μg/mlになるように加え、選抜条件下に置いた。各コロニー
を単離して、テトラサイクリンおよびピューロマイシン存在下で維持した。PTPH
1 発現を誘導するために、細胞を洗浄して、ピューロマイシンは含むが、テトラ
サイクリンを含まない新しい培養皿に再び播種した。
【0159】 培養培地からテトラサイクリンを除去して野生型PTPH1 の触媒ドメインの発現
を誘導すると、細胞増殖は著しく阻害された(蓄積される細胞数で約7倍減少し
た)(図3および4)。野生型PTPH1 の発現を誘導しているうちに、約10%の細
胞が次第に培養皿から剥離したため、トリパンブルーを排除する能力の喪失で測
定したところ、これらの細胞は生きていなかった。これに対して、触媒機能が損
なわれているPTPH1-D811A 変異体(「DA」)は、細胞の増殖や生存力に影響を与
えなかった。各PTPH1 構築物について、別個に単離されたコロニーから作製され
た3種類の別の細胞株で同様の結果が得られていることから、クローン集団の違
いでは、野生型と変異型(D811A )のPTPH1 によって形質転換された細胞間に見
られる表現形質の違いを説明できないことが示されている。DNA 断片化アッセイ
法(Wyllie、1980、Nature 284:555; Arendsら、1990、Am. J. Pathol. 136:593
)を用いて、PTPH1 発現を誘導された細胞はアポトーシスを起こさないことが測
定された。
【0160】 ヨウ化プロピジウムを用いるDNAのフローサイトメトリー測定(Rabinovitc
h 、1994、Meths. Cell Biol. 41:263-296)による細胞周期分析を、野生型また
は変異型(D811A )のPTPH1 の発現を誘導されたトランスフェクト細胞集団に対
して行なった。対照用の細胞と比べて、さまざまな細胞周期段階における細胞分
布は変化することなく、PTPH1 誘導性の増殖停止は、特定の細胞周期段階に作用
するものではないことが示された。
【0161】 また、培養中の細胞を同調させて、PTPH1 発現が、G1/S停止から回復して細胞
周期を再始動することに与える影響を測定した。PTPH1 (野生型または変異型D8
11A )発現を誘導してから24時間後に1 mMのヒドロキシ尿素(カリフォルニア州
サンディエゴ(San Diego, CA )のカルバイオケム社(Calbiochem))を加えて
18時間培養することによって、細胞を同調させた。この薬剤は、細胞周期のG1/S
の境界で細胞を停止させる(KrekとDeCaprio、1995、Meths. Enzymol. 254:114
)。ヒドロキシ尿素による阻害は、細胞を新鮮な培地で3回洗浄すれば失われる
。細胞周期阻害を除去した後さまざまな時点で、サイクリン特異的抗体を用いた
免疫ブロット解析を行うために、NP40バッファー(1 % NP40 、10 mM リン酸ナ
トリウム、pH 7.0、150 mM NaCl 、2 mM EDTA 、50 mM NaF 、1 mM Na3VO4 、5
μg/mlのロイペプチン、5 μg/mlのアプロチニン、1 mMベンズアミジン、1 mMPM
SF)の中で細胞を溶解した。簡単に説明すると、直径10 cm の組織培養皿でコン
フルエントになった細胞を0.5 mlのNP40バッファーの中で10分間4 ℃で溶解し、
溶解物を4 ℃で10分間、10,000 x gで遠心分離して清澄にした。各溶解液のアリ
コートをタンパク質濃度について標準化し(BCA アッセイ法、イリノイ州ロック
フォード(Rockford, IL)のピアスケミカルズ社(Pierce Chemicals))、ドデ
シル硫酸ナトリウム(SDS )サンプルバッファー(Laemmli 、1970、Nature 227
:680)に希釈して、8 %アクリルアミドゲルを用いたSDS ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動とイモビロン(Immobilon )-P PVDF 膜(マサチューセッツ州ベドフ
ォード (Bedford, MA)のミリポア社(Millipore ))上に移したブロットによっ
て解析した。製造業者の推奨するところに従って、免疫ブロット用バッファー(
5 %(w/v )脱脂乳、150 mM NaCl および0.05%トゥイーン(Tween )20を含む
20 mM トリス、pH 7.5)に希釈したポリクローナルウサギ抗- サイクリンD1抗体
(カリフォルニア州サンタクルス(Santa Cruz, CA)のサンタクルスバイオテク
ノロジー社(Santa Cruz Biotechnology))を用いて、室温で1 時間ブロットを
プロービングした。このブロットを同じバッファーで3回洗浄し、既述されたよ
うに(Zhang ら、1995、J. Biol. Chem. 270:20067)、製造業者の説明に従って
、エンハンスドケミルミネッセンス(ECL )試薬と西洋ワサビペルオキシダーゼ
(HRP )結合二次抗体 (どちらも、ニュージャージー州ピスカタウエイ(Pisc
ataway, New Jersey))のアマーシャム−ファルマシアバイオテック社(Amersh
am-Pharmacia Biotech))を用いて発色させた。
【0162】 図5に示したように、野生型PTPH1 導入遺伝子の発現を許容しない条件下で、
トランスフェクトした細胞をヒドロキシ尿素による細胞周期阻害から解放したと
ころ、細胞が細胞周期を再入し、進行して行くにつれて、サイクリンD 発現が次
第に増加した。しかし、PTPH1 発現を許容する条件下で、細胞周期阻害から細胞
を解放したときには、検出可能なサイクリンD 発現はすべて消失した。これは、
PTPH1 が細胞周期の進行を乱すことによって細胞増殖を抑制することを示唆して
いる。変異型導入遺伝子によってトランスフェクトした細胞における変異型PTPH
1 (D811A )の発現は、細胞周期に対して影響を与えなかった。
【0163】 実施例9 インビトロにおける、PTPH1 基質捕捉性変異体を用いた、PTPH1 の基質としての
VCP の同定 本実施例では、不変PTP 触媒部位であるアスパラギン酸残基がアラニンに置換
された(D811A )基質捕捉性PTPH1 変異体を用いて、細胞溶解物中のPTPH1 の基
質を同定することについて説明する。上記実施例3に記載したようにして細胞溶
解物を調製し、野生型または変異型のPTPH1 の触媒ドメインに接触させて、PTP-
基質結合相互作用を測定した。
【0164】 不変PTP 触媒部位であるアスパラギン酸残基がアラニンに置換されている変異
型PTP を用いた基質捕捉法は、上記実施例8に記載したように、変異型PTP がPT
PH1 (D811A )になっている以外は既述した通りである(Flint ら、1997, Proc
. Natl. Acad. Sci. USA 94: 1680; Garton ら、1996, Mol. Cell Biol. 16:640
8; Tiganisら、1997 J. Biol. Chem. 272: 21548; PCT US97/13016も参照のこと
)。
【0165】 過バナジン酸で処理した細胞溶解物を、Sepharose (登録商標)ビーズ上に固
定化したGST-PTPH1 触媒ドメイン融合タンパク質とともにインキュベートした。
簡単に説明すると、サブコンフルエントな哺乳動物培養細胞を50μM の過バナジ
ン酸(DMEM中100 mMバナジウム酸ナトリウムと100 mM H2O2 の1:1の混合液か
ら希釈したもの)で30分間処理し、PBS で洗浄してから、実施例8に記載したよ
うに、基質捕捉バッファー(1 % Triton X-100 、50 mM HEPES 、pH 7.5、5 mM
EDTA 、150 mM NaCl 、10 mM リン酸ナトリウム、50 mM NaF 、5 mMヨード酢酸
、5 μg/mlロイペプチン、5 μg/mlアプロチニン、1 mMベンズアミジンおよび1
mM PMSF )の中で細胞溶解させた。溶解物に10 mM DTT を加えてから、10,000 x
gで10分間遠心分離して清澄にした。供給業者が推奨する条件下でグルタチオン
- セファロースビーズ(ニュージャージー州ピスカタウエイ(Piscataway, NJ)
のアマーシャム−ファルマシアバイオテック社(Amersham-Pharmacia Biotech.
))に結合している精製GST-PTPH1 融合タンパク質、またはGST のみを、1 % T
riton X-100 (ミズーリ州セントルイス(St. Louis, MO )のシグマ社(Sigma
))、2 mMジチオスレイトール(DTT 、シグマ社(Sigma ))、5 μg/mlロイペ
プチン、5 μg/mlアプロチニン、1 mMベンズアミジンおよび1mM PMSFを含むリン
酸緩衝食塩水(PBS )で充分に洗った。細胞溶解物を、ビーズに固定化したGST
またはGST-PTPH1 触媒ドメイン融合タンパク質とともに4℃で2時間インキュベ
ートし、ビーズを基質捕捉バッファーで4回洗浄した。ビーズに結合している物
質をSDS-PAGEで分離し、Immobilon-P (登録商標)(マサチューセッツ州ベドフ
ォード (Bedford, MA)のミリポア社(Millipore ))膜にブロットしてから、供
給業者が推奨する濃度のホスホチロシン特異的モノクローナル抗体(G98 、Tiga
nis ら、1997 J. Biol. Chem. 272: 21548;4G10、ニューヨーク州レイクプラシ
ッド(Lake Placid, NY )のアプステート・バイオテクノロジー社(Upstate Bi
otechnology );PY20、ケンタッキー州レキシントン(Lexington, KY )のトラ
ンスダクション・ラボラトリーズ社(Transduction Laboratories ))によって
プロービングし、上記実施例7に記載した通り、ECL 試薬(アマーシャム−ファ
ルマシアバイオテック社(Amersham-Pharmacia Biotech. Piscataway, NJ ))
を使用して現像した。
【0166】 顕著に現れた97 kDa(pp97)のチロシンリン酸化タンパク質が293 細胞の溶解
物からPTPH1 (D811A )変異体によって特異的に単離されたが、野生型PTPH1 ま
たはPTPH1 (C842S )変異体では単離されなかった(図6)。さらに、pp97は、
A431、COS-7 、HepG2 、MDCK、REF-52、Saos-2およびVero細胞など、調査したそ
の他の哺乳動物細胞株からも主要なチロシンリン酸化タンパク質として、PTPH1
(D811A )変異体によって一貫して回収された。PTPH1 基質捕捉性変異体は、細
胞溶解物中に存在する数百種類のチロシンリン酸化タンパク質の一つであって、
基質捕捉の出発材料として使用した細胞溶解物のいずれにおいても主要なタンパ
ク質成分ではないpp97に特異的かつ選択的に結合した。さまざまな細胞株に由来
するPTPH1 関連材料では、さまざまな量の他の微量なチロシンリン酸化タンパク
質も検出された。
【0167】 固定化PTPH1 (D811A )上における、108 個の293 細胞に相当する細胞溶解物
からのpp97精製をスケールアップして、Κ- エンドペプチダーゼによって分解さ
れたペプチドのエドマン分解によって部分配列を決定するのに十分な量のタンパ
ク質を得た(Russo ら、1992、J. Biol. Chem. 267:20317)。そのすべてがATPa
se活性を有し、p97またはVCP として知られる膜結合タンパク質に存在するアミ
ノ酸配列に一致することが分かっている7種類のペプチドそれぞれの配列を決定
した(図7)(Egerton ら、1992、EMBO J. 11:3533 )。下線を施した配列(図
7)は、NCBIデータベース(http://www/ncbi.nlm.nih.gov/、アクセッション番
号Z14044)(配列番号:42)から検索されたマウスVCP の配列と一致した。CD
C48 として知られている、酵母におけるVCP の相同分子種は、細胞周期調節タン
パク質として充分に確認されたものである (Patel ら、1998、Trends Cell Bi
ol. 8:65)。マウスVCP (Egerton ら、1992)のC末端側15残基に相当する合成
ペプチドを調製し(ニューヨーク州コールドスプリングハーバーにあるコールド
スプリングハーバー研究所コアペプチド施設 (Cold Spring Harbor Laborator
y Core Peptide Facility, Cold Spring Harbor, NY ))、常法(HarlowとLane
、Antibodies, a Laboratory Manual 、コールドスプリングハーバー研究所(Co
ld Spring Harbor Laboratory )1988;Weir, D.M.、Handbook of Experimental
Immunology 、1986、ボストン(Boston)のブラックウエルサイエンティフィッ
ク社(Blacwell Scientific ))にしたがって、ポリクローナル・ウサギ抗血清
CS531 を作製するための免疫原として用いるため、製造業者の推奨するところに
したがって、SPDP(N-サクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオン
酸、イリノイ州ロックフォード(Rockford, IL)のピアスケミカルズ社(Pierce
Chemicals))を用いてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH 、ピアスケミ
カルズ社(Pierce Chemicals)に結合させた。VCP ペプチド免疫原は、配列: GGSVYTEDNDDDLYG 配列番号:41 を持っていた。
【0168】 実施例10 置換された活性部位チロシンをもつ基質捕捉性PTPH1 二重変異体を用いた、PTPH
1 の基質としてのVCP の同定 本実施例では、PTP 二重変異体を用いて、完全な細胞におけるPTP とその基質
と位の間の相互作用を同定することについて説明する。より具体的には、本実施
例では、不変PTP 触媒部位であるアスパラギン酸残基がアラニンに置換され(D8
11A )、また、保存されたPTP 触媒部位である676 位のチロシンがフェニルアラ
ニンに置換されているPTPH1 二重変異体を用いる。
【0169】 培養293 細胞を、実施例8記載のHAタグ付きPTPH1 構築物を用いてトランスフ
ェクトし、発現したHAエピトープタグ付きタンパク質を、既述(Zhang ら、1997
、J. Biol. Chem. 272: 27281 )されているような固定化ブドウ球菌由来(Stap
hylococcal)のプロテインAに結合したHA特異的モノクローナル抗体12CA5 によ
る免疫沈降を行なって回収した。上記実施例3の記載に従って作製した細胞溶解
物から、常法にしたがって免疫沈降物を調製した。上記のとおりのウエスタン免
疫ブロット法によって、免疫沈降物を、ホスホチロシンを含むタンパク質につい
て解析を行なった。驚いたことに、293 細胞で発現したPTPH1 (D811A )変異体
は、有意かつ容易に検出できる量のホスホチロシンを含んでいて(図8A)、大
腸菌で発現したGST-PTPH1 (D811A )融合タンパク質には、検出可能量のホスホ
チロシンが含まれていなかったこととは対照的である(図6)。これらの結果か
ら、PTPH1 の一次構造におけるリン酸化チロシンの位置を決定することはできな
かった。さらに、293 細胞で発現したPTPH1 (D811A )変異体は、検出可能なpp
97/VCP を共沈させなかった(図8)。このように、PTPH1 (D811A )は、PTPH
1 (D811A )がインビトロで示したインビトロのpp97/VCP 捕捉( 実施例9) と
同じような様式では、インビボで検出可能なpp97/VCP を充分量捕捉することは
できなかった。
【0170】 PTPH1 の触媒ドメインのアミノ酸配列を解析した結果、PTP 活性部位にある67
6 位に保存されたチロシン残基があることが明らかになった(Barford ら、1995
、Nat. Struct. Biol. 2: 1043)。実施例8の記載に従い、HAタグ付きPTPH1 二
重変異体を構築したが、ここでは、PTPH1 (D811A )の676 位のチロシンがフェ
ニルアラニンに置き換えられて、PTPH1 (Y676F/D811A )となった。PTPH1 (Y6
76/D811A)二重変異体をコードする構築物によって形質転換された293 細胞から
の細胞溶解物を溶解し、モノクローナル抗-HA 抗体により免疫沈降し、ホスホチ
ロシンが存在するかについて、上記のウエスタン免疫ブロット法によって解析し
た。また、抗血清CS531 (実施例9)を用いてpp97/VCP の存在について、また
、モノクローナル抗体12CA5 を用いてHAエピトープの存在について免疫沈降した
物質を解析した(Zhang ら、1997、J. Biol. Chem. 272: 27281 )。
【0171】 単一変異体PTPH1 (D811A )によって形質転換された293 細胞とは異なり、二
重変異体PTPH1 (Y676F/D811A )で形質転換された293 細胞は、抗血清CS531 を
用いた免疫沈降物の免疫ブロット解析によって明らかになったように、特異的に
pp97/VCP を捕捉する能力を獲得していた(図8)。ホスホチロシン含有量につ
いて解析したところ、形質転換された293 細胞から免疫沈降した二重変異体PTPH
1 (Y676F/D811A )は、単一変異体PTPH1 (D811A )と比較すると、ホスホチロ
シンが劇的に減少していた(図8B)。
【0172】 実施例11 基質捕捉性PTPH1 二重変異体を用いた、インビボにおけるPTPH1 基質上のチロシ
ンリン酸化部位の同定 本実施例では、基質捕捉性PTPH1 二重変異体を、pp97/VCP 上のチロシンリン
酸化部位を機能的に特徴づけるために使用する。VCP のC末側にあるチロシン(
Y796とY805)は、これまで特徴が解っていない分子的経路による細胞周期制御に
おいてVCP の役割を担いうる主要なリン酸化部位である(Egerton ら、1994、J.
Biol. Chem. 269: 11435 ;Madeo ら、1998、Mol. Biol. Cell 9: 131)。
【0173】 (i )実施例8〜10記載のHA- タグ付きPTPH1 構築物(野生型、D811A 、ま
たはY676F/D811A )のいずれか、および(ii)野生型VCP 構築物(VCPmyc)また
は2箇所のC末側チロシンリン酸化部位がフェニルアラニンに置換されている二
重変異体(Y676F/D811A )のVCP 構築物(VCPmyc-FF 、メリーランド州ベセスダ
(Bethesda, Maryland)の米国国立衛生研究所(National Institure of Health
)のL. Samelson )のいずれかによって、ヒト293 細胞を同時トランスフェクト
した。VCP の野生型および変異型の構築物に、モノクローナル抗体9E10(メリー
ランド州ロックビル(Rockville, MD )のアメリカンタイプカルチャーコレクシ
ョン(American Type Culture Collection))によって認識されるMyc エピトー
プでタグを付けた。同時トランスフェクトされた細胞を、実施例3の記載にした
がって溶解し、(Zhang ら、1997、J. Biol. Chem. 272: 27281 )の記載にした
がって抗体12CA5 (抗-HA )で免疫沈降した。
【0174】 電気泳動によって分離し、ブロットした成分を、抗-myc抗体9E10でプロービン
グして、PTPH1 タンパク質と共沈した(すなわち、「捕捉された」)VCP タンパ
ク質を同定し、あるいは、抗-HA でプロービングして、免疫沈降物質の中にPTPH
1 タンパク質が含まれていることを確認した。野生型および変異型のPTPH1 タン
パク質は、VCP の2つの形態に匹敵するレベルで発現した。PTPH1 (Y676F/D811
A )二重変異体は、野生型のVCP を効率よく捕捉したが、C末側チロシンリン酸
化部位をもたない二重変異VCP は捕捉しなかった(図9)。また、野生型PTPH1
と単一変異体PTPH1 (D811A )のいずれも、効果的にVCP を捕捉することはなか
った(図9)。
【0175】 実施例12 PTPH1 によるVCP の選択的脱リン酸化 本実施例では、VCP のリン酸化状態に対するPTPH1 の影響について調査した。
テトラサイクリン抑制型プロモーターの調節下で、テトラサイクリンの存在下ま
たは不在下で完全長の野生型PTPH1 を発現する、形質転換された安定したNIH3T3
細胞株を、細胞溶解する前に1時間1 mMバナジウム酸で予備処理してから、ウサ
ギCS531 抗血清を用いてVCP を免疫沈降させた。細胞をNP40バッファーではなく
RIPAバッファー(NP40バッファーに1 %デオキシコール酸ナトリウムと0.1 %SD
S を添加したもの)の中で溶解した点を除いては、実施例3に記載した常法にし
たがって細胞溶解物と免疫沈降物を調製した。PTPH1 発現(+)を許容する条件
下では、PTPH1 の発現を抑制したとき(−)に比べて、VCP のホスホチロシン量
が3倍から5倍減少することが観察された(図10A)。
【0176】 NIH3T3形質転換細胞株の溶解物を、抗−ホスホチロシン抗体PT66(ミズーリ州
セントルイス(St. Louis, MO )のシグマ社(Sigma ))でも免疫沈降させて、
PTPH1 発現の存在下(+)または不在下(−)で培養した細胞からチロシンリン
酸化タンパク質の代表的なサンプルを得た(図10B)。これらの免疫沈降物を
VCP に特異的な抗体により免疫ブロット解析したところ、誘導されなかった対照
(−)と比較して、PTPH1 発現が誘導された細胞から免疫沈降したチロシンリン
酸化タンパク質のうち、VCP の量が劇的に減少することが明らかになった(図1
0B)。これらの細胞において、PTP H1 によってVCP が一見して選択的に脱リ
ン酸化されることは、別のチロシンリン酸化タンパク質であるキナーゼFAK のチ
ロシンリン酸化の程度に対するPTPH1 による誘導の効果を評価することによって
も示された。PTPH1 発現の誘導は、抗−ホスホチロシン抗体によって免疫沈降し
たFAK の量を同じように減少させることはなかった(図10B)。
【0177】 また、全チロシンリン酸化タンパク質プールに対する、誘導されたPTPH1 発現
の効果は、正常な条件下(「未処理」)において、0.5 %FBS を含むDMEM中で16
時間培養することによって血清枯渇にして(「枯渇」)、または、枯渇の細胞を
10μg/mlのインシュリン(ロシュモレキュラーバイオケミカルズ社(Roche Mole
cular Biochemicals)(インディアナ州インディアナポリス(Inndianapolis, I
N ))によって10分間インシュリン刺激した後に増殖させた、PTPH1 により形質
転換されたNIH3T3細胞において比較した。全細胞溶解物のアリコートを電気泳動
によって分離し、Immobilon-P (登録商標)にブロットをトランスフェクトし、
供給業者の推奨にしたがって希釈した2種類のHRP 結合抗−ホスホチロシン抗体
、PY20(ケンタッキー州レキシントン(Lexington, KY )のトランスダクション
・ラボラトリーズ社(Transduction Laboratories ))および4G10、(ニューヨ
ーク州レイクプラシッド(Lake Placid, NY )のアプステート・バイオテクノロ
ジー社(Upstate Biotechnology )を混合してプローブとし、ECL 検出(オハイ
オ州クリーブランド(Cleveland, OH )のアマーシャム社(Amersham)を行なっ
た。PTPH1 の過剰発現を誘導したところ、ランダムに増殖している(「未処理」
)細胞、枯渇の細胞、またはインシュリン刺激を受けた細胞において、タンパク
質チロシンリン酸化の全体的なパターンを変えることはできなかった(図11)
【0178】 当業者は、過度の実験を行なうことなく、ここに記載した発明の具体的態様に
等しい態様を数多く認めるか、確認することができるであろう。かかる均等物も
、以下の請求の範囲に含まれるであろう。また、発明の具体的な態様は、例示の
ためにここに記載されているが、本発明の主旨と範囲を逸脱することなく、さま
ざまな改変を加えることができると考えられよう。したがって、本発明は、添付
の請求の範囲による制限以外には制限されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A〜1Eは種々のPTPの触媒ドメインの複数のアミノ酸配列のアライン
メントを示すものである。基質と相互作用を示すPTP1Bのアミノ酸残基の位
置は小型の矢印で示してあり、アラインメントの下部の残基の数字はPTP1B
のものに相当する。図1A〜1EはPTPの触媒ドメインの複数の配列アライン
メントを示している(配列番号:1〜35)。サイトゾルの真核細胞PTPおよ
びRPTPのドメイン1を組み合わせて1つのグループとし;RPTPのドメイ
ン2は第2のグループとし、そしてイエルシニア(Yersinia)のPTPは第3の
ものとした。3グループ全てに共有されている不変残基を小文字で示す。グルー
プ内の不変残基および高度に保存された残基はそれぞれイタリックと太字で示す
。イエルシニアのPTP配列内で、サイトゾルおよびRPTPドメインの配列の
間の不変残基または高度に保存された残基はそれぞれイタリックおよび太字で示
す。
【図2】 図2はRCML(還元され、カルボキシアミドメチル化され、マレイル化され
たリゾチーム)に対する種々のPTP1B変異体のVmax、KcatおよびK
mを示す。
【図3】 図3はPTPH1を過剰発現する安定なNIH3T3細胞株の成長の抑制を示
す位相差顕微鏡写真である(+、誘導; −、非誘導)。
【図4】 図4はPTPH1を過剰発現する安定なNIH3T3細胞株の成長の抑制を示
す成長曲線(3連平板培養による平均値)である。
【図5】 図5はHAエピトープタグ(PTPH1)またはサイクリンに特異的な抗体を
用いたイムノブロット解析によるヒドロキシ尿素ブロックからの放出後の所定時
間における、PTPH1過剰発現による細胞周期の進行の抑制を示している(+
、誘導; −、非誘導)。
【図6】 図6は基質捕捉性変異体PTPH1(D811A)により捕捉された293細
胞溶解物タンパク質の抗ホスホチロシンイムノブロット解析によるin vit
roでのPTPH1基質としてのpp97/VCPの同定を示す。
【図7】 図7はpp97/VCPのアミノ酸配列を示す(ncbiデータベースアクセ
ッション番号Z14044)[配列番号:42]。
【図8】 図8は基質捕捉性変異体PTPH1(Y676F/D811A)により捕捉さ
れ、これと共免疫沈降された293細胞タンパク質のイムノブロット解析による
in vivoでのPTPH1基質としてのpp97/VCPの同定を示す。
【図9】 図9はPTPH1により認識されるVCPチロシン残基のVCPのC末端領域
への局在化を示す。
【図10】 図10は野生型PTPH1を発現する安定なNIH3T3細胞株におけるVC
Pの脱リン酸化を示す。
【図11】 図11は野生型PTPH1を発現する安定なNIH3T3細胞株におけるチロ
シンリン酸化タンパク質の全体的プロフィルを示す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項36
【補正方法】変更
【補正の内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/15 C12N 1/21 4C084 1/19 9/16 B 4H045 1/21 C12Q 1/42 5/10 G01N 33/15 Z 9/16 33/50 Z C12Q 1/42 33/566 G01N 33/15 C12N 15/00 ZNAA 33/50 5/00 A 33/566 A61K 37/52 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU, ZA,ZW (72)発明者 チャン,シャオ−フイ アメリカ合衆国 カリフォルニア 92129 サン ディエゴ,ババリアン ドライブ 13415 Fターム(参考) 2G045 AA40 BB20 DA20 DA36 DA78 FB01 FB03 4B024 AA01 AA11 AA12 BA11 CA06 CA07 DA02 DA05 DA12 EA02 EA04 FA02 GA11 HA11 4B050 CC04 CC05 DD07 LL01 LL03 4B063 QA19 QA20 QQ08 QQ13 QR13 QS02 QS33 QX02 4B065 AA01X AA57X AA72X AA90X AA93Y AB01 BA02 CA31 CA44 CA46 4C084 AA01 AA07 BA03 BA22 BA44 DC25 NA14 ZB212 ZB262 4H045 AA10 AA30 BA41 CA11 CA40 DA89 EA22 EA50 FA74

Claims (54)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイン
    の不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1
    分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され;かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼ。
  2. 【請求項2】 少なくとも1つの野生型チロシン残基が、アラニン、システ
    イン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシ
    ン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン
    、プロリン、アルギニン、バリンおよびトリプトファンからなる群より選ばれた
    アミノ酸と置換される、請求項1記載の基質捕捉性変異体。
  3. 【請求項3】 置換される少なくとも1つのチロシン残基が、プロテインチ
    ロシンホスファターゼ触媒ドメインに位置する、請求項1記載の基質捕捉性変異
    体。
  4. 【請求項4】 置換される少なくとも1つのチロシン残基が、プロテインチ
    ロシンホスファターゼ活性部位に位置する、請求項1記載の基質捕捉性変異体。
  5. 【請求項5】 少なくとも1つのチロシン残基が、フェニルアラニンと置換
    される、請求項1記載の基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼ。
  6. 【請求項6】 置換される少なくとも1つのチロシン残基が、プロテインチ
    ロシンホスファターゼ保存残基である、請求項1記載の基質捕捉性変異体プロテ
    インチロシンホスファターゼ。
  7. 【請求項7】 保存残基が、ヒトPTPH1の676位のアミノ酸であるチ
    ロシンに対応する、請求項6記載の基質捕捉性変異体。
  8. 【請求項8】 少なくとも1つのチロシン残基が、プロテインチロシンホス
    ファターゼと少なくとも1つの基質分子とを含有してなる複合体を安定化させる
    アミノ酸と置換される、請求項6記載の基質捕捉性変異体。
  9. 【請求項9】 変異PTPH1を含有してなる、請求項1記載の基質捕捉性
    変異体。
  10. 【請求項10】 PTP1B、PTP−PEST、PTPγ、MKP−1、
    DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX10、SHP2、PTP−PEZ
    、PTP−MEG1、LC−PTP、TC−PTP、CD45、LARおよびP
    TPH1からなる群より選ばれた変異プロテインチロシンホスファターゼを含有
    してなる、請求項1記載の基質捕捉性変異体。
  11. 【請求項11】 231位のアミノ酸がセリン残基と置換される変異された
    PTP−PESTホスファターゼを含有してなる、請求項1記載の基質捕捉性変
    異体。
  12. 【請求項12】 a)チロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体プロ
    テインチロシンホスファターゼとの間の複合体の形成を可能にするのに十分な条
    件かつ時間で、少なくとも1つのチロシンリン酸化タンパク質を含有する試料と
    (i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変のアスパラ
    ギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満ま
    でのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ(ii)少なくとも1つ
    の野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換されるものである、
    少なくとも1つの基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとを組み
    合わせる工程、ならびに b)チロシンリン酸化タンパク質と基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスフ
    ァターゼとを含有してなる複合体の有無を測定する工程、ここで、複合体の存在
    がチロシンリン酸化タンパク質がそれと複合体を形成するプロテインチロシンホ
    スファターゼの基質であることを示す、 を含む、プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タン
    パク質を同定する方法。
  13. 【請求項13】 基質捕捉性変異体が、PTP1B、PTP−PEST、P
    TPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX10、SH
    P2、PTP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、TC−PTP、CD
    45、LARおよびPTPH1からなる群より選ばれた変異体プロテインチロシ
    ンホスファターゼを含有する、請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 試料が、チロシンリン酸化タンパク質を発現する細胞を含
    有する、請求項12記載の方法。
  15. 【請求項15】 細胞が、基質をコードする少なくとも1つの核酸分子とト
    ランスフェクトされている、請求項14記載の方法。
  16. 【請求項16】 少なくとも1つの基質捕捉性変異体プロテインチロシンホ
    スファターゼが、細胞により発現される、請求項12記載の方法。
  17. 【請求項17】 細胞が、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファタ
    ーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子によりトランスフェクトされている
    、請求項16記載の方法。
  18. 【請求項18】 試料が、(i)プロテインチロシンホスファターゼの基質
    であるチロシンリン酸化タンパク質と(ii)基質捕捉性変異体プロテインチロシ
    ンホスファターゼとを発現する細胞を含有する、請求項12記載の方法。
  19. 【請求項19】 細胞が、(i)基質をコードする少なくとも1つの核酸と
    (ii)基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする少なく
    とも1つの核酸とによりトランスフェクトされている、請求項18記載の方法。
  20. 【請求項20】 試料が、少なくとも1つのチロシンリン酸化タンパク質を
    含む細胞溶解物を含有する、請求項12記載の方法。
  21. 【請求項21】 細胞溶解物が、チロシンリン酸化タンパク質をコードする
    少なくとも1つの核酸によりトランスフェクトされた細胞由来である、請求項2
    0記載の方法。
  22. 【請求項22】 細胞溶解物が、プロテインチロシンキナーゼをコードする
    少なくとも1つの核酸によりトランスフェクトされた細胞由来である、請求項2
    0記載の方法。
  23. 【請求項23】 少なくとも1つの基質捕捉性変異体プロテインチロシンホ
    スファターゼが、細胞溶解物内に存在する、請求項12記載の方法。
  24. 【請求項24】 細胞溶解物が、基質捕捉性変異体プロテインチロシンホス
    ファターゼをコードする少なくとも1つの核酸によりトランスフェクトされた細
    胞由来である、請求項23記載の方法。
  25. 【請求項25】 チロシンリン酸化タンパク質が、VCP、p130cas
    EGPレセプター、p210 bcr:abl、MAPキナーゼ、Shcおよび
    インスリンレセプターからなる群より選ばれたものである、請求項12記載の方
    法。
  26. 【請求項26】 (a)候補薬剤の非存在下および存在下に、基質の検出可
    能な脱リン酸化が発生するのに十分な条件かつ時間で、プロテインチロシンホス
    ファターゼと該プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸
    化タンパク質とを接触させる工程、ここでプロテインチロシンホスファターゼの
    基質であるチロシンリン酸化タンパク質が、(1)チロシンリン酸化タンパク質
    と基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとの間の複合体の形成を
    可能にするのに十分な条件かつ時間で、少なくとも1つのチロシンリン酸化タン
    パク質を含有する試料と(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ド
    メインの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさない
    が、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、か
    つ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と
    置換されるものである、少なくとも1つの基質捕捉性変異体プロテインチロシン
    ホスファターゼとを組み合わせる工程;ならびに(2)チロシンリン酸化タンパ
    ク質と基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとを含有してなる複
    合体の有無を測定し、ここで、複合体の存在が、チロシンリン酸化タンパク質が
    それと複合体を形成するプロテインチロシンホスファターゼの基質であることを
    示すものである工程、により同定される;ならびに (b)薬剤の非存在下での基質の脱リン酸化のレベルを、薬剤の存在下での基質
    の脱リン酸化のレベルと比較する工程、ここで、基質の脱リン酸化のレベルにお
    ける差異が、該薬剤がプロテインチロシンホスファターゼと基質との間の相互作
    用を変えることを示す、 を含む、プロテインチロシンホスファターゼと、該プロテインチロシンホスファ
    ターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質との間の相互作用を変える薬剤
    を同定する方法。
  27. 【請求項27】 (a)候補薬剤の非存在下および存在下に、チロシンリン
    酸化タンパク質と基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼとの間の
    複合体の形成を可能にするのに十分な条件かつ時間で、プロテインチロシンホス
    ファターゼと該プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸
    化タンパク質とを接触させる工程、ここで基質捕捉性変異体プロテインチロシン
    ホスファターゼが、(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
    ンの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、
    1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換される、かつ
    (ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置
    換されるものである、プロテインチロシンホスファターゼを含有する;ならびに
    、 (b)薬剤の非存在下での複合体形成のレベルを、薬剤の存在下での複合体形成
    のレベルと比較する工程、ここで、複合体形成のレベルにおける差異が、薬剤が
    プロテインチロシンホスファターゼと基質との間の相互作用を変えることを示す
    、 を含む、プロテインチロシンホスファターゼと、該プロテインチロシンホスファ
    ターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質との間の相互作用を変更する薬
    剤を同定する方法。
  28. 【請求項28】 (i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメ
    インの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが
    、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換される、か
    つ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と
    置換されるものである、プロテインチロシンホスファターゼの基質捕捉性変異体
    を被験体に投与する工程を含み、それにより基質捕捉性変異体プロテインチロシ
    ンホスファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との相互作用が該チロシンリン
    酸化タンパク質の活性を低減する、チロシンリン酸化タンパク質の活性を低減す
    る方法。
  29. 【請求項29】 チロシンリン酸化タンパク質が、VCP、p130cas
    EGFレセプター、p210 bcr:abl、MAPキナーゼ、Shcおよび
    インスリンレセプターからなる群より選ばれたものである、請求項28記載の方
    法。
  30. 【請求項30】 プロテインチロシンホスファターゼが、PTP1B、PT
    P−PEST、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、P
    TPX10、SHP2、PTP−PEZ、PTP−MEG1、LC−PTP、T
    C−PTP、CD45、LARおよびPTPH1からなる群より選ばれたもので
    ある、請求項28記載の方法。
  31. 【請求項31】 (i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメ
    インの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが
    、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ
    (ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置
    換されるものである、基質捕捉性PTP−PESTの変異体を、p130cas
    発現しうる哺乳動物に投与する工程を含み、 それにより該基質捕捉性変異体がp130cas と相互作用し、p130cas のリ
    ン酸化に関連する少なくとも1つのガン遺伝子の悪性転換効果を低減する、 p130cas のリン酸化に関連する少なくとも1つのガン遺伝子の悪性転換効果
    を低減する方法。
  32. 【請求項32】 ガン遺伝子が、v−crk、v−srcおよびc−Ha−
    rasからなる群より選ばれたものである、請求項31記載の方法。
  33. 【請求項33】 (i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメ
    インの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが
    、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ
    (ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置
    換されるものである、基質捕捉性PTP−PESTの変異体を、p130cas
    発現しうる哺乳動物に投与する工程を含み、 それにより該基質捕捉性変異体がp130cas と相互作用し、p130cas に関
    連するシグナル伝達複合体の形成を低減する、 p130cas に関連するシグナル伝達複合体の形成を低減する方法。
  34. 【請求項34】 (i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメ
    インの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが
    、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ
    (ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置
    換されるものである、プロテインチロシンホスファターゼの基質捕捉性変異体を
    哺乳動物に投与する工程を含む、プロテインチロシンホスファターゼの投与また
    は過剰発現に関連する細胞傷害性効果を低減する方法。
  35. 【請求項35】 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
    ンの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、
    1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換される;なら
    びに b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    される、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする単離された核
    酸分子。
  36. 【請求項36】 請求項35記載の核酸分子に相補的な少なくとも15個の
    連続的なヌクレオチドを含有してなるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  37. 【請求項37】 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
    ンの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、
    1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼに融合されたポリペプチド
    配列を含有してなる融合タンパク質。
  38. 【請求項38】 ポリペプチドが、酵素またはそのバリアントもしくはフラ
    グメントである、請求項37記載の融合タンパク質。
  39. 【請求項39】 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼに融
    合されたポリペプチド配列が、プロテアーゼにより切断されうる、請求項37記
    載の融合タンパク質。
  40. 【請求項40】 ポリペプチド配列が、リガンドに対するアフィニティーを
    有するアフィニティータグポリペプチドである、請求項37記載の融合タンパク
    質。
  41. 【請求項41】 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
    ンの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、
    1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする核酸に使用可
    能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含有してなる組換え発現構築物
  42. 【請求項42】 プロモーターが調節プロモーターである、請求項41記載
    の発現構築物。
  43. 【請求項43】 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼが、
    第2核酸配列のポリペプチド産物との融合タンパク質として発現される、請求項
    41記載の発現構築物。
  44. 【請求項44】 第2核酸配列のポリペプチド産物が、酵素である、請求項
    43記載の発現構築物。
  45. 【請求項45】 発現構築物が、組換えウイルス発現構築物である、請求項
    41記載の組換え発現構築物。
  46. 【請求項46】 請求項41〜45いずれか1つに記載の組換え発現構築物
    を含有してなる宿主細胞。
  47. 【請求項47】 宿主細胞が、原核細胞である、請求項46記載の宿主細胞
  48. 【請求項48】 宿主細胞が、真核細胞である、請求項46記載の宿主細胞
  49. 【請求項49】 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメイ
    ンの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、
    1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼをコードする核酸配列に使
    用可能に連結される少なくとも1つのプロモーターを含有してなる組換え発現構
    築物を含有してなる宿主細胞を培養する工程、 を含む、組換え基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼを産生する
    方法。
  50. 【請求項50】 プロモーターが、調節プロモーターである、請求項48記
    載の方法。
  51. 【請求項51】 請求項45記載の組換えウイルス発現構築物で感染された
    宿主細胞を培養する工程、 を含む、組換え基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼを産生する
    方法。
  52. 【請求項52】 製薬上許容されうる担体または希釈剤と組み合わせて、 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変のアスパラギ
    ン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満まで
    のKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼ、 を含有してなる医薬組成物。
  53. 【請求項53】 製薬上許容されうる担体または希釈剤と組み合わせて、 a)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変のアスパラギ
    ン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさないが、1分あたり1未満まで
    のKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、かつ b)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸と置換
    されるものである、 基質捕捉性変異体プロテインチロシンホスファターゼと相互作用する薬剤を含有
    してなる医薬組成物。
  54. 【請求項54】 a)(i)野生型プロテインチロシンホスファターゼ触媒
    ドメインの不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化をもたらさな
    いが、1分あたり1未満までのKcatの減少をもたらすアミノ酸と置換され、
    かつ(ii)少なくとも1つの野生型チロシン残基がリン酸化され得ないアミノ酸
    と置換されるものである、少なくとも1つの基質捕捉性変異体プロテインチロシ
    ンホスファターゼ;ならびに b)プロテインチロシンホスファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との間の
    複合体の有無の検出における使用に適切な補助薬剤、 を含有してなる、プロテインチロシンホスファターゼのチロシンリン酸化タンパ
    ク質基質を同定するためのキット。
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