【発明の詳細な説明】
非対称ハンマーヘッド型リボザイム
〔序論〕
ハンマーヘッド型リボザイムは、多数の小環状植物病原性RNA中の自己開裂
性モチーフとして見出された(Buzayanら,1986;Hutchinsら,1986;Symonds,199
2)。Uhlenbeck(Uhlenbeck,1987)は、リボザイムが、一定の二次構造と厳密な
配列要件とを有する非常に特異的な基質上で、真の酵素として二分子的に作用し
うることを示した。HaseloffおよびGerlach(Haseloffら,1988)は、該ハンマ
ーヘッドが、該酵素鎖上に保存ヌクレオチドを有する形態に分割され、該基質に
対する唯一の配列要件は、開裂部位の直ぐ5'側のGUCであることを記載してい
る。この配列要件は過度に限定的であることが示されており、活性のためには、
開裂部位の直ぐ5'側の配列UHが要求されるにすぎなかった(Perrimanら,1992
;Shimayamaら,1995;Zoumadakisら,1995)(H=A,UまたはC)。この立体配置
は、1988年以降、ハンマーヘッド型リボザイムの設計のための範例となっている
。ハンマーヘッド型リボザイムの開裂機構は、普通は通常の酵素機構(すなわち
、可逆的酵素結合、開裂工程、可逆的な生成物の解離)に従って分析され、その
生成物は該反応中で消費されない(Hertelら,1994)。開裂工程は、ヘリックスI
およびIIIの長さおよび配列に実質的に左右されないと考えられている(Fedorら
,1992)。本発明者ら(Hendryら,1995)は既に、開裂速度定数がヘリックスI
およびIIIの長さおよび/または配列に依存しうることを示唆する多数の観察を
行なっている。
大きな触媒速度を有するリボザイムの必要性は大きい。高効率リボザイムに対
する要求は、修飾されたオリゴヌクレオチドを有するリボザイム化合物の場合に
は、出発物質の費用上の観点から特に重要である。現在までに、研究者らは、5'
および3'の両方のハイブリダイズ性(hybridizing)アーム(それぞれ、ヘリッ
クスIおよびIII)の長さが様々のハンマーヘッド型リボザイムを製造している
が(Denmanら,1995;Ellisら,1993;Fedorら,1990;
Gastら,1994;Homannら,1994;Zoumadakisら,1995)、本発明は、劇的な速度の
増加を示す特異的非対称ハンマーヘッド型化合物の最初の開示である。
〔発明の概要〕
本発明は、後記の詳細な説明において定義される式:
で表される化合物に関する。該化合物は、デリバリー剤に共有結合していてもよ
い。また、本発明は、許容されるキャリアと共に該化合物を含んでなる組成物を
包含する。本発明はまた、RNA標的配列の開裂方法であって、該標的配列を前
記化合物と接触させることを含んでなる方法を包含する。さらに、ある特定のR
NAに関連したヒトまたは動物における疾患の治療方法であって、前記のヒトま
たは動物に該化合物を投与することを含んでなる方法も包含する。さらに、本発
明は、該化合物を含んでなる診断試薬も包含する。
〔図面の簡単な説明〕
図の注釈
図 1
相補的基質と複合体を形成しているハンマーヘッド型リボザイムの概要図。該
基質とリボザイムとの間で形成されるヘリックスはIおよびIIであり、ヘリック
スIIは該リボザイム内で形成される。開裂部位において、H=C、UまたはAで
ある。ヌクレオチドのいくつかは、Hertelら(Hertelら,1992)の番号付けを用
いて表示されている。
図 2
命名系を例示するための、いくつかのクルッペル基質およびリボザイムの
配列および構造。大文字はRNAであり、小文字はDNAである(配列番号5、7
〜13および15)。
図 3
ヘリックスIIIの長さを一定(10bp)にした場合のヘリックスIの長さに対す
る速度定数の依存性。開裂部位の3'側に種々のヌクレオチド数を有し5'側に10ヌ
クレオチドを有する基質が、それらの対応リボザイムにより開裂される;■Kr
RA-10/10。反応条件;10mMMgCl2、37℃、pH6.42。
図 4
ヘリックスIIIの長さを一定(10bp)にした場合のヘリックスIの長さに対す
る速度定数の依存性。開裂部位の3'側に種々のヌクレオチド数を有し5'側に10ヌ
クレオチドを有する基質が、それらの対応リボザイムにより開裂される;■Kr
RA-10/10;●TATRB-10/10。反応条件;10mMMgCl2、37℃、pH7.1
3。
図 5
ヘリックスIIIの長さを一定(10bp)にした場合のヘリックスIの長さに対す
る速度定数の依存性。開裂部位の3'側に種々のヌクレオチド数を有し5'側に10ヌ
クレオチドを有する基質が、それらの対応リボザイムにより開裂される;■Kr
RA-10/10;▲KrRB-10/10;●TATRB-10/10。反応条件;10mMMgC
l2、37℃、pH8.00。
図 6
スキーム1および2は反応工程を示す。
図 7
基質中のC17の3'側のヌクレオチド数に対する速度定数の依存性。以下の系が
示されている;■OURA-8/8+OUS;□OURA-8/8+OUCS;●OUR
A-6/8+OUS;○OURA-6/8+OUCS。反応条件;10mMMgCl2、25
℃、pH7.60。
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、式:
で表される化合物に関する。この化合物中、それぞれのNは、同一または異なっ
ていてもよいヌクレオチドであって、その糖、塩基またはリン酸において置換ま
たは修飾されていてもよいヌクレオチド(ただし、すべてのNがリボヌクレオチ
ドとなることはない)を表す。ハイブリダイズ性アーム3'-(N)nNNNNNN
AおよびNNN(N)n'5'はそれぞれ、開裂されるRNA標的配列と相補的な予
め決められた配列を有するオリゴヌクレオチドを表す。該アーム中、nおよびn
'は、該オリゴヌクレオチドのヌクレオチド数を定める整数を表し(ただし、nは
1〜5であり、n'は1〜3である)、それぞれの*は、その両側に位置するヌクレオ
チド間の塩基対合を表す。該化合物中、各実線は、その両側に位置するヌクレオ
チド間の共有結合を与える化学結合を表す。記号「a」は、ヌクレオチド数を定
める整数を表す(ただし、aは0または1となることが可能であり、0の場合、(
N)aの5'側に位置するAは、(N)aの3'側に位置するNに結合している)。該化合
物のステムループにおいて、それぞれのmおよびm'は、2より大きな整数を表
し、Pは、非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチドリンカー(N)bを表し、(
N)bは、bが3以上の整数を表す場合に存在しうるオリゴヌクレオチドを表す。
本発明の好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチド3'-(N)nNNNNNN
Aは、3'-(Nn)NNNNNCAである。もう1つの好ましい実施態様では、(N
)aが存在しない。化合物中、(N)bの整数bは、4以上であってもよく、mおよ
びm'のそれぞれは4であってもよい。
1つの実施態様では、該化合物中のそれぞれのNは、デオキシリボヌクレオチ
ドであってもよい。あるいは、3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N)n'5'
のそれぞれのNは、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。さらにもう1つ
の実施態様では、ヌクレオチドN、A、C、GまたはUのいくつかは、O−メチ
ルまたはO−アルキルリボヌクレオチドである。該化合物のRNA標的配列は、
ウイルスRNA標的配列であってもよい。
前記化合物は、デリバリー剤に共有結合していてもよい。デリバリー剤は、ペ
プチド、ペプチド類縁体、コレステロール、ステロイド、コレステロール類縁体
、脂肪、ビタミン、ビオチン、葉酸、レチノイン酸、タンパク質、フェリチン、
LDL、インスリン、抗体、糖またはオリゴ糖、ポリエチレングリコールまたは
アミノ酸のホモポリマーもしくはコポリマーである。
本発明はまた、許容されるキャリアと共に前記化合物を含んでなる組成物を包
含する。許容されるキャリアは、陽イオン性脂質、コレステロール、コレステロ
ール誘導体、リポソーム、またはアミノ酸のホモポリマーもしくはコポリマーで
あってもよい。
本発明はまた、原核ホスト細胞または真核ホスト細胞であってもよい前記化合
物を含んでなるホスト細胞を包含する。原核ホストは、大腸菌(E.coli)ホスト
細胞であってもよい。真核ホスト細胞は、サルCOSホスト細胞、チャイニーズ
ハムスター卵巣ホスト細胞、哺乳動物ホスト細胞、植物ホスト細胞または酵母細
胞であってもよい。
本発明はまた、RNA標的配列の開裂方法であって、該標的配列を前記化合物
と接触させることを含んでなる方法を包含する。さらに、ある特定のRNAに関
連したヒトまたは動物における疾患の治療方法であって、前記のヒトまたは動物
に該化合物を投与することを含んでなる方法も包含する。さらに、本発明は、該
化合物を含んでなる診断試薬も包含する。
通常は、ハンマーヘッド型リボザイムと比較的短いヘリックスIおよびIIを形
成する基質が、より長い結合ヘリックスを形成する基質より迅速に開裂される(
表1を参照されたい)。リボザイム一基質複合体において迅速なコンホメーショ
ン変化を可能とするためには、1個またはそれ以外め個数の結合ヘリックスが比
較的弱くなる必要があった。2個の独立した非対称(10+10)ハンマーヘッド型
リボザイムは、5ヌクレオチドのヘリックスIIIを形
成する基質より数桁速い速度で5ヌクレオチドのヘリックスIを形成する基質を
開裂することが判明した(それぞれの場合の残りのヘリックスは10ヌクレオチド
である)。この現象は、すべてRNAおよびDNAを備えた(all-RNA and D
NA-armed)リボザイムで認められた。ヘリックスIおよびIIIの長さが、リボ
ザイムのハイブリダイズ性アームの長さによって限定される場合に同様の結果が
得られ、5'アーム中に5個のハイブリダイズ性ヌクレオチドを有し3'アーム中に
10個のハイブリダイズ性塩基を有する非対称リボザイムは、対称な21両体の基質
を逆(10/5)非対称リボザイムより100倍以上速く開裂する。標的RNA中の好
ましい開裂部位は、配列「UH」、好ましくは、GUC、GUU、GUA、UUA
およびUUCを有する。適当な反応条件は、例えば、約4℃〜約60℃、好ましく
は約10℃〜45℃、より好ましくは約20℃〜43℃の温度、約6.0〜約9.0のpH、お
よび0.1〜100mM(好ましくは0.2〜20mM、より好ましくは0.5〜5mM)の濃
度の二価陽イオン(例えば、Mg2+)を含むことが可能である。前記化合物の配列
3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N)n'5'のヌクレオチドは、本明細書に
記載の標的RNA中のヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能にするの
に十分な任意のヌクレオチド数および配列となることが可能である。さらに、こ
れらの化合物は、10〜100塩基長のアンチセンス分子に共有結合していてもよい
。哺乳動物または植物中のRNAとハイブリダイズしうるアンチセンス配列は、
よく知られている(Shewmakerら,1992年4月21日付け発行の米国特許第5,107,065
号を参照されたい)。該リボザイムは、代謝回転を示す酵素として作用するため
、基質に対するリボザイムの比率は非常に様々となる可能性がある。
UH部位などの適当な開裂部位を含有する標的RNAを、前記化合物と共にイ
ンキュベートすることができる。前記化合物のヌクレオチド配列3'-(N)nNN
NNNNAおよびNNN(N)n'5'は、それらの基質とハイブリダイズするよう
に選択する。それらは、標的RNA中の開裂部位に隣接するヌクレオチド配列と
相補的となるように選択することができる。該リボザイムまたはリボザイム組成
物とその基質とのインキュベーションの際に、該リボザイムおよび基質中の対応
ヌクレオチド間の塩基対合の結果、酵素/基質複合体が
形成される。基質中の開裂部位に隣接する前記化合物の3'-(N)nNNNNNN
AおよびNNN(N)n'5に相補的なヌクレオチド配列は、塩基対合により二本
鎖デュプレックスを形成することが可能である。この塩基対合は、当該技術分野
でよく知られている[例えば、Sambrook,1989を参照されたい]。該ヌクレオチド
間の二本鎖デュプレックスの形成は、ハイブリダイゼーションと称されることも
ある[Sambrook,1989]。該リボザイムとその基質との間のハイブリダイゼーショ
ンまたはデュプレックス形成の程度は、例えば、一方または両方の成分を放射能
標識などで標識し、ついで非変性条件下で該反応混合物をポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動に付すことにより、容易に評価することができる[Sambrook,1989]。
該化合物は、その標的と相補的であることが好ましい。該化合物とのインキュベ
ーションの際に標的が特異的に開裂される場合には、該化合物は活性であり、本
発明の範囲内に含まれる。したがって、保存領域中に置換または修飾されたヌク
レオチドを含有するリボザイムを、エンドヌクレアーゼ活性に関して常法により
簡便に試験することができる。
本発明に関連した分野の当業者には容易に理解されるとおり、標的RNAの開
裂は、当該技術分野でよく知られている種々の方法[例えば、Sambrook,1989を
参照されたい]により容易に評価することができる。例えば、変性条件下、アク
リルアミド、アガロースまたは他のゲル系上で反応産物(基質が放射能標識され
ている場合)を移動させ、ついで該ゲルをオートラジオグラフィーまたは開裂断
片の検出のための他の分析技術に付すことにより、開裂を評価することができる
[Sambrook,1989]。
もう1つの実施態様では、本発明は、許容されるキャリアと共に前記化合物を
含んでなる組成物を提供する。本発明はまた、原核ホスト細胞または真核ホスト
細胞[例えば、酵母細胞または酵母プロトプラスト、大腸菌(E.coli)ホスト細
胞、サルホスト細胞(例えば、COS)、チャイニーズハムスター卵巣ホスト細胞
、哺乳動物ホスト細胞、植物ホスト細胞または植物プロトプラストホスト細胞]
であってもよい前記化合物を含有するホスト細胞を提供する。
もう1つの実施態様では、該組成物は、前記のとおり、許容されるキャリアと
一緒になっている。本発明はまた、該オリゴヌクレオチドが、そのヌクレオチド
中の糖、塩基またはリン酸基において置換または修飾されていてもよいヌクレオ
チドを含むRNA−DNAハイブリッド分子である本明細書中に前記した組成物
を提供する。該オリゴヌクレオチドは、ハイブリッドRNA−DNA分子である
ことが好ましい。しかしながら、エンドヌクレアーゼ活性が失われない限り、該
ヌクレオチド中の他の置換または修飾が可能である。そのような誘導体または修
飾は、後記で説明する。
該オリゴヌクレオチド化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチ
ド、デオキシリボヌクレオチド・リボヌクレオチドハイブリッド、または糖、リ
ン酸または塩基中で修飾されたヌクレオチドを含むこと、あるいはそれらのいず
れかの混合物、本明細書中に記載のそれらの誘導体を含むオリゴヌクレオチドを
含むことが可能である。フランキング配列3'-(N)nNNNNNNAおよびNN
N(N)n'5'は、分解に対するリボザイムの安定性を最適化するように選択する
ことができる。例えば、デオキシリボヌクレオチドは、リボヌクレアーゼの作用
に対して抵抗性である。修飾された、ヌクレオチドの塩基、糖またはリン酸結合
(例えば、3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N)n'5'の糖リン酸鎖中のホ
スホルアミダートまたはホスホロチオアート結合)もまた、ヌクレアーゼの攻撃
に対する抵抗性を付与しうる。また、ヌクレオチドをリボヌクレオチド、デオキ
シリボヌクレオチドまたはそれらの組合わせのみの形態とすることにより、個々
の場合において結合親和性を最適化することができる。場合によっては、標的R
NAの開裂を最大にするために、配列3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N
)n'5'の組成物を最適化する必要があるかもしれない。標的配列とハイブリダイ
ズするフランキングヌクレオチド配列を有するリボザイムの開裂活性は、専らデ
オキシリボヌクレオチドよりなることが可能である。そのような場合には、最適
化は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドとの混合物をヌクレオチド
配列3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N)n'5'中に提供することを含むこ
とが可能である。例えば、標的RNA中の開裂部位付近のリボザイム中のヌクレ
オチド
はリボヌクレオチドであってもよい。
該リボザイムを分解に対して安定化させるために、配列3'-(N)nNNNNN
NAおよびNNN(N)n'5'のそれぞれの3'および5'末端、または該リボザイム
の3'および5'末端を修飾することができる。例えば、エキソヌクレアーゼの攻撃
、特に、3'-5'進行性エキソヌクレアーゼ活性を防ぐために、保護基を付加する
ことができる。例えば、置換または非置換アルキル、置換または非置換フェニル
、置換または非置換アルカノイルから保護基を選択することができる。置換基は
、C2-C5アルキル;F、C、Brなどのハロゲン;ヒドロキシ;アミノ;C1-
C5アルコキシなどから選択することができる。あるいは、ヌクレアーゼの攻撃
に対して抵抗性のホスホロチオアート、メチルホスホナート、ホスホルアミダー
トなどのヌクレオチド類縁体またはヌクレオシド誘導体(例えば、リボース部位
のα−アノマー)を、末端保護基として使用することができる。保護基は、3'-3
'チミジン結合、3'-3'アベイシック(abasic)リボースまたはデオキシリボース
結合、グアノシンキャップなどにおける5'-5'三リン酸結合などの逆方向結合で
あってもよい。
あるいは、他のヌクレアーゼに対するリボザイム分子の感受性を変化させる基
を、該リボザイムの3'および/または5'末端中に挿入することができる。例えば
、該リボザイムに結合した9−アミノーアクリジンは、ヌクレアーゼの攻撃に対
する抵抗性を該リボザイム分子に付与するように末端保護基として作用し、およ
び/または、該リボザイムのエンドヌクレアーゼ加水分解活性を補助するように
インターカレート剤として作用しうる。他の種々の化学基(例えば、スペルミン
またはスペルミジン)を同様に使用しうると容易に理解されるであろう。
本発明の化合物を、タンパク質、ステロイド、ホルモン、脂質、核酸配列、イ
ンターカレート分子(例えばアクリジン誘導体、例えば9−アミノアクリジン)
などの親和性剤に共有結合または非共有結合させて、基質ヌクレオチド配列に対
する結合親和性を修飾したり、あるいは標的細胞に対する親和性または細胞画分
の局在性などを増加させることができる。例えば、標的配列のハイブリダイゼー
ションおよび開裂が生じうるように標的核酸と並列にリ
ボザイムを架橋するのを補助しうるRNA結合性ペプチドまたはタンパク質に、
本発明のリボザイムを結合させることができる。もう1つの誘導体として、ある
特定のアプタマー(aptamer)基質に対する結合に際して組織または細胞特異的
に該リボザイムが活性化されるように、該化合物に結合したアプタマーを挙げる
ことができよう(Huizengaら,1995)。また、該アプタマーは、ある特定の組織、
細胞または細胞画分(例えば、トロンビン)に該リボザイムを局在化するための
親和性剤として機能することも可能である(Brachtら,1995,1994)。基質に対す
る親和性を増加させるために、配列3'-(N)nNNNNNNAおよびNNN(N)
n'5'のそれぞれの3'および5'末端、あるいは該リボザイムの3'および5'末端に
ヌクレオチド配列を付加することができる。そのような追加的なヌクレオチド配
列は、分子内でフォールディングした基質との相互作用を可能にしうる標的配列
との三重らせんを形成することが可能である[Strobel,1991]。あるいは、一本
鎖または二本鎖のいずれかのDNAと結合して該基質中のヌクレオチドと塩基対
、トリプレットまたはクワドルプレット(quadruplet)相互作用を引き起こす、
追加的ヌクレオチド配列内の修飾塩基(Principles of Nucleic Acid Structure
[Saenger,1984]に記載の非天然または修飾塩基)を使用することができる。
適当な塩基には、イノシン、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシルおよび当
該技術分野でよく知られている他の塩基(例えば、Principles of Nucleic Acid
Structure[Saenger,1984]に記載されているもの)が含まれよう。
本発明の化合物は、例えばCarruthersら、FoehlerらおよびSproatら[Carruth
ersら,1987;Foehlerら,198G;Sproat,1984]に記載されている当該技術分野で
公知のヌクレオチド合成技術により製造することができる。一般には、そのよう
な合成方法は、活性化され保護されたヌクレオチド塩基を連続的にカップリング
させて、保護ヌクレオチド鎖を得ることを含み、ついで適当な処理により保護基
を除去することができる。好ましくは、自動合成装置[例えば、Applied Biosys
tems(Perkin Elmerの一部門)、PharmaciaまたはMillipore製のもの]上で該化合
物を合成する。あるいは、本発明の
リボザイムを、ホスト細胞中またはT3、SP6またはT7 RNAポリメラーゼな
どの酵素を利用する無細胞系中における、該リボザイムをコードするヌクレオチ
ド配列の転写により製造することが可能であり、また、修飾ヌクレオシド三リン
酸オリゴヌクレオチドを用いて製造したり、あるいは転写後に修飾することが可
能である。
ヌクレオシド5'−O−(1−チオトリホスファート)を使用するインビトロ転写
により、RNAのホスホジエステル結合をホスホロチオアート結合で置換するこ
とができる。T7 RNAポリメラーゼは、α−ホスホルチオトリホスファートS
p異性体を特異的に取込み、この場合、立体配置の反転を伴い、該ホスホロチオ
アート結合のRp異性体を与える。ある与えられたヌクレオチドに隣接するホス
ホロチオアート結合で完全に置換された転写産物の製造法、約1個のホスホロチ
オアート結合を含有する部分的に置換された転写産物の製造法、ある与えられた
ヌクレオチドに隣接するホスホロチオアート結合で完全に置換された転写産物の
製造法、または1分子当たり約1個のホスホロチオアート結合を含有する部分的
に置換された転写産物の製造法が、RuffnerおよびUhlenbeck(1990)に記載され
ている。Conradら(1995)は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチ
ド(ホスホロチオアート結合を有するもの及び有さないもの)、また、リボヌクレ
オチドおよび2'−O−メチルヌクレオチド(ホスホロチオアート結合を有するも
の及び有さないもの)を含有するキメラ転写産物を製造するためにT7 RNAポ
リメラーゼを使用する方法を記載している。これらの方法は、50%以下のデオキ
シリボヌクレオチド、および58%以下の2'−O−メチルヌクレオチドを含有する
転写産物を与えることが示されている。Aurupら(1992)は、2'-フルオロ−2'−
デオキシウリジン、2'−フルオロ−2'−デオキシシチジンおよび2'−アミノ−2'
−デオキシウリジンを含有する転写産物を製造するためにT7ポリメラーゼを使
用する方法を記載している(Aurup,1992;Conrad,1995;Rufrner,1990)。さらに
別の方法については、後記で説明する。
前記化合物中に表されているヌクレオチドは、糖、塩基および一リン酸基また
はホスホジエステル結合を含む。したがって、糖、塩基、一リン酸基ま
たはホスホジエステル結合のレベルのヌクレオチド誘導体または修飾体を製造す
ることが可能である。前記化合物中のヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたは
RNA/DNAハイブリッドであることが好ましいが、エンドヌクレアーゼ活性
が失われない限り、ヌクレオチド中の他の置換または修飾が可能である。
本発明の1つの態様では、ヌクレオチドがリボヌクレオチドまたはデオキシリ
ボヌクレオチドとなるように、ヌクレオチドの糖が、それぞれ、リボースまたは
デオキシリボースとなることが可能である。さらに、当該技術分野でよく知られ
ている方法に従い、ヌクレオチドの糖部分を修飾することができる[例えば、Sae
nger,1984;Sober,1970を参照されたい]。本発明は、ヌクレオチドの糖部分に
対する種々の修飾を包含するが、これは、そのような修飾が、該リボザイムの開
裂活性を損なわない場合に限られる。修飾された糖には、例えば、ハロゲン、ア
ミノまたはアジド基による第二級ヒドロキシル基の置換;2'−アルキル化;グリ
コシルC1'−N結合に対してO2'−ヒドロキシルがシス配向してアラビノヌクレ
オシドを与えるコンホメーション変異体、およびα−ヌクレオシドを与えるよう
なC1'炭素におけるコンホメーション異性体などが含まれる。7デアザグアノシ
ン、zデアザアデノシンなどにおけるように環窒素を炭素で置換することができ
る。さらに、本発明は、置換された2'ヒドロキシル(例えば、2'O−アリルまた
は2'O−メチル)を有する化合物に関する。あるいは、2'C−アリルなどにおけ
るように、糖の炭素バックボーンを置換することができる。
したがって、ヌクレオチドの塩基は、アデニン、2−アミノアデニン、シトシ
ン、グアニン、ヒポキサンチン、イノシン、メチルシトシン、チミン、キサンチ
ン、ウラシルまたはその他の修飾塩基(後記を参照されたい)となることが可能
である。
ヌクレオチド塩基、デオキシヌクレオチド塩基、およびリボヌクレオチド塩基
は、当該技術分野でよく知られており、例えば、Principles of NucleicAcid St
ructure[Saenger,1984]に記載されている。さらに、ヌクレオチド、リボヌクレ
オチドおよびデオキシリボヌクレオチド誘導体、置換体および/
または修飾体は、当該技術分野でよく知られており[例えば、Saenger,1984;So
ber,1970を参照されたい]、該リボザイムのエンドヌクレアーゼ活性を失わない
限り、該リボザイム中にこれらを取込ませることができる。前記のとおり、エン
ドリボヌクレアーゼ活性は、常法で容易に評価することができる。
さらに、多数の修飾塩基が天然に存在し、広範な修飾塩基が合成的に製造され
ている[例えば、Saenger,1984;Sober,1970を参照されたい]。例えば、アミノ
基および環窒素をアルキル化することができ、例えば、環窒素原子または炭素原
子(例えば、グアノシンのN1およびN7、およびシトシンのC5)のアルキル化
、チオケト基によるケトの置換、炭素−炭素二重結合の飽和、プソイドウリジン
中のC−グリコシル結合の導入が可能である。チオケト誘導体としては、例えば
、6−メルカプトプリンおよび6−メルカプトグアニンが挙げられる。塩基を、ハ
ロゲン、ヒドロキシ、アミン、アルキル、アジド、ニトロ、フェニルなどの種々
の基で置換することができる。また、ヌクレオチドのリン酸部分またはオリゴヌ
クレオチドのホスホジエステル結合を、当該技術分野でよく知られている誘導体
化または修飾に付す。例えば、窒素、硫黄または炭素による酸素の置換により、
それぞれ、ホスホルアミダート、(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート
)およびホスホナートが得られる。架橋または非架橋位置で窒素、硫黄または炭
素誘導体による酸素の置換を行なうことができる。ホスホジエステルおよびホス
ホロチオアート誘導体が(特に、短い長さの場合に)、おそらく細胞受容体との結
合により、効率的に細胞に侵入することが、アンチヤンスオリゴヌクレオチドを
用いた研究[Uhlmann,1990]から十分に立証されている。メチルホスホナート
は、おそらく、それが電気的に中性であるため、細胞に容易に取込まれる。
本発明のさらにもう1つの態様は、通常のホスホジエステル結合が、アミド、
スルホンアミド、ヒドロキシルアミン、ホルムアセタール、3'−ホルムアセター
ル、スルフィドまたはエチレングリコールなどの機能で置換された結合体を提供
する。これらの修飾は、細胞ヌクレアーゼに対する抵抗性を
増加させ、および/または、薬物動態を改善しうる。可能なヌクレオチドの修飾の非限定的な一覧 糖の修飾体は、2'フルオロ、2'アミノ、2'O−アリル、2'C−アリル、2'O−
メチル、2'O−アルキル、4'−チオ−リボース、α−アノマー、アラビノース、
他の糖または非環状類縁体であることが可能である。
リン酸の修飾体は、ホスホロチオアート(非架橋)、ホスホロジチオアート(非
架橋)、3'架橋ホスホロチオアート、5'架橋ホスホロチオアート、ホスホルアミ
ダート(置換ホスホルアミダートを含む)、3'架橋ホスホルアミダート、5'架橋ホ
スホルアミダート、メチルホスホナート、他のアルキルホスホナートまたはリン
酸トリエステルであることが可能である。
ホスホジエステル結合は、アミド、カルバメート、チオカルバメート、尿素、
アミン、ヒドロキシルアミン、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、アリ
ルエーテル、アリル、エーテル、チオエーテルまたはPNA(ペプチド性核酸)
結合で置換することができる。
塩基中の修飾は、プリン、2,6−ジアミノプリン、O6−メチルグアノシン、5
−アルケニルピリミジン、5−プロピンピリミジン、イノシン、5−メチルシト
シン、プソイドウリジン、一リン酸アルカンジオールまたは他のアルカンジオー
ルの重合体であることが可能である。
いくつかのヌクレオチドは、以下のリンカーで置換することができる:1,3−
プロパンジオール、他のアルカンジオール、またはエチレングリコールの種々の
重合体(例えば、テトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコール)
またはアベイシック(abasic)リボースまたはデオキシリボース。
他の修飾:3'または5'末端は、3'-3'逆方向結合(逆方向ジエステルまたは逆方
向ホスホルアミダート)、3'-3'結合のアベイシック(abasic)リボースまたはデ
オキシリボースまたは末端キャップ化(例えば、G−キャップ)アルキル基、コ
レステロール、またはエキソヌクレアーゼの活性を阻止する他の任意の基から選
択することができる。糖、リン酸または塩基中で修飾された単量体の合成
修飾された糖は、以下のとおりに合成することができる。2'−デオキシ−2'−
フルオロウリジン(Sinha,1984);2'−デオキシ−2'−フルオロシチジン(Sinha
,1984);2'−デオキシ−2'フルオロアデノシンの合成およびリボザイム中への
取込み(Olsen,1991);2'−デオキシ−2'−アミノウリジンおよび2'−デオキシ
−2'−アミノシチジン(Heidenreich,1994);2'−O−アリル−(ウリジンまた
はシチジンまたはアデノシンまたはグアノシン)(Boehringer Mannheim,Mannhe
im,Germanyから入手可能);2'−デオキシ−2'−C−アリル−リボヌクレオチド
(Beigelmanら,1995B);2'−O−メチルリボヌクレオチド(総説Sproat,B.S.
,1991Aを参照されたい)(同様にChemgenes,Waltham,MAまたはGlen Resear
ch,Sterling,VAから入手可能)、他の2'−O−アルキル−リボヌクレオチドの
合成(Monia,B.P.,1993;Sproat,B.S.,1991Bを参照されたい);ウリジン、シ
チジン、アデノシンおよびグアノシンのα−アノマー(Debart,F.,1992および
そこに引用されている参照文献を参照されたい);他の修飾糖など、アラビノー
ス(Garbesl,A.,1993);ヘキソース−チミジン(Augustyns,K.,1992)および
糖の直列(linear)置換。
修飾されたリン酸は以下のとおりに合成することができる;ホスホロチオアー
ト;ホスホルアミジット合成における酸化法の修飾により合成される(試薬は、Pe
rkin Elmerなどから商業的に入手可能であり、生成物は、異性体の混合物となる
;ホスホロチオアートの立体特異的合成に利用可能ないくつかの方法についは、
Stec,1991;Stec,1995を参照されたい);ホスホロジチオアート(Eldrup,A.B.
,1994;Caruthers,1991;Beaton,1991);3'−架橋ホスホロチオアート;5'架橋
ホスホロチオアート;ホスホロアミダート(非架橋);(Froehler,B.,1988;Jage
r,A.,1988;Letsinger,R.L.,1988);3'架橋ホスホルアミダート(NHによる3
'Oの置換)(Letsinger,1992;Gryaznov,S.M.,1995;Chen,J.K.,1995);5'架
橋ホスホルアミダート(NHによる5'Oの置換)(Gryaznov,S.M.,1992);メチル
ホスホナート(試薬は、Glen ResearchまたはChemgenesから商業的に入手可能;Sa
vchenko,1994;Miller,1991);5'−デオキシ,5'−メチルホスホナート(Szabo
,1995);他
のアルキルーホスホナート(Fathi,1994A;Fathi,1994B);ホスホナートトリ
エステル(Summers,1986)。
ホスホジエステル結合の置換体は、以下のとおりに合成することができる:再
検討にはDe Mesmaker,1995を参照されたい;アミド(Chur,1993;Blommers,1994
;De Mesmaeker,1993;De Mesmaeker,1994A;De Mesmaeker,1994B;Lebreton,
1993;Lebreton,1994A;Lebreton,1994B;Idsiak,1993);カルバメート(Waldn
er,1994;Stirchak,1987;Habus,1994);チオカルバメート(Waldner,1995);
尿素(Waldner,1994);アミン(De Mesmaeker,1994C;Caulfield,1994);ヒド
ロキシルアミン(Debart,1992;Vasseur,1992);ホルムアセタール(Matteucci
1990;Jones,1993);チオホルムアセタール(Jones,1993);アリルエーテル(Cao
,1994);アリルエーテル、チオエーテル(Cao,1994);アルカン(De Mesmaeker
,1994);PNA(Nielsen,1993A;Hanvey 1992;Egholm,1993;Nielsen,1993B
);PNA合成(Egholm,1992A;Egholm,1992B);ブリンPNA単量体およびオ
リゴ体の製造(Millipore corporationから商業的に入手可能)。
修飾された塩基は、以下のとおりに合成することができる:プリンの合成およ
びリボザイム中への取込み(Slim,1992;Fu,1992;Fu,1993);7−デアザグアノ
シンの合成およびリボザイム中への取込み(Fu,1993);イノシンの合成およびリ
ボザイム中への取込み(Slim,1992;Fu,1993);7−デアザアデノシンの合成およ
びリボザイム中への取込み(Fu,1992;Seela,1993);O6−メチルグアノシン
の合成およびリボザイム中への取込み(Grasby,1993);2,6−ジアミノプリンの
合成(Sproat,1991);2−アミノプリンの合成およびリボザイム中への取込み(Ng
,1994;Tuschl,1993);イソグアノシンの合成およびリボザイム中への取込み(
Ng,1994;Tuschl,1993);キサントシンの合成およびリボザイム中への取込み(Tu
schl,1993);6−アザチミジン、6−アザ−2'−デオキシシチジンの合成および
オリゴヌクレオチド中への取込み(Sanghvi,1993);5−アルケニルピリミジン;
5−プロピン(Fensterら,1994);イノシン(Chemgenes);5−メチルシトシン;プ
ソイドウリジン;アベイシック(abasic)リボースまたはデオキシリ
ボース(Beigelmanら,1995A)。
リボザイム中で試験されたヌクレオチド修飾の詳細な一覧
<糖>
全ての非保存ヌクレオチドにおける糖の2'OH基に修飾を施すことができる。
試験した修飾は、2'H(DNA)、2'F、2'アミノ、2'−O−アリル、2'−O−メ
チル、2'−C−アリルである。
選択した修飾を、保存ヌクレオチドC3、U4、A6、N7、A9、G12、A13、
A14、N15.2の2'OH基に施すことができる。
修飾は、G5、G8およびA15.1の2'OHには施すことができない(図1を参照さ
れたい)。
リボザイムが優れた開裂活性を有するためには、G5、A6、G8、G12、A15.
1に修飾を施すべきではない(ただし、G12は2'H(DNA)となることが可能であ
る)。
一般には、G5、G8およびA15.1での修飾を除き、単一の修飾が開裂活性の大
きな減少を引き起こすことはないが、リボザイム中に導入される修飾が増すにつ
れて活性は減少する。
<リン酸>
非保存ヌクレオチドのリン酸基は、ホスホロチオアートであることが可能であ
る(ホスホロチオアート化DNAまたはRNA)。好ましくは、非保存ヌクレオチ
ドはDNAであり、該リボザイムの3'または5'末端の2個または3個のリン酸の
みがホスホロチオアートとなる。
保存ヌクレオチドC3、U4、G5、G8およびG12の5'側、およびA9およびN1
5.2の3'側のリン酸がホスホロチオアートであることは可能であるが、A9、A13
およびA14の5'側のリン酸がホスホロチオアートとなることはできない。
保存ヌクレオチド(番号付けに関しては図1を参照されたい)
<C3>
糖‐2'OH基を修飾することができる(ただし、おそらく2'アミノは例
外となる)。2'H(Yang,1992)、2'F(Pieken,1991;Heidenreich,1992)、2'−O
−アリル(Paolella,1992)、2'−O−メチル(Usman,1995)はすべて、開裂を
許容する修飾である。
2'アミノ修飾はおそらく不可能であろう(該リボザイム中のいくつかのCは、
活性の減少を引き起こす2'アミノ修飾を有していたが、その効果はおそらく、C
3および/またはC15.2上の2'アミノによるものであろう)(Pieken,1991)。
リン酸 ‐5'リン酸はホスホロチオアートであることが可能である(Shimayama
,1993)。
<U4>
糖 ‐2'OH基を修飾することができる。2'H(Yang,1992)、2F'(Pieken,1
991;Heidenreich,1992)、2'アミノ(Pieken,1991)、2'−C−アリル(Usman,19
95)、2'−O−アリル(しかし、A6が2'−O−アリルの場合には、2'OHのまま
とする)(Paolella,1992)は、開裂を許容する修飾である。
リン酸 ‐5'リン酸はホスホロチオアートであることが可能である(Shimayama
,93)。
<G5>
塩基‐G塩基上の2−アミノ基は必須である(イノシンとなることはできない
)(Odai,1990;Fu,1992)。
糖‐G5の2'OHに修飾を施すことはできない。2'H(Perreault,1990;Perrea
ult,1991,Fu,1992;Williams,1992)、2'アミノ(Pieken,1991;Williams,199
2)、2'−O−メチル(Paolella,92)、2'F(Williams,1992)を有することはでき
ない。
<A6>
塩基 ‐ プリンであることが可能である(すなわち、6−アミノ基は必須で
はない)(Fu,92)。A塩基において、N7はC7となることはできない(Fu,1992)
。
糖 ‐2'OH基は修飾することができる。2'H(Perreault,1990;Olsen,1991
;Yang,1992;Fu,1992)、2'F(Olsen,1991)、2−O−アリル(ただし、
U4が2'OHである場合に限る)(Paolella,1992)は、開裂を許容する修飾であ
る。
<N7>
ピリミジンエンドヌクレアーゼの感受性部位であると考えられる。rNがrG
またはrAである場合には、保護を行なう(Shimayama,1993)。
糖‐2'OH基は修飾することができる。2'H(試験されたdT)(Yang,1992)、
2'F(Pieken,1991,Heidenreich,1992)、2'−アミノ(Pieken,1991)、2'−O−
アリル(Paolella,1992)、2'−O−メチル(Usman,1995)は、開裂を許容する
修飾である。
3'リン酸は、ホスホロチオアートであることが可能である(N=Uに関して試
験)(Shimayama,1993)。
<G8>
糖‐G8の2'OHに修飾を施すことはできない。2'H(Fu,1992;Williams,199
2;Yang,1992)、2'F(Williams,1992)、2'アミノ(Williams,1992)、2'−O−
アリル(Paolella,1992)を有することはできない。(Perreault(1991)は、2'H
が可能であると認めているが、Yang(1992)は、他の多数の保存ヌクレオチドがD
NAであれば、この部位が決定的に重要であると記載している)。
リン酸‐5'リン酸は、おそらく、ホスホロチオアートであることが可能であろ
う(N7リン酸を参照されたい)。
<A9>
糖 ‐2'OH基は修飾することができる。2'H(Olsen,1991;Fu,1992;しかし
Perreault(1991)は、2'Hとなることはできないと記載している)、2'F(Olsen,1
991;Pieken,1991)、2'−O−アリル(Paolella,1992)、2−O−メチル(Usman,
1995)はすべて、開裂を許容する修飾である。
リン酸 ‐5'リン酸は、ホスホロチオアートとなることはできない(Buzayan,
1990;Ruffner,1990)。3'リン酸は、ホスホロチオアートであることが可能である
(Shimayama,1993)。
<G12>
塩基 ‐2−アミノ基は必須である(イノシンとなることはできない)(Slim
,1992)。
糖‐2'OH基は、いくつかの修飾を許容しうる。2'H(Perreault,1991;Yang
,1992;Williams,1992)、2'アミノ(Pieken,1991;Williams,1992)は可能であ
る。2'F(Williams,1992)、2’−O−アリル(Paolella,1992)となることは
できない。
リン酸 ‐5'リン酸は、ホスホロチオアートとなることが可能である(Shimayama
,1993)。
<A13>
塩基 − アデニン塩基において、N7を炭素に変化させることができる(Fu,19
92)。6−アミノ基は必須である(プリンとなることはできない)(Slim,1992)。
糖‐2'OH基は、いくつかの修飾を許容しうる。2'H(Perreault,1991;Yang
,1992)、2'−O−アリル(Paolella,1992)、2'−O−メチル(Usman,1995)は
、開裂を許容する修飾である。A13、A14、A15.1のそれぞれが2'Fを有する場
合には、2'Fを有することはできない(Pieken,1991)。
リン酸 ‐5'リン酸はホスホロチオアートとなることはできない(Ruffner,1990
)。
<A14>
塩基 ‐N7を炭素に変化させることができる(Fu,1992)。プリンであること
が可能である(Slim,1992)。
糖 ‐2'OH基は、いくつかの修飾を許容しうる。2'H(Perreault,1991;Yan
g,1992)、2'−O−アリル(Paolella,1992)、2'−O−メチル(Usman,1995)
は、開裂を許容する修飾である。A13、A14、A15.1のそれぞれが2'Fを有する
場合には、2'Fを有することはできない(Pieken,1991)。
リン酸 ‐5'リン酸は、ホスホロチオアートであることが可能である(Ruffner,
1990)。
<A15.1>
塩基 ‐N7をCに変化させることができる(Fu,1992)。6−アミノ基は
必須である(プリンとなることはできない)(Slim,1992)。
糖 ‐2'OHを修飾することはできない。2'H(Yang,1992)、2−O−アリル(
Paolella,1992)、2'F(A13およびA14が共に2'Fである場合)(Pieken,1991
)を有することはできない。
<N15.2>
糖 ‐選択された修飾は開裂を許容する。2'F(Pieken,1991;Heidenreich,1
992)、2'−O−アリル(Paolella,1992)、2'−O−メチル(Usman,1995)は、開
裂を許容する修飾である。
2'Hの場合は速度が遅い(Yang,1992)。おそらく、2'アミノ修飾を有すること
はできないであろう(リボザイム中のいくつかのシトシンは、活性の減少を引き
起こす2'アミノ修飾を有していたが、その効果はおそらく、C3および/または
C15.2によるものであろう)(Pieken,1991)。3'リン酸はホスホロチオアートと
なることが可能である(Shimayama,1993)。
オリゴヌクレオチドまたはリボザイムの3'末端における修飾
最後の2つ(または最後)のヌクレオチド間結合中の3'MEA(メトキシエチ
ルアミン)ホスホルアミダート;3'-3'逆方向ジエステル結合または3'-3'逆方向
ホスホルアミダート(Shaw,1991)。
3'-3'逆方向チミジンまたは3'-3'結合アベイシック(abasic)リボース(Usman,19
95)。
エンドヌクレアーゼ活性が失われない限り、糖、塩基または一リン酸基または
ホスホジエステル結合のレベルで行なう前記で挙げたヌクレオチド修飾、置換ま
たは誘導体化の任意の組合わせを該化合物中で行なうことができる。
また、本発明の化合物は、RNA分子合成の技術分野における自体公知の方法
により製造することができる(例えば、Promega(Madison,Wis.,USA)の推奨プ
ロトコールに従う)。特に、本発明のリボザイムは、T3またはT7ポリメラーゼ
またはSP6 RNAボリメラーゼ用のプロモーターなどのRNAポリメラーゼプ
ロモーターに作動的に結合した対応するDNA配列(転写されるとリボザイムを
与え、DNA合成の技術分野の自体公知の方法に従い合成されうるDNA)から
製造することができる。ついで該RNAを修飾した
り、あるいは修飾ヌクレオチドを直接取込ませることができる。運搬に関しては
、例えば、“Targeting and Delivery of Genes and Antiviral Agents into Ce
lls by the Adenovirus Penton”G.Nemerowら,米国特許出願第08/046,159号お
よび第08/015,225号を参照されたい。該標的とリボザイムとを同じ細胞画分中に
封鎖するのが望ましいかもしれない[SullengerおよびCech,1993]。
該化合物を、エレクトロポレーション、PEG、高速粒子射撃またはリポフェ
クタントにより細胞中に導入し、あるいはマイクロインジェクションなどのマイ
クロマニュピレーション技術により細胞中に導入して、該化合物をホスト細胞に
侵入させることができる。また、本発明は、とりわけ遺伝子銃(例えば、DNA
被覆タングステン粒子、高速微粒子射撃)およびエレクトロポレーションなどの
他の導入手段を包含する[Maliga,1993;Bryant,1992;またはShimamoto,1989]
。
本発明の化合物は、広範な治療用途および生物学的用途を有する。例えば、ウ
イルスの特異的RNA転写産物とハイブリダイズしそれを開裂するように適合さ
せた本発明の化合物を、ウイルスに感染した対象に投与することにより、ヒトお
よび動物中の病原ウイルスを不活化することができる。そのような化合物は、非
経口的投与手段または他の投与手段により運搬することができる。
本発明の化合物は、例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)またはヒト免疫不
全ウイルス(HIV-1、HIV-2)が引き起こすウイルス疾患に対する特定の用
途を有する。本発明のリボザイムで治療しうるヒトおよび動物の疾患のさらに別
の非限定的な例には、乾癬、頚部前新形成、乳頭腫疾患、細菌および原核生物感
染症、ウイルス感染症が含まれる。具体例には、いぼ、う歯、歯肉炎、サイトメ
ガロウイルス、肝炎および新形成状態のうち、例えば慢性骨髄性白血病、悪性黒
色腫、膀胱癌、膵臓癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、再発狭窄症および急
性前骨髄球性白血病(APMLまたはAPL)において生じる異常RNAの産生
に関連したもの、および遺伝子発現パターンの変化を伴う任意の疾患、あるいは
異常または有害なRNAおよび/またはタンパク
質を与える遺伝子の発現を伴う任意の疾患が含まれるが、これらに限定されるも
のではない。
治療期間は、治療する個々の疾患によって異なり、医師により容易に決定され
るであろう。一般には、治療中の疾患が改善するまで治療を継続する。
本発明のリボザイムはまた、細菌および他の原核細胞、動物および酵母細胞中
のRNA転写産物の不活性化のための特定の用途を有する。
原核細胞および真核細胞中にRNAおよびDNA配列を導入する方法は、当該
技術分野でよく知られており、例えば、CottonおよびFriedman[Cotton,1990;Fr
iedman,1989]に記載されている。同じく広く知られている方法を本発明で使用
することができる。
本発明の化合物は、直接的な細胞の取込みにより細胞中に取込ませることがで
き、この場合、本発明のリボザイムは、細胞外環境から細胞膜または細胞壁を通
過する。細胞の取込みを増強するために、リポソームまたは親油性ビヒクル、細
胞透過剤(例えば、ジメチルスルホキシド)などの物質を使用することができる
。運搬/標的化分子は、例えば、RNA;修飾RNA;DNA;修飾DNA;ペ
プチド;ペプチド類縁体;ステロイド、コレステロールおよび誘導体;他のステ
ロイド;脂肪(飽和および部分不飽和);ビタミンまたは類縁体、例えばビオチン
;葉酸;レチノイン酸;タンパク質、例えばフェリチン、LDLインスリンまた
は特異的抗体;糖およびオリゴ糖であることが可能である。本発明は、アビジン
、ビオチン(Partridgeら,1991,1993)、ポリ(L−リシン)(Bunnell,1992)、コ
レステロールまたはチオコレステロール(Bouterin,1989;Letsinger,1989;Oberh
auser,1992)、リン脂質(Shea,1990)、長鎖ジオール(Kabanov,1990)、ネオ糖
タンパク質、糖タンパク質(Bonfils,1992)、プロテインA、抗体(Leonetti,19
90)、陽イオン性脂質、リポフェクタミン、リポフェクチン(COTMA、DO
TMA、DOTAP)(Bennett,1992)、標的化リポソーム(Leonetti,1990;Lok
e,1988;Stullら1995)などの他の物質に対する結合を含む。
本発明の化合物は、当該技術分野でよく知られている医薬上および獣医学上許
容されるキャリアおよび賦形剤と組合せることができ、これらには、例
えば、参考として本明細書に組入れるRemmgton's Pharmaceutical Sciences,第
17版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,Ostolら編に記載されている水、塩類
液、デキストロースおよび種々の糖溶液、脂肪酸、リポソーム、油、皮膚透過剤
、ゲル形成剤などのキャリアが含まれる。
本発明の化合物は、例えば、Merck Index(1989)第11版,Merck & Co.Inc.に
記載されている1以上の抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗寄生体剤、抗原
生動物剤、抗蠕虫剤などと一緒になった組成物として提供することができる。
治療用組成物は、罹患部位に対するリボザイムの局所適用を伴うことが可能で
ある。例えば、ヘルペスウイルス病変の治療においては、0.1nM〜100mM、好
ましくは1nM〜1mMのリボザイムを含有するクリーム剤に、リボザイムを製剤
化することができる。ついで、感染症状を改善するために、該クリーム剤を1〜1
4日間にわたり感染部位に適用する。ウイルス感染治療用の局所製剤の最終的な
開発の前に、該リボザイムおよびそれを含む製剤の有効性および毒性を、例えば
、動物モデル(例えば、乱切されたマウスの耳)上で試験することができ、この
場合、該動物モデルに、例えば2×106プラーク形成単位のウイルス粒子を加える
。ついで、治療後のその耳における感染ウイルス粒子の力価を測定して、治療の
有効性、リボザイムの必要量などの考慮事項を検討することができる。また、ヒ
トでの試験の前の動物モデルにおける同様の検討を、例えば、乾癬、乳頭腫疾患
、頚部前新形成、およびHIV感染症、細菌および原核生物感染症、ウイルス感
染症などの疾患、および種々の新形成状態(有害なRNA種に関連したもの)の
治療に関して行なうことができる。
局所適用組成物は、一般には、クリーム剤の形態であり、この場合、本発明の
リボザイムを、粘性成分と混合することができる。ヌクレアーゼの攻撃または他
の分解因子(例えば、紫外線などの劣悪な環境条件)から該リボザイムを保護す
るために、本発明の化合物をリポソームまたは他のバリヤー型(barrier type)
製剤中に取込ませることができる。
カプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)、錠剤、坐剤などの単位投与
形として、組成物を提供することができる。注射用組成物は、塩類液、デキスト
ロース中、または緩衝剤であるか若しくは安定化剤、抗酸化剤または同様の物質
を含有する他の媒体中の、リボザイムの無菌溶液の形態であってもよい。経口投
与用組成物は、懸濁剤、液剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤などの形態であっ
てもよい。また、徐放用装置、含浸包帯、絆創膏などの形態で、リボザイムを提
供することもできる。本発明の化合物は、リポソームまたは生分解性重合体(例
えば、ポリ乳酸)中に包埋することができる。本発明において使用することがで
きる医薬組成物は、例えばRemington's Pharmaceutlcal Sciences(前記を参照
されたい)に記載されている。
また、本明細書に記載の化合物は、診断剤として使用することができる。前記
化合物は、ある特定の遺伝的欠損を検出するように、あるいはRNA制限酵素と
して、あるいは遺伝子マッピング用に設計することができる。2つの反応(その
一方は、該触媒活性化合物と接触させるものである)を平行して行なうことによ
り、遺伝子の突然変異、欠失または転座を検出することができる。該方法は、該
触媒性化合物との反応の前後に増幅工程を伴うことが可能である。その増幅は、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Qβレプリカーゼ(Stefano,J.E.の米国特許第
5,472,840号を参照されたい);リガーゼ連鎖反応(Kramerら,WO 94/16105);
逆転写PCR(RT-PCR)、自立配列複製(self sustained sequence replica
tion;3SR)(SIBIA,Baxter Diagnostics);核酸配列に基づく増幅(nucl
eic acid sequence based amplification;NASBA)(Cangene Corp)、ライゲ
ーション活性化転写(ligation activated transcription;LAT)(Life Techn
ologies Inc.,Gaithersburg,MD);リガーゼ連鎖反応(LCR)(OmniGene
,Inc.,Cambridge,MA;Abbott Labs,Abbott Park,IL;Applied Biosystems
,Foster City,CA;Amgen,Thousand Oaks,CA;Beckman Research Institut
e);修復連鎖反応(repair chain reaction;RCR)(ImClone Systems Inc.NY,N
Y);および鎖置換活性化(strand displacement activafion;SDA)(Becton Di
ckenson Research Center,Research Triangle Park,NC)に基づくものであっ
てもよい。他の診断方法は、De La Monteら,WO94/23756;
Bockmanら,WO94/13833またはLamondら,EP519,463に記載されている。ある
いは、該方法を、抗体/PCR型アッセイ(Carterら,1992,Science258;120)
などの非常に高感度の技術と組合せることができる。
次に、以下の非限定的な実施例および図面に関して、単なる非限定的な具体例
として、本発明を説明する。
〔実験〕命名法
種々のハンマーヘッド型リボザイムによる多くの基質の開裂速度論を調べた。
基質分子の配列は、自然に存在するmRNAsから採用し、起源により識別され
る。GHシリーズは、ラット成長ホルモンのmRNAに見られる配列に由来し、
TATシリーズは、HIV−1のTATmRNAに由来し、Krシリーズは、キ
イロショウジョウバエのクルッペル遺伝子のmRNAに由来する。
接頭語OUを付したリボザイムおよび基質は、HH16というタイトルの十分
に特性決定されたハンマーヘッドに似ており、幾つかの場合には同一である(Her
telら、1994;Hertelら、1996)。OUリボザイムに対する2シリーズの基質は、
OU SおよびOU CSを接頭語として付ける。OU Sシリーズは、5’末
端から13番目の位置にグアニンヌクレオチドを有し、OUリボザイムと複合体
を形成して、これはG−U塩基対を形成する。OUCS(相補的基質)シリーズ
は、その位置にアデニンヌクレオチドを含むので、OUリボザイムとの複合体で
ワトソン−クリックのA−U塩基対を形成する。
リボザイムは、上記の識別用接頭語に続く、Rにより記号で示され、基質は文
字Sにより示され、ヌクレオチドの長さを表す数によりさらに特定される(例え
ばS13)。この文書で使用されるハンマーヘッド型リボザイムには2つのバー
ジョンがあり、リボザイムAおよびBとして記号で示される。リボザイムA(R
A)は、(3’ヌクレオチドを除いて)RNAのみから成るが、リボザイムB(
RB)は、RNAのまま残っているヌクレオチド15.
1および15.2を除いて、基質にハイブリダイズするアームにDNAを有して
いる(図1)。全体を通して、Hertelらのナンバリングシステムが終始使用される
(Hertelら、1992)。ハイブリダイズ性アームにおけるヌクレオチドの数(リボザ
イムについて)、またはC17の各側におけるヌクレオチドの数(基質について)
が、名前の接尾語として付けられ、最初の数字は5’側をいい、二番目の数字は
3’側を指している。例えば、Kr S17−10/6は、C17の5’側に10
ヌクレオチドおよび3’側に6ヌクレオチドを有する17merの基質であり、リ
ボザイムKr RA−6/10に相補的な基質である(図2)。オリゴヌクレオチドの調整
オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems(フォスターシティ、CA)モデ
ル391のDNA合成機を用いて合成した。接頭語OUを付したオリゴヌクレオチ
ドは、Perkin Elmer(Applied Biosystems Division、フォスターシティ、C
A)から入手した試薬を用いて調整した。保護されたDNAホスホラミダイトモ
ノマーは、Millipore(ベッドフォード、MA)またはAuspep(メルボルン、オ
ーストラリア)から入手した。RNAモノマーは、2’水酸基においてtert-ブ
チルジメチルシリル基(tBDMS)で保護され、同所から入手した。合成の便
宜上、全オリゴヌクレオチドは、3’末端にデオキシリボヌクレオチドを有して
いる。オリゴヌクレオチドの脱保護および精製は、2’位置からのt−BDMS
基の除去に関して、溶媒なしのトリエチルアミン三フッ酸塩を室温で24時間使
用し、その後のゲル精製に先立つて10倍体積の1−ブタノールでオリゴヌクレ
オチドを沈殿させることを除いて、以前に記載されたとおりに行った(McCallら
、1992)。各オリゴヌクレオチドの純度は、その5’末端をT4ポリヌクレオチ
ドキナーゼ(New England Biolabs、ビバリー、MA、USA)を用いて32P
リン酸およびγ−32P ATP(Bresatec、Adelaide、S.A.オーストラリア
)で標識し、7M尿素を含む10%または15%ポリアクリルアミドゲル上でそ
の分子を電気泳動し、オートラジオグラフィーまたはMolecular Dynamics Phos
phorImaging System(サニベール、CA)を用いて、
その分子を可視化することで検査された;全オリゴヌクレオチドの純度は、この
アッセイで判断すると、少なくとも98%であった。精製されたオリゴヌクレオ
チドの濃度は、以下の260nmにおける種々のヌクレオチドのモル吸光係数を
用いてUV分光器により測定された:A、15.4×103;G、11.7×1
03;C、7.3×103;T/U、8.8×103Lmo1-1cm-1。全オリゴ
ヌクレオチドは、蒸留し、イオン交換し、オートクレーブをかけた水中に、−2
0℃で保存した。オリゴヌクレオチド配列
この研究で使用されたオリゴヌクレオチドは、以下のとおりである。大文字は
リボヌクレオチドを指し、小文字はデオキシリボヌクレオリドを指す。成長ホルモンシステム
(GH).GH RA-10/10,5'GACACUUCAU CUGAUGA GUCC UUUU
GGAC GAAACC CGCAGGT 3';GH RB-10/10,5'gacacttcat CUGAUGA GUCC UUUU GGAC
GAAAC ccqcaggt 3';GH S13-6/6,5'GCGGGUCAUGAAg 3';GH S21-10/10,5'ACCUGCG
GGUCAUGAAGUGUc3'.(配列認識番号1-4)クルッペル システム
(Kr).Kr RA-10/10,5'CUCCAGUGUG CUGAUGA GUCC UUUU
GGAC GAAAC UCGCAAAt 3';KrRB-10/10,5'ctccagtgtg CUGAUGA GUCC UUUU GGAC G
AAAC tcqcaaat 3';Kr RA-6/10,5'AGUGUG CUGAUGA GUCC UUUU GGAC GAAAC UCGCAA
At 3';Kr S21-10/10,5'AUU UGC GAG UCC ACA CUG GAg3';Kr S18-10/7;5'AUU UGC
GAG UCC ACA CUg 3';Kr S17-10/6;5'AUU UGC GAG UCC ACA Ct 3';Kr S16-10/5
,5'AUU UGC GAG UCC ACA c 3';Kr S15-10/4,5'AUU UGC GAG UCC ACa 3';Kr S
14-10/3,5'AUU UGC GAG UCC Ac 3';Kr S13-6/6,5'GCGAGUCCACACt 3';Kr S16-5
/10,C GAG UCC ACA CUG GAg 3'.(配列認識番号5-15)TATシステム
(TAT).TAT RA-10/10,5'GUCCUAGGCU CUGAUGA GUCC UUUU G
GAC GAAAC UUCCUGGa 3';TAT RA-6/6,5'UAGGCU CUGAUGA GUCC UUUU GGAC GAAAC
UUCc 3;TAT RB-10/10,5'gtcctaggct CUGAUGA GUCC UUUU GGAC GAAAC ttcctgga
3';TAT RA-10/5,5'GUCCUAGGCU CUGAUGA GUCC UUUU GGAC GAAAC UUc 3; TAT RA
-5/10,5'AGGCU CUGAUGA GUCC UUUU GGAC GAAAC UUCCUGGa 3';TAT S13-6/6,5'GGA
AGUCAGCCUa 3',TAT S21-10/10,5'TCC AGG AAG UCA GCC UAG GAc 3';TAT S16-10
/5,5'TCC AGG AAG UCA GCC t 3';TAT S16-5/10,5'GAAG UCA GCC UAG GAc 3';T
AT S14-10/3,5'TCC AGG AAG UCA GC 3';TAT S15-10/4,5'TCC AGG AAG UCA GCc
3';TAT S17-10/6,5'TCC AGG AAG UCA GCC Ua;TAT S18-10/7,5'TCC AGG AAG U
CA GCC UAg 3';TAT S19-10/8,5'TCC AGG AAG UCA GCC UAG g 3'(配列認識番号
16-29)OUシステム
OU RA-8/8,5'GCG AUG AC CUGAUGA GGCC GAAA GGCC GAAAC GUU C
CC dT 3';OU RA-6/8,5'G AUG AC CUGAUGA GGCC GAAA GGCC GAAAC GUU CCC dT 3
';OU S-13-8/4,5'GGG AAC GUC GUC dG 3';OU S-14-8/5,5'GGG AAC GUC GUC G
dT 3';0U S-15-8/6,5'GGG AAC GUC GUC GU dC 3';OU S-16-8/7,5'GGG AAC GUC
GUC GUC dG 3';OUS-18-8/8,5'GGG AAC GUC GUC GUC GC dC 3';OU CS-13-8/4,
5'GGG AAC GUC GUC dA 3';OU CS-14-8/5,5'GGG AAC GUC GUC A dT 3';OU CS-15
-8/6,5'GGG AAC GUC GUC AU dc 3';OU CS-16-8/7,5'GGG AAC GUC GUC AUC dG
3';OU CS-18-8/8,5'GGG AAC GUC GUC AUC GC dC 3'.速度論的実験 リボザイム過剰の実験
別段記載のない限り、この速度論的実験は、37℃でリボザイムおよび(32P
−リン酸で5’末端をラベルした)基質を使って、10mM MgCl2
と50mM緩衝液(TrisまたはMes)中で、以下の手法を使用して行った。基質
濃度は、完全な複合体形成を確実にするために非常に高く保ち、2〜4μMの範
囲(典型的には2μM)で、リボザイム濃度は少なくとも基質濃度の1.5倍(
典型的には3μM)であった。緩衝液中のリボザイムおよび基質ともに、85℃
で2分間熱し、短時間遠心し、その後数分間、反応温度に置くことで前処理した
。その反応は、MgCl2の添加で開始した。サンプルをさまざまな時間間隔で
取り出し、80%ホルムアミドと20mM EDTAを含む2倍体積のゲルロー
ディング緩衝液を加えることで反応を停止した。各サンプル中の開裂した基質の
分画を、7M尿素を含む15%ポリアクリルアミドゲル中で5’生成物から基質
を分離し、Molecular Dynamics PhosphorImaging systemとImageQuant softwar
e(Molecular Dynamics、サニベール、CA)を使用して各々の量を定量するこ
とで測定した。速度論的パラメーターは、所定の時間(t)において、形成され
た生成物のパーセンテージ(Pt)のデータを以下の等式にあてはめることで得
られた。
Pt=P∞−(exp(−kobst)PΔ)
ここでPtは時間tにおける生成物の量であり、P∞はt=0における生成物の
量であり、kobsは反応のための一次速度定数であり、PΔは、t=∞(無限大
)とt=0における生成物のパーセンテージの差である。これは一次速度論方程
式であり、この式から、kobs、P∞およびPΔをデータの最小自乗法解析によ
り決定した。P∞は、約0.7から0.8、つまり基質の約70%から80%が
反応終結時に開裂された。観察された速度定数、kobsは、表1に示されており
、これは少なくとも2回の独立実験の平均値±標準偏差である。
OUシステムを用いた実験は、25℃でリボザイムと(32P−リン酸で5’末
端をラベルした)基質を使って、10mM MgCl2と50mM緩衝液(Tris
、25℃でpH7.60)中で行った。基質濃度は18nMで、リボザイム濃度
は、2.2μMであった。緩衝液中のリボザイムおよび基質ともに、85℃で2
分間前もって熱し、短時間遠心し、その後数分間25℃に置いた。その反応は、
MgCl2の添加で開始した。開裂生成物からの基
質の分離および速度論的解析は、前述のとおり行った。
<結果>長アームリボザイムは、長い基質より短い基質を迅速に開裂する
各ハイブリダイズ性アームに10ヌクレオチドを有するリボザイムは、ヘリッ
クスIおよびIIIの各々に6塩基対を含む対称型13ヌクレオチドの基質と複合
体を形成する一方、同じリボザイムは、これら各々のヘリックスに10塩基対を
有する対称型21ヌクレオチドの基質と複合体を形成する。このようなリボザイ
ム(TAT RA−10/10を除く)は、対応する21mer基質より有意に
速く13mer基質を開裂する(表1)。TAT RA−10/10の反応性は例
外らしく、いくつかの偽の塩基対合によって明らかに変えられている(考察参照
)。短い二重ヘリックスは、一般に長い二重ヘリックスより不安定なので、10
/10リボザイムによる21ヌクレオチド基質に対する13ヌクレオチド基質の
相対的開裂速度は、ヘリックスIおよびIIIの一方または両方を比較的不安定に
することを要求する開裂メカニズムと矛盾しない。開裂はヘリックスIが短いときに急速である
ヘリックスのどちらが不安定になることを要求されるのかを解明するために、
対称型(10/10)リボザイムと異なる長さのヘリックスを形成する一連の基
質がつくられた。同系リボザイムによるこれら基質の開裂速度は、表2に示され
ている。例外的なTAT RA−10/10を除いて、リボザイムは、ヘリック
スIIIで5塩基対を形成する基質(S16−5/10)より、有意に大きな速度
定数で、ヘリックスIで5塩基対を形成する基質(S16−10/5)を開裂し
た。各々の場合、他方のヘリックスは10塩基対から成る。コントロール実験に
おいて、TAT S16−10/5およびTAT S16−5/10は、短アー
ムリボザイムTAT RA−6/6により同じ効率で開裂され(pH7.13で
各々kobs=3.1min-1と3.8min-1)、このことは、二つのTAT基質
の開裂能力において本質的な
違いがないことを実証している。同様の結果は、ヘリックスの長さが、基質の長
さよりもリボザイムのハイブリダイズ性アームの長さによって制限されるときに
観察される。例えば、二つの非対称型リボザイム、TAT RA−10/5およ
びTAT RA−5/10を合成して、対称型21mer基質、TAT S21
−10/10を開裂する能力を調べた(表3)。5塩基対のヘリックスIを有する
複合体中の基質は、10塩基対のヘリックスIを有する複合体中の基質の時より
効率よく開裂される。こうした結論は、リボザイムKr RA−6/10が、p
H7.13で速度定数6.7min-1で基質Kr S21−10/10を開裂し
(表3)、pH8.0における対称型リボザイムKr RA−10/10の速度定
数より10倍以上大きい(表1)という観察により確証される。ヘリックスIおよびIIIの最適な長さ
ヘリックスIの最適な長さを決定するために、TATおよびKr基質を、開裂
部位の3’側に種々の数のヌクレオチド、および5’側に一定の10ヌクレオチ
ドを付して調製した。TAT RB−10/10、Kr RA−10/10およ
びKr RB10/10による基質の開裂速度定数を、いくつかのpHで測定し
た(図3,4,5)。これらのデータは、ヘリックスIIIの10塩基対に対して
、ヘリックスIの最適な長さは5±1塩基対であることを示している。Kr R
B−10/10の活性における明らかな二重ピークは、何ら重視することではな
い。何故なら、約15min-1以上と測定された速度定数は、このような短い時
間間隔で反応をサンプリングすることに関わる困難さのため、とても当てになら
ないからである。ヘリックスIIIの最適な長さは、ヘリックスIほど広範囲にわ
たって調べられなかった。しかし、有効なデータにより、ヘリックスIが6塩基
対を有するとき、10塩基対ヘリックスIIIを有する複合体を形成する基質は、
6塩基対ヘリックスIIIを形成する基質より速く開裂されることが示される。表
4は、3種のリボザイムTAT RB−10/10、Kr RA−10/10お
よびKrRB−10/10による基質S17−10/6およびS13−6/6の
開裂
速度定数を示しており、ここで、リボゾーム一基質複合体は、ヘリックスIIIに
10塩基対または6塩基対を有する一方、ヘリックスIに一定の6塩基対がある
。しかし、速度定数における違いは、多くても2倍しかない。従って、ヘリック
スIIIの長さの開裂速度定数に対する効果は、ヘリックスIの長さの効果ほど、
顕著なものではない。基質におけるミスマッチ
表5および図7における結果は、以前に広範囲にわたって特徴づけられた(He
rtelら、1994)OUシステムにおいて、最適開裂速度が、6ヌクレオチドのヘリ
ックスIの長さで達成されることを明らかに実証している。
リボザイム基質複合体の位置1.4におけるグアノシンリボヌクレオチドの存
在は(Hertelら、1992による番号付け)、6ヌクレオチドおよびそれ以下のヘリッ
クス長さのハンマーヘッドの反応性を明らかに抑制している。
<考察>
この一連の実験を通して、リボザイムは基質より過剰で、高濃度の前もって形
成されたリボザイムと基質の複合体が使用された。従って、リボザイムと基質の
結合もリボザイムからの開裂生成物の解離も、観察された開裂速度定数を限定す
るのに何の役割も果たしていない。これらの結果は、開裂ステップk2(図式1
)がヘリックスIの長さによって有意に影響を受けることを初めて実証している
。ヘリックスIのコンフォメーション融通性およびヘリックスIIIの安定性
これらの実験は、開裂反応のモデルと一致しており、このモデルにおいては、
へリックスIの一時的、部分的または完全な解離により、保存されたドメインの
強制的な構造再編成が可能となる。このモデルを使って、へリックスIは特定の
長さを有し、かつへリックスIIIについては明確な最適な長さが存在しないとい
う要件が説明できる。もしヘリックスIが長すぎたら、そのプロセスは、そのヘ
リックスの遅い解離によって妨げられ;もしヘリック
スIが短すぎたら、活性のある複合体はあまりに不安定になり得る。もしヘリッ
クスIIIが短すぎたら、ヘリックスIの解離の際に基質全体が解離する可能性が
非常に高く、全体的な開裂速度定数の低下という結果に至る。リボザイム開裂の
このモデルにより、リボザイムのハイブリダイズ性アームにおける(Hendryら、1
992;Shimayamaら、1993)、または基質の部位における(Shimayama、1994)DN
AのRNAとの置換が、いくつかの状況で、開裂ステップの速度定数を明らかに
増大させるという観察結果も説明することができる。
多くの刊行物が、電気泳動の移動度および他の方法により測定されたヘリック
ス間の角度における、マグネシウムイオン濃度に応じた主要な変化を実証してい
る(Bassiら、1995;Amiriら、1994;Gastら、1994)。マグネシウムイオンは、ヘ
リックスIがヘリックスIIと小角度をなすコンフォメーションにハンマーヘッド
を折りたたむように明らかに誘導する(Basslら、1995)。興味深いことに、2m
MのMg2-イオンの存在と、9塩基対の比較的安定なヘリックスIIIのみで、ヘ
リックスIとIIが接近して一緒に動くことが分かった(Amiriら、1994;Gastら、
1994)。リボザイムの活性型は、比較的近接してヘリックスIとIIを有している
ようである。これら研究で見られたヘリックスIのマグネシウムイオン誘導によ
る融通性は、ヘリックスIのある程度の不安定さという要件に関して我々がここ
で得た観察結果と関連している可能性がある。しかし電気泳動研究で見られたヘ
リックスIの移動において、鎖の解離した証拠はない。
他の研究は、ヘリックスIが比較的不安定である必要があり、ヘリックスIII
がより安定である必要があるという見解と一致している。非常に長いヘリックス
IIIという状況において、ヘリックスIは活性を低下させることなく、わずか3
塩基対に減少させることができた(Tablerら、1994);しかし、この場合、リボザ
イムと基質を前もってアニール化した事実にもかかわらず、観察された速度定数
は、pH8、20mM MgCl2でわずか約0.01min-1であり、これは
、短い基質の効率的な開裂で期待されたよりも約1000倍遅い。保存されたド
メインに近いヘリックスIまたはヘリックス
IIIにおけるミスマッチは、活性の劇的な低下を引き起こすことが示されたが、
ヘリックス1における末端のミスマッチは、最低限の影響しか示さなかった(Zou
madakisら、1994)。比較的短い基質に結合するヘリックスという状況において(W
ernerら、1995)、ヘリックスIの中心に近いミスマッチは、ヘリックスIIIの中
心よりずっと寛容であるが、最も内部の4塩基対のいずれものミスマッチは、k2
における有意な低下を引き起こした。非常に長いヘリックスIとIIを有したハ
ンマーヘッドという状況において、ヘリックスIIIの3塩基対から9塩基対への
延長は、観察された速度定数の100倍以上の増加を引き起こした(Amiriら、19
94)。別の研究において(Ellisら、1993)、開裂反応が律速であるとは考えられな
かった条件下とはいえ、ヘリックスIIIを8個から4個の有効塩基対に減少させ
たとき、過剰なリボザイムを使った比較的長い転写産物の開裂は、非常に有意な
活性低下を示した。
コンフォメーション変化の分子的根拠は、我々がここで行った観察結果からは
推論できない。基質類似体とハンマーヘッド型リボザイムとの複合体の結晶構造
は(Pleyら、1994)、潜在的な求核試薬が適切なリン酸基へのインライン攻撃に対
して正しく配置されていない不活性な構造を示している。いくつかのグルーブが
どのようにしてこのことが起こるかを推測したけれども(Scottら、1995;Setlik
ら、1995)、固体状態でみられたその不活性な構造がどのようにして活性型に変
換するのかは明らかではない。ヘリックスIを介してコンフォメーション変化を制限する特別な因子
ハンマーヘッド型リボザイムが基質類似体と複合体をつくった結晶構造におい
て(Pleyら、1994;Scottら、1995)、リボザイムの5’アームのあるリン酸基お
よび糖グループは、ループII近くのヘリックスIIの端部におけるリン酸基に接近
している。とりわけ、Pleyらによる結晶構造において(Pleyら、1994)、相互作用
は、リボザイムの5’アームの4番目と5番目のヌクレオチド(ヌクレオチド2
.4および2.5)、およびヘリックスIIの2ヌクレオチド(ヌクレオチド11
.3と11.4)に関係があり;Scottらに
よる構造においては(Scottら、1995)、相互作用はヌクレオチド2.5とヌクレ
オチド11.4との間である。我々は、ヘリックスIが5±1塩基対の長さであ
るときに最適開裂速度が観察されることに気づいたので、これらヘリックス間の
相互作用は、開裂メカニズムにおける重要な要素であり得るかもしれない。もし
これが事実なら、最適開裂速度は、相互作用の強度にかかわりなく、約5ヌクレ
オチドのヘリックスIで常に観察されるはずである。この研究は進行中である。
リボザイムTAT RA−10/10は、特別な事例であると思われる。この
リボザイムは、pH8.00で、短い類似体TAT RA−6/6が開裂するよ
り40倍以上遅い速度で13merの基質TAT S13−6/6を開裂する点
で例外的な活性を示す(Hendryら、1995)。例外的活性の原因は、リボザイムの5
’アームの末端ヌクレオチドにあるはずである。何故なら、TAT RA10/
5は、pH7.13で、わずか0.09±0.01min-1の速度定数でTAT
S13−6/6を開裂し、同じ条件下でTAT RA−5/10によるその基
質の開裂より50倍遅いからである。この状況から、我々は、リボザイムの5’
アームにおける末端ヌクレオチドが塩基配列5’GUCCを有することに気づき
、これはヘリックスIIの4塩基に相補的であり、その上、A2.5からC3とG8か
らUL2.1との配列の間に高度な相補性がある。従って、TAT RA−10/1
0の例外的開裂速度は、偽の塩基対合の相互作用により引き起こされると思われ
る。
HH16の速度論は、短くしたヘリックスIの効果に関する最近の論文も含め
て(Hertelら、1996)、広範囲にわたって研究されてきた(Hertelら、1994)。この
リボザイムは、十分理解され、且つ使い易いハンマーヘッドリボザイムの例であ
ることが広く受け入れられており、そのリボザイムにおいては、開裂ステップが
律速である。不思議なことに、HH16は、標準的命名法における位置1.4−
2.4にG−Uミスマッチを有している。Uhlenbeckのデータは、ヘリックスI
が約5または6ヌクレオチドの長さであるとき、開裂速度定数に(我々の考え方
による)期待ピークを示さなかった。我々は、このシステムをさらに調査し、一
連の基質だけでなく、13
から18ヌクレオチドの種々の長さのHH16の類似システムを合成し、ここで
は、位置1.4−2.4でのミスマッチは、ワトソン−クリックのA−Uペアに
置換した。
HH16に最も類似したハンマーヘッドである、OU RA−8/8+OU
S−18−8/8の開裂速度定数は、pH7.6、25℃で、1.4±0.1m
in-1であることが分かった。正常なpH依存を仮定して、これをpH7.5に
調整すると、1.1min-1の速度定数が得られ、この値はこれらの条件下で公
表された速度定数1.0min-1とかなり一致している。
完全に相補的な基質(OU CS)を持ったハンマーヘッドにおいて、ヘリッ
クスIの長さによる開裂速度定数の通常の傾向が観察され(OU RA−8/8
+OU CSシリーズ)、開裂速度定数は、ヘリックスIの長さ6塩基対でピー
クとなり、このピークの両側で有意に減少した。
短くしたリボザイムを、4塩基対(2.5min-1)から6塩基対(8min-1
)までのヘリックスIの長さによって速度定数が増加する相補的基質(OU
RA−6/8+OU CAシリーズ)とともに使用すると、不思議なことに、リ
ボザイム上の5’アームの長さにより制限されるため、ヘリックスIの長さをさ
らに増加することは不可能であるが、基質の長さを増加すると、観察される開裂
速度が有意に低下するという結果が得られた(OU RA−6/8+OU CS
−18−8/8;kobs=4.3min-1)。その速度は、対称型リボザイムにつ
いて観察された程度までは低下しないが(OU RA−8/8+OU CS−1
8−8/8;kobs=0.71min-1)、有意な低下である。それは、OU R
A−6/8(8.0min-1)とOU RA−8/8(3.9min-1)につい
てのOU CS−15−8/6の速度定数の違いにより反映される。このことは
、この特定のシステムにおいて、ヘリックスI末端でのリボザイムまたは基質の
突出を有することにより受けるカイネティックペナルティがあることを示唆して
いる。これは、別の(不活性な)構造を形成する能力におそらく関連している別のコンフォメーション融通性
in vitro開裂が、ヘリックスIもIIIも非常に長い場合に観察されるという事
実により(Homannら、1993;Loら、1992)、リボゾーム−基質複合体が活性なコン
フォメーションに達するための別の経路の存在が示唆される。例えば、ヘリック
スIIはコンフォメーション変化を許容するのに十分ゆるめ得ることが可能であろ
う。この仮説を支持して、我々は、各ハイブリダイズ性アームに10ヌクレオチ
ドを有するミニザイム(ヘリックスIIの欠損したリボザイム)が、常に、対称型
13mer基質より対称型21mer基質を効率良く開裂することを観察し、さ
らに、(複合体のヘリックスIに、それぞれ5塩基対および10塩基対を有する
)10/10基質と比べて10/5基質を開裂するこれらミニザイムに関して、
開裂速度定数の向上は観察されていない。従って、ミニザイムにより所持された
コンフォメーションの融通性は、ヘリックスIIの欠損のため、ヘリックスIの解
離なしで、活性コンフォメーションに達することを可能にする。その他の研究
Denmanらは(Denmanら、1995)、不安定化しているヘリックスIの効果を調査す
る明確な目的で、β−アミロイドペプチド前駆体(β−APP)を標的にした多
くのリボザイムを研究した。多様な基質コンフォメーションにより明らかに複雑
化した彼らの研究において、観察された開裂速度は非常に低かった。最も活性な
リボザイムは、ヘリックスIおよびヘリックスIIIがそれぞれ7塩基対および8
塩基対を有するものであると彼らは結論づけた。Amiri and Hagerman(Amiriら
、1994)は、非常に長いヘリックスIおよびIIを有する前もってアニール化した
リボザイムが、10mM MgCl2の添加により、pH8、25℃で、5mi
n-1以上の速度定数で、そのアニール化した基質を開裂できることを主張してい
る。しかし添付した図(Amiri自ら、1994における図2)は、約0.5min-1
の速度定数で、その条仲下での開裂を示していると思われる。リボザイムの設計
この研究においてリボザイム設計には非常に明白な意味がある。in vitroにお
ける最適開裂速度にとって、5’ハイブリダイズ性アームは、約5±1ヌクレオ
チドを含むべきである。3’ハイブリダイズ性アームのヌクレオチドの数は、あ
まり重要ではない;しかし、約5ヌクレオチドより大きいべきである。もし多様
な代謝回転が必要なら、開裂による5’生成物のリボザイムの3’アームからの
解離速度(つまり開裂後のヘリックスIIIの解離速度)も考慮しなければならな
い。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 1/21 C12N 1/21
5/10 5/00 A
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,
LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,
US,UZ,VN,YU
(72)発明者 マッコール、マキシン・ジェイ
オーストラリア国、エヌエスダブリュ
2112、プットニー、チャールズ・ストリー
ト 125