GREX-PLUS
GREX-PLUS(Galaxy Reionization EXplorer and PLanetary Universe Spectrometer、銀河進化・惑星系形成観測ミッション)は2030年代の打ち上げを目指して検討されている赤外線天文衛星[1][2]。銀河形成史の解明、および惑星系の成長の観測を目的としている[3]。
概要
[編集]GREX-PLUSは日本国内の大学の研究者を中心に検討が行われている次世代赤外線天文衛星。口径1.2 m級の宇宙望遠鏡として構想されており、観測装置として近中間赤外線広視野カメラと中間赤外線高分散分光器を搭載する。近中間赤外線広視野カメラは広視野のサーベイ観測により初代銀河の探索を行う[1]。一方中間赤外線高分散分光器は2020年までSPICAの一環で検討が行われてきた分光装置を基にしている。高分散分光ターゲット観測により、原始惑星系円盤内のスノーライン、惑星の大気中分子の化学を明らかにする[3]。またこの他にGREX-PLUSはSPICAで開発されてきた冷凍機技術も搭載し[3]、望遠鏡は-223 ℃(50 K)に冷却される[4]。
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所の中型ミッションとして2025年ごろの提案、そして2030年代半ばの打ち上げを目指している[3]。打ち上げ後5年間の科学運用と、延長で5年以上の運用を行うことを目標としている[3]。国際協力も検討中であるという[3]。2021年10月にはワーキンググループの設立が提案された[4]。
ミッションの目的
[編集]初期宇宙に存在していた最遠方の初代銀河を観測することで銀河の成長過程を特定する[3][5][6]。初代銀河の観測は、その形成に関わると考えられる超巨大ブラックホールや、当時の宇宙で起きた宇宙の再電離の理解にも繋がるとされる[1][7]。また2025年ごろに打ち上がるNASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡では観測が難しい、赤方偏移の高い最遠方の銀河はGREX-PLUSの波長帯・距離では観測できることが予想されている[6][5]。
惑星科学では、多数の原始惑星系円盤でスノーライン (雪線) の位置を特定することで、水の移動など太陽系の形成史の理解拡大につながると期待されている[8]。これまで太陽系内では小惑星探査機はやぶさ2がサンプルを採取した小惑星リュウグウなどから有機物が発見されているが、それがどのように生成されたかの詳細は明らかになっていない。GREX-PLUSが原始惑星系円盤内の有機物などの化学進化の様子を観測することで初期の太陽系が形作られていった過程の解明が期待されている[8]。
この他、GREX-PLUSを用いた太陽系内の天体や太陽系外惑星の観測などが構想されている[4]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 井上昭雄 (PDF), 遠方銀河と宇宙再電離の研究, 早稲田大学 理工学術院総合研究所 2021年8月23日閲覧。
- ^ “海外の宇宙ニュース:最も遠い(最も古い)銀河の候補が発見される”. 宇宙科学研究所 (2022年6月1日). 2022年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g 井上昭雄. “GREX-PLUS”. 国立天文台. 2021年8月23日閲覧。
- ^ a b c “GREX-PLUS サイエンス検討会 FY2021”. 早稲田大学 理工学術院先進理工学部物理学科観測宇宙物理学研究室. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b “The Universe’s Oldest Galaxies Hold Its Biggest Secrets”. デイリー・ビースト (2022年1月7日). 2022年3月27日閲覧。
- ^ a b 播金優一 (2022年2月12日). “A Search for H-Dropout Lyman Break Galaxies at z~12-16”. arXiv. 2022年3月27日閲覧。
- ^ 札本佳伸. “宇宙再電離期 (z∼ 7) におけるダストに隠された optically-dark 銀河の初検出”. 日本天文学会. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b 黒川宏之 (2022年3月24日). “GREX-PLUSで期待される惑星サイエンス:理論・太陽系探査とのシナジー”. 2022年4月3日閲覧。
関連項目
[編集]研究分野
[編集]これまでの赤外線天文衛星
[編集]- あかり (赤外線天文衛星)
- IRAS (赤外線天文衛星)
- 赤外線宇宙天文台
- スピッツァー宇宙望遠鏡 (赤外線宇宙望遠鏡)
外部リンク
[編集]- 最初の星を探せ 日本発の宇宙望遠鏡計画 - 日経サイエンス