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カレーで知る、自動車メーカーの個性①(いすゞ自動車、スズキ、UDトラックス)

自動車メーカーのオリジナルカレーをご存じでしょうか。日本のメーカーでは5社がレトルトカレーを販売しています。「カレーで知る、自動車メーカーの個性」シリーズは2回にわたり、商品化された背景やコンセプトの紹介、値段や購入方法などを紹介します。第1回は、いすゞ自動車、スズキ、UDトラックスです。

いすゞプラザで販売されているレトルトカレー

「いすゞのトラック」のパッケージ

いすゞ自動車のレトルトカレーの商品化は2023年、グループ企業のUDトラックスがジャパンモビリティショーで販売したカレーが来場者に好評だったことがきっかけで検討が始まりました。2025年の同ショーでの発売を目標に、約2年間かけて商品化計画を練り、開発に取り組みました。

当初は、シチューや牛丼、スープなどカレー以外の食品も候補に挙がりましたが、最終的に▽自社の拠点が多い神奈川県にちなんだ商品であること▽パッケージでも「いすゞらしさ」を表現できることなどを勘案し、レトルトカレーに決まりました。「神奈川県らしさ」と「トラックの世界観」の融合、イベントや「いすゞプラザ」で顧客との新たな接点になる商品を目指し、担当グループを作って開発。目標だったジャパンモビリティショー2025では、1箱に2個のレトルトカレーが入ったパッケージ約700セットを販売しました。

“荷台”から出てくるカレー

パッケージにはサプライズがあります。トラック模型風の箱ですが、その荷台部分が引き出しになっていて、中にカレーが2つ入っているのです。箱は丈夫な紙でできていて、カレーもしっかり固定されて動きません。食べ終わった後も小物入れとして使えます。さすが、商用車づくりで堅牢(けんろう)性を大切にしてきたいすゞ自動車の「使う人のことを考え抜く姿勢」を感じます。

まさに、いすゞ自動車の経営理念体系「ISUZU ID」で掲げる「安心×斬新」がコンセプトのカレー2種。1つは「安心」の味といえる王道の欧風カレー。もう1つは「斬新」の表現として神奈川県らしさを意識した家系カレー。麺と合わせても楽しめるような濃厚な味わいのカレーです。いずれも商品名に「横浜」がついていて、「横濱ハイカラビーフカレー」「横浜家系カレー」と名付けられています。

開発時にこだわった「いすゞらしさ」を追求するあまり、2種をパッケージに収めたセット売りで生産コストが上がってしまい、販売価格の調整に苦戦したといいます。しかし今では、「珍しくて面白い」、「箱がかわいい」などの声が届き、取引先向けのお土産としても活用されています。

2種のカレーを試食

まずは欧風カレーから。“王道”らしく福神漬けとラッキョウを添えました。野菜が溶け込んだ濃厚なルーに牛肉とマッシュルーム。文明開化前の横浜港に到来したカレーを思わせるデミソース風のレトロな黒いカレーです。白米との相性は抜群で、老舗の洋食屋さんで食べている気分を味わうことができました。

家系カレーのパッケージには「鶏ガラスープを混ぜて中華麺と合わせる」という食べ方が紹介されています。これをヒントに和風だしを加えてうどんをつけて食べてみました。豚骨醤油スープの横浜家系ラーメンを思わせるつけ汁がよくからみ、濃厚なカレーうどんになりました。

いすゞプラザで販売中

いすゞ自動車のトラック型パッケージ入りカレー2個セットは、神奈川県藤沢市のいすゞプラザのグッズ販売コーナーで購入できます。価格は1,800円(税込み)。

スズキ食堂のレトルトカレー発端はスズキの社員食堂

スズキは世界最大のベジタリアン国家と言われるインドで大きなビジネスを展開しているメーカーです。インド出身の従業員も多く働いており、各拠点の社員食堂では40年以上にわたり従業員の食環境に対応。2010年ごろにベジタリアン料理、2024年には同じ静岡県浜松市で150年以上にわたり食を起点にさまざまな事業を展開している老舗企業「鳥善」と一緒に本格的インドベジタリアン料理を開発し提供を始めました。

この社員食堂で提供するために開発したベジタリアン料理がおいしくできたことから、「企業ミュージアム『スズキ歴史館』のお土産として日本中に届けられないか」となり、鳥善にレトルトにできないかと打診し、商品化を依頼しました。

しかし、レトルトカレーの開発には苦労もありました。レトルト食品は高温で加熱処理をする必要があるので、スパイスの味が飛んでしまう、具材が溶けてしまうなどの課題があり、解決に時間がかかりました。試作を重ねた結果、豆や野菜で奥深い味わいのあるルーに大きな具材が入った「スズキ食堂」のレトルトカレーが完成。社員食堂で提供している献立を再現し、2025年6月に発売となりました。

現時点で味は5種類あります。

  • 青葉ムングダール(辛さ1)=緑豆の皮をむいた黄ムング豆と小松菜を合わせた北インドの煮込み料理。
  • トマトレンズダール(辛さ2)=栄養豊富なレンズ豆をトマトと合わせた北インドの煮込み料理。2種のパッケージあり。
  • 大根サンバル(辛さ3)=大根、ニンジン、トゥール豆を使った南インドの煮込み料理で、タマリンドの酸味が特徴。
  • 茶ひよこ豆マサラ(辛さ4)=タンパク質豊富な皮付きの茶ひよこ豆をじっくり炒めた玉ねぎと合わせた北インドの煮込み料理。
  • 南瓜サンバル(辛さ2)=トゥール豆とカボチャをベースにした南インドの煮込み料理。最新作。

パッケージデザインは自動車デザイン制作と同じ工程?

パッケージにも手間がかかっています。制作の過程が本業の製品デザインと同じで、四輪デザインを担当しているデザイナーがデザインし、社内でプレゼンして選ばれたものをブラッシュアップしていくというプロセスでした。パッケージカラーも味のイメージから選定しています。

スズキ歴史館には①~④をまとめたパッケージが販売されています。箱の横部分の絵がつながっていて、束ねている帯には鈴木俊宏社長と先代社長の故鈴木修相談役の似顔絵が描かれています。

中味もパッケージもスズキのもの作り精神が注ぎ込まれたレトルトカレーと感じます。そこには、関係が深いインドについて「食文化を通じて日本人に理解してほしい」という思いが詰まっています。レトルトカレーというより「レトルトインド料理」なのかもしれません。

2種のカレーを試食

1つ目は「トマトレンズダール」。中東発祥でひよこ豆をペースト状にしたフランス定番のおつまみ「フムス」の食感に似た、優しい口当たりでした。レンズ豆とトマトがベースでニンニクの香りがするので、食欲をそそります。万願寺唐辛子とトマトを焼いて真ん中に添えました。

2つ目は「南瓜サンバル」で、スズキ食堂で一番新しい商品です。南瓜(カボチャ)とニンジンがゴロゴロ入っていて、インドのキマメがコクを出すいい仕事をしています。程よい辛さにカボチャの甘味が混ざり合い、深い味わいの一品でした。カボチャと相性がいいレーズンを白米に乗せました。

スズキ歴史館などで販売中

スズキ食堂のレトルトカレーは、インターネット通販サイト「S-MALL」と静岡県浜松市のスズキ歴史館1階にある「S-MALLスズキ歴史館ショップ」で購入できます。価格は1個918円(税込み)。ジャパンモビリティショーやオートサロン、モーターサイクルショーなどの出展ブースでも販売しています。

UDトラックスのビーフカレー

「地域貢献」の思いが詰まったカレー

材木を積んだ懐かしいフロントマスクのトラックが描かれた、レトロで力強い印象のパッケージ。「UDトラックスのビーフカレー」は異色の存在感を放っています。

2010年、グローバルブランドである「UD」を冠した現在の社名「UDトラックス」が誕生しました。これを機に、1962年から続く埼玉県の上尾工場の地域貢献のため地元企業と連携したオリジナル商品の考案が始まりました。カレーもその1つで、工場からほど近くにあるスパイス専業メーカー「井上スパイス工業」とのコラボレーションによるものです。

カレーのほかに、まんじゅうやせんべい、ドリップコーヒーも作りました。いずれも非売品ですが、イベントでの配布や限定販売、営業社員の手土産などに活用しています。同市などが主催する市民マラソン「上尾シティハーフマラソン大会」では参加者にドリップコーヒーを配布しました。ビーフカレーは、2023年のジャパンモビリティショーの自社ブースで1080円(税込み)で販売し、大好評でした。

17種類のスパイスをミックス

カレーの中身は、井上スパイス工業が販売している「スパイスカレー ビーフ」です。カレーによく使われるスパイスであるグリーンカルダモンの3~4倍の大きさのビッグカルダモンなど、17種類のスパイスをブレンドしています。パンチのある香りが立って風味豊かな味わいを引き出し、パッケージには「スパイス専業メーカーが奏でる17種類のスパイスの交響楽」と“スパイス自慢”とも言えるキャッチコピーが書かれています。

「ミンセイ 6TW12」

パッケージに描かれているトラックは、同社の前身である「民生デイゼル工業」が1960年に発売した名車「ミンセイ 6TW12」。高層ビルやダムなどの建設現場で活躍しました。戦後の長距離物流を支え、日本の高度経済成長を後押しした功績が評価され、2025年度に「日本自動車殿堂 歴史遺産車」に選定されました。

 

ビーフカレーを試食

スパイス専業メーカーが作ったことを打ち出しているだけあって、ルーを口にするとスパイスの立体感のようなうま味を感じます。もちろん、17種類のスパイスを1つずつ感じることはできませんが、赤ワインも使って奥深い風味を大切にした「スパイシーなのにマイルド」という感覚に満たされます。

皿に盛り付けると、大きな牛肉の塊がルーから顔を出します。すくうとカレースプーンほどの大きさで、柔らかくてホロホロしています。牛肉を崩して白米、ルーと一緒にほおばることができました。

関連リンク

いすゞ自動車

スズキ

UDトラックス