明 細書 亜鉛蛍光プローブ 技術分野
本発明は、 亜鉛ィォンを特異的に捕捉するための蛍光プロープに関するもので ある。 背景技術
亜鉛はヒトの体内において鉄に次いで含量の多い必須金属元素であり、 細胞内 のほとんどの亜鉛ィオンは蛋白質と強固に結合して、 蛋白質の構造保持や機能発 現に関与している。 また、 細胞内にごく微量存在するフリーの亜鉛イオン (通常 は μ Μレベル以下である) の生理的役割についても、 種々の報告がある。 特に、 細胞死の一つであるアポトーシスには亜鉛ィオンが深く関わっていると考えられ ており、 ァルツハイマー病の老人斑の形成を促進しているなどの報告もある。 従来、 組織内の亜鉛イオンを測定するために、 亜鉛イオンを特異的に捕捉して 錯体を形成し、 錯体形成に伴って蛍光を発す 化合物 (亜鉛蛍光プローブ) が用 いられている。 亜鉛蛍光プローブとして、 例えば、 T S Q (Reyes, J. G. , et al. , Biol. Res., 27, 49, 1994)、 Zinquin ethyl ester (Tsuda, M. et al. , eurosci. , 17, 6678, 1997)、 Dansylaminoethylcyclen (Koike, T. et al. , J. Am. Chem. Soc. , 118, 12686, 1996)、 Newport Green (Molecular Probe 社のカタログである "Handbook of t丄 uorescent Probes and Research Chemicals" 6th Edition by Richard P. Haugland pp. 531-540)などが実用化されている。
本発明者らは、 T S Qなどの亜鉛蛍光プローブの欠点を克服した高感度な亜鉛 蛍光プローブとして、 環状アミン又はポリアミンを置換基として有し、 亜鉛ィォ ンを捕捉して長波長領域の励起光で強い蛍光を発するプローブを提供しており (特開平 2000-239272号公報)、亜鉛イオンと瞬時に反応して蛍光性の錯体を形成
し、 生体内の亜鉛を極めて正確かつ高感度に測定できるプローブも提供している
(J. Am. Chem. Soc. , 2000, 122, 12399-12400) 0
一方、 細胞に蛍光プローブを適用するときには、 細胞内に導入される蛍光プロ ーブの濃度が細胞の種類によってばらつく場合があり、 また細胞膜の厚さの違い によつて測定部位でも蛍光強度に差が生じ、 膜などの疎水性の高い部分に蛍光プ ロープが局在してしまう可能性があるなど、 測定に景響を与える要因も多い。 これらの要因による測定誤差を減少させ、 正確な定量的解析を行える方法とし てレシオ(ratio)測定法が開発され使用されている (Kawanishi Y., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 39 (19) , 3438, 2000)。 この方法は、 蛍光スペクトル又は励起ス ぺクトルにおいて異なる 2波長での蛍光強度を測定してその比を検出する工程を 含んでおり、 蛍光プローブ自体の濃度や励起光強度による影響を無視できるとと もに、 1つの波長で観測を行つた場合に生じる蛍光プローブ自身の局在や濃度変 化、 あるいは退色などによる測定誤差をなくすことができる。
例えば、 カルシウムイオンの測定用の蛍光プローブとして Fura 2 (1- [6-アミ ノ -2- (5-カルボキシ- 2-ォキサゾリル) -5 -べンゾフラニルォキシ] -2 - (2 -ァミノ - 5 -メチルフエノキシ)ェタン- Ν, Ν, Ν' , Ν,-テトラ酢酸'ペンタカリゥム塩: Dojindo Laboratories第 21版/総合カタログ、 137〜138頁、 1998年 4月 20日発行、株式 会社同仁化学研究所) が実用化されている。 この化合物は、.カルシウムイオン結 合により励起波長のピークが低波長側にシフトする性質を有しており、 335 nm付 近で励起した場合にはカルシウムイオン濃度の上昇に伴って蛍光強度が増大する のに対して、 370〜380 nm付近で励起したときにはカルシウムイオン濃度の増加 とともに蛍光強度が減少する。 従って、 この化合物を適当な 2波長を用いて励起 し、 そのときの蛍光強度の比をとることにより、 プローブ濃度、 光源強度、 細胞 の大きさなどに関係なくカルシウムィォンを正確に測定できる。
また、前記 Fura 2あるいはその類似構造ィ匕合物がカルシウムイオン以外のィォ ンも捕捉してしまう性質を利用し、 亜鉛イオン検出への応用を検討した報告もあ 5 (Hyrc K. L. , et al. , Cell Calcium, 27 (2) , 75, 2000) 0
しかしながら、 従来、 亜鉛蛍光プローブに関しては、 亜鉛イオンと特異的に結 合して励起スぺク トルあるいは蛍光スぺク トルのピークに十分な波長シフトを生 じるプローブが開発されておらず、 細胞中の亜鈴ィォンを正確に測定するために レシオ法を利用することができなかった。 発明の開示
本発明の課題は、 高感度な亜鉛蛍光プローブとして利用可能な化合物又はその 塩を提供するこ.とにある。 より具体的には、 亜鈴イオンを特異的に捕捉すること ができ、 亜鉛イオンを捕捉することによって励起スぺクトルあるいは蛍光スぺク トルのピークに波長シフトを生じる化合物を提供することが本発明の課題である。 また、 本発明の課題は、 亜鉛イオンをレシオ測定法により測定するための蛍光プ ロープとして利用可能な化合物を提供することにある。 さらに本発明の別な課題 は、 上記の特徴を有する化合物を含む亜鉛蛍光プローブ、 及ぴ該亜鉛蛍光プロ一 プを用いた亜鉛イオンの測定方法を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すベく鋭意研究を行つた結果、下記の一般式 (I) で表される化合物が亜鉛イオンを特異的に捕捉することができ、 亜鉛イオンを捕 捉することによって励起スぺク トルのピークに顕著な波長シフトを生じること、 及び該化合物を用いてレシオ法により亜鉛ィオンを極めて正確に測定できること を見出した。 本努明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
すなわち、 本発明は、 下記の一般式 (I) :
(I)
〔式中、 R
1は水素原子、 アルキル基、 アルコキシ基、 又はヒドロキシ基を示し R
2は下記の式 (A) :
(式中、 X1、 X2、 X3、 及ぴ X4はそれぞれ独立に永素原子、 アルキル基、 又は2-ピ リジルメチル基を示し、 m及ぴ nはそれぞれ独立に 0又は 1を示す _) で表される 基を示し; Yは単結合又は- CO-を示し; R3はカルボキシ置換ァリール基、 カルボ キシ置換へテロアリール基、 ベンゾチアゾール -2-ィル基、又は 5-ォキソ -2-チォ キソ- 4 -ィミダゾリジニリデンメチル基を示す〕で表される化合物又はその塩が提 供される。
この発明の好ましい態様によれば、 mが 0又は 1であり、 nが 0である上記の 化合物又はその塩; X1及ぴ X2がともに 2-ピリジルメチル基であり、 mが 1である 場合には X3が水素原子である上記の化合物又はその塩; Yが単結合である上記の 化合物又はその塩; R1がメ トキシ基である上記の化合物又はその塩; R3がカルボ キシ置換ァリール基又はカルポキシ置換へテロアリール基である上記の化合物又 はその塩;ァリール環又はへテロアリール環上に置換する力ルポキシル基が保護 某を有している上記の化合物又はその塩;保護基を有するカルボキシル基がメ ト キシカルボニル基又はァセトキシメチルォキシカルボニル基である上記の化合物 又はその塩が提供される。
特に好ましい態様によれば、
mが 1であり、 n力 S 0であり、 X1及び X2がともに 2-ピリジルメチル基であり、 X3 が水素原子であり、 Yが単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 が P-カルボキ シフエニル基である上記の化合物又はその塩;
mが 1であり、 nが 0であり、 X1及ぴ X2がともに 2-ピリジルメチル基であり、 X3 が水素原子であり、 Yが単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 が 5-カルボキ
シォキサゾール- 2-ィル基である上記の化合物又はその塩;
m力 S 0であり、 n力 S 0であり、 X1及び X2がともに 2 -ピリジルメチル基であり、 Y が単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 が 5-カルボキシォキサゾール- 2 -ィ ル基である上記の化合物又はその塩;
mが 1であり、 n力 S 0であり、 X1及ぴ X2がともに 2-ピリジルメチル基であり、 X3 が水素原子であり、 Yが単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 R3が P-ァセトキ シメチルォキシカルポユルフェニル基である上記の化合物又はその塩;
mが 1であり、 nが 0であり、 X1及ぴ X2がともに 2 -ピリジルメチル基であり、 X3 が水素原子であり、 Yが単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 が 5-ァセトキ シメチルォキシカルボニルォキサゾ一ル- 2-ィル基である上記の化合物又はその 塩;及ぴ
mが 0であり、 n力 S 0であり、 X1及ぴ X2がともに 2-ピリジルメチル基であり、 Y が単結合であり、 R1がメ トキシ基であり、 が 5-ァセトキシメチルォキシカルボ -ルォキサゾール- 2-ィル基である上記の化合物又はその塩
が提供される。
別の観点からは、 上記の化合物又はその塩を含む亜鉛蛍光プローブ;上記の化 合物又はその塩と亜鉛イオンとにより形成された亜鉛錯体;及ぴ上記の化合物又 はその塩を含む亜鉛イオンの測定用試薬が本発明により提供される。
さらに別の観点からは、 亜鉛イオンの測定方法であって、 下記の工程:
(a)上記の化合物又はその塩と亜鉛イオンとを反応させる工程;及び
(b)上記工程 (a)で生成した亜鉛錯体の蛍光強度を測定する工程
を含む方法;及び測定をレシオ法により行う上記の方法が提供される。
また、 亜鉛イオンの測定方法であって、 下記の工程:
(a)カルボキシル基が保護された上記の化合物又はその塩を細胞内に取り込ませ る工程; -
(b)細胞内に取り込まれた該化合物又はその塩の加水分解により生じた化合物又 はその塩 (ただしそのカルボキシル基は保護基を有しない) と亜鉛イオンとの反
応により生じた亜鉛錯体の蛍光強度を測定する工程
を含む方法;及び測定をイメージングにより行う上記の方法が提供される。 図面の簡単な説明
第 1図は、 本発明の化合物 (化合物(11) ) における亜鉛イオンの濃度に依存し た励起スぺク トル変化を示す。
第 2図は、 化合物 (11)における亜鉛ィォン及び他の金属ィオンを用いたレシオ 測定の結果を示す。 図中、 (A)は亜鉛イオン添加によるレシオ変化を示し、 (B)は 亜鉛以外の金属イオンを添加した場合のレシオ変化を示す。
第 3図は、 本発明の化合物のスペクトル特性を示した図である。 a)化合物(14) の UVスぺク トル変化、 b)化合物(14)の蛍光波長を 495 nmに固定した時の励起ス ベク トル、 c)化合物(11)の UVスぺク トル変化、 d)化合物(11)の蛍光波長を 530 nm に固定した時の励起スぺク トルを示す。
第 4図は、 本発明の化合物のスペクトル特性を示した図である。 a)化合物(15) の励起波長を 325 nmに固定した時の蛍光スぺク トル、 b)化合物(15)の蛍光波長を 445 nmに固定した時の励起スぺクトルを示す。
第 5図は、 化合物(13)を使用した場合の細胞内の亜鉛イオン濃度の変化を、 蛍 光顕微鏡にて 340皿と 380 nmで励起したときの蛍光強度比の変化により示した 図である。矢印( 1 )の時点において硫酸亜 150 Μとピリチオン 15 μ Μを添カ卩し、 矢印(2)の時点で ΤΡΕΝ 400 μ Μを添加した。
第 6図は、 化合物 (13)を使用した場合の細胞の透過光像及び蛍光強度比の変化 を示した図である。 (a)は透過光像、 (b)は刺激前、 (c)は硫酸亜鉛とピリチオンを 用いて細胞内亜鉛イオン濃度を上昇させた後、 (d)は TPENを用いて細胞内亜鉛ィ オン濃度を下降させた後の結果を示す。 発明を実施するための最良の形態
本明細書において、 「アルキル基」又はアルキル部分を含む置換基(例え ¾アル
コキシ基など) のアルキル部分は、 例えば、 炭素数 1〜: 12個、 好ましくは炭素数 1〜6個、 好ましくは炭素数 1〜 4個の直鎖、 分枝鎖、 環状、 又はそれらの組み 合わせからなるアルキル基を意味している。 より具体的には、 アルキル基として 低級アルキル基 (炭素数 1〜6個のアルキル基) が好ましい。低級アルキル基とし ては、 例えば、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 イソプロピル基、 シクロ プロピル基、 n—プチノレ基、 s e c—プチル基、 イソブチノレ基、 t e r t—プチ ル基、 シクロプロピルメチル基、 n—ペンチル基、 n—へキシル基などを挙げる ことができる。 R1が示すアルキル基としてはメチル基が好ましく、 R1が示すアル コキシ基としてはメ トキシ基が好ましい。 特に好ましいのはメ トキシ基である。 R2における X1、 X2、 X3、 及び X4が示すアルキル基としてはメチル基が好ましい。
R3が示すカルボキシ置換ァリール基におけるァリール基としては、 単環性又は 縮合環性のァリ一ル基を用 、ることができ、 例えばフエ -ル基又はナフチル基な どが好ましい。 特に好ましいのはフヱニル基である。 R3が示す'カルボキシ置換へ テロァリール基におけるへテロアリール基としては、 単環性又は縮合環性のへテ ロアリ一ノレ基を用いることができる。 ヘテロァリール基に含まれるヘテロ原子の 個数及ぴ種類は特に限定されないが、 例えば、 窒素原子、 酸素原子、 及びィォゥ 原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を 1〜 4個、 好ましくは 1〜 3個、 より 好ましくは 1又は 2個含んでいてもよい。 ヘテロァリール基を構成するへテロァ リ一ル化合物として、 例えばォキサゾーノレ、 ィミダゾーノレ、 チアゾ一ノレ、 ベンゾ ォキサゾール、 ベンゾイミダゾール、 又はべンゾチアゾールなどを例示すること ができるが、 これらに限定されることはない。 ヘテロァリール基としてはォキサ ゾリル基が好ましい。
R3が示すカルボキシ置換ァリール基又はカルボキシ置換へテロアリール基にお いて、 了リ一ノレ環又はへテロァリール環上に置換するカルボキシル基の個数は特 に限定されないが、 好ましくは 1〜 2個、 特に好ましくは 1個である。 ァリール 環又はへテロァリール環上に置換するカルボキシル基は保護基を有していてもよ い。力ルポキシル基の保護基については、例えば、プロテクティブ'グループス ·
イン ·オーガニック -シンセシス (Protective Groups in Organic Synthesis) グリーン (T. W. Greene) 著、 ジョン 'ワイリー 'アンド 'サンズ 'インコーポ レイテッド (John Wiley & Sons, Inc. ) (1981年) などを参照することができる。 保護基を有するカルボキシル基の好ましい例としては、 エステル類、 特にアルコ キシカルボ二ル基を挙げることができる。 アルコキシカルボニル基の特に好まし い例としてメ トキシカルポ二ル基を挙げることができる。 また、 膜透過性を高め たい場合には、 カルボキシル基の保護基としてァセトキシメチル基を用レ、、 保護 基を有する力ルボキシル基をァセトキシメチルォキシカルボニル基とすることが 特に好ましい。 ァリール環又はへテロァリール環上に置換するカルボキシル基の, 位置は特に限定されないが、 ァリール基としてフエ二ル基を用いる場合にはパラ 位が好ましい。
式 (A)で表される基において、 mが 0又は 1であり、 nが 0であることが好まし V、。 この場合、 X1及ぴ X2がともに 2-ヒ。リジルメチル基であることが好ましく、 m が 1である場合には X3が水素原子であることが好ましレ、。 Yは単結合又は -CO-を 示すが、 Yが単結合であることが好ましい。 Yが単結合を示す場合には、 R3がカル ポキシ置換ァリール基又はカルポキシ置換へテロアリール基であることが好まし く、 より具体的には R3がカルポキシ置換フエニル基又はカルポキシ置換ォキサゾ リル基であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は酸付加塩又は塩基付加塩として存 在することができる。 酸付加塩としては、 例えば、 塩酸塩、 硫酸塩、 硝酸塩など の鉱酸塩、 又はメタンスルホン酸塩、 p-トルエンスルホン酸塩、 シユウ酸塩、 ク ェン酸塩、 酒石酸塩などの有機酸塩などを挙げることができ、 塩基付加塩として は、 ナトリウム塩、 カリウム塩、 カルシウム塩、 マグネシウム塩などの金属塩、 アンモニゥム塩、 又はトリェチルァミン塩などの有機アミン塩などを挙げること ができる。これらのほ力 \グリシンなどのアミノ酸との塩を形成する場合もある。 本発明の化合物又はその塩は水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、 これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。
上記一般式 (I)で表される本発明の化合物は、置換基の種類によ.り、 1個又は 2 個以上の不斉炭素を有する場合があるが、 1個又は 2個以上の不斉炭素に基づく 光学活性体や 2個以上の不斉炭素に基づくジァステレオ異^"生体などの立体異性体 のほか、 立体異性体の任意の混合物、 ラセミ体などは、 いずれも本発明の範囲に 包含される。 ·
本発明の上記一般式 (I)で表される化合物の代表的化合物の製造方法を、下記の スキームに示す。 本明細書の実施例には、 このスキームに記載した製造方法がよ り詳細かつ具体的に示されている。 従って、 当業者は、 これらの説明を基にして 反応原料、 反応条件、 及び反応試薬などを適宜選択し、 必要に応じてこれらの方 法に修飾や改変を加えることによって、上記一般式 (I)で表される本発明の化合物 をいずれも製造することができる。
OCH,
12
4 12
H2CH3
上記一般式 (I)で表される本発明の化合物又はその塩は、亜鉛蛍光プローブとし て有用である。上記一般式 (I)で表される本発明の化合物又はその塩は、亜鈴ィォ ンを捕捉して亜鈴錯体を形成すると、 励起スぺクトルのピークに顕著な波長シフ
トを生じる。 この波長シフトは、 亜鉛イオン濃度に応じて通常は約 20 nm程度ま での範囲で観測でき、 他の金属イオン (例えばナトリウムイオン、 カルシウムィ オン、 カリウムイオン、 又はマグネシウムイオンなど) の影響を受けずに亜鉛ィ オンに特異的な波長シフトとして観測できる。 従って、 本発明の化合物を亜鉛蛍 光プローブとして用い、 適当な異なる 2波長を選択して励起し、 その時の蛍光強 度の比を測定することにより、 亜鉛イオンをレシオ法によって測定することが可 能になる。 異なる 2波長は、 一方の波長において励起した場合に亜鉛イオン濃度 の上昇に伴って蛍光強度が増大し、 かつ他方の波長において励起した場合には亜 鉛イオン濃度の上昇とともに蛍光強度が減少するように選択することができる。 レシオ法については Mason W. T. の著書(Mason W. T. in Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity, Second Edition, Edited by Mason W. T. , Academic Press)などに詳細に記載されており、 本明細書の実施例にも本発 明の化合物を用いた測定方法の具体例を示した。
また、上記一般式(I)で表される本発明の化合物又はその塩は亜鉛イオンを特異 的に捕捉することができ、 極めて錯体形成が速やかであるという特徴を有してい る。従って、上記一般式 (I)で表される本発明の化合物又はその塩は、生細胞や生 組織中の亜鉛ィォンを生理条件下で測定するための亜鉛蛍光プロ一ブとして極め て有用である。 なお、 本明細書において用いられる 「測定」 という用語について は、 定量及ぴ定性を含めて最も広義に解釈すべきものである。
本発明の亜鉛蛍光プ口ーブの使用方法は特に限定されず、 従来公知の亜鉛プロ ープと同様に用いることが可能である。 通常は、 生理食塩水や緩衝液などの水性 媒体、又はエタノール、ァセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、 ジメチルホルムァミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに上 記一般式 (I)で表される化合物及ぴその塩からなる群から選ばれる物質を溶解し、 細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、 適宜選択された異なる 2波長により励起して、 それぞれの蛍光強度を測定すればよい。
例えば、 上記スキーム中の化合物 11の励起波長は 354 nm、 蛍光波長は 532 nm
であり、 20 ¾1で亜鉛蛍光プローブとして用いると 20 程度の濃度までの亜鉛 イオンを捕捉し、 亜鉛イオンの濃度に依存して励起スぺク トルのピークが 20 nm 程度ブルーシフトする。 従って、 この化合物をプローブとして用いる場合には、 励起波長として例えば 335 nm及び 354 nmを用い、 それぞれの励起波長における 蛍光強度を求めて比を算出すればよい。 なお、 本発明の亜鉛蛍光プローブを適切 な添加物と組み合わせて組成物の形態で用いてもよい。 例えば、 緩衝剤、 溶解補 助剤、 pH調節剤などの添加物と組み合わせることができる。 実施例 .
以下、 本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、 本発明の範囲は下記 の実施例に限定されることはない。 実施例中 化合物番号は、 上記のスキーム中 の化合物番号に対応している。 例 1
ィ匕合物(2)を Journal of Organometalic Chemistry, 2000, 611, pp. 586-592 に記載の方法に従って合成した。化合物 (2) 4. 7 g (29腿 ol)をエタノール 150 ml に溶かし 炭酸ナトリウム 12 g (0. 12 mol)と 2 -(クロロメチル)ピリジン塩酸塩 9. 6 g (58 mmol)を加え、 1日加熱還流した。 エタノールを減圧下留去し、 2 N水 酸化ナトリウム水溶液に懸濁した後、 ジクロロメタンで抽出した。 飽和食塩水で 洗浄後、 炭酸カリウムで乾燥し、 ジクロロメ'タンを減圧下留去した。 残渣をアル ミナカラムにて精製して化合物(3) 9. 9 gを得た (収率:定量的)。
褐色油状物質.
¾ -顧 R (CDC13, 300 MHz): 8. 55 (m, 2H) , 7. 64 (m, 2H) , 7. 42 (d, 2H, J = 9. 0) , 7. 16 (m, 2H) , 5. 80 (br, 1H), 3. 87 (s, 4H) , 3. 23 (t, 2H, J = 6. 0) , 2. 71 (t, 2H, J = 6. 0) 化合物(3) 1. 1 gをジクロロメタン 25 mlに溶かし、 トリフルォロ酢酸 25 ml
に氷冷下滴下した。 室温で 1時間撹拌し、 45°Cでトリフルォロ酢酸を減圧下に留 去した。 残留物に 2N水酸化ナトリゥム水溶液 25 ml を加え、 ジクロロメタンで 抽出し、 飽和責塩水で洗浄後、 炭酸力リゥムで乾燥した。 ジクロロメタンを減圧 下留去し、残渣をアルミナカラムで精製して化合物(4) 0.64 gを得た(収率 85%)。 褐色油状物質。
¾- MR (CDC13 , 300 MHz): 8.54 (m, 2H), 7.65 (m, 2H), 7.50 (d, 2H, J = 7.8), 7.15 (m, 2H), 3.85 (s, 4H), 2.80 (t, 2H, J - 6.0), 2.66 (t, 2H, J = 6.0), 1.42 (br, 2H)
2, 5 -ジメ トキシブロモベンゼン(5) 7.0 ml (47讓 0;!)を 160 mlのジクロ口メタ ンに溶かした溶液に、 アルゴン下- 78°Cで塩ィヒチタン(IV) 13 ml (0.12 mol)、 続 いてジクロロメチルメチルエーテル 8.2 ml (0.14 mol)を加え、 - 78°Cで 1時間撹 拌した。 反応液を氷水 600 mlに少しずつ加えた後にジクロロメタンで抽出した。 ジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリゥム水溶液、 水、 飽和食塩水で洗浄後、 硫酸ナトリウムで乾燥した。 ジクロロメタンを減圧下留去し、 シリカゲルカラム により精製して化合物(6) 9.9 gを得た (収率 87%)。
-膽 (CDC13, 300 MHz): 10.40 (s, 1H), 7.34 (s, 1H), 7.25 (s, 1H), 3.91 (s, 3H), 3.90 (s, 3H) 化合物(6) 5.0 gをニトロメタン 130 mlに溶かし、 塩化亜鈴を飽和させた二ト ロメタン 80 ml、 続いて 1.0 M,三塩化ホゥ素ジクロロメタン溶液 60 mlをカロえ、 室温で 4 時間撹拌した。 さらに 1.0 M三塩化ホウ素ジクロロメタン溶液 20 ml を加え、室温で 2時間撹拌した。 反応液に水:メタノール =1: 1を 100 ml加え、 室温で 30分間撹拌した後、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン層を飽和 食塩水で洗浄後、 硫酸ナトリウムで乾燥した。 ジクロロメタンを減圧下留去し、 残渣をシリカゲルカラムにより精製して化合物(7) 3.5 gを得た (収率 74%)。 ¾ -腿 (CDC13, 300 MHz): 10.72 (s, 1H), 9.85 (s, 1H), 7.28 (s, 1H), 6.98 (s,
1H), 3.91 (s, 3H) - 化合物(7) 2.0 g (8.7腿 ol)と 4-ブロモメチル安息香酸メチルエステル 2.8 g (12膽 ol)を 100 ml ジメチルホルムアミドに溶かした溶液に、炭酸力リウム 4.8 g (35應 ol)を加え 100°Cで 2時間撹拌した。 室温まで冷却後、 酢酸ェチル 300ml に溶かし、 水及ぴ飽和食塩水で洗浄した後、 硫酸ナトリウムで乾燥した。 酢酸ェ チルを減圧下留去し、 残渣をシリカゲルカラムにより精 して化合物 (8) 1.9 g を得た (収率 58%)。
¾-應 R (CDC13, 300 MHz): 10.47 (s, 1H), 8.09 (d, 2H, J = 8.0) , 7.50 (d, 2H, J = 8.0), 7.37 (s, 1H), 7,30 (s, 1H), 5.20 (s, 2H), 3.94 (s, 3H), 3.91 (s, 3H) 化合物(8) 1.9 g (5.0應 ol) を 75 mlのジメチルホルムアミドに溶かした溶液 に KF- Alumina (Bull. Chem. Soc. Jpn. , 1983, 56, 1885- 1886に示す方法で合成) 2.9 gを加え、 100°Cで 3時間撹拌した。反応液を濾過した後、酢酸ェチルを加え、 水及び飽和食塩水で洗浄した。 硫酸ナトリウムで乾燥後、 酢酸ェチルを減圧下に 留去し、 残渣をシリカゲルカラムにより精製して化合物(9) 0.66 gを得た (収率 36%) o .
¾ -應 R (CDC13, 300 MHz): 8.11 (d, 2H, J = 8.2), 7.89 (d, 2H, J二 8.2), 7.75 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 3.95 (s, 3H), 3.95 (s, 3H) 化合物(4) 0.33 g (1.3膽 ol) を 1,4-ジォキサン 20 mlに溶かした溶液に、 ィ匕 合物(9) 0.16 g (0.44 mmol) 、 ナトリゥム— t-ブトキシド 89 mg (0.92腿 ol)、 [1, 1'_ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン]パラジウム(II)ジク口リ ド 15 mg (0.020 mmol)、 1, -ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン 23 mg (0.042 脆 ol)を加え、 100°Cで 1時間撹拌した。 反応液に少量の水を加えた後、 炭酸水素 ナトリゥム水溶液とジク口口メタンを加え、 不溶物をグラスフィルタ一で濾去し
た。 濾液をジクロロメタンで抽出し、 硫酸ナトリウムで乾燥した。 ジクロロメタ ンを減圧下留去し、 残渣をシリカゲルカラムで精製して化合物(10) 0.39 g を得 た(収率 32%)。
黄色固体
¾ -腿 (CDC13, 300 MHz): 8.54 (m, 2H) , 8.05 (d, 2H, J = 8.6), 7.80 (d, 2H, J = 8.6), 7.64 (m, 2H), 7.53 (d, 2H, J = 7.3), 7.14 (m, 2H), 7.01 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.64 (s, 1H) , 3.96 (s, 3H) , 3.96 (s, 3H) , 3.93 (s, 4H) , 3.28 (t, 2H, J - 5.5), 2.96 (t, 2H, J = 5.5)
MS (FAB): 523 (M++l) ' メタノール 25 mlに 1.0 gの水酸化カリゥムを溶かし、 この溶液に化合物(10) 63 mg (0.12應 ol)を溶解して 40°Cで 12時間撹拌した。 メタノールを減圧下に留 去した後、残渣を 100 mlの水に溶解した。この溶液に塩酸を加えて酸性にした後、 水酸化ナトリゥム水溶液を pH 7.0になるまで加え、析出した固体を濾取し、化合 物(11) 43 mgを得た (収率 70°/。)。 得られた化合物(11)は酢酸ェチル /n-へキサン にて再結晶して精製した。
黄色固体。
-丽 R (CDC13, 300 MHz): 8.61 (m, 2H), 7.94 (d, 2H, J = 9.0), 7, 65 (d, 2H, J = 9.0), 7.65 (m, 2H), 7.54 (d, 2H, J = 7.3), 7.20 (m, 2H), 6.89 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.59. (s, 1H), 3.96 (s, 3H), 3.94 (s, 4H), 3.33 (t, 2H, J =5.5), 2.98 (t, 2H, J = 5.5), 1.57 (br, 1H) 化合物(7) 0.56 g (2.4膽 ol)を 10 mlのジメチルホルムアミドに溶かした溶液 に、 ェチノレ 2-ク口ロメチノレオキサゾ一 A^- 5-カノレポキシレート(J. Biol. Chem. , 1985, 260, 3440- 3450に示す方法で合成) 0.46 g (2.4 mmol)、 炭酸カリウム 1.3 g (9.7 腿 ol)を加え、 100°Cで 1.5時間撹拌した。 反応液を 2 N塩酸にて中和し た後、 酢酸ェチルで抽出し、 有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。 硫酸ナトリ
ゥムで乾燥後、 酢酸ェチルを減圧下留去し、 シリカゲルカラムにより精製して化 合物 (12) 0.51 g (1.4 mmol)を得た。 収率 57 0
¾ -腿 (CDC13, 300 MHz) :
7.89 (s, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.49 (s, 1H) , 7.12 (s, 1H), 4.44 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 3.96 (s, 3H), 1.42 (t, 3H, J = 7.1 Hz)
MS (EI): 364, 366 化合物(4) 0.20 g (0.83 mmol)を 1,4-ジォキサン 10 mlに溶かした溶液に、 ィ匕 合物(12) 0.10 g (0.27 腿。1)、 ナトリゥム- 1一ブトキシド 54 mg (0.56 mmol), [1, 1'-ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン]パラジウム(II)ジクロリ ド 5 mol%、 1, 1,-ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン 10mol%を加え、 アルゴン気 流下 80°Cで 2時間撹拌した。反応液を減圧下留去し、 NHシリカゲル力ラムで精製 して化合物(13) 5.0 mg (9.5讓 ol)を得た。 黄色オイル状物質。 収率 3.5 %0 ¾—匪 R (CDC13, 300 MHz): 8.53 (d, 2H, J = 5.0 Hz), 7.84 (s, 1H) , 7.63 (m, 2H), 7.51 (d, 2H, J = 7.9 Hz), 7.43 (s, 1H), 7.14 (m, 2H), 6.90 (s, 1H), 6.59 (s, 1H), 5.39 (brs, 1H), 4.41 (q, 2H, J = 7.1 Hz) , 3.97 (s, 3H), 3.91 (s, 4H), 3.24 (t, 2H, J = 5.9 Hz), 2.95 (t, 2H, J = 5.9 Hz), 1.41 (t, 3H, J = 7.1 Hz)
13C-NMR (75 MHz, CDC13): 159.23, 157.86, 157.46, 153.11, 149.10, 145.82, 141.48, 140.17, 140.06, 136.40, 135.63, 123.03, 122.12, 115.68, 111.29, 100.55, 91.86, 61.47, 60. 0, 56.00, 52.31, 41.04, 14.31
HRMS (FAB+) Calcd for (M+H+) m/z 528.2247, Found 528.2255 化合物(4) 0.20 g (0.83 mmol)を 1, 4-ジォキサン 10 mlに溶かした溶液に、 ィヒ 合物(12) 0.10 g (0.27 腿 ol)、 ナトリゥム- 1-プトキシド 54 mg (0.56 mmol), [1,1,-ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン]パラジウム(II)ジクロリ ド 5 mol°/e、 1, 1,-ビス(ジフエ二 ホスフイノ)フエ口セン 10mol°/。をカ卩え、 ァノレゴン気
流下 80°Cで 2時間撹拌した。反応液に数 mlのメタノールを加えて室温にて 15分 撹拌した後、 2 N塩酸にて中和し減圧下留去した。 残渣を 逆相 HPLCで精製して 化合物(14) 20 mg (40 nmol)を得た。 黄色オイル状物質。 収率 I5 %。 これを塩酸 塩として沈殿させ、 測定に用いた。
¾一 NMR (CD30D, 300 MHz): 8.79 (d, 2H, J = 5.9 Hz), 8.48 (m, 2H), 8.10 (d,
2H, J = 7.8 Hz), 7.92 (s, 1H), 7.90 (m, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.19 (s, 1H), 6.89
(s, 1H), 4.41 (s, 4H), 3.95 (s, 3H),' 3.52 (ΐ, 2H), 3.05 (t, 2H)
1SC-顯 R (75 fflz, CD30D): 160.27, 158.60, 154.03, 153.50, 148.54, 147.49,
143.68, 141.32, 141.15, 140.30, 135.87, 125.72, 125.61, 117.79, 112.59,
102.36, 92.55, 58.99, 56.71, 53.98, 40.18
HRMS (FAB+) Calcd for (M+H+) m/z 500.1934, Found 5Q0.1936 ジ—(2 -ピコリル)ァミン 0.20 g (0.96 mmol)を 1, 4—ジォキサン 10 ml に溶力、 した溶液に、 化合物(12) 0.10 g (0.27謹 ol)、 ナトリゥム- -ブトキシド 54 mg (0.56腿 ol)、 [1, -ビス(ジフエニルホスフイノ)フエ口セン]パラジウム(II)ジ クロリ ド 5mol%、l, 1,一ビス(ジフエ-ルホスフイノ)フエ口セン lOmol。/。をカロえ、 アルゴン気流下 100。Cで 3.5時間撹拌した。反応液に数 mlのメタノールを加えて 室温にて 15分撹拌した後、 2 N塩酸にて中和し減圧下留去した。残渣を 逆相 HPLC で精製して化合物(14) 2 mg (4.4 nmol)を得た。 黄色オイル状物質。 収率 1.6 %。 これを塩酸塩として沈殿させ、 測定に用いた。
丽 R (CD30D, 300 MHz): 8.76 (d, 2H, J = 5.1 Hz), 8.39 (m, 2H), 7.99 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.83 (s, 1H), 7.82 (m, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.22 (s, 1H), 4.88 (s, 4H), 3.72 (s, 3H) 例 2 :化合物(11)の蛍光特性
化合物 (11)の蛍光特性を調べた。 化合物 (11)を 100 KM HEPES緩衝液 (pH 7.4、 0.4% DMS0を共溶媒として含有)に 20 μ Mとなるように溶解して励起スぺク トルを
測定した。
測定条件 "
日立 F- 4500蛍光測定装置
スリット : Ex、 Em 2. 5 nm
スキャン速度: 240 nm/min
ホトマル電圧: 950 V
測定温度: 25°C
亜鉛イオンの添加前及ぴ亜鉛イオン(20 μ M ZnS0
4)添加後の化合物(11)の蛍光特 性を下記表 1に示す。 表 1
亜鉛イオンと配位することによつて化合物(11)には約 20 nmの波長シフトが認 められた。 化合物(11) 20 Mにおいて亜鉛イオンの濃度変化に対する励起スぺク トルを第 1図に示す。 亜鉛イオン濃度に依存して励起スぺク トルの極大波長が低 波長側にシフトした。 例 3 :化合物 (11)のレシオ測定
100 mM HEPES緩衝液 (pH 7. 4)中で、 化合物(11)の 20 溶液に 20 μ Μになる まで ZnS04を添加した。 蛍光波長 530 nmに固定したときの励起波長 335 nmと 354 nmにおける蛍光強度のレシオ変化を示す (第 2図 (A) )。 100 mM HEPES緩衝液 (pH 7. 4)中で、 化合物(11) の 20 μ Μ溶液に 400 μ Μになるまでナトリウムイオン、 力 ルシゥムイオン、 カリウムイオン、 又はマグネシゥムイオンを添加した。 蛍光波 長 530 nmに固定したときの励起波長 335 nmと 354 nmにおける蛍光強度のレシオ
変化を示す (第 2·図 (B) )。 亜鉛イオンを添加した場合には亜鉛イオンの濃度依存 的にレシオが変^ f匕するが、 他のイオンを加えた場合にはレシオの変化がみられな いことから、化合物(11)が亜鉛イオンに対して高い選択性を示すことが分かつた。 例 4 :化合物(14)及ぴ(15)の蛍光特性とレシオ測定
化合物(14)及び (15)について例 2及ぴ例 3と同様の方法により蛍光特性の確認 とレシオ測定を行った。 亜鉛イオンの添加前及ぴ亜鉛イオン (20 i M ZnS04) 添加 後の化合物 (14)及ぴ (15)の蛍光特性を下記表 2に示す。 表 2
化合物(11)と同様に、 亜鉛イオンと配位することによって化合物(14)及び (15) には約 30nmの波長シフトが認められた。同時にナトリゥムイオン、カルシウムィ オン、 カリウムイオン、 又はマグネシウムイオンの添加ではレシオの変化が観察 されず、 亜鉛イオンに対して高い選択性を示すことが確認された。 例 5 :化合物(14)及び(15)のスぺクトル測定
lOOmM HEPES緩衝液 (pH 7. 4) 中で、 15 μ Μの化合物(14)の溶液に 15 μ Μにな るまで ZnS04を添カ卩し、 例 2の測定条件でスペクトルを測定した。 このとき、 ィ匕 合物(11)も同様にスぺクトルを測定し対照とした。 第 3図に、 a)化合物(14)の UV スぺクトル変化、 b)化合物(14)の蛍光波長を 495nmに固定したときの励起スぺク トル、 c)化合物(11)の UVスぺクトル変化、 d)化合物(11)の蛍光波長を 530 nmに 固定した時の励起スぺクトルを示す。 また、 100 HEPES緩衝液 (pH 7. 4) 中 で、 10 μ Mの化合物 (15)溶液に 200 Μになるまで ZnS04を添加し、 例 2の測定
条件でスペク トルを測定した。 第 4図に、 a)化合物(15)の励起波長を 325nmに固 定したときの蛍光スぺク トル、 b)化合物(15)の蛍光波長を 445nmに固定したとき の励起スぺク トルを示す。
亜鉛ィオンの添加により化合物(14)では 365nm、 化合物(11)では 354nmの吸光 度が減少し、 化合物(14)、 (11)とも 335nmに吸光度が増加した (図 3 a)、 c) )。 同 時に亜鈴ィオンの添加により化合物(14)では 365nm、 化合物(11)では 354nmで励 起したときの蛍光が減少した (図 3 b)、 d) ) また、 亜鉛イオンの添加により化合 物(15)では 495nmの蛍光が減少し 445nmの蛍光が増加 (図 4 a) ) する一方、 亜鉛 ィオンの添加により 355nmで励起したときの蛍光強度が減少し 325nmで励起した ときの蛍光強度が増加(図 4b) )した。以上より化合物 (14)及び (15)が化合物(11) と同様レシオ法による亜鉛ィオンの測定に使用できることが確認された。 例 6 :化合物(13)による生細胞中の亜鉛イオン測定
生きた細胞内の亜鉛ィォン濃度の変化をイメージングによって測定した。 マク 口ファージ (MW264. 7) を、 10 Mの化合物(13)を含む PBSバッファ一中で室温 下 30分ィンキュベ一トし、細胞外液を化合物(13)を含まない PBSバッファーに置 換した後、 蛍光顕微鏡にて 340 進と 380 nmで励起したときの蛍光強度のレシオ 変化を観察した。 第 5図に示すように、 測定開始から 5分後にピリチオン (亜鉛 選択的ィオノフォア) と ZnS04をそれぞれ 10 μ Μ、 150 μ Μになるように細胞外液 に加えた (第 5図、 矢印 1 )。 さらに 15分後に ΤΡΕΝ (膜透過性亜鉛キレーター) を 400 χ Μになるように細胞外液に加えた (第 5図、 矢印 2 )。 細胞の透過光像及 び蛍光強度比の変ィ匕を擬似カラー表示した画像を第 6図に示す。
視野内にある 6個のマクロファージいずれでも、 ピリチオンと ZnS04の添加後 にレシオの上昇、 TPENの添加後にレシオの低下が観察された。 産業上の利用可能性
本発明の化合物は亜鉛測定のための蛍光プローブとして有用である。 本発明の
化合物は亜 l&イオンとの錯体を形成すると励起スぺクトルのピークに波長シフト が生じるので、 異なる 2種類の励起波長を用いて亜^ &イオンをレシオ法により正 確に測定できる。 レシオ法による亜鉛イオン濃度の測定では、 蛍光プローブ自体 の濃度や励起光強度による影響を無視できるとともに、 蛍光プローブ自身の局在 や濃度変化、 あるいは退色などによる測定誤差をなくすことができるため、 本発 明の化合物は生体内における亜鉛ィォンを正確に測定するためのプローブとして 極めて有用である。