世界遺産「佐渡島の金山」、特別天然記念物「トキ」など、歴史的な名所・自然・文化を有する佐渡島。四季折々の絶景や豊かな海鮮・地酒が楽しめる同地には多くの観光客が訪れ、約5万人の島民が日常生活を営んでいる。
その佐渡島と本土間で、110年にわたり安全に人・物資・車両を運び続けてきたのが佐渡汽船だ。現在は国内の地域交通の維持・発展を推進するみちのりホールディングス(以下、みちのりHD)グループの一員として、みちのりHDがバス・鉄道事業で得た地域交通課題解決の幅広い知見を取り入れながら更なるサービスや業務のオペレーションのアップデートを図っている。
佐渡汽船が業務改善の取り組みを進める過程で、重要課題として浮上したのが施設・資産の管理問題であった。設備自体の老朽化も進み、最近では乗船用の重要施設である渡船橋に不具合が起きたこともあったという。現場における施設管理の課題について、佐渡汽船 総務課 課長の久根内貴氏は次のように説明する。
「我々は現在、4つのターミナルビルをはじめとした9施設を管理しています。その際、港湾区域のため土地と建物の多くが県の所有で、建物は一部を除き共同で建設・区分所有し、維持管理を当社が担当する複雑な形になっています。修繕計画の立案、設備に係る保守や修繕工事の社内手続き、行政手続き等を本社総務部と佐渡側の関係部署で受け持ちますが、その際に必要な契約情報・図面等に関しては、社内には確実にあるものの紙やExcelなどの形で散在し、管理業務を1人の担当者が背負っていました」
会社としても、事業運営の側面から課題を感じていたという。グループ全体のIT・デジタル戦略を統括する、みちのりHD グループディレクター 桔川勉氏は、経営視点の課題を次のように話す。
「資産や設備の管理を人手で属人的に行っていた従来の業務プロセスの在り方は、大きなリスク要因でした。設備のメンテナンスが不十分で船の運航へ影響が及ぶと大きな損失に直結し、人命に関わる可能性もあります。事業継承性や持続的な事業価値の向上という観点もあり、業務改革を進める中で、設備投資や施設・資産管理を最適化するための取り組みを優先的に進めるべきとの結論に至りました」
そこで佐渡汽船では、社内システム環境の刷新を進める一環で2025年に施設・資産管理のDXに着手し、管理基盤となるデジタルツールの導入を検討した。要件は、まず画面が見やすく迷わず操作できる、分かりやすさと使い勝手の良さが備わっていること。そして個々に散在していたデータを統合し、永続的に運用できるデータベースを効率的に作れること。さらに、整備した設備情報をもとに最適な修繕計画を策定・実行できる管理基盤が作れることが挙げられた。
「どんなに機能が優れていても、使いこなせなければ意味はありません。導入するツールは総務部のみならず、佐渡汽船グループ全体に定着させる必要がありました。施設や設備も、単純に耐用年数に基づいた更新ではなく、コンディションを見ながらメンテナンスをすれば長く使えます。データを統合管理できる枠組みを用意し、適切な投資計画を策定できるようにしたいと考えました」(桔川氏)
それらのニーズを踏まえ、佐渡汽船が選択したのが「b-platform」であった。b-platformは、建設・施設分野のPM/CM(プロジェクトマネジメント/コンストラクションマネジメント)企業である山下PMCが、建築の企画から運用段階までのコンサルティング実績に基づいて開発した、建物経営と運営の効率化を実現するためのクラウドサービスで、図面や360度写真を起点に、資産情報、工事履歴、契約・協定書といった関連情報を1つの画面に集約し管理できる。「まさにオンリーワンの製品という印象でした。山下PMCは親会社である日本共創プラットフォーム(JPiX)傘下の浦島観光ホテルでのお付き合いもあり、スムーズに製品を選定することができました」と桔川氏は語る。
b-platformは、特徴的な機能として「位置情報に紐付けた情報の一元管理」「図面・写真上での直感的な情報確認」「コメント機能を活用した関係者間でのコミュニケーション機能」などが備わり、これらを活用することで技術部署だけでなく、管理部門、経営層も同じ情報を得て状況を把握できるようになる。その企業独自の業務プロセスや社内のデータ集約の仕組みを踏襲する際にも、kintoneアプリ連携機能によって柔軟に自社にとって最適な仕組みを構築することが可能だ。
b-platformは単に情報を蓄積するのではなく、日常業務の中で自然に使えることを目的に設計されているため、情報を探す時間を減らせるだけでなく、その判断に至った背景や経緯も組織内に蓄積されていくというデータ活用面での効果も得られる。その結果、業務の属人化解消・効率化だけでなく、中長期的な修繕計画や投資判断にも活用できるため、すでに多くの企業や組織におけるDXの基盤として採用が進んでいる。
今回佐渡汽船では、このb-platformを基盤として、万代島、両津港など先述の9つの管理対象施設別に、「完成図面」「360度写真」「拠点台帳」「建物台帳」「資産台帳」「修繕・更新計画マスタ」「協定書」といった情報を1システム内に集約し、一元管理を可能とした。
システムは、ログインしてトップ画面を開くと管理対象施設のアイコンが一覧表示され、それぞれの施設情報にアクセスできるように体系化されている。複雑だった県と佐渡汽船の財産区分については、バーチャル画面上でデジタル図面と実際の画像によって設備・資産を可視化し、その上に「新潟県」「佐渡汽船」「共有」という分類を赤・青・黄で色分けしてわかりやすく表示されるようになっている。そのような情報分類の整理整頓機能が実装された上で、運用時には設備の様子を360度写真で簡単に登録し、重要な場所にピン(アイコン)を付けて直感的に情報を共有できるとともに、そのピンをクリックするだけで図面や工事記録などの必要な情報の深掘りや追加登録ができる仕組みを実現している。
情報の管理を担当している佐渡汽船 総務課 係長 永井秀明氏は、「b-platformはまさに自社の業務課題の解決に即した仕組みを備えています」と評する。
「操作は簡単で、自らで必要な情報を検索でき、過去の契約情報等が必要な際に、今までのように倉庫を探し回らずともPCからすぐに取り出せるようになりました。施設の修繕計画も1年前に更新予定をアラートメールで知らせてくれる機能と、kintoneアプリ上でデータを分析しグラフ等で見える化を行うダッシュボード機能によって状況を把握でき、今後は正確なデータに裏付けされた予防保全も可能となるはずです。今後もb-platform上で資産管理に関するナレッジの蓄積と継承が継続して続いていくことが、我々にとっての財産、価値になるでしょう」
b-platform導入時のもう1つの重要ポイントが、山下PMCによる手厚い伴走支援である。b-platform採用時の導入支援のみならず、導入後にも定着に向けた1年間の「重点サポート」を行う。佐渡汽船では、総務部において3カ月弱という短期間でアプリの構築を含めた施設管理者向けの環境構築を済ませ、現在は船舶運航部、情報企画部、経理部などの他部門に対する伴走を開始し、定着に向け支援を進めている。
「我々は過去の事例も踏まえながらまずお客様の業務プロセスを整理し、誰が何の情報をどの場面で使うのかを明確にした上で、使用頻度の高い情報から段階的にb‑platformへ集約して自然にシステムが使われる形を作っていきます。こうした伴走支援があるからこそ、IT人材が多くない組織でも、b‑platformが業務の基盤として活用できるようになるのです」と、山下PMC b-platform事業部 部長 西村貴裕氏はその意図を語る。
いまは計画がスタートした段階だが、活動を主導する総務部では、まずデータベースを育てていくことを念頭に置いているという。「総務部の管財担当者が全て対応するのではなく、他の部門の担当者にもb-platformに『ここが壊れたからこのように修理した』と登録してもらい、図面を探す時もシステムの中から誰でも取り出せるようになる形を構築していく計画です。それを実現することで、事故も未然に防げるという姿を目指していきます」と久根内氏は語る。
佐渡汽船ではこれから、新潟港フェリーターミナルのレイアウト変更を筆頭にハード面での更新を数年かけて行い、ソフト面でもAI活用を含めた顧客サービスの高度化・効率化を進めているとのこと。b-platformは、今後同社が変革やデータ活用を進めていく上で重要な経営基盤としての役割も担っていく。
「b-platformを設備・資産管理のDX基盤として中核に置き、策定した投資計画に基づいて変革を進めていきます。人の動きも従業員の多能工化や付加価値の高い仕事への移行を進め最適化し、修繕時には業者から見積を取る際にもガバナンスをしっかりと利かせるようにします。AIやデータ基盤整備の取り組みは、グループ全体でDXの成功例として水平展開していくことも検討しています」(桔川氏)
視線を全国に広げると、多くの地域交通事業者や自治体が同様な課題を抱えている。それを解決するにはデジタルの活用が必須だが、DXを成し遂げるためにはツールの導入だけでは不十分で、変革に向けた推進力や人と人のつながりが必要になってくる。そこに対しても山下PMCは、ツール+伴走のアプローチで課題解決を支援する構えだ。
「DX推進には組織文化や業務プロセスの見直しなどの多くの挑戦を伴いますが、その先にはデータに基づいた明確な意思決定や、予防保全による安定した施設・事業運営、価値創出に集中できる環境が見えてきます。我々はツールを売って終わりではなく、ユーザーと同じ目線で課題に向き合えるパートナーとして皆様が抱える施設・資産管理の課題解決に尽力し、国内の企業・組織が次のステージに進む支援をしていきます」(西村氏)
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